ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B65D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B65D |
---|---|
管理番号 | 1384040 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-12-18 |
確定日 | 2022-02-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6722664号発明「それ自体の上に部分的に折り返される剥離縁部領域を有する積層体から特に食品容器を製造するための容器前駆体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6722664号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜32〕について訂正することを認める。 特許第6722664号の請求項1〜32に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6722664号の請求項1〜32に係る特許(以下「本件特許」という)についての出願は、2015年(平成27年)10月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年10月31日、ドイツ)を国際出願日とする特許出願であって、令和2年6月24日に特許権の設定の登録がされ、同年7月15日に特許掲載公報が発行された。 令和2年12月18日に重富與八郎(以下「申立人」という)により、そのすべての請求項に係る特許について特許異議の申立てがされ、令和3年4月27日付けで取消理由が通知され、同年8月3日に特許権者により意見書及び訂正請求書が提出され、同年10月26日に申立人により意見書の提出がされた。 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 令和3年8月3日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6722664号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜32について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という)の内容は以下のとおりである。なお、訂正箇所には当審で下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の壁領域(103)が第1の層配列を備え、この第1の層配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて互いの上に位置される重なり合う層として、第1の壁層(201)、第2の壁層(202)、および、第3の壁層(203)を備え」と記載されているのを、「前記第1の壁領域(103)が第1の層配列を備え、この第1の層配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて互いの上に位置される重なり合う層として、第1の壁層(201)、前記第1の壁層(201)から延設され折り重ねられている第2の壁層(202)、および、第3の壁層(203)を備え」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の壁領域(103)において、前記第2のキャリア層(206)は、前記第1のキャリア層(205)または前記第3のキャリア層(209)またはこれらの両方よりも小さい層厚によって特徴付けられ」とあるのを、「前記第1の壁領域(103)において、非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)上に折り重ねられている、剥離されている前記第2のキャリア層(206)は、非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)または非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)および前記第3のキャリア層(209)よりも小さい層厚によって特徴付けられ」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「前記第2の壁領域(104)が第2の層配列を備え、この第2の層配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて重なり合う層として、第1の壁層(201)、第2の壁層(202)、および、第3の壁層(203)を備え」とあるのを、「前記第2の壁領域(104)が第2の層配列を備え、この第2の層配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて重なり合う層として、第1の壁層(201)、前記第1の壁層(201)から延設され折り重ねられている第2の壁層(202)、および、第3の壁層(203)を備え」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項14に「前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の更なる部分(510)を前記内側領域(502)に接続する、プロセスステップと」とあるのを、「前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の更なる部分(510)を前記内側領域(502)に重ならせて、かつ前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)を前記内側領域(502)に接続する、プロセスステップと」に訂正する。 (5)一群の請求項について 本件訂正前の請求項について、請求項2〜13の記載は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1〜3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、請求項15〜21の記載は、請求項14の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項14に連動して訂正されるものである。そして、請求項22〜32の記載は、請求項1〜13、21の記載を直接的又は間接的に引用しているものであるから、訂正事項1〜3によって記載が訂正される請求項1、又は、訂正事項4によって記載が訂正される請求項14に連動して訂正されるものである。 したがって、これら請求項1〜32は、一群の請求項を構成している。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1、3は、いずれも、本件訂正前の請求項1における「第2の壁層(202)」につき「前記第1の壁層(201)から延設され折り重ねられている」と限定するものであるから、その目的は、特許請求の範囲の減縮である。 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1における「第1のキャリア層(205)」につきそれが「非剥離領域」であるとするとともに、「第2のキャリア層(206)」につきそれが「剥離されている」ものであって、かつ、「第1のキャリア層(205)上に折り重ねられている」と限定し、さらに、第2のキャリア層(206)の層厚の比較の対象が、「第1のキャリア層(205)」、「第3のキャリア層(209)」及び「これらの両方」の3つであったものを、「第1のキャリア層(205)」と、「第1のキャリア層(205)および第3のキャリア層(209)」の、2つに選択肢を減らすものであるから、それらの目的は、特許請求の範囲の減縮である。 訂正事項4は、本件訂正前の請求項14における「更なる縁部折り曲げ領域(508)の更なる部分(510)」と「内側領域(502)」の「接続」態様について、「更なる縁部折り曲げ領域(508)の更なる部分(510)」を「内側領域(502)に重ならせて、」「かつ前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)を前記内側領域(502)に接続する」と限定するものであるから、その目的は、特許請求の範囲の減縮である。 (2)また、訂正事項1〜4により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではない。 さらに、本件特許の明細書の段落【0097】「剥離された領域が第1のキャリア層(205)上に完全に折り重ねられた」段落【0099】「剥離された第2のキャリア層(206)は、第1のキャリア層(205)の剥離領域を横切って第1のキャリア層(205)の非剥離領域のところまで折り重ねられた。」、段落【0112】「更なる縁部折り曲げ領域508の更なる部分510を内側領域502に接続する」といった記載事項や、図2〜5、9、11の記載内容から、訂正事項1〜4は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1〜32について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正を認めることができるので、本件特許の請求項1〜32に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜32に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(これらの各発明を以下「本件発明1」のようにいう)。 「【請求項1】 壁(102)を備える容器前駆体(100)であって、前記壁(102)は、 a)内部領域(101)を取り囲み、および、 b)第1の壁領域(103)および第2の壁領域(104)を備え、 前記第1の壁領域(103)が第1の層配列を備え、この第1の層配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて互いの上に位置される重なり合う層として、第1の壁層(201)、前記第1の壁層(201)から延設され折り重ねられている第2の壁層(202)、および、第3の壁層(203)を備え、 前記第1の壁領域(103)では、前記第1の壁層(201)が前記第2の壁層(202)に接続されるとともに、前記第2の壁層(202)が前記第3の壁層(203)に直接的に接続され、 前記第1の壁層(201)は、前記内部領域(101)から外側へ向けて第1の壁層配列として、アルミニウムを含有する第1のバリア層(204)と第1のキャリア層(205)とを備え、 前記第2の壁層(202)は、前記内部領域(101)から外側へ向けて第2の壁層配列として、第2のキャリア層(206)とアルミニウムを含有する第2のバリア層(207)とを備え、 前記第3の壁層(203)は、前記内部領域(101)から外側へ向けて第3の壁層配列として、アルミニウムを含有する第3のバリア層(208)と第3のキャリア層(209)とを備え、 前記第1の壁領域(103)において、非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)上に折り重ねられている、剥離されている前記第2のキャリア層(206)は、非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)または非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)および前記第3のキャリア層(209)よりも小さい層厚によって特徴付けられ、 前記第2の壁領域(104)が第2の層配列を備え、この第2の層配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて重なり合う層として、第1の壁層(201)、前記第1の壁層(201)から延設され折り重ねられている第2の壁層(202)、および、第3の壁層(203)を備え、 前記第2の壁領域(104)では、前記第2の壁層(202)が前記第3の壁層(203)に直接的に接続され、 前記第2の壁領域(104)において、前記第3のキャリア層(209)は、前記第2のキャリア層(206)または前記第1のキャリア層(205)またはこれらの両方よりも大きい層厚によって特徴付けられる、 容器前駆体(100)。 【請求項2】 前記第1の壁領域(103)が前記第2の壁領域(104)に隣接する、請求項1に記載の容器前駆体(100)。 【請求項3】 前記第1の壁領域(103)は、前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第1の幅(106)によって特徴付けられ、 前記第1の幅(106)が1〜6mmの範囲内である、 請求項1または請求項2に記載の容器前駆体(100)。 【請求項4】 前記第1の壁領域(103)は、前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第1の幅(106)によって特徴付けられ、 前記第1の幅(106)が、少なくとも2mm以上である、 請求項1または請求項2に記載の容器前駆体(100)。 【請求項5】 前記第2の壁領域(104)は、前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第2の幅(107)によって特徴付けられ、 前記第2の幅(107)が1〜10mmの範囲内である、 請求項1から4のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項6】 前記第1の壁領域(103)において、前記第2のキャリア層(206)の層厚は、前記第1のキャリア層(205)または前記第3のキャリア層(209)またはこれらの両方の層厚の0.05〜0.9倍である、請求項1から5のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項7】 前記第2の壁領域(104)において、前記第3のキャリア層(209)の層厚は、前記第1のキャリア層(205)または前記第2のキャリア層(206)またはこれらの両方の層厚の1.1〜20倍である、請求項1から6のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項8】 前記第2の壁領域(104)では、前記第1の壁層(201)が前記第2の壁層(202)に接続されない、請求項1から7のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項9】 前記第2の壁領域(104)では、 a)前記第2のキャリア層(206)と対向する前記第1のキャリア層(205)の表面、および、 b)前記第1のキャリア層(205)と対向する前記第2のキャリア層(206)の表面、 が、カバー層を備えないとともに、カバー層に接続されない、請求項1から8のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項10】 前記第1の壁領域(103)において、前記第1のキャリア層(205)と対向する前記第2のキャリア層(206)の表面は、カバー層を備えないとともに、カバー層に接続されない、請求項1から9のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項11】 前記第1のキャリア層(201)、前記第2のキャリア層(206)、および、前記第3のキャリア層(209)、または、これらのうちの少なくとも2つの組み合わせから成るグループから選択される1つは、ボール紙、板紙、および、紙、または、これらのうちの少なくとも2つの組み合わせから成るグループから選択される1つを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項12】 前記壁(102)が第3の壁領域(301)を備え、 前記第3の壁領域(301)が第3の壁配列を備え、この第3の壁配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて重なり合う層として、前記第1の壁層(201)および前記第3の壁層(203)を備え、 前記第3の壁領域(301)では、前記第1の壁層(201)が前記第3の壁層(203)に接続され、 前記第3の壁領域(301)が前記第1の壁領域(103)に隣接する、 請求項1から11のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項13】 前記第3の壁領域(301)が前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第3の幅(302)によって特徴付けられ、 前記第3の幅(302)が1〜12mmの範囲内である、 請求項12に記載の容器前駆体(100)。 【請求項14】 a)シート状複合体を準備するプロセスステップであって、前記シート状複合体が、 i)複合層配列(501)であって、 A)複合キャリア層(505)と、 B)アルミニウムを含有する複合バリア層(504)と、 を備える複合層配列(501)と、 ii)縁部領域(503)と、 iii)前記縁部領域(503)に隣接する内側領域(502)と、 を備える、プロセスステップと、 b)前記縁部領域(503)で前記複合キャリア層(505)の層厚を減少させるプロセスステップと、 c)第1の縁部折り曲げ領域(507)と更なる縁部折り曲げ領域(508)とを得るために前記縁部領域(503)に折り曲げ部(506)を形成するプロセスステップであって、 前記第1の縁部折り曲げ領域(507)および前記更なる縁部折り曲げ領域(508)が前記折り曲げ部(506)に沿って互いに隣接する、プロセスステップと、 d)前記第1の縁部折り曲げ領域(507)を前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の第1の部分(509)と接触させて、 前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の更なる部分(510)を前記内側領域(502)に重ならせて、かつ前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)を前記内側領域(502)に接続する、プロセスステップと、 e)前記内側領域(502)で更なる折り曲げ部(514)を形成して、第1の複合折り曲げ領域(511)および更なる複合折り曲げ領域(512)を得るプロセスステップであって、 前記更なる複合折り曲げ領域(512)が前記縁部領域(503)を備える、プロセスステップと、 f)前記第1の複合折り曲げ領域(511)を、前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記第1の部分(509)および前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)に直接的に接続するプロセスステップと、 を備える、 プロセス(500)。 【請求項15】 前記プロセスステップe)では、前記更なる複合折り曲げ領域(512)が前記内側領域(502)の一部分(513)を備え、 前記プロセスステップf)では、前記第1の複合折り曲げ領域(511)が前記内側領域(502)の前記一部分(513)に更に接続される、 請求項14に記載のプロセス(500)。 【請求項16】 前記プロセスステップb)では、前記減少が前記複合キャリア層(505)を剥離することによって行われる、請求項14または15に記載のプロセス(500)。 【請求項17】 前記剥離が回転工具によって行われる、請求項16に記載のプロセス(500)。 【請求項18】 前記プロセスステップa)では、前記シート状複合体が折り目(515)を備え、 前記プロセスステップe)では、前記更なる折り曲げ部(514)の形成が前記折り目(515)に沿う折り曲げを含む、 請求項14から17のいずれか一項に記載のプロセス(500)。 【請求項19】 前記プロセスステップf)では、容器前駆体(100)が得られ、 前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)が、前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第1の幅(106)によって特徴付けられ、 前記第1の幅(106)が1〜6mmの範囲内である、 請求項14から18のいずれか一項に記載のプロセス(500)。 【請求項20】 前記プロセスステップf)では、容器前駆体(100)が得られ、 前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)が、前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第1の幅(106)によって特徴付けられ、 前記第1の幅(106)が、少なくとも2mm以上である、 請求項14から18のいずれか一項に記載のプロセス(500)。 【請求項21】 請求項14から20のいずれか一項に記載のプロセス(500)により得られる容器前駆体(100)。 【請求項22】 請求項1から13または21のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)を折り曲げるとともに折り曲げられた前駆体容器前駆体(100)を閉鎖工具を用いて閉じることによって得られる密閉容器(600)。 【請求項23】 前記壁(102)が全ての側で前記内部領域(101)を取り囲み、 前記壁(102)が一体のシート状複合体から成る、 請求項22に記載の密閉容器(600)。 【請求項24】 前記第1の壁領域(103)および前記第2の壁領域(104)において、前記第1の壁層(201)には、前記内部領域(101)に面する側で、第4の壁層(401)が重ね合わされ、 前記第4の壁層(401)は、前記内部領域(101)から外側へ向けて第4の壁層配列として、第4のキャリア層(402)と、アルミニウムを含有する第4のバリア層(403)とを備え、 前記第1の壁領域(103)において、前記第2のキャリア層(206)は、前記第4のキャリア層(402)よりも小さい層厚によって特徴付けられ、 前記第2の壁領域(104)において、前記第4のキャリア層(402)は、前記第2のキャリア層(206)、または、第1のキャリア層(205)、または、これらの両方よりも大きい層厚によって特徴付けられる、 請求項22または23のいずれか一項に記載の密閉容器(600)。 【請求項25】 更に前記第3の壁領域(301)では、前記第4の壁層(401)が前記内部領域(101)に面する側で前記第1の壁層(201)に重なり合う、請求項24に記載の密閉容器(600)。 【請求項26】 a)請求項1から13または21のいずれか一項に記載の前記容器前駆体(100)を準備するプロセスステップと、 b)前記容器前駆体(100)を折り曲げるプロセスステップと、 c)閉鎖工具を用いて前記容器前駆体(100)を閉じて、密閉容器を得るプロセスステップと、 を備えるプロセス(700)。 【請求項27】 前記プロセスステップc)の前に食料品が前記容器前駆体(100)内へ導入される、請求項26に記載のプロセス(700)。 【請求項28】 前記プロセスステップc)の後に前記密閉容器がオートクレーブ滅菌される、請求項26または27に記載のプロセス(700)。 【請求項29】 前記プロセスステップc)の前に前記容器前駆体(100)が滅菌される、請求項26から28のいずれか一項に記載のプロセス(700)。 【請求項30】 請求項26から29のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることができる密閉容器。 【請求項31】 密閉容器を製造するための請求項1から13または21のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)の使用。 【請求項32】 食料品を充填するための請求項1から13または21のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)の使用。」 第4 当審の判断 1 取消理由の概要 本件訂正前の本件特許に対する令和3年4月27日付けの取消理由通知書の概要は、以下のとおりである。 本件特許の請求項1〜7、9〜23、26〜32に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜7、9〜23、26〜32に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲第1号証:特開2014―141272号公報 2 特許権者に通知した取消理由についての判断 (1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 ア 甲第1号証(以下「甲1」という)には、以下の記載がある。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 液体を収納する紙容器において、紙端面が露出する内側をエッジプロテクトすると共に、紙端面が露出する外側紙端面を熱可塑性樹脂で覆ったことを特徴とする液体用紙容器。 ・・・ 【請求項3】 液体を収納する紙容器の製造方法において、紙端面が露出する内側をエッジプロテクトすると共に、容器形状に成形後、紙端面が露出する外側紙端面を熱可塑性樹脂で覆うことを特徴とする液体用紙容器の製造方法。」 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、主として、シャンプー、ボディソープ、住宅洗剤など、界面活性剤を含む液体を収納し、紙を基材に用いた液体用紙容器に関する。」 ・「【図面の簡単な説明】 【0012】 ・・・・ 【図5】本発明の液体用紙容器の製造工程において、スカイブ・ヘミング処理した胴部背シール部分の、容器成形時点の断面図である。 ・・・・」 ・「【発明を実施するための形態】 【0013】 以下、本発明の液体用紙容器に使用する注出口栓の実施の形態例について、図を用いて詳細に説明する。 実施形態例に使用される紙容器本体は、図1〜3に一例を示すような形状で、紙を基材とし、内面融着層51および外面融着層53をヒートシール性に優れた熱可塑性樹脂とする積層シート5使用する。胴部は側面接着部41で貼り合わせ、頂部と底部をそれぞれ合わせて融着する事で、4角柱の容器本体3と切り妻屋根形のゲーブルトップをからなり、ゲーブルトップの注出口栓装着面31に口栓取り付け孔2を開け、口栓取り付け孔部分に注出口栓1を突設した液体紙容器である。端面被覆部54は、端面が外に露出していた部分で、この露出端面を被覆して、界面活性剤の浸透を防ぐ。 図2は、図1の反対側より見た外観図で、口栓取り付け孔2の内面周囲にも端面被覆部54がある。図3は、底面側が見える角度にした外観図で、端面被覆部54は底面から側面の角部にある側面シール部に沿って連続して設けられている。 【0014】 図1〜3のような容器は、積層シート5を抜き加工し、それを折り曲げ、融着して組み立てたものである。 図4は、その一例のスカイブ処理したブランクで、エッジプロテクトとして、側面端面に基材を削り落としたスカイブ部411、421、431を有する。 このスカイブ処理された部分は、切削部分が内側になるように折り返され、基材端面を熱可塑性樹脂で覆う。 天面部323には注出口栓1を融着するための口栓取付孔2が設けられている。 底面は折り返して、内面には積層シート5の端面が出ないようにしている。 山折線6と谷折線7をそれぞれ折って、合わせ面を融着することで、紙容器は成形される。 【0015】 図4のブランクを成形した容器の側面シール部を拡大した図が図5である。 スカイブされた側面スカイブ処理部411が側面部311内側の内面融着層51に融着して、側面接着部41の基材端面を覆っている。 しかし、この状態では、外側になる側面部311の端面が露出しており、端面の基材層52から水などが浸透することが予想される。」 ・「【0026】 本発明は以上のようなものであるが、容器を形作る積層シート5の構成は、最外面と最内面に熱可塑性樹脂を用い、中間層として、紙を使用していれば、紙に蒸着したバリヤ性の高いフィルムを積層下中間層であっても良く、材質は特に限定されない。 たとえば、ポリエチレン/紙/ポリエチレン、 ポリエチレン/紙/ポリエチレン/無機酸化物蒸着ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、 ポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、 ポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミ箔/ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、 ポリエチレン/紙/ポリエチレン/エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物/ポリエチレン、ポリエチレン/紙/ポリエチレン/接着樹脂/ポリアミド/接着樹脂/ポリエチレン などが考えられる。」 ・「【図5】 」 イ 甲1に記載された発明 上記アの記載事項、特にその図5に示された容器成形段階の構造に着目する。 図5の記載から、側面接着部(41)には、側面スカイブ処理部(411)とそれ以外の側面スカイブ処理が施されていない部位があることが把握できる。 また、側面シール部全体としてみると、側面スカイブ処理部(411)、側面スカイブ処理が施されていない側面接着部(41)の部位のそれぞれについて、各々が隣接する位置の側面部(311)とを合わせた“領域”というものを観念することができ、それぞれ、「側面スカイブ処理部(411)が位置する領域」、「スカイブ処理が施されていない側面接着部(41)が位置する領域」といえる。 側面スカイブ処理部(411)において、基材層(52)が斜めにスカイブ処理され内面融着層(51)と共に外側に折り曲げられた部位が、同じく斜めにスカイブ処理されているが折り曲げられていない基材層(52)の部位と接触していることが把握でき、この斜めにスカイブ処理され折り曲げられていない基材層(52)の部位が容器にとって“内側層”と、斜めにスカイブ処理され折り曲げられた基材層(52)の部位が“外側層”と観念できる。 また、側面スカイブ処理部(411)では、側面部(311)の基材層(52)の層の厚みは、側面スカイブ処理部(411)の2つの基材層(52)のいずれよりも大きいことが把握できる。 これらのことと上記アに摘記した事項を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「引用発明1」という)が記載されていると認められる。 「壁面を備える液体用紙容器の容器成形段階の構造であって、前記壁面は、 内部領域を取り囲み、および、 側面スカイブ処理部(411)が位置する領域及びスカイブ処理が施されていない側面接着部(41)が位置する領域を備え、 前記側面スカイブ処理部(411)が位置する領域の層配列は、前記内部領域から外側へ向けて重なり合う層として、斜めにスカイブ処理された内側層、前記内側層から延設され折り重ねられている斜めにスカイブ処理された外側層、および、側面部(311)を備え、 前記側面接着部(41) の層配列としては、前記内部領域から外側へ向けて、内面融着層(51)と、基材層(52)とを備え、 前記内側層の層配列としては、前記内部領域から外側へ向けて、内面融着層(51)と、基材層(52)とを備え、 前記外側層の層配列としては、前記内部領域から外側へ向けて、基材層(52)と、内面融着層(51)とを備え、 前記側面部(311) の層配列としては、前記内部領域から外側へ向けて、内面融着層(51)と、基材層(52)とを備え、 前記側面スカイブ処理部(411)が位置する領域では、前記外側層が前記側面部(311)に直接的に接続され、 前記側面スカイブ処理部(411) が位置する領域では、前記側面部(311)の基材層(52)は、前記側面スカイブ処理部(411)の内側層の基材層(52)、前記側面スカイブ処理部(411)の外側層の基材層(52)のいずれよりも大きい層厚であり、 前記スカイブ処理が施されていない側面接着部(41)が位置する領域の層配列は、前記内部領域から外側へ向けて互いの上に位置される重なり合う層として、スカイブ処理が施されていない側面接着部(41)、および、前記側面部(311)を備え、 前記側面スカイブ処理が施されていない側面接着部(41)が位置する領域では、前記側面接着部(41)が前記側面部(311)に直接的に接続される、 液体用紙容器の容器成形段階の構造。」 (2)本件発明1について ア 本件発明1と引用発明1を対比する。 引用発明1(以下「後者」ということがある)の「壁面」、「側面スカイブ処理が施されていない側面接着部(41)が位置する領域」、「側面スカイブ処理部(411)が位置する領域」、「斜めにスカイブ処理された外側層」、「側面部(311)」、「液体用紙容器の容器成形段階の構造」は、それぞれ、本件発明1の「壁(102)」、「第1の壁領域(103)」、「第2の壁領域(104)」、「第2の壁層(202)」、「第3の壁層(203)」、「容器前駆体(100)」に相当する。 後者の「斜めにスカイブ処理された内側層」、「側面スカイブ処理が施されていない側面接着部(41)が位置する領域」の「スカイブ処理が施されていない側面接着部(41)」は、いずれも、前者の「第1の壁層(201)」に相当する。 後者の「内側層の層配列」、「側面接着部(41) の層配列」は、いずれも、前者の「第1の壁層」に相当する。 後者の「外側層の層配列」、「側面部(311)の層配列」は、それぞれ、前者の「第2の壁層」、「第3の壁層」に相当する。 後者の「基材層(52)」は、前者の「キャリア層」に相当し、後者の「内面融着層(51)」と前者の「バリア層」は、それぞれ「基材層」、「キャリア層」に対して併設されたものであるから、「併設層」という限りで一致する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点1> 壁を備える容器前駆体であって、前記壁は、 a)内部領域を取り囲み、および、 b)第1の壁領域および第2の壁領域を備え、 前記第1の壁領域が第1の層配列を備え、この第1の層配列は、前記内部領域から外側へ向けて互いの上に位置される重なり合う層として、第1の壁層、および、第3の壁層を備え、 前記第1の壁層は、前記内部領域から外側へ向けて第1の壁層配列として、第1の併設層と第1のキャリア層とを備え、 前記第2の壁層は、前記内部領域から外側へ向けて第2の壁層配列として、第2のキャリア層と第2の併設層とを備え、 前記第3の壁層は、前記内部領域から外側へ向けて第3の壁層配列として、第3の併設層と第3のキャリア層とを備え、 前記第2の壁領域が第2の層配列を備え、この第2の層配列は、前記内部領域から外側へ向けて重なり合う層として、第1の壁層、前記第1の壁層から延設され折り重ねられている第2の壁層、および、第3の壁層を備え、 前記第2の壁領域では、前記第2の壁層が前記第3の壁層に直接的に接続され、 前記第2の壁領域において、前記第3のキャリア層は、前記第2のキャリア層または前記第1のキャリア層またはこれらの両方よりも大きい層厚である、 容器前駆体。」 <相違点1> 本件発明1は、「第1の壁領域(103)が第1の層配列を備え、この第1の層配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて互いの上に位置される重なり合う層として、第1の壁層(201)、前記第1の壁層(201)から延設され折り重ねられている第2の壁層(202)、および、第3の壁層(203)を備え」、「第1の壁領域(103)では、前記第1の壁層(201)が前記第2の壁層(202)に接続されるとともに、前記第2の壁層(202)が前記第3の壁層(203)に直接的に接続され」、「第1の壁領域(103)において、非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)上に折り重ねられている、剥離されている前記第2のキャリア層(206)は、非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)または非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)および前記第3のキャリア層(209)よりも小さい層厚」であるのに対して、引用発明1は、そもそも「スカイブ処理が施されていない側面接着部(41)」の上に、「内側層から延設され折り重ねられている斜めにスカイブ処理された外側層」が重ね合わされていない点。 <相違点2> 「併設層」に関して、本件発明1では「アルミニウムを含有する」「バリア層」であるのに対して、引用発明1では「内面融着層」である点。 イ 相違点について検討する。 まず、相違点1について検討する。 引用発明1における「斜めにスカイブ処理された外側層」は、「斜めにスカイブ処理された内側層」と接続されるが、そこで斜めにスカイブ処理されていることにより、その接続部が壁層外側に膨らまない形態とされているものと推察される。 そうすると、「斜めにスカイブ処理された外側層」を「斜めにスカイブ処理された内側層」を越えて「スカイブ処理が施されていない側面接着部(41)」の上にまで延ばして、あえて壁層外側に膨らませてまでそれと接続する構成に変えることは、積極的に動機付けられる事柄ではない。 申立人は、甲第2号証(特開2004−101412号公報)、甲第3号証(特開2002−67192号公報)の開示をもって、引用発明1におけるこの相違点1に係る本件発明の発明特定事項の採用が容易である旨指摘する。 しかし、甲第2号証に開示されたものは、本件発明1で前提構成ともいうべき「第3の壁層」に相当する構成を欠き、また、甲第3号証に開示されたものは、本件発明1でいう「第1の壁領域」においては、「第2の壁層」を「第3の壁層」に直接的に接続する構成を備えていないから、それらにより開示されたものを考慮しても、本件発明1における第1〜第3の壁層の関連構成が直ちに導き出せるというものではない。 したがって、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、引用発明1に基づいて当業者が容易に採用し得たものではない。 ウ そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明14について ア 引用発明1を踏まえて、引用発明1に係る容器成形段階の構造を製造するプロセスとしての発明(以下「引用発明2」という)を観念することができる(その場合、容器製造のために行う常識的なスカイブ・ヘミング加工(必要であれば、甲第2号証の図8、甲第3号証の図1、図2等を参照。)を考慮することができる。)。 イ 本件発明14と引用発明2を対比すると、引用発明2の「基材層(52)」は、本件発明14の「複合キャリア層(505)」に相当し、引用発明2の「内面融着層(51)」と本件発明14の「アルミニウムを含有する複合バリア層(504)」は、それぞれ「基材層」、「複合キャリア層(505)」に対して併設されたものであるから、「併設層」という限りで一致する。 また、引用発明2の「斜めにスカイブ処理された内側層」、「内側層から延設され折り重ねられている斜めにスカイブ処理された外側層」、「側面部(311)」は、それぞれ、本件発明14の「第1の縁部折り曲げ領域(507)」、「更なる縁部折り曲げ領域(508)の第1の部分(509)」、「第1の複合折り曲げ領域(511)」に相当し、引用発明2の斜めにスカイブ処理された「内側層」と「外側層」は、併せて本件発明14の「縁部領域(503)」に相当する。 さらに、既に本件発明1に関して述べた、本件発明1と引用発明1の発明特定事項の相当関係を踏まえれば、本件発明14と引用発明2の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点2> a)シート状複合体を準備するプロセスステップであって、前記シート状複合体が、 i)複合層配列であって、 A)複合キャリア層と、 B)併設層と、 を備える複合層配列と、 ii)縁部領域と、 iii)前記縁部領域に隣接する内側領域と、 を備える、プロセスステップと、 b)前記縁部領域で前記複合キャリア層の層厚を減少させるプロセスステップと、 c)第1の縁部折り曲げ領域と更なる縁部折り曲げ領域とを得るために前記縁部領域に折り曲げ部を形成するプロセスステップであって、 前記第1の縁部折り曲げ領域および前記更なる縁部折り曲げ領域が前記折り曲げ部に沿って互いに隣接する、プロセスステップと、 d)前記第1の縁部折り曲げ領域を前記更なる縁部折り曲げ領域と接触させる、プロセスステップと、 e)前記内側領域で更なる折り曲げ部を形成して、第1の複合折り曲げ領域および更なる複合折り曲げ領域を得るプロセスステップであって、 前記更なる複合折り曲げ領域が前記縁部領域を備える、プロセスステップと、 f)前記第1の複合折り曲げ領域を、前記更なる縁部折り曲げ領域に直接的に接続するプロセスステップと、 を備える、プロセス。 <相違点3> 本件発明14では、「d)前記第1の縁部折り曲げ領域(507)を前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の第1の部分(509)と接触させて、前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の更なる部分(510)を前記内側領域(502)に重ならせて、かつ前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)を前記内側領域(502)に接続する、プロセスステップ」を備え、「f)前記第1の複合折り曲げ領域(511)を、前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記第1の部分(509)および前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)に直接的に接続する」のに対して、引用発明2は、斜めにスカイブ処理された内側層に、内側層から延設され折り重ねられている斜めにスカイブ処理された外側層を接触させるものの、外側層をスカイブ処理されていない部位にまで延長させて接続していない点。 <相違点4> 「併設層」に関して、本件発明14では「アルミニウムを含有する複合バリア層」であるのに対して、引用発明2では「内面融着層」である点。 ウ まず、相違点3について検討する。 既に、本件発明1と引用発明1との相違点1について述べたと同様に、引用発明2においても、内側層から延設され折り重ねられている斜めにスカイブ処理された外側層を、スカイブ処理されていない部位にまで延長させて接続することは、積極的に動機付け得る事柄ではない。 また、相違点3に係る構成は、甲第2号証及び甲第3号証にも記載されていない。 したがって、相違点3に係る本件発明14の発明特定事項は、引用発明2に基づいて当業者が容易に採用し得たものではない。 エ そうすると、相違点4について検討するまでもなく、本件訂正後の本件発明14は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2〜7、9〜13、15〜23、26〜32について ア 本件発明2〜7、9〜13、21は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て含んだものであるから、引用発明1と対比すると、少なくとも本件発明1と引用発明1を対比したときの相違点で相違するものである。 そうすると、本件発明2〜7、9〜13、21も、引用発明1に基いて当業者が容易に発明し得たものでない。 イ 同様に、本件発明15〜20は、いずれも、本件発明14の発明特定事項を全て含んだものであるから、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明し得たものでない。 ウ さらに、本件発明22、23、26〜32は、いずれも、本件発明1の発明特定事項を全て含んだものであるから引用発明1に基づいて当業者が容易に発明し得たものでない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1〜7、9〜23、26〜32は、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当しない。 したがって、本件発明1〜7、9〜23、26〜32に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではない。 3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立人は、本件発明8、24、25も、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることがものである旨主張する。(特許異議申立書38,47〜48頁) しかし、本件発明8、24、25は、本件発明1の発明特定事項を全て含んだものであるところ、引用発明1と対比すると、少なくとも本件発明1と引用発明1を対比したときの相違点で相違するものである。 そうすると、本件発明8、24、25も、引用発明1(甲1に記載された発明)に基いて当業者が容易に発明し得たものでない。 したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。 (2)申立人は、本件明細書の段落【0006】に極めて多数の解決課題が記載されており、どの実施の形態、実施例の構成が解決手段として対応するのか明瞭でなく、また、どのような作用効果に基づいて課題が解決できるのかも明瞭でないため、本件特許が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張する。(特許異議申立書50〜53頁) しかし、本件明細書の発明の詳細な説明及び図面には、発明に係る容器前駆体の構成や、実施例、比較例についての実験結果が開示されており(段落【0101】の【表2】等)、本件発明1〜32の容器前駆体を製造し、又は、プロセスを使用することができるから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているものといえる。 したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1〜32に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件発明1〜32に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 壁(102)を備える容器前駆体(100)であって、前記壁(102)は、 a)内部領域(101)を取り囲み、および、 b)第1の壁領域(103)および第2の壁領域(104)を備え、 前記第1の壁領域(103)が第1の層配列を備え、この第1の層配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて互いの上に位置される重なり合う層として、第1の壁層(201)、前記第1の壁層(201)から延設され折り重ねられている第2の壁層(202)、および、第3の壁層(203)を備え、 前記第1の壁領域(103)では、前記第1の壁層(201)が前記第2の壁層(202)に接続されるとともに、前記第2の壁層(202)が前記第3の壁層(203)に直接的に接続され、 前記第1の壁層(201)は、前記内部領域(101)から外側へ向けて第1の壁層配列として、アルミニウムを含有する第1のバリア層(204)と第1のキャリア層(205)とを備え、 前記第2の壁層(202)は、前記内部領域(101)から外側へ向けて第2の壁層配列として、第2のキャリア層(206)とアルミニウムを含有する第2のバリア層(207)とを備え、 前記第3の壁層(203)は、前記内部領域(101)から外側へ向けて第3の壁層配列として、アルミニウムを含有する第3のバリア層(208)と第3のキャリア層(209)とを備え、 前記第1の壁領域(103)において、非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)上に折り重ねられている、剥離されている前記第2のキャリア層(206)は、非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)または非剥離領域の前記第1のキャリア層(205)および前記第3のキャリア層(209)よりも小さい層厚によって特徴付けられ、 前記第2の壁領域(104)が第2の層配列を備え、この第2の層配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて重なり合う層として、第1の壁層(201)、前記第1の壁層(201)から延設され折り重ねられている第2の壁層(202)、および、第3の壁層(203)を備え、 前記第2の壁領域(104)では、前記第2の壁層(202)が前記第3の壁層(203)に直接的に接続され、 前記第2の壁領域(104)において、前記第3のキャリア層(209)は、前記第2のキャリア層(206)または前記第1のキャリア層(205)またはこれらの両方よりも大きい層厚によって特徴付けられる、 容器前駆体(100)。 【請求項2】 前記第1の壁領域(103)が前記第2の壁領域(104)に隣接する、請求項1に記載の容器前駆体(100)。 【請求項3】 前記第1の壁領域(103)は、前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第1の幅(106)によって特徴付けられ、 前記第1の幅(106)が1〜6mmの範囲内である、 請求項1または請求項2に記載の容器前駆体(100)。 【請求項4】 前記第1の壁領域(103)は、前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第1の幅(106)によって特徴付けられ、 前記第1の幅(106)が、少なくとも2mm以上である、 請求項1または請求項2に記載の容器前駆体(100)。 【請求項5】 前記第2の壁領域(104)は、前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第2の幅(107)によって特徴付けられ、 前記第2の幅(107)が1〜10mmの範囲内である、 請求項1から4のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項6】 前記第1の壁領域(103)において、前記第2のキャリア層(206)の層厚は、前記第1のキャリア層(205)または前記第3のキャリア層(209)またはこれらの両方の層厚の0.05〜0.9倍である、請求項1から5のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項7】 前記第2の壁領域(104)において、前記第3のキャリア層(209)の層厚は、前記第1のキャリア層(205)または前記第2のキャリア層(206)またはこれらの両方の層厚の1.1〜20倍である、請求項1から6のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項8】 前記第2の壁領域(104)では、前記第1の壁層(201)が前記第2の壁層(202)に接続されない、請求項1から7のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項9】 前記第2の壁領域(104)では、 a)前記第2のキャリア層(206)と対向する前記第1のキャリア層(205)の表面、 および、 b)前記第1のキャリア層(205)と対向する前記第2のキャリア層(206)の表面、 が、カバー層を備えないとともに、カバー層に接続されない、請求項1から8のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項10】 前記第1の壁領域(103)において、前記第1のキャリア層(205)と対向する前記第2のキャリア層(206)の表面は、カバー層を備えないとともに、カバー層に接続されない、請求項1から9のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項11】 前記第1のキャリア層(201)、前記第2のキャリア層(206)、および、前記第3のキャリア層(209)、または、これらのうちの少なくとも2つの組み合わせから成るグループから選択される1つは、ボール紙、板紙、および、紙、または、これらのうちの少なくとも2つの組み合わせから成るグループから選択される1つを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項12】 前記壁(102)が第3の壁領域(301)を備え、 前記第3の壁領域(301)が第3の壁配列を備え、この第3の壁配列は、前記内部領域(101)から外側へ向けて重なり合う層として、前記第1の壁層(201)および前記第3の壁層(203)を備え、 前記第3の壁領域(301)では、前記第1の壁層(201)が前記第3の壁層(203)に接続され、 前記第3の壁領域(301)が前記第1の壁領域(103)に隣接する、 請求項1から11のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)。 【請求項13】 前記第3の壁領域(301)が前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第3の幅(302)によって特徴付けられ、 前記第3の幅(302)が1〜12mmの範囲内である、 請求項12に記載の容器前駆体(100)。 【請求項14】 a)シート状複合体を準備するプロセスステップであって、前記シート状複合体が、 i)複合層配列(501)であって、 A)複合キャリア層(505)と、 B)アルミニウムを含有する複合バリア層(504)と、 を備える複合層配列(501)と、 ii)縁部領域(503)と、 iii)前記縁部領域(503)に隣接する内側領域(502)と、 を備える、プロセスステップと、 b)前記縁部領域(503)で前記複合キャリア層(505)の層厚を減少させるプロセスステップと、 c)第1の縁部折り曲げ領域(507)と更なる縁部折り曲げ領域(508)とを得るために前記縁部領域(503)に折り曲げ部(506)を形成するプロセスステップであって、 前記第1の縁部折り曲げ領域(507)および前記更なる縁部折り曲げ領域(508)が前記折り曲げ部(506)に沿って互いに隣接する、プロセスステップと、 d)前記第1の縁部折り曲げ領域(507)を前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の第1の部分(509)と接触させて、 前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の更なる部分(510)を前記内側領域(502)に重ならせて、かつ前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)を前記内側領域(502)に接続する、プロセスステップと、 e)前記内側領域(502)で更なる折り曲げ部(514)を形成して、第1の複合折り曲げ領域(511)および更なる複合折り曲げ領域(512)を得るプロセスステップであって、前記更なる複合折り曲げ領域(512)が前記縁部領域(503)を備える、プロセスステップと、 f)前記第1の複合折り曲げ領域(511)を、前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記第1の部分(509)および前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)に直接的に接続するプロセスステップと、 を備える、 プロセス(500)。 【請求項15】 前記プロセスステップe)では、前記更なる複合折り曲げ領域(512)が前記内側領域(502)の一部分(513)を備え、 前記プロセスステップf)では、前記第1の複合折り曲げ領域(511)が前記内側領域(502)の前記一部分(513)に更に接続される、 請求項14に記載のプロセス(500)。 【請求項16】 前記プロセスステップb)では、前記減少が前記複合キャリア層(505)を剥離することによって行われる、請求項14または15に記載のプロセス(500)。 【請求項17】 前記剥離が回転工具によって行われる、請求項16に記載のプロセス(500)。 【請求項18】 前記プロセスステップa)では、前記シート状複合体が折り目(515)を備え、 前記プロセスステップe)では、前記更なる折り曲げ部(514)の形成が前記折り目(515)に沿う折り曲げを合む、 請求項14から17のいずれか一項に記載のプロセス(500)。 【請求項19】 前記プロセスステップf)では、容器前駆体(100)が得られ、 前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)が、前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第1の幅(106)によって特徴付けられ、 前記第1の幅(106)が1〜6mmの範囲内である、 請求項14から18のいずれか一項に記載のプロセス(500)。 【請求項20】 前記プロセスステップf)では、容器前駆体(100)が得られ、 前記更なる縁部折り曲げ領域(508)の前記更なる部分(510)が、前記容器前駆体(100)の外周(105)に沿う第1の幅(106)によって特徴付けられ、 前記第1の幅(106)が、少なくとも2mm以上である、 請求項14から18のいずれか一項に記載のプロセス(500)。 【請求項21】 請求項14から20のいずれか一項に記載のプロセス(500)により得られる容器前駆体(100)。 【請求項22】 請求項1から13または21のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)を折り曲げるとともに折り曲げられた前駆体容器前駆体(100)を閉鎖工具を用いて閉じることによって得られる密閉容器(600)。 【請求項23】 前記壁(102)が全ての側で前記内部領域(101)を取り囲み、 前記壁(102)が一体のシート状複合体から成る、 請求項22に記載の密閉容器(600)。 【請求項24】 前記第1の壁領域(103)および前記第2の壁領域(104)において、前記第1の壁層(201)には、前記内部領域(101)に面する側で、第4の壁層(401)が重ね合わされ、 前記第4の壁層(401)は、前記内部領域(101)から外側へ向けて第4の壁層配列として、第4のキャリア層(402)と、アルミニウムを含有する第4のバリア層(403)とを備え、 前記第1の壁領域(103)において、前記第2のキャリア層(206)は、前記第4のキャリア層(402)よりも小さい層厚によって特徴付けられ、 前記第2の壁領域(104)において、前記第4のキャリア層(402)は、前記第2のキャリア層(206)、または、第1のキャリア層(205)、または、これらの両方よりも大きい層厚によって特徴付けられる、 請求項22または23のいずれか一項に記載の密閉容器(600)。 【請求項25】 更に前記第3の壁領域(301)では、前記第4の壁層(401)が前記内部領域(101)に面する側で前記第1の壁層(201)に重なり合う、請求項24に記載の密閉容器(600)。 【請求項26】 a)請求項1から13または21のいずれか一項に記載の前記容器前駆体(100)を準備するプロセスステップと、 b)前記容器前駆体(100)を折り曲げるプロセスステップと、 c)閉鎖工具を用いて前記容器前駆体(100)を閉じて、密閉容器を得るプロセスステップと、 を備えるプロセス(700)。 【請求項27】 前記プロセスステップc)の前に食料品が前記容器前駆体(100)内へ導入される、請求項26に記載のプロセス(700)。 【請求項28】 前記プロセスステップc)の後に前記密閉容器がオートクレーブ滅菌される、請求項26または27に記載のプロセス(700)。 【請求項29】 前記プロセスステップc)の前に前記容器前駆体(100)が滅菌される、請求項26から28のいずれか一項に記載のプロセス(700)。 【請求項30】 請求項26から29のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることができる密閉容器。 【請求項31】 密閉容器を製造するための請求項1から13または21のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)の使用。 【請求項32】 食料品を充填するための請求項1から13または21のいずれか一項に記載の容器前駆体(100)の使用。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-01-25 |
出願番号 | P2017-523353 |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(B65D)
P 1 651・ 121- YAA (B65D) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
石井 孝明 |
特許庁審判官 |
矢澤 周一郎 井上 茂夫 |
登録日 | 2020-06-24 |
登録番号 | 6722664 |
権利者 | エスアイジー テクノロジー アーゲー |
発明の名称 | それ自体の上に部分的に折り返される剥離縁部領域を有する積層体から特に食品容器を製造するための容器前駆体 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |