• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E03C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E03C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E03C
管理番号 1384246
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-11 
確定日 2022-03-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第6868149号発明「排水集合継手」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6868149号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6868149号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成30年8月31日に出願した2018−163593号の一部を、令和2年11月17日に新たな特許出願としたものであって、令和3年4月13日に特許の設定登録がされ、令和3年5月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1ないし6に係る特許に対し、令和3年11月11日に特許異議申立人鶴谷裕二(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6868149号の請求項1ないし6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、全体の発明を「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
上階の縦管と接続される上部接続管と、下階の縦管と接続される下部接続管と、を備え、床スラブの貫通孔に設置される排水集合継手であって、
前記上部接続管の下端部および前記下部接続管の上端部は、前記床スラブの貫通孔内に配置され、
前記床スラブの貫通孔内となる位置であって、前記下部接続管の外周に高さ30mm以上150mm以下の耐火シートが巻き付けられ、
前記上部接続管は、縦管に接続可能な縦管接続部と、横管を接続可能な複数の横管接続部を有し、かつ、透明材料または半透明材料で形成されており、
前記横管接続部には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えた横ブッシュが嵌合接着され、
前記縦管接続部には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えた縦ブッシュが嵌合接着され、
前記横ブッシュを透明材料または半透明材料から形成し、
前記下部接続管は、接続管部と、前記接続管部の下方に接続された下窄まり状の傾斜管部と、前記傾斜管部の下端部に接続され、下階の縦管が接続される下側管部と、を備え、
前記耐火シートは前記傾斜管部よりも上方の前記下部接続管の外周に巻き付けられていることを特徴とする排水集合継手。

【請求項2】
上階の縦管と接続される上部接続管と、下階の縦管と接続される下部接続管と、を備え、床スラブの貫通孔に設置される排水集合継手であって、
前記上部接続管の下端部および前記下部接続管の上端部は、前記床スラブの貫通孔内に配置され、
前記床スラブの貫通孔内となる位置であって、前記下部接続管の外周に高さ30mm以上150mm以下の耐火シートが巻き付けられ、
前記上部接続管は、縦管に接続可能な縦管接続部と、横管を接続可能な複数の横管接続部を有し、
前記横管接続部には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えた横ブッシュが嵌合接着され、
前記縦管接続部には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えた縦ブッシュが嵌合接着され、
前記横ブッシュを透明材料または半透明材料から形成し、
前記下部接続管は、接続管部と、前記接続管部の下方に接続された下窄まり状の傾斜管部と、前記傾斜管部の下端部に接続され、下階の縦管が接続される下側管部と、を備え、
前記耐火シートは前記傾斜管部よりも上方の前記下部接続管の外周に巻き付けられていることを特徴とする排水集合継手。

【請求項3】
上階の縦管と接続される上部接続管と、下階の縦管と接続される下部接続管と、を備え、床スラブの貫通孔に設置される排水集合継手であって、
前記上部接続管の下端部および前記下部接続管の上端部は、前記床スラブの貫通孔内に配置され、
前記床スラブの貫通孔内となる位置であって、前記下部接続管の外周に高さ30mm以上150mm以下の耐火シートが巻き付けられ、
前記上部接続管は、縦管に接続可能な縦管接続部と、横管を接続可能な複数の横管接続部を有し、かつ、透明材料または半透明材料で形成されており、
前記横管接続部には、横ブッシュが嵌合接着され、
前記縦管接続部には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えた縦ブッシュが嵌合接着され、
前記下部接続管は、接続管部と、前記接続管部の下方に接続された下窄まり状の傾斜管部と、前記傾斜管部の下端部に接続され、下階の縦管が接続される下側管部と、を備え、
前記耐火シートは前記傾斜管部よりも上方の前記下部接続管の外周に巻き付けられていることを特徴とする排水集合継手。

【請求項4】
前記上部接続管と前記下部接続管のうち、少なくとも前記上部接続管の外周に取り外し可能な遮音カバーを取り付けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排水集合継手。

【請求項5】
前記遮音カバーは、前記横管接続部を除く前記上部接続管の外周に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の排水集合継手。

【請求項6】
前記縦ブッシュを透明材料または半透明材料から形成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の排水集合継手。」

第3 特許異議申立理由の概要及び証拠
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立て理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各甲号証を提出している。
1 特許異議申立理由の概要
(1)分割要件違反を前提とする新規性及び進歩性第29条第1項第3号、第2項)
本件出願は、以下のアないしエのとおりであって、分割要件を充足していないから、本件出願の出願日は、原出願の出願日まで遡及しないところ、本件発明1ないし6は、原出願の公開公報である甲第1号証に記載された発明であり、また甲第1号証に記載された発明に基いて容易に想到することができたものであって、特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
ア 原出願において「上部接続管を透明材料または半透明材料から形成した」という技術事項は、課題を解決するために必須の構成であるところ、本件特許発明2及び本件特許発明2を引用する本件特許発明4ないし6は、上記技術事項を備えていないから、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「原出願当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内のものではない。
イ 原出願当初明細書には、中間管を備えておらず、上部接続管が下部接続管に直接接続されている集合継手は、記載も示唆もされていない。本件特許発明1ないし6は、中間管を備えておらず、上部接続管が下部接続管に直接接続されている集合継手を含むから、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものではない。
ウ 原出願当初明細書等には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えない横ブッシュは、記載も示唆もされていない。本件特許発明3及び本件特許発明3を引用する本件特許発明4ないし6は、内部にパッキンが配置される拡径部を備えない横ブッシュを備える集合継手を含むから、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものではない。
エ 原出願当初明細書等には、段落【0059】に記載の中間管50の外方に位置する上部接続管11の下端部9の外周と、中間管50の外方に位置する接続管部16の外周にかけて耐火層51を設けた態様以外の態様で耐火層(耐火シート)を設けることは、記載も示唆もされていない。本件特許発明1ないし6は、上記態様以外の態様で耐火層(耐火シート)が設けられた集合継手を含むから、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものではない。

(2)進歩性(特許法第29条第2項
本件特許発明1ないし6は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証ないし甲第4号証に記載された周知技術(以下「周知技術1」という。)、甲第5号証ないし甲第8号証から公然知られていた又は公然実施されたと認められ、また、甲第9号証ないし甲第10号証に記載された周知技術(以下「周知技術2」という。)、甲第11号証ないし甲第13号証に記載された周知技術(以下「周知技術3」という。)、甲第14号証ないし甲第17号証に記載された周知技術(以下「周知技術4」という。)、甲第18号証ないし甲第21号証に記載されている周知技術(以下「周知技術5」という。)及び甲第22号証ないし甲第24号証に記載された周知技術(以下「周知技術6」という。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

(3)サポート要件(特許法第36条第6項第1号
本件特許発明2,4〜6は、本件特許明細書等に記載の発明の課題を解決するための技術事項を備えていないから、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たしていない。

2 証拠
甲第1号証 :特開2020-33834号公報
甲第2号証 :特開2016-142003号公報
甲第3号証 :特開2017-179823号公報
甲第4号証 :特開2018-59270号公報
甲第5号証 :樹脂製単管式排水システム「ビニコア」のカタログ、 前澤化成工業株式会社、平成28年7月発行
甲第5号証の2:技術レポート[online]、2016年8月15日、株 式会社小島製作所[2021年10月23日検索]、 インターネット<URL:https:www.kojima-core.co.jp/ 20160815report.htm>
甲第6号証 :国土交通大臣認定書 認定番号PS060FL−08 21、国土交通大臣、平成27年10月19日
甲第7号証 :性能評定書 性能評定番号KK28−001号、一般 財団法人 日本消防設備安全センター、平成28年1 月25日
甲第8号証 :前澤化成工業株式会社 有価証券報告書 事業年度( 第67期)、前澤化成工業株式会社、2021年6月 22日
甲第9号証 :特開2017-14762号公報
甲第10号証 :特開2017-14769号公報
甲第11号証 :特開平9-152065号公報
甲第12号証 :特開2016-204837号公報
甲第13号証 :特開2007-56537号公報
甲第14号証 :特開2015-175187号公報
甲第15号証 :特開2014-58849号公報
甲第16号証 :特開2014-145182号公報
甲第17号証 :特開2008-223283号公報
甲第18号証 :特開2008-25106号公報
甲第19号証 :登録実用新案第3215054号公報
甲第20号証 :特開2004-190248号公報
甲第21号証 :特開2002-294781号公報
甲第22号証 :特開2008-63755号公報
甲第23号証 :特開2008-64153号公報
甲第24号証 :特開2011-208474号公報

第4 当審の判断
1 分割要件違反を前提とする新規性及び進歩性について
申立人は、本件発明が、甲第1号証を主引用例とした新規性及び進歩性が無いことの前提として、分割要件違反を主張しているので、以下検討する。
(1)原出願当初明細書等の記載
本件特許に係る原出願当初明細書等(甲第1号証参照)には、「排水集合継手」について、次の記載がある(下線は決定で付した。以下同じ。)。
ア「【0006】
上述の排水集合継手において、内部に旋回羽根を設けていると、タオルなどの想定外の雑物を排水管に流してしまった場合、継手詰まりによる排水障害を引き起こすおそれがあった。
従来、排水管に排水障害などの不具合を生じた場合、管内カメラなどの特別の機器を使用し、詰まり部分を特定する必要がある。
ところが、特許文献1と特許文献2に記載の構造では、上述の雑物を排水管に流した場合のように管内に異常を生じた場合、管内カメラを挿入して内部を観察するしか対策手段がなく、簡単に管内を確認することができなかった。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、管内に異常が生じた場合、大掛かりな装置や器具を用いることなく、簡単に管内の状態を確認することができる継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の形態を提案している。「1」本形態に係る継手は、上部接続管と、この上部接続管に接続された中間管と、この中間管に接続された下部接続管と、を備える集合継手であって、前記上部接続管と前記下部接続管のうち、少なくとも前記上部接続管を透明材料または半透明材料から形成したことを特徴とする。
【0009】
上部接続管と下部接続管のうち、少なくとも上部接続管を透明材料または半透明材料から形成することにより、少なくとも上部接続管の内部側を外部側から肉眼で視認することができる。このため、タオルなどの雑物が排水集合継手に流れ込んで排水詰まりを生じたとしても、詰まり部分を外側から確認することができ、排水詰まりに対する対策を容易に実施できる。上部接続管に加え、下部接続管も透明材料または半透明材料から形成するならば、排水集合継手の大部分を外側から視認することができるようになり、排水集合継手のどの部分に詰まりを生じても詰まり部分を容易に把握することができる。」

イ「【0046】
横管P3を接続する横管接続部14の先端部には、横ブッシュ31と、横パッキン32と、横リング33と、が設けられている。
横ブッシュ31の一端部が上部接続管11の横管接続部14に嵌合接着されるとともに、他端部に拡径部が形成されている。
【0047】
横パッキン32は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等の通常排水設備に使用されているゴム材料からなる。横パッキン32は、横ブッシュ31の拡径した他端部に嵌合され、横管P3の外周面に水密に密着する。
【0048】
横リング33は、横ブッシュ31の拡径部に外嵌され、一端に設けられたフランジ部33aによって、横パッキン32の縦リング23からの離脱を防止する。
また、縦ブッシュ21、縦リング23、及び横ブッシュ31、横リング33は、いずれもポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、非膨張性黒鉛を0.1〜1.0重量部の割合で含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形して得られる。
なお、縦ブッシュ21、縦リング23、及び横ブッシュ31、横リング33は上部接続管11と同じ透明あるいは半透明のポリ塩化ビニル系樹脂を用いて透明あるいは半透明としてもよい。この場合、縦管P1や横管P3が適切な位置まで挿入されているか確認することができる。
【0049】
なお、横パッキン32を設けず、横ブッシュ31の内面と横管P3の外面とを接着剤で接着しても良く、さらに縦ブッシュ21、縦リング23、及び横ブッシュ31、横リング33を透明にした場合、接着剤の塗布の有無を外部から確認することができる。」

ウ「【0068】
なお、以上説明した本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。」

エ 図面
(ア)図3




(イ)図4




(2)分割要件について
本件特許発明1〜6が、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであるかどうかについて、原出願当初明細書等との関係で、新たな技術的事項を導入したか否かの観点で検討する。
ア 本件特許発明2、4〜6は、原出願当初明細書等との関係において、新たな技術事項を導入するものか
上記(1)ア(段落【0006】)及びイ(段落【0048】)から、原出願当初明細書等には、「排水集合継手」において、「横ブッシュ」を「適切な位置まで挿入されているかを確認する」ことを課題としていること、そして、その解決手段が「横ブッシュ」を「透明あるいは半透明」とすることであることを認定できる。
本件特許発明2は、「横ブッシュ」を「透明あるいは半透明」とした構成を有していることから、上記課題解決手段を有していて、上記課題を解決することができるものである。
そうすると、本件特許発明2が備えないものとされた事項は、当該課題を解決するための手段ではないから、本件特許発明2は当該事項を備えないことによって新たな技術的事項を導入するものではない。
また、本件特許発明2を引用する本件特許発明4ないし6についても同様である。

イ 本件特許発明1、3〜6は、原出願当初明細書等との関係において、新たな技術事項を導入するものか
上記(1)ア(段落【0006】〜【0009】)から、原出願当初明細書等には、「排水集合継手」において、「上部接続管の内部側を外部側から肉眼で視認すること」を課題としていること、そして、その解決手段が「少なくとも上部接続管を透明材料または半透明材料から形成すること」であることを認定できる。
本件特許発明1及び3はいずれも、「上部接続管」を「透明材料または半透明材料」で「形成」した構成を有していることから、上記課題解決手段を有していて、上記課題を解決することができるものである。
そうすると、本件特許発明1及び3が備えないものとされた事項は、当該課題を解決するための手段ではないから、本件特許発明1及び3は当該事項を備えないことによって新たな技術的事項を導入するものではない。
また、本件特許発明1及び3を引用する本件特許発明4ないし6についても同様である。

ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、原出願において、「上部接続管を透明材料または半透明材料で形成した」という技術的事項は、課題を解決するための必須の構成であり、本件特許発明2、4〜6は、上記技術事項を備えないため、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものではない旨主張する。(申立書16頁24行〜18頁5行)
しかしながら、原出願当初明細書等における課題とその解決手段は、上記アで検討したとおりである。
また、出願の分割は2以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな出願とするものであるから、原出願当初明細書等に記載された複数の発明のうちのいずれかの発明の課題を解決する手段を備えれば足り、すべての発明の課題を解決する手段を備えることまでは要さないことは明らかである。
よって、本件特許発明2、4〜6は、申立人が指摘する上記技術事項を備えないため、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものではないとはいえない。

(イ)申立人は、原出願当初明細書等には、「中間管」を備えた集合継手のみが記載されている。本件特許発明1〜6は、「中間管」を備えておらず、上部接続管が下部接続管に直接接続されている集合継手も含むため、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものではない旨主張する。(申立書20頁下から1行〜21頁7行)
しかしながら、原出願当初明細書等において、「中間管」は、「排水集合継手」において「横管」が「適切な位置まで挿入されているか確認する」こととの課題を解決する手段、及び、「「上部接続管の内部側を外部側から肉眼で視認すること」との課題を解決する手段のいずれにも含まれるものではないから、必須のものではなく、任意付加的なものであると理解できる。
よって、本件特許発明1〜6は、申立人が指摘する「中間管」を備えないため、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものではないとはいえない。

(ウ)申立人は、原出願当初明細書等には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えた横ブッシュが記載されているに過ぎず、本件特許発明3〜6は、拡径部を備えない横ブッシュを備える集合継手を含むため、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものではない旨主張する。(申立書20頁8〜15行)
しかしながら、原出願当初明細書等において、「横ブッシュ」の「内部にパッキンが配置される拡径部」を備えることは、「排水集合継手」において「横管」が「適切な位置まで挿入されているか確認する」こととの課題を解決する手段、及び、「「上部接続管の内部側を外部側から肉眼で視認すること」との課題を解決する手段のいずれにも含まれるものではないから、必須のものではなく、任意付加的なものであると理解できる。
よって、本件特許発明3〜6は、申立人が指摘する「横ブッシュ」の「内部にパッキンが配置される拡径部」を備えていないからといって、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものではないとはいえない。

(エ)申立人は、原出願当初明細書等には、耐火層(耐火シート)につき、段落【0059】の態様が記載されているに過ぎず、本件特許発明1〜6は、上記態様以外の態様で耐火層(耐火シート)が設けられた集合継手を含むため、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものではない。(申立書20頁18〜27行)
しかしながら、原出願当初明細書等における耐火層(耐火シート)は、段落【0059】で示される態様の他、段落【0060】にも別の態様が示されている。また、段落【0068】(上記(1)ウ)には、「本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能」、「本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能」、「前記した実施形態を適宜組み合わせてもよい」と記載されている。これらのことから、原出願当初明細書等は、耐火層(耐火シート)について、段落【0059】の態様に限るものではなく、様々な態様のものを含むことを趣旨としているものと理解できる。
よって、本件特許発明1〜6は、申立人が指摘する耐火層(耐火シート)についての、段落【0059】の態様以外の態様を設けた集合継手を含むからといって、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものではないとはいえない。

(オ)よって、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし6は、原出願当初明細書等との関係において、新たな技術事項を導入するものではないから、原出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであり、本件特許に係る出願は、当該原出願の一部を適法に新たな特許出願したものといえ、分割要件に違反するとする事情は認められない。

(3)新規性及び進歩性について
上記(2)のとおり、本件特許に係る出願は、分割要件を満たしており、出願日の遡及が認められるから、本件特許に係る原出願の公開公報(甲第1号証)を本件特許発明1ないし6に対する公知文献として扱うことはできない。
したがって、本件特許発明1ないし6は、甲第1号証を主引用例として、新規性及び進歩性を否定することはできない。

進歩性について
(1)各甲号証の記載
ア 甲第2号証
(ア)甲第2号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0001】 この発明は、管継手構造、配管構造、建物に関するものである。」

b「【0014】
図1に示すように、集合住宅やオフィスビルなどの建物1には、その内部に排水路や給水路などの配管が設けられる。
【0015】
このような配管の構造(配管構造)は、各階層の床部を構成する床スラブ3を上下に貫く立管4,5と、各階層内部に延設された横枝管6と、これら立管4,5と横枝管6とを接続する管継手7とを備えている。
【0016】
この場合、立管4,5と横枝管6とは、樹脂製の排水用管部材とされる。管継手7は、上下方向へ延びて、その上端部と下端部とに、立管接続部11,12を有する筒状の継手本体13と、この継手本体13の側面に設けられた横枝管接続部14とを有するものとされる。
【0017】
そして、管継手7は、樹脂製のものとされる。この管継手7は、床スラブ3に形成されたスラブ貫通孔部15へ挿入配置される。
この樹脂製の管継手7が、少なくとも上記スラブ貫通孔部15内に位置する部分に熱膨張性の耐火材層16を有するものとされる。
【0018】
ここで、管継手7は、難燃性を備えた塩化ビニル樹脂などの樹脂組成物によって主に構成される。管継手7は、横枝管接続部14が床スラブ3の上面よりも上側に位置するようにスラブ貫通孔部15へ挿入配置される。そして、樹脂製の管継手7が挿入配置されたスラブ貫通孔部15は、モルタル17によって塞がれる。
【0019】
次に、図2を用いて、管継手7の具体的な構造(管継手構造)について説明する。管継手7の継手本体13は、上部本体部21と、本体中間部22と、下部本体部23との、3つの継手構成部品によって主に構成されている。
【0020】
このうち、上部本体部21は、主に、スラブ貫通孔部15よりも上側へ突出する部分であり、上側の立管接続部11と、単数または複数の横枝管接続部14と、を有している。上側の立管接続部11と、横枝管接続部14とは、それぞれ、立管4と横枝管6とを、熱伸縮の影響を吸収できるように接続するための伸縮用受口とされている。この伸縮用受口は、それぞれ、筒状の受口本体部25と、この受口本体部25の端部に挿入配置されたゴム製のシールパッキン26と、受口本体部25の端部に外嵌されてシールパッキン26を保持するリングキャップ部27と、を有するものとされる。この伸縮用受口は、上部本体部21の上端部および側面に形成された取付用開口部28に対し、それぞれ装着した状態で接着固定される。
【0021】
本体中間部22は、主に、スラブ貫通孔部15へ挿入配置される部分である。この本体中間部22は、円筒形状を有するものとされて、上部本体部21の下端に形成された下部接続口部31と、下部本体部23の上端に形成された上部接続口部32との間に差し込んで接着固定されるようになっている。上記した熱膨張性の耐火材層16は、この本体中間部22に形成される。そのために、本体中間部22は、熱膨張性の耐火材層16によって主に構成される。熱膨張性の耐火材層16には、熱膨張性黒鉛を含有したポリ塩化ビニル系樹脂組成物などが使用される。なお、本体中間部22は、例えば、熱膨張性の耐火材層16の内周と外周とを、熱膨張性黒鉛非含有のポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる被覆層で被覆した3層構造のものなどとすることができる。
【0022】
下部本体部23は、主に、スラブ貫通孔部15よりも下側へ突出する部分であり、下端部に下側の立管接続部12を有している。この場合、下部本体部23は、下細り形状の筒体とされている。下側の立管接続部12は、立管5の上端部を挿入して接着固定するようにした固定受口とされている。
【0023】
更に、上部本体部21の内部には、上側の立管4や横枝管6からの排水を受ける第一の旋回羽根35が設けられている。また、本体中間部22の内部に対し、必要に応じて、第二の旋回羽根36を設けるようにしても良い。更に、下部本体部23の内部には、第三の旋回羽根37が設けられている。これらの旋回羽根35〜37は、主に、排水の合流や方向変更や減勢(流速低減)などを行うためのものであり、騒音の発生源となり易いものである。なお、管継手7の構成は、上記に限るものではない。
【0024】
そして、以上のような基本的または全体的な構成に対し、この実施例は、以下のような構成を備えている。
【0025】
(1)図3に示すように、上記樹脂製の管継手7における上記熱膨張性の耐火材層16の外周部を、遮音性および防振性を有する遮音防振シート41で覆うようにする。この際、図4の部分拡大図に示すように、遮音防振シート41の上端部がスラブ貫通孔部15の上端部(または床スラブ3の上面)よりも上側に突出されるようにする。
そして、この遮音防振シート41が、図5に示すように、内側に無機質繊維層42を有し、外側に改質アスファルト層43を有する多層構造のものとされる。
【0026】
ここで、遮音防振シート41は、主に、本体中間部22を覆うものとされる。この場合には、本体中間部22と、下部本体部23との両方を覆うようにしている。これにより、遮音防振シート41の下端部は、スラブ貫通孔部15の下端部よりも下側に突出されることになる。遮音防振シート41は、少なくとも、無機質繊維層42による内側表層、および、改質アスファルト層43による外側表層を有するものとされる。無機質繊維層42と改質アスファルト層43との間には、両者の接着性を高めるためのポリエステル系の不織布45(接着層)などを備えるようにしても良い。また、無機質繊維層42および改質アスファルト層43の表面に対し、これらを保護すると共に見栄えを向上ためのポリエステル系の不織布45などを備えるようにしても良い。遮音防振シート41は、テープ状部材44を用いて管継手7などに貼付けられる。
【0027】
(2)図3に示すように、上記樹脂製の管継手7の、上記スラブ貫通孔部15よりも上側に位置する部分(上部本体部21)を遮音シート46で覆うようにする。そして、この遮音シート46の下端部が上記スラブ貫通孔部15の内部に挿入されるようにする。
なお、上部本体部21については、上記と同じ遮音防振シート41で覆うようにしても良い。この場合には、遮音シート46は、図6に示すような、厚さ1.2mm程度の軟質塩化ビニル樹脂などによる単層構造のものとされている。遮音シート46の内側表層には、ポリエステル系の不織布45などを備えるようにしても良い。遮音シート46は、テープ状部材52を用いて管継手7や遮音防振シート41などに貼付けられる。」

c「【0042】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0043】
(作用効果1)
樹脂製の管継手7を、床スラブ3に形成されたスラブ貫通孔部15へ挿入配置する。そして、この樹脂製の管継手7に対して樹脂製の排水用管部材(立管4,5および横枝管6など)を接続する。これにより、床スラブ3を貫通して複数の階層間に延びる排水配管構造を構築することができる。なお、上記した排水配管構造は、例えば、下側から組み立てて行くようにする。 【0044】
そして、上記した樹脂製の管継手7が、少なくともスラブ貫通孔部15内に位置する部分に熱膨張性の耐火材層16を有するものとされた。これにより、火災発生時に、熱膨張性の耐火材層16が膨張してスラブ貫通孔部15を塞ぐ(遮蔽する)ことで、炎を食い止めて異なる階層への延焼を防止することができる。
【0045】
一方、上記した排水配管構造では、内部を流れる排水によって騒音や振動が発生する。そして、この騒音や振動が、居室へ伝わると、居住性が低下する原因となる。このような騒音や振動は、排水の合流や方向変更や減勢(流速低減)などが行われる管継手7の内部で最も生じ易い。しかも、管継手7は、床スラブ3に形成されたスラブ貫通孔部15内に設置されるため、管継手7で発生した騒音や振動は、床スラブ3を介して直接的に居室へ伝わり易い。
【0046】
そこで、樹脂製の管継手7における熱膨張性の耐火材層16の外周部を、遮音性および防振性を有する遮音防振シート41で覆うようにした。しかも、遮音防振シート41の上端部がスラブ貫通孔部15の上端部よりも上側に突出されるようにした。これにより、遮音防振シート41の介在によって管継手7が床スラブ3と直接接触されないようになるので、管継手7で発生した騒音や振動が床スラブ3を介して居室へ伝わるのを、高い遮音防振性を有する遮音防振シート41で妨げて、騒音や振動を低減することができる。」

d 図2




上記図2から、以下の点を看取できる。
・受口本体部25は、内部にシールパッキン26を配置する拡径部を備えている点。
・上部本体部21の下端に形成された下部接続口部31が、床スラブ3の貫通孔内に配置されている点。

(イ)甲2発明
上記(ア)によれば、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲2発明)
「排水用管部材とされる立管4,5と横枝管6とを接続する管継手7であって、
管継手7は、上下方向へ延びて、その上端部と下端部とに、立管接続部11,12を有する筒状の継手本体13と、この継手本体13の側面に設けられた横枝管接続部14とを有し、
継手本体13は、上部本体部21と、本体中間部22と、下部本体部23との、3つの継手構成部品によって主に構成されており、
上部本体部21は、主に、スラブ貫通孔部15よりも上側へ突出する部分であり、上側の立管接続部11と、複数の横枝管接続部14と、を有し、上側の立管接続部11と、横枝管接続部14とは、それぞれ、立管4と横枝管6とを、熱伸縮の影響を吸収できるように接続するための伸縮用受口とされており、この伸縮用受口は、それぞれ、筒状の受口本体部25と、この受口本体部25の端部に挿入配置されたゴム製のシールパッキン26と、受口本体部25の端部に外嵌されてシールパッキン26を保持するリングキャップ部27とを有し、上部本体部21の上端部および側面に形成された取付用開口部28に対し、それぞれ装着した状態で接着固定され、前記受口本体部25は、内部にシールパッキン26を配置する拡径部を備え、上部本体部21の下端に形成された下部接続口部31が、床スラブ3の貫通孔内に配置されており、
本体中間部22は、主に、スラブ貫通孔部15へ挿入配置される部分であり、円筒形状を有するものとされて、上部本体部21の下端に形成された下部接続口部31と、下部本体部23の上端に形成された上部接続口部32との間に差し込んで接着固定されるようになっていて、熱膨張性の耐火材層16によって主に構成されており、
下部本体部23は、主に、スラブ貫通孔部15よりも下側へ突出する部分であり、下端部に下側の立管接続部12を有し、下細り形状の筒体とされ、下側の立管接続部12は、立管5の上端部を挿入して接着固定するようにした固定受口とされており、
管継手7における上記熱膨張性の耐火材層16の外周部を、遮音性および防振性を有する遮音防振シート41で覆うようにしており、
火災発生時に、熱膨張性の耐火材層16が膨張してスラブ貫通孔部15を塞ぐことで、炎を食い止めて異なる階層への延焼を防止することができる、
管継手7。」

イ 甲第3号証
(ア)甲第3号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0001】
この発明は、建物の排水システムに関するものである。 」

b「【0022】
(1)図3、図4に示すように、上記上部排水継手8は、上下方向へ延びて縦排水管5に接続可能な筒状の上部継手本体21の側面に対し、上部横枝管6を接続可能な上部横枝管接続口部22を複数有すると共に、上部継手本体21の内部に排水に対して旋回流24を発生可能な旋回羽根25を有するものとされる。
そして、図5に示すように、上記下部排水継手9は、上下方向へ延びて縦排水管5に接続可能な筒状の下部継手本体27の側面に対し、下部横枝管7を接続可能な下部横枝管接続口部28を有するものとされる。
そして、少なくとも、上記上部横枝管接続口部22、または、上記下部横枝管接続口部28のいずれか一方が閉塞されるようにしている。
【0023】
ここで、上部排水継手8は、例えば、集合管継手26とされる。この集合管継手26は、難燃性を備えた塩化ビニル樹脂などの樹脂組成物によって主に構成される。
【0024】
この上部排水継手8(集合管継手26)の上部継手本体21は、図3に示すように、主に、上部管31と、中間部管32と、下部管33との、3つの管部材によって構成されている。上部管31と中間部管32と下部管33は、受口と差口とを嵌合することによって接続される構造を適宜備えている。但し、上部継手本体21の構成はこれに限るものではなく、例えば、上部管31と中間部管32との間に、上部管31のものとほぼ同様の上部横枝管接続口部22などを単数または複数有する増設用の管部材を単段または多段に介在させるようにして、口数を増やすようにしても良い。
【0025】
このうち、上記した上部管31は、建物1の階層間隔壁となる床スラブ3よりも上階側に設置される縦排水管5や上部横枝管6を接続する機能を有するものである。上部管31の上端部には、上記した縦排水管接続口部34が設けられている。この縦排水管接続口部34は、上階側の縦排水管5を挿入接続可能な受口部であり、縦排水管接続口部34には、縦排水管5の熱伸縮の影響を吸収できるようにした伸縮継手部材35が取付けられている。
【0026】
また、上部管31の側面には、上記した上部横枝管接続口部22が、横方向へ向けて突設されている。この上部横枝管接続口部22は、上部横枝管6を挿入接続可能な受口部であり、上部横枝管接続口部22には、上部横枝管6の熱伸縮の影響を吸収できるように伸縮継手部材35が取付けられる。また、これらのこの伸縮継手部材35は、その内部に、リング状の本体と、この本体の内周部分から内方へ向けて傾斜するように一体に突設されたリップ部36aとを有するシール部材36を有している。そして、上記したように、この複数の上部横枝管接続口部22のうち1つが閉塞部材64により閉塞されており、浴槽15がユニットバス16に改修された際、閉塞部材64を取り外した横枝管接続口部22とユニットバス16とが上部横枝管6により接続される。そのため、上部排水継手8の上部横枝管接続口部22に用いられる閉塞部材64としては、取り外し可能な構造のものであることが好ましい。なお、閉塞部材64としては、外部の空気を取り込むことが可能とされている通気弁(逆止弁)を採用しても良い。
・・・
【0028】
次に、上記した中間部管32は、図7に示すように、建物1の床スラブ3に貫通配置されるものである(スラブ貫通部材)。中間部管32は、径寸法がほぼ一定の筒状のものとされている。
【0029】
そして、上記した下部管33は、建物1の床スラブ3よりも下階側に設置される縦排水管5や下部排水継手9を接続する縦排水管接続口部38を有するものである。下部管33は、ほぼ全体が下方へ向けて縮径するテーパ形状を有するものとされている。
上記した縦排水管接続口部38は、この場合、下部排水継手9を直接挿入接続可能な差口部となっており、この下部管33の下端部に一体に形成されている。
・・・
【0033】
このような構成を有する集合管継手26は、集合住宅やオフィスビルなどの建物1に対して設置されることにより、単管式排水システムを構成するのに用いられる。この場合、建物1の上下の階層間を仕切る床スラブ3に形成した貫通孔12に、上方から上部継手本体21を挿入して、上部継手本体21の中間部管32をモルタル13で固定することなどによって集合管継手26が設置される。そのために、中間部管32は、床スラブ3の厚みよりも長いものなどとされる。
【0034】
そして、床スラブ3を防火区画壁として用いるために、中間部管32は、耐火熱膨張性樹脂パイプなどの樹脂組成物によって構成されている。この耐火熱膨張性樹脂パイプは、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂基材に対して、熱膨張性黒鉛を含有させた耐火熱膨張性樹脂によって主に構成されている。そして、火災発生時にこの熱膨張性黒鉛が熱膨張することにより、集合管継手26や貫通孔12などを閉塞して床スラブ3に防火区画壁としての機能を保持させるようになっている。」

c 図7




上記図7から、上部継手本体21のうちの下部管33の上端部が、スラブ3に形成した貫通孔12内に配置されている点が看取できる。

ウ 甲第4号証
(ア)甲第4号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0001】 本発明は、継手用の遮音カバーおよび該遮音カバーを備えた継手に関する。」

b「【0027】
図2に示すように、集合継手1は、上下方向に沿って延びる本管2と本管2の側面2rに連結された三本の分岐管3とを有している。三本の分岐管3のうち、二本の分岐管3A,3Cのそれぞれの軸線J3A,J3Cは左右方向(すなわち、横方向であって本管2の周方向(D1方向)に沿う方向)に沿って同一線上に配置され、互いに本管2の軸線J2に直交している。また、三本の分岐管3のうち、もう一本の分岐管3Bの軸線J3Bは、軸線J2,J3A,J3Cのそれぞれに直交している。なお、図2には、上述のように本管2の側面2rに三本の分岐管3が連結された集合継手1を例示しているが、後述するように集合継手1は二本以上の分岐管3を有している。
以下では、分岐管3A,3B,3Cについて、特に区別する必要がない場合は、分岐管3と記載し、関連する構成要素についてもこの記載を援用する。
【0028】
集合継手1の本管2の下部には筒状の短管5が内嵌され、短管5の下部にはテーパー管6が外嵌されている。すなわち、集合継手1と短管5とテーパー管6によって、継手構造8が構成されている。
【0029】
図1に示すように、継手構造8は、マンション等の多層階からなる建築物(図示略)の排水システムに用いられているものである。具体的には、継手構造8は、各階の衛生機器等から排出される排水を流下させるための横枝管7と、パイプシャフト内の排水立管路を構成し、横枝管7を流下した排水を排水システムの最下部へとさらに流下させる立管9とを接続するために、用いられている。
【0030】
集合継手1の本管2の上部には立管9(例えば、立管9A)の下部が嵌合し、テーパー管6の下部には別の立管9(例えば、立管9B)の上部が嵌合している。テーパー管6は、下方向に進むに従って縮径するように形成されている。テーパー管6の上端部の内径および外径は、短管5の外径などを勘案して適当に設定されている。また、テーパー管6の下端部の内径および外径は、立管9の外径などを勘案して適当に設定されている。
集合継手1の分岐管3A,3B,3Cのそれぞれには、横枝管7A,7B,7Cの下流側の端部が嵌合している。
【0031】
継手構造8は、上下方向(すなわち、図2に示すように本管2の軸線J2に沿うD2方向)で隣り合う各階の間に介在するコンクリート製の床スラブSに形成された貫通孔Hに挿通されている。貫通孔Hの側壁と継手構造8との間は、モルタルMが充填されている。特に、分岐管3の下端より下方の集合継手1及び遮音カバー10と、短管5およびテーパー管6の上部は、モルタルM内に埋設された状態で配置されている。」

c 図1




上記図1から、テーパー管6の上端部が、床スラブSに形成された貫通孔H内に配置されている点が看取できる。

エ 甲第5号証、甲第5号証の2、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証
申立人が、樹脂製単管式排水システム「ビニコア」(以下、「ビニコア」という。)に係る発明の内容を明らかにするための証拠として提出した甲第5号証は、「ビニコア」の「カタログ」であり、甲第5号証の2は、「ビニコア」の「カタログ」を発行したことを知らせる技術レポートである。また、甲第5号証に記載の「認定番号」及び「性能評定番号」からみて、甲第6号証及び甲第7号証は、それぞれ、国土交通大臣認定取得品である「ビニコア」に係る「認定証」、及び(財)日本消防設備安全センター性能評定取得品である「ビニコア」に係る「性能評定書」である。さらに、甲第8号証は、前澤化成工業株式会社 有価証券報告書事業年度(第67期)である。
甲第5号証、甲第5号証の2、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証からみて、「ビニコア」は、本件原出願前に公然実施されたと認められるところ、それぞれ次の事項が記載されている。
(ア)甲第5号証に記載された事項
a 「POINT6 国土交通大臣認定・消防評定品」の欄
「認定番号:PS060-FL0821」、「性能評定番号:KK28-001号」、「安心と信頼の国土交通大臣認定品、日本消防設備安全センター評定品です。」及び「熱膨張耐火材により火災時に管内を閉塞して上階への煙・炎・熱の侵入を防ぎます。」(6頁)

(イ)甲第5号証の2に記載された事項
a「2016.8.15号」(1枚目上段)

b「(株)小島製作所と前澤化成工業(株)がアライアンスを組んで、上市いたしました樹脂製排水用特殊継手:「ビニコア」の新版カタログが発行されました。」(1枚目中段冒頭)

(ウ)甲第6号証に記載された事項
a「1.認定番号 PS060FL-0821
・・・
3.認定をした構造方法等の内容
別添の通り」(1枚目の「記」)

b 「表1 寸法等の仕様」における「貫通する床の構造等」の「仕様」の記載
「ALCパネル又は鉄筋コンクリート造厚さ100mm以上」(別添1頁)

c 「表2 主構成材料の仕様」における「管継手用被覆材○1(○の中に1を意味する。以下同様)」「熱膨張材」の「仕様」の記載
「材料 グラファイト系熱膨張材」、「寸法 幅60mm以上、厚さ4(±1)mm以上(長さは使用箇所の周長相当寸法)」、「使用箇所 上端から70mmの位置に埋め込み(内層材と中間層材の間)」(別添2頁)

(エ)甲第7号証に記載された事項
a 「性能評定番号 KK28-001号」(1枚目)
b 「I 評定概要
1 構造及び材料
(1)構造
耐火カバー付きビニコア継手は、熱膨張材が内蔵された被覆材を排水管継手の胴体部に取り付けたものである。その構造を図1に示す。」(2頁)

c 図1 断面図


」(2頁)
上記図1から、熱膨張材が、鉄筋コンクリート又は軽量気泡コンクリートの貫通孔内に配置されている点が看取できる。

d 図2 管継手用被覆材○1(耐火カバー)の構造図


」(4頁)
上記図2から、管継手用被覆材○1に内蔵される熱膨張材の幅が60mm以上であることが看取できる。

e 図3 管継手用被覆材○1(耐火カバー)の断面図


」(4頁)
上記図3から、管継手用被覆材○1が、内層材、中間層材、外層材、接合用テープからなり、熱膨張材が、内層材と中間層材の間において内蔵されている点が看取できる。

(オ)甲第8号証に記載された事項
a 「2016年6月 樹脂製単管式排水システム「ビニコア」を開発し発売を開始」(3頁)

(カ)甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証に記載の「番号」が共通するから、上記各号証は、同じ「ビニコア」に係る証拠であるといえる。また、上記各号証の日付並びに上記(イ)a及び(オ)aの記載から、「ビニコア」は、原出願前に公然実施されたと認められる。

(キ)甲第5号証、甲第5号証の2、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証から認定される発明
公然実施発明)
「熱膨張材が内蔵された管継手用被覆材を胴体部に取り付けた排水管継手であって、管継手用被覆材は、内層材、中間層材、外層材、接合用テープからなり、熱膨張材が、内層材と中間層材の間において内蔵されていて、熱膨張材の幅が60mm以上であって、上端から70mmの位置にあり、貫通する床の構造等が、ALCパネル又は鉄筋コンクリート造で厚さ100mm以上であって、前記熱膨張材が貫通孔内に配置されている、
排水管継手。」

オ 甲第9号証
(ア)甲第9号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第9号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0001】 本発明は、排水管継手に関する。より詳しくは、建物の床スラブを貫通して配管される排水管継手に関する。」

b「【0024】
図1に示されるように、継手本体21の胴部23は、横枝管受け口29a、29b、29cが設けられた上胴部31と、その下方に連続して上から順に配置された大径直管部33と、テーパ部35と、小径直管部37とからなる。大径直管部33と小径直管部37とはそれぞれ直管状であり、大径直管部33は小径直管部37に比べて内径が大きく、下方に向かって内径が小さくなるテーパ状のテーパ部35を介して大径直管部33と小径直管部37とが連続している。
【0025】
図2に示されるように、小径直管部37は、下部接続部27を構成する。下部接続部27は、小径直管部37に排水立て管85の上端部が下方から差し込まれた状態で接続される。下部接続部27は、小径直管部37の奥部に、排水立て管85の通過を許容しない下部挿入規制部27sを備える。下部挿入規制部27sは、小径直管部37の径方向内方且つ下方に張り出して、テーパ部35の延長線上に形成されている。下階Bに立設された排水立て管85に対して排水管継手11を相対変位させ、排水立て管85の上端部を小径直管部37に挿入し、排水立て管85の上端面が下部挿入規制部27sに当接することで、排水立て管85に排水管継手11が積み上げられて、排水立て管85と排水管継手11とが接続される。
【0026】
図2に示されるように、継手本体21の胴部23の内面には、複数の逆流防止壁39aが設けられている。逆流防止壁39aは、図3に示される各横枝管受け口29a、29b、29cの両側方に位置するように、図2には示されないものも含めて全部で4箇所設けられており、隣接する横枝管受け口29aと横枝管受け口29bの間(図示外)及び横枝管受け口29bと横枝管受け口29cの間(図示外)と、横枝管受け口29aの横枝管受け口29bとは反対側の側方(図2参照)及び横枝管受け口29cの横枝管受け口29bとは反対側の側方(図2参照)に配置されている。各逆流防止壁39aは、横枝管受け口29a、29b、29cの中心線よりも上方であり横枝管受け口29a、29b、29cの上端よりも下方位置から横枝管受け口29a、29b、29cの下端よりも下方位置まで、上下方向に延びる畝状に形成されている。逆流防止壁39aにより、横枝管受け口29a、29b、29cから流入する横枝管排水が別の横枝管受け口29a、29b、29cに接続された排水横枝管(図示省略)に流れ込むのが防止される。
【0027】
また、継手本体21は、胴部23の内面に、排水の流れを制御する第1ガイド34aと第2ガイド34bとを備える。第1ガイド34aと第2ガイド34bは、横枝管受け口29a、29b、29cが形成されている位置よりも下側に配置されており、大径直管部33とテーパ部35とに跨って設けられている。第1ガイド34aと第2ガイド34bは、それぞれ扁平半円形をした羽根状であり、胴部23の相対向する内面から径方向内方に張り出して、周方向に傾斜して設けられている。この第1ガイド34aと第2ガイド34bに流下する排水が当たることにより、排水を減速させるとともに旋回させて流下させることができる。
【0028】
継手本体21は、硬質塩化ビニル等の熱可塑性樹脂からなる。継手本体21は、胴部23を上下に分割する上側パーツ41及び下側パーツ43とを主体として構成されている。
【0029】
下側パーツ43は、胴部23の下側の部分を構成し、大径直管部33、テーパ部35及び小径直管部37を形成し、その上端は直管状となっている。上側パーツ41は、胴部23の上側の部分を構成する上胴部形成部位41aと、下側パーツ43に上方から挿入されて下側パーツ43に内嵌される内嵌部位41bとを備える。上胴部形成部位41aは、上部接続部25及び横枝管受け口29a、29b、29cを備えた上胴部41を形成する。上胴部形成部位41aの下端は直管状(円筒状)となって内嵌部位41bが延設されている。内嵌部位41bは、上胴部形成部位41aに接続する筒状部47と、第1ガイド34aと、第2ガイド34bと、筒状部47に第1ガイド34aを支持する第1ガイド支持部47aと、筒状部47に第2ガイド34bを支持する第2ガイド支持部47bとを有する。第1ガイド支持部47aと第2ガイド支持部47bは、相対向して筒状部47から下側パーツ43の内周面に沿って下方へ延びて形成されており、その下端に、それぞれ第1ガイド34a又は第2ガイド34bが形成されている。第1ガイド34aと、第2ガイド34bのそれぞれには、下面に複数の補強リブ34pが一体形成されている。また、上側パーツ41は、外周面にストッパ部41tを備える。ストッパ部41tは、上胴部形成部位41aと内嵌部位41bとの接続位置において、上側パーツ41の径方向外方へ突起する鍔状に形成されている。上側パーツ41の内嵌部位41bを下側パーツ43の上端側から挿入すると、上側パーツ41のストッパ部41tが下側パーツ43の上端面へ当たることで、挿入が止められて上側パーツ41と下側パーツ43とが相対的に位置決めされて継手本体21が組立てられる。
【0030】
図1等に示されるように、第1の被覆材51は、継手本体21の胴部23のうち、床スラブCSを貫通する部分の外面の全周を被覆している。排水設備H1では、排水管継手11は、横枝管受け口29a、29b、29cが床スラブCS上のできるだけ低い位置に配置されるように配管され、横枝管受け口29a、29b、29cが形成された位置の直下位置から下側が床スラブCSに貫通し、下部接続部27が床スラブCSの下面から突出する。すなわち、大径直管部33とテーパ部35とが床スラブCSを貫通してモルタルMで埋め戻されることとなる。この排水管継手11では、第1の被覆材51は、継手本体21の横枝管受け口29a、29b、29cが形成された位置より下側の略全体を被覆し、大径直管部33及びテーパ部35の全体と、小径直管部37の略全体を被覆する。
【0031】
第1の被覆材51は、図4等に示されるように、継手本体21の外面に接する内側からこの順で配置された、第1の吸音層53と、第2の吸音層55と、表皮層57とを備える。また、第1の被覆材51は、床スラブCS(図2)に埋め戻される部位における軸方向の少なくとも一箇所において、周に沿って設けられた熱膨張材61も備える。」

c「【0035】
熱膨張材61は、火災の熱により膨張する熱膨張性材料からなり、火災時に加熱されて膨張して、熱により軟化した熱可塑性樹脂製の継手本体21を締め付けるように管内方へ膨張して管を閉塞する。熱膨張材61に適用される熱膨張性材料としては、火災時の熱(約200℃以上)で膨張する不燃性の材料が好適であり、例えば、膨張黒鉛を含む成形体や、膨張黒鉛の粉体が好ましい。この排水管継手11では、図2及び図4に示されるように、熱膨張材61は、継手本体21の大径直管部33の周りに環状に1条設けられており、第1の吸音層53と第2の吸音層55に挟まれている。」

d「【0042】
排水管継手11を配管する際は、典型的には、上階A側から、床スラブCSの貫通孔CHを通じて下階Bに配管された排水立て管85の上端に接続され、次いで、上階Aにて排水管継手11の上部接続部25に排水立て管81が接続される。床スラブCSの貫通孔CHはモルタルMで埋め戻される。ここで、排水管継手11は、床スラブCSの貫通孔CHに通されてモルタルMで埋め戻される部分全体にて継手本体21が第1の被覆材51で被覆されており、且つ第1の被覆材51に内包される熱膨張材61はモルタルMで埋め戻されている。また、排水管継手11は、床スラブCSの上面から突出する部分は、その全体が継手本体21が第2の被覆材71で被覆されている。
・・・
【0046】
また、この排水管継手11は、モルタルMで床スラブCSに埋め戻される位置に対応して第1の被覆材51に熱膨張材61を内包しており、火災時には、モルタルMにより外方への膨張が規制された熱膨張材61が、熱により軟化した熱可塑性樹脂製の継手本体21を締め付けるように管内方へ膨張して管を閉塞する。そのため、火災時に排水管継手11を通じて延焼したり煙が拡がったりするのを防止することができる。」

e 図面
(a)図2




(b)図4




(ウ)甲第9号証に記載の事項
上記(ア)及び(イ)より、甲第9号証には、以下の事項が記載されていると認められる。
(甲第9号証に記載の事項)
「継手本体21が、胴部23を上下に分割する上側パーツ41及び下側パーツ43とを主体として構成され、下側パーツ43は、胴部23の下側の部分を構成し、大径直管部33、テーパ部35及び小径直管部37を形成し、第1の被覆材51は、継手本体21の外面に接する内側からこの順で配置された、第1の吸音層53と、第2の吸音層55と、表皮層57とを備えており、熱膨張材61が、継手本体21の大径直管部33の周りに環状に1条設けられており、第1の吸音層53と第2の吸音層55に挟まれているものであって、モルタルMで床スラブCSに埋め戻される位置に対応して第1の被覆材51に熱膨張材61を内包する排水管継手11であり、火災時には、モルタルMにより外方への膨張が規制された熱膨張材61が、熱により軟化した熱可塑性樹脂製の継手本体21を締め付けるように管内方へ膨張して管を閉塞すること。」

カ 甲第10号証
(ア)甲第10号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第10号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a【0001】
本発明は、排水管継手の被覆材に関する。より詳しくは、建物の床スラブを貫通して配管される熱可塑性樹脂製の排水管継手の床スラブを貫通する部分の外面を被覆する被覆材に関する。」

b「【0022】
排水管継手51の胴部53は、横枝管受け口59a、59b、59cが設けられた上胴部61と、その下方に連続して上から順に配置された大径直管部63と、テーパ部65と、小径直管部67とからなる。大径直管部63と小径直管部67とはそれぞれ直管状であり、大径直管部63は小径直管部67に比べて内径が大きく、下方に向かって内径が小さくなるテーパ状のテーパ部65を介して大径直管部63と小径直管部67とが接続されている。
【0023】
小径直管部67は、下部接続部57を構成する。下部接続部57は、小径直管部67に排水立て管85の上端部が下方から差し込まれた状態で接続される。下部接続部57は、小径直管部67の奥部に、排水立て管85の通過を許容しないストッパ部57sを備える。ストッパ部57sは、小径直管部67の径方向内方且つ下方に張り出して、テーパ部65の延長線上に形成されている。下階Bに立設された排水立て管85に対して排水管継手51を相対変位させ、排水立て管85の上端部を小径直管部67に挿入し、排水立て管85の上端面がストッパ部57sに当接することで、排水立て管85に排水管継手51が積み上げられて、排水立て管85と排水管継手51とが接続される。
・・・
【0026】
排水管継手51は、硬質塩化ビニル等の熱可塑性樹脂からなる。排水管継手51は、胴部53を上下に分割する上側パーツ71及び下側パーツ73と、下側パーツ73の内部に嵌め込まれる内装パーツ75とを主体として構成されている。
【0027】
上側パーツ71は、胴部53の上側の部分を構成し、上部接続部55及び横枝管受け口59a、59b、59cを備えた上胴部61を形成し、その下端は直管状となっている。下側パーツ73は、胴部53の下側の部分を構成し、大径直管部63、テーパ部65及び小径直管部67を形成し、その上端は直管状となっており、内装パーツ75が内嵌されるとともに上側パーツ71の下端が挿入されて接続されている。上側パーツ71の下端の外面には、上下方向に延びる突条71tが形成されており、下側パーツ73の上部の内面には、上側パーツ71の突条71tが嵌合する溝73mが形成されている。突条71tと溝73mとを嵌合させることで、下側パーツ73に対して上側パーツ71が周方向に位置決めされた状態で、上側パーツ71と下側パーツ73とが接続されている。
・・・
【0029】
被覆材11は、排水管継手51の胴部53のうち、少なくとも、排水管継手51の床スラブCSを貫通している部分の外面の全周を被覆する。排水管継手51は、横枝管受け口59a、59b、59cが床スラブCS上のできるだけ低い位置に配置されるように配管されており、横枝管受け口59a、59b、59cが形成された位置の直下位置から下側が床スラブCSに貫通しており、下部接続部57が床スラブCSの下面から突出している。すなわち、大径直管部63とテーパ部65とが床スラブCSを貫通してモルタルMで埋め戻されている。本実施形態の被覆材11は、横枝管受け口59a、59b、59cが形成された位置より下側の略全体を被覆し、大径直管部63及びテーパ部65の全体と、小径直管部67の略全体を被覆する。」

c「【0034】
被覆材11は、床スラブCSに埋め戻される部位における軸方向の少なくとも一箇所において、周に沿って熱膨張材21を備える。熱膨張材21は、火災の熱により膨張する熱膨張性材料からなり、火災時に加熱されて膨張して、熱により軟化した熱可塑性樹脂製の排水管継手51を締め付けるように管内方へ膨張して管を閉塞する。熱膨張材21に適用される熱膨張性材料としては、火災時の熱(約200℃以上)で膨張する難燃性の材料が好適であり、例えば、膨張黒鉛を含む成形体や、膨張黒鉛の粉体が好ましい。この被覆材11では、熱膨張材21は、大径直管状部位11aにて環状に1条設けられており、第1の吸音層13と第2の吸音層15に挟まれている。
・・・
【0038】
排水管継手51は、予め被覆材11で被覆された状態で配管される。排水管継手51を配管する際は、典型的には、上階A側から、床スラブCSの貫通孔CHを通じて下階Bに配管された排水立て管85の上端に接続され、次いで、上階Aにて排水管継手51の上部接続部55に排水立て管81が接続される。床スラブCSの貫通孔CHはモルタルMで埋め戻される。ここで、排水管継手51は、床スラブCSの貫通孔CHに通されてモルタルMで埋め戻される部分全体が被覆材11で被覆されており、且つ熱膨張材21はモルタルMで埋め戻されている。
・・・
【0041】
また、被覆材11は、排水管継手51のモルタルMで床スラブCSに埋め戻される位置に対応して熱膨張材21を内包しており、火災時には、モルタルMにより外方への膨張が規制された熱膨張材21が、熱により軟化した熱可塑性樹脂製の排水管継手51を締め付けるように管内方へ膨張して管を閉塞する。そのため、火災時に排水管継手51を通じて延焼したり煙が拡がったりするのを防止することができる。」

d 図5




キ 甲第11号証
(ア)甲第11号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第11号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0040】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明の各種の実施の形態を説明する。図1および図2は本発明の第1の実施の形態を示している。
【0041】防火区画貫通部Aは、コンクリートの床,天井もしくは壁である区画面体Fに管路を通す貫通孔F1が穿設されて成る。貫通孔F1内は熱可塑性の合成樹脂材料より成る管路部材P,Pと継手1とによる管路が貫通して配設されており、継手1を貫通孔F1内に配設したうえで継手1と貫通孔F1との隙間を耐火性の充填材Sで塞いだ防火構造としてある。
【0042】継手1は、合成樹脂の芯管20を非金属の不燃材料より成る外被層30で被覆して成り、継手1の中間部中間部11は管路部材Pと内径を同一にし、中間部11から側方に管路部材Pと同様の水平管が接続される接続端部12が形成され、上下に管路部材P,Pが嵌合される接続端部14,15が形成されている。
【0043】芯管20は、塩化ビニール材料が一般的であるが、その他の合成樹脂、例えばポリプロピレン等でもよい。外被層30は、例えば繊維含有モルタルであり、組成の一例を示せば、普通ポルトランドセメント52%、骨材25%、無機質繊維20%、有機質繊維3%である。このほかに、セラミック系、セメント系その他の材料とすることができる。
【0044】接続端部15では、芯管20が拡巾されて、管路部材Pの端部P1が内嵌する外嵌端21が形成されている。外被層30は、外嵌端21の基部の所で途切れており、外被層30の端部35に基部が外嵌して、良熱伝導性の金属材料で形成された保持金具16が延設されている。
【0045】保持金具16により、管路部材Pが嵌合する中心向きのリング状溝形の膨張保持部40が形成されている。膨張保持部40は、外被層30の端部35の外周から延び先端を中心側に曲げて抱持片41が形成され、抱持片41で溝形内に抱え込むようにして、火災の熱で膨張し管路を閉塞して火炎が伝達しないようにする耐火性の熱膨張部材45が装着されている。
【0046】熱膨張部材45は、マット状あるいはシート状のものを円筒形に巻くようにして成形されており、内周は接続端部15の芯管20の外嵌端21による管路の全周を巻くようにして外嵌しており、管路部材Pには間接的に嵌合している。」

b 図1(当審注:図1における【符号の説明】は省略した。)




ク 甲第12号証
(ア)甲第12号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第12号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0055】
上記各実施形態では、接続縦管3を熱膨張性パイプとしたが、これに限らず、例えば接続縦管3を塩化ビニルから形成するとともに、図7に示すように、接続縦管3および接続継手4に熱膨張性シート24(例えば積水化学工業株式会社製フィブロック(登録商標))を巻き付けるようにしてもよい。
【0056】
このようにすれば、火災時等に、接続縦管3および接続継手4に巻かれた熱膨張性シート24が膨張して、樹脂材料からなる接続縦管3および接続継手4を押し潰しながら最下階スラブ20に形成された貫通孔20b内で耐火層を形成することから、最下階スラブ20の上下の空間における熱の出入りを抑制することができる。」

b 図7




ケ 甲第13号証
(ア)甲第13号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第13号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1の第1実施形態において、本発明に係る排水配管構造1は、建築物における床スラブ2を上下に貫通する貫通部3に設けられる非耐火性の樹脂製排水配管継手4と、この樹脂製排水配管継手4に接続される樹脂製の排水立管5とを有している。ここで、「非耐火性」とは、建築物内で火災が生じたときに、これによる熱によって変形、溶融または燃焼可能な性質をいい、例えば樹脂製のものが該当する。
前記樹脂製排水配管継手4、排水立管5は、例えば塩化ビニル、ポリエチレン、ポリブデン、ポリプロピレンあるいはナイロン等によって成形されている。なお、排水立管5には、例えばいわゆる耐火2層管を用いてもよい。
【0012】
樹脂製排水配管継手4は直管状に構成されており、その上下各端部には、排水立管5を接続するための立管接続部6(上立管接続部6a、下立管接続部6b)が設けられている。この樹脂製排水配管継手4は、床スラブ2に形成された貫通孔7に挿通されており、その上部が床スラブ2の上面2aから上方に突出され、上立管接続部6aに上側の排水立管5が接続されている。また、この樹脂製排水配管継手4の下部は、床スラブ2の下面2bから下方に突出され、下立管接続部6bに下側の排水立管5が接続されている。
樹脂製排水配管継手4の中途部は、床スラブ2の貫通孔7に挿通された状態で、貫通孔7をモルタル8等によって埋め戻すことによって貫通部3に固定されている。
・・・
【0014】
このように、熱膨張性耐火材9は、反応温度、膨張率の異なる多種多様のものを使用でき、したがって建築物内の施工場所に応じて要求される反応温度、管径等の諸条件を満たす最適なものを選択して使用できる。
この熱膨張性耐火材9は、シート状に形成されており、樹脂製排水配管継手4の中途部の外周面に巻き付けられている。
この第1実施形態では、熱膨張性耐火材9は、樹脂製排水配管継手4が貫通部3に埋設された部分全てに巻き付けられており、したがって、熱膨張性耐火材9の上下方向の幅はスラブ厚とほぼ同じになっている。
【0015】
この熱膨張性耐火材9は、図1に示すように、樹脂製排水配管継手4の外周面と、床スラブ2の貫通孔7に充填されたモルタル8との間に介在しており、火災時に樹脂製排水配管継手4または排水立管5が燃焼した場合に、その熱によって樹脂製排水配管継手4の径方向内方に膨張し、樹脂製排水配管継手4を外側から押しつぶして排水管路を閉塞するようになっている。これによって、本発明に係る排水配管構造1は、火災時に火炎、煙等が流通しないように管路を遮断できるようになっている。
図2の第2実施形態では、樹脂製排水配管継手4の外周面に設けられた熱膨張性耐火材9の位置または幅が第1実施形態と異なる。
・・・
【0017】
排水配管構造1のその他の構成および材質は第1実施形態と同様であり、共通する部分には共通符号を付して説明を省略する(以下、他の実施形態において同じ)。
図3の第3実施形態では、樹脂製排水配管継手4として排水集合管を用いており、この点が第1実施形態、第2実施形態と異なる。
樹脂製排水配管継手4(排水集合管)は、管本体11を備えており、この管本体11の上下各端部には、排水立管5(図例では立主管)が接続される立管接続部6(上立管接続部6a、下立管接続部6b)が形成されている。また、この管本体11の中途部には、排水横枝管12が接続される横枝管接続部13が形成されている。
【0018】
第3実施形態に係る排水配管構造1は、樹脂製排水配管継手4の各立管接続部6a、6bに樹脂製等の排水立管5(配水管)が接続され、横枝管接続部13に樹脂製等の排水横枝管12(配水管)が接続されることによって構成されている。
樹脂製排水配管継手4は、その中途部が第1実施形態と同様に、床スラブ2の貫通部3に固定されており、上立管接続部6a、および横枝管接続部13が床スラブ2の上面2aから上方に突出(または露出)して配置されている。一方、樹脂製排水配管継手4の下部は、床スラブ2の下面2bから下方に突出されている。」

b 図面
(a)図1




(b)図3




コ 甲第14号証
(ア)甲第14号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第14号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0016】
<排水設備10の概要について>
排水設備10は、図1に示されるように、建造物の上階と下階とを仕切る床スラブCを貫通して各階に設置されている排水管継手20と、各階の排水管継手20を相互につなぐ樹脂製の排水立て管70と、各階の床面に沿って配管されて各階の排水管継手に接続される樹脂製の排水横枝管(図示省略)とから構成されている。
【0017】
<排水管継手20の概要>
排水管継手20は、上階の排水立て管70及び排水横枝管(図示省略)により導かれた排水を合流させて下階の排水立て管70に流入させる継手である。排水管継手20は、図2等に示されるように、上胴部30と、下胴部40と、内装部材50とから構成されている。排水管継手20は、上胴部30と、下胴部40とが上下に接続されて外形が形成されている。内装部材50は下胴部40の内側に嵌め込まれている。」

b「【0053】
さらに、上記実施形態では、硬質塩化ビニル製の排水管継手20を例示したが、熱可塑性樹脂材料の種類は適宜変更可能である。また、排水管継手20の上胴部30と下胴部40とを透明にすれば、内部の損傷、詰まり等の発見が容易になる。」

c 図2




サ 甲第15号証
(ア)甲第15号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第15号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0015】
<排水設備10の概要について>
排水設備10は、図1に示すように、集合住宅の上階と下階とを仕切る床スラブCを貫通して各階に設置されている排水管継手20と、各階の排水管継手20を相互につなぐ樹脂製の排水立て管70と、各階の床上に配管されて各階の排水管継手に接続される樹脂製の排水横枝管(図示省略)とから構成されている。
排水設備10は、下階の排水管継手20の上部受け口32に排水立て管70の下端挿し口71sを挿入接続した後、その排水立て管70の上端挿し口71uに上階の排水管継手20の下端部(小径円筒部45)を接続するように、下から上に順番に積み上ながら施工する。
そして、排水立て管70の配管後に各階の排水横枝管が各階の排水管継手20の横枝管受け口35に挿入接続される。
【0016】
<排水管継手20の概要、及び上胴部30について>
前記排水管継手20は、上階の排水立て管70及び排水横枝管(図示省略)により導かれた排水を合流させて下階の排水立て管70に流入させる継手であり、排水立て管70及び排水横枝管と同様に樹脂により成形されている。排水管継手20は、図2、及び図5〜図7に示すように、上胴部30と、下胴部40と、内装部材50とから構成されている。
排水管継手20の上胴部30は、排水管継手20の上部を構成する部材であり、図1に示すように、床スラブC上に配置される。上胴部30は、図2、図5等に示すように、上端部に形成された上部受け口32と上胴部本体33とから構成されている。
上部受け口32は、図1に示すように、排水立て管70の下端挿し口71sが挿入接続される部分であり、図2、図5に示すように、円筒部32eと、その円筒部32eの下端位置で上胴部本体33との境界位置に設けられた内フランジ部32fとを備えている。そして、上部受け口32の円筒部32e内にゴム製のシール材26が収納されている。シール材26は、図2に示すように、筒壁部261と、その筒壁部261の上端内周面側に形成された襞状のシール本体部263と、前記筒壁部261の下端に形成された内フランジ状の立て管受け部265とから構成されている。そして、シール材26の立て管受け部265が上部受け口32の内フランジ部32fによって下方から支えられている。」

b「【0027】 <変更例>
・・・
さらに、本実施形態では、硬質塩化ビニル製の排水管継手20を例示したが、樹脂の種類は使用環境に応じて適宜変更可能である。また、排水管継手20の上胴部30と下胴部40とを透明にすることで、内部の損傷、詰まり等も発見し易くなる。」

c 図2




シ 甲第16号証
(ア)甲第16号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第16号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0057】
また、たとえば、排水横管用継手12の上流側および下流側に接続される排水配管の少なくとも一方を透明材料によって形成することもできる。具体的には、排水横管52、脚部継手54、短管58および合流継手72等を透明材料によって形成することもできる。これによって、より幅広い範囲において排水管14内の状況を外部から視認できるようになるので、たとえば固形ごみ102の堆積位置が想定位置(中央胴部22の位置)からずれてしまった場合でも、排水管14内の固形ごみ102の堆積状況を確実に把握できる。したがって、維持管理性をより向上させることができる。」

b 図11




ス 甲第17号証
(ア)甲第17号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第17号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0020】
図1に示す合流管継手Jは、管継手本体10と、二つの上流側接続部材3,3と、一つの下流側接続部材4とからなるものであって、管継手本体10は、主管部1の片側に、該主管部1に排水を斜め側方から合流させる枝管部2を一体に形成したものである。
【0021】
これらの管継手本体10、上流側接続部材3、下流側接続部材4はいずれも、ポリ塩化ビニルやポリエチレンその他の熱可塑性合成樹脂で成形された透明又は不透明な成形品であって、特に、無色透明又は有色透明のものは、合流管継手Jの内部を透視して外部から点検できる利点があり、接着作業も接着不良の有無を確認して行える利点があるので好ましい。」

b 図1




セ 甲第18号証
(ア)甲第18号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第18号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0012】
さらに、本発明は目視可能の無色透明の合成樹脂ないし有色顔料によって着色した有色透明或いは半透明の合成樹脂により内部を透視できる構成としたブッシュをリング体に設けた排水管接続部の外周側面に嵌合して備え、前記排水管接続部の外周側面に嵌合して排水管接続部と排水管との間に密接介在配備してあるので、排水漏れ現象もなく安全性を大巾に高めることができるし、排水管接続部の内部から水漏れ箇所の点検確認作業が容易にできるほか、リング体と排水管との連結接続部分の接合状態の良否をも目視で容易に確認できて施工作業や住宅の維持管理が手軽に行え、住宅性能評価のレベルを高めることができる。」

b「【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
この実施の形態における排水トラップは、図1乃至図3に示すように、床面Aの床面開口部Bを覆い床面上に載置固定されるリング体1が、内部を透視できる構成として排水管Cに連結されて配備されるが、このリング体1には環状突起のホース接続部2と、排水管Cの内周面に嵌合される筒状の排水管接続部3とを備え、該ホース接続部2には一端口部4が嵌挿され、かつホース止めリング51 を外周に突設した他端口部5に洗濯機排水ホースDが嵌挿されるホースジョイント6が、パッキンホルダー12によって着脱自在に接続配備される。
また、この前記リング体1は、目視可能の無色透明の合成樹脂ないし黄色、赤色、桃色、青色、緑色等の有色顔料によって着色した有色透明或いは半透明の合成樹脂例えばABS樹脂、PP樹脂等によって内部を透視できる構成とし、該リング体1の排水管接続部3内にホースジョイント6の一端口部4の外周部が挿入され、かつ排水管接続部3に形成したフランジ部31 に嵌装保持される封水カップ8が、排水管C内に上面開放状態で配備され、該封水カップ8内にスロート7を内装して排水管C内に嵌挿配備される。さらに前記リング体1の排水管接続部3の外周面に接着剤を塗布して前記排水管C内に嵌挿配備するか、或いは透明若しくは半透明の合成樹脂例えばABS樹脂、PP樹脂等によって内部を透視できる構成としたブッシュ23を嵌合配備して排水管C内に嵌挿配備され、塗布した接着剤によって固着される。
この封水カップ8は、前記排水管接続部3の内周側に嵌合してもよいが、図1のように内周側に張出したフランジ部31 に傾斜面からなる保持筒部83 を嵌挿係止し、封水カップ8の外周側面の開口84 を介して排水管C内に連結配備してもよく、さらに封水カップ8の内部としては、入口側流路81 と出口側流路82 とに区画する仕切片9が有底側に流水用の連通開口10を形成して垂下配備され、前記出口側流路82 の封水カップ8の周壁上方位置に流出口101 を形成した構成の排水トラップ本体としてある。」

c 図1




ソ 甲第19号証
(ア)甲第19号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第19号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0025】
本実施形態の床固定部材40は、内径が異なる2種類の排水管90a、90bを取り付けることができる(図4および図5を参照)。排水管90a、90bは一般に硬質ポリ塩化ビニル管からなる。図5に示すように、床固定部材40の接続部42には、直接、排水管90aとしてのVP管(塩ビ厚肉管)を第1接着剤91によって取り付けることができる。図4に示すように、床固定部材40は、排水管90a(VP管)とは内径が異なる他の排水管90b(VU管(塩ビ薄肉管))が第1接着剤91によって取り付けられるブッシュ70を含んでいる。ブッシュ70は、第2接着剤92によって接続部42に取り付けられる。他の排水管90bは、第2接着剤92によってブッシュ70が一体化された接続部42に、第1接着剤91によって取り付けられることとなる。
【0026】
ブッシュ70も、透明な材料、例えば透明な合成樹脂脂材料から形成されている。ブッシュ70は、床固定部材40の構成材料と同じ透明な材料から構成することができる。ここに「透明な材料」は、排水管90bを取り付ける第1接着剤91の塗布状況を視認することができる材料である限りにおいて、着色されていてもよい。」

b「【0036】
非透明なカバー部材50、ホースジョイント10および封水筒80を床固定部材40から取り外した状態においては、透明な床固定部材40の接続部42の内周面が露出する。矢印121によって示すように、点検者が接続部42の内周面を視ると、透明な接続部42および透明なブッシュ70を通して、第1接着剤91の塗布状況の視認が可能となる。これによって、排水管90b(VU管)を接続するための第1接着剤91が適切に塗布されているか否かを点検できる。
・・・
【0043】
床固定部材40は、排水管90aとは内径が異なる他の排水管90bが第1接着剤91によって取り付けられるブッシュ70を含み、ブッシュ70は、透明な材料から形成され、第2接着剤92によって接続部42に取り付けられる。
【0044】
このように構成することによって、カバー部材50、ホースジョイント10および封水筒80を床固定部材40から取り外した状態においては、透明な床固定部材40の接続部42および透明なブッシュ70を通して、第1接着剤91の塗布状況の視認が可能となる。これによって、他の排水管90bを接続するための第1接着剤91が適切に塗布されているか否かを点検できる。さらに、透明な接続部42を通して、第2接着剤92の塗布状況の視認が可能となる。これによって、ブッシュ70を接続するための第2接着剤92が適切に塗布されているか否かを点検できる。」

c 図3




タ 甲第20号証
(ア)甲第20号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第20号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0013】
図1に示す排水配管2は、集合住宅の床下1に敷設され、下水管(不図示)に連通する排水横主管3(以下横主管という)に接合部5を介して排水横枝管4(以下横枝管という)を接続して構成される。横主管3は、配管長さが長くなるので、搬送能力を高めるために、上部の曲率半径を下部の曲率半径よりも大きくした卵形断面を有する卵形管で形成される。横枝管4は、各衛生機器(不図示)に接続され、配管長さはそれ程長くないので、円形断面を有する円形管で形成される。排水配管2は、例えば、管勾配1/200で敷設された管径80A、長さ10mの横主管3に、各衛生機器からの排水が合流できるように最大傾斜角度45°以下の範囲で横枝管4が斜めに接続されている。
【0014】
接合部5は、図2に示すように、分岐継手6−1の両側に接続継手7(7−1、7−2)を装着し、接続継手7−1を主管3−1に接続すると共に、接続継手7−2に接続された分岐継手6−2を、接続継手7−3を介して主管3−2に接続し、排水管用分岐継手6−1及び6−2に、それぞれ分岐管4−1及び4−2を接続することにより形成される。
・・・
【0017】
接続継手7は、図6(a)(b)に示すように、卵形断面形状を有する排水管と分岐継手を接続するために、卵形断面を有しかつ内部を透視可能な窓部74を有するガイドリング72と、漏れをシールする弾性材(例えば合成ゴム)で形成されたシール部材71と、シール部材71と横主管3(図2参照)を固定する接続用バンド73からなる。ガイドリング72は、横主管3を保持するために横主管の外形形状と同一の内形形状を有するとともに、中央で主管3同士が当接するように端部から中央に向って若干の下り勾配(不図示)が付けられている。ガイドリング72は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンを含むポリオレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂あるいはポリスチレン系樹脂のような透明もしくは半透明の材料で形成され、窓部74から内部を透視できる。これにより、横主管3の差込長さを目視で確認することができる。特に地震で配管が揺れた場合でも、その安全性を容易に確認することができる。接続用バンド73は、例えば、高い締め付け力が得られる鉄鋼材料で形成される。接続継手7は、排水横主管3と同一の内径を有するガイドリング72を有するので、排水横主管3を強固に保持することができる。従って配管が接合部で曲がるのを防止することができる。」

b 図面
(a)図2




(b)図6




チ 甲第21号証
(ア)甲第21号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第21号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態を示す要部断面図である。
【0011】図1に示すように、この排水管配管構造Aは、建物4の基礎部を構成するコンクリートスラブ41にさや管5が埋設されている。さや管5は、塩化ビニル樹脂管で形成されており、その一端が地中に開口し、他端部、すなわち、建物内側の端部51が建物4の基礎床面42から少し立ち上がるようにコンクリートスラブ41を貫通して設けられている。
【0012】建物内の排水器具1と宅地内の排水桝2とは、さや管5を挿通するように設けられた排水管3を介して接続されている。排水管3は、さや管5に挿通される部分がフレキシブル管31によって形成され、その他の部分が通常の硬質塩化ビニル樹脂管32で形成されている。この場合、フレキシブル管31は、図2に示すように、内周面が平滑で、外周面に山部と谷部が交互に軸心方向に沿って連続して形成された塩化ビニル樹脂製の波付管である。
【0013】建物内外に位置している排水管32,32とフレキシブル管31とはともに接続カラー体9を介して接着接続されている。この接続カラー体9は径違いのソケット状のものであり、図2に示すように、一端部側にフレキシブル管31の端部内周面と嵌合される径小の差口91を有し、他端側に排水管32の端部外周面と嵌合される径大の受口91を有している。なお、接続カラー体9は透明な硬質塩化ビニル樹脂製のものである。受口91の外周面には突条911が周方向に連続して一体に突設されている。この突条911に合成ゴム製の環状シール材10が係止され、この環状シール材10がさや管5の内周面にて押圧されることによって、建物の外側に位置するさや管5の開口端側において、さや管5と排水管31,32の間の隙間が水密状に閉塞されている。
・・・
【0018】さらに、接続カラー体9は透明な硬質塩化ビニル樹脂製のものであるので、接着剤を用いてフレキシブル管31および排水管32との接続を容易に行なえる。そして、透明であることにより、接続カラー体9の受口91内への排水管32の挿入長さを目視にて確認しながら正確に行なえる。」

b 図2




ツ 甲第22号証
(ア)甲第22号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第22号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0013】
・・・
遮音層に設けられた重合接着部は、両面テープや粘着性接着剤の塗布面などとしておくことも可能であるが、面ファスナーを採用するのが好適である。
このようにすることで、排水集合管の管本体や枝管接続部、立管部材或いは枝管に対して一旦、遮音層を装着した後でも、必要に応じて遮音層を取り外すことができるようになる。そのため、遮音層の装着時における位置的な微調整ができる他、装着後における配管側のメンテナンス(詰まりの清掃や点検等)に便利であり、また遮音層自体が劣化や損傷した場合の交換が容易に行えるといった利点もある。」

b「【0016】
管本体7において、枝管接続部8の設けられた部分は上部流入口部5及び下部流出口部6よりも内径の拡大した合流部10として形成されている。またこの合流部10から下部流出口部6へ向けて徐々に縮径するテーパー管部11が設けられており、このテーパー管部11内を含め、枝管接続部8より下位となる内部には、上部流入口部5から下部流出口部6へ向けた水流を管内面に沿った旋回流に整流するための旋回羽根12が設けられている。
図1乃至図4は本発明に係る排水集合管1の第1実施形態を示しており、この排水集合管1では管本体7及び枝管接続部8の略全部の外周面を取り囲むような状態で複合被覆層15が設けられている。この複合被覆層15(図4参照)は、管本体7や枝管接続部8の外周面に近い方から吸音層16、遮音層17、保形フィルム18が重合されたもので、その総厚が5mm〜20mm程度ある。」

c「【0030】
図14及び図15は、排水集合管1において管本体7や枝管接続部8に複合被覆層15を後付け可能なものとし、また立管部材20や枝管21についても複合被覆層26を後付け可能なものとした実施形態を示している。
本実施形態で採用する複合被覆層15,26は、遮音層17を必須不可欠とするものであるが、吸音層16や保形フィルム18の具備(重合)は好適な一例として説明するにすぎないことは上記した各実施形態と同様とする。すなわち、本実施形態において以下では複合被覆層15,26をそれぞれ遮音層17と読み替えることも可能である。
【0031】
立管部材20用や枝管21用の複合被覆層26は、装着対象管の外周面を取り囲むことができる内径の筒形状を呈したものとされ、その周方向の1箇所に管軸方向へ通り抜ける割縁部70が設けられている。従って、この割縁部70を腹開き状態にすることで、層内側の管用貼り付け面71を解放できるようになっている。筒形状の長さは当初、所定長さ(例えば1mとか2m等)を有したものとされており、配管現場に応じて長すぎる場合には適宜切断すればよい。
割縁部70によって形成される一対の端縁は互いに重合されるようになっており、この重合時に内側に入れられる端縁には、周方向に対して外向きとなる重合接着部72が設けられ、外側に出される端縁には、周方向に対して内向きとなる重合接着部73が設けられている。これら重合接着部72,73には互いに雌雄の係着関係を有する面ファスナーが採用されており、係合と離脱とが自在で且つこの係合離脱を繰り返し行えるものとなっている。」

テ 甲第23号証
(ア)甲第23号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第23号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0012】
・・・
遮音層に設けられた重合接着部は、両面テープや粘着性接着剤の塗布面などとしておくことも可能であるが、面ファスナーを採用するのが好適である。
このようにすることで、排水集合管の管本体や枝管接続部、立管部材或いは枝管に対して一旦、遮音層を装着した後でも、必要に応じて遮音層を取り外すことができるようになる。そのため、遮音層の装着時における位置的な微調整ができる他、装着後における配管側のメンテナンス(詰まりの清掃や点検等)に便利であり、また遮音層自体が劣化や損傷した場合の交換が容易に行えるといった利点もある。」

b「【0016】
図1乃至図4は本発明に係る排水配管構造の第1実施形態を示しており、この排水配管構造では、排水集合管1における管本体7の略全部の外周面を取り囲むような状態で複合被覆層15が設けられ、また立管部材20の外周面を取り囲んで複合被覆層26が設けられている。
排水集合管1において、管本体7及び枝管接続部8は鋳造により一体化された金属製のもの、又は塩ビ樹脂等により一体化された樹脂製のものとされる。
管本体7において、枝管接続部8の設けられた部分は上部流入口部5及び下部流出口部6よりも内径の拡大した合流部10として形成されている。またこの合流部10から下部流出口部6へ向けて徐々に縮径するテーパー管部11が設けられており、このテーパー管部11内を含め、枝管接続部8より下位となる内部には、上部流入口部5から下部流出口部6へ向けた水流を管内面に沿った旋回流に整流するための旋回羽根12が設けられている。
【0017】
排水集合管1に対して設けられる複合被覆層15(図4参照)は、管本体7に近い方から吸音層16、遮音層17、保形フィルム18が重合されたもので、その総厚が5mm〜20mm程度ある。
吸音層16はグラスウールやロックウール、軟質ウレタンフォーム、或いはセラミックファイバーやセルロースファイバー、ニードルパンチマット等によって厚さ4mm〜15mm程度に形成されている。
遮音層17はアスファルトシートやオレフィンシート、或いは鉄系充填材入り軟質シートなどによって厚さ1mm〜5mm程度に形成されている。」

c「【0047】
図16及び図17は、排水集合管1において管本体7や枝管接続部8に複合被覆層15を後付け可能なものとし、また立管部材20や枝管21についても複合被覆層26を後付け可能なものとした実施形態を示している。
本実施形態で採用する複合被覆層15,26は、遮音層17を必須不可欠とするものであるが、吸音層16や保形フィルム18の具備(重合)は好適な一例として説明するにすぎないことは上記した各実施形態と同様とする。すなわち、本実施形態において以下では複合被覆層15,26をそれぞれ遮音層17と読み替えることも可能である。
【0048】
立管部材20用や枝管21用の複合被覆層26は、装着対象管の外周面を取り囲むことができる内径の筒形状を呈したものとされ、その周方向の1箇所に管軸方向へ通り抜ける割縁部70が設けられている。従って、この割縁部70を腹開き状態にすることで、層内側の管用貼り付け面71を解放できるようになっている。筒形状の長さは当初、所定長さ(例えば1mとか2m等)を有したものとされており、配管現場に応じて長すぎる場合には適宜切断すればよい。
割縁部70によって形成される一対の端縁は互いに重合されるようになっており、この重合時に内側に入れられる端縁には、周方向に対して外向きとなる重合接着部72が設けられ、外側に出される端縁には、周方向に対して内向きとなる重合接着部73が設けられている。これら重合接着部72,73には互いに雌雄の係着関係を有する面ファスナーが採用されており、係合と離脱とが自在で且つこの係合離脱を繰り返し行えるものとなっている。」

ト 甲第24号証
(ア)甲第24号証の記載
本件特許に係る原出願前に頒布された刊行物である甲第24号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
a「【0033】
図5に示すように、金属製、塩化ビニル等の樹脂製、あるいは防音材が被覆されてなる耐火二重管からなる立て管や枝管に対しても、吸音層4、遮音層5からなる防音材3で被覆し、さらに外層15によって被覆することができる。外層15は、上記の熱収縮性フィルム層である表皮材6と同じでもよいが、樹脂による防音材3の外周に密着するカバー状のものとして構成しても良い。外層15は防音材3を保護する部材であり、現場にて立て管を被覆できるように、予め外層15にヒンジ16等を形成して開閉可能としておき、さらに保持部17を形成し、この保持部17において、面ファスナー、接着、ピン、ボタン等の周知の係止手段により外層15を、防音材3の外面に固定することが可能である。
【0034】
別の例として図6に示すように、外層15の保持部17を互いに嵌合させる構造としても良い。外層の取り外しはその嵌合をはずすことにより簡単に行うことが可能となる。
さらに、図6に示す外層15の変形例として、図7に示すように、外層15を6角形などの多角形や非円形等とすることも可能である。このような形状の場合には、外層15と防音材3との間に部分的に空間が形成されるので、この空間がさらに防音性を向上させることになる。
【0035】
また、図7に示すように、立て管や枝管のような直管ではなく継ぎ手部分の継手1に対しても同様に、外層15内に吸音層4及び遮音層5からなる防音材3を形成し、これを該継手1に嵌合させるようにして被覆する。この手段によれば、継手1に対して防音材3による被覆を簡単に行うことができる。
【0036】
具体的な例としては、図8及び9に示すように、継ぎ手部分の継手1の外面形状に適合するような内面形状を形成してなり、外層15の内部に遮音層5及び吸音層4からなる防音材3を密着させ、これをヒンジ16を介して開閉自在の構造とする。そのような構造のものを継手部分の継手1における、上部立て管を接続する部分と枝管を接続する横枝部が形成されてなる上部用の防音材18と、下部立て管が接続される下部用の防音材19の2つを形成する。
これら防音材18及び防音材19の2つのものをそれぞれ継手1に取り付け、ヒンジ16を閉じることにより継手1の全周を防音材3及び外層15で被覆し、保持部17により上記のような面ファスナー、接着、ピン、ボタン等の周知の係止手段により固定する手段を採用し得る。
・・・」

(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)甲2発明の「立管4」は、「スラブ貫通孔部15」より上側に位置していることは明らかであるから、本件発明1の「上階の縦管」に相当し、甲2発明の「上部本体部21」は、「筒状の継手本体13」の一部であるから、「管」をなしていることは明らかであるので、本件発明1の「上部接続管」に相当する。そうすると、甲2発明の「立管4」と「接続」する「上部本体部21」は、本件発明1の「上階の縦管と接続される上部接続管」に相当する。
甲2発明の「立管5」は、「スラブ貫通孔部15」より下側に位置していることは明らかであるから、本件発明1の「下階の縦管」に相当し、甲2発明の「下部本体部23」は、「筒状の継手本体13」の一部であるから、「管」をなしていることは明らかであるので、本件発明1の「下部接続管」に相当する。そうすると、甲2発明の「立管5の上端部を挿入して接着固定」される「下部本体部23」は、本件発明1の「下階の縦管と接続される下部接続管」に相当する。
甲2発明の「管継手」は、その一部である「本体中間部22」が「スラブ貫通孔部15へ挿入配置」される部分となっているとともに、「排水用管部材」とされる「立管4」及び「横枝管6」の中を流れる排水を集合させていることは明らかであるから、本件発明1の「床スラブ貫通孔に設置される排水集合継手」に相当する。

(イ)甲2発明の「上部本体部21の下端に形成された下部接続口部31」は、本件発明1の「上部接続管の下端部」に相当する。
そうすると、甲2発明の「上部本体部21の下端に形成された下部接続口部31が、スラブ貫通孔部15の中に配置されて」いることは、本件発明1の「前記上部接続管の下端部」が、「前記床スラブの貫通孔内に配置され」ていることに相当する。

(ウ)本件発明1の「床スラブの貫通孔内となる位置であって、前記下部接続管の外周に高さ30mm以上150mm以下の耐火シートが巻き付けられ」ることと、甲2発明の「主にスラブ貫通孔部15へ挿入配置される部分であり、円筒形状を有するものとされて、上部本体部21の下端に形成された下部接続口部31と、下部本体部23の上端に形成された上部接続口部32との間に差し込んで接着固定されるようになっていて、熱膨張性の耐火材層16によって主に形成され」る「本体中間部22」とは、「床スラブの貫通孔内となる位置」にある「耐火材」である点で共通する。

(エ)甲2発明の「立管接続部11」及び複数の「横枝管接続部14」は、それぞれ、「立管4」及び複数の「横枝管6」を、接続するための「伸縮用受口」である。また、甲2発明の「上部本体部21の上端部および側面」には、「取付用開口部28」が形成されていて、当該「取付開口部28に対し」、前記「伸縮用受口」が「それぞれ装着した状態で接着固定され」ている。
そうすると、甲2発明の「上部本体部21の上端部」及び「側面」に形成されていて、「伸縮用受口」が「それぞれ装着した状態で接着固定され」ている「取付用開口部28」は、本件発明1の「縦管接続部」及び「横管接続部」に相当する。
以上のことから、甲2発明の「上部本体部21の上端部および側面に形成された取付用開口部28」は、本件発明1の「前記上部接続管は、縦管に接続可能な縦管接続部と、横管を接続可能な複数の横管接続部」に相当する。

(オ)甲2発明の「筒状の受口本体部25」及び「シールパッキン26」は、本件発明1の「横ブッシュ」及び「パッキン」に、それぞれ相当する。また、甲2発明の「筒状の受口本体部25」が備える「内部にシールパッキン26を配置する拡径部」は、本件発明1の「内部にパッキンが配置される拡径部」に相当する。
甲2発明の「伸縮用受け口」は、「筒状の受口本体部25」と、「シールパッキン26」と、「外嵌されてシールパッキン26を保持するリングキャップ部27」とを有しているところ、「上部本体部21」の「側面」に形成された「取付用開口部28」に「装着した状態で接着固定され」るものであることから、「筒状の受口本体部25」が「取付用開口部28」に嵌合していることは明らかである。
そうすると,甲2発明において、「上部本体部21」の「側面に形成された取付用開口部28」に、「筒状の受口本体部25」が「装着した状態で接着固定され」ていて、「筒状の受口本体部25」が「内部にシールパッキン26を配置する拡径部」を備えていることは、本件発明1において、「前記横管接続部には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えた横ブッシュが嵌合接着され」ることに相当する。
同様に、甲2発明において、「上部本体部21」の「上端部」に「形成された取付用開口部28」に、「筒状の受口本体部25」が「装着した状態で接着固定され」ていて、「筒状の受口本体部25」が「内部にシールパッキン26を配置する拡径部」を備えていることは、本件発明1において、「前記縦管接続部には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えた縦ブッシュが嵌合接着され」ることに相当する。

(カ)甲2発明の「下部本体部23の上端に形成された上部接続口部32」は、本件発明1の「下部接続管」の「接続管部」に相当する。
甲2発明の「下部本体部23」のうち「下細り」となっている部位は、「上部接続口部32」の下方に接続された部位であることは明らかであるから、本件発明1の「下部接続管」の「前記接続管部の下方に接続された下窄まり状の傾斜管部」に相当する。
甲2発明の「下部本体部23」の「立管接続部12」は、「下細り」となっている部位の下端に接続される部位であることは明らかであるから、本件発明1の「下部接続管」の「傾斜管部の下端部に接続され、下階の縦管が接続される下側管部」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「上階の縦管と接続される上部接続管と、下階の縦管と接続される下部接続管と、を備え、床スラブの貫通孔に設置される排水集合継手であって、
前記上部接続管の下端部は、前記床スラブの貫通孔内に配置され、
床スラブの貫通孔内となる位置にある耐火材を有し、
前記上部接続管は、縦管に接続可能な縦管接続部と、横管を接続可能な複数の横管接続部を有し、
前記横管接続部には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えた横ブッシュが嵌合接着され、
前記縦管接続部には、内部にパッキンが配置される拡径部を備えた縦ブッシュが嵌合接着され、
前記下部接続管は、接続管部と、前記接続管部の下方に接続された下窄まり状の傾斜管部と、前記傾斜管部の下端部に接続され、下階の縦管が接続される下側管部と、を備え、
排水集合継手。」

<相違点1>
本件発明1は、「下部接続管の上端部は、前記床スラブの貫通孔内に配置され」ているのに対して、甲2発明は、「下部本体部23は、主にスラブ貫通孔部15よりも下側へ突出する部分」である点。

<相違点2>
「床スラブの貫通孔内となる位置」にある「耐火材」について、本件発明1は、「前記下部接続管の外周に」「巻き付けられ」る「高さ30mm以上150mm以下」のものであって、「前記傾斜管部よりも上方の前記下部接続管の外周に巻き付けられている」「耐火シート」であるのに対して、甲2発明は、円筒形状を有するものとされて、上部本体部21の下端に形成された下部接続口部31と、下部本体部23の上端に形成された上部接続口部32との間に差し込んで接着固定されるようになっていて、熱膨張性の耐火材層16によって主に構成され」る「本体中間部22」である点。

<相違点3>
「上部接続管」について、本件発明1では、「透明材料または半透明材料で形成されて」いるのに対して、甲2発明では、そのような特定がされていない点。

<相違点4>
「横ブッシュ」について、本件発明1では、「透明材料または半透明材料から形成し」ているのに対して、甲2発明では、そのような特定がされていない点。

イ 判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑みて相違点2から検討する。
甲2発明における、「熱膨張性の耐火材層16によって主に形成され」ていて、「スラブ貫通孔部15へ挿入配置される部分」である「本体中間部22」は、「円筒形状を有」していて「上部本体部21の下端に形成された下部接続口部31」と、「下部本体部23の上端に形成された上部接続口部32」との間に差し込んで接着固定されるものであり、耐火材として機能するだけではなく、「上部本体部21」と「下部本体部23」との「中間」にあって、「円筒形状」をしていることから、通常時には、排水を通す管としても機能するものであることは明らかである。そして、火災発生時には、「熱膨張性の耐火材層16によって主に構成される」「本体中間部22」それ自体が「膨張してスラブ貫通孔部15」を塞ぐ作用をなすことは明らかである。
これに対して、甲第5号証ないし甲第8号証から認定できる公然実施発明は、第4の2(1)エ(カ)のとおりであり、「排水管継手」において「熱膨張材が内蔵された継手管用被覆材を胴体部に取り付けた」ものである。また、甲第9号証に記載の事項は、第4の2(1)オ(ウ)のとおりであって、「第1の被覆材51」に「内包」された「熱膨張材61が、継手本体21の大径直管部33の周りに環状に1条設けられた」ものであり、甲第10号証にも同様の事項が記載されている。
しかしながら、上記公然実施発明並びに、公知の技術である甲第9号証及び甲第10号証に記載の事項の耐火材は、「熱膨張材」を「内蔵」等させた「被覆材」であり、これを「胴体部」や「大径直管部」の、排水管継手における排水を通す管に対して取り付けるものである。そして、当該「熱膨張材」は、火災時には締め付けるように管内方へ膨張して管を閉塞する作用をなすものである。なお、公然実施発明の「熱膨張材」については「幅が60mm以上」との特定があるものの上限については特定されておらず、また、甲第9号証及び甲第10号証に記載の事項の「熱膨張材61」については、高さに係る特定はない。
したがって、甲2発明の「本体中間部22」と、公然実施発明あるいは甲第9号証及び甲第10号証に記載の事項の「熱膨張材」を「内蔵」等させた「被覆材」とは、基本的な構成が異なるとともに、機能や作用も異なることから、甲2発明に、公然実施発明あるいは甲第9号証及び甲第10号証に記載の事項を適用する動機付けはない。
また、申立人が周知技術の例として提出した甲第11号証ないし甲第13号証については、耐火性熱膨張シートを床の貫通孔内にある排水継手に巻き付けることが記載されているものの、甲2発明とは、上記公然実施発明及び甲第9号証及び甲第10号証に記載の事項と同様に、基本的な構成が異なるとともに、作用や機能も異なることから適用する動機付けはない。
さらに、申立人が周知技術1、3〜6の例として提出した甲第3号証ないし甲第4号証、及び、甲第14号証ないし甲第24号証のいずれにも、相違点2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。
以上のとおりであるから、甲2発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことではない。

ウ 申立人の主張
申立人は、周知技術に照らして、甲2発明の「熱膨張性の耐火材層16」に代えて、あるいは、甲2発明の「熱膨張性の耐火材層16」に加えて、高さ30mm以上150mm以下の耐火シートを、甲2発明の下部本体部23の傾斜管部よりも上方の下部本体部23の上部接続口部32の外周に巻きつけることは、当業者にとって容易に想到しうる旨主張する。(申立書99頁5〜9行)
しかしながら、周知技術の内容、及び適用する動機付けについては、上記において説示したとおりであるから、甲2発明の「熱膨張性の耐火材層16」に代えて、周知技術を適用することはできない。また、甲2発明の「熱膨張性の耐火材層16」は、それ自体が「膨張してスラブ貫通孔部15」を塞ぐ作用をなすものであるから、孔を塞ぐ別の手段を追加する動機付けはない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。

エ 小括
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、公然実施発明、甲第9号証及び甲第10号証に記載の事項、並びに周知技術1、3ないし6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、いずれも、
「前記床スラブの貫通孔内となる位置であって、前記下部接続管の外周に高さ30mm以上150mm以下の耐火シートが巻き付けられ、」
及び
「前記耐火シートは前記傾斜管部よりも上方の前記下部接続管の外周に巻き付けられていること」の構成を有しているから、甲2発明とは、少なくとも上記相違点2と同様の相違点を有する。
相違点2については、上記(1)イで検討したとおりである。

したがって、本件発明2及び3は、甲2発明、公然実施発明、甲第9号証及び甲第10号証に記載の事項、並びに周知技術1、3ないし6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4ないし6について
本件発明4ないし6は、本件発明1ないし3のいずれかを引用し、発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(2)及び(3)と同様の理由により、甲2発明、公然実施発明、甲第9号証及び甲第10号証に記載の事項、並びに周知技術1、3ないし6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 サポート要件について
本件特許発明2、4〜6がサポート要件を満たしているかどうかについて検討する。
(1)本件特許発明2の課題及び解決手段について
本件特許明細書の段落【0048】には、以下の記載がある。
「【0048】
横リング33は、横ブッシュ31の拡径部に外嵌され、一端に設けられたフランジ部33aによって、横パッキン32の縦リング23からの離脱を防止する。
また、縦ブッシュ21、縦リング23、及び横ブッシュ31、横リング33は、いずれもポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、非膨張性黒鉛を0.1〜1.0重量部の割合で含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形して得られる。
なお、縦ブッシュ21、縦リング23、及び横ブッシュ31、横リング33は上部接続管11と同じ透明あるいは半透明のポリ塩化ビニル系樹脂を用いて透明あるいは半透明としてもよい。この場合、縦管P1や横管P3が適切な位置まで挿入されているか確認することができる。」
上記の記載から、本件特許発明2の課題は、実質的に「縦管や横管が適切な位置まで挿入されているか確認する」ことであると理解でき、またその解決手段とは、「横ブッシュ31」等を「透明あるいは半透明のポリ塩化ビニル系樹脂を用いて透明あるいは半透明」とすることであると理解できる。

(2)検討
本件特許発明2は、「前記横ブッシュを透明材料または半透明材料から形成」していることから、本件特許明細書に記載の本件特許発明の課題を解決する手段を有しているということができる。
よって、本件特許発明2は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものである。
本件特許発明2を引用して記載する本件特許発明4〜6も、上記解決手段と同様の構成を有している。

(3)申立人の主張
申立人は、本件特許発明2及び本件特許発明2を引用する本件特許発明4ないし6は、「上部接続管を透明材料または半透明材料から形成した」という技術的事項を備えていないため、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものではなく、また、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、上記技術的事項無しに、上記課題を解決できると当業者が認識することはできない。(申立書105頁8〜26行)
しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0048】には、上記(1)のとおり、「横管」が「適切な位置まで挿入されているか確認」することとの課題が示されている。上記課題と、発明の詳細な説明の段落【0007】に示される課題とは、排水集合継手における部位や改善すべき内容が異なっていることから、双方の課題は、並存しうる別の課題であると理解でき、また、一方の課題を解決する手段を備えれば、他方の課題を解決する手段を備えることを必須とすることはないものと解される。
本件特許発明2、4〜6は、上記(1)のとおり、「横ブッシュ」を「透明あるいは半透明」とする技術手段を採用しているから、「上部接続管を透明材料または半透明材料で形成した」という技術的事項が必須であるとはいえない。
したがって、本件特許発明2及び本件特許発明2を引用する本件特許発明4ないし6は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであり、また、本件特許の出願時の技術常識に照らして、上記課題を解決できると当業者が認識することができるものである。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明2、4〜6は、サポート要件を満たしている。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-03-11 
出願番号 P2020-190888
審決分類 P 1 651・ 537- Y (E03C)
P 1 651・ 121- Y (E03C)
P 1 651・ 113- Y (E03C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 森次 顕
西田 秀彦
登録日 2021-04-13 
登録番号 6868149
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 排水集合継手  
代理人 大槻 真紀子  
代理人 川越 雄一郎  
代理人 山口 洋  
代理人 西澤 和純  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ