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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1384695
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-04 
確定日 2022-05-31 
事件の表示 特願2017−545714「ユーザ制御による心臓モデル心室セグメンテーションを用いた心臓機能の超音波診断」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月15日国際公開、WO2016/142204、平成30年 3月22日国内公表、特表2018−507730、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)3月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年3月10日 アメリカ合衆国 2件、2015年3月30日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成31年2月28日に手続補正書が提出され、令和元年12月11日付けで拒絶理由が通知され、令和2年6月17日に意見書が提出されたが、同年7月27日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、これに対し、同年12月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされ、その後、当審から令和3年7月26日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和4年1月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年7月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし14に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献Aに記載された発明並びに引用文献B及びCに記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A 特開2010−259656号公報
B 特表2009−530008号公報(周知技術を示す文献)
C 国際公開第2014/195237号(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1 (明確性)本件出願は、特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された発明が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 (進歩性)本件出願の請求項1ないし14に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2又は3に記載された技術事項に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1 特開2010−259656号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2 国際公開第2014/195237号(拒絶査定時の引用文献C)
3 米国特許第6491636号明細書(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、令和4年1月27日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
超音波画像における心臓の心室の境界を決定する超音波診断イメージングシステムであって、
心臓画像データのソースと、
前記心臓画像データに応答する境界検出プロセッサであって、前記画像データにおける心筋の少なくとも内側及び外側の境界を識別するように構成される変形可能な心臓モデルを有する、境界検出プロセッサと、
ユーザが、前記識別される内側及び外側境界に関して、心室のユーザ規定境界を示すことを可能にするように構成されるユーザ制御部と、
前記ユーザ制御部及び前記境界検出プロセッサに結合される心室境界デリネータであって、前記心室境界デリネータは、前記境界検出プロセッサによって識別される前記境界の少なくとも一つに関して前記画像データにおいて前記ユーザ規定心室境界を位置させるように構成される、心室境界デリネータと
を有し、
前記変形可能な心臓モデルは、前記画像データにおける前記心筋の前記外側境界を識別する前に、前記心筋の前記内側境界を識別するように更に構成され、
前記変形可能な心臓モデルは、内側の心内膜境界及び小柱心筋と緻密心筋との間の外部インタフェースの両方を含む複数の心筋境界を位置させるように設計され、
前記変形可能な心臓モデルは、空間的に規定される数学的記述であって、通常の心臓の組織構造の数学的記述であり、
前記変形可能な心臓モデルの各部分は、前記画像データにおける心臓の解剖学的構造にフィッティングされるようにサイジングされ、変形される、
超音波診断イメージングシステム。」

なお、本願発明2ないし14は、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。引用文献の記載において以下同様。)。
(引1−ア)「【0016】
超音波診断装置100は、装置本体11に、超音波プローブ12、入力装置13およびモニタ14を接続して構成される。装置本体11はさらに、送受信ユニット21、Bモード処理ユニット22、ドプラ処理ユニット23、画像生成回路24、画像メモリ25、制御プロセッサ(CPU)26、内部記憶装置27、ソフトウェア格納部28、画像解析部29およびインタフェース部30を含む。」

(引1−イ)「【0018】
入力装置13は、オペレータからの各種条件や関心領域(ROI)などの指定を入力する。入力装置13は、例えば各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード、あるいはタッチコマンドスクリーン等の周知の入力デバイスを適宜に含み得る。」

(引1−ウ)「【0031】
被検体Pからの反射波を受けて超音波プローブ12から出力されたエコー信号に基づいて送受信ユニット21、Bモード処理ユニット22またはドプラ処理ユニット23、ならびに画像生成回路24によって生成された超音波診断画像は、表示画像として画像メモリ25に展開される。そして画像メモリ25に展開された画像メモリ25に展開された表示画像を表した画像信号を画像生成回路24がモニタ14へ出力することによって、モニタ14において表示画像が表示される。
【0032】
さて、検査対象物の輪郭の自動トレースの実施がユーザにより要求されたならば、制御プロセッサ26は図2に示すような処理を開始する。
【0033】
ステップSa1において制御プロセッサ26は、解析を実施するように画像解析部29に指示する。この指示を受けるとステップSb1において画像解析部29は、画像メモリ25に画像メモリ25に展開されている表示画像を解析し、心筋の輪郭を抽出するとともに、その輪郭に基づいて心筋の厚みを測定する。
【0034】
具体的には画像解析部29は、表示画像の輝度が大幅に変化する変化点を多数検出し、これらの変化点をトレースするトレースラインとして心筋の輪郭を抽出する。かくして、例えば表示画像が図3に細線で示すような画像である場合、例えば左心室の心腔側の面については図3に破線で示すような輪郭が抽出される。同様にして、右心室の心腔側の面や、心筋の外側の面についても輪郭が抽出される。以下、心腔側の面について抽出した輪郭を内輪郭、心筋の外側の面について抽出した輪郭を外輪郭と称する。
【0035】
また画像解析部29は、図4に示すように内輪郭上の複数の変化点Pdのそれぞれに関して、当該変化点Pdで内輪郭に直交する直線(図4中に破線で示す)の内輪郭と外輪郭との間の長さとして、あるいは左心室の内輪郭と右心室の内輪郭との間の長さとして心筋の厚みを測定する。なお、厚みを求める対象とする変化点Pdは、内輪郭を抽出するために検出した変化点の全てとしても良いし、一部のみとしても良い。
【0036】
ステップSb2において画像解析部29は、抽出した輪郭および測定した厚みを制御プロセッサ26に通知する。そしてこれをもって画像解析部29は、図2の処理を終了する。
【0037】
ステップSa2において制御プロセッサ26は、上記のように画像解析部29から通知された輪郭に基づいて、抽出された輪郭を表示画像において表すための輪郭画像を生成する。
【0038】
ステップSa3において制御プロセッサ26は、標準補正率による自動補正機能(以下、標準補正)が有効に設定されているか否かを確認する。なお当該標準補正の有効/無効は、制御プロセッサ26がユーザの指示に応じて予め設定する。
【0039】
標準補正が有効に設定されているならば制御プロセッサ26は、ステップSa3からステップSa4へ進む。ステップSa4において制御プロセッサ26は、輪郭画像を標準補正率で補正する。なお、検査対象物が心筋である場合、内輪郭のみを補正することとする。
【0040】
具体的には例えば図5に示すように、複数の変化点Pdのそれぞれを、各変化点Pdに関して測定された厚みを標準補正率で変化させるように移動させて複数の補正点Pcを求める。より具体的には、内輪郭の垂線上の位置を、内輪郭と交差する位置(変化点Pdの位置)を0%の位置、外輪郭と交差する位置を100%の位置とし、標準補正率に相当する位置として補正点Pcを求める。そしてこれらの複数の補正点Pcをトレースするトレースラインとして補正された内輪郭を求める。
【0041】
ステップSa4での補正が終了したならば、制御プロセッサ26はステップSa5へ進む。一方、標準補正が無効に設定されているならば、制御プロセッサ26はステップSa3からステップSa5へ進む。ステップSa5において制御プロセッサ26は、ステップSa4を標準補正が有効である場合にはステップSa4で補正した輪郭画像を、また標準補正が無効である場合にはステップSa2で生成した輪郭画像を、例えば図6に示すようにモニタ14における表示画像に重畳表示する。このときに制御プロセッサ26は、図6に示すように適用済みの補正率を表すGUI(graphical user interface)51もモニタ14に表示させる。
【0042】
ステップSa6において制御プロセッサ26は、補正率の変更が要求されるのを待ち受ける。制御プロセッサ26は、例えばGUI51に含まれたスライダ51aを左右に移動させる操作として補正率の変更の要求を受け付ける。
【0043】
補正率の変更がユーザにより要求されたならば制御プロセッサ26は、ステップSa6からステップSa7へ進む。ステップSa7において制御プロセッサ26は、ユーザの要求に応じた補正率を設定する。具体的には制御プロセッサ26は、例えばスライダ51aの位置に応じて補正率を設定する。
【0044】
ステップSa8において制御プロセッサ26は、輪郭画像をステップSa7で新たに設定した補正率で補正する。この補正のための処理は、標準補正と同様である。
【0045】
ステップSa9において制御プロセッサ26は、表示画像に重畳表示する輪郭画像をステップSa8にて補正したものに更新する。そしてこののちに制御プロセッサ26は、ステップSa10,11の待ち受け状態に移行する。
【0046】
制御プロセッサ26は、ステップSa10,11の待ち受け状態にあるときに補正率のさらなる変更がユーザにより要求されたならば、ステップSa10からステップSa7に移行し、ステップSa7乃至ステップSa9を上述と同様に処理する。
【0047】
制御プロセッサ26は、ステップSa10,11の待ち受け状態にあるときに補正率の確定がユーザにより要求されたならば、ステップSa11からステップSa12に移行する。ステップSa12において制御プロセッサ26は、この時点で設定されている補正率を加味するように標準補正率を更新する。更新後の標準補正率をどのように求めるかは任意であるが、例えば過去に確定された補正率の平均値などのような統計値を求めて、これを更新後の標準補正率とすることが考えられる。
【0048】
標準補正率を更新し終えたならば、制御プロセッサ26は図2に示す処理を終了する。なお、ステップSa12が完了した場合以外においても、ユーザによる終了指示がなされたならば制御プロセッサ26は図2に示す処理を終了する。
【0049】
かくして本実施形態の超音波診断装置100によれば、心筋の厚みを補正率に応じて変化させるように内輪郭が補正される。従って、ユーザが自動的に抽出された内輪郭が心筋のささくれ立った部分であり不適切であると判断したならば、補正率を調整するだけで内輪郭をより心筋の内側の本来の表面に合わせるように容易に調整することができる。
【0050】
また超音波診断装置100によれば、予め定められた標準補正率での補正を自動的に行うので、ユーザ個々の感覚に頼らない定量的な補正が行える。これにより、例えば、医師毎のスキルの違いに基づく誤差の影響を低減して、定量的な診断やデータ収集が行える。
【0051】
また超音波診断装置100によれば、標準補正を実施するか否かを任意に設定できるので、ユーザニーズに応じた柔軟な運用が可能である。
【0052】
また超音波診断装置100によれば、標準補正を行った後であってもユーザの指示に応じて設定した補正値でのさらなる補正を行うことができるので、例えばスキルの高い医師などは標準補正で補正し切れていない場合にさらなる適切な補正を行わせることが可能である。
【0053】
また超音波診断装置100によれば、ユーザの指示に応じて設定した補正値に基づいて標準補正率を更新するので、上記のようなスキルの高い医師などによる補正率の設定を考慮して標準補正率をより適正化するように自動的に学習できる。」

(引1−エ)【図1】




(引1−オ)【図2】




(引1−カ)【図5】




(引1−キ)【図6】




(2)上記(引1−ア)ないし(引1−キ)の記載から、引用文献1には、
「 装置本体11に、超音波プローブ12、入力装置13およびモニタ14を接続して構成される超音波診断装置100であって、
装置本体11はさらに、送受信ユニット21、Bモード処理ユニット22、ドプラ処理ユニット23、画像生成回路24、画像メモリ25、制御プロセッサ(CPU)26、内部記憶装置27、ソフトウェア格納部28、画像解析部29およびインタフェース部30を含み、
入力装置13は、例えば各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード、あるいはタッチコマンドスクリーン等の周知の入力デバイスを適宜に含み得るものであって、オペレータからの各種条件や関心領域(ROI)などの指定を入力し、
生成された超音波診断画像は、表示画像として画像メモリ25に展開され、表示画像を表した画像信号を画像生成回路24がモニタ14へ出力することによって、モニタ14において表示画像が表示され、
検査対象物の輪郭の自動トレースの実施がユーザにより要求されたならば、制御プロセッサ26は、解析を実施するように画像解析部29に指示し、
画像解析部29は、画像メモリ25に展開されている表示画像を解析し、輝度が大幅に変化する変化点を多数検出し、これらの変化点をトレースするトレースラインとして左心室の心腔側の面及び心筋の外側の面について輪郭を抽出する(以下、心腔側の面について抽出した輪郭を内輪郭、心筋の外側の面について抽出した輪郭を外輪郭と称する)とともに、その輪郭に基づいて心筋の厚みを測定し、抽出した輪郭および測定した厚みを制御プロセッサ26に通知し、
制御プロセッサ26は、上記のように画像解析部29から通知された輪郭に基づいて、抽出された輪郭を表示画像において表すための輪郭画像を生成し、生成した輪郭画像をモニタ14における表示画像に重畳表示するとともに、GUI51もモニタ14に表示させて、GUI51に含まれたスライダ51aを左右に移動させる操作として補正率の変更の要求を受け付け、
補正率の変更がユーザにより要求されたならば制御プロセッサ26は、スライダ51aの位置に応じて補正率を設定し、複数の変化点Pdのそれぞれについて、内輪郭の垂線上の位置を、内輪郭と交差する位置(変化点Pdの位置)を0%の位置、外輪郭と交差する位置を100%の位置とし、補正率に相当する位置として補正点Pcを求め、これらの複数の補正点Pcをトレースするトレースラインとして補正された内輪郭を求め、表示画像に重畳表示する輪郭画像を補正したものに更新する、
超音波診断装置100。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

2 引用文献2について
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献2には、以下の記載がある。
(引2−ア)「 The idea of the invention is to automatically simulate and evaluate the position of the cardiac implant within a plurality of 3D cardiac images based on a segmentation of said images. Said cardiac images may be 3D CT or MRI images. In a preferred embodiment, 3D transesophageal echography (TEE) images acquired with an ultrasound imaging system may be used.」(明細書第5頁5〜9行)
(当審訳: 本発明の考えは、複数の3D心臓画像内で心臓インプラントの位置を自動的にシミュレートし評価することであり、前記画像のセグメント化に基づいている。前記心臓画像は、3DCT又はMRI画像であり得る。好適な実施形態において、超音波イメージングシステムにより取得される3D経食道心エコー(TEE)画像が使用されることができる。)

(引2−イ)「 According to a further preferred embodiment, the segmentation unit is configured to segment the target implant region and the locally adjacent region based on a model-based segmentation.
The model-based segmentation may, for example, be conducted in a similar manner as this is described for a model-based segmentation of CT images in Ecabert, O. et al. "Automatic model-based segmentation of the heart in CT images", IEEE Transactions on Medical Imaging, Vol. 27(9), pp. 1189-1291, 2008, which is herein incorporated by reference. This model-based segmentation makes use of a geometrical mesh model of the anatomical structures of the heart and may comprise respective segments representing respective anatomic features of the heart. Such a model-based segmentation usually starts with the identification of the position and orientation of the heart within the 3D image data. This may, for example, be done using a 3D implementation of the Generalized Hough Transform. Pose misalignment may be corrected by matching the geometrical mesh model to the image, making use of a global similarity transformation. The segmentation comprises an initial model that roughly represents the shape of the anatomical features of the heart. Said model may be a multi-compartment mesh model with triangular meshes. This initial model will be deformed by a transformation. This transformation is decomposed in two transformations of different kinds: a global transformation that can translate, rotate or rescale the initial shape of the geometrical model, if needed, and a local deformation that will actually deform the geometrical model so that it matches more precisely to the anatomical object of interest. This is usually done by defining the normal vectors of the surface of the geometrical model to match the image gradient; that is to say, the segmentation will look in the received 3D imaging data for bright-to-dark edges (or dark-to-bright), which usually represent the tissue borders in the images, i.e. the boundaries of the anatomical features of the heart. Further details how this model-based segmentation may be adapted to the purposes of the herein used dynamic segmentation of moving images (e.g. 4D TEE images) will be explained further below with reference to the drawings.」(明細書第9頁9行〜第10頁2行)
(当審訳: 他の好適な実施形態によれば、セグメント化ユニットは、モデルベースのセグメント化に基づいて、ターゲットインプラント領域及び局所的に隣接する領域をセグメント化するように構成される。
モデルベースのセグメント化は、例えば、Ecabert, O. らによる"Automatic model-based segmentation of the heart in CT images", IEEE Transactions on Medical Imaging, Vol. 27(9), pp. 1189-1291, 2008にCT画像のモデルベースのセグメント化に関して記述されているのと同じような態様で実施されることができ、この文献の内容は、参照によって本願明細書に盛り込まれるものとする。このモデルベースのセグメント化は、心臓の解剖学的構造の幾何学的メッシュモデルを利用し、心臓の個々の解剖学的フィーチャを表現する個々のセグメントを含むことができる。このようなモデルベースのセグメント化は、通常、3D画像データ内における心臓の位置及び方向の識別から始める。これは、例えば、一般化ハフ変換の3Dインプリメンテーションを使用して行われることができる。姿勢のミスアライメントは、大域的相似変換を使用して、画像に対し幾何学的メッシュモデルをマッチングすることにより補正されることができる。セグメント化は、心臓の解剖学的フィーチャの形状をおおまかに表現する初期モデルを含む。前記モデルは、三角形メッシュを有するマルチコンパートメントメッシュモデルであり得る。この初期モデルは、変換によって変形される。この変換は、異なる種類の2つの変換に分解される:必要に応じて行われる、幾何学的モデルの初期形状を平行移動、回転又はリスケールすることができる大域的変換、及び幾何学的モデルが解剖学的な関心対象に一層正確にマッチするように幾何学的モデルを実際に変形する局所的変換。これは、通常、幾何学的モデルの表面の垂線ベクトルを画像勾配にマッチさせるように規定することによって行われる;すなわち、セグメント化は、入力した3D画像データにおいて、明−暗のエッジ(又は暗−明)を探すものであって、それは、通常画像内の組織境界、すなわち心臓の解剖学的フィーチャの境界を表している。このモデルベースのセグメント化を、ここで使用される動く画像(例えば4DTEE画像)の動的なセグメント化の目的のために適応させる方法の更なる詳細が、図面を参照して更に以下に説明される。)

(引2−ウ)「 Fig. 1 shows a simplified and schematic block diagram to illustrate the principal components of the presented medical imaging system, which may be particularly used for planning an implantation of a cardiac implant. The medical imaging system is therein in its entirety denoted with reference numeral 10.
It comprises a receiving unit (RU) 12 which is configured to receive a plurality of 3D cardiac images 14. Said plurality of 3D cardiac images 14 is preferably a sequence of timely consecutive frames that are acquired with a medical imaging device (MID) 16. This medical imaging device 16 may be a volumetric CT scanner, an MRI scanner or a 3D ultrasound system. A particular example of a 3D ultrasound system which may be applied for the system of the current invention is the iE33 ultrasound system sold by the applicant, in particular together with an X7-2 t TEE transducer of the applicant or another 3D transducer using the xMatrix technology of the applicant. Even though the present invention is not limited to ultrasound imaging, the following exemplary embodiments will be described with reference to the preferably used 4D TEE ultrasound imaging technique (i.e. time-dependent 3D TEE images).」(明細書第10頁28行〜第11頁8行)
(当審訳: 図1は、特に心臓インプラントの植え込みを計画するために使用され得る提示された医療イメージングシステムの主要なコンポーネントを示す簡略化された概略ブロック図を示す。医療イメージングシステムは、その全体が参照数字10によって示されている。
それは、複数の3D心臓画像14を受け取るように構成される入力ユニット(RU)12を有する。前記複数の3D心臓画像14は、好適には、医療画像装置(MID)16によって取得される時間的に連続するフレームのシーケンスである。この医療画像装置16は、ボリュメトリックCTスキャナ、MRIスキャナ又は3D超音波システムであり得る。本発明のシステムのために適用されることができる3D超音波システムの具体的な例は、出願人によって販売されているiE33超音波システムであり、特に出願人のX7−2tTEEトランスデューサ又は出願人のxMatrix技術を使用する別の3Dトランスデューサとともに用いられる。本発明は超音波イメージングに制限されないが、以下の例示的な実施形態は、好適に使用される4DTEE超音波イメージング技法(すなわち時間依存の3DTEE画像)に関して記述される。)

(引2−エ)「2. Second method step S12 ("SEGMENTATION")
In the next step, each frame of the received 4D TEE image sequence is segmented. This is preferably made by a model-based segmentation of the valve apparatus of the heart 32 which is performed by the segmentation unit 22.
During this step, the anatomical features of interest are segmented in order to being able to simulate the movement of these anatomical features over time. Anatomical features that are of particular interest in a TAVI are the aortic valve, the left ventricular outflow tract, into which the cardiac implant is inserted, as well as the anterior mitral leaflet, since, depending on the position and size of the cardiac implant, the anterior mitral leaflet may collide with the medical implant during its natural movement.
Fig. 3 shows a TEE ultrasound image from which it can be seen that the anterior mitral leaflet 34 in its open position at least partly extends into the left ventricular outflow tract 36 where the medical implant may be placed. In terms of the present invention, the left ventricular outflow tract 36 is therefore denoted as target implant region 38, and the anterior mitral valve leaflet 34 is denoted as locally adjacent region 40 that could interfere with the cardiac implant 42, as this is schematically illustrated in Fig. 4.
In the segmentation step, at least the target implant region 38 and the locally adjacent region 40 are segmented in a multi-step approach in order to determine the dynamics of the left ventricular outflow tract 36 and the anterior mitral leaflet 34. The model that is used thereto is represented as a triangular surface model with mean shape m(当審注:原文の「m」はオーバーバー付き). First, the heart position is located using an adapted Generalized Hough Transform. Next, it is iteratively refined by determining the parameters of an affine transformation T that minimize the distance to detected boundaries (external energy Eext). Finally, multiple iterations of a deformable adaptation are performed that is balanced between attraction to image boundaries (Eext) and mean shape preservation (Eint). Details of such a boundary detection technique may be found in the scientific paper of Ecabert, O. et al. mentioned above, as well as in Peters, J. et al : "Optimizing boundary detection via simulated search with applications to multi-modal heart segmentation", Medical Image Analysis 14(1) (2010) 70, which is herein incorporated by reference as well.
For the illustrated example of TAVI planning, it is sufficient to use a triangular surface model of the left heart that comprises endocardial surfaces of the left ventricle, the left atrium, the ascending aorta, and of the aortic and mitral valve.」(明細書第12頁23行〜第13頁19行)
(当審訳:2.第2の方法ステップS12(「セグメント化」)
次のステップにおいて、受け取られた4DTEE画像シーケンスの各フレームは、セグメント化される。これは、好適には、セグメント化ユニット22によって実施される心臓32の弁装置のモデルベースのセグメント化によって行われる。
このステップの間、関心のある解剖学的フィーチャは、ある時間にわたるこれらの解剖学的フィーチャの動きをシミュレートすることを可能にするためにセグメント化される。TAVIにおいて特に関心のある解剖学的フィーチャは、大動脈弁、心臓インプラントが挿入される左心室流出路であり、心臓インプラントの位置及びサイズに依存して、前側の僧帽弁弁尖がその自然な動きの最中に医療インプラントと衝突し得ることから、前側の僧帽弁弁尖も同様である。
図3は、TEE超音波画像を示しており、図から、その開いた位置にある前側の僧帽弁弁尖34が、医療インプラントが配置され得る左心室流出路36に少なくとも部分的に延在することがわかる。したがって、本発明に関しては、図4に概略的に示されるように、左心室流出路36はターゲットインプラント領域38として示され、前側の僧帽弁弁尖34は、心臓インプラント42と干渉し得る局所的に隣接する領域40として示される。
セグメント化ステップにおいて、左心室流出路36及び前側の僧帽弁弁尖34の動態を決定するために、少なくともターゲットインプラント領域38及び局所的に隣接する領域40が、マルチステップアプローチにおいてセグメント化される。ここで用いられるモデルは、平均形状mを有する三角形表面モデルとして表現される。最初に、適応された一般化ハフ変換を使用して、心臓位置が位置付けられる。次に、それは、検出された境界(外部エネルギーEext)までの距離を最小にするアフィン変換Tのパラメータを決定することによって、反復的に洗練される。最後に、変形可能な適応化の複数の繰り返しが実施され、画像境界(Eext)への引張と平均形状保全(Eint)の間でバランスされる。このような境界検出技法の詳細は、前述のEcabert, O. らの学術論文や、Peters, J. らによる"Optimizing boundary detection via simulated search with applications to multi-modal heart segmentation", Medical Image Analysis 14(1) (2010) 70に示されており、その内容は、参照によって本願明細書に盛り込まれるものとする。
TAVI計画の図示される例については、左心室、左心房及び上行大動脈の心内膜表面、並びに大動脈弁及び僧帽弁の心内膜表面を含む左心の三角形表面モデルを使用すれば十分である。)

(2)上記(引2−ア)ないし(引2−エ)の記載から、引用文献2には、
「 超音波イメージングシステムにより取得される3D経食道心エコー(TEE)画像に対して、心臓の解剖学的構造の幾何学的メッシュモデルを利用して、心臓の個々の解剖学的フィーチャを表現する個々のセグメントを求めるモデルベースのセグメント化であって、
一般化ハフ変換の3Dインプリメンテーションを使用して、3D画像データ内における心臓の位置及び方向の識別を行い、
大域的相似変換を使用して、画像に対し幾何学的メッシュモデルをマッチングすることにより、姿勢のミスアライメントを補正し、
幾何学的メッシュモデルは、三角形メッシュを有するマルチコンパートメントメッシュモデルであり、心臓の解剖学的フィーチャの形状をおおまかに表現する初期モデルを含み、
初期モデルは、幾何学的モデルの初期形状を平行移動、回転又はリスケールすることができる大域的変換、及び幾何学的モデルが解剖学的な関心対象に一層正確にマッチするように幾何学的モデルを実際に変形する局所的変換によって変形され、
変換は、3D画像データにおいて、通常画像内の組織境界、すなわち心臓の解剖学的フィーチャの境界を表している明−暗のエッジ(又は暗−明)を探し、幾何学的モデルの表面の垂線ベクトルを画像勾配にマッチさせるように規定することによって行われる、
セグメント化技術。」
という技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

3 引用文献3について
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献3には、以下の記載がある。
(引3−ア)「 In one mode of acquisition in accordance with the present invention, the clinician observes the beating heart in real time while manipulating the transducer probe so that the LV is being viewed distinctly in maximal cross-section. When the four chamber view is being acquired continuously and clearly, the clinician depresses the "freeze" button to retain the images of the current heart cycle in the image frame or Cineloop(R)(当審注:「(R)」は丸囲い付きの「R」を表す。) memory of the ultrasound system. The Cineloop memory will retain all of the images in the memory at the time the freeze button is depressed which, depending upon the size of the memory, may include the loop being viewed at the time the button was depressed as well as images of a previous or subsequent loop. A typical Cineloop memory may hold 400 image frames, or images from about eight to ten heart cycles. The clinician can then scan through the stored images with a trackball, arrow key, or similar control to select the loop with the images best suited for analysis. When the clinician settles on a particular loop, the "ABD" protocol is actuated to start the border drawing process.
When the ABD protocol is actuated the display changes to a dual display of the end diastole image 16 and the end systole image 18 displayed side-by-side as shown in FIG. 2. The ultrasound system identifies all of the images comprising the selected loop by the duration of the ECG waveform associated with the selected loop. The ultrasound system also recognizes the end diastole and end systole points of the cardiac cycle in relation to the R-wave of the ECG waveform 12 and thus uses the ECG waveform R-wave to identify and display the ultrasound images at these two phases of the heart cycle. The dual display of FIG. 2 shows the ECG waveform 12 for the selected heart cycle beneath each ultrasound image, with the marker 14 indicating the end diastole and end systole phases at which the two displayed images were acquired.
Since the Cineloop memory retains all of the images of the cardiac cycle, the user has the option to review all of the images in the loop, including those preceding and succeeding those shown in the dual display. For instance, the clinician can "click" on either of the images to select it, then can manipulate the trackball or other control to sequentially review the images which precede or succeed the one selected by the ultrasound system. Thus, the clinician can select an earlier or later end diastole or end systole image from those selected by the ultrasound system. When the clinician is satisfied with the displayed images 16 and 18, the ABD processor is actuated to automatically delineate the LV borders on the two displayed images as well as the intervening undisplayed images between end diastole and end systole.
In this example the ABD processor begins by drawing the endocardial border of the LV in the end systole image 18. The first step in drawing the border of the LV is to locate three key landmarks in the image, the medial mitral annulus (MMA), the lateral mitral annulus (LMA), and the endocardial apex. This process begins by defining a search area for the MMA as shown in FIG. 3a, in which the ultrasound image grayscale is reversed from white to black for ease of illustration. Since the ABD processor is preconditioned in this example to analyze four-chamber views of the heart with the transducer 20 viewing the heart from its apex, the processor expects the brightest vertical nearfield structure in the center of the image to be the septum which separates the left and right ventricles. This means that the column of pixels in the image with the greatest total brightness value should define the septum. With these cues the ABD processor locates the septum 22, and then defines an area in which the MMA should be identified. This area is defined from empirical knowledge of the approximate depth of the mitral valve from the transducer in an apical view of the heart. A search area such as that enclosed by the box 24 in FIG. 3a is defined in this manner.
A filter template defining the anticipated shape of the MMA is then cross correlated to the pixels in the MMA search area. While this template may be created from expert knowledge of the appearance of the MMA in other four-chamber images as used by Wilson et al. in their paper "Automated analysis of echocardiographic apical 4-chamber images," Proc. of SPIE, August, 2000, the present inventors prefer to use a geometric corner template. While a right-angle corner template may be employed, in a constructed embodiment the present inventors use an octagon corner template 28 (the lower left corner of an octagon) as their search template for the MMA, as shown at the right side of FIG. 6a. In practice, the octagon template is represented by the binary matrix shown at the left side of FIG. 6a. The ABD processor performs template matching by cross correlating different sizes of this template with the pixel data in different translations and rotations until a maximum correlation coefficient above a predetermined threshold is found. To speed up the correlation process, the template matching may initially be performed on a reduced resolution form of the image, which highlights major structures and may be produced by decimating the original image resolution. When an initial match of the template is found, the resolution may be progressively restored to its original quality and the location of the MMA progressively refined by template matching at each resolution level.
Once the MMA has been located a similar search is made for the location of the LMA, as shown in FIG. 3b. The small box 26 marks the location established for the MMA in the image 18, and a search area to the right of the MMA is defined as indicated by the box 34. A right corner geometric template, preferably a right octagon corner template 38 as shown in FIG. 6b, is matched by cross-correlation to the pixel values in the search area of box 34. Again, the image resolution may be decimated to speed the computational process and different template sizes may be used. The maximal correlation coefficient exceeding a predetermined threshold defines the location of the LMA.
With the MMA 26 and the LMA 36 found, the next step in the process is to determine the position of the endocardial apex, which may be determined as shown in FIG. 4. The pixel values of the upper half of the septum 22 are analyzed to identify the nominal angle of the upper half of the septum, as indicated by the broken 43. The pixel values of the lateral wall 42 of the LV are analyzed to identify the nominal angle of the upper half of the lateral wall 42, as shown by the broken line 45. If the lateral wall angle cannot be found with confidence, the angle of the scanlines on the right side of the sector is used. The angle between the broken lines 43,45 is bisected by a line 48, and the apex is initially assumed to be located at some point on this line. With the horizontal coordinate of the apex defined by line 48, a search is made of the slope of pixel intensity changes along the line 48 to determine the vertical coordinate of the apex. This search is made over a portion of line 48 which is at least a minimum depth and not greater than a maximum depth from the transducer probe, approximately the upper one-quarter of the length of line 48 above the mitral valve plane between the MMA 26 and the LMA 36. Lines of pixels along the line 48 and parallel thereto are examined to find the maximum positive brightness gradient from the LV chamber (where there are substantially no specular reflectors) to the heart wall (where many reflectors are located). A preferred technique for finding this gradient is illustrated in FIG. 7. FIG. 7a shows a portion of an ultrasound image including a section of the heart wall 50 represented by the brighter pixels in the image. Drawn normal to the heart wall 50 is a line 48 which, from right to left, extends from the chamber of the LV into and through the heart wall 50. If the pixel values along line 48 are plotted graphically, they would appear as shown by curve 52 in FIG. 7b, in which brighter pixels have greater pixel values. The location of the endocardium is not the peak of the curve 52, which is in the vicinity of the center of the heart wall, but relates to the sense of the slope of the curve. The slope of the curve 52 is therefore analyzed by computing the differential of the curve 52 as shown by the curve 58 in FIG. 7c. This differential curve has a peak 56 which is the maximal negative slope at the outside of the heart wall (the epicardium). The peak 54, which is the first major peak encountered when proceeding from right to left along curve 58, is the maximal positive slope which is the approximate location of the endocardium. The pixels along and parallel to line 48 in FIG. 4 are analyzed in this manner to find the endocardial wall and hence the location of the endocardial apex, marked by the small box 46 in FIG. 4.
Once these three major landmarks of the LV have been located, one of a number of predetermined standard shapes for the LV is fitted to the three landmarks and the endocardial wall. Three such standard shapes are shown in FIGS. 5a, 5b, and 5c. The first shape, border 62, is seen to be relatively tall and curved to the left. The second shape, border 64, is seen to be relatively short and rounded. The third shape, border 66, is more triangular. Each of these standard shapes is scaled appropriately to fit the three landmarks 26,36,46. After an appropriately scaled standard shape is fit to the three landmarks, an analysis is made of the degree to which the shape fits the border in the echo data. This may be done, for example, by measuring the distances between the shape and the heart wall at points along the shape. Such measurements are made along paths orthogonal to the shape and extending from points along the shape. The heart wall may be detected using the operation discussed in FIGS. 7a-7c, for instance. The shape which is assessed as having the closest fit to the border to be traced, by an average of the distance measurements, for instance, is chosen as the shape used in the continuation of the protocol.
The chosen shape is then fitted to the border to be traced by "stretching" the shape, in this example, to the endocardial wall. The stretching is done by analyzing 48 lines of pixels evenly spaced around the border and approximately normal to heart wall. The pixels along each of the 48 lines are analyzed as shown in FIGS. 7a-7c to find the adjacent endocardial wall and the chosen shape is stretched to fit the endocardial wall. The baseline between points 26 and 36 is not fit to the shape but is left as a straight line, as this is the nominal plane of the mitral valve. When the shape has been fit to points along the heart wall, the border tracing is smoothed and displayed over the end systole image as shown in the image 78 on the right side of the dual display of FIG. 8. The display includes five control points shown as X's along the border between the MMA landmark and the apex, and five control points also shown as X's along the border between the apex landmark and the LMA landmark. In this example the portion of line 48 between the apex and the mitral valve plane is also shown, as adjusted by the stretching operation.
With the end systole border drawn in this manner the ABD processor now proceeds to determine the end diastole border. It does so, not by repeating this operation on the end diastole image 16, but by finding a border on each intervening image in sequence between end systole and end diastole. In a given image sequence this may comprise 20-30 image frames. Since this is the reverse of the sequence in which the images were acquired, there will only be incremental changes in the endocardial border location from one image to the next. It is therefore to be expected that there will be a relatively high correlation between successive images. Hence, the end systole border is used as the starting location to find the border for the previous image, the border thus found for the previous image is used as the starting location to find the border for the next previous image, and so forth. In a constructed embodiment this is done by saving a small portion of the end systole image around the MMA and the LMA and using this image portion as a template to correlate and match with the immediately previous image to find the MMA and the LMA locations in the immediately previous image. The apex is located as before, by bisecting the angle between the upper portions of the septum and lateral LV wall, then locating the endocardium by the maximum slope of the brightness gradient. Since the LV is expanding when proceeding from systole to diastole, confidence measures include the displacement of the landmark points in an outward direction from frame to frame. When the three landmark points are found in a frame, the appropriately scaled standard shape is fit to the three points. Another confidence measure is distention of the standard shapes; if a drawn LV border departs too far from a standard shape, the process is aborted.
Border delineation continues in this manner until the end diastole image is processed and its endocardial border defined. The dual display then appears as shown in FIG. 8, with endocardial borders drawn on both the end diastole and end systole images 76,78.」(第3欄16行〜第6欄49行)
(当審訳: 本発明による取得の1つのモードでは、臨床医は、LVが最大断面ではっきりと見られるように、トランスデューサプローブを操作しながら、鼓動する心臓をリアルタイムで観察する。4つのチャンバー画像が継続的かつ明確に取得されている場合、臨床医は「フリーズ」ボタンを押して、超音波システムの画像フレーム又はシネループ(R)(当審注:「(R)」は丸囲い付きの「R」を表す。)メモリに現在の心周期の画像を保持する。シネループメモリは、フリーズボタンが押されたときのすべての画像をメモリ内に保持する。これには、メモリのサイズに応じて、ボタンが押されたときに表示されていたループと同様に、以前の又は後続のループが含まれる。典型的なシネループメモリは、400の画像フレーム、又は約8〜10の心臓サイクルの画像を保持できる。次に、臨床医は、トラックボール、矢印キー、又は同様のコントロールを使用して保存された画像をスキャンし、分析に最適な画像を含むループを選択することができる。臨床医が特定のループを設定すると、「ABD」プロトコルが作動して境界線の描画プロセスが開始される。
ABDプロトコルが作動されると、表示は、図2に示されるように、拡張末期画像16及び収縮末期画像18が並んで表示される二画面表示に変わる。超音波システムは、選択されたループに関連付けられたECG波形の持続時間によって、選択されたループを構成する全ての画像を識別する。超音波システムはまた、ECG波形12のR波に関連して心周期の収縮末期及び収縮末期の点を認識し、したがって、ECG波形R波を使用して心周期のこれらの2つの相の超音波画像を識別し、表示する。図2の二画面表示は、各超音波画像の下に選択された心周期のECG波形12を示し、2つの表示された画像が取得された拡張末期及び収縮末期の位相を示すマーカー14を含んでいる。
シネループメモリは心周期の全ての画像を保持するため、ユーザーには、二画面表示に表示される画像の前後のループ内を含むループ内の全ての画像を確認するオプションがある。例えば、臨床医はいずれかの画像をクリックして選択し、トラックボールまたはその他のコントロールを操作して、超音波システムによって選択された画像の前後の画像を順番に確認できる。したがって、臨床医は、超音波システムによって選択されたものより前の又は後の拡張末期又は収縮末期の画像を選択することができる。臨床医が表示された画像16及び18に満足すると、ABDプロセッサが作動して、2つの表示された画像と、拡張末期と収縮末期の間にある未表示の画像にLV境界を自動的に描写する。
この例では、ABDプロセッサは、収縮末期画像18にLVの心内膜境界を描画することから始める。LVの境界を描画する最初のステップは、画像内の3つの主要なランドマーク、内側僧帽弁輪(MMA)、外側僧帽弁輪(LMA)及び心内膜頂点の位置を決めることである。このプロセスは、図3aに示すように、MMAの探索領域を定義することから始まる。図3aでは、図示を容易にするために、超音波画像のグレースケールの白黒が反転されている。この例では、ABDプロセッサは、トランスデューサ20が心臓をその頂点から見ている心臓の4腔像を分析するように事前調整されているので、プロセッサは、画像の中心にある最も明るい垂直近視野の構造が、左心室と右心室を分離する隔壁であると予測する。これは、画像内の合計輝度値が最大のピクセルの列が隔壁を定義すべきであることを意味する。これらの手がかりを使用して、ABDプロセッサは隔壁22を特定し、MMAを識別する領域を定義する。この領域は、心臓の頂点視野でのトランスデューサからの僧帽弁のおおよその深さの経験的知識から定義される。図3aのボックス24で囲まれたような探索領域は、このようにして定義される。
次に、MMAの予想される形状を定義するフィルターテンプレートが、MMA探索領域のピクセルと相互相関される。このテンプレートは、ウィルソンらが、彼らの論文「心エコー検査の心尖部4腔画像の自動分析」、Proc. of SPIE、2000年8月で使用している他の4腔画像でのMMAの外観に関する専門知識から作成することができるが、本発明者らは、幾何学的コーナーテンプレートを使用することを好む。直角コーナーテンプレートを使用することができるが、構築された実施形態では、本発明者らは、図6aの右側に示すように、MMAの探索テンプレートとして八角形コーナーテンプレート28(八角形の左下隅)を使用する。実際には、八角形テンプレートは、図6aの左側に示されるバイナリ行列によって表される。ABDプロセッサは、所定の閾値を超える最大相関係数が見つかるまで、様々なサイズのテンプレートとピクセルデータとを、様々な平行移動及び回転において相互相関させるテンプレートマッチングを実行する。相関プロセスを高速化するために、テンプレートマッチングは、最初に画像の低解像度形式で実行される。これは、主要な構造を強調表示し、元の画像解像度を間引くことによって生成される。テンプレートの最初の一致が見つかると、解像度は徐々に元の品質に復元され、MMAの場所は各解像度レベルでのテンプレートマッチングによって徐々に洗練される。
MMAが特定されると、図3bに示されるように、LMAの場所について同様の探索が行われる。小さなボックス26は、画像18内のMMAのために確立された位置をマークし、MMAの右側の探索領域は、ボックス34によって示されるように定義される。右隅の幾何学的テンプレート、好ましくは図6bに示すように、右八角形のコーナーテンプレート38は、ボックス34の探索領域内のピクセル値との相互相関によって照合される。この場合も、計算プロセスを高速化するために画像解像度を間引きすることができ、異なるテンプレートサイズを使用することができる。所定の閾値を超える最大相関係数は、LMAの位置を定義する。
MMA26及びLMA36が見出された状態で、プロセスの次のステップは、心内膜の頂点の位置を決定することであり、これは、図4に示されるように決定され得る。中隔22の上半分のピクセル値が分析されて、破線43によって示されるように、中隔の上半分の公称角度が識別される。LVの側壁42のピクセル値は、破線45によって示されるように、側壁42の上半分の公称角度を識別するために分析される。側壁の角度が自信を持って見つからない場合は、扇形の右側のスキャンラインの角度が使用される。破線43、45の間の角度は、線48によって二分され、頂点は、最初、この線上のある点に位置すると想定される。線48によって定義された頂点の水平座標を用いて、線48に沿ったピクセル強度変化の傾きの探索が行われ、頂点の垂直座標が決定される。この探索は、トランスデューサプローブからの少なくとも最小の深さで、最大の深さを超えないライン48の部分である、MMA26とLMA36の間の僧帽弁平面の上部のライン48の長さの約4分の1にわたって行われる。線48に沿ったピクセル及びそれに平行なピクセルを調べて、LVチャンバー(実質的に鏡面反射器がない)から心臓壁(多くの反射器が配置されている)までの最大の正の輝度勾配を見つける。この勾配を見つけるための好ましい技術が図7に示されている。図7aは、画像内のより明るいピクセルによって表される心臓壁50のセクションを含む超音波画像の一部を示している。右から左に、LVのチャンバーから心臓壁50内にそして心臓壁50を通って延びる線48が、心臓壁50に垂直に引かれる。線48に沿ったピクセル値がグラフでプロットされる場合、それらは、図7bの曲線52によって示されるように現れるであろう。図7bでは、明るいピクセルはより大きなピクセル値を有する。心内膜の位置は、心臓壁の中心の近くにある曲線52のピークではなく、曲線の傾斜の意義に関係している。したがって、曲線52の傾きは、図7cの曲線58によって示されるように、曲線52の微分を計算することによって分析される。この微分曲線には、心臓壁(心外膜)の外側で最大の負の傾きであるピーク56がある。曲線58に沿って右から左に進むときに遭遇する最初の主要なピークであるピーク54は、心内膜のおおよその位置である最大の正の勾配である。図4の線48に沿った及びそれに平行なピクセルは、心内膜壁、したがって心内膜頂点の位置を見つけるためにこの方法で分析され、図4の小さなボックス46によってマークされる。
LVのこれらの3つの主要なランドマークが特定されると、LVのためのいくつかの所定の標準形状のうちの1つが、3つのランドマーク及び心内膜壁に適合される。そのような3つの標準的な形状が図5a、5b及び5cに示されている。最初の形状である境界線62は、比較的背が高く、左に湾曲しているように見える。2番目の形状である境界64は、比較的短く、丸みを帯びているように見える。3番目の形状である境界66は、より三角形形状である。これらの標準形状は、それぞれ、3つのランドマーク26、36、46に合うように適切に拡大縮小される。適切にスケーリングされた標準形状が3つのランドマークに適合した後、その形状がエコーデータの境界にどの程度適合しているかが分析される。これは、例えば、形状に沿った点で形状と心臓壁との間の距離を測定することによって行うことができる。このような測定は、形状に直交し、形状に沿った点から伸びる経路に沿って行われる。心臓壁は、例えば、図7a〜7cで説明した操作を使用して検出することができる。例えば、距離測定の平均によって、トレースされる境界に最も近いと評価される形状が、以降のプロトコルで使用される形状として選択される。
次に、選択した形状を、形状の「伸張」により、トレースすべき境界、この例では心内膜の壁に適合させる。伸張は、境界の周りに等間隔で配置された心臓壁にほぼ垂直な48本のピクセルの線を分析することによって行われる。48本の線のそれぞれに沿ったピクセルは、隣接する心内膜壁を見つけるために、図7a〜7cに示されるように分析され、選択された形状が心内膜壁に合うように引き伸ばされる。ポイント26と36の間のベースラインは形状に適合せず、直線のままであるが、これは、僧帽弁の公称平面であるためである。形状が心臓壁に沿った点に適合されると、境界トレースは平滑化され、図8の二画面表示の右側の画像78に示されるように、収縮末期画像上に表示される。表示には、MMAランドマークと頂点の間の境界に沿って、「×」として表示される5つのコントロールポイントと、頂点ランドマークとLMAランドマークとの間の境界に沿って、やはり「×」として表示される5つのコントロールポイントが含まれる。この例では、伸張操作によって調整された、頂点と僧帽弁面との間の線48の部分も示されている。
この方法で収縮末期境界線が描画されると、ABDプロセッサは拡張末期境界線の決定に進む。これは、拡張末期画像16でこの操作を繰り返すのではなく、収縮末期と拡張末期の間にある各画像の境界を順番に見つけることによって行われる。所与の画像シーケンスにおいて、これは、20〜30の画像フレームを含み得る。これは画像が取得された順序と逆であるため、ある画像から次の画像への心内膜境界の位置の増分変化のみがある。そのため、連続する画像間には比較的高い相関関係があることが予想される。したがって、収縮末期の境界線は、前の画像の境界線を見つけるための開始位置として使用され、前の画像に対してこのように検出された境界線は、次の前の画像の境界線を見つけるための開始位置として使用される。構築された実施形態では、これは、MMA及びLMAの周りの収縮末期画像の小さな部分を保存し、この画像部分をテンプレートとして使用して、直前の画像と相関させ、照合して、直前の画像におけるMMA及びLMAの位置を見つけることによって行われる。心頂部は、前述のように、中隔の上部とLV外側壁の間の角度を二等分し、次に輝度勾配の最大勾配によって心内膜を配置することにより配置される。収縮期から拡張期に進むときにLVが拡張するため、信頼性のある測定は、フレーム間でのランドマークポイントの外向き方向の変位を含む。フレーム内に3つのランドマークポイントが見つかると、適切にスケーリングされた標準形状が3つのポイントに適合される。もう1つの信頼性の尺度は、標準形状の膨張である。描画されたLV境界線が標準形状から離れすぎている場合、プロセスは中止される。
境界線の描写は、拡張末期画像が処理され、その心内膜境界が定義されるまで、この方法で続行される。次に、図8に示すように、拡張末期と収縮末期の両方の画像76、78に心内膜の境界線が描かれている二画面表示が表示される。)

(引3−イ)FIG.4(図4)




(引3−ウ)FIG.5a〜5c(図5a〜5c)




(引3−エ)FIG.8(図8)




(2)ア 上記(引3−ア)の「小さなボックス26は、画像18内のMMAのために確立された位置をマークし」及び「MMA26及びLMA36が見出された状態で」との記載、並びに上記(引3−イ)の図4のLMAに相当する位置に符号36で示される小さなボックスが記載されていることから、小さなボックス36は、画像18内のLMAのために確立された位置をマークしていることが理解できる。

イ 上記アを踏まえると、上記(引3−ア)ないし(引3−エ)の記載から、引用文献3には、
「 超音波システムの心臓サイクルの画像に対してABDプロトコルにより境界線を描画する技術であって、
LVの心内膜境界を描画する最初のステップは、MMAの予想される形状を定義するフィルターテンプレートが、MMA探索領域のピクセルと相互相関されることでMMAが特定され、小さなボックス26で、画像18内のMMAのために確立された位置をマークし、LMAの場所について同様の探索が行われ、小さなボックス36で、画像18内のLMAのために確立された位置をマークし、
次のステップは、心内膜の頂点の位置を決定することであり、中隔22の上半分のピクセル値が分析されて、破線43によって示されるように、中隔の上半分の公称角度が識別され、LVの側壁42のピクセル値は、破線45によって示されるように、側壁42の上半分の公称角度を識別するために分析され、破線43、45の間の角度は、線48によって二分され、線48に沿ったピクセル強度変化の傾きの探索が行われ、頂点の垂直座標が決定され、心内膜頂点の位置が小さなボックス46によってマークされ、
LVのこれらの3つの主要なランドマークが特定されると、LVのためのいくつかの所定の標準形状のうちの1つが、3つのランドマーク及び心内膜壁に適合され、これらの標準形状は、それぞれ、3つのランドマーク26、36、46に合うように適切に拡大縮小され、その形状がエコーデータの境界にどの程度適合しているかが分析され、トレースされる境界に最も近いと評価される形状が、以降のプロトコルで使用される形状として選択され、
次に、選択した形状を、形状の「伸張」により、トレースすべき境界である心内膜の壁に適合させ、形状が心臓壁に沿った点に適合されると、境界トレースは平滑化され、画像上に表示される、技術。」
という技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

4 引用文献Bについて
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Bには、以下の記載がある。
(引B−ア)「【0005】
本発明の原理に従って、心筋の三次元モデルを生成する診断超音波システム及び方法について開示されている。下で説明する実施例においては、その三次元心筋モデルは、各々のセグメント化領域における心臓壁の厚さを表すそれらのセグメント化領域によりセグメント化される。厚さは、例えば、色により定性的に、又は定量的に表示されることが可能である。壁のセグメントの運動がまた、必要に応じて、表示されることが可能である。表示された情報はまた、例えば、ポーラチャート又はブルズアイチャートのような二次元表現で示されることが可能である。下で説明する実施例においては、心筋の三次元表現は、心臓の3Dデータ集合の自動境界検出により、自動的に生成される。」

(引B−イ)「【0013】
QLAB(登録商標)処理器は、画像における組織の構造の境界又は輪郭をトレースすることができる。このトレースは、米国特許第6,491,636号明細書に記載されている完全自動化手段により、又は上記の米国特許出願公開第2005/0075567号明細書に記載されている自動化支援境界検出により行われることが可能である。後者の技術は、トレースされる境界を表示する画像を先ず、選択することにより行われる。図3a、3b及び3cは、LVの境界がトレースされるLV画像を示している。ユーザは、画像においてカーソルを操作するワークステーションのキーボードにより、又は超音波システム制御パネルにおいて通常、位置付けられているマウス又はトラックボール等のポインティングデバイスにより、画像において第1ランドマークを指定する。図3aの実施例においては、指定された第1ランドマークは医療用僧帽弁輪(MMA)である。ユーザが、画像においてそのMMAをクリックするとき、図において数字“1”で示されている白色の制御点のようなグラフィックマーカが現れる。その場合、ユーザは、第2ランドマークを、この実施例においては、横方向僧帽弁輪(LMA)を指定し、それは、図3bにおいて数字“2”で示されている第2白色制御点により印付けされている。その場合、QLAB(登録商標)処理器により生成された線は、2つの制御点を自動的に接続し、この縦方向の左心室のビューの場合、僧帽弁面を示す。その場合、ユーザは、心内膜の心尖にポインタを移動し、その心内膜の心尖は、左心室の心腔内の最上点である。ユーザが、図においてこの第3のランドマークにポインタを移動させるとき、左心室の心内膜の心腔のテンプレート形状はカーソルに追随し、ポインタが心腔の心尖を追求するにつれて、変形し、伸長する。図3cにおける白色の線として示されているこのテンプレートは、第1制御点1及び第2制御点2により固定され、第3制御点を通り、その第3制御点は、ユーザが心尖においてポインタをクリックするときに、心尖に位置付けられ、その心尖は第3制御点3に位置している。位置付けが行われるとき、心内膜の心腔のテンプレートは、図3Cに示す心内膜の近似のトレースを与える。図3cの実施形態においては、左心室を二分する黒色の線は、それが心尖に近づき、心尖を指定するにつれて、ポインタに追随する。この黒色の線は、僧帽弁面を示す線の中心と左心室の心尖との間に固定され、僧帽弁の中心と心腔の心尖との間の中心線を実質的に示す。商業上の実施において、QLAB(登録商標)処理器は、Philips Medical Sysrtems社(米国マサチューセッツ州アンドーバー)製のオフラインワークステーションにおいて又は搭載された超音波システムにおいて利用可能である。自動境界処理は、他の手段により完全自動化することが可能である。」

(引B−ウ)「【0017】
本発明の原理に従って、QLAB(登録商標)処理器50はまた、図7に示す心筋の心外膜の境界をトレースすることができる。心外膜の境界とトレースは、図3a、3b及び3cに示す心内膜特定ステップから開始する連続する処理において実行されることが可能である。このように規定される心内膜の境界を用いて、ユーザは、カーソルを心外膜の心尖に、最上点を心筋の外側面に移動させる。その場合、ユーザは、心外膜の心尖をクリックし、“4”で印付けされる第4制御点が位置付けられる。その場合、図7に示す心外膜の境界を近似して描く第2トレースが、自動的に現れる。図7における外側の白色の境界線で示されているこの第2トレースはまた、第1制御点及び第2制御点により固定され、心外膜の心尖において位置付けられた第4制御点を通る。それらの2つのトレースは、心筋の境界の近似の輪郭である。
【0018】
最終ステップとして、ユーザは、トレースが心筋の境界について、適切に、輪郭を描くように、図7に示すトレースを調整することを望む可能性がある。“+”のシンボルで図中に示している複数の小さい制御点が、各々のトレースの周囲において位置付けられている。それらの小さい制御点の数及び間隔は、設計上の選択である、又はユーザが設定することができる変数であることが可能である。ユーザは、心筋の境界をより正確に描くように、それらの制御点を又はそれらの制御点に近接して指してクリックし、輪郭をドラッグすることが可能である。境界を伸長する又はドラッグするこの処理は、“ラバーバンディング”として知られていて、上記の米国特許第6,491,636号明細書の特に図9に詳細に記載されている。ラバーバンディングによる調整の代替として、より複雑な実施形態において、近似された境界は、そして近似された組織の境界の周囲が、画素についての強度情報を用いる画像処理により画像の境界に対して自動的に調整されることが可能である。終了されるとき、境界は、画像における心筋の画像の画素を囲むことにより、心筋の境界を正確に描くことが可能である。」

(引B−エ)




(引B−オ)




(2)上記(引B−ア)ないし(引B−オ)の記載から、引用文献Bには、
「 心筋の三次元モデルを生成する診断超音波システムにおいて、自動化支援境界検出により画像における組織の構造の境界又は輪郭をトレースする技術であって、
ユーザは、LVの境界がトレースされるLV画像において、カーソルを操作するポインティングデバイスにより第1ランドマークとして医療用僧帽弁輪(MMA)を指定し、ユーザが、画像においてそのMMAをクリックするとき、図において数字“1”で示されている白色の制御点のようなグラフィックマーカが現れ、
ユーザは、第2ランドマークとして横方向僧帽弁輪(LMA)を指定し、図において数字“2”で示されている第2白色制御点により印付けされ、
2つの制御点は自動的に接続され、生成された線は僧帽弁面を示し、
ユーザは、第3のランドマークである心内膜の心尖にポインタを移動させ、左心室の心内膜の心腔のテンプレート形状はカーソルに追随し、ポインタが心腔の心尖を追求するにつれて、変形し、伸長し、図に白色の線として示されているこのテンプレートは、第1制御点1及び第2制御点2により固定され、第3制御点を通り、その第3制御点は、ユーザが心尖においてポインタをクリックするときに、心尖に位置付けられ、その心尖は第3制御点3に位置しており、心内膜の心腔のテンプレートは、心内膜の近似のトレースを与え、
このように規定される心内膜の境界を用いて、ユーザは、カーソルを心外膜の心尖に移動させ、ユーザは、心外膜の心尖をクリックし、“4”で印付けされる第4制御点が位置付けられ、図に示す心外膜の境界を近似して描く外側の白色の境界線で示されている第2トレースが、自動的に現れ、
それらの2つのトレースは、心筋の境界の近似の輪郭である、技術。」
という技術事項(以下「引用文献B技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「超音波診断画像」である「表示画像を解析し」て「左心室の心腔側の面」「について輪郭(内輪郭)を抽出」し、「補正された内輪郭を求め」る「超音波診断装置100」は、本願発明1の「超音波画像における心臓の心室の境界を決定する超音波診断イメージングシステム」に相当する。

イ 引用発明の「超音波診断画像」が「表示画像として」「展開され」る「画像メモリ25」は、本願発明1の「心臓画像データのソース」に相当する。

ウ 引用発明の「表示画像を解析し、輝度が大幅に変化する変化点を多数検出し、これらの変化点をトレースするトレースラインとして左心室の心腔側の面及び心筋の外側の面について輪郭を抽出する」「画像解析部29」と、本願発明1の「前記心臓画像データに応答する境界検出プロセッサであって、前記画像データにおける心筋の少なくとも内側及び外側の境界を識別するように構成される変形可能な心臓モデルを有する、境界検出プロセッサ」とは、「前記心臓画像データに応答する境界検出プロセッサであって、前記画像データにおける心筋の少なくとも内側及び外側の境界を識別するように構成される、境界検出プロセッサ」で共通する。

エ 引用発明の「輪郭画像」に対して「補正された内輪郭を求め」るために「スライダ51aを左右に移動させる操作として補正率の変更の要求を受け付け」る「GUI51」は、本願発明1の「ユーザが、前記識別される内側及び外側境界に関して、心室のユーザ規定境界を示すことを可能にするように構成されるユーザ制御部」に相当する。

オ 引用発明の「スライダ51aの位置に応じて補正率を設定し、複数の変化点Pdのそれぞれについて、内輪郭の垂線上の位置を、内輪郭と交差する位置(変化点Pdの位置)を0%の位置、外輪郭と交差する位置を100%の位置とし、補正率に相当する位置として補正点Pcを求め、これらの複数の補正点Pcをトレースするトレースラインとして補正された内輪郭を求め、表示画像に重畳表示する輪郭画像を補正したものに更新する」「制御プロセッサ26」は、本願発明1の「前記ユーザ制御部及び前記境界検出プロセッサに結合される心室境界デリネータであって、前記心室境界デリネータは、前記境界検出プロセッサによって識別される前記境界の少なくとも一つに関して前記画像データにおいて前記ユーザ規定心室境界を位置させるように構成される、心室境界デリネータ」に相当する。

(2)そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「 超音波画像における心臓の心室の境界を決定する超音波診断イメージングシステムであって、
心臓画像データのソースと、
前記心臓画像データに応答する境界検出プロセッサであって、前記画像データにおける心筋の少なくとも内側及び外側の境界を識別するように構成される、境界検出プロセッサと、
ユーザが、前記識別される内側及び外側境界に関して、心室のユーザ規定境界を示すことを可能にするように構成されるユーザ制御部と、
前記ユーザ制御部及び前記境界検出プロセッサに結合される心室境界デリネータであって、前記心室境界デリネータは、前記境界検出プロセッサによって識別される前記境界の少なくとも一つに関して前記画像データにおいて前記ユーザ規定心室境界を位置させるように構成される、心室境界デリネータと
を有する、
超音波診断イメージングシステム。」
の発明の点で一致し、以下の相違点1において相違する。

(相違点1)
前記画像データにおける心筋の少なくとも内側及び外側の境界を識別するように構成される、境界検出プロセッサが、本願発明1においては、「前記画像データにおける心筋の少なくとも内側及び外側の境界を識別するように構成される変形可能な心臓モデルを有」し、「前記変形可能な心臓モデルは、前記画像データにおける前記心筋の前記外側境界を識別する前に、前記心筋の前記内側境界を識別するように更に構成され」、「内側の心内膜境界及び小柱心筋と緻密心筋との間の外部インタフェースの両方を含む複数の心筋境界を位置させるように設計され」、「空間的に規定される数学的記述であって、通常の心臓の組織構造の数学的記述であり」、その「各部分は、前記画像データにおける心臓の解剖学的構造にフィッティングされるようにサイジングされ、変形される」のに対し、引用発明においては、「表示画像を解析し、輝度が大幅に変化する変化点を多数検出し、これらの変化点をトレースするトレースラインとして左心室の心腔側の面及び心筋の外側の面について輪郭を抽出する」ものであって、「変形可能な心臓モデル」を有するものではない点。

(3)判断
ア 相違点1について検討する。
(ア)引用文献2技術事項と本願発明1とを対比する。
a 引用文献2技術事項の「3D経食道心エコー(TEE)画像」の「3D画像データ」は、本願発明1の「画像データ」に相当する。

b 引用文献2技術事項の「心臓の個々の解剖学的フィーチャ」と、本願発明1の「心筋の少なくとも内側及び外側の境界」とは、「心臓の関心領域」で共通する。

c 引用文献2技術事項の「セグメント化」は、本願発明1の「境界を識別する」に相当する。

d 引用文献2技術事項の「心臓の解剖学的構造の幾何学的メッシュモデル」は、「大域的変換」及び「局所的変換によって変形され」るものであるから、本願発明1の「変形可能な心臓モデル」に相当する。

e 引用文献2技術事項の「幾何学的メッシュモデルは、三角形メッシュを有するマルチコンパートメントメッシュモデルであ」るから、本願発明1の「空間的に規定される数学的記述であって」を満たすといえる。

f 引用文献2技術事項の「心臓の解剖学的フィーチャの形状をおおまかに表現する」は、本願発明1の「通常の心臓の組織構造の」「記述であり」に相当する。

g 引用文献2技術事項の「幾何学的モデルの初期形状を平行移動、回転又はリスケールすることができる大域的変換、及び幾何学的モデルが解剖学的な関心対象に一層正確にマッチするように幾何学的モデルを実際に変形する局所的変換によって変形され」は、本願発明1の「各部分は、前記画像データにおける心臓の解剖学的構造にフィッティングされるようにサイジングされ、変形される」に相当する。

(イ)そうすると、本願発明1の「変形可能な心臓モデル」と引用文献2技術事項の「心臓の解剖学的構造の幾何学的メッシュモデル」とは、「画像データにおける心臓の関心領域の境界を識別するように構成される変形可能な心臓モデルであって、空間的に規定される数学的記述であって、通常の心臓の組織構造の数学的記述であり、その各部分は、前記画像データにおける心臓の解剖学的構造にフィッティングされるようにサイジングされ、変形される、変形可能な心臓モデル」で共通する。

(ウ)しかしながら、引用文献2技術事項は、本願発明1の発明特定事項である「変形可能な心臓モデルは、内側の心内膜境界及び小柱心筋と緻密心筋との間の外部インタフェースの両方を含む複数の心筋境界を位置させるように設計され」る構成(以下「本願モデル構成」という。)を開示又は示唆するものではない。

(エ)また、心内膜境界を描画する技術に係る引用文献3技術事項は、標準形状を伸張させ、心内膜壁に適合させるものであるところ、引用文献3技術事項の「標準形状」は、本願発明1の「画像データにおける心筋の少なくとも内側及び外側の境界を識別するように構成される変形可能な心臓モデル」であって、「前記画像データにおける前記心筋の前記外側境界を識別する前に、前記心筋の前記内側境界を識別するように更に構成され」、「内側の心内膜境界及び小柱心筋と緻密心筋との間の外部インタフェースの両方を含む複数の心筋境界を位置させるように設計され」、「空間的に規定される数学的記述であって、通常の心臓の組織構造の数学的記述であり」、「前記変形可能な心臓モデルの各部分は、前記画像データにおける心臓の解剖学的構造にフィッティングされるようにサイジングされ、変形される」、「変形可能な心臓モデル」と、「画像データにおける心筋の内側の境界を識別するように構成される変形可能な心臓モデルであって、内側の心内膜境界の心筋境界を位置させるように設計され、空間的に規定される数学的記述であって、通常の心臓の組織構造の数学的記述であり、前記変形可能な心臓モデルの各部分は、前記画像データにおける心臓の解剖学的構造にフィッティングされるようにサイジングされ、変形される、変形可能な心臓モデル」で共通するといえる。

(オ)しかしながら、引用文献3技術事項は、本願発明1の発明特定事項である本願モデル構成を開示又は示唆するものではない。

(カ)そして、超音波画像における心臓の心室の境界を決定する技術分野において、「内側の心内膜境界及び小柱心筋と緻密心筋との間の外部インタフェースの両方を含む複数の心筋境界を位置させるように設計され」る「変形可能な心臓モデル」を用いることが、本願の優先日前において周知な事項であったとは認められない。

(キ)してみると、引用文献1ないし3に接した当業者といえども、本願モデル構成を含む上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとはいえない。
そして、明細書の段落【0011】の「モデルは、心臓画像に示される器官境界に正確に適合され、それによって、心内膜の内側を含む境界、小柱心筋と緻密心筋との間のインタフェース、及び心外膜境界が規定される。このような心臓モデルの好ましい実施態様では、これは、通常、明るく照らされる領域と超音波画像における適度な照光領域との間の明確な勾配として現れるので、小柱心筋と緻密心筋との間のインタフェースが最初に見つけられる。心内膜境界は、超音波画像に現れるように、あまり明確に規定されていない内皮層の変数位置を見いだすことができるという要望のために、心臓モデルにおいて一般的にあまり規定されていない。」との記載を参酌するに、本願発明1は、上記相違点1に係る構成、特に本願モデル構成によって、モデルを心臓画像に示される器官境界に正確に適合させることができるとの作用効果を奏するものといえる。

イ したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2技術事項又は引用文献3技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし14について
本願発明2ないし14も、本願発明1の本願モデル構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2技術事項又は引用文献3技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定について

令和4年1月27日にされた手続補正により、本願発明1ないし14は、本願モデル構成を有するものとなった。
本願モデル構成は、原査定において引用された引用文献A及びC(当審拒絶理由における引用文献1及び2)には記載されていない。
また、原査定において引用された引用文献Bに記載された引用文献B技術事項は、心内膜の境界及び心外膜の境界を近似するトレースを生成することを開示するが、本願モデル構成を開示するものではない。
そして、超音波画像における心臓の心室の境界を決定する技術分野において、「内側の心内膜境界及び小柱心筋と緻密心筋との間の外部インタフェースの両方を含む複数の心筋境界を位置させるように設計され」る「変形可能な心臓モデル」を用いることが、本願の優先日前において周知な事項であったとは認められない。
してみると、引用文献AないしCに接した当業者といえども、本願モデル構成を含む上記相違点1に係る本願発明1ないし14の発明特定事項を容易に想到し得たとはいえない。
そして、本願発明1ないし14は、本願モデル構成によって、モデルを心臓画像に示される器官境界に正確に適合させることができるとの作用効果を奏するものといえる(明細書の段落【0011】参照)。
したがって、本願発明1ないし14は、当業者であっても、原査定において引用された引用文献AないしCに基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、原査定の拒絶の理由を維持することはできない。

第8 特許法第36条第6項第2号に係る当審拒絶理由について
1(1)当審では、請求項1に「前記変形可能な心臓モデルは、前記画像データにおける前記心筋の前記外側境界を識別する前に、前記心筋の前記内側境界及び前記外側境界のうちの一つを識別するように更に構成され」とあるが、選択肢である「前記心筋の前記内側境界及び前記外側境界のうちの一つ」において「前記外側境界」が選択される場合、「前記心筋の前記外側境界を識別する前に、前記心筋の・・・前記外側境界・・・を識別する」となり、矛盾するため、請求項1に係る発明及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定される請求項2ないし14に係る発明は明確でないとの拒絶理由を通知した。

(2)これに対し、令和4年1月27日にされた手続補正により、請求項1の「前記変形可能な心臓モデルは、前記画像データにおける前記心筋の前記外側境界を識別する前に、前記心筋の前記内側境界及び前記外側境界のうちの一つを識別するように更に構成され」との記載は、「前記変形可能な心臓モデルは、前記画像データにおける前記心筋の前記外側境界を識別する前に、前記心筋の前記内側境界を識別するように更に構成され」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

2(1)当審では、請求項6に記載された「前記内側及び外側境界に対する前記距離」における「前記距離」が、何を指すのかが判然としないため、請求項6に係る発明及び請求項6の記載を直接引用して特定される請求項14に係る発明は明確でないとの拒絶理由を通知した。

(2)これに対し、令和4年1月27日にされた手続補正により、請求項6の「前記内側及び外側境界に対する前記距離」との記載は、「前記内側境界と外側境界との距離」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

3(1)当審では、請求項9に記載された「前記変形可能な心臓モデルは、前記画像データにおける前記心臓の前記位置を最初にローカライズするように更に構成される」における「前記位置」が、何を指すのかが判然としないため、請求項9に係る発明並びに請求項9の記載を直接又は間接的に引用して特定される請求項10及び11に係る発明は明確でないとの拒絶理由を通知した。

(2)これに対し、令和4年1月27日にされた手続補正により、請求項9の「前記変形可能な心臓モデルは、前記画像データにおける前記心臓の前記位置を最初にローカライズするように更に構成される」との記載は、「前記変形可能な心臓モデルは、前記画像データにおける前記心臓の位置を最初にローカライズするように更に構成される」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-05-18 
出願番号 P2017-545714
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 伊藤 幸仙
渡戸 正義
発明の名称 ユーザ制御による心臓モデル心室セグメンテーションを用いた心臓機能の超音波診断  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 五十嵐 貴裕  

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