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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1384792
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-22 
確定日 2022-05-23 
事件の表示 特願2018−527103「防音乾式壁パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日国際公開、WO2017/108146、平成30年12月20日国内公表、特表2018−537604〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)10月12日(パリ条約による優先権主張 2015年12月21日、欧州)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年 7月16日付け:拒絶理由通知書
(令和 1年 7月26日発送)
令和 1年10月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月 4日付け:拒絶理由通知書
(令和 2年 3月13日発送)
令和 2年 6月15日 :意見書の提出
令和 2年11月12日付け:拒絶査定
(令和 2年11月20日発送)
令和 3年 3月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 9月22日 :上申書の提出


第2 令和3年3月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年3月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むものである。本件補正の前後における特許請求の範囲における記載は、請求項1についてみれば、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)

(1)本件補正後
「【請求項1】
乾式壁構築物(11、12、13、14)に適用される防音乾式壁パネル(1)であって、
前記防音乾式壁パネル(1)は、無穿孔パネルとして、1mm厚み当たり1.2kg/m2より大きい単位表面積当たりの質量を有し、
前記防音乾式壁パネル(1)は、そこに形成された複数の穿孔(2)を備え、
各穿孔(2)が、前記防音乾式壁パネル(1)を通って延びており、それによって空気の通過を可能にしており、
石膏材料を含む芯層と該芯層を覆う紙層とを有する石膏ボードである、防音乾式壁パネル(1)。」

(2)本件補正前(令和1年10月25日付け手続補正後)
「【請求項1】
乾式壁構築物(11、12、13、14)に適用される防音乾式壁パネル(1)であって、
前記防音乾式壁パネル(1)は、無穿孔パネルとして、1mm厚み当たり1.2kg/m2より大きい単位表面積当たりの質量を有し、
前記防音乾式壁パネル(1)は、そこに形成された複数の穿孔(2)を備え、
各穿孔(2)が、前記防音乾式壁パネル(1)を通って延びており、それによって空気の通過を可能にしている防音乾式壁パネル(1)。」

2 補正目的
本件補正は、請求項1についてみれば、本件補正前の請求項1における「防音乾式壁パネル(1)」について、「石膏材料を含む芯層と該芯層を覆う紙層とを有する石膏ボードである」ことを限定するものである。
そのため、本件補正は、本件補正前の請求項1について、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。

3 独立特許要件
上記2のとおり、本件補正は、本件補正前の請求項1について、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認めることができる。
そのため、本件補正前の請求項1に記載された発明を限定した、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)は、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合すること(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること)を要する。
以下、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができたか否かを検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載
ア 引用文献1
(ア)記載事項
原査定の理由で引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である「浅野スレート ’95総合カタログ」、浅野スレート株式会社、(1995.7、光村印刷)表紙、目次、第3−8、10、12−14、19−20頁及び裏表紙)(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は、当審決で付した。以下、同様。)。

a 第7頁 「浅野エフジーボードN(略号FG−N)」
(a)第1段落
浅野エフジーボードNは、当社が世界で初めて抄造法による製品化に成功した石こうと不燃繊維を主原料とするFRG(繊維強化石こう板)の内装ボードです。今までにないまったく新しい材質の建材で、ソフトで腰が強く、合板のようにあつかい易い不燃ボードです。」

(b)「用途」の欄
「3.防・準耐火・耐火構造(間仕切壁),長屋又は共同住宅の界壁の遮音構造として使用できます。」

(c)「性能」の表
「比重1.6」

b 第19頁「浅野吸音板類」
(a)第1段落
「浅野吸音板は、浅野エフジーボードN,浅野ハイラックN,浅野ハイラックF,浅野フレキシブルボードN,浅野フレキシブルボードに吸音用の孔をあけたボードで、すぐれた不燃材料吸音板として広くご愛用を頂いております。」

(b)上方の図




(c)「特長と使い方」の欄
「1.吸音率の調節ができます。有孔吸音板は裏打ち材を使うのが一般的で、ロックウールやグラスウールなどが好適です。低音部の吸音のためには裏面剛壁との空間を大きくするとよく、高音部の吸音のためには裏面剛壁との空間をせまくするとよい結果が得られます。」

(d)下方の図




(e)「規格」の表
左側の表の「種類」の欄には、「ノンアスベスト品」として「浅野エフジーボードN吸音板」と記載され、「厚さ(mm)」の欄に「5,6」と記載されている。
左側の表の下には、「注1)この他の板厚もご注文により調整致します。」と記載されている。
右側の表の「種類」の欄には、「1号」、「2号」、「3号」と記載され、それぞれ「孔径(mm)」及び「孔のピッチ(mm)」の欄に「5.0」及び「15」、「5.0」及び「25」、「8.0」及び「20」と記載されている。

(イ)看取できる事項、及び記載されていることが明らかである事項
上記(ア)b(d)の図示より、浅野式吸音板である浅野エフジーボードN吸音板は、不燃下地又は木造下地に取付けることができることが、看取される。
また、上記(ア)b(b)及び(d)の図示において、吸音用の孔を空気が通過することを妨げるような部材は看取されていないこと、及び、上記(ア)b(c)に記載されるとおり、裏面剛壁との空間を大きく又はせまくすることによって、低音部又は高音部の吸音率を調節できることから、浅野式吸音板である浅野エフジーボードN吸音板は、吸音用の孔により、裏面まで空気が通過可能であることが、明らかである。

(ウ)引用発明1
「浅野エフジーボードN」(以下、「ボードN」という。)、及び、「浅野エフジーボードN吸音板」(以下、「ボードN吸音板」という。)に着目すると、上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明1>
「比重1.6の繊維強化石こう板の内装ボードであるボードNに、吸音用の孔をあけたボードであり、
不燃下地又は木造下地に取付けることができ、裏面剛壁との空間を大きく又はせまくすることによって、低音部又は高音部の吸音率の調節ができ、吸音用の孔により、裏面まで空気が通過可能である、ボードN吸音板であって、
厚さは5mm、6mm又は他の板厚とすることができ、孔径及び孔のピッチは、5mm径及び15mmピッチ、5mm径及び25mmピッチ、又は8mm径及び20mmピッチを選択可能である、
ボードN吸音板。」

イ 引用文献2
本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である実願昭53−10855号(実開昭54−115110号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

(ア)明細書第1頁第10行−第2頁第7行
「本考案は化粧石膏ボードとして最適な建築用石膏ボードの改良に関するものである。
石膏芯板の表裏に板紙を添着した建築用石膏ボードは石膏芯板が不燃性であるため防火上好ましいものとして広く使用されているが装飾効果と吸音効果に乏しい難点がある。そこで、装飾効果と吸音効果を高めるため多数の吸音孔を規則的に配設したり、虫食い状凹部を不規則的に配設した建築用石膏ボードも周知であるが、前者は吸音効果の上では優れたものであつても吸音孔の配列が単調なうえに天井板等に多数個を並列させて釘打ちを行つた際に規則的な吸音孔の配列中に露呈される釘頭が目障りとなつて装飾効果上は不充分であり、また、後者は虫食い状凹部の形状からして該虫食い状凹部を吸音効果上好ましい深いものとすると充分な強度が得られず、使用に耐える強度とすると充分な吸音効果を期待できないという問題点がある。」

(イ)明細書第2頁第8行−第19行
「本考案は前記のような問題点を解決して装飾効果上も吸音効果上も極めて優れている建築用石膏ボードを目的として完成されたもので、図示の実施例に示すように、ボード主体(1)に多数の吸音孔(2)を規則的に設けて該吸音孔(2)のない側辺部にはボード主体(1)の表側の板紙(3)から石膏芯板(4)の中間に達する不定形の虫食い状凹部(5)を多数配設したことを特徴とするものである。なお、図中(6)はボード主体(1)の裏側の板紙、(7)は吸音孔(2)を裏側の板紙(6)にまで貫通されたものとする場合において、該板紙(6)の裏面にさらに添着される裏当材である。」

(3)進歩性
ア 対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。
「乾式壁構築物」に関し、本件明細書における「乾式壁構築物は、例えば、建物の内側に配された壁又は天井である。」(段落【0002】)、及び「通常の乾式壁構築物は、乾式壁パネルが取り付けられるサブ構築物を備える。例えば乾式壁天井では、該サブ構築物は、吊り材によってむき出しの天井(例えばコンクリート天井)に取り付けられる乾式壁用形材(すなわち金属梁形材)が水平に配されて作製される。」(段落【0003】)との説明をふまえると、引用発明1において、「ボードN吸音板」を「取付けることができ」る「不燃下地又は木造下地」及び「裏面剛壁」は、本件補正発明1における「乾式壁構築物」に相当する。
引用発明1において、「不燃下地又は木造下地に取付けることができ、裏面剛壁との空間を大きく又はせまくすることによって、低音部又は高音部の吸音率の調節ができ」る「ボードN吸音板」は、本件補正発明における、「乾式壁構築物に適用される防音乾式壁パネル」に相当する。
引用発明1において、「厚さは5mm、6mm又は他の板厚とすることができ」る「ボードN吸音板」に、「吸音用の孔」をあける前の「ボードN」について、「比重1.6」である構成は、本件補正発明において、「防音乾式壁パネル」について、「無穿孔パネルとして、1mm厚み当たり1.2kg/m2より大きい単位表面積当たりの質量を有」する構成に相当する。
引用発明1において、「ボードN吸音板」について、「吸音用の孔をあけたボード」であり、「吸音用の孔により、裏面まで空気が通過可能」であり、「孔径及び孔のピッチは、5mm径及び15mmピッチ、5mm径及び25mmピッチ、又は8mm径及び20mmピッチを選択可能である」構成は、本件補正発明において、「防音乾式壁パネル」について、「そこに形成された複数の穿孔を備え、各穿孔が、前記防音乾式壁パネルを通って延びており、それによって空気の通過を可能にして」いる構成に相当する。
引用発明1において、「繊維強化石こう板」が「石こう」材料を含むことが明らかであることをふまえると、引用発明1の「ボードN吸音板」が「繊維強化石こう板の内装ボード」である「ボードN」からなる構成と、本件補正発明の「防音乾式壁パネル」が「石膏材料を含む芯層と該芯層を覆う紙層とを有する石膏ボードである」構成とは、「防音乾式壁パネル」が「石膏材料を含む石膏ボードである」点で、共通する。

整理すると、本件補正発明と引用発明1とは、
「乾式壁構築物に適用される防音乾式壁パネルであって、
前記防音乾式壁パネルは、無穿孔パネルとして、1mm厚み当たり1.2kg/m2より大きい単位表面積当たりの質量を有し、
前記防音乾式壁パネルは、そこに形成された複数の穿孔を備え、
各穿孔が、前記防音乾式壁パネルを通って延びており、それによって空気の通過を可能にしており、
石膏材料を含む石膏ボードである、防音乾式壁パネル。」
である点で一致する。

そして、本件補正発明と引用発明1とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
防音乾式壁パネルを構成する「石膏ボード」に関し、
本件補正発明では、「芯層と該芯層を覆う紙層と」を有することが特定されているのに対し、
引用発明1においては、「芯層を覆う紙層」を有するか否かが明確でない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点1について判断する。
引用文献2の上記(2)イ(ア)に摘記した記載に示されるように、建築用石膏ボードにおいて、石膏芯板の表裏に板紙を添着した構成は、引用文献2が頒布された本願優先日前の時点において、広く使用されていた周知技術である。
また、引用文献2の上記(2)イ(イ)に摘記した記載に示されるように、多数の吸音孔を設けた建築用石膏ボードにおいても、表側の板紙と裏側の板紙とを有する構成は、本願優先日前の時点における周知技術である。
引用発明1に係る「ボードN吸音板」は、繊維強化石こう板の内装ボードである「ボードN」に吸音用の孔をあけたものであるところ、石膏芯板の表裏に板紙を添着する構成が、上記引用文献2に示されるとおり、建築用石膏ボードにおける周知技術であり、かつ、吸音孔を設けた建築用石膏ボードにおいても採用することが知られた周知技術であったことからすれば、引用発明1において、「ボードN吸音板」の表側と裏側とに、板紙を設ける上記周知技術の構成を採用し、もって上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得た事項である。
そして、そうしたことによる効果も、引用発明1、及び引用文献2に示される上記周知技術から、事前に予測される範囲を超えるものではない。

(4)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明1、及び引用文献2に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。

(5)請求人の主張について
ア 請求人の主張
(ア)請求人は、審判請求に先立つ令和2年6月15日受付の意見書において、引用文献1たる「浅野スレート’95総合カタログ」は、公衆の自由な閲覧に供されたものであることの証拠が示されておらず、特許法上の刊行物であることが証明されていないから、引用文献1を証拠として、本件補正発明の新規性及び/又は進歩性が否定されることはない旨を主張している。
(イ)請求人は上記令和2年6月15日受付の意見書において、仮に引用文献1が特許法上の刊行物としての要件を充足するとしても、引用文献1には、質量が1mm厚み当たり1.2kg/m2より大きいボードを選択して孔をあけることについて、明示的な開示がされていないから、本件補正発明が有する、質量が1mm厚み当たり1.2kg/m2より大きいボードに複数の穿孔を形成する構成は、引用文献1に記載されたものではない旨を主張している。
(ウ)請求人は上記令和2年6月15日受付の意見書において、引用文献1に記載される浅野吸音板は、吸音により音を減衰させることによって防音を図る、いわゆる吸音ボードであり、引用文献1に記載される浅野エフジーボードNは、遮音によって防音を図る、いわゆる遮音ボードであるところ、吸音ボードではボードの後ろの空間に音を入り込ませる穿孔の大きさや配列が重要となるのに対して、遮音ボードは音を反射させるのに十分な密度を有することが重要となるから、両者は目的と機能とが相反するものであって、互いに組み合わせる動機付けがない旨を主張している。そして請求人は、密度が高い遮音ボードに複数の穿孔を形成して吸音ボードとしたものは従来登場して来なかったものであり、吸音及び遮音のそれぞれを独立して評価している従来技術から両者を組み合わせることは動機づけられないから、本件補正発明が有する、質量が1mm厚み当たり1.2kg/m2より大きいボードに複数の穿孔を形成する構成は、たとえ当業者であっても、引用文献1から容易に想到できたものではない旨を主張している。
(エ)請求人は審判請求書において、審判請求時の補正により本件補正発明において特定した、「石膏材料を含む芯層と該芯層を覆う紙層とを有する石膏ボードである」構成は、引用文献1には記載も示唆もされておらず、引用文献1に記載された発明において採用する動機付けもないものであるから、本件補正発明は特許出願の際に独立して特許を受けることができた旨を主張している。

イ 請求人の主張についての検討
請求人の上記主張について、検討する。
(ア)引用文献1には、掲載される各ボードについて、標準的な規格と性能、及び受注に応じる旨が具体的に記載されており、実在する建造物にボードを用いた例も紹介されている。そして、引用文献1の裏表紙には、「当社商品についてのお問合せ及びカタログ等のご請求は下記支店・出張所宛お願いいたします。」という記載とともに、日本国内の複数の支店及び出張所の住所及び連絡先が示されており、同裏表紙の末尾には、「1995.7」という数字とともに印刷所の名称が印刷されている。かような引用文献1が、1995年7月に裏表紙の末尾に示される印刷所によって印刷され、同裏表紙に示される支店及び出張所において、顧客の自由な閲覧に供されたことは、明らかである。これに反して、引用文献1が、特許法上の刊行物に該当しない旨をいう、請求人の上記ア(ア)の主張は、採用することができない。
(イ)引用文献1には、「比重1.6」の「浅野エフジーボードN」に「吸音用の孔をあけ」て「浅野吸音板類」とすることが記載されているとともに、「浅野吸音板類」の「規格」の表中に「浅野エフジーボードN吸音板」と具体的に記載されているから(上記(2)アa(a)及び(c)、b(a)及び(e)参照)、上記(2)ア(ウ)に認定したとおりの引用発明1が記載されており、引用発明1は上記(3)アに対比したとおり、本件補正発明における、「無穿孔パネルとして、1mm厚み当たり1.2kg/m2より大きい単位表面積当たりの質量を有」するパネルに「複数の穿孔」を形成する構成に相当する構成を有している。これに反する請求人の上記ア(イ)の主張は、採用することができない。
(ウ)密度が高い「浅野エフジーボードN」に吸音用の孔をあけて「浅野エフジーボードN吸音板」とすることは、上記(イ)のとおり、引用文献1に具体的に記載されているから、これに反する請求人の上記ア(ウ)の主張も、採用することができない。
(エ)本件補正発明と引用発明1との相違点は、上記(3)アに示したとおり、本件補正により特定された構成の一部である、上記相違点1に係る構成のみであるところ、上記相違点1に係る本件補正発明の構成は、上記(3)イに示したとおり、引用発明1において、上記引用文献2に示される周知技術に基いて、当業者が容易に想到できた事項であるから、本件補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。

したがって、請求人の上記アの主張について検討しても、本件補正発明が独立特許要件を満たすか否かについては、上記(3)のとおり判断されるべきものである。

4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができたものではない。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に違反するものであるから、同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法第53条1項の規定により、却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件発明について
1 本件発明1
本件補正は、上記第2のとおり却下されたから、本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和1年10月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものとなり、本願の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、
(1)引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、
また、
(2)引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

3 引用発明1
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、上記第2[理由]3(2)ア(ウ)に示した引用発明1が記載されている。

4 原査定の理由についての判断
(1)新規性
本件発明1と引用発明1とを対比する。
本件発明1は、本件補正発明に係る「防音乾式壁パネル」について、「石膏材料を含む芯層と該芯層を覆う紙層とを有する石膏ボードである」との特定を省いたものであるから、上記第2[理由]3(3)アにおける本件補正発明と引用発明1との対比をふまえると、本件発明1と引用発明1とは、全ての点で一致する。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、同一である。

(2)進歩性
上記(1)のとおり、本件発明1と引用発明1とは同一であり、仮に両者の間に若干の相違点があったとしても、当該相違点は発明の実施に際して当業者が適宜に選択すべき設計事項程度である。
したがって、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)請求人の主張について
請求人は、令和2年6月15日付け意見書において、本件発明1について、上記第2の3(5)ア(ア)ないし(ウ)に示した旨を主張し、本件発明1は、引用発明1に基づいて新規性及び進歩性が否定されるものではない旨を主張している。
しかしながら、上記第2の3(5)イ(ア)ないし(ウ)に示したとおり、当該請求人の主張は採用することができない。
そして、請求人の上記主張をふまえて検討しても、本件発明1の新規性及び進歩性については、上記(1)及び(2)のとおり判断されるべきものである。

(4)まとめ
よって、本件発明1は、原査定の理由のとおり、引用発明1と同一であり、また引用発明1に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本件発明1は、現査定の理由のとおり、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、また同条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 住田 秀弘
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-12-16 
結審通知日 2021-12-21 
審決日 2022-01-06 
出願番号 P2018-527103
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04B)
P 1 8・ 572- Z (E04B)
P 1 8・ 113- Z (E04B)
P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 有家 秀郎
田中 洋行
発明の名称 防音乾式壁パネル  
代理人 特許業務法人藤本パートナーズ  

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