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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1385046
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-09 
確定日 2022-05-31 
事件の表示 特願2019−553933「送信ビーム情報を取得する方法と装置、および送信ビーム情報をフィードバックする方法と装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月4日国際公開、WO2018/177183、令和2年5月28日国内公表、特表2020−516189、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)3月21日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年3月31日 中華人民共和国(CN))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年 9月30日 手続補正書の提出
令和2年 7月21日付け 拒絶理由通知書
令和2年11月 4日 意見書の提出
令和3年 4月21日付け 拒絶査定
令和3年 9月 9日 審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年4月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項1ないし3、5ないし8、10ないし12、14ないし17に対して、引用文献1

理由2(進歩性)について
・請求項4、9、13及び18に対して、引用文献1及び2

引用文献等一覧
1.Huawei,HiSilicon,Beam diversity for data and control channels [online],3GPP TSG RAN WG1#88 R1-1701715,2017年2月6日アップロード,インターネット (以下、「引用文献1」という。)
2.CATT,Discussion on beam reporting [online],3GPP TSG RAN WG1#88 R1-1702077,2017年2月7日アップロード,インターネット (以下、「引用文献2」という。)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし18に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明18」という。)は、令和元年9月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
基地局は、ダウンリンク送信ビームを使用して、端末に参照信号を送信し、ここで、基地局は、ダウンリンク送信ビームごとに1つの参照信号を送信し、各ビームの参照信号は、前記ビームに対応するビームフォーミング重みを使用してフォーミングされた後に送信され、同じビームグループ内のダウンリンク送信ビームを使用して送信された参照信号を1つの参照信号集合とし、
基地局は、端末に参照信号集合のグルーピングの関連情報を送信し、
基地局は、端末によって報告されたダウンリンク送信ビームの組み合わせを受信し、
基地局は、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせに従って、データを端末に送信するためのダウンリンク送信ビームを決定することを特徴とする送信ビーム情報を取得する方法。
【請求項2】
基地局が異なるビームグループのダウンリンク送信ビームを使用して端末に参照信号を同時に送信する場合、
同じ送受信ポイント(TRP)から送信されるダウンリンク送信ビームが1つのビームグループであり、または、
同じトランシーバから送信されるダウンリンク送信ビームが1つのビームグループであることを特徴とする請求項1に記載の送信ビーム情報を取得する方法。
【請求項3】
前記基地局は、ダウンリンク送信ビームを使用して、端末に参照信号を送信する場合、 ダウンリンク送信ビームの参照信号を、参照信号リソースのすべての送信機会のすべてのポートにマッピングして送信するか、
ダウンリンク送信ビームの参照信号を、参照信号リソースの少なくとも1つの送信機会のすべてのポートにマッピングして送信するか、
ダウンリンク送信ビームの参照信号を、参照信号リソースの少なくとも1つの送信機会の少なくとも1つのポートにマッピングして送信することを特徴とする請求項1に記載の送信ビーム情報を取得する方法。
【請求項4】
前記基地局が受信した前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせは、端末によって選択されたQ個の参照信号の識別情報および各参照信号の所属の参照信号グループ関連情報であり、Qは1以上の整数であることを特徴とする請求項1に記載の送信ビーム情報を取得する方法。
【請求項5】
前記基地局は、端末によって送信された参照信号のグルーピング情報を受信し、
前記基地局は、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせに従って、データを端末に送信するためのダウンリンク送信ビームを決定する場合、
2つの参照信号が参照信号の同じグループに属する場合、これら2つの参照信号的ダウンリンク送信ビームを同時に使用でき、ここで、参照信号の同じグループ内の参照信号に対応するダウンリンク送信ビームにより構成された組み合わせは、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせであり、
2つの参照信号が参照信号の異なるグループに属する場合、これら2つの参照信号的ダウンリンク送信ビームを同時に使用でき、ここで、異なる参照信号グループ内の参照信号に対応するダウンリンク送信ビームにより構成された組み合わせは、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の送信ビーム情報を取得する方法。
【請求項6】
端末は、基地局がダウンリンク送信ビームを使用して端末に送信した参照信号を受信し、ここで、基地局は、ダウンリンク送信ビームごとに1つの参照信号を送信し、各ビームの参照信号は、前記ビームに対応するビームフォーミング重みを使用してフォーミングされた後に送信され、同じビームグループ内のダウンリンク送信ビームを使用して送信された参照信号を1つの参照信号集合とする前記受信し、
前記端末は、受信品質に従って受信した参照信号からQ個の参照信号を選択し、各参照信号の受信ビームを決定し、
前記端末は、前記基地局によって送信された参照信号集合のグルーピングの関連情報を受信し、参照信号集合のグルーピングの関連情報に従って、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせを選択して前記基地局に報告し、
前記Qは1以上の整数であることを特徴とする送信ビーム情報をフィードバックする方法。
【請求項7】
前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせ内の異なるビームの参照信号は、異なる参照信号集合に属することを特徴とする請求項6に記載の送信ビーム情報をフィードバックする方法。
【請求項8】
前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせを選択決定する場合、
一つの参照信号グループとして、Q個の参照信号の中から同参照信号集合に属する参照信号を選択し、異なる参照信号グループ内の参照信号に対応するダウンリンク送信ビームより構成されたダウンリンク送信ビームの組み合わせは、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせであり、Qは1以上の整数であり、または、
一つの参照信号グループとしてQ個の参照信号の中から複数の参照信号集合に属する参照信号を選択し、異なる参照信号グループ内の参照信号に対応するダウンリンク送信ビームより構成されたダウンリンク送信ビームの組み合わせは、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせであり、Qは1以上の整数であり、または、
一つの参照信号グループとして、Q個の参照信号の中から異なる参照信号集合に属する参照信号を選択し、参照信号の同じグループ内の任意の2つの参照信号は同じ参照信号集合に属さなく、参照信号の同じグループ内の参照信号に対応するダウンリンク送信ビームにより構成された組み合わせは、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせであり、Qは1以上の整数であることを特徴とする請求項6に記載の送信ビーム情報をフィードバックする方法。
【請求項9】
前記基地局に報告する場合、
前記端末は、選択したQ個の参照信号の識別情報および各参照信号の所属の参照信号グループ関連情報を前記基地局に報告し、Qは1以上の整数であることを特徴とする請求項6に記載の送信ビーム情報をフィードバックする方法。
【請求項10】
ダウンリンク送信ビームを使用して端末に参照信号を送信し、ここで、ダウンリンク送信ビームごとに一つの参照信号を送信し、各ビームの参照信号は、前記ビームに対応するビームフォーミング重みを使用してフォーミングされた後に送信され、同じビームグループ内のダウンリンク送信ビームを使用して送信された参照信号を1つの参照信号集合とし、端末に参照信号集合のグルーピングの関連情報を送信するための、参照信号送信モジュールと、
端末によって報告された前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせを受信するための、報告受信モジュールと、
前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせに従って、データを端末に送信するためのダウンリンク送信ビームを決定するための、ビーム決定モジュールと、を備えることを特徴とする送信ビーム情報を取得する装置。
【請求項11】
参照信号送信モジュールは、さらに、異なるビームグループのダウンリンク送信ビームを使用して端末に参照信号を同時に送信する場合、
同じ送受信ポイント(TRP)から送信されるダウンリンク送信ビームが1つのビームグループであり、または、
同じトランシーバから送信されるダウンリンク送信ビームが1つのビームグループであることを特徴とする請求項10に記載の送信ビーム情報を取得する装置。
【請求項12】
前記参照信号送信モジュールは、さらに、ダウンリンク送信ビームごとに一つの参照信号を送信する場合、
ダウンリンク送信ビームの参照信号を、参照信号リソースのすべての送信機会のすべてのポートにマッピングして送信するか、
ダウンリンク送信ビームの参照信号を、参照信号リソースの少なくとも1つの送信機会のすべてのポートにマッピングして送信するか、
ダウンリンク送信ビームの参照信号を、参照信号リソースの少なくとも1つの送信機会の少なくとも1つのポートにマッピングして送信することを特徴とする請求項10に記載の送信ビーム情報を取得する装置。
【請求項13】
前記報告受信モジュールが受信したのは、端末により選択されたQ個の参照信号の識別情報および各参照信号の所属の参照信号グループ関連情報であり、Qは1以上の整数であることを特徴とする請求項10に記載の送信ビーム情報を取得する装置。
【請求項14】
前記ビーム決定モジュールは、さらに、端末によって送信された参照信号のグルーピング情報を受信するときに、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせに従って、データを端末に送信するためのダウンリンク送信ビームを決定する場合、
2つの参照信号が参照信号の同じグループに属する場合、これら2つの参照信号的ダウンリンク送信ビームを同時に使用でき、ここで、参照信号の同じグループ内の参照信号に対応するダウンリンク送信ビームにより構成された組み合わせは、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせであり、
2つの参照信号が参照信号の異なるグループに属する場合、これら2つの参照信号的ダウンリンク送信ビームを同時に使用でき、ここで、異なる参照信号グループ内の参照信号に対応するダウンリンク送信ビームにより構成された組み合わせは、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせであることを特徴とする請求項10に記載の送信ビーム情報を取得する装置。
【請求項15】
基地局がダウンリンク送信ビームを使用して端末に送信した参照信号を受信し、ここで、基地局は、ダウンリンク送信ビームごとに1つの参照信号を送信し、各ビームの参照信号は、前記ビームに対応するビームフォーミング重みを使用してフォーミングされた後に送信され、同じビームグループ内のダウンリンク送信ビームを使用して送信された参照信号を1つの参照信号集合とし、基地局が端末に送信した参照信号集合のグルーピングの関連情報を受信するための、受信モジュールと、
受信品質に従って受信した参照信号からQ個の参照信号を選択し、各参照信号の受信ビームを決定し、Qは1以上の整数である決定モジュールと、
参照信号集合のグルーピングの関連情報に従って、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせを選択して前記基地局に報告するための、報告モジュールと、を備えることを特徴とする送信ビーム情報をフィードバックする装置。
【請求項16】
前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせ内の異なるビームの参照信号は、異なる参照信号集合に属することを特徴とする請求項15に記載の送信ビーム情報をフィードバックする装置。
【請求項17】
前記報告モジュールは、
一つの参照信号グループとして、Q個の参照信号の中から同参照信号集合に属する参照信号を選択し、異なる参照信号グループ内の参照信号に対応するダウンリンク送信ビームより構成されたダウンリンク送信ビームの組み合わせは、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせであり、Qは1以上の整数であり、または、
一つの参照信号グループとしてQ個の参照信号の中から複数の参照信号集合に属する参照信号を選択し、異なる参照信号グループ内の参照信号に対応するダウンリンク送信ビームより構成されたダウンリンク送信ビームの組み合わせは、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせであり、Qは1以上の整数であり、または、
一つの参照信号グループとして、Q個の参照信号の中から異なる参照信号集合に属する参照信号を選択し、参照信号の同じグループ内の任意の2つの参照信号は同じ参照信号集合に属さなく、参照信号の同じグループ内の参照信号に対応するダウンリンク送信ビームにより構成された組み合わせは、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせであり、Qは1以上の整数であることを特徴とする請求項15に記載の送信ビーム情報をフィードバックする装置。
【請求項18】
前記報告モジュールは、
端末によって選択されたQ個の参照信号の識別情報および各参照信号の所属の参照信号グループ関連情報を前記基地局に報告し、Qは1以上の整数であることを特徴とする請求項15に記載の送信ビーム情報をフィードバックする装置。」

第4 引用文献、引用発明及び技術的事項
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に公開された引用文献1(Huawei,HiSilicon,Beam diversity for data and control channels [online](当審仮訳:データ及び制御チャネルのためのビームダイバーシティ),3GPP TSG RAN WG1#88 R1-1701715,2017年2月6日アップロード,インターネット )には、図面とともに以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

「By transmitting control channel on multiple beams, the reliability of control channel transmission is greatly enhanced from the beam diversity. The initial choice of the multiple beams can be based on periodic CSI-RS in P-1 or aperiodic CSI-RS in P-2 in the beam management procedure. But after the beams are selected, fast beam refinement or new potential beam identification during the control channel transmissions should also be considered.
CSI-RS based beam refinement or beam identification is one option. But DMRS of control channel based mechanism should be considered to achieve a fast beam refinement. Since multiple beams have already be configured for control channel transmission to a UE, the UE can be indicated to measure the multiple DMRS resources associated with all these beams, in addition to decoding control channel on just one or several of these beams. According to the measurement on these DMRSs, UE can recommend the best M beams to gNB, so that gNB refine the beams in subsequent subframes to achieve a better beam diversity gain. Since the DMRS resources need to be transmitted along with control channel anyway, this DMRS based beam scheme can achieve a fast beam refinement.
Furthermore, in addition to measuring the DMRS associated with its own beams, UE can also be indicated to measure DMRS associated with other UEs’ beams. The related information of DMRS resources to be measured can be indicated to UE by DCI. If other UEs’ beams have better quality, e.g., RSRP, UE can recommend these better beams to gNB. Alternatively, UE recommends the best M beams selected from all the measured beams to gNB. With this scheme, gNB can identify new potential beams for control channel transmission. Since all the measured DMRS are already configured and transmitted along with control channels to this UE and other UEs, this DMRS based scheme can achieve a fast new beam identification.」(第4頁第3行目ないし第22行目)
(当審仮訳:複数のビームで制御チャネルを送信することで、ビームダイバーシティから制御チャネル送信の信頼性が大幅に向上する。複数のビームの最初の選択は、ビーム管理手順において、P-1の周期的CSI-RS又はP-2の非周期的CSI-RSに基づくことができる。しかし、ビームが選択された後、制御チャネル送信中に高速なビームの絞り込みや新しい潜在的なビームの指示も考慮する必要がある。
CSI-RSに基づくビームの絞り込みやビームの指示は、1つの選択肢である。しかし、高速なビームの絞り込みを実現するためには、制御チャネルのDMRSベースのメカニズムを検討する必要がある。複数のビームが制御チャネル送信用にUEに対して既に設定されているため、UEは、これらのビームのうちの1つだけ又はいくつかにおける制御チャネルを復号することに加えて、これらのすべてのビームに関連する複数のDMRSリソースを測定するように指示され得る。これらのDMRSの測定結果に従って、UEは最良のM本のビームをgNBに対して推奨し、gNBが後続のサブフレームでビームを絞り込んで、より良いビームダイバーシティ利得を実現できるようにする。DMRSリソースは制御チャネルと一緒に送信される必要があるため、このDMRSベースのビーム方式は高速なビームの絞り込みを実現する。
さらに、UEは、自身のビームに関連するDMRSを測定するだけでなく、他のUEのビームに関連するDMRSを測定するように指示されることも可能である。測定されるDMRSリソースの関連情報は、DCIによってUEに指示され得る。他のUEのビームがより良い品質(例えば、RSRP)を有する場合、UEはこれらのより良いビームをgNBに推奨することができる。あるいは、UEは、測定されたすべてのビームの中から選択された最良のM本のビームをgNBに推奨する。この方式では、gNBは制御チャネル送信用の新しい潜在的なビームを識別することができる。測定されたすべてのDMRSが既に設定され、このUE及び他のUEに対して制御チャネルと一緒に送信されるので、このDMRSベースの方式は、高速な新しいビームの指示を実現できる。)

引用文献1の上記記載、及び無線通信分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記の「DMRSリソースは制御チャネルと一緒に送信される必要がある」との記載によれば、引用文献1には、DMRSリソースを送信すること、及び当該DMRSリソースは、制御チャネルと一緒に送信されるものであることが記載されている。そして、上記の「複数のビームで制御チャネルを送信する」との記載によれば、上記制御チャネルは、ビームで送信されるものである。
また、上記の「UEは、・・・(中略)・・・これらのすべてのビームに関連する複数のDMRSリソースを測定するように指示され得る。」との記載によれば、DMRSリソースは、UEが測定するものであるから、DMRSリソースは、UEに送信されるものであるといえる。そして、DMRSは、通常、基地局が送信することは無線通信分野における技術常識であるから、基地局であるgNBがDMRSリソースを送信することは自明である。
したがって、引用文献1には、gNBは、UEにDMRSリソースを送信し、当該DMRSリソースは、ビームで送信される制御チャネルと一緒に送信されるものであって、前記DMRSリソースはUEが測定するものである、方法が記載されているといえる。

イ 上記の「複数のビームが制御チャネル送信用にUEに対して既に設定されている・・・(中略)・・・UEは最良のM本のビームをgNBに対して推奨し、gNBが後続のサブフレームでビームを絞り込んで、より良いビームダイバーシティ利得を実現できるようにする。」との記載との記載によれば、引用文献1には、gNBは、UEから最良のM本のビームを推奨され、gNBは、当該推奨された最良のM本のビームにより、制御チャネルを送信するためのビームを絞り込むことが記載されている。また、上記の「測定されたすべてのDMRSが既に設定され、このUE及び他のUEに対して制御チャネルと一緒に送信される」との記載によれば、引用文献1における制御チャネルは、UEに送信されるものである。
したがって、引用文献1には、gNBは、UEから最良のM本のビームを推奨され、gNBは、当該推奨された最良のM本のビームにより、制御チャネルをUEに送信するためのビームを絞り込む方法が記載されている。

したがって、上記「ア」及び「イ」を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「gNBは、UEにDMRSリソースを送信し、当該DMRSリソースは、ビームで送信される制御チャネルと一緒に送信されるものであって、前記DMRSリソースはUEが測定するものであり、
gNBは、UEから最良のM本のビームを推奨され、
gNBは、当該推奨された最良のM本のビームにより、制御チャネルをUEに送信するためのビームを絞り込む方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に公開された引用文献2(CATT,Discussion on beam reporting [online](当審仮訳:ビーム報告に関する議論),3GPP TSG RAN WG1#88 R1-1702077,2017年2月7日アップロード,インターネット )には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

「The N selected Tx beams can be indicated by CSI-RS resource IDs.」(第2頁第19行目)
(当審仮訳:N個の選択されたTxビームは、CSI-RSのリソースIDで示すことができる。)

上記記載によれば、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「N個の選択されたTxビームは、CSI-RSのリソースIDで示すことができること。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)特許法第29条第1項第3号について
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「gNB」、「UE」及び「DMRS」は、それぞれ本願発明1の「基地局」、「端末」及び「参照信号」に含まれる。
そして、引用発明の「DMRSリソース」は「UEが測定するもの」であるから、引用発明において「UEにDMRSリソースを送信」することは、UEにDMRSを送信することであるといえる。したがって、引用発明において「UEにDMRSリソースを送信」することは、本願発明1の「端末に参照信号を送信」することに含まれる。
さらに、引用発明の「DMRSリソース」は「ビームで送信される制御チャネルと一緒に送信されるもの」であるから、引用発明において「UEにDMRSリソースを送信」することは、ビームを使用して行われるといえる。加えて、当該送信は、「UE」に対して行われるから、ダウンリンク送信であり、当該ビームは、ダウンリンク送信ビームであるといえる。したがって、引用発明の「DMRSリソースを送信」することは、ダウンリンク送信ビームを使用して行われるといえる。
以上のことから、引用発明の「gNBは、UEにDMRSリソースを送信し、当該DMRSリソースは、ビームで送信される制御チャネルと一緒に送信されるものであり」ということは、本願発明1の「基地局は、ダウンリンク送信ビームを使用して、端末に参照信号を送信し」ということに含まれる。

イ 上記「ア」で説示したように、引用発明の「gNB」及び「UE」は、それぞれ本願発明1の「基地局」及び「端末」に含まれる。
また、引用発明の「ビーム」が、上記「ア」で説示したように、ダウンリンク送信ビームを表しており、「最良のM本のビーム」は、UEから推奨される情報を表しているといえるから、引用発明の「最良のM本のビーム」と、本願発明1の「ダウンリンク送信ビームの組み合わせ」とは、「ダウンリンク送信ビームに関する情報」である点で共通する。
さらに、引用発明の「UEから・・・を推奨され」は、UEによって報告された、推奨される内容の情報を受信することを意味することは、無線通信分野における技術常識から明らかであるから、本願発明1の「端末によって報告された・・・を受信し」に含まれる。
以上のことから、引用発明の「gNBは、UEから最良のM本のビームを推奨され」ることと、本願発明1の「基地局は、端末によって報告されたダウンリンク送信ビームの組み合わせを受信」することとは、「基地局は、端末によって報告されたダウンリンク送信ビームに関する情報を受信」する点で共通する。

ウ 上記「ア」で説示したように、引用発明の「gNB」及び「UE」は、本願発明1の「基地局」及び「端末」に含まれる。
また、上記「イ」で説示したように、引用発明の「最良のM本のビーム」と、本願発明1の「ダウンリンク送信ビームの組み合わせ」とは、「ダウンリンク送信ビームに関する情報」である点で共通する。
さらに、引用発明の「制御チャネルをUEに送信するためのビーム」と、本願発明1の「データを端末に送信するためのダウンリンク送信ビーム」とは、「端末に送信するためのダウンリンク送信ビーム」である点で共通する。そして、引用発明の「絞り込む」ことは、本願発明1の「決定する」ことに含まれるから、引用発明の「制御チャネルをUEに送信するためのビームを絞り込む」ことと、本願発明1の「データを端末に送信するためのダウンリンク送信ビームを決定する」こととは、「端末に送信するためのダウンリンク送信ビームを決定する」点で共通する。
以上のことから、引用発明の「gNBは、当該推奨された最良のM本のビームにより、制御チャネルを送信するためのビームを絞り込む」ことと、本願発明1の「基地局は、前記ダウンリンク送信ビームの組み合わせに従って、データを端末に送信するためのダウンリンク送信ビームを決定する」こととは、「基地局は、前記ダウンリンク送信ビームに関する情報に従って、端末に送信するためのダウンリンク送信ビームを決定する」点で共通する。

エ 引用発明における「方法」は、「gNBは、UEから最良のM本のビームを推奨され」る手順を含むものである。そして、引用発明の「最良のM本のビーム」は、本願発明1の「送信ビーム情報」に含まれ、引用発明の「推奨され」ることは、本願発明1の「取得する」ことに含まれる。したがって、引用発明における「方法」は、本願発明1の「送信ビーム情報を取得する方法」に含まれる。

したがって、上記「ア」ないし「エ」を総合すれば、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致し、また相違する。

<一致点>
「基地局は、ダウンリンク送信ビームを使用して、端末に参照信号を送信し、
基地局は、端末によって報告されたダウンリンク送信ビームに関する情報を受信し、
基地局は、前記ダウンリンク送信ビームに関する情報に従って、端末に送信するためのダウンリンク送信ビームを決定する、送信ビーム情報を取得する方法。」

<相違点1>
参照信号の送信に関して、本願発明1では「基地局は、ダウンリンク送信ビームごとに1つの参照信号を送信し、各ビームの参照信号は、前記ビームに対応するビームフォーミング重みを使用してフォーミングされた後に送信され、同じビームグループ内のダウンリンク送信ビームを使用して送信された参照信号を1つの参照信号集合とし、基地局は、端末に参照信号集合のグルーピングの関連情報を送信し」という発明特定事項を含むのに対して、引用発明は、当該発明特定事項が特定されていない点。

<相違点2>
受信するダウンリンク送信ビームに関する情報が、本願発明1では、ダウンリンク送信ビームの「組み合わせ」であるという発明特定事項を含むのに対して、引用発明は、当該発明特定事項が特定されていない点。

<相違点3>
決定するダウンリンク送信ビームが、本願発明1では「データを」送信するためのものであるという発明特定事項を含むのに対して、引用発明は、当該発明特定事項が特定されていない点。

したがって、本願発明1と引用発明は、上記相違点1ないし3で相違するから、本願発明1は引用発明であるとはいえない。

(2)特許法第29条第2項について
本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、上記「(1)」で説示したとおりである。

上記相違点1について検討する。
上記「第4」の「2」で説示したように、引用文献2には「N個の選択されたTxビームは、CSI-RSのリソースIDで示すことができること。」との技術的事項が記載されている。
しかしながら、上記相違点1に係る「基地局は、ダウンリンク送信ビームごとに1つの参照信号を送信し、各ビームの参照信号は、前記ビームに対応するビームフォーミング重みを使用してフォーミングされた後に送信され、同じビームグループ内のダウンリンク送信ビームを使用して送信された参照信号を1つの参照信号集合とし、基地局は、端末に参照信号集合のグルーピングの関連情報を送信し」という発明特定事項は、引用文献2には記載も示唆もされておらず、また無線通信の技術分野における周知技術であるともいえない。
よって、引用発明において、上記相違点1に係る「基地局は、ダウンリンク送信ビームごとに1つの参照信号を送信し、各ビームの参照信号は、前記ビームに対応するビームフォーミング重みを使用してフォーミングされた後に送信され、同じビームグループ内のダウンリンク送信ビームを使用して送信された参照信号を1つの参照信号集合とし、基地局は、端末に参照信号集合のグルーピングの関連情報を送信」するものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たとはいえない。
したがって、上記相違点2及び相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明6ないし9について
本願発明6は、本願発明1の送信ビーム情報を取得する方法と対になる送信ビーム情報をフィードバックする方法の発明であって、本願発明1について上記「1」で説示した相違点1に対応する「基地局は、ダウンリンク送信ビームごとに1つの参照信号を送信し、各ビームの参照信号は、前記ビームに対応するビームフォーミング重みを使用してフォーミングされた後に送信され、同じビームグループ内のダウンリンク送信ビームを使用して送信された参照信号を1つの参照信号集合とする前記受信し」及び「前記端末は、前記基地局によって送信された参照信号集合のグルーピングの関連情報を受信し」という発明特定事項を少なくとも含むものであるから、本願発明1と同様な理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明7ないし9は、本願発明6の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明6と同じ理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明10ないし14について
本願発明10は、方法の発明である本願発明1を装置の発明として記載したものであって、上記「1」で説示した相違点1に対応する「ダウンリンク送信ビームごとに一つの参照信号を送信し、各ビームの参照信号は、前記ビームに対応するビームフォーミング重みを使用してフォーミングされた後に送信され、同じビームグループ内のダウンリンク送信ビームを使用して送信された参照信号を1つの参照信号集合とし、端末に参照信号集合のグルーピングの関連情報を送信するための、参照信号送信モジュール」という発明特定事項を少なくとも含むものであるから、本願発明1と同様な理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明11ないし14は、本願発明10の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明10と同じ理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明15ないし18について
本願発明15は、方法の発明である本願発明6を装置の発明として記載したものであって、上記「1」で説示した相違点1に対応する「基地局は、ダウンリンク送信ビームごとに1つの参照信号を送信し、各ビームの参照信号は、前記ビームに対応するビームフォーミング重みを使用してフォーミングされた後に送信され、同じビームグループ内のダウンリンク送信ビームを使用して送信された参照信号を1つの参照信号集合とし、基地局が端末に送信した参照信号集合のグルーピングの関連情報を受信するための、受信モジュール」という発明特定事項を少なくとも含むものであるから、本願発明6と同様な理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明16ないし18は、本願発明15の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明15と同じ理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-05-10 
出願番号 P2019-553933
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 113- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 本郷 彰
横田 有光
発明の名称 送信ビーム情報を取得する方法と装置、および送信ビーム情報をフィードバックする方法と装置  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  

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