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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E06C |
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管理番号 | 1385218 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-01-13 |
確定日 | 2022-05-13 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6901060号発明「避難梯子装置用係止具、及びこれを備えた避難梯子装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6901060号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6901060号の請求項1及び2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成29年1月12日に出願され、令和3年6月21日にその特許権の設定登録がされ、令和3年7月14日に特許掲載公報が発行され、その後、令和4年1月13日付けで特許異議申立人伊野口 誠(以下「申立人」という。)より、請求項1及び2に係る特許に対して、特許異議の申立てがされたものである(特許異議申立書について、以下「申立書」という。)。 第2 本件発明 特許第6901060号の請求項1及び2の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)。 「【請求項1】 上方及び下方に開口を有する枠と、前記枠内に折り畳まれた状態で収納される梯子と、前記枠に回動自在に取り付けられて前記枠の上方の開口を覆う上蓋と、前記枠に回動自在に取り付けられて前記枠の下方の開口を覆う下蓋と、を具備する避難梯子装置における、前記上蓋と前記枠とを着脱自在に係止する弾性変形可能な係止具であって、 前記上蓋に固定される固定片と、 前記固定片から前記枠の外側を前記下蓋に向かって延びる垂下片と、 前記垂下片から前記枠の外側に向かって延び、前記上蓋と前記枠との間から露出する操作片と、 前記枠に形成された孔に係合するとともに前記操作片の押上操作に伴って前記孔との係合状態を解除するように、前記垂下片から前記枠に向かって突出する突起と、 を備え、 前記突起が、先端が前記上蓋側を向くように傾斜し、 前記突起の前記下蓋側の先端が丸みを帯びていること、 を特徴とする係止具。 【請求項2】 上方及び下方に開口を有する枠と、 前記枠内に折り畳まれた状態で収納される梯子と、 前記枠に回動自在に取り付けられて前記枠の上方の開口を覆う上蓋と、 前記枠に回動自在に取り付けられて前記枠の下方の開口を覆う下蓋と、 前記上蓋と前記枠とを着脱自在に係止する弾性変形可能な係止具と、を具備し、 前記係止具は、 前記上蓋に固定される固定片と、 前記固定片から前記枠の外側を前記下蓋に向かって延びる垂下片と、 前記垂下片から前記枠の外側に向かって延び、前記上蓋と前記枠との間から露出する操作片と、 前記枠に形成された孔に係合するとともに前記操作片の押上操作に伴って前記孔との係合状態を解除するように、前記垂下片から前記枠に向かって突出する突起と、 を有し、 前記突起が、先端が前記上蓋側を向くように傾斜し、 前記突起の前記下蓋側の先端が丸みを帯びていること、 を特徴とする避難梯子装置。」 第3 申立理由の概要 申立人は、本件発明1及び2は、当業者が、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであり、よって本件特許は特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである旨主張し、その理由として以下のとおり主張している。v 1 本件発明1について (1)本件発明1と甲第1号証記載の発明との相違点 本件発明1と甲第1号証記載の発明は、以下の点で相違している。(申立書第21頁下から4行〜23頁5行) [相違点1] 本件発明1が「前記枠に形成された孔に係合するとともに前記操作片の押上操作に伴って前記孔との係合状態を解除するように、前記垂下片から前記枠に向かって突出する突起と、」という構成を有するのに対し、甲第1号証記載の発明では上蓋3に設けられた係止部材30の係合孔35と、収納枠2に設けられた係合部材40の傾斜係合凸部43とが係合する構造となっている点。 [相違点2] 本件発明1が「前記突起が、先端が前記上蓋側を向くように傾斜し、」という構成を有するのに対し、甲第1号証記載の発明ではこのような突起がない点。 [相違点3] 本件発明1が「前記突起の前記下蓋側の先端が丸みを帯びていること、」という構成を有するのに対し、甲第1号証記載の発明ではこのような突起の先端の丸みがない点。 (2)各相違点についての検討 ア 相違点1について 「先行発明2には、避難梯子装置において、蓋と枠形の格納箱本体とを係脱可能に互いに係合する係脱機構を備えることが開示されている。そして先行発明2の「係合凸部11C」は、本件発明1の「突起」に相当する。 よって、相違点1は 、先行発明2に開示されている。」(申立書第23頁8行〜11行) イ 相違点2について 「先行発明3には、パネル22がキャップ10に設けられ、容器リップ側(上側)を向くように傾斜し、外側へ撓曲し得ることが開示されている。この先行発明3の「パネル22」、「キャップ10」、「容器リップ」、「容器リップ」は、それぞれ本件発明1の「突起」、「上蓋」、「枠」、「孔」に相当する。 キャップ10が容器に取り付けられるとき、パネル22は 、前進する容器リップによって瞬間的に外側へ付勢され、その後パネル22は、元の形状へ戻ることにより容器リップにスナップ係合して、キャップ10を容器に係止させる。 また、先行発明4には、台輪1と家具本体2の連結に適用される連結装置が開示されている。この連結装置は、コイルばね8により回動付勢したJ形フック6を逆V宇形フック受を係止させて、家具本体2と台輪1を簡単かつ容易に連結する。この先行発明4の 「J形フック6」、「家具本体4」、「台輪1」、「逆V形フック受30」は、それぞれ本件発明1の「突起」、「上蓋」、「枠」、「孔」に相当する。 よって、相違点2は、先行発明3及び先行発明4に開示されている。」(申立書第23頁13行〜24頁1行) 「また、先行発明1において、上蓋3に設けられた係止部材30の係合孔35と、収納枠2に設けられた係合部材40の傾斜係合凸部43の配置を逆にし、上蓋3に傾斜係合凸部43を設け、収納枠2に係合孔35を設けたとすると、傾斜係合凸部43が下向きのまでは上蓋3が開く方向において係合孔35と係合しないため、強風による上蓋3の振動を防止できない。このような場合に、傾斜係合凸部43を上向きに変更し、上蓋3が開く方向において傾斜係合凸部43が係合孔35に係合するようにすることは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内である。 したがって、相違点2は、先行発明1から容易想到である。」(申立書第24頁2行〜10行) ウ 相違点3について 「先行発明2の図6には、係合凸部11Cの下側の先端が丸みを帯びていることが開示されている。 また、先行発明4の第3図には、J形フック6下側の先端が丸みを帯びていることが開示されている。 よって、相違点3は、先行発明2、4に開示されている。 また、2つの部材が互いに係合する係合構造において、係合時に互いに摺動する部分に丸みを持たせることは、係合を円滑に行わせるための手段として周知である。」(申立書第24頁12行〜19行) 2 本件発明2について 本件発明2の末尾が「避難梯子装置」となっている点については、 「請求項2の 「避難梯子装置」が、先行発明1で 「梯子を具備する避難装置」として記載され、先行発明2で「避難梯子装置」として記載されている。」(申立書第25頁8行〜9行) その余の点については上記1で述べたとおりである。(申立書第24頁最下行〜25頁2行) [証拠方法] 甲第1号証:特開2010−35733号公報 甲第2号証:特開平11−290470号公報 甲第3号証:特開平7−206022号公報 甲第4号証:実願昭56−169718号(実開昭58−74605号)のマイクロフィルム 第4 当審の判断 1 各甲号証の記載事項 (1)甲第1号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の記載がある(決定で下線を付した。以下同様。)。 ア 「【請求項1】 ベランダ等のスラブに設けられた開口部に固定される収納枠と、この収納枠に開閉可能に枢着される上蓋及び下蓋と、上記収納枠内に折り畳まれて収納されると共に上記上蓋及び下蓋が開放されたとき、下方に伸長する梯子と、を具備する避難装置において、 上記上蓋の自由端側の辺に設けられる係止部材と、上記収納枠の周壁に設けられ、上記上蓋の閉鎖状態において、上記係止部材と係合可能な係合部材と、を具備し、 上記係止部材は、上記上蓋の裏面に固定される固定片の端部から垂下する垂下片と、この垂下片の下端から上蓋の自由端側外方に向かって延在される操作片と、上記垂下片に設けられる係合孔と、を有する弾性変形可能な部材にて形成され、 上記係合部材は、上記収納枠の周壁に固定される起立片と、この起立片から傾斜状に起立され、上記係合孔と係合可能な傾斜係合凸部を具備してなる、 ことを特徴とする避難装置。」 イ 「【技術分野】 【0001】 この発明は避難装置に関するもので、更に詳細には、ベランダ等に設けられた収納枠に開閉可能に枢着される上蓋及び下蓋と、上蓋及び下蓋が開放されたとき、下方に伸長する梯子とを具備する避難装置に関するものである。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、係合孔を有する受部材と、係合孔に係脱可能に係合する係合凸部を有する弾性係合片とからなる係脱機構を有する構造のものにおいては、受部材と弾性係合片の係合部に直接関与しない上蓋の自由端辺を持ち上げて上蓋を開放するため、上蓋の開放に力を要するという問題がある。 【0006】 また、操作部を操作して、弾性係合片と係合部の係合を解除する係脱機構を有する構造のものにおいては、操作部を操作して弾性係合片と係合部の係合を解除した後、上蓋の自由端辺を持ち上げて上蓋を開放するため、開放動作が増え避難の妨げとなる懸念がある。 【0007】 この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、強風により煽られて上蓋が振動することによる騒音の発生や破損を防止することができると共に、上蓋及び下蓋の不用意な開放を防止し、かつ、避難時には上蓋の開放を容易に行えるようにした避難装置を提供することを課題とするものである。」 エ 「【0020】 この発明の避難装置は、床、ベランダ等のスラブ1に設けられた開口部1aに嵌装・固定される方形状の収納枠2と、この収納枠2の1辺の床面側及び天井面側にそれぞれ枢着される上蓋3及び下蓋4と、収納枠2内に折り畳まれて収納されると共に階下の床若しくはその付近まで伸長するパンタグラフ式の梯子6と、この梯子6の伸長降下速度を制御すると共に梯子6を引上げ収納する緩降器7と、上蓋3と下蓋4とを互いに連動して開閉動作させる開閉連動機構10と、上蓋3の自由端側すなわち枢着部と反対の開放端側と収納枠2に設けられるラッチ機構20と、で主要部が構成されている。」 オ 「【0023】 上記ラッチ機構20は、図1ないし図4に示すように、上蓋3の自由端側の辺に設けられる係止部材30と、収納枠2の周壁2aに設けられ、上蓋3の閉鎖状態において、係止部材30と係合可能な係合部材40と、を具備している。 【0024】 上記係止部材30は、上蓋3の裏面に例えばスポット溶接によって固定される固定片31の端部から垂下する垂下片32と、この垂下片32の下端から上蓋3の自由端側外方に向かって延在されると共に上蓋3の外側に存在する先端の操作部34が上方に位置すべく略クランク状に折曲される操作片33と、垂下片32に設けられる係合孔35と、を有する弾性変形可能な部材例えばばね鋼にて形成されている。」 カ 「【0031】 上記のように構成されるラッチ機構20を有するこの発明に係る避難装置によれば、不使用時すなわち上蓋3の閉鎖時においては、図2,図3,図5(a)に示すように、上蓋3に設けられた係止部材30の係合孔35と、収納枠2に設けられた係合部材40の傾斜係合凸部43とが係合する。これにより、強風により上蓋3が振動するのを抑制することができると共に、上蓋3及び下蓋4が開放するのを防止することができる。 【0032】 また、避難時においては、図5(b)に示すように、操作部34を掴んで上方向に操作すると、係止部材30が固定片31と垂下片32の隣接角部36aで変形して係合孔35と傾斜係合凸部43との係合が解除する。更に操作部34を上方向に操作することにより、上蓋3が開放する(図5(c)参照)。これにより、係合孔35と傾斜係合凸部43との係合を解除すると同時に上蓋3の開放を行うことができる。なお、避難時においては、避難者は目印用の色彩を施した被覆部材37によって操作部34の位置を容易に確認することができるので、非常事態のパニック時において、迷うことなく上蓋3を開放すること ができる。 【0033】 なお、上蓋3を開放した後、操作部34から手を離すと、係止部材30は元の形に復元するので、上蓋3を閉鎖すると、操作片33の基端部が傾斜係合凸部43に沿って弾性変形し、傾斜係合凸部43を乗り越えた状態で復元して係合孔35と傾斜係合凸部43が係合する。」 キ 図1は次のものである。 ク 図1をみると、収納枠2は上方及び下方に開口を有し、上蓋2は収納枠2の上方の開口を覆うものであり、下蓋4は収納枠2の下方の開口を覆うものであることがわかる。 ケ 図3は次のものである。 コ 図3をみると、垂下片32は固定片31の端部から収納枠2の外側を垂下するものであり、また操作片33は上蓋3と収納枠2との間から露出するものであることがわかる。 サ 図1及び図3をみると、傾斜係合凸部43は先端が下方を向くように傾斜するものであることがわかる。 シ 図4は次のものである。 ス 上記アないしシより、甲第1号証には、避難装置の係止部材30の発明として次の発明(以下「甲1第1発明」という。)が、また係止部材30を具備する避難装置の発明として次の発明(以下「甲1第2発明」という。)が記載されていると認める。 [甲1第1発明] 「上方及び下方に開口を有する収納枠2と、収納枠2内に折り畳まれて収納される梯子6と、収納枠2に開閉可能に枢着されて収納枠2の上方の開口を覆う上蓋3と、収納枠2に開閉可能に枢着されて収納枠2の下方の開口を覆う下蓋4と、を具備する避難装置の、 上蓋3に設けられる係止部材30と、収納枠2の周壁2aに設けられ上蓋3の閉鎖状態において係止部材30と係合可能な係合部材40とを具備する、上蓋3と収納枠2のラッチ機構20における、 弾性変形可能な部材にて形成される係止部材30であって、 上蓋3の裏面に固定される固定片31と、 固定片31の端部から前記収納枠2の外側を垂下する垂下片32と、 垂下片32の下端から上蓋3の外方に向かって延在され、上蓋3と収納枠2との間から露出し、上蓋3の外側に先端の操作部34が存在する操作片33と、 垂下片32に設けられ、係合部材40に設けられた先端が下方を向く傾斜係合凸部43と係合するものであって、操作部34を掴んで上方向に操作すると傾斜係合凸部43との係合が解除し、操作部34から手を離すと傾斜係合凸部43と係合する、係合孔35と、 を備える、 係止部材30。」 [甲1第2発明] 「上方及び下方に開口を有する収納枠2と、 収納枠2内に折り畳まれて収納される梯子6と、 収納枠2に開閉可能に枢着されて収納枠2の上方の開口を覆う上蓋3と、 収納枠2に開閉可能に枢着されて収納枠2の下方の開口を覆う下蓋4と、 上蓋3に設けられる係止部材30と、収納枠2の周壁2aに設けられ上蓋3の閉鎖状態において係止部材30と係合可能な係合部材40とを有する、上蓋3と収納枠2のラッチ機構20と、を具備し 係止部材30は、 上蓋3の裏面に固定される固定片31と、 固定片31の端部から前記収納枠2の外側を垂下する垂下片32と、 垂下片32の下端から上蓋3の外方に向かって延在され、上蓋3と収納枠2との間から露出し、上蓋3の外側に先端の操作部34が存在する操作片33と、 垂下片32に設けられ、係合部材40に設けられた先端が下方を向く傾斜係合凸部43と係合するものであって、操作部34を掴んで上方向に操作すると傾斜係合凸部43との係合が解除し、操作部34から手を離すと傾斜係合凸部43と係合する、係合孔35と、 を有している、 避難装置。」 (2)甲第2号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の記載がある。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高層建築物あるいは住居用建築物のベランダや張出し部分の床に設置されて、火災発生時などの緊急避難時に下階側に降ろされる梯子を備えた避難梯子装置に関する。 【0002】 【従来の技術】この種の避難梯子装置として、本発明出願人により、たとえば実開平7−13352号公報に開示の技術が提供されている。この避難梯子装置は、図10に示すように、高層建築物あるいは住居用建築物のベランダや張出し部分の床1に下階に通じる開口部2を形成し、この開口部2に嵌着・固定された枠形の格納箱本体3に避難梯子4を折り畳んで格納し、かつ枠形の格納箱本体3の上下方向の開口3Aの上面を開閉する上蓋5および開口3Aの下面を開閉する下蓋6とを備えている。 【0003】 上蓋5の基端部5Aは枠形の格納箱本体3の基端側の外側にヒンジ7により枢着され、下蓋6の基端部6Aは枠形の格納箱本体3の基端側の内面にピン8により枢着されている。上蓋5と下蓋6の幅方向両側は図11のリンク機構9により互いに連結されている。したがって、上蓋5の自由端部5Bを引上げて、ヒンジ7を回動中心として上蓋5を上方に回動して開放する動作に連動して、下蓋6はピン8を回動中心として自由端部6Bが下方に回動して図12のように開放される。下蓋6が開放されることで、枠形の格納箱本体3に折り畳んで格納されている図10の避難梯子4がその自重で上下方向の開口3Aから降下しながら伸長垂下する。これにより、たとえば上階から下階への避難を実行することができる。」 イ 「【0014】 【発明の実施の形態】以下、請求項1、請求項2、請求項3に係る発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、この発明の特徴構成は、上蓋と枠形の格納箱本体とを係脱可能に互いに係合する係脱機構にあり、避難梯子装置の設置場所および全体構成などは図10ないし図12で説明した従来例と異ならないので、これらの構造説明および図示は省略し、本発明の特徴構成について説明する。 【0015】 図1において、係脱機構10は弾性係合片11と受部材12とで構成される。弾性係合片11は、ステンレス鋼などの金属板材によってなり、幅方向へ水平にのびる上端取付部11Aと、この上端取付部11Aの幅方向中央部分の前端から下方に垂下して連設された後向きフック状の本体部11Bとを有し、本体部11Bにおける垂下部11b1とフック11b2の境界には、前方へ略半円状に突出する係合凸部11Cが全幅にわたって水平に設けられている。一方、受部材12は、ステンレス鋼などの金属板材によって投影平面形状が門型に形成されており、前記弾性係合片11の係合凸部11Cが係脱可能に係合する係合孔12Aを貫通形成した投影平面形状が略コ字状の本体部12Bと、この本体部12Bの幅方向両端から幅方向外側に直角にのびて連設された1対の取付片12C,12Cとを備えている。 【0016】 弾性係合片11の高さは受部材12の高さよりも若干大きく設定され、弾性係合片11におけるフック11b2の自然状態での前後方向の長さは受部材12における略コ字状の本体部12Bの前後方向の長さよりも僅かに大きく設定されている。 【0017】 弾性係合片11は、図2および図3に示すように、その上端取付部11Aを上蓋5の自由端部5Bの下面にスポット溶接S1,S1で固着することによって、上蓋5に一体に結合される。また、受部材12は、図4および図5に示すように、1対の取付片12C,12Cを枠形の格納箱本体3における上蓋5の自由端部5Bが接離する前端上部にスポット溶接S2,S2で固着することによって、に一体に結合される。これにより、図6に示すように、上蓋5の閉じ状態で係合孔12Aと係合凸部11Cとの係合状態が保持されるとともに、上蓋5に対して設定値未満の引上げ力Fが作用した場合には、係合凸部11Cと係合孔12Aとの係合状態が保持されて上蓋5の閉じ状態を維持するとともに、上蓋5に対して設定値以上の引上げ力F1が作用した場合にのみ係合凸部11Cと係合孔12Aとの係合状態が解除されて上蓋5の開放を許容する係合強さの係脱機構10が構成される。 【0018】 このような構成であれば、幼児による非力な設定値未満の引上げ力F(たとえば1KGf以下)で上蓋5を引上げようとしても、係脱機構10における弾性係合片11の係合凸部11Cと受部材12の係合孔12Aとの係合状態が保持されて上蓋5の閉じ状態を維持し、該上蓋5の開放を確実に防止することができるとともに、幼児以外による設定値以上の引上げ力F1(たとえば10KGf〜15KGf以上)で上蓋5を引上げることで、弾性係合片11の弾性変形により係合凸部11Cと受部材12の係合孔12Aとの係合状態が解除されて上蓋5の開放を許容することができる。 【0019】 また、係脱機構10の係合状態において、弾性係合片11の後向きフック状の本体部11Bにおける垂下部11b1の前面を受部材12における略コ字状の本体部12Bの内面に向けて押圧する弾性係合片11のばね力や、係合孔12Aの上端内面に対する係合凸部11C上端面の係合角度などを調整することによって、係合凸部11Cと係合孔12Aとの係合強さをコントロールすることができ、係合強さのコントロールに基づいて引上げ力F1の設定値を決定することができる。」 ウ 図1は次のものである。 エ 図2は次のものである。 オ 図1及び図2をみると、略半円状に突出する係合凸部11Cは先端全体が丸みを帯びていることがわかる。 カ 図6は次のものである。 キ 図1、図2及び図6をみると、自然状態での前後方向の長さが受部材12における略コ字状の本体部12Bの前後方向の長さよりも僅かに大きく設定されたフック11b2は、上蓋5の閉じ状態において、先端が枠形の格納箱本体3に当接し前後方向の長さが本体部12Bの前後方向の長さとなり、垂下部11b1の前面を本体部12Bの内面に向けて押圧するばね力が生じることがわかる。 ク 図6をみると、弾性係合片11の上端取付部11Aから下方に垂下する本体部11Bは枠3の外側を垂下するものであること、及び、係合凸部11Cは枠形の格納箱本体3とは反対の方向に向かって突出するものであることが看取できる。 ケ 上記アないしクより、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 [甲2発明] 「枠形の格納箱本体3に避難梯子4を折り畳んで格納し、かつ上方に回動して枠形の格納箱本体3の上下方向の開口3Aの上面を開閉する上蓋5および下方に回動して開口3Aの下面を開閉する下蓋6とを備えている避難梯子装置の、 弾性係合片11と受部材12とで構成され、上蓋5の閉じ状態で係合状態が保持されるとともに、前記上蓋5に対して設定値以上の引上げ力F1が作用した場合にのみ係合状態が解除されて前記上蓋5の開放を許容する係合強さの係脱機構10における、弾性変形する弾性係合片11であって、 上蓋5に固着することによって上蓋5に一体に結合される上端取付部11Aと、 上端取付部11Aから下方に枠3の外側を垂下するように連設された後向きフック状の本体部11Bと、 本体部11Bにおける垂下部11b1とフック11b2の境界に水平に設けられた、本体部11Bから枠形の格納箱本体3とは反対の方向に向かって前方へ略半円状に突出し、先端全体が丸みを帯びている係合凸部11Cと、 を備え、 係合凸部11Cは、投影平面形状が略コ字状の本体部12Bとこの本体部12Bの幅方向両端から幅方向外側に直角にのびて連設され枠形の格納箱本体3に固着される1対の取付片12C,12Cとを備え投影平面形状が門型に形成された受部材12の、本体部12Bに貫通形成された係合孔12Aに係合するとともに、上蓋5に対して設定値以上の引上げ力F1が作用した場合に係合状態が解除されるものであって、 弾性係合片11の後向きフック状の本体部11Bにおける垂下部11b1の前面を受部材12における略コ字状の本体部12Bの内面に向けて押圧する弾性係合片11のばね力によって係合凸部11Cと係合孔12Aとの係合強さがコントロールされ、係合強さのコントロールに基づいて引上げ力F1の設定値が決定され、 フック11b2の自然状態での前後方向の長さは受部材12における略コ字状の本体部12Bの前後方向の長さよりも僅かに大きく設定され、上蓋5の閉じ状態において、先端が枠形の格納箱本体3に当接し前後方向の長さが本体部12Bの前後方向の長さとなり、垂下部11b1の前面を本体部12Bの内面に向けて押圧するばね力が生じる、 弾性係合片11。」 (3)甲第3号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の記載がある。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、容器に確実に被着することができるスナップ式可撓性キャップに関するものである。」 イ 「【0019】 【実施例】図1から図6には本発明のスナップ式可撓性キャップ10の第1実施例が開示されている。このキャップは、平坦キャップ面12と、該キャップ面12に対して垂直に形成され、容器19の環状のリップ21(図3参照)を囲繞して把持する、環状のフランジ14とを含んでいる。 【0020】 「環状」という用語は、円形のループばかりでなく、楕円又は長方形あるいは正方形のような、その他の形状をも包含するように意図されている。本発明は、円形断面以外の容器に関しても適用され得るからである。 【0021】 キャップ10は、環状の壁部16をも含んでおり、この環状壁部16は、環状フランジ14から内側に離間した位置に平坦キャップ面12に対して垂直に設けられ、これらのフランジと環状壁部の間に、容器リップを受け入れるための適当な環状の凹部18が形成されている。更に、その内側の環状凹部20も形成されている。これは、必要に応じて所望のパターンで複数の半径方向リブを内包することが可能であり、このリブにより、キャップ10の当該部分の可撓性と強度を調節する。 【0022】 本発明によれば、環状の周辺フランジ14は、該フランジの一部から内側に傾斜している、相互に離間して配置された複数のパネル22を有する。これらのパネルは、図16及び図17のような後続の実施例で説明されるように、容器リップの下側に係合するような位置に設けられている。基本的に、キャップ10が容器に取り付けられるとき、パネル22は、前進する容器リップによって瞬間的に外側へ付勢され、その後パネル22は、元の形状へ戻ることにより容器リップにスナップ係合して、キャップ10を容器に係止させる。パネル22は、その成形時の形状である内側に傾斜した位置において、環状壁部16から少なくとも2mmだけ離間し、これにより、この構造体を形成する鋼鋳型部分のための空間を提供する。 【0023】 パネル22は、その下縁部24においてのみフランジ14に対して接続されている。パネル22の成形時の自然な形状は、図1及び図6で示されたような内側に傾斜した形状である。従って、該パネル22は、外側へ撓曲し得るものであるが、許される場合には、自然に再び内側へ変移して容器にスナップ係合することになる。フランジ14は、その下側の自由端部に環状の厚手補強部40を形成することにより、フープ強度を高めることが望ましい。 【0024】 典型的には、キャップは、2枚から6枚の内側傾斜パネル22を有することになる。これらのパネルは、典型的には等間隔でキャップの周辺に配置される。図1から図6の実施例では、パネル22は、側面開口部26によって3つの側面を取り巻かれている。これが構造体の成形を容易にするのである。隆起した環状リング27が、平坦キャップ面12に対してフランジ14を接続する。リング27は、キャップ面12の平面と平行であるが、そこから離間する異なる平面を占めている。 【0025】 容器19に対するキャップ10の密閉性(図3)は、壁部16と容器リップ21の間の環状密閉材、キャップと容器リップ21の頂部環状領域28、更には、容器リップ21を密閉し得るキャップ10の環状外側領域30によって達成される。更に、ラバー密閉リング33を備えることも可能であり、これが密閉を容易にする。 【0026】 キャップ10及びこれに類似したキャップが、いかにして、パネル22の係止作用によって容器に対して永続的に係止され得るのかは、図16及び図17から理解されるであろう。キャップ10を容器から取り外すためには、ナイフ等によってフランジを切断開口部26又は32から垂直方向に切断するだけで良い。例えば、各々のパネル22の各々の側面において、線34で示されたような垂直方向の切断を行うのである。その結果、切断線34によって分離されたフランジ14の部分36を回転させることが可能になり、図4で示されたようにして、部分36を薄手で強度の弱い曲げ線38に沿って外側へ旋回させる。この曲げは、当然ながらパネル22を容器19のリップ21との係合から離脱させる。更に、環状の補強部40が切断によって破壊されて弱体化されるので、キャップ10のフープ強度もまた大きく弱体化される。これが、典型的には剥離作業である手による可撓性キャップ10の除去を許容するのである。 【0027】 垂直方向の切断が開口部26の位置で行われるならば、パネル22は、キャップ10から完全に切り離されて、キャップの開放をも許容する。環状の凹み41(図2)は、必要に応じて省略することも可能であり、環状フランジ14は、例えば図22によれば、図2のような凹み66が省略されて、より平坦かつ真っ直ぐなものになる。 【0028】 このようにして、非常に高い落下耐性を有して、一杯に満たされた大型の容器が落下する場合であっても外れることのない可撓性のプラスチックキャップが提供される。同時に、このキャップは、上述のように容器から容易に除去されるものであり、更には、容易に容器へ再装着することも可能であり、その密閉の手段を提供する。曲げ線38は、再び曲げ戻すことが可能であって、パネル22を容器19のリップと係合するように戻すことにより、容器を再度閉鎖することができる。」 ウ 「【0035】 図12から図15には本発明の可撓性キャップのもう1つの実施例が開示されている。以下に説明される点を除けば、これは図1から図6の実施例と同様なものである。 【0036】 示されたように、キャップ10cは、平坦キャップ面12cと、このキャップ面から垂直に延在し、容器の環状リップを囲繞して把持する環状周辺フランジ14cとを有する。傾斜パネル22cは、図1から図6の実施例と同様な構造と機能を有するものとして示されている。フランジ14cの底部には、環状補強リブ40cが形成され、このリブ40cがキャップの開放のために切断されるまでフランジを強化することになる。 【0037】 前述した実施例と同様に、パネル22cは、パネル22cの除去を許容する切断開口部26cによってブラケット付けされるかあるいは除去され得る。この実施例では、内側環状壁部16cは、他の実施例と同様に、平坦キャップ面10cの平面から離間した平行な平面を占める環状リング27cへ連なるようにして設けられるが、図1から図6の実施例とは幾分異なった設計である。 【0038】 図16及び図17を参照すると、容器リップ62に対するキャップ10cの取付け状態が示されている。図16は、いかにしてキャップが容器リップ62へ被さるように降下し、パネル22cを旋回によって外側へ転移させるのか示している。その後、図17で示されたように、パネル22cは、キャップ10cが容器リップへ完全に取付けられると、元の形状に戻って容器リップにスナップ係合する。従って、キャップ10cは、パネル22cが各々の切断開口部26c或いは前述の開口部32に類似したその他の切断開口部において切り離されるまで、容器に対して永続的に装架されるのである。」 エ 図1は次のものである。 オ 図2は次のものである。 カ 図6は次のものである。 キ 図15は次のものである。 ク 図17は次のものである。 (4)甲第4号証 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の記載がある。 ア 「この考案の一実施例を第1図ないし第4図を用いて説明する。すなわち、この連結装置は、台輪1と家具本体2の連結に適用したもので、第1図および第2図に示すように 、台輪1の対向内側面に逆V形フック受3の一側片3aを固着する。この場合、逆V形フック受3の他側片3bはばね性をもたせておく。また、第3図および第4図に示すように、家具本体2の地板4の下面に取付けた軸受5でJ形フック6の水平軸部7を枢支して、そのJ形フック6をコイルばね8により先端9の屈曲方向へ回動付勢する。そして、家具本体2と台輪1の連結は、家具本体2を台輪1の上方に配して、J形フック6の先端9を逆V形フック受3の他側片3b外面に対接させ、家具本体2をそのまま台輪1上に載置することにより行なう。すなわち、家具本体2を台輪1上に下降させていくと、J形フック6の先端9が逆V形フック受3の他側片3bを一側片3a側へ押込むとともに、その他側片3bの弾性復帰力でJ形フック6も押し戻されて第3図左回り方向に回動し、地板4の下面4aが台輪1の上面1aに載置されたときに、先端9の膨出部9aが他側片3bの先端3cよりも下万に位置するようになって、逆V形フック受3の他側片3bが元の位置に弾性復帰するとともにJ形フック6がコイルばね8の付勢力で第3図右回り方向に回転し、こうしてJ形フック6の先端9が逆V形フック受3の他側片3b内面側に係止して家具本体2と台輪1を連結する。 このように、家具本体2を台輪1上に載置するだけで、コイルばね8により回動付勢したJ形フック6を逆V形フック受3を係止させて、家具本体2と台輪1を簡単かつ容易に連結することができる。また、連結作業後は、J形フック6と逆V形フック受3が台輪1と家具本体2とにより隠蔽されて外部から見えなくなるため、美感にも優れる。さらに、J形フック6を逆V形フック受3に係合することにより、家具本体2を台輪1の正位置へ精度良く設置できる。 なお、上記実施例においては、逆V形フック受3の他側片3bにばね性をもたせているが、このばね性は必ずしも必要なものではない。 また、上記実施例では、この考案を家具本体2と台輪1の連結に用いたが、この考案は、一対の被連結部材を連緒する場合に広く適用できる。 以上のように、この考案の連結装置は、第1の被連結部材の内側面に逆V形フック受の一側片を取付けるとともに、第2の被連結部材の下面にJ形フックの縦片上端を枢結してその先端の屈曲方向へばねにより回動付勢し、そのJ形フックの先端を逆V形フック受の他側片外面に対接した状態で第2の被連結部材の下面を第1の被連結部材上面に載置することによりJ形フックを逆V形フック受の他側片に係止するようにしたため、上記被連結部材を簡単に連結することができるという効果がある。」(明細書第2頁6行〜第4頁末行) イ 第2図は次のものである。 ウ 第3図は次のものである。 2 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1第1発明を対比する。 ア 甲1第1発明の「折り畳まれて収納される梯子6」を具備する「避難装置」は、本件発明1の「折り畳まれた状態で収納される梯子」を具備する「避難梯子装置」に相当する。 次に甲1第1発明の「上方及び下方に開口を有する収納枠2」は、本件発明1の「上方及び下方に開口を有する枠」に相当し、甲1第1発明の「収納枠2に開閉可能に枢着されて収納枠2の上方の開口を覆う上蓋3」及び「収納枠2に開閉可能に枢着されて収納枠2の下方の開口を覆う下蓋4」は、それぞれ本件発明1の「前記枠に回動自在に取り付けられて前記枠の上方の開口を覆う上蓋」及び「前記枠に回動自在に取り付けられて前記枠の下方の開口を覆う下蓋」に相当する。 よって、甲1第1発明の「上方及び下方に開口を有する収納枠2と、収納枠2内に折り畳まれて収納される梯子6と、収納枠2に開閉可能に枢着されて収納枠2の上方の開口を覆う上蓋3と、収納枠2に開閉可能に枢着されて収納枠2の下方の開口を覆う下蓋4と、を具備する避難装置」は、本件発明1の「上方及び下方に開口を有する枠と、前記枠内に折り畳まれた状態で収納される梯子と、前記枠に回動自在に取り付けられて前記枠の上方の開口を覆う上蓋と、前記枠に回動自在に取り付けられて前記枠の下方の開口を覆う下蓋と、を具備する避難梯子装置」に相当する。 イ 甲1第1発明の「上蓋3に設けられる係止部材30と、収納枠2の周壁2aに設けられ上蓋3の閉鎖状態において係止部材30と係合可能な係合部材40とを具備する、上蓋3と収納枠2のラッチ機構20における、弾性変形可能な部材にて形成される係止部材30」は、「上蓋3」と「収納枠2」を係止する部材であるから、本件発明1の「前記上蓋と前記枠とを」「係止する弾性変形可能な係止具」に相当する。 次に甲1第1発明の「係止部材30」の「上蓋3の裏面に固定される固定片31」、「固定片31の端部から前記収納枠2の外側を垂下する垂下片32」、及び「垂下片32の下端から上蓋3の外方に向かって延在され、上蓋3と収納枠2との間から露出し、上蓋3の外側に先端の操作部34が存在する操作片33」は、それぞれ本件発明1の「係止具」の「前記上蓋に固定される固定片」、「前記固定片から前記枠の外側を前記下蓋に向かって延びる垂下片」、及び「前記垂下片から前記枠の外側に向かって延び、前記上蓋と前記枠との間から露出する操作片」に相当する。 また甲1第1発明の「操作部34を掴んで上方向に操作すると傾斜係合凸部43との係合が解除」することは、本件発明1の「前記操作片の押上操作に伴って」「係合状態を解除する」ことに相当する。 さらに甲1第1発明は「操作部34を掴んで上方向に操作すると傾斜係合凸部43との係合が解除し、操作部34から手を離すと傾斜係合凸部43と係合する」ものであるから、「係止部材30」による「上蓋3」と「収納枠2」の係止は着脱自在なものである。 以上より、甲1第1発明の「上蓋3に設けられる係止部材30と、収納枠2の周壁2aに設けられ上蓋3の閉鎖状態において係止部材30と係合可能な係合部材40とを具備する、上蓋3と収納枠2のラッチ機構20における、 弾性変形可能な部材にて形成される係止部材30であって、 上蓋3の裏面に固定される固定片31と、 固定片31の端部から前記収納枠2の外側を垂下する垂下片32と、 垂下片32の下端から上蓋3の外方に向かって延在され、上蓋3と収納枠2との間から露出し、上蓋3の外側に先端の操作部34が存在する操作片33と、 垂下片32に設けられ、係合部材40に設けられた先端が下方を向く傾斜係合凸部43と係合するものであって、操作部34を掴んで上方向に操作すると傾斜係合凸部43との係合が解除し、操作部34から手を離すと傾斜係合凸部43と係合する、係合孔35と、 を備える、 係止部材30。」と、 本件発明1の「前記上蓋と前記枠とを着脱自在に係止する弾性変形可能な係止具であって、 前記上蓋に固定される固定片と、 前記固定片から前記枠の外側を前記下蓋に向かって延びる垂下片と、 前記垂下片から前記枠の外側に向かって延び、前記上蓋と前記枠との間から露出する操作片と、 前記枠に形成された孔に係合するとともに前記操作片の押上操作に伴って前記孔との係合状態を解除するように、前記垂下片から前記枠に向かって突出する突起と、 を備え、 前記突起が、先端が前記上蓋側を向くように傾斜し、 前記突起の前記下蓋側の先端が丸みを帯びていること 、 を特徴とする係止具」とは、 「前記上蓋と前記枠とを着脱自在に係止する弾性変形可能な係止具であって、 前記上蓋に固定される固定片と、 前記固定片から前記枠の外側を前記下蓋に向かって延びる垂下片と、 前記垂下片から前記枠の外側に向かって延び、前記上蓋と前記枠との間から露出する操作片とを備え、 前記操作片の押上操作に伴って係合状態を解除する係止具」である点で共通する。 ウ 前記ア及びイから、本件発明1と甲1第1発明とは、 [一致点] 「上方及び下方に開口を有する枠と、前記枠内に折り畳まれた状態で収納される梯子と、前記枠に回動自在に取り付けられて前記枠の上方の開口を覆う上蓋と、前記枠に回動自在に取り付けられて前記枠の下方の開口を覆う下蓋と、を具備する避難梯子装置における、前記上蓋と前記枠とを着脱自在に係止する弾性変形可能な係止具であって、 前記上蓋に固定される固定片と、 前記固定片から前記枠の外側を前記下蓋に向かって延びる垂下片と、 前記垂下片から前記枠の外側に向かって延び、前記上蓋と前記枠との間から露出する操作片とを備え、 前記操作片の押上操作に伴って係合状態を解除する、係止具。」 の点で一致し、そして以下の点で相違する。 [相違点A] 本件発明1では「係止具」の「垂下片」には「前記垂下片から前記枠に向かって突出する突起」が備わるのに対し、甲1第1発明では「係止部材30」の「垂下片32」には「係合孔35」が設けられる点。 [相違点B] 本件発明1において「係止具」が係合するのは「枠に形成された孔」であるのに対し、甲1第1発明において「係止部材30」が係合するのは「収納枠2の周壁2aに設けられ」「先端が下方を向く傾斜係合凸部43」が設けられた「係合部材40」である点。 [相違点C] 本件発明1では「前記突起が、先端が前記上蓋側を向くように傾斜」しているのに対し、甲1第1発明ではそのような特定はされていない点。 [相違点D] 本件発明1では「前記突起の前記下蓋側の先端が丸みを帯びている」のに対し、甲1第1発明ではそのような特定はされていない点。 (2)判断 ア 検討 まず相違点Aについて検討する。 甲第2号証には上記1(2)ケで示した甲2発明が記載されており、甲2発明においては避難梯子装置の「上方に回動して前記枠形の格納箱本体3の上下方向の開口3Aの上面を開閉する上蓋5」の「係脱機構10における」「弾性係合片11」が「垂下部11b1とフック11b2の境界に水平に設けられた、本体部11Bから格納箱本体3とは反対の方向に向かって前方へ突出」する「係合凸部11C」を備えている。 しかしながら、甲2発明の「係脱機構10における」「弾性係合片」は、「上蓋5に対して設定値以上の引上げ力F1が作用した場合に係合状態が解除されるものであって、 弾性係合片11の後向きフック状の本体部11Bにおける垂下部11b1の前面を受部材12における略コ字状の本体部12Bの内面に向けて押圧する弾性係合片11のばね力によって係合凸部11Cと係合孔12Aとの係合強さがコントロールされ、係合強さのコントロールに基づいて引上げ力F1の設定値が決定され、 フック11b2の自然状態での前後方向の長さは受部材12における略コ字状の本体部12Bの前後方向の長さよりも僅かに大きく設定され、上蓋5の閉じ状態において、先端が枠形の格納箱本体3に当接し前後方向の長さが本体部12Bの前後方向の長さとなり、垂下部11b1の前面を本体部12Bの内面に向けて押圧するばね力が生じる」というものであり、甲1第1発明の「上蓋3と収納枠2のラッチ機構20における」「係止部材30」は「垂下片32の下端から上蓋3の外方に向かって延在され、上蓋3と収納枠2との間から露出し、上蓋3の外側に先端の操作部34が存在する操作片33」を備え、「操作部34を掴んで上方向に操作すると傾斜係合凸部43との係合が解除」する構成、言い換えれば甲1第1発明と本件発明1の一致点である「前記垂下片から前記枠の外側に向かって延び、前記上蓋と前記枠との間から露出する操作片とを備え、 前記操作片の押上操作に伴って係合状態を解除する」構成と両立するものではなく、当業者が甲2発明を甲1第1発明に適用して本件発明1の構成に容易に到達する論理付けができるものではない。 さらに付け加えれば、甲2発明の係合凸部11Cは「枠形の格納箱本体3とは反対の方向に向かって」突出するものであり、相違点Aにかかる本件発明1の構成である突起が「前記垂下片から前記枠に向かって突出する」構成は甲第2号証をすべてみても記載も示唆もされていない。 また甲第3号証及び甲第4号証をみても、上記(1)3、4でそれぞれ摘記したように、相違点Aにかかる本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。 よって、相違点Aにかかる本件発明1の構成は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。 イ 申立人の主張について 上記第3の1(2)アで摘記したように、申立人は申立書において「先行発明2には、避難梯子装置において、蓋と枠形の格納箱本体とを係脱可能に互いに係合する係脱機構を備えることが開示されている。そして先行発明2の「係合凸部11C」 は、本件発明1の「突起」に相当する。」と主張している。しかし上記アで説示したように、甲2発明の「係合凸部11C」を備える「弾性係合片11」の構成は甲1第1発明の「係止部材30」の構成と両立する構成ではなく、当業者が甲1第1発明に適用して相違点Aにかかる本件発明1の構成に容易に到達する論理付けができるものではない。加えて上記アで説示したように、相違点Aにかかる本件発明1の構成である突起が「前記垂下片から前記枠に向かって突出する」構成とは異なり、甲2発明の係合凸部11Cは「枠形の格納箱本体3とは反対の方向に向かって」突出するものである。 なお、上記第3の1(2)ウで摘記したように、申立書で「また、先行発明1において、上蓋3に設けられた係止部材30の係合孔35と、収納枠2に設けられた係合部材40の傾斜係合凸部43の配置を逆にし、上蓋3に傾斜係合凸部43を設け、収納枠2に係合孔35を設けたとすると」と述べられていることに鑑み、甲第1号証に記載された事項に基づきこのように配置を逆にする設計変更を行うことについても検討すると、甲第1号証をすべてみても、係止部材30が弾性変形することにより係止部材30の操作部34を掴んで上方向に操作すると係合が解除して、操作部34から手を離すと係合する機序以外は記載も示唆もされておらず、他方、傾斜係合凸部43が弾性変形することの記載あるいは示唆もないから、当業者にとり、このように配置を逆にする設計変更を行う動機はない。 以上のように、申立人の主張を採用することはできない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は当業者が甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2について 本件発明2は、実質的には、本件発明1が避難梯子装置における係止具の発明という形であるものを、係止具を具備する避難梯子装置の発明という形にしたものであり、本件発明1と甲1第2発明とを対比した相違点も上記相違点AないしDと同様である。 よって、本件発明2は当業者が甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-04-28 |
出願番号 | P2017-003721 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E06C)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
森次 顕 |
特許庁審判官 |
前川 慎喜 土屋 真理子 |
登録日 | 2021-06-21 |
登録番号 | 6901060 |
権利者 | ヤマトプロテック株式会社 |
発明の名称 | 避難梯子装置用係止具、及びこれを備えた避難梯子装置 |
代理人 | 特許業務法人IPRコンサルタント |