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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1385654
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-21 
確定日 2022-05-19 
事件の表示 特願2018−553780号「電源装置、照明器具、電源装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月7日国際公開、WO2018/101081〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)11月17日(優先権主張 平成28年12月2日)を国際出願日とする出願であって、令和2年4月6日付けで拒絶理由が通知され、同年6月8日に意見書が提出されたが、同年10月5日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、同年12月21日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和3年3月30日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由1」という。)が通知され,同年5月31日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月6付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年9月9日に意見書が提出され、同年10月28日に面接を行い、同年12月9日に上申書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1〜7に係る発明は、令和3年5月31日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定されるとおりの発明であるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりの発明である。
「【請求項1】
第1接続部と第2接続部を有する入力接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部を接続するように直列につながれた第1バリスタと第2バリスタと、前記第1バリスタと前記第2バリスタの接続点と接地用接続部とを接続する避雷素子と、を有するサージ対策回路と、
前記サージ対策回路に接続された電源回路と、を備え、
前記第1バリスタの静電容量は、前記第1バリスタの公称静電容量を1.6倍した値から、前記第1バリスタの公称静電容量を0.4倍した値までのいずれかの値であり、
前記第2バリスタの静電容量は、前記第2バリスタの公称静電容量を1.6倍した値から、前記第2バリスタの公称静電容量を0.4倍した値までのいずれかの値であり、
前記第1バリスタの公称静電容量と前記第2バリスタの公称静電容量は同じであることを特徴とする電源装置。」

第3 当審拒絶理由及び原査定
1 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

また、当審拒絶理由1の付記及び当審拒絶理由のなお書きに記載したとおりであり、原査定について当審は判断を留保しており、原査定の拒絶の理由は解消していない。

2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
この出願の以下の請求項に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[請求項と引用文献との対応関係]
・請求項 1−2、6
・引用文献等 1−2

・請求項 3、7
・引用文献等 1−3

・請求項 4
・引用文献等 1−4

・請求項 5
・引用文献等 1−5

[引用文献等一覧]
1.特開平5−308721号公報
2.特開2008−206263号公報
3.実願平1−91406号(実開平3−30733号)のマイクロフィルム
4.特開2009−232629号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2013−211119号公報
以下それぞれ「引用文献1ないし5」という。

第4 当審の判断
本願発明の「バリスタの公称静電容量」が、令和3年12月9日付けの上申書において出願人が主張するように、部品メーカのカタログに記載している静電容量を意味しているとして、留保している原査定の理由(進歩性)について、以下検討する。

1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
本願の優先日前に頒布された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「【0017】
【実施例】図1はこの発明の第1実施例である直流電源装置の構成を示す回路図である。図1に示した第1実施例は、電源フューズFSを備えた交流電源入力部であるAC入力部2と、サージ電圧吸収回路3aと、ノイズ遮断部4,整流平滑部5,DC−DCコンバータ6とにより構成されている。
【0018】この第1実施例が図5に示した従来例と異なる所は、AC入力部2とノイズ遮断部4との間にサージ電圧吸収回路3aを設けたことであり、ノイズ遮断部4のバリスタZVはそのまま残してもよく、廃止してもよい。その他の同一部分には同一符号を付している。
【0019】商用電源である交流電源1からAC入力部2に接続された交流電力ラインは、大地アースGNDに結ばれたニュートラルライン(以下「ラインN」という)とホットライン(以下「ラインH」という)とからなるが、日本における一般のコンセントでは両者を区別していないため、AC入力部2の電源フューズFS側にどちらのラインが接続されるか分らないから、電源フューズFSをそれぞれのラインに設けたものもある。
【0020】図1乃至図5は、いずれもラインHが電源フューズFS側に接続された場合を示しているが、サージ電圧の吸収及びノイズの遮断に関しては各素子が対称型に配置されているから、ラインNが電源フューズFS側に接続されても同様に作用する。AC入力部2を介して入力した交流電力は、サージ電圧吸収回路3a,ノイズ遮断部4を通って整流平滑部5に達し、ダイオード・ブリッジDBによって両波整流された後、大容量のコンデンサC4により平滑されて1次直流電力に変換される。」
・・・
【0027】そのために設けたサージ電圧吸収回路3aは、交流電力ラインであるラインH,ラインN間に接続した第1の定電圧素子であるガスチューブアレスタ(以下単に「アレスタ」ともいう)10,11からなる直列回路と、アレスタ10,11の接続部とフレームグランドFGとの間に接続した第2の定電圧素子であり酸化金属バリスタの1種である酸化亜鉛バリスタ12とリーク電流抑制素子である強化絶縁タイプのコンデンサ13との直列回路とから構成されている。」
(1b)
「【0037】図2は、第2実施例の構成を示す回路図であり、図1に示した第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。図2に示した第2実施例が第1実施例と異なる所は、第1及び第2の定電圧素子を構成するガスチューブアレスタ及び酸化金属バリスタを交換して配置したことであり、第2実施例においてはサージ電圧吸収回路3bの第1の定電圧素子を酸化亜鉛バリスタ15,16で、第2の定電圧素子をアレスタ17でそれぞれ構成している。
【0038】個々の定電圧素子の特性や、ノーマルモード又はコモンモードのサージ電圧に対する作用については第1実施例と同様であるから説明を省略する。ただし、ノイズ遮断部4にバリスタZVが残っている場合は、バリスタ15,16の閾値の和がバリスタZVの閾値と同程度か若干低めになるように設定した方がよい。」
(1c)
図1、図2は、以下のとおりである。

イ 引用文献1に記載された発明
(ア)
図2から、ラインH及びラインNがそれぞれ接続されたAC入力部2が看取でき、これに併せて、段落【0037】の「図2は、第2実施例の構成を示す回路図であり、図1に示した第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。」という記載、及び、図1を説明している段落【0019】の「商用電源である交流電源1からAC入力部2に接続された交流電力ラインは、大地アースGNDに結ばれたニュートラルライン(以下「ラインN」という)とホットライン(以下「ラインH」という)とからなる」という記載を参照すると、図2(第2実施例)において、段落【0017】の「電源フューズFSを備えた交流電源入力部であるAC入力部2」は、商用電源である交流電源1からの交流電力ラインであるラインH及びラインNがそれぞれ接続された、電源フューズFSを備えた交流電源入力部であるAC入力部2として認定できる。
(イ)
段落【0037】の記載(後述(ウ)を参照)から、図2(第2実施例)において、段落【0027】の「交流電力ラインであるラインH,ラインN間に接続した第1の定電圧素子」は、「酸化亜鉛バリスタ15,16」である。
そして、図2(第2実施例)において、この「酸化亜鉛バリスタ15,16」(第1の定電圧素子)に着目すると、段落【0027】の「交流電力ラインであるラインH,ラインN間に接続した第1の定電圧素子」は、AC入力部2からの交流電力ラインであるラインH、ラインN間に接続した第1の定電圧素子として認定できる。
(ウ)
段落【0037】の「図2は、第2実施例の構成を示す回路図であり、図1に示した第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。図2に示した第2実施例が第1実施例と異なる所は、第1及び第2の定電圧素子を構成するガスチューブアレスタ及び酸化金属バリスタを交換して配置したことであり、第2実施例においてはサージ電圧吸収回路3bの第1の定電圧素子を酸化亜鉛バリスタ15,16で、第2の定電圧素子をアレスタ17でそれぞれ構成している。」という記載から、図2(第2実施例)において、段落【0027】の「そのために設けたサージ電圧吸収回路3aは、交流電力ラインであるラインH,ラインN間に接続した第1の定電圧素子であるガスチューブアレスタ(以下単に「アレスタ」ともいう)10,11からなる直列回路と、アレスタ10,11の接続部とフレームグランドFGとの間に接続した第2の定電圧素子であり酸化金属バリスタの1種である酸化亜鉛バリスタ12とリーク電流抑制素子である強化絶縁タイプのコンデンサ13との直列回路とから構成されている。」という記載は、「そのために設けたサージ電圧吸収回路3bは、交流電力ラインであるラインH、ラインN間に接続した第1の定電圧素子である酸化亜鉛バリスタ15、酸化亜鉛バリスタ16からなる直列回路と、酸化亜鉛バリスタ15、酸化亜鉛バリスタ16の接続部とフレームグランドFGとの間に接続した第2の定電圧素子であるアレスタ17とリーク電流抑制素子である強化絶縁タイプのコンデンサ13との直列回路とから構成されている。」という記載として認定できる。
(エ)
図1及び図2を参照すると、図2(第2実施例)において、段落【0017】の「ノイズ遮断部4,整流平滑部5,DC−DCコンバータ6」は、サージ電圧吸収回路3bに順に接続される、ノイズ遮断部4、整流平滑部5、DC−DCコンバータ6として認定できる。
(オ)
上記(ア)〜(エ)、摘記(1a)、(1b)及び図2(摘記(1c))から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「商用電源である交流電源1からの交流電力ラインであるラインH及びラインNがそれぞれ接続された、電源フューズFSを備えた交流電源入力部であるAC入力部2と、
AC入力部2からの交流電力ラインであるラインH、ラインN間に接続した第1の定電圧素子である酸化亜鉛バリスタ15、酸化亜鉛バリスタ16からなる直列回路と、酸化亜鉛バリスタ15、酸化亜鉛バリスタ16の接続部とフレームグランドFGとの間に接続した第2の定電圧素子であるアレスタ17とリーク電流抑制素子である強化絶縁タイプのコンデンサ13との直列回路とから構成されている、サージ電圧吸収回路3bと、
サージ電圧吸収回路3bに順に接続される、ノイズ遮断部4、整流平滑部5及びDC−DCコンバータ6とにより構成されている、
直流電源装置。」

(2)引用文献2について
ア 引用文献2に記載された事項
本願の優先日前に頒布された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)
「【0089】
(D) 抵抗43の付加
バリスタタイプの避雷素子は、電流耐量を大きくすることで静電容量が増加する。本SPD40(40−1,40−2)に用いている各バリスタ42(42−1〜42−5)も例外なく静電容量が大きくなっている。1枚当たりで例えば5600ピコファラッド(pF)程度である。この数値は無視することができないくらいに大きなものである。静電容量が大きいということは、言うまでもなく、電荷を沢山蓄え、且つサージ消失後にも電圧を維持してしまう。」

イ 引用文献2に記載された技術事項
摘記(2a)から、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献2に記載された技術事項]
「バリスタタイプの避雷素子は、電流耐量を大きくすることで静電容量が増加し、静電容量が大きいということは、言うまでもなく、電荷を沢山蓄え、且つサージ消失後にも電圧を維持してしまうこと。」

2 対比・判断
(1)対比

引用発明の「電源フューズFSを備えた交流電源入力部であるAC入力部2」は、本願発明の「入力接続部」に相当する。
引用発明の「電源フューズFSを備えた交流電源入力部であるAC入力部2」は、「商用電源である交流電源1からの交流電力ラインであるラインH及びラインNがそれぞれ接続された」接続部(以下それぞれ「AC入力部2のラインHの接続部」及び「AC入力部2のラインNの接続部」という。)を備えていることが明らかであり、引用発明の「AC入力部2のラインHの接続部」及び「AC入力部2のラインNの接続部」は、それぞれ、本願発明の「第1接続部」及び「第2接続部」に相当する。
したがって、引用発明の「商用電源である交流電源1からの交流電力ラインであるラインH及びラインNがそれぞれ接続された、電源フューズFSを備えた交流電源入力部であるAC入力部2」は、本願発明の「第1接続部と第2接続部を有する入力接続部」に相当する。

(ア)
引用発明の「酸化亜鉛バリスタ15」、「酸化亜鉛バリスタ16」及び「第1の定電圧素子である酸化亜鉛バリスタ15、酸化亜鉛バリスタ16からなる直列回路」は、それぞれ、本願発明の「第1バリスタ」、「第2バリスタ」及び「直列につながれた第1バリスタと第2バリスタ」に相当する。
そして、引用発明の「AC入力部2からの交流電力ラインであるラインH、ラインN」は、それぞれ、「AC入力部2のラインHの接続部」及び「AC入力部2のラインNの接続部」に電気的に接続されていることが明らかであるから、引用発明の「AC入力部2からの交流電力ラインであるラインH、ラインN間に接続した第1の定電圧素子である酸化亜鉛バリスタ15、酸化亜鉛バリスタ16からなる直列回路」は、「AC入力部2からの交流電力ラインであるラインH、ラインN」を介して、「AC入力部2のラインHの接続部」と「AC入力部2のラインNの接続部」とを接続するように直列につながれているといえる。
これらのことを踏まえると、引用発明の「AC入力部2からの交流電力ラインであるラインH、ラインN間に接続した第1の定電圧素子である酸化亜鉛バリスタ15、酸化亜鉛バリスタ16からなる直列回路」は、本願発明の「前記第1接続部と前記第2接続部を接続するように直列につながれた第1バリスタと第2バリスタ」に相当する。
(イ)
引用発明の「酸化亜鉛バリスタ15、酸化亜鉛バリスタ16の接続部」は、「酸化亜鉛バリスタ15」と「酸化亜鉛バリスタ16」とを接続するものであるから、上記(ア)を踏まえると、本願発明の「前記第1バリスタと前記第2バリスタの接続点」に相当する。
引用発明の「第2の定電圧素子であるアレスタ17とリーク電流抑制素子である強化絶縁タイプのコンデンサ13との直列回路」は、本願発明の「避雷素子」に相当する。
また、電気に関する技術分野において、「接地」とは基準電位点に接続することを意味することが技術常識であり、引用発明の「フレームグランドFG」は接続部を介して接続されていることは明らかであるから、引用発明の「フレームグランドFG」の接続部と本願発明の「接地用接続部」とは、「基準電位点用接続部」において共通している。
これらのことを踏まえると、引用発明の「酸化亜鉛バリスタ15、酸化亜鉛バリスタ16の接続部とフレームグランドFGとの間に接続した第2の定電圧素子であるアレスタ17とリーク電流抑制素子である強化絶縁タイプのコンデンサ13との直列回路」と、本願発明の「前記第1バリスタと前記第2バリスタの接続点と接地用接続部とを接続する避雷素子」とは、「前記第1バリスタと前記第2バリスタの接続点と基準電位点用接続部とを接続する避雷素子」において共通している。
(ウ)
引用発明の「サージ電圧吸収回路3b」は、本願発明の「サージ対策回路」に相当する。

引用発明の「DC−DCコンバータ6」は、本願発明の「電源回路」に相当する。
そして、上記イ(ウ)を踏まえると、引用発明の「サージ電圧吸収回路3bに」「接続される」「DC−DCコンバータ6」は、本願発明の「前記サージ対策回路に接続された電源回路」に相当する。

以上から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「第1接続部と第2接続部を有する入力接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部を接続するように直列につながれた第1バリスタと第2バリスタと、前記第1バリスタと前記第2バリスタの接続点と基準電位点用接続部とを接続する避雷素子と、を有するサージ対策回路と、
前記サージ対策回路に接続された電源回路と、を備える、
電源装置。」
<相違点1>
「基準電位点用接続部」について、本願発明では、「接地用接続部」であるのに対して、引用発明では「フレームグランドFG」の接続部である点。
<相違点2>
本願発明では、「前記第1バリスタの静電容量は、前記第1バリスタの公称静電容量を1.6倍した値から、前記第1バリスタの公称静電容量を0.4倍した値までのいずれかの値であり、前記第2バリスタの静電容量は、前記第2バリスタの公称静電容量を1.6倍した値から、前記第2バリスタの公称静電容量を0.4倍した値までのいずれかの値であり、前記第1バリスタの公称静電容量と前記第2バリスタの公称静電容量は同じである」のに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

(2)判断
各相違点について、以下検討する。
ア 相違点1について
(ア)
電気に関する技術分野において、「接地」とは基準電位点に接続することを意味することが技術常識であることから、引用発明の基準電位点用接続部となっている「フレームグランドFG」の接続部は、実質的に接地しているといえる。
そうすると、引用発明の基準電位点用接続部となっている「フレームグランドFG」の接続部は、実質的に「接地用接続部」となっており、本願発明の「接地用接続部」に相当するといえる。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点とはいえない。
(イ)
仮に、本願発明の「接地用接続部」が、地面(アース)に接続するための接続部を意味しているとして、上記相違点1が実質的な相違点であったとしても、避雷素子を通して地面に電流を流し感電を防止して安全を充分に確保する技術は、例示するまでもなく周知技術であるから、引用発明にこの周知技術を適用して、より確実に感電を防止できるように、引用発明の「フレームグランドFG」の接続部を、地面(アース)に接続するようにして接地用接続部とし、上記相違点1に本願発明の構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことにすぎない。

イ 相違点2について
(ア)

引用文献1の段落【0020】には、「図1乃至図5は、いずれもラインHが電源フューズFS側に接続された場合を示しているが、サージ電圧の吸収及びノイズの遮断に関しては各素子が対称型に配置されているから、ラインNが電源フューズFS側に接続されても同様に作用する。」と記載されて
おり、電源フューズFSがラインH、Nのいずれの側に接続されていても同じ作用をするから、対称型に配置された「酸化亜鉛バリスタ15」と「酸化亜鉛バリスタ16」につても、同じものを使用することを想定していることが明らかである。

そして、引用発明において、「酸化亜鉛バリスタ15」と「酸化亜鉛バリスタ16」について、同じものを選定するにあたって、部品メーカの製品カタログから同じものを選定するわけであり、すなわち、製品として同じものを選定するわけであり、部品メーカの製品カタログに記載されている静電容量(公称静電容量)が同じ製品を選定するといえる。

ここで、上記aで述べたように、対称型に配置された「酸化亜鉛バリスタ15」と「酸化亜鉛バリスタ16」について、同じものを使用することを想定しているから、引用発明において、上記bで述べたように選定する製品について、実際に両者の機能が同等となるように、実際の静電容量を計測し、公称静電容量に近いもの、すなわち、公称静電容量を1.6倍した値から0.4倍した値までの数値範囲のものを採用し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
また、上記bのように、静電容量(公称静電容量)が同じ製品を選定すれば、令和3年9月9日付けの意見書で示した380pFのバリスタ30個の静電容量を測定した結果のように、全ての製品が、公称静電容量を1.6倍した値から0.4倍した値までの数値範囲内に該当するともいえるから、一般的にバリスタの実際の静電容量は、当該数値範囲内にあるということもでき、当該数値範囲内のバリスタ(要するに、同じ製品の全てないし大部分バリスタ)を選定できるように、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって何ら困難なことではない。
さらに、引用文献2に記載された技術事項にも鑑みて、実際に用いる製品の静電容量が、必要な静電容量を確保しつつ、特に、大きくなりすぎないように配慮することも、当業者が容易になし得たといえる。
(イ)
なお、当審拒絶理由1及び当審拒絶理由では、本願発明の数値範囲の臨界的意義について、その数値範囲に含まれない事例と比較するなどして、証拠として示して説明するように示唆したが、上記の意見書においてそれは示されていないし、面接においても同様の示唆をし、そのための実験の期間を考慮して上申書の提出を待ったが、その令和3年12月9日付けの上申書にもそのデータは示されていない。

ウ 本願発明の効果について
また、本願発明の効果は、引用文献1ないし引用文献2に接した当業者であれば、予測し得る程度ものであり、格別に顕著なものとは認められない。

エ 上申書について
出願人は、令和3年12月9日付けの上申書において、「進歩性に関して、出願人は、独立請求項1、6を補正して「前記第1接続部と前記第2接続部の間に接続された第3バリスタが無い」ことを限定する機会を与えて頂くことを望んでいます。」と主張するが、引用文献1の段落【0018】には、「この第1実施例が図5に示した従来例と異なる所は、AC入力部2とノイズ遮断部4との間にサージ電圧吸収回路3aを設けたことであり、ノイズ遮断部4のバリスタZVはそのまま残してもよく、廃止してもよい。」と記載され、図2について、段落【0038】には、「個々の定電圧素子の特性や、ノーマルモード又はコモンモードのサージ電圧に対する作用については第1実施例と同様であるから説明を省略する。ただし、ノイズ遮断部4にバリスタZVが残っている場合は、バリスタ15,16の閾値の和がバリスタZVの閾値と同程度か若干低めになるように設定した方がよい。」と記載されているから、図2においては、バリスタZVの有無にかかわらず(ノイズ遮断部4のバリスタZVを廃止した場合にも)、バリスタ15及びバリスタ16が充分に機能することとが明らかであるから、図2の実施例を認定した引用発明において、「ノイズ遮断部4のバリスタZVを廃止し」た構成として、上記の限定の構成とすることは容易であり、上記の限定をしても進歩性はないから、上記の主張を採用することはできない。

3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された技術事項ないし引用文献2に記載された技術事項、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-09 
結審通知日 2022-03-15 
審決日 2022-03-30 
出願番号 P2018-553780
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 藤井 昇
出口 昌哉
発明の名称 電源装置、照明器具、電源装置の製造方法  
代理人 特許業務法人高田・高橋国際特許事務所  
代理人 特許業務法人高田・高橋国際特許事務所  

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