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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1385763
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-01 
確定日 2022-07-12 
事件の表示 特願2017− 37727号「造形ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月13日出願公開、特開2018−140837号、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月28日の出願であって、令和2年7月9日付けで拒絶理由が通知され、同年9月11日に意見書が提出され、同年12月9日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、令和3年4月1日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1、2
引用文献1〜3
・請求項3〜8
引用文献1〜4
<引用文献等一覧>
引用文献1.特開2016−26962号公報
引用文献2.特開2006−150279号公報
引用文献3.特開2002−66388号公報
引用文献4.欧州特許出願公開第255575号明細書(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1〜8に係る発明(以下「本願発明1」〜「本願発明8」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
内容物が吐出される吐出孔の上方に配設されるとともに、上下方向に貫通する複数の成形孔が形成された頂壁部を有し、前記頂壁部のうち上方を向く造形面に前記成形孔を通過した内容物を吐出させる外装部と、
前記外装部内に配置され、前記頂壁部のうち下方を向く供給面との間に、前記吐出孔からの内容物を前記造形面に沿う径方向に拡散して前記成形孔に供給する拡散室を画成する中皿と、を備え、
前記拡散室からの内容物が前記複数の成形孔を各別に通過することで形成される複数の造形片を、前記造形面で組み合わせて造形物を形成する造形ヘッドであって、
前記複数の成形孔のうちの少なくとも1つの内面、若しくは、前記複数の成形孔のうちの少なくとも1つの、前記供給面における開口周縁部には、内容物を衝突させて前記成形孔における前記造形面側の開口に導く案内突部が形成されていることを特徴とする造形ヘッド。
【請求項2】
前記複数の成形孔のうちの少なくとも1つは、上下方向に沿う縦断面視で、少なくとも前記造形面側の端部が、前記供給面側から前記造形面側に向かうに従い漸次、対向する他方の内面から離間するように延びる案内面を有することを特徴とする請求項1に記載の造形ヘッド。
【請求項3】
前記案内面のうち、少なくとも前記造形面側の端部は、前記縦断面視で突曲線状を呈することを特徴とする請求項2に記載の造形ヘッド。
【請求項4】
前記案内突部は、前記縦断面視において、前記供給面における前記成形孔の開口周縁部のうち、この成形孔の前記案内面に連なる部分から下方に向けて突出する外側突部を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の造形ヘッド。
【請求項5】
前記案内突部は、前記縦断面視において、前記成形孔における前記他方の内面から前記案内面に向けて突出する第1内側突部を備えることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の造形ヘッド。
【請求項6】
前記縦断面視において、前記成形孔の前記案内面のうち、前記他方の内面に形成された前記第1内側突部より下方に位置する部分に、前記他方の内面に向けて突出する第2内側突部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の造形ヘッド。
【請求項7】
前記複数の成形孔のうちの少なくとも1つは、前記造形面側の開口面積が、前記供給面側の開口面積より小さいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の造形ヘッド。
【請求項8】
前記複数の成形孔のうちの少なくとも1つは長孔とされ、
前記案内突部は、この長孔を画成する内面のうち、前記長孔の延びる方向に沿って延びる側面、若しくは、前記供給面における前記長孔の開口周縁部のうち、前記側面に連なる部分に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の造形ヘッド。」

第4 引用文献の記載事項等
1 引用文献1
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付加した。以下同様。)。
・「【0037】
図1から図9に示すように、造形ヘッド20は、吐出容器10に取り付けられる。吐出容器10は、吐出孔11から、例えば泡体や高粘性材料など、吐出後に少なくとも一定期間、自立可能な吐出物Mを吐出する。本実施形態では、吐出容器10は、有底筒状をなし、この吐出容器10の口部12が頂壁13で覆われることで密閉容器状とされている。図示の例では、吐出容器10として、内部に液状の内容物が収容されたエアゾール缶を採用している。」
・「【0040】
吐出容器10に対してステム16が押し下げられると、前記吐出弁が開き、吐出容器10内の内容物がステム16内を通って吐出孔11から吐出される。吐出孔11からは、泡状となった吐出容器10内の内容物が吐出物Mとして吐出される。ステム16の押し下げを解除すると、ステム16に作用する上方付勢力によりステム16が上昇するとともに前記吐出弁が閉じられて、吐出物Mの吐出が停止される。
【0041】
造形ヘッド20は、吐出容器10の吐出孔11から吐出された吐出物Mを、単に吐出孔11から吐出された場合とは異形状に成形し、立体形状をなす造形物Aを造形する。本実施形態では、造形ヘッド20は、図9に示すように、造形物Aとして、八重咲きの花、具体的には薔薇を造形する。図1および図2に示すように、造形ヘッド20は、装着部21と、補助部22と、造形部23と、を備えている。」
・「【0062】
造形部23には、複数の成形孔47が形成されている。複数の成形孔47は、本体部43をヘッド軸O2方向に貫通している。複数の成形孔47は、本体部43において上側を向く造形面48、および本体部43において下側を向く供給面49に各別に開口している。なお造形面48および供給面49は、ヘッド軸O2に直交する方向に延びている。
【0063】
装着部21と造形部23との間には、拡散室50が設けられている。拡散室50は、吐出孔11から吐出された吐出物Mを径方向に拡散して複数の成形孔47それぞれに供給する。拡散室50は、ヘッド軸O2と同軸に配置され、前記連通孔26を通して吐出孔11に連通している。拡散室50の壁面の一部は、前記供給面49により形成されている。拡散室50のヘッド軸O2方向の大きさは、例えば1.5mm以上であり、図示の例では4.0mmとなっている。」
・「【0076】
この造形ヘッド20では、まず、吐出孔11から吐出物Mを吐出するため、ステム16を下降させる。このとき、造形部23を吐出容器10に対して相対的に回転移動させることで、造形部23を介して装着部21をステム16に対してヘッド軸O2回りに回転させる。すると装着部21の回転動作が、変換機構35によって装着部21の下降動作に変換され、装着部21が、前記許容隙間Sをヘッド軸O2方向に狭めながら、ステム16とともに吐出容器10の口部12に対して下降する。これにより、ステム16内の吐出孔11から吐出物Mが吐出される。
【0077】
吐出孔11から吐出された吐出物Mは、その直進移動が規制部材51によって規制されながら、連通孔26、および周方向に隣り合うブリッジ部52の間を通して拡散室50内に供給される。拡散室50内に供給された吐出物Mは径方向に拡散し、前記供給面49から複数の成形孔47に供給される。なお本実施形態のように、拡散室50のヘッド軸O2方向の大きさが1.0mm以上であることで、吐出物Mを径方向に効果的に拡散させることが可能であり、しかも、拡散室50のヘッド軸O2方向の大きさが1.5mm以上であることで、吐出物Mを径方向により一層効果的に拡散させることができる。
【0078】
吐出物Mが、複数の成形孔47を各別に通過して成形されると、図9に示すように、複数の造形片A1が形成され、これらの造形片A1が造形面48上で組み合わされることで、造形物Aが形成される。なお、成形長穴53によって造形された造形片A1は、成形長穴53が延びる方向に長く成形される。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る造形ヘッド20によれば、図1に示すように、装着部21と造形部23との間に拡散室50が設けられているので、複数の成形孔47のうちの特定の一部に吐出物Mが集中することを抑え、各成形孔47にばらつき少なく吐出物Mを供給することができる。これにより、吐出物Mが成形孔47に対して過剰または過少に供給されることを抑え、各成形孔47に適量の吐出物Mを供給することができる。したがって、各成形孔47により形成される造形片A1を精度良く形成することが可能になり、造形物Aを高精度に形成することができる。
また本実施形態では、拡散室50のヘッド軸O2方向に沿う大きさが、1.5mm以上なので、拡散室50のヘッド軸O2方向に沿う大きさ(高さ)を十分に確保することができる。これにより、吐出物Mを径方向に効果的に拡散させることが可能になり、例えば、複数の成形孔47のうち、径方向の最も外側に位置する成形孔47にも吐出物Mを通過させて造形片A1を造形し易くすることができる。」
・【図1】、【図9】は次のとおりである。





(2)認定事項
・【図1】の記載から、「外装を構成している造形部23」、「造形部23の頂壁を構成する本体部43」、「皿の形状をなしている装着部21」の各構成が看取できる。
・【図1】の記載から「本体部43」は、「吐出孔11」の上方に配設されることが看取できる。
・「ヘッド軸O2方向」は上下方向であるので、「成形孔47」は「本体部43」の上下方向に貫通することが認定できる。
・【図1】の記載及び段落【0063】の「装着部21と造形部23との間には、拡散室50が設けられている」との記載から、「装着部21」は、「造形部23」内に配置されること、及び、「拡散室50」を画成することが認定できる。
・段落【0077】の「径方向」は、「造形面48」に沿う方向であると認定できる。
・以上のことと、段落【0037】、【0062】、【0063】、【0077】の記載より、
「吐出物Mが吐出される吐出孔11の上方に配設されるとともに、上下方向に貫通する複数の成形孔47が形成された造形部23の頂壁を構成する本体部43を有し、前記本体部43のうち上側を向く造形面48に前記成形孔47を通過した吐出物Mを吐出させる外装を構成している造形部23と、
前記造形部23内に配置され、前記本体部43のうち下側を向く供給面49との間に、前記吐出孔11からの吐出物Mを前記造形面48に沿う径方向に拡散して前記成形孔47に供給する拡散室50を画成する皿の形状をなしている装着部21と、を備え」
ることが認定できる。
・段落【0041】、【0077】、【0078】の記載より、
「前記拡散室50からの吐出物Mが前記複数の成形孔47を各別に通過することで形成される複数の造形片A1を、前記造形面48で組み合わせて造形物Aを形成する造形ヘッド20」
が認定できる。

(3)引用発明
上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「吐出物Mが吐出される吐出孔11の上方に配設されるとともに、上下方向に貫通する複数の成形孔47が形成された造形部23の頂壁を構成する本体部43を有し、前記本体部43のうち上側を向く造形面48に前記成形孔47を通過した吐出物Mを吐出させる外装を構成している造形部23と、
前記造形部23内に配置され、前記本体部43のうち下側を向く供給面49との間に、前記吐出孔11からの吐出物Mを前記造形面48に沿う径方向に拡散して前記成形孔47に供給する拡散室50を画成する皿の形状をなしている装着部21と、を備え、
前記拡散室50からの吐出物Mが前記複数の成形孔47を各別に通過することで形成される複数の造形片A1を、前記造形面48で組み合わせて造形物Aを形成する造形ヘッド20。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
・「【0006】
そこで、本発明の課題は、起泡性の低い液体でも十分に発泡可能であって、用途に応じた泡質を容易に実現する発泡吐出器を提供することにある。」
・「【0030】
発泡吐出器10の第5実施形態として、発泡筒22の段差部22Cを図6に示す如く複数備えることも可能である。即ち、細筒状部22Bの吐出口e側に細筒状部22Bより小径の細筒状部22B’をつなげて段差部22Cを形成する。段差部22Cを複数形成することにより、噴孔dから噴出された内容液が噴孔dから異なる距離にある段差部22Cに衝突して、空気と混合するため、異なる泡質がブレンドされた発泡を得る。尚、複数の段差部22Cの相互の距離、径の大きさ、軸方向に対する角度を変えることも可能である。」
・【図1】、【図6】は次のとおりである。




3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
・「【0004】本発明は上述の如き欠点を除去するため、エアゾール内容物と空気とを良好に混合して、エアゾール内容物の発泡効果を高め、被塗布物への付着性や使用性を向上するものである。また、空気との良好な混合により、酸化して効果を発揮するエアゾール内容物の酸化を促進し、優れた効能を得ようとするものである。また、このような発泡エアゾール内容物の放出のための噴射ノズルを、単純な構造で廉価に、しかも目詰まりを生じる事がないように形成するものである。」
・「【0036】更に、第1実施例では、空気導入口(10)を混合部(6)の上下二箇所に開口しているが、第2実施例では、流出口(13)とは反対側の、上部一ヶ所のみに開口している。また、第1実施例では、衝突壁(8)を円錐状に形成する事により、エアゾール内容物を滞留室(7)の内部全体に反射可能としているが、第2実施例では、衝突壁(8)を平面的なテーパー状に形成し、エアゾール内容物を斜め上方向に反射可能としている。
【0037】上述の如く形成した第2実施例の噴射ノズル(3)では、噴出口(5)から滞留室(7)内にジェット噴射されたエアゾール内容物は、テーパー状の衝突壁(8) に衝突した後、図3の実線矢印で示す如く、上部方向にランダムに跳ね返り、滞留室(7)の内部を勢いよく流動する。また、このエアゾール内容物の流動方向には、空気導入口(10)を設けているので、この空気導入口(10)から導入される空気とエアゾール内容物と激しく混ざり合い、発泡が生じる。そして、滞留室(7)内の発泡エアゾール内容物は、混合部(6)の下方に設けた流出口(13)から外部に放出されるものとなる。」
・【図3】、【図4】は次のとおりである。




第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 後者の「吐出物M」は前者の「内容物」に、以下同様に、「吐出孔11」は「吐出孔」に、「成形孔47」は「成形孔」に、「造形部23の頂壁を構成する本体部43」は「頂壁部」に、「造形面48」は「造形面」に、「外装を構成している造形部23」は「外装部」に、「供給面49」は「供給面」に、「拡散室50」は「拡散室」に、「皿の形状をなしている装着部21」は「中皿」に、「造形片A1」は「造形片」に、「造形物A」は「造形物」に、「造形ヘッド20」は「造形ヘッド」に、それぞれ相当する。
そして、上記の相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。

イ 後者の
「吐出物Mが吐出される吐出孔11の上方に配設されるとともに、上下方向に貫通する複数の成形孔47が形成された造形部23の頂壁を構成する本体部43を有し、前記本体部43のうち上側を向く造形面48に前記成形孔47を通過した吐出物Mを吐出させる外装を構成している造形部23と、」
を備えることは、前者の
「内容物が吐出される吐出孔の上方に配設されるとともに、上下方向に貫通する複数の成形孔が形成された頂壁部を有し、前記頂壁部のうち上方を向く造形面に前記成形孔を通過した内容物を吐出させる外装部と、」
を備えることに相当する。

ウ 後者の
「前記造形部23内に配置され、前記本体部43のうち下側を向く供給面49との間に、前記吐出孔11からの吐出物Mを前記造形面48に沿う径方向に拡散して前記成形孔47に供給する拡散室50を画成する皿の形状をなしている装着部21と、を備え」
ることは、前者の
「前記外装部内に配置され、前記頂壁部のうち下方を向く供給面との間に、前記吐出孔からの内容物を前記造形面に沿う径方向に拡散して前記成形孔に供給する拡散室を画成する中皿と、を備え」
ることに相当する。

エ 後者の
「前記拡散室50からの吐出物Mが前記複数の成形孔47を各別に通過することで形成される複数の造形片A1を、前記造形面48で組み合わせて造形物Aを形成する造形ヘッド20」
は、前者の
「前記拡散室からの内容物が前記複数の成形孔を各別に通過することで形成される複数の造形片を、前記造形面で組み合わせて造形物を形成する造形ヘッド」
に相当する。

オ 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「内容物が吐出される吐出孔の上方に配設されるとともに、上下方向に貫通する複数の成形孔が形成された頂壁部を有し、前記頂壁部のうち上方を向く造形面に前記成形孔を通過した内容物を吐出させる外装部と、
前記外装部内に配置され、前記頂壁部のうち下方を向く供給面との間に、前記吐出孔からの内容物を前記造形面に沿う径方向に拡散して前記成形孔に供給する拡散室を画成する中皿と、を備え、
前記拡散室からの内容物が前記複数の成形孔を各別に通過することで形成される複数の造形片を、前記造形面で組み合わせて造形物を形成する造形ヘッド。」

〔相違点〕
本願発明1が、
「前記複数の成形孔のうちの少なくとも1つの内面、若しくは、前記複数の成形孔のうちの少なくとも1つの、前記供給面における開口周縁部には、内容物を衝突させて前記成形孔における前記造形面側の開口に導く案内突部が形成されている」
という事項を有するのに対し、引用発明の「成形孔47」は、かかる事項を有していない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、起泡性の低い液体でも十分に発泡可能であって、用途に応じた泡質を容易に実現するため、発泡筒22の段差部22Cを複数形成することにより、噴孔dから噴出された内容液が噴孔dから異なる距離にある段差部22Cに衝突して、空気と混合するため、異なる泡質がブレンドされた発泡を得る技術的事項が記載されている(上記「第4」の「2」参照。)。
しかしながら、引用発明の「成形孔47」は、そこで吐出物Mを空気と混合させて発泡を行うものではないため、引用文献2に記載された「段差部22C」を、引用発明の「成形孔47」に適用する動機付けはない。
また、引用文献3には、エアゾール内容物と空気とを良好に混合して、エアゾール内容物の発泡効果を高めるため、噴出口(5)から滞留室(7)内にジェット噴射されたエアゾール内容物は、テーパー状の衝突壁(8) に衝突した後、上部方向にランダムに跳ね返り、滞留室(7)の内部を勢いよく流動させ、エアゾール内容物の流動方向には、空気導入口(10)を設けているので、この空気導入口(10)から導入される空気とエアゾール内容物と激しく混ざり合い、発泡が生じる技術的事項が記載されている(上記「第4」の「3」参照。)。
しかしながら、引用文献2と同様に、引用発明の「成形孔47」は、そこで吐出物Mを空気と混合させて発泡を行うものではないため、引用文献3に記載された「テーパー状の衝突壁(8)」を、引用発明の「成形孔47」に適用する動機付けはない。
そして、本願発明1は、上記相違点に係る本願発明1の事項を有することにより、「成形孔の、吐出孔からの距離、形状および大きさ等によらず、造形片の形態を、精度を維持しつつ容易に調整することが可能になり、種々の形態の造形物を容易かつ高精度に形成することができる」(本願明細書段落【0007】)という格別の効果を奏するものである。
なお、原査定において、本願発明3〜8に対し、周知技術を示す文献として引用された引用文献4にも、上記相違点に係る本願発明1の事項の開示はされていない。

したがって、本願発明1は、引用発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2〜8について
本願発明2〜8は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項2〜8に記載された事項により限定を加えたものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項、及び引用文献4に示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1〜8は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項、及び引用文献4に示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-28 
出願番号 P2017-037727
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 芦原 康裕
一ノ瀬 覚
発明の名称 造形ヘッド  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 大浪 一徳  
代理人 山口 洋  
代理人 及川 周  

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