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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01C
管理番号 1386016
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-24 
確定日 2022-07-12 
事件の表示 特願2019−226907号「運転支援システム及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和2年4月9日出願公開、特開2020−56797号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月10日に出願した特願2013−254891号の一部を平成30年3月5日に新たな特許出願とした特願2018−38168号の一部を令和元年12月17日に新たな特許出願としたものであって、令和2年9月29日付け(発送日:令和2年10月6日)で拒絶理由が通知され、これに対して令和2年12月2日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年1月28日付け(発送日:令和3年2月2日)で拒絶理由が通知され、これに対して令和3年4月2日に意見書が提出され、令和3年5月13日付け(発送日:令和3年5月25日)で拒絶査定がされた。これに対し、令和3年8月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1〜4に係る発明(以下「本願発明1〜4」という。)は、令和3年8月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
記憶された都道府県警察によって交通監視活動が実施される監視期間と実施場所とに関する監視予定情報が事前に公開される公開取締情報のうち、取得した車両の現在位置情報と所定の近接範囲に前記実施場所が含まれる公開取締情報であって現在時刻よりも過去の直近に前記監視期間が該当する公開取締情報の当該直近に実施された時期を報知する機能を備えることを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
前記取得した車両の現在位置情報と所定の近接範囲に前記実施場所が含まれる公開取締情報であって現在時刻よりも過去の直近に前記監視期間が該当する公開取締情報の当該直近に実施された時期は、現在から何日前であるかの情報としたこと
を特徴とする請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記過去の公開取締情報に関するメッセージであるか、未来の公開取締情報に関するメッセージであるか、を運転者側から区別可能なようにメッセージを表示する機能を備えること
を特徴とする請求項1または2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の運転支援システムの機能をコンピュータに実現させるためのプログラム。」

2 拒絶査定の理由について
拒絶査定の理由は、概略以下のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1、4
・引用文献等 1

・請求項2−3
・引用文献等1−2

<引用文献等一覧>
1.特開2013−224836号公報
2. 特開2003−130664号公報

3 当審の判断
(1)本願発明1について
ア 引用文献1記載事項及び引用発明
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】
交通監視位置に関する情報(以下、交通監視位置情報という。)を取得し、車両の現在位置と前記交通監視位置との接近関係に基づき前記交通監視位置に関する報知制御を行う制御手段を備える運転支援システムであって、
前記制御手段は、
前記交通監視位置情報に関連する時期情報をさらに取得し、前記時期情報を加味して前記交通監視位置に関する報知制御を行うことを特徴とする運転支援システム。」
・「【請求項6】
前記制御手段は、
前記交通監視位置とは別の交通監視位置に関する情報(以下、第二交通監視位置情報という)と、前記第二交通監視位置情報の示す位置における交通監視の時期に関する時期情報(以下、第二時期情報という。)とをさらに取得し、前記第二時期情報をさらに加味して前記交通監視位置に関する報知制御を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の運転支援システム。
【請求項7】
前記第二交通監視位置情報は、前記交通監視位置情報よりも広域の交通監視位置を示す情報であり、
前記制御手段は、
前記交通監視位置情報の示す位置が前記第二交通監視位置情報の示す位置に含まれるか否かによって異なる報知態様で報知制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の運転支援システム。
【請求項8】
前記交通監視位置情報は、過去に実施された交通監視位置情報に基づいており、
前記第二交通監視位置情報は、都道府県の警察によって発表された実施予定の交通監視位置情報に基づいていることを特徴とする請求項6または7に記載の運転支援システム。」
・「【0027】
第一態様において、前記交通監視位置情報は、過去に実施された交通監視位置情報に基づいており、前記第二交通監視位置情報は、都道府県の警察によって発表された実施予定の交通監視位置情報に基づく構成構成とすると、都道府県の警察によって発表された実施予定の交通監視位置から、実際に交通監視が実施される位置を詳細に特定することができる。この位置を運転者に通知することによって、運転者は、運転に留意するべき地点を絞り込むことが可能となる。」
・「【0051】
詳細情報として、監視活動に関するテキスト情報が格納される。詳細情報として格納されたテキスト情報は、表示部48(図1参照)に表示されるメッセージとしてそのまま使用される。詳細情報は、全国の各都道府県警察のホームページ(以下、HPという。)を介して公表される情報が、所定のフォーマットに基づいてデータ化されたものである。制御部41は、詳細情報に基づくメッセージを、その内容に沿った場所及び時間で、表示部48にテロップ表示する。運転者は、テロップ表示されたメッセージに気付くことで、安全運転に心がけるようになる。以下、監視活動に関する情報であって全国の各都道府県警察のHPを介して公表される情報を総称し、公開取締情報ともいう。第三DB432に格納される情報は、全国の各都道府県警察のHPを介して公表されている取締り情報を、オペレータがデータ化することによって作成される。」
・「【0079】
なお上述では、現在時刻を含む実施時刻に対応付けられた目標対象のみ、ターゲットアイコンによって運転者に通知されており(図5、表示画面101参照)、現在時刻を含まない実施時刻に対応付けられた目標対象は、運転者に通知されない(図4、表示画面100参照)。これに対して例えば、現在時刻を含む実施時刻に対応付けられた目標対象と、現在時刻を含まない実施時刻に対応付けられた目標対象とを区別して運転者に通知するとよい。この場合、現在時刻を含む実施時刻に対応付けられた目標対象がより明確に認識されるような態様で、運転者に通知されるとよい。これによって運転者は、目標対象が設置されている場所を確実に認識しつつ、実際に交通監視等が実施されている目標対象を区別して認識することができる。」

引用文献1の上記記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「交通監視位置に関する情報(以下、交通監視位置情報という。)を取得し、車両の現在位置と前記交通監視位置との接近関係に基づき前記交通監視位置に関する報知制御を行う制御手段を備える運転支援システムであって、
前記制御手段は、
前記交通監視位置情報に関連する時期情報をさらに取得し、前記時期情報を加味して前記交通監視位置に関する報知制御を行い、
前記交通監視位置とは別の交通監視位置に関する情報(以下、第二交通監視位置情報という)と、前記第二交通監視位置情報の示す位置における交通監視の時期に関する時期情報(以下、第二時期情報という。)とをさらに取得し、前記第二時期情報をさらに加味して前記交通監視位置に関する報知制御を行うこと、
前記交通監視位置情報は、過去に実施された交通監視位置情報に基づいており、
前記第二交通監視位置情報は、都道府県の警察によって発表された実施予定の交通監視位置情報に基づいている運転支援システム。」

イ 本願発明1と引用発明の対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
・引用発明1の「過去に実施された交通監視位置情報」と、本願発明の「記憶された都道府県警察によって交通監視活動が実施される監視期間と実施場所とに関する監視予定情報が事前に公開される公開取締情報」とは、記憶された取締情報の限りで一致する。
・引用発明1の「車両の現在位置と前記交通監視位置との接近関係に基づき前記交通監視位置に関する報知制御を行う」態様は、車両の現在位置情報と所定の接近関係にある交通監視位置の交通監視情報を用いることであるから、引用発明1の当該態様と、本願発明の「取得した車両の現在位置情報と所定の近接範囲に前記実施場所が含まれる公開取締情報」を用いる態様とは、取得した車両の現在位置情報と所定の近接範囲に前記実施場所が含まれる取締情報を用いる態様の限りで一致する。
・引用発明1の「過去に実施された交通監視位置情報」であって、「前記交通監視位置情報に関連する時期情報をさらに取得し、前記時期情報を加味して前記交通監視位置に関する報知制御を行」うことと、本願発明の「現在時刻よりも過去の直近に前記監視期間が該当する公開取締情報の当該直近に実施された時期を報知する機能を備えること」とは、現在時刻よりも過去の前記監視期間が該当する取締情報を報知する機能を備えることの限りで一致する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
<一致点>
「記憶された取締情報のうち、取得した車両の現在位置情報と所定の近接範囲に前記実施場所が含まれる取締情報であって現在時刻よりも過去の直近に前記監視期間が該当する取締情報を報知する機能を備える運転支援システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
記憶された取締情報について、本願発明1は、「都道府県警察によって交通監視活動が実施される監視期間と実施場所とに関する監視予定情報が事前に公開される公開取締情報」であるのに対して、引用発明は、過去に実施された交通監視位置情報である点。
<相違点2>
現在時刻よりも過去の前記監視期間が該当する取締情報を報知する機能を備えることに関して、本願発明1は、「現在時刻よりも過去の直近に前記監視期間が該当する公開取締情報の当該直近に実施された時期を報知する機能を備えること」であるのに対して、引用発明は、過去に実施された交通監視位置情報に関連する時期情報をさらに取得し、前記時期情報を加味して前記交通監視位置に関する報知制御を行う点。

ウ 当審の判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
上記相違点2は、本願発明1が「現在時刻よりも過去の直近に前記監視期間が該当する公開取締情報の当該直近に実施された時期を報知する」のに対して、引用発明が「過去に実施された交通監視位置情報」に基づくものであるが「直近」のものとは特定されておらず、「当該直近に実施された時期」を報知するかどうかが不明である点である。
そして、引用発明において、過去に実施された交通監視位置情報を用いているが、そのうち直近の情報を用いて、その時期を報知する動機付けはない。
また、本願発明1は、公開取締時期の直近の時期を報知することで、例えば、この場所であの時期に取締をやっていたことを知ることで、「日頃から取締に対する意識付けを行うことができ」、「安全運転を促すことができる。」(【0018】、【0102】等)という効果を奏するものである。

エ 小括
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)本願発明2〜4について
本願発明2〜4は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付した発明であるから、本願発明2〜4は、上記(1)と同様の理由で、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。


第3 まとめ
以上のとおりであるから、他の点について検討するまでもなく、拒絶査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また他に拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-29 
出願番号 P2019-226907
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 佐々木 正章
沼生 泰伸
発明の名称 運転支援システム及びプログラム  

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