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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E06B
管理番号 1386163
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-01-12 
確定日 2022-06-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6902669号発明「防火建具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6902669号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6902669号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成30年6月11日に出願された特願2018−111366号の一部を令和2年12月18日に新たな特許出願としたものであって、令和3年6月23日にその特許権の設定登録がされ、令和3年7月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1に係る特許に対し、令和4年1月12日に特許異議申立人栗暢行(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6902669号の請求項1の特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
左右に隣接する窓部の間に配置され中空状の連結材本体と、連結材本体に固定され左右両側にそれぞれ配置される枠取付材と、枠取付材に固定される左右の窓部の竪枠と、連結材本体の室内側に配置される耐火部材を備え、
連結材本体は、左右の窓部の竪枠間の見込み方向室内側に配置されており、
左右の窓部の竪枠は、見込み方向室外側に互いに対向する見込面を有しており、
左右の窓部の竪枠の室外側の見込面間にシール材が配置されている防火建具」

第3 特許異議申立理由の概要及び証拠
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立て理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各甲号証を提出している。
(1)本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証〜甲第5号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)本件発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術(甲第1号証及び甲第6号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
(3)本件発明は、甲第3号証に記載された発明、周知技術(甲第1号証及び甲第6号証,甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

2 証拠
甲第1号証:特開2015−1120号公報
甲第2号証:特開平11−303522号公報
甲第3号証:実公昭62−31584号公報
甲第4号証:特開2002−213040号公報
甲第5号証:特開2000−64476号公報
甲第6号証:特開2011−202353号公報

第4 各甲号証の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は決定で付した。以下同様。)
ア「【0001】
本発明は、方立を介して左右方向に隣接して窓が設けられている窓部連結構造に関する。」

イ「【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、室外または室内側での火災等の際に、室内側または室外側への炎の浸入を防ぐことができる窓部連結構造を提供することを目的とする。」

ウ「【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による窓部連結構造について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、第1実施形態による窓部連結構造1Aでは、建物11の開口部12に左右方向に2つの窓部2,2が方立3を介して配列されていて、方立3の室内13側に耐火部材4が設けられている。
【0024】
図1および図3に示すように、窓部2は矩形状に枠組みされた枠体21と、枠体21内にはめ込まれた窓ガラス22と、を備えている。ここで、枠体21のうち、窓ガラス22の左右方向の両端部22aに沿って設けられた部材を縦枠23として以下説明する。
【0025】
縦枠23は、水平断面において、見込み方向(室内外方向、図中の矢印Bの方向)に延びる見込み片24と、この見込み片24の窓ガラス22側に設けられて窓ガラス22を保持する窓ガラス保持部25と、見込み片24の室外14側の端部から連続して見付け方向(左右方向、図中の矢印Cの方向)に延びる室外側見付け片26と,見込み片24の室内13側の端部から連続して見付け方向Cに延びる室内側見付け片27と、室外側見付け片26の方立3側の端部から連続して室内13側に延びる室外側折り返し片28と,室内側見付け片27の方立3側の端部から連続して室外14側に延びる室内側折り返し片29と、を備えている。
これらの見込み片24、窓ガラス保持部25,一対の見付け片26,27および一対の折り返し片28,29は、例えば、アルミ合金などで一体に成型されている。
【0026】
方立3は、室内13側に設けられた室内側方立部材31と、室外14側に設けられた室外側方立部材32と、を備えていて、これらの室内側方立部材31および室外側方立部材32は、ともに開口部12の高さ方向全長にわたって上下方向(図2の矢印Dの方向)に延在する部材に形成されている。
【0027】
室内側方立部材31は、上下方向Dに延在する中空角型のスチールパイプで構成されており、上端部および下端部が建物11の躯体15に固定されている。本実施形態では、室内側方立部材31は、上端部および下端部が躯体15に固定された鉄筋16a(図2参照)に溶接されている。
また、室内側方立部材31は、室内13側の面31aが縦枠23の室内側見付け片27の室内13側の面27aと見込み方向Bの位置が同じ位置となるように(略一面となるように)設置されている。
【0028】
室外側方立部材32は、水平断面において、室外14側に位置し見付け方向Cに延びる第1見付け片33と、第1見付け片33と連続し第1見付け片33の見付け方向C中央部から室内13側に延びる第1見込み片34と、第1見込み片34と連続し見付け方向Cに延びる第2見付け片35と、第2見付け片35と連続し第2見付け片35の見付け方向Cの両端部から室内13側に延びる一対の第2見込み片36,36と、を備えている。
室外側方立部材32は、例えば、アルミ合金などで形成されている。
【0029】
室外側方立部材32の第1見付け片33は、見付け方向Cの両端部33a,33a近傍が縦枠23の室外側見付け片26,26と見込み方向Bに重なる位置に設置され、室外側見付け片26,26との間に上下方向D全長にわたってパッキンなどの止水材37が介在されている。
また、第2見付け片35の室内13側で、一対の第2見込み片36,36の間には、室内側方立部材31の室外14側が嵌合するように構成されている。そして、一対の第2見込み片36,36は、室内側方立部材31にねじ止めされ、室内側方立部材31と室外側方立部材32とが連結されている。
【0030】
一対の縦枠23,23と方立3との間には、縦枠23と方立3とを固定する鉄製のアンカー5がそれぞれ設けられている。
【0031】
図4(a)、(b)に示すように、アンカー5は、その面が見付け方向Cを向くように配された板状の板部51と、板部51の一方の面51aの見込み方向Bの両端に板部51と連続して形成された一対の第1係止部52,52と、板部51の他方の面51bの中央近傍に板部51と連続して形成された第2係止部53とを有している。
【0032】
第1係止部52は、水平断面においてが略L字状に形成され、その屈曲部が斜めに形成されている。
そして、室外14側の第1係止部52と板部51との間には、縦枠23の室外側折り返し片28が嵌合し、第1係止部52が板部51とともに縦枠23の室外側折り返し片28を係止している。また、室内13側の第1係止部52と板部51との間には、縦枠23の室内側折り返し片29が嵌合し、第1係止部52が板部51とともに縦枠23の室内側折り返し片29を係止している。
【0033】
図4(c)に示すように、第2係止部53は、面が上下を向くように配された板状の部材で、方立3の室内側方立部材31と近接する位置に形成されている。そして、第2係止部53と室内側方立部材31との間には断面が略L字状のスチール製のアングル材54が配され、アングル材54の一方の片54aと第2係止部53とが溶接され、他方の片54bと室内側方立部材31とが溶接されている。
【0034】
このように、アンカー5は、縦枠23を係止するとともに方立3と溶接され、縦枠23と方立3とを固定している。
なお、アンカー5を設置する高さや個数は適宜設定されてよい。
【0035】
また、本実施形態では、図1に示すように、建物11の躯体15側に配された縦枠23と躯体15との間にもアンカー5が設けられていて、縦枠23がアンカー5に係止されるとともに、躯体15に固定された鉄筋16bと第2係止部53とが溶接されている。
【0036】
次に、耐火部材4は、図3に示すように、例えば、ケイ酸カルシウムを主成分とした板状の耐火被覆材(繊維混入ケイ酸カルシウム板)、巻きつけ型または吹付型のロックウールなどで構成され、その面が見込み方向Bを向くように設置されている。なお、本実施形態では、耐火部材4に繊維混入ケイ酸カルシウム板を使用している。
耐火部材4は、幅寸法(見付け方向Cの寸法)が方立3を挟んだ一対の縦枠23,23間の寸法よりも大きく、高さ寸法は開口部12の高さ寸法よりも大きくなるように形成されている。
【0037】
また、耐火部材4の厚さ寸法(見込み方向Bの寸法)は、必要とする耐火性能(炎の浸入を防ぐ性能)に対応して設定されることが好ましい。
例えば、耐火部材4が繊維混入ケイ酸カルシウム板の場合は、耐火時間30分以上の性能とするのであれば、耐火部材4の厚さ寸法を20mm以上とし、耐火時間1時間以上の性能とするのであれば耐火部材4の厚さ寸法を35mm以上とする。また、耐火部材4が
吹付ロックウールの場合は、耐火時間30分以上の性能とするのであれば、耐火部材4の厚さ寸法を20mm以上とし、耐火時間1時間以上の性能とするのであれば30mm以上とする。
そして、耐火部材4は、室外14側の面4aが、室内側方立部材31の室内13側の面31aと、一対の縦枠23,23の室内側見付け片27,27の室内13側の面27aと当接している。
【0038】
また、図2に示すように、耐火部材4は、室外14側の面4aにおける上端部4d近傍および下端部4e近傍、および上端面4f並びに下端面4gが建物11の躯体15と当接(接触)し、板状の取り付け材17を用いて躯体15に固定されている。
なお、本実施形態では、耐火部材4の上端面4fおよび下端面4gが、躯体15のコンクリート部分15aと当接し、室外14側の面4aにおける上端部4d近傍および下端部4e近傍が躯体15の表面に配されたモルタル部分15bと当接している。
【0039】
また、図3に示すように、耐火部材4は、室内13側の面4bと見付け方向Cの両端面4c,4cとがカバー材6に覆われている。ここで、耐火部材4は保持部材7を用いて方立3および一対の縦枠23,23にねじ止めされていて、カバー材6は保持部材7に係止されるように取り付けられている。
カバー材6は、耐火部材4の高さ寸法と略同じ寸法に例えば、樹脂やアルミ合金などで長尺に形成され、水平断面において室外14側に開口する略C字状の本体部61と、本体部61と一体に形成され保持部材7に係止される一対の係止部62,62とを備えている。
【0040】
本体部61は、内部に耐火部材4が配置可能な大きさに構成され、水平断面において見付け方向Cに延びる見付け片63と、見付け片63の両端部からそれぞれ室外14側に延びる一対の見込み片64,64とを備えている。この見付け片63は耐火部材4の室内13側の面4bと対向し、見込み片64,64は耐火部材4の見付け方向Cの両端面4h,4hとそれぞれ対向している。
一対の係止部62,62は、見付け方向Cに互いに所定の間隔をあけて配されていて、本体部61の見付け片63から耐火部材4側(室外14側)に突出し、突出した先端部に互いに近づく方向に突出する係止爪部65,65がそれぞれ形成されている。
【0041】
保持部材7は、一方の面が耐火部材4と当接する板部71と、板部71の他方の面から室内13側に突出する一対の係止部72,72とを備えている。
板部71は、幅寸法(見付け方向Cの寸法)が耐火部材4の幅寸法と略同じ寸法に形成されている。
一対の係止部72,72は、カバー材6一対の係止部62,62の間隔よりやや小さい間隔をあけて配されていて、先端部には互いに離れる方向に突出する係止爪部73,73がそれぞれ形成されている。
【0042】
このような、保持部材7は、板部71の一方の面が耐火部材4と当接した状態で、ねじなどで耐火部材4とともに縦枠23の室内側見付け片27および方立3の室内側方立部材31に固定されている。
そして、カバー材6の一対の係止部62,62の間に保持部材7の一対の係止部72,72入り込むようにカバー材6を保持部材7に装着すると、カバー材6の一対の係止爪部65,65と保持部材7の一対の係止爪部73,73とが互いに係合し、カバー材6が保持部材7によって耐火部材4を覆った状態に保持されるように構成されている。
なお、保持部材7を設置する高さや個数は適宜設定されてよい。」

エ 図面
(ア)図1




(イ)図3



上記ウの記載と上記図3から、以下の点が看取できる。
a 一対の縦枠23,23がそれぞれ備えている室外側折り返し片28が、互いに対向している点。
b 室内側方立部材31が、一対の縦枠23,23の見込み片24間で室内寄りに配置されている点。

(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)によれば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「建物11の開口部12に左右方向に2つの窓部2,2が方立3を介して配列されていて、方立3の室内13側に耐火部材4が設けられた窓部連結構造であり、
窓部2は矩形状に枠組みされた枠体21と、枠体21内にはめ込まれた窓ガラス22とを備え、枠体21のうち、窓ガラス22の左右方向の両端部22aに沿って設けられた部材を縦枠23とし、
縦枠23は、水平断面において、見込み方向に延びる見込み片24と、この見込み片24の窓ガラス22側に設けられて窓ガラス22を保持する窓ガラス保持部25と、見込み片24の室外14側の端部から連続して見付け方向に延びる室外側見付け片26と、見込み片24の室内13側の端部から連続して見付け方向Cに延びる室内側見付け片27と、室外側見付け片26の方立3側の端部から連続して室内13側に延びる室外側折り返し片28と,室内側見付け片27の方立3側の端部から連続して室外14側に延びる室内側折り返し片29と、を備え、
方立3は、室内13側に設けられた室内側方立部材31と、室外14側に設けられた室外側方立部材32とを備えていて、これらの室内側方立部材31および室外側方立部材32は、ともに開口部12の高さ方向全長にわたって上下方向に延在する部材に形成され、
室内側方立部材31は、上下方向Dに延在する中空角型のスチールパイプで構成されており、
室外側方立部材32は、水平断面において、室外14側に位置し見付け方向Cに延びる第1見付け片33と、第1見付け片33と連続し第1見付け片33の見付け方向C中央部から室内13側に延びる第1見込み片34と、第1見込み片34と連続し見付け方向Cに延びる第2見付け片35と、第2見付け片35と連続し第2見付け片35の見付け方向Cの両端部から室内13側に延びる一対の第2見込み片36,36と、を備えており、室外側方立部材32の第1見付け片33は、見付け方向Cの両端部33a,33a近傍が縦枠23の室外側見付け片26,26と見込み方向Bに重なる位置に設置され、室外側見付け片26,26との間に上下方向D全長にわたってパッキンなどの止水材37が介在されていて、
一対の縦枠23,23と方立3との間には、縦枠23と方立3とを固定する鉄製のアンカー5がそれぞれ設けられており、
アンカー5は、その面が見付け方向Cを向くように配された板状の板部51と、板部51の一方の面51aの見込み方向Bの両端に板部51と連続して形成された一対の第1係止部52,52と、板部51の他方の面51bの中央近傍に板部51と連続して形成された第2係止部53とを有しており、
第1係止部52は、水平断面においてが略L字状に形成され、その屈曲部が斜めに形成されていて、室外14側の第1係止部52と板部51との間には、縦枠23の室外側折り返し片28が嵌合し、第1係止部52が板部51とともに縦枠23の室外側折り返し片28を係止していて、第1係止部52が板部51とともに縦枠23の室内側折り返し片29を係止しており、
第2係止部53は、面が上下を向くように配された板状の部材で、方立3の室内側方立部材31と近接する位置に形成され、第2係止部53と室内側方立部材31との間には断面が略L字状のスチール製のアングル材54が配され、アングル材54の一方の片54aと第2係止部53とが溶接され、他方の片54bと室内側方立部材31とが溶接されており、
耐火部材4は、室外14側の面4aが、室内側方立部材31の室内13側の面31aと、一対の縦枠23,23の室内側見付け片27,27の室内13側の面27aと当接しており、
一対の縦枠23,23がそれぞれ備えている室外側折り返し片28が、互いに対向しており、
室内側方立部材31が、一対の縦枠23,23の見込み片24間で室内寄りに配置されていて、
室内側または室外側への炎の浸入を防ぐことができる、
窓部連結構造。」

2 甲第2号証
(1)甲第2号証の記載
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、建物窓開口に複数の窓板材を横方向に連設した連窓構造において、隣り合う窓板材の側縁部を支持するとともに、これら側縁部間の目地をシールする連窓用目地部の構造に関する。」

イ「【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記公報に記載されている目地部の構造においては、第一および第二のガスケット部の弾性変形し得る量が小さいので、ガスケットが離れる方向に変位すると止水効果が低下する。このため、目地部分で窓板材の面方向(窓面に沿う方向)のずれを吸収することはできない。
【0006】また、ガスケット部の対接面に対向して形成したシール溝にひも状のシール部材を嵌め込んで止水シール部を形成しているため、上記対向するシール溝がずれると止水効果がなくなる。したがって、窓板材のずれを吸収しつつ目地の水密効果を発揮できる範囲は限られる。
【0007】しかも、上記ガスケットは、上記シール溝にシール部材を嵌め込みつつ各ガスケット部を対接させて方立部材に連結しなければならないため、組付け作業性が良いとは言えない。
【0008】本願発明は、上記従来の問題を解決し、窓板材の厚さ方向のずれを吸収できるのみならず窓板材の面方向のずれを吸収でき、しかも、組付け作業を簡単に行うことのできる、連窓用目地部の構造を提供するものである。」

ウ「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本願発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0016】図1は、本願発明に係る目地部の構造を適用する連窓構造の正面図である。建物1の上下の壁部2,2間に横長状の窓開口3が設けられており、この窓開口3に複数のガラス板(窓板材)4を連続して装着することにより、横連窓構造が形成される。
【0017】上記ガラス板4は、窓開口3の上下縁部に沿って設置される無目部材5と、上下の壁部2に掛け渡し状に固定される方立部材6とによって、上下左右の縁部がそれぞれ支持されている。上記ガラス板4と、上記無目部材5及び方立部材6との間には、それぞれ、たとえばクロロプレンゴムなどのゴムで形成されたガスケット本体8a,8b(図2)が介挿されており、ガラス板を破損しないように固定している。
【0018】本願発明に係る目地部の構造は、上記方立部材6に沿って設けられるものであり、隣り合うガラス板4の側縁部を支持するとともに、これら側縁部間の目地をシールするものである。
【0019】図2は、本願発明に係る目地部の構造示す断面を含む斜視図である。以下、隣り合う左右のガラス板に4a,4bの符号を付して説明する。この図に示すように、窓開口に装着されるガラス板4a,4bは、上下の縁部が窓開口の上下縁部に沿って設けられる無目部材5に支持されたガスケット7に嵌め込み支持される一方、隣り合う側縁部が上下方向に延びる方立部材6に対して、本願発明に係る目地部の構造を介して支持される。なお、上記無目部材5と方立部材6は、アルミ合金から形成されている。
【0020】図3に、本実施の形態に係る目地部の構造の断面図を示す。本実施の形態に係る目地部の構造は、左右のガラス板4a,4bの側縁部を各々嵌合支持する一対のガスケット本体8a,8bと、これら一対のガスケット本体8a,8bをそれぞれ支持するとともに、方立部材6の側部に連結固定される一対のガスケット支持部材9a,9bとを備えて構成される。
【0021】上記ガスケット本体8a,8bは、ガラス板4a,4bを嵌め込み支持する嵌め込み溝10と、ガスケット支持部材9a,9bに連結支持される連結部11と、対向部に一体成形された断面中空のシール凸条12とをそれぞれ備えて構成されている。一対のガスケット本体8a,8bは、たとえば、クロロプレンゴムを押出成形することにより形成されており、目地を挟んで左右対称形状になるように形成されている。
【0022】上記嵌め込み溝10は、ガラス板4a,4bの厚さに対応した幅に形成されており、嵌合されたガラス板4a,4bの側縁部を水密性をもって支持する。
【0023】上記連結部11は、ガラス板4a,4bの厚さ方向内方に向けて略T字状に一体延出形成されており、上記ガスケット支持部材9a,9bに形成された蟻溝状の連結溝13にはめ込み支持できるように構成されている。
【0024】上記シール凸条12は、図4に示すように、装着状態で断面矩形状の内部空間を有する中空状に形成されており、ガスケット本体8a,8bの対向部にそれぞれ一体成形されている。本実施の形態では、シール空間14を介して、前記シール凸条12がガラス板4a,4bの厚さ方向にそれぞれ2条ずつ形成されている。
【0025】図3の上記方立部材6は、窓開口の上下の縁部に掛け渡し状に連結固定されており、両側部に上記ガスケット支持部材9a,9bを連結固定するボルト15が埋め込み支持されている。
【0026】上記ガスケット支持部材9a,9bは、ガスケット本体8a,8bの連結部11を嵌め込み支持する蟻溝状の連結溝13と、上記方立て部材6の側部に連結される連結固定部16と、上記嵌め込み溝10に嵌め込まれたガラス板4a,4bを弾性挟圧して固定するためのジッパ17を係止するジッパ支持部18とを備える。なお、本実施の形態では、上記ガスケット支持部材9a,9bは、二つの部材を螺子で連結することにより形成されている。
【0027】上記連結固定部16にはガラス板の厚さ方向に延びる長穴19が形成されており、方立部材6に埋め込み支持されたボルト15をこの長穴19に通挿してナット20を螺合させることにより、ガスケット支持部材9a,9bを方立部材6に対して位置調整可能に固定している。なお、符号21で示す部材は、上記ガスケット支持部材9a,9b及び方立部材6を覆うカバーである。
【0028】図3及び図4に示すように、本実施の形態においては、一対のガスケット本体8a,8bの対向位置に断面中空のシール凸条12をそれぞれ形成し、これらを互いに弾性的に当接させることにより、ガスケット本体8a,8b間の目地シールを行っている。
【0029】図4の想像線で示す円弧形態のシール凸条12を互いに当接させることにより略矩形状に弾性変形させ、互いの弾性当接力によって目地をシールしている。上記シール凸条12は断面中空状に形成されているため、弾性変形できる範囲が大きい。このため、水密性を保持しつつ、ガラス板4a,4bの厚み方向の大きなずれを吸収することができる。」

エ 図3



上記図3から、以下の点が看取できる。
(ア)左右方向に複数のガラス板4a,4bが装着されている点。
(イ)一対のガスケット支持部材9a,9bがそれぞれ備える連結固定部16の室外側の部分が互いに対向している点。
(ウ)方立部材6が、中空状であって、一対のガスケット支持部材9a,9bの室内側寄りに配置されている点。

(2)甲第2号証に記載された発明
上記(1)によれば、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲2発明)
「建物1の上下の壁部2,2間に横長状の窓開口3が設けられており、この窓開口3に複数のガラス板4a,4bを連続して装着することにより形成される横連窓構造であり、
上記ガラス板4a、4bは、窓開口3の上下縁部に沿って設置される無目部材5と、上下の壁部2に掛け渡し状に固定される方立部材6とによって、上下左右の縁部がそれぞれ支持されている。上記ガラス板4と、上記無目部材5及び方立部材6との間には、それぞれ、たとえばクロロプレンゴムなどのゴムで形成されたガスケット本体8a,8bが介挿されており、
窓開口に装着されるガラス板4a,4bは、上下の縁部が窓開口の上下縁部に沿って設けられる無目部材5に支持されたガスケット7に嵌め込み支持される一方、隣り合う側縁部が上下方向に延びる方立部材6に対して、目地部の構造を介して支持され、
目地部の構造は、左右のガラス板4a,4bの側縁部を各々嵌合支持する一対のガスケット本体8a,8bと、これら一対のガスケット本体8a,8bをそれぞれ支持するとともに、方立部材6の側部に連結固定される一対のガスケット支持部材9a,9bとを備えて構成され、
上記ガスケット本体8a,8bは、ガラス板4a,4bを嵌め込み支持する嵌め込み溝10と、ガスケット支持部材9a,9bに連結支持される連結部11と、対向部に一体成形された断面中空のシール凸条12とをそれぞれ備え、上記嵌め込み溝10は、ガラス板4a,4bの厚さに対応した幅に形成されており、嵌合されたガラス板4a,4bの側縁部を水密性をもって支持し、シール凸条12は、ガスケット本体8a,8bの対向部にそれぞれ一体成形され、
上記ガスケット支持部材9a,9bは、ガスケット本体8a,8bの連結部11を嵌め込み支持する蟻溝状の連結溝13と、上記方立て部材6の側部に連結される連結固定部16と、上記嵌め込み溝10に嵌め込まれたガラス板4a,4bを弾性挟圧して固定するためのジッパ17を係止するジッパ支持部18とを備え、
一対のガスケット支持部材9a,9bがそれぞれ備える連結固定部16の室外側の部分が互いに対向しており、
方立部材6が、中空状であって、一対のガスケット支持部材9a,9bの室内側寄りに配置されている、
横連窓構造。」

3 甲第3号証
(1)甲第3号証の記載
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
ア「本考案は、連窓の隣り合う窓枠の竪枠を方立を介して連結する連窓の竪枠連結部構造に関するものである。」
(1頁1欄18−20行)

イ「本考案は上記の事情に鑑みなされたものであり、その目的は一対の竪枠室外側とシール材との間に隙間が生じないと共に、連結部の面内方向の寸法が多少異なつても、同一部材を用いて連結できるようにした連窓の竪枠連結部構造を提供することである。
以下図面を参照して本考案の実施例を説明する。
第1図は連窓の正面図であり、連窓を構成する隣り合う窓枠A,A′の相対向する一対の竪枠10,20は方立30を介して連結してある。
該一対の竪枠10,20は第2図に示すように、側壁11,21と室外、内側壁12,22,13,23とを備え、室外側壁12,22は、側壁11,21と直交する外片12a,22a、外片12a,22aと直角となつた内向片12b,22b、内向片12b,22bと直角となつた折曲片12c,22cとによつて略クランク型に折曲している。
また、室内側壁13,23には室内側に開口した取付凹溝14,24が形成してあると共に、室外側壁12,22の外片12a,22aと室内側壁13,23とに突出片15,25,16,26が相対向して一体形成してある。
方立30は、竪枠と同一長さの長尺なる前方立31と長さの短かい後方立32とを備え、前方立31は左右に開口した一対の凹条溝33,33と、室内側に開口したビス孔34とを有していると共に、各凹条溝33にはシール材となるAT材35がそれぞれ嵌着してある。
該AT材35は、凹条溝33に嵌着される硬質部分35aと、軟質部分35bとを備え、軟質部分35bが、前記内向片12b,22bに圧着している。
前記後方立32は、両側片40,40の前部を連結片41で連結し、連結片41に一対の突片42,42を前方に向けて一体形成すると共に、両側片40,40に係止片43を前方に向けて斜めにそれぞれ一体形成し、両側片40,40の後部に外向片44をそれぞれ一体形成すると共に、外向片44には、前記取付凹溝14,24に係合する係合片45及び室内側に開口した係止溝46をそれぞれ形成してある。
前記左右竪枠10,20の突出片15,16及び25,26には左右一対のアンカー50が係止固着され、該アンカー50には、前記係止片43が係止される後方に向けて斜めとなつた係止受片51が一体形成してある。
つまり、アンカー50は第3図に示すように、板状本体52の両端縁を切欠いて折曲させることで一対の舌片53,53を形成し、板状本体52の一端縁寄を打抜いて折曲させて前記係止受片51を一体形成した形状となり、一対の舌片53,53と板状本体52とで突出片15,16,25,26を挟持してアンカー50を竪枠10,20に固着してある。
そして、後方立32は連結片41を、ビス孔34に螺合したビス47で前方立31に連結し、一対の係止片43,43を一対のアンカー50,50の係止受片51,51にそれぞれ係止させると共に、一対の突片42,42を左右竪枠10,20の折曲片12c,22cに当接し、係合片45を取付凹溝14,24に係合してある。
これにより、傾斜した係止片43と係止受片51との楔作用によつて、左右竪枠10,20をアンカー50を介して対向接近方向に引き寄せている。
したがつて、強風雨等により左右竪枠10,20とAT材35とが離れることがない。
第2図で、60はカバであり、一対の係止突片61,61を後方立32の左右係止溝46,46に係止してアンカー50に取付けられ、両側片62,62が室内側壁13,23に当接している。
また、第4図、第5図に示すように、アンカー50に補助係止受片54を、係止片51に対して室内外方向に間隔を置き、かつ上下方向に位置をずらして一体形成し、後方立32の両側片40,40に補助係止片48をビス49で固着、補助係止片48を補助係止受片54に係止させるようにしても良い。
この様にすれば、一対の竪枠10,20の引き寄せ力が大となる。
なお、第6図に示すように、左右の竪枠10,20の側壁11,21を室内側に延長し、この延長部11′,21′にカバ60の両側片62,62をビス63で固着しても良い。
本考案は以上の様になり、アンカーに設けた係止受片と後方立に設けた係止片とを係止して、左右の竪枠を対向接近する方向に引き寄せでき、強風雨等が作用しても竪枠のシール材当接部分とシール材とが離れることがないから、雨水が室内側に浸入することを防止でき、障子の開閉に支障をきたしたり、室内側の壁、床等にシミ、カビが生じることがない。
また、アンカーの係止受片と後方立の係止片とは室内側方向に傾斜しているので、左右方向に多少位置がずれても係止させることができ、連結部の面内方向の寸法が多少異なつても、同一のアンカーと後方立とを用いて左右の竪枠を確実に連結でき、アンカーと後方立とを兼用できるから、部品点数を減少できて在庫管理等が簡単となる。」
(1頁2欄25行−3頁5欄8行)

ウ 第2図



上記第2図から、下記の点が看取できる。
(ア)一対の竪枠10,20は、室外側で、側壁11,21にそれぞれ直交するように設けられた外片12a,22aに、さらにそれぞれ直角となるように設けられた内向片12b,22bが、互いに対向し、
前記内向片12b,22bの間にAT材35が配置されている点。
(イ)後方立32は、一対の竪枠10,20の前記側壁11,21の間で室内寄りに配置されている点。
(ウ)後方立32の両側片40,40の端部同士を連結する部材はなく、後方立32の室内側において開口部を有している点。

(2)甲第3号証に記載された発明
上記(1)によれば、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
なお、甲第3号証には、「一対の竪枠10,20」及び「左右竪枠10,20」の記載があるが、「一対の竪枠10,20」に統一して認定する。
(甲3発明)
「連窓の隣り合う窓枠の竪枠を方立を介して連結する連窓の竪枠連結部構造であり、
連窓を構成する隣り合う窓枠A,A′の相対向する一対の竪枠10,20は方立30を介して連結してあり、
該一対の竪枠10,20は、側壁11,21と室外、内側壁12,22,13,23とを備え、室外側壁12,22は、側壁11,21と直交する外片12a,22a、外片12a,22aと直角となつた内向片12b,22b、内向片12b,22bと直角となつた折曲片12c,22cとによつて略クランク型に折曲していて、
室内側壁13,23には室内側に開口した取付凹溝14,24が形成してあると共に、室外側壁12,22の外片12a,22aと室内側壁13,23とに突出片15,25,16,26が相対向して一体形成してあり、
方立30は、竪枠と同一長さの長尺なる前方立31と長さの短かい後方立32とを備え、前方立31は左右に開口した一対の凹条溝33,33と、室内側に開口したビス孔34とを有していると共に、各凹条溝33にはシール材となるAT材35がそれぞれ嵌着してあり、
前記後方立32は、両側片40,40の前部を連結片41で連結し、連結片41に一対の突片42,42を前方に向けて一体形成すると共に、両側片40,40に係止片43を前方に向けて斜めにそれぞれ一体形成し、両側片40,40の後部に外向片44をそれぞれ一体形成すると共に、外向片44には、前記取付凹溝14,24に係合する係合片45及び室内側に開口した係止溝46をそれぞれ形成してあり、
前記一対の竪枠10,20の突出片15,16及び25,26には左右一対のアンカー50,50が係止固着され、該アンカー50には、前記係止片43が係止される後方に向けて斜めとなつた係止受片51が一体形成してあり、
アンカー50は、板状本体52の両端縁を切欠いて折曲させることで一対の舌片53,53を形成し、板状本体52の一端縁寄を打抜いて折曲させて前記係止受片51を一体形成した形状となり、一対の舌片53,53と板状本体52とで突出片15,16,25,26を挟持してアンカー50を竪枠10,20に固着してあり、
後方立32は連結片41を、ビス孔34に螺合したビス47で前方立31に連結し、一対の係止片43,43を一対のアンカー50,50の係止受片51,51にそれぞれ係止させると共に、一対の突片42,42を一対の竪枠10,20の折曲片12c,22cに当接し、係合片45を取付凹溝14,24に係合してあり、これにより、傾斜した係止片43と係止受片51との楔作用によつて、一対の竪枠10,20をアンカー50を介して対向接近方向に引き寄せていて、
カバ60は、一対の係止突片61,61を後方立32の左右係止溝46,46に係止してアンカー50に取付けられ、両側片62,62が室内側壁13,23に当接しており、
一対の竪枠10,20は、室外側で、側壁11,21にそれぞれ直交するように設けられた外片12a,22aに、さらにそれぞれ直角となるように設けられた内向片12b,22bが、互いに対向し、
前記内向片12b,22bの間にAT材35が配置されており、
後方立32は、一対の竪枠10,20の前記側壁11,21の間で室内寄りに配置されていて、
後方立32の両側片40,40の端部同士を連結する部材はなく、後方立32の室内側において開口部を有している、
連窓の竪枠連結部構造。」

4 甲第4号証
(1)甲第4号証の記載
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、建物の躯体開口部(スケルトン開口部)に形成する壁面体に関する。スケルトン開口部は、木造軸組み住宅では、棟上となった段階の梁と土台及び左右の柱に囲まれた開口部であり、鉄骨構造や鉄筋コンクリート構造の建物では、コンクリート打設後の未だ壁が形成されていない段階の、いわゆる躯体における開口部である。」

イ 「【0008】
【発明の実施形態】図1は、鉄骨コンクリート構造のスケルトン開口部1に構成した壁面体2の外観である。スケルトン開口部1は建物躯体の上下の横部分3,4と左右の柱5,6とで形成されている。横部分3、4はこの場合上下の梁又はスラブであり、その中心線を鎖線で示している。左右における縦方向の鎖線は柱の中心線である。壁面体2は、外観において中央の目隠し部3、その左右両側にサッシ部8(8L,8R)、及びこれらの左側と右側にこの実施形態において空調部9(9L,9R)を備えている。スケルトン開口部1は、6本の方立10(端部方立を含む10a〜10e 図2)で区画する。これにより、目隠し部7を形成する開口部11と、サッシ部8を形成する開口部12(12L,12R)及び空調部9を形成する開口部13(13L,13R)に区画してある。
・・・
【0012】方立10の取付けには上金物30と下金物31を用いる。上金物30は、上板32とL字形をした下板33とからなり(図4)、上板32を上取付けフレーム16の中間部上面に載置し、下板33の水平部を上取付けフレーム16の中間部下面に設けた方立係合部22の溝に嵌めて双方の板32,33をビスで結合して用いる。すなわち、上取付けフレーム16の方立係合部22に嵌め込んだ上金物30を上取付けフレーム16の長手方向で適当な位置へ移動して固定することができる。そして、方立10の上部側面を下板33の垂直部へビス留めすることにより、方立10の上部を上取付けフレーム16へ固定する。
【0013】下金物31は、方立係合部28の溝に嵌め込む後板34と方立係合部28の室外側面に当て付ける前板35及びコ字形をした受板36とからなる。前板35と受板36は一体であり、折り曲げ加工により形成してある。前板35と後板34は前後方向のビスで結合してあり、下金物31は全体が下取付けフレーム17の長手方向へ移動することができ、また、ビスをねじ込むことにより適当な位置へ固定することができる。そして、受板36と方立10の下部側面をビス留めして、方立10を下取付けフレーム17に固定する。
・・・
【0016】空調部9を形成する開口部13Lは、上下の取付けフレーム16,17と方立10c及び端部方立10eとで構成され、空調部9を形成する開口部13Rは、同様に上下の取付けフレーム16,17と方立10d及び端部方立10fとで構成され、これらの開口部13L,13Rにはそれぞれ空調装置を収めた四方枠52を装着する(図示を省略)。この四方枠もサッシ枠49などと同様の構造を有し、開口部9への取付け構造も同様である。なお、端部方立10e,10fは中央部の方立10を左右に半分した断面構造を備え、上下の取付け枠16,17への取付け構造は他の方立の場合と同様である。以上、目隠し部7、サッシ部8、空調部9が隣接する構造について説明したが、サッシ部8どうしが隣接して連窓を構成することもある。この場合の方立10は図10の構造となり、方立10の室内側に竪額縁41などを取付けないので、室内側が閉鎖された中空構造となっている。上下の取付けフレーム16,17との取付け構造は他の方立10の場合と同じである。」

ウ 図10




5 甲第5号証
(1)甲第5号証の記載
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、建物の外壁に関する。」

イ「【0013】符号32はシールピースで、左右に隣接するサッシ4の左右竪枠8,9の間及び左右で隣接するパネル5間に現れる目地に装着し、風雨の侵入を阻止する。このシールピース32は目地が深い場合には、充填シール材のバックアップ材として使用することもある(図6)。符号33は化粧材(図3)で屋内側に露出する下地材2の周囲を覆って装着される。なお、図6は第2の実施形態を示し、サッシ取り付け構造はサッシ4とパネル5が左右方向で連接する場合であり、パネル5は取り付けネジ29により独自に下地鉄骨2に固定されるので、補助材3とサッシ4との係合構造は片側にしか構成されていない。他の構成は第1の実施形態の場合と同じである。」

ウ 図4




6 甲第6号証
(1)甲第6号証の記載
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
ア「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォール構造に関する。詳しくは、カーテンウォールの方立部に耐火被覆を設けるためのカーテンウォール構造に関する。」

イ「【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るカーテンウォール構造が適用されたカーテンウォール1の方立部の縦断面図である。図2は、カーテンウォール1の方立部の横断面図である。
カーテンウォール1は、高さ方向に延びる方立部10と、略水平方向に延びてこれら方立部10同士を連結する図示しない無目部と、これら方立部10および無目部で囲まれた開口部11、スパンドレル部12、および図示しない柱形部と、を備える。
【0013】
開口部11は、居住者の足元付近から天井にかけて位置しており、この開口部11には、ガラス部材111が取り付けられている。
スパンドレル部12は、床スラブ40を上下に跨ぐように位置しており、このスパンドレル部12には、ガラス部材121および耐火ボード13が取り付けられている。耐火ボード13は、ガラス部材121よりも屋内側に取り付けられている。
【0014】
スパンドレル部12のうち床スラブ40よりも上に位置する部分は、ペリカウンター14で覆われている。一方、スパンドレル部12のうち床スラブ40よりも下に位置する部分は、カーテンボックス15および天井ボード16で覆われている。
床スラブ40とスパンドレル部12との隙間には、ロックウール21が吹き付けられている。
【0015】
方立部10のうちこのスパンドレル部12を構成する部分の屋内側の面でかつ幅方向両端側には、上述の耐火ボード13を押さえるための一対の鍔部としての押さえ部材30が取り付けられている。これにより、耐火ボード13は、方立部10と押さえ部材30との間に挟み込まれて保持されている。
【0016】
押さえ部材30は、方立部10からこの方立部10の幅方向に突出して延びる第1突出片31と、この第1突出片31の先端から屋内に向かって突出して延びる第2突出片32と、を備える。具体的には、この押さえ部材30は、断面L字形状のアルミ製のアングル材を方立部10にビス33により固定することにより形成され、第1突出片31と第2突出片32とが一体化されている。
【0017】
一対の押さえ部材30の間には、耐火性を有する耐火被覆としてのロックウール20が吹き付けられている。このロックウール20は、第2突出片32の先端までの厚さに吹き付けられている。また、上述のロックウール21は、このロックウール20まで到達しているs。
押さえ部材30の第1突出片31の突出寸法L1および第2突出片32の突出寸法L2は、予め定められたロックウール20の目標厚さ(例えば、20mmあるいは30mm)に略等しくなっている。これにより、ロックウール20の方立部10の幅方向の厚さおよび屋内方向の厚さが確保されている。
【0018】
このように、押さえ部材30は、耐火ボード13を押さえるほか、ロックウールを吹き付けるためのガイドとしての役割を果たしている。」

ウ 図2




第5 当審の判断
1 甲第1号証を主引用例として
(1)対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「窓部2」、「室内側方立部材31」、「アンカー5」、「縦枠23」及び「耐火部材4」は、本件発明の「窓部」、「連結体本体」、「枠取付材」、「竪枠」及び「耐火部材」にそれぞれ相当する。

イ 甲1発明は、「左右方向に2つの窓部2,2が方立3を介して配列されてい」るものであるから、「窓部2,2」が、左右に隣接していて、その間に「方立3」が配置されているといえ、また、甲1発明の「方立3」は、「室内側方立部材31」と、「室外側方立部材32」とを備えている。そうすると、甲1発明において、「室内側方立部材31」は、左右に隣接する窓部の間に配置されているといえる。
甲1発明の「室内側方立部材31」が「中空角型のスチールパイプで構成されて」いることは、本件発明の「連結材本体」が、「中空状」であることに相当する。
以上のことを踏まえれば、甲1発明において、「窓部2,2」の間に配置され、「中空角型のスチールパイプで構成されて」いる「室内側方立部材31」は、本件発明の「左右に隣接する窓部の間に配置され中空状の連結材本体」に相当する。

ウ 甲1発明において、上記イで説示したとおり、「窓部2,2」は左右に隣接している。また、甲1発明の各「窓部2」は、「枠体21」を備えていて、「枠体21のうち、窓ガラス22の左右方向の両端部22aに沿って設けられた部材を縦枠23」としているとともに、「一対の縦枠23,23と方立3との間には、縦枠23と方立3とを固定する鉄製のアンカー5がそれぞれ設けられて」いるものである。前記「一対の縦枠23,23と方立3」は、「方立3」とその左右に隣接する「窓部2,2」のうちの方立3に近い2本の縦枠23であることは明らかである。
そうすると、甲1発明において、「方立3」を中心にその左右両側に「アンカー5」が配置されているといえる。
また、甲1発明の「アンカー5」は、「第2係止部53」を有し、「第2係止部53」が、「第2係止部53と室内側方立部材31との間には断面が略L字状のスチール製のアングル材54が配され、アングル材54の一方の片54aと第2係止部53とが溶接され、他方の片54bと室内側方立部材31とが溶接されて」いることから、「アンカー5」は、「室内側方立部材31」に固定されているといえる。
以上のことを踏まえると、甲1発明において、「室内側方立部材31」に固定され「方立3」を中心にその左右両側に配置される「アンカー5」は、本件発明の「連結材本体に固定され左右両側にそれぞれ配置される枠取付材」に相当する。

エ 甲1発明の「アンカー5」は、「板部51の一方の面51aの見込み方向Bの両端に板部51と連続して形成された一対の第1係止部52,52」を有していて、「室外14側の第1係止部52と板部51との間には、縦枠23の室外側折り返し片28が嵌合し、第1係止部52が板部51とともに縦枠23の室外側折り返し片28を係止していて、第1係止部52が板部51とともに縦枠23の室内側折り返し片29を係止して」いる、すなわち、「アンカー5」は、室外側及び室内側において、「縦枠23」に嵌合ないし係止されている。
また、甲1発明は、「一対の縦枠23,23と方立3との間」には、「アンカー5」がそれぞれ設けられている。
そうすると、甲1発明において、「一対の縦枠23,23」は、それぞれ「方立3」の左右両側に配置されている「アンカー5」により固定されているといえる。
以上のことを踏まえると、甲1発明において、左右両側に配置されている「アンカー5」により、それぞれ固定されている「一対の縦枠23、23」は、本件発明の「枠取付材に固定される左右の窓部の竪枠」に相当する。

オ 甲1発明の「耐火部材4」は、「室内側方立部材31の室内13側の面31a」と当接していることから、「耐火部材4」が「室内側方立部材31」の「室内13側」に配置されていることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「室内側方立部材31の室内13側の面31a」と当接している「耐火部材4」は、本件発明の「連結材本体の室内側に配置される耐火部材」に相当する。

カ 甲1発明の「室内側方立部材31」が「一対の縦枠23,23の見込み片24間で室内寄りに配置され」ていることは、本件発明の「連結材本体は、左右の窓部の竪枠間の見込み方向室内側に配置されて」いることに相当する。

キ 甲1発明の「室外側折り返し片28」が見込み方向に面を有していることは明らかであるから、甲1発明の「一対の縦枠23,23がそれぞれ備えている室外側折り返し片28が、互いに対向して」いることは、本件発明の「左右の窓部の竪枠」は、「見込み方向室外側に互いに対向する見込み面を有して」いることに相当する。

ク 甲1発明の「室外側方立部材32の第1見付け片33」の「両端部33a,33a近傍が縦枠23の室外側見付け片26,26と見込み方向Bに重なる位置に設置され」ていて、「室外側見付け片26,26との間に上下方向D全長にわたってパッキンなどの止水材37が介在されて」いることと、本件発明の「左右の窓部の竪枠の室外側の見込面間にシール材が配置されている」こととは、「シール材が配置されている」で共通する。

ケ 甲1発明は、「室内側または室外側への炎の浸入を防ぐことができる」ものであるから、甲1発明の「窓部連結構造」は、本件発明の「防火建具」に相当する。

そうすると、本件発明と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「左右に隣接する窓部の間に配置され中空状の連結材本体と、連結材本体に固定され左右両側にそれぞれ配置される枠取付材と、枠取付材に固定される左右の窓部の竪枠と、連結材本体の室内側に配置される耐火部材を備え、
連結材本体は、左右の窓部の竪枠間の見込み方向室内側に配置されており、
左右の窓部の竪枠は、見込み方向室外側に互いに対向する見込面を有していて、
シール材が配置されている防火建具」

<相違点1>
「シール材」について、本件発明では、「左右の窓部の竪枠の室外側の見込面間」に「配置されている」のに対して、甲1発明では、「室外側方立部材32の第1見付け片33」の「両端部33a,33a近傍」と「室外側見付け片26,26との間」に「介在されて」いる点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
ア 甲第3号証ないし甲第5号証には、上記第4の3ないし5のとおり、「左右の窓部の竪枠の室外側の見込面間」において、「シール材が配置されて」いる発明ないし技術事項が記載されている。
しかしながら、甲1発明は、「一対の縦枠23,23」(左右の窓部の竪枠)の「室外側折り返し片28」が、「アンカー5」の室外14側の第1係止部52と板部51との間に嵌合していて、「室外側折り返し片28」の見込み方向の面には「板部51」が存在し、また、「一対の縦枠23,23」の「室外側折り返し片28」間には、「室外側方立部材32」の「第1見込み片34」を配置した構造を備えるものであるから、「室外側折り返し片28」の間にシール材を配置する動機付けは存在しない。
また、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明ないし技術事項は、シール材が、左右の窓部の竪枠の室外側の見込面間に配置されているのに対して、甲1発明は、シール材が、「室外側方立部材32の第1見付け片33」の「両端部33a,33a近傍」と「室外側見付け片26,26との間」に「介在されて」いる、つまり、シール材は、竪枠とは別部材である室外側方立部材32の第1見付け片33の両端部33a,33a近傍の内側と、室外側見付け片26,26の外側との間に配置されているといえることから、両者は、シール材を狭持する部材やシール材を狭持方向などのシール材の配置構造が異なっており、また、共通する作用、機能も存在しない。よって、甲1発明に、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明ないしは技術事項を適用する動機付けも存在しない。
したがって、甲1発明に、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明ないし技術事項を適用し、相違点1に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

イ 甲第2号証には、上記第4の2のとおり、「シール凸状12」が「ガスケット本体8a,8bの対向部にそれぞれ一体成形され」た発明が記載されているが、相違点1に係る本件発明の構成は記載されていない。
また、申立人が提出したその余の証拠には相違点1に係る本件発明の構成は記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に、甲2発明及び申立人が提出したその余の証拠に記載された技術事項を適用しても、相違点1に係る本件発明の構成とすることはできない。

(3)小括
よって、本件発明は、甲1発明、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された発明ないし技術事項、及び申立人が提出したその余の証拠に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 甲第2号証を主引用例として
(1)対比
本件発明と甲2発明とを対比する。
ア 本件発明の「窓部」に関して、本件明細書の段落【0009】には、「防火建具は、建物の躯体開口Aの左右方向ほぼ中央位置に配置される連結材1と、建物の躯体開口部A内であって連結材1の左右の空間に配置される左右の窓部2,2を備えている。」との記載がある。この記載から、「窓部」とは、「建物の躯体開口」内であって「連結材」の左右の空間に配置されるものであると理解することができる。
また、「方立」が、横に連続する窓どうしの連結部分に設ける縦材を意味していることは技術常識である。
一方、甲2発明は、「窓開口に装着されるガラス板4a,4bは、上下の縁部が窓開口の上下縁部に沿って設けられる無目部材5に支持されたガスケット7に嵌め込み支持される一方、隣り合う側縁部が上下方向に延びる方立部材6に対して、目地部の構造を介して支持され」、「目地部の構造は、左右のガラス板4a,4bの側縁部を各々嵌合支持する一対のガスケット本体8a,8bと、これら一対のガスケット本体8a,8bをそれぞれ支持するとともに、方立部材6の側部に連結固定される一対のガスケット支持部材9a,9bとを備えて構成され」るものである。つまり、「窓開口」に対して、「ガラス板4a,4b」は、それぞれ「ガスケット本体8a,8b」及び「ガスケット支持部材9a,9b」と一体となって、「方立部材6」の左右において装着されているといえる。
本件発明についての上記理解及び技術常識に基づくと、甲2発明において、「ガラス板」、「ガスケット本体」及び「ガスケット支持部材」からなるものを「窓部」と理解でき、また、「方立部材6」を前記「窓部」を連結する「方立」(縦材)と理解することができる。
以上のことを踏まえると、甲2発明における、「ガラス板」、「ガスケット本体」及び「ガスケット支持部材」からなるものが、本件発明の「窓部」に相当し、甲2発明の「方立部材6」が、本件発明の「連結材本体」に相当する。
また、甲2発明の「ガスケット本体」が、「クロロプレンゴムなどのゴムで形成された」ものであり、また一般的に「ガスケット」が、気密性を持たせるためのシール部材を意味していることは技術常識である。
そうすると、甲2発明の「ガラス板」、「ガスケット本体」及び「ガスケット支持部材」からなるもの(窓部)のうち、「ガスケット支持部材」が、本件発明の「竪枠」に相当する。

イ 甲2発明は「横連窓構造」であるから、「ガラス板」、「ガスケット本体」及び「ガスケット支持部材」からなるもの(窓部)が、左右に隣接していることは明らかである。
また、甲2発明の「ガスケット支持部材」は、「方立部材6の側部に連結固定される」ものであるから、「ガラス板」、「ガスケット本体」及び「ガスケット支持部材」からなるもの(窓部)の間に、「方立部材6」が配置されていることは明らかである。
さらに、甲2発明の「方立部材6が、中空状」であることは、本件発明の「連結材本体」が「中空状」であることに相当する。
以上のことを踏まえると、甲2発明において、左右に隣接している「ガラス板」、「ガスケット本体」及び「ガスケット支持部材」からなるもの(窓部)の間に配置されていて、「中空状」である「方立部材6」は、本件発明の「左右に隣接する窓部の間に配置され中空状の連結材本体」に相当する。

ウ 甲2発明の「一対のガスケット支持部材9a,9b」と、本件発明の「枠取付材に固定される左右の窓部の竪枠」とは、「左右の窓部の竪枠」で共通する。

エ 甲2発明の「方立部材6」が、「一対のガスケット支持部材9a,9bの室内側寄りに配置されている」ことは、本件発明の「連結材本体は、左右の窓部の竪枠間の見込み方向室内側に配置されて」いることに相当する。

オ 甲2発明の「連結固定部16とジッパ支持部18とが接続される箇所」が見込み方向に面を有していることは明らかであるから、甲2発明の「一対のガスケット支持部材9a,9bは、連結固定部16とジッパ支持部18とが接続される箇所において互いに対向する部位を有し」ていることは、本件発明の「左右の窓部の竪枠」は、「見込み方向室外側に互いに対向する見込み面を有して」いることに相当する。

カ 甲2発明の「ガスケット本体8a,8bの対向部」に、「シール凸条12」が「それぞれ一体成形され」ていることと、本件発明が「左右の窓部の竪枠の室外側の見込面間にシール材が配置されている」こととは、「シール材が配置されている」ことで共通する。

キ 甲2発明の「横連窓構造」と、本件発明の「防火建具」とは、「建具」で共通する。

そうすると、本件発明と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「左右に隣接する窓部の間に配置され中空状の連結材本体と、左右の窓部の竪枠とを備え、
連結材本体は、左右の窓部の竪枠間の見込み方向室内側に配置されており、
左右の窓部の竪枠は、見込み方向室外側に互いに対向する見込面を有しており、
シール材が配置されている建具」

<相違点2−1>
本件発明は、「連結材本体に固定され左右両側にそれぞれ配置される枠取付材と、枠取付材に固定される左右の窓部の竪枠」を備えているのに対して、甲2発明は、「連結材本体に固定され左右両側にそれぞれ配置される枠取付材」を備えておらず、「左右の窓部の竪枠」が「枠取付材に固定され」ていない点。

<相違点2−2>
「シール材」について、本件発明は、「左右の窓部の竪枠の室外側の見込面間に配置されて」いるのに対して、甲2発明は、「ガスケット本体8a,8bの対向部」に「それぞれ一体成形され」ている点。

<相違点2−3>
本件発明は、「連結材本体の室内側に配置される耐火部材」を備えていて、「防火建具」であるのに対して、甲2発明は、「連結材本体の室内側に配置される耐火部材」を備えておらず、「横連窓構造」において、「防火」との特定がされていない点。

(2)判断
ア 上記相違点2−1について検討する。
(ア)甲第1号証には、上記第4の1のとおり、「建具」について「連結材本体に固定され左右両側にそれぞれ配置される枠取付材と、枠取付材に固定される左右の窓部の竪枠」を備えている甲1発明が記載されている。
一方、甲2発明は、「一対のガスケット支持部材9a,9b」(左右の窓部の竪枠)が、「方立部材6」(連結材本体)の側部に、本件発明の枠取付材に相当する部材を介さずに直接連結されるものであることからみて、甲2発明と甲1発明とは、「竪枠」と「連結材本体」との連結構造が異なっており、また、共通する作用、機能も存在しないことから、甲2発明に甲1発明を適用する動機付けは存在しない。
したがって、甲2発明に、甲1発明を適用し、相違点2−1に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

(イ)甲第6号証には、上記第4の6のとおり、カーテンウォールの方立部に耐火被覆を設けるためのカーテンウォール構造等が記載されているが、相違点2−1に係る本件発明の構成は記載されていない。
また申立人が提出したその余の証拠には相違点2−1に係る本件発明の構成は記載も示唆もされていない。
したがって、甲2発明に、甲第6号証に記載された技術事項及び申立人が提出したその余の証拠に記載された技術事項を適用しても、相違点2−1に係る本件発明の構成とすることはできない。

イ 相違点2−2について検討する。
(ア)甲第3号証ないし甲第5号証には、上記第4の3ないし5のとおり、「左右の窓部の竪枠の室外側の見込面間にシール材が配置されて」いる発明ないし技術事項が記載されている。
一方、甲2発明は、「シール材」が「ガスケット本体8a,8bの対向部」に「一体成形され」ているものであることからみて、甲2発明と上記甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明ないし技術事項とは、「シール」が配置される構造が異なるものであるとともに、共通する作用及び機能も存在しないことから、甲2発明に甲第3号証ないし甲第5号証に記載の発明ないし技術事項を適用する動機付けは存在しない。
したがって、甲2発明に甲第3号証ないし甲第5号証に記載の発明ないし技術事項を適用し、相違点2−2に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

(イ)甲第1号証及び甲第6号証には、上記第4の1及び6のとおりの発明ないし技術事項が記載されているが、相違点2−2に係る本件発明の構成は記載されていない。
したがって、甲2発明に甲第1号証及び甲第6号証に記載の発明ないし技術事項を適用しても、相違点2−2に係る本件発明の構成とすることはできない。

(3)小括
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明は、甲2発明、甲第1号証及び甲第6号証に記載の発明ないし技術事項、並びに申立人が提出したその余の証拠に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 甲第3号証を主引用例として
(1)対比
本件発明と甲3発明とを対比する。
ア 甲3発明の「窓枠A」、「後方立32」、「アンカー50」及び「竪枠10」は、本件発明の「窓部」、「連結材本体」、「枠取付材」及び「竪枠」に、それぞれ相当する。

イ 甲3発明の「隣り合う窓枠A,A′」は、本件発明の「左右に隣接する窓部」に相当する。
甲3発明は、「隣り合う窓枠A,A′の相対向する一対の竪枠10,20は方立30を介して連結」していることから、「隣り合う窓枠A,A′」の間に「方立30」が配置されているといえる。また、甲4発明の「方立30」は、「前方立31」と「後方立32」とを備えている。
そうすると、甲3発明は、「隣り合う窓枠A,A′」の間に「後方立32」が配置されているといえる。
以上のことを踏まえると、甲3発明の「隣り合う窓枠A,A′」の間に配置されている「後方立32」と、本件発明の「左右に隣接する窓部の間に配置され中空状の連結材本体」とは、「左右に隣接する窓部の間に配置され」る「連結材本体」である点で共通する。

ウ 甲3発明は、「後方立32」は、「両側片40,40に係止片43を前方に向けて斜めにそれぞれ一体形成」し、「一対の係止片43,43を一対のアンカー50,50の係止受片51,51にそれぞれ係止させる」ものであるから、「一対のアンカー50」は、それぞれ、「後方立32」に対して係止されているものといえる。
そうすると、甲3発明の「後方立32」に対して係止された「一対のアンカー50,50」と、本件発明の「連結材本体に固定され左右両側にそれぞれ配置される枠取付材」とは、「左右両側にそれぞれ配置される枠取付材」である点で共通する。

エ 甲3発明は、「左右一対のアンカー50,50」のそれぞれにおいて、「一対の舌片53,53と板状本体52とで突出片15,16,25,26を挟持してアンカー50」を「竪枠10,20に固着」してあるものである。
そうすると、甲3発明の「左右一対のアンカー50,50」に「固着」される「竪枠10、20」は、本件発明の「枠取付材に固定される左右の窓部の竪枠」に相当する。

オ 甲3発明の「後方立32は、一対の竪枠10,20の前記側壁11,21の間で室内寄りに配置されている」ことは、本件発明の「連結材本体は、左右の窓部の竪枠間の見込み方向室内側に配置されて」いることに相当する。

カ 甲3発明の「内向片12b,22b」が見込み方向に面を有していることは明らかであるから、甲3発明の「一対の左右竪枠10,20は、室外側で、側壁11,21にそれぞれ直交するように設けられた外片12a,22aに、さらにそれぞれ直角となるように設けられた内向片12b,22bが、互いに対向して」いることは、本件発明の「左右の窓部の竪枠は、見込み方向室外側に互いに対向する見込面を有して」いることに相当する。

キ 上記カを踏まえれば、甲3発明の「左右竪枠10,20」の「前記内向片12b,22bの間にシール材となるAT材35が配置されて」いることは、本件発明の「左右の窓部の竪枠の室外側の見込面間にシール材が配置されている」ことに相当する。

ク 甲3発明の「竪枠連結部構造」と、本件発明の「防火建具」とは、「建具」で共通する。

そうすると、本件発明と甲3発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「左右に隣接する窓部の間に配置される連結材本体と、左右両側にそれぞれ配置される枠取付材と、枠取付材に固定される左右の窓部の竪枠とを備え、
連結材本体は、左右の窓部の竪枠間の見込み方向室内側に配置されており、
左右の窓部の竪枠は、見込み方向室外側に互いに対向する見込面を有しており、
左右の窓部の竪枠の室外側の見込面間にシール材が配置されている防火建具」

<相違点3−1>
「枠取付材」について、本件発明では、「連結材本体に固定され」ているのに対して、甲3発明では、「後方立32」(連結材本体)に係止されている点。

<相違点3−2>
「連結材本体」について、本件発明では、「中空状をなし」ているのに対して、甲3発明では、中空状をなしておらず、「カバ60の一対の係止突片61,61を後方立32の左右係止溝46,46に係止して」いる点。

<相違点3−3>
本件発明は、連結材本体の室内側に配置される耐火部材を備えた防火建具であるのに対して、甲3発明は、「連結材本体の室内側に配置される耐火部材」を備えておらず、「竪枠連結部構造」が、「防火建具」ではない点。

(2)判断
事案に鑑み、まず、相違点3−2について検討する。
ア 相違点3−2について
(ア)甲第1号証及び甲第2号証には、上記第4の1及び2のとおり、「連結材本体」について、「中空状」である発明が記載されている。
一方、甲3発明は、「後方立32」が、「後方立32の室内側において開口部を有し」ていて中空状となっておらず、「カバ60の一対の係止突片61,61を後方立32の左右係止溝46,46に係止して」いる発明であり、「カバ60」は、「後方立32」が有する「開口部」を覆うことからみて、甲3発明と甲1発明及び甲2発明とは、「連結材本体」の室内側の構造が異なっており、また、共通する作用、機能も存在しないことから、甲3発明に甲1発明及び甲2発明を適用する動機付けは存在しない。
また、甲3発明は、「ビス47」を「ビス孔34」に螺合し、「傾斜した係止片43と係止受片51との楔作用によつて、左右竪枠10,20をアンカー50を介して対向接近方向に引き寄せ」るものであり、また、上記螺合の操作は、「後方立32」が有する「開口部」を利用してなされることは明らかである。ここで、「後方立32」を「中空状」とした場合、「ビス47」を螺合の操作するための開口部がなくなり、左右竪枠10,20をアンカー50を介して対向接近方向に引き寄せることができなくなるから、甲3発明において、「後方立32」を「中空状」とすることに阻害要因がある。
以上のとおりであるから、甲3発明に、甲1発明及び甲2発明を適用し、相違点3−2に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

イ 相違点3−1について
(ア)甲第1号証には、上記第4の1のとおり、「枠取付材」について、「連結材本体に固定され」ている甲1発明が記載されている。
しかしながら、甲3発明が「アンカー50」(枠取付材)を、「後方立32」(連結材本体)に「固定」させずに、「係止」させているのは、「竪枠10、20」を「対向接近方向に引き寄せる」ことができるようにするためのものであるから、「アンカー50」(枠取付材)を、「後方立32」(連結材本体)に「固定」させると、引き寄せることができない構造となる。よって、甲3発明において、「アンカー50」(枠取付材)を、「後方立32」(連結材本体)に「固定」させることに阻害要因がある。
したがって、甲3発明に、甲1発明を適用し、相違点3−1に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

(イ)甲第2号証、甲第4号証及び甲第6号証には、上記第4の2、4及び6のとおりの発明ないし技術事項が記載されているが、相違点3−1に係る本件発明の構成は記載されていない。
また申立人が提出したその余の証拠には相違点3−1に係る本件発明の構成は記載も示唆もされていない。
したがって、甲3発明に、甲第2号証、甲第4号証及び甲第6号証に記載された発明ないし技術事項、並びに申立人が提出したその余の証拠に記載された技術事項を適用しても、相違点3−1に係る本件発明の構成とすることはできない。

(3)小括
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明は、甲3発明、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第6号証に記載された発明ないし技術事項、並びに申立人が提出したその余の証拠に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明は、甲1発明、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された発明ないし技術事項、及び申立人が提出したその余の証拠に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲2発明、甲第1号証及び甲第6号証に記載の発明ないし技術事項、並びに申立人が提出したその余の証拠に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲3発明、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第6号証に記載された発明ないし技術事項、並びに申立人が提出したその余の証拠に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-06-10 
出願番号 P2020-210719
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E06B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 西田 秀彦
奈良田 新一
登録日 2021-06-23 
登録番号 6902669
権利者 三協立山株式会社
発明の名称 防火建具  
代理人 宮崎 恭  

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