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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G09G
管理番号 1023910
異議申立番号 異議1999-74274  
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-08-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-11-24 
確定日 2000-05-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2893433号「液晶表示装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2893433号の特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
特許第2893433号の請求項1に係る発明についての出願は、平成2年2月27日に出願した実願平2-18227号を特許法第46条第1項の規定により、平成4年11月10日に出願変更したものである。その後、平成11年3月5日にその発明について特許の設定登録がなされたが、その後、その特許について異議申立人セイコーエプソン株式会社より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年4月5日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の概要及び、その適否の判断
特許権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。
a.請求項1の「前記液晶に覆われる部分を、前記シール部材と」の記載を「前記液晶に覆われる部分を、液晶の配向不良または基板間隔の不均一が生じる前記シール部材と」と訂正する。
b.特許明細書【0008】の「前記液晶に覆われる部分を、前記シール部材と」の記載を「前記液晶に覆われる部分を、液晶の配向不良または基板間隔の不均一が生じる前記シール部材と」と訂正する。

上記aに関する記載として、「前記液晶に覆われる部分を、前記シール部材と前記液晶との境界面から数mmの範囲内に形成したので、液晶の配向不良や基板間隔の不均一が生じて無駄となる非表示領域が有効に活用され」【0016】の記載がある。
したがって、上記aの訂正は、ドライバ回路が液晶に覆われる部分の具体的な構成を、願書に添付した明細書に記載された範囲内で、具体的に限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

また、上記bの訂正は、詳細な説明に記載された特許請求の範囲に対応する記載を、特許請求の範囲の訂正に合わせて訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明である。

イ.独立特許要件の判断
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のとおりのものである。

一対の透明基板を枠状のシール部材を介して接着し、この一対の基板間における前記シール部材の内側に液晶を封入すると共に、一方の基板側に複数の画素電極を有する表示領域を形成し、他方の基板内側に対向電極を形成した液晶表示装置において、薄膜トランジスタを含むドライバ回路を、一部が前記シール部材に覆われ且つ残部が液晶に覆われるように形成すると共に、前記液晶に覆われる部分を、液晶の配向不良または基板間隔の不均一が生じる前記シール部材と前記液晶との境界面から数mmの範囲内に形成したことを特徴とする液晶表示装置。

訂正前の本件発明に対して、当審が、平成12年2月21日付けで通知した取消理由通知で引用した刊行物1には下記のとおりの記載がある。

刊行物1:特開昭58-85478号公報
「(30)は基板(11)及び透明基板(12)間の間隔を規制して液晶(13)の封入空間の厚さを規制するスベーサとなり且つ液晶封入空間を液密に保持する障壁で」(公報3ページ左上欄11-13行)
「すなわちこの例においても前述したと同様に基板(11)と透明基板(12)とを対向して設ける。そして両者間に形成した液密空間に液晶例えばネマチックツイスト型の液晶(13)を配置し、その中央部において各絵素を構成する液晶表示部Eを構成し、その周辺の例えば四周に第1図で説明した制御回路部(1)及び(2)を構成する周辺回路部Sを構成するものであるが、特にこの例においては、基板(11)を透明基板例えばサフアイア基板によって構成し、このサファイア基板(11)上に例えばエピタキシヤル成長等による半導体層(41)を形成し、これに第3図で説明したと同様の半導体回路を形成する。すなわちこの半導体層(41)の周辺部に第1図で説明した制御回路(1)及び(2)を構成する周辺回路部Sを形成し、これにより内側において表示部Eの複数の絵素部をマトリクス状に配列形成し、これらに対応して第1図で説明した各絵素に対応する駆動回路、すなわちMOS及びCを配置する。」(公報3ページ左下欄20行-右下欄18行)
そして、第4図には液晶表示部Eの周囲に周辺回路部Sが配置されており、該周辺回路部の最も外側のP+層は枠30の下部まで到達していることが記載されている。

(対比・判断)
本件発明と上記刊行物1に記載の発明とを対比すると、上記刊行物に1には、本件発明を特定する構成である「前記液晶に覆われる部分を、液晶の配向不良または基板間隔の不均一が生じる前記シール部材と前記液晶との境界面から数mmの範囲内に形成」(以下、相違点という。)の構成が記載されていないし、その示唆もない。
すなわち、上記刊行物1には液晶表示部の周囲に周辺回路部を設けることは記載されているが、この周辺回路部を、「液晶の配向不良または基板間隔の不均一が生じる前記シール部材と前記液晶との境界面から数mmの範囲内」に積極的に設けることは記載されていない。そして、本件発明は上記相違点の構成を有することにより、「液晶の配向不良や基板間隔の不均一が生じて無駄となる非表示領域が有効に活用され、液晶表示パネル自体を小さく構成し、液晶表示装置を小型化することができる。」という予測し得ない効果を奏するものである。よって、本件発明が上記刊行物1に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、本件発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

エ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項の規定および同条第3項で準用する第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
ア.申立の概要
特許異議申立人セイコーエプソン株式会社は特許異議申立時に、証拠として甲第1号証(当審が上記取消理由通知で引用した刊行物1と同じである)を提出し、本件請求項1に記載された発明は、甲第1号証に基づき当業者が容易に発明できたものであるから特許法第29条第2項の規定に該当し、本件請求項1に記載された発明の特許は、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきである旨主張している。

イ.判断
異議申立人が提出した甲第1号証には、本件発明を特定する構成である「前記液晶に覆われる部分を、液晶の配向不良または基板間隔の不均一が生じる前記シール部材と前記液晶との境界面から数mmの範囲内に形成」(以下、相違点という。)の構成が記載されていないし、その示唆もない。
そして、本件発明は上記相違点の構成を有することにより、「液晶の配向不良や基板間隔の不均一が生じて無駄となる非表示領域が有効に活用され、液晶表示パネル自体を小さく構成し、液晶表示装置を小型化することができる。」という予測し得ない効果を奏するものである。よって、本件発明が上記甲第1号証に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由および、証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液晶表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の透明基板を枠状のシール部材を介して接着し、この一対の基板間における前記シール部材の内側に液晶を封入すると共に、一方の基板側に複数の画素電極を有する表示領域を形成し、他方の基板内側に対向電極を形成した液晶表示装置において、薄膜トランジスタを含むドライバ回路を、一部が前記シール部材に覆われ且つ残部が液晶に覆われるように形成すると共に、前記液晶に覆われる部分を、液晶の配向不良または基板間隔の不均一が生じる前記シール部材と前記液晶との境界面から数mmの範囲内に形成したことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はドライバ回路を液晶表示パネルに設けた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は小型で且つ薄い構造にできる為、CRTディスプレイ等の表示装置に変わってワードプロセッサやパーソナルコンピュータ、液晶テレビ等の表示装置として広く使用されている。このような用途に使用される液晶表示装置は通常液晶表示パネル内の各表示素子(画素)に接続される薄膜トランジスタを駆動する為のドライバ回路を装置の液晶表示パネルとは別体の回路基板上に設けている。しかし、近年の装置の小型化の要請から上記ドライバ回路を液晶表示パネル内に設けた液晶表示装置が考案されている。
【0003】
図3は液晶表示パネルにドライバ回路を配設した液晶表示装置の模式的平面図であり、図4はその断面図である。尚、両図はアクティブマトリックス型の液晶表示装置を示すものである。両図において、液晶表示装置は以下の様に構成されている。即ち、一方のガラス基板4には、画素電極となる透明電極1とこの透明電極1を駆動する為の薄膜トランジスタ2とこのトランジスタ2のゲート線Gl〜Gm及びドレイン線Dl〜Dnが形成され、さらにこれらの画素及び各素子上に配向膜3が形成されている。他方のガラス基板7には、透明なコモン電極5と該コモン電極5上に配向膜6が形成されている。前記一方のガラス基板4と他方のガラス基板7とは、互いに対向配設され、シール部材8によって接着重合されている。両ガラス基板4と7間に液晶9が注入され、この液晶9は封止部材10で封止されている。また、薄膜トランジスタ2を駆動するゲート線駆動回路11及びドレイン線駆動回路12は一方のガラス基板4上の前記シール部材8より外側の基板周辺部に形成されている。
【0004】
このアクティブマトリックス型の液晶表示装置は、ゲート線駆動回路11から出力されるタイミング信号によりゲート線Gl〜Gmの一本が順次選択され、選択されたゲート線G1〜Gmに接続する一ラインの薄膜トランジスタ2はドレイン線駆動回路12から出力されるデータ信号を透明電極1へ印加し、対向する電極間に介在する液晶を動作させる。この様にして、前記透明電極1に対応する画素電極に駆動電圧が印加され、これらの複数の画素電極によって画像が表示される。また、ゲート線駆動回路11、ドレイン線駆動回路12を動作させる画像データおよび制御信号が不図示の画像データ出力装置に接続された端子14から、制御信号線13を介して供給されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の液晶表示装置は、前記シール部材8の内側近傍の数mmの範囲は、基板間隙のムラや、配向不良が発生するため、複数の透明電極1が配列された表示領域(図3の矩形枠S内の領域)から、数mmの間隔を設けて、その外側にシール部材8が形成され、さらにその外側の基板周縁部に、ゲート線駆動回路11、及びドレイン線駆動回路12が配列されていた。
【0006】
この為、液晶パネルの基板は、前記表示領域に比べて、その周辺部の基板面積が大きくなり、液晶表示パネルの外形は大きくなり、装置を小型化する際の支障となっている。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は装置の小型化を可能とする液晶表示装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の液晶表示装置は、一対の透明基板を枠状のシール部材を介して接着し、この一対の基板間における前記シール部材の内側に液晶を封入すると共に、一方の基板側に複数の画素電極を有する表示領域を形成し、他方の基板内側に対向電極を形成した液晶表示装置において、薄膜トランジスタを含むドライバ回路を、一部が前記シール部材に覆われ且つ残部が液晶に覆われるように形成すると共に、前記液晶に覆われる部分を、液晶の配向不良または基板間隔の不均一が生じる前記シール部材と前記液晶との境界面から数mmの範囲内に形成したことを特徴とするものである。このようにすれば、液晶の配向不良や基板間隔の不均一が生じて無駄となる非表示領域が有効に活用されるので、液晶表示パネル自体を小さく構成し、液晶表示装置を小型化することができる。
【0009】
【作用】
本発明の液晶表示装置は、薄膜トランジスタを動作させるゲート線駆動回路やドレイン線駆動回路からなるドライバ回路を、基板間隙にムラが生じやすく、且つ配向ムラが生じやすいシール部材の近傍及びシール部材の形成部分からなるシール部材で囲われた領域の内側近傍に配置した。
【0010】
この構成により基板のシール部材外側にドライバ回路を形成するための周縁領域を設ける必要がなくなるため、液晶表示装置を小型化することができるものである。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施例の液晶表示装置の模式的平面図であり、図2は図1の断面図である。同図において、ガラス基板17はガラス、石英等で構成され、ガラス基板17上にはゲート線Gl〜Gm、画素電極19、薄膜トランジスタ20、ドレイン線Dl〜Dnがマトリクス状に配列された表示領域(図1の矩形枠S内の領域)が設けられ、この表示領域の外側には、上記ゲート線Gl〜Gmに接続されたゲート線駆動回路(ドライバ回路)21及び上記ドレイン線Dl〜Dnと接続されたドレイン線駆動回路(ドライバ回路)22が形成されている。このドレイン線駆動回路22及び上記ゲート線駆動回路21は上記薄膜トランジスタ20等をガラス基板17上に形成する際同時に形成されるものであり、後述するシール部材で囲まれる領域より内側に配設されている。このようにして形成される画素電極19や薄膜トランジスタ20、ゲート線駆動回路21、ドレイン線駆動回路22上にはさらに配向膜23が形成されている。
【0012】
また、上記ガラス基板17と同様にガラス、石英等で構成されるガラス基板18の表面には図2で示すようにコモン電極24が形成され、このコモン電極24上にさらに配向膜25が形成されている。
【0013】
上記ガラス基板17及び18に形成された配向膜23,25は配向処理後この配向膜23,25を対面してガラス基板17及び18を対向配置させ、ガラス基板17,18の周縁部に形成された枠状のシール部材26によって、所定間隔を隔てて接合されている。このガラス基板17,18の間にはシール部材の開口部27から液晶28が注入され、この開口部27は封止部材29により封止されている。この際、ゲート線駆動回路21およびドレイン線駆動回路22は、その内方側の端部がシール部材26より内側に露出し、液晶28によって覆われる。尚、ゲート線駆動回路21,ドレイン線駆動回路22への画像データおよび制御信号の供給は制御信号線30,端子31を介して不図示の画像データ出力装置より行われることは前述の従来例と同様である。
【0014】
以上のようにゲート線駆動回路及びドレイン線駆動回路22を、液晶28の配向不良や基板間隔の不均一が生じ易い部分であるシール部材26の内側、すなわちシール部材と液晶との境界面、から数mmの範囲内に形成したので、従来に比べて液晶表示パネルを小型化できるものである。
【0015】
また、ゲート線駆動回路21がシール部材26の内側に収められることによりゲート線駆動回路21と表示領域間のゲート線を従来のように長く延設する必要がなく、またドレイン線駆動回路22も同様にシール部材26の内側に収められることによりドレイン線駆動回路と表示領域間のドレイン線を従来より短く形成でき、ゲート線及びドレイン線の抵抗を小さくすることができる。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、薄膜トランジスタを含むドライバ回路を、一部が前記シール部材に覆われ且つ残部が液晶に覆われるように形成すると共に、前記液晶に覆われる部分を、前記シール部材と前記液晶との境界面から数mmの範囲内に形成したので、液晶の配向不良や基板間隔の不均一が生じて無駄となる非表示領域が有効に活用され、液晶表示パネル自体を小さく構成し、液晶表示装置を小型化することができる。
【0017】
また、ゲート線及びドレイン線を短くできるので、ゲート線及びドレイン線による電圧降下を防ぎ、又ノイズの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
一実施例の液晶表示装置の模式的平面図である。
【図2】
図1の断面図である。
【図3】
従来の液晶表示装置の模式的平面図である。
【図4】
図3の断面図である。
【符号の説明】
17、18 ガラス基板
19 画素電極
20 薄膜トランジスタ
21 ゲート線駆動回路(ドライバ回路)
22 ドレイン線駆動回路(ドライバ回路)
23、25 配向膜
24 コモン電極
26 シール部材
27 開口部
28 液晶
29 封止部材
 
訂正の要旨 訂正の要旨
a.請求項1の「前記液晶に覆われる部分を、前記シール部材と」の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として「前記液晶に覆われる部分を、液晶の配向不良または基板間隔の不均一が生じる前記シール部材と」と訂正する。
b.特許明細書【0008】の「前記液晶に覆われる部分を、前記シール部材と」の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として「前記液晶に覆われる部分を、液晶の配向不良または基板間隔の不均一が生じる前記シール部材と」と訂正する。
異議決定日 2000-04-27 
出願番号 特願平4-300160
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G09G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新宮 佳典鈴野 幹夫  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 島田 信一
渡邊 聡
登録日 1999-03-05 
登録番号 特許第2893433号(P2893433)
権利者 カシオ計算機株式会社
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 須澤 修  
代理人 鈴木 喜三郎  

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