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審決分類 審判 全部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  A63F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1046818
異議申立番号 異議1999-73585  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-06-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-09-24 
確定日 2001-09-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第2873944号「パチンコ機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2873944号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1・手続の経緯
特許第2873944号発明は、昭和62年5月28日に出願された実願昭62-79990号の一部が(旧)実用新案法第9条第1項の規定によって準用する特許法第44条第1項の規定により平成3年5月27日に新たな実用新案登録出願(実願平3-46751号)に分割され、当該出願が、特許法第46条第1項の規定により平成3年5月28日に特願平3-150907号に出願変更され、当該出願の一部が特許法第44条第1項の規定により平成8年3月11日に新たな特許出願(特願平8-82033号)に分割され、当該出願の一部が同条同項の規定により平成9年1月27日に新たな特許出願(特願平9-27187号)に分割されたものであって、平成11年1月14日にその特許権の設定登録がなされ、その後、異議申立人・細江裕実により特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成12年9月12日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由に対して手続補正書が提出されたものである。
2・訂正の適否についての判断
ア・訂正請求に対する補正の適否について
特許権者は、訂正請求書の第3頁第1,2行、同頁第21行及び第4頁第15行記載の訂正事項「前記信号に基づいて前記表示処理部で」を「前記信号に基づいて前記表示処理部を表示移動手段として機能させて、」に変更する補正をするところ、このような訂正事項を変更する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであって、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項に適合しないから、当該訂正請求に対する補正は認められない。
イ・訂正明細書の請求項1に係る発明
上記アのように、訂正請求に対する補正は認められないから、訂正明細書の請求項1に係る発明は、平成12年9月12日付け訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「遊技者の操作で弾発される遊技球の遊技盤に設けられた入賞口への入賞または通過ゲートの通過に起因して制御装置からの信号により少なくとも1以上の図柄を変動させるように外部接続端子に接続された表示処理部を設けて表示する構成としたパチンコ機において、
遊技盤面上に少なくとも1以上の前記図柄を変動表示させるマトリクス駆動表示素子を設けると共に、前記入賞口への入賞または通過ゲートの通過に起因して前記図柄を表示するマトリクス駆動表示素子の行毎の表示を前記信号に基づいて前記表示処理部で順次移動するようにしたことを特徴とするパチンコ機」
ウ・引用刊行物記載の発明
訂正明細書の請求項1に係る発明に対し、当審が訂正拒絶理由通知において引用した刊行物1(特開昭60-96277号公報)には、
(1)「電気的可変表示器3としては、上記セグメント表示器に限らず・・・或いはセグメントを用いず多数の発光ダイオードを配したものでもよい」(第3頁右下欄第14ないし18行)の記載、
(2)「0,1〜9の数字の個々を瞬時に点灯させるのではなく、経時性をもたせ予め設定された順序に従って点灯させ・・・1つの識別情報を複数部分から構成し、当該複数部分を順次規則的に点灯していくことにより、1つの表示(識別情報)を完成していくのである」(第4頁左上欄第1ないし8行)、「第5図は、上記遊技機を制御する制御回路のブロック線図を示すもので、プログラムに従う順次の制御命令によって各種の演算、データの一時記憶、判断処理及び入力、出力の制御を行う中央演算処理装置(CPU)25と、遊技条件に従って回路動作を行うように定められた制御プログラムデータが格納された読み出し専用のメモリ(PROM)26と、CPU25からの入出力制御信号によってスイッチ、ランプ、ソレノイド及び発光ダイオード等の入出力を並列処理する入出力制御装置(PIA)27とPIA27に接続された各種の回路とから構成されている」(第4頁右上欄第20行ないし左下欄第12行)及び「LEDデコーダ回路29には、4ビットのBCD信号が供給され、同回路29はBCD信号を各セグメントS1〜S7に対応するデコーダ信号に変換する。該デコーダ信号は、さらにLED電流ドライブ回路34に供給され、ここで同信号はセグメントS1〜S7が点灯するに充分なだけ増幅された後、CLD接続回路35に供給され、他方表示桁選択回路36により、表示盤23a,23b、23cが短時間周期で順次選択され、LEDデコーダ回路29のBCD出力がどの表示盤23a,23b、23cの表示データかを識別して、識別信号をCLD接続回路35に供給し、セグメントS1〜S7が点灯することになる。このセグメントの点灯は前述したように、予め定められた順序に従って行われることになり、また完成した識別情報は周期的に可変する。このようにパチンコ球が始動セーフ孔6’、6’・・・に入賞すると、電気的可変表示器3によって表示される数字等の識別情報がCPU25のプログラムに従って順次・周期的に可変することになり」(第4頁右下欄第9行ないし第5頁左上欄第9行)の記載から、多数の発光ダイオードの表示順序が中央演算処理装置25からの信号により識別情報を可変させるように入出力制御装置27、LEDデコーダ回路29、LED電流ドライブ回路34、CLD接続回路35及び表示桁選択回路36を設け、前記信号に基づいて前記入出力制御装置27、LEDデコーダ回路29、LED電流ドライブ回路34、CLD接続回路35及び表示桁選択回路36で順次識別情報を完成していくようになっているものと認められること、
からみて、
「遊技者の操作で打球されるパチンコ球の遊技盤に設けられた始動セーフ孔6’への入賞に起因して中央演算処理装置25からの信号により識別情報を可変させる入出力制御装置27、LEDデコーダ回路29、LED電流ドライブ回路34、CLD接続回路35及び表示桁選択回路36を設けたパチンコ遊技機において、
遊技盤面上に前記識別情報を可変表示させる多数の発光ダイオードを設けると共に、前記始動セーフ孔6’への入賞に起因して前記識別情報を表示する多数の発光ダイオードの表示順序を前記信号に基づいて前記入出力制御装置27、LEDデコーダ回路29、LED電流ドライブ回路34、CLD接続回路35及び表示桁選択回路36で順次前記識別情報を完成していくようにしたパチンコ遊技機」を構成とする発明が、
同刊行物2(米国特許第4517654号明細書(クラス364))には、
特に、
(3)「本発明は、入力バスから供給されるデータを受け取り、供給されたデータから画像を形成する技術に関する。そして、データがゲーム回路から供給されることを特徴とする。ゲームの動画と、ゲームの画像表示のためのデータは、図1に示すように、ビデオ中央処理装置(CPU)10に供給される。CPUは、ゲームの操作信号に基づいて、ビデオに関する全ての制御を行う」(第3欄第50ないし58行)、「ビデオプロセッサはゲームプロセッサアドレス線を含み、それによってビデオプロセッサはゲームプロセッサデータバスに接続される。ゲームプロセッサ(図示されていない)からのデータは、ビデオプロセッサ10によってデータバスを介して受取られる。さらに、ビデオプロセッサはゲームプロセッサから割込みを受け、それによって、ビデオプロセッサはデータ処理サイクルの途中でゲームプロセッサのコマンドに応答することができる。ビデオプロセッサはゲームプロセッサデータバスにデータ出力信号を与えてビデオプロセッサの状態を示す。ビデオプロセッサがゲームプロセッサから命令を受取ると、プログラムメモリ19はアドレスラッチ12を介してアドレス指定される。プログラムメモリ19はビデオプロセッサを動作するための命令及びゲームプロセッサコマンドに従って図形画像を形成するための命令を含む。一旦アドレス指定されると、プログラムメモリによってビデオプロセッサが他のビデオプロセッサ回路に与えられるデータの形でコマンドを発生することができる」(第4欄第63行ないし第5欄第14行)、「例えば、ピンボールマシンは今やビデオゲームであり、スロットマシンは今やビデオゲーム装置である」(第1欄第21,22行)、図1(シート1)及び図2(シート2,3)の記載から、
ゲーム回路からのゲームコマンドにより図形画像を変動させるように、ビデオプロセッサ回路が設けられており、かつ、ビデオプロセシングアーキテクチャがゲーム用であるものと認められること、
(4)上記(3)の第4欄第63行ないし第5欄第14行、図6(シート7)左下の「VAD0〜VAD7」の記載から、
ビデオプロセッサ回路に外部接続線が接続されているものと認められること、
(5)「本発明は、ビデオディスプレイ上に静止平面画像と可動平面画像の部分を同時にディスプレイするための装置と方法である」(第3欄第37ないし39行)、「ビデオRAM内の1Kのメモリは、40列×25行のマトリックスとして構成される。このマトリックスは形成されるべき画像のための画像平面におけるブロック位置に対応する(図3)」(第5欄第47ないし50行)、「キャラクタメモリ28は、画素のライブラリにようなものである。キャラクタメモリ内の各位置は8ピクセル×8ピクセルのブロック(図3)を形成するための情報を含む。これらのブロックを画像平面内のさまざまな位置でともに接続することにより、さまざまな画像を形成することができるだろう。たとえば図3では、数字の「7」が示される。図3の細部は、この数字が一連の8ピクセル×8ピクセルブロックから形成されており、各ブロックは画像の一部を含むということが示されている。ビデオプロセッサは、プログラムメモリからの命令に従って画像を形成するとき、その画像を作り出すのに必要とされる各ブロックのアドレスをビデオRAM内で組立てる。一旦画像が組立てられると、アドレスはキャラクタメモリにラッチされ、このようにして画像は形成される」(第5欄第64行ないし第6欄第10行)及び図3(シート4)の記載から、
マトリクスとして構成されるビデオディスプレイが設けられているものと認められること、
(6)「この発明のもう一つの独自の特徴は、可動平面画像動作回路である。本発明により、画像ブロックが一度に1つのピクセルまたはラインだけ水平軸及び垂直軸において離散的に動くことができる。たとえば、ビデオスロットマシンでは、リール上の画像はリールの動きまたは回転の印象を与えるために一度にライン1本ずつ上方または下方に移動させられてもよい。加えて、画像が一度に1ピクセルずつ左または右に移動させられてもよい。このような能力により、ビデオディスプレイ上で画像を滑らかに遷移させリアルな効果を作り出すことができる。ビデオを同時に双方の軸においてシフトさせ、さまざまな角度における対角線上のシフトを生じさせてもよい」(第7欄第27ないし38行)の記載から、
図形画像を表示するマトリクスとして構成されるビデオディスプレイの行毎の表示をゲームコマンドに基づいてビデオプロセッサ回路で順次移動するようにしているものと認められること、
からみて、
「ゲーム回路からのゲームコマンドにより図形画像を変動させるように外部接続線に接続されたビデオプロセッサ回路を設けて表示する構成としたゲーム用ビデオプロセシングアーキテクチャにおいて、
前記図形画像を変動表示させるマトリクスとして構成されるビデオディスプレイを設けると共に、前記図形画像を表示するマトリクスとして構成されるビデオディスプレイの行毎の表示を前記ゲームコマンドに基づいて前記ビデオプロセッサ回路で順次移動するようにしたゲーム用ビデオプロセシングアーキテクチャ」を構成とする発明が、
同刊行物3(特開昭59-105476号公報)には、
「電子回路を組込んだ基盤の導線をターミナル17に接続したパチンコ機」を構成とする発明が、
それぞれ記載されているものと認められる。
エ・対比及び判断
訂正明細書の請求項1に係る発明(前者)と刊行物1に記載された発明(後者)とを対比すると、後者の
「打球」、「パチンコ球」、「始動セーフ孔6’」、「中央演算処理装置25」、「識別情報」、「可変」、「入出力制御装置27、LEDデコーダ回路29、LED電流ドライブ回路34、CLD接続回路35及び表示桁選択回路36」及び「パチンコ遊技機」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「弾発」、「遊技球」、「入賞口」、「制御装置」、「少なくとも1以上の図柄」、「変動」、「表示処理部」及び「パチンコ機」
に相当するものと認められるから、
両者は、
「遊技者の操作で弾発される遊技球の遊技盤に設けられた入賞口への入賞に起因して制御装置からの信号により少なくとも1以上の図柄を変動させる表示処理部を設けたパチンコ機において、
遊技盤面上に少なくとも1以上の前記図柄を変動表示させると共に、前記入賞口への入賞に起因して前記図柄の表示を前記信号に基づいて前記表示処理部で順次行うようにしたパチンコ機」である、
点において一致し、
前者においては、表示処理部が外部接続端子に接続されており、図柄を表示させるためにマトリクス駆動表示素子が設けられ、該マトリクス駆動表示素子における表示を、前記表示処理部で行毎に移動させる、
のに対し、
後者においては、表示処理部が外部接続端子に接続されておらず、図柄を表示させるために多数の発光ダイオードが設けられ、該多数の発光ダイオードにおける表示順序を、前記表示処理部で前記図柄を完成させるようにする、
点において相違しているものと認められる。
前記相違点についてみるに、
刊行物2に記載された発明の
「ゲーム回路」、「ゲームコマンド」、「図形画像」、「ビデオプロセッサ回路」及び「マトリクスとして構成されるビデオディスプレイ」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「制御装置」、「信号」、「少なくとも1以上の図柄」、「表示処理部」及び「マトリクス駆動表示素子」
に相当するものと認められるから、
刊行物2に記載された発明には、
「制御装置からの信号により少なくとも1以上の図柄を変動させるように外部接続線に接続された表示処理部を設けて表示する構成としたゲーム用ビデオプロセシングアーキテクチャにおいて、
少なくとも1以上の前記図柄を変動表示させるマトリクス駆動表示素子を設けると共に、前記図柄を表示するマトリクス駆動表示素子の行毎の表示を前記信号に基づいて前記表示処理部で順次移動するようにしたゲーム用ビデオプロセシングアーキテクチャ」という構成、
すなわち、
「外部接続端子」が「外部接続線」である点を除き、
前記相違点の前者の構成と一致する
「表示処理部が外部接続線に接続されており、図柄を表示させるためにマトリクス駆動表示素子が設けられ、該マトリクス駆動表示素子における表示を、前記表示処理部で行毎に移動させる」という構成、
が備わっているものと認められる。
しかして、「外部接続線」に「外部接続端子」を設けることは、刊行物3に記載された発明にも備わっている(刊行物3に記載された発明においては、外部接続線である導線に、前者の「外部接続端子」に相当する「ターミナル17」が設けられているものと認められる)ように、従来周知の技術であって、「外部接続線」に「外部接続端子」を設ける点に、発明がある、とは到底いえない。
そうすると、
(ア)刊行物2に記載された発明の「ゲーム用ビデオプロセシングアーキテクチャ」は、後者の「パチンコ機」と同様の技術分野のものである、
(イ)表示処理部に外部接続線を設ける構成が刊行物2に記載された発明にある、
(ウ)刊行物2に記載された発明の「マトリクス駆動表示素子」は、後者の「多数の発光ダイオード」と共通するところのあるものである、
(エ)刊行物2に記載された発明の「行毎に移動させる」と、後者の「表示順序を図柄を完成させるようにする」とは、表示を経時的に動かす点で共通するところがある、
という諸点に着目して、
後者に刊行物2に記載された発明を適用し、
後者の「表示処理部」を「外部接続端子に接続された表示処理部」とし、
後者の「多数の発光ダイオード」に代えて刊行物2に記載された発明の「マトリクス駆動表示素子」を採用し、
後者の「表示順序を図柄を完成させるようにする」に代えて刊行物2に記載された発明の「行毎に移動させる」を採用することは、
当業者が格別困難性を要することではないというべきである。
しかも、前者の効果が後者及び刊行物2に記載された発明並びに従来周知の技術のそれぞれの効果の総和以上の格別なものとも認められない。
以上のとおり、訂正明細書の請求項1に係る発明は、上記刊行物1及び2に記載された各発明並びに刊行物3に記載された発明にも備わっている従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
オ・むすび
したがって、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
3・特許異議申立てについての判断
ア・本件発明
上記2のオのように、訂正は認められないから、本件発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の第1項に記載された次の事項によって特定されるとおりのものと認める。
「遊技者の操作で弾発される遊技球の遊技盤に設けられた入賞口への入賞または通過ゲートの通過に起因して少なくとも1以上の図柄を変動させるように構成としたパチンコ機において、
遊技盤面上に少なくとも1以上の前記図柄を変動表示させるマトリクス駆動表示素子を設けると共に、前記入賞口への入賞または通過ゲートの通過に起因して前記図柄を表示するマトリクス駆動表示素子の行毎の表示を順次移動するようにしたことを特徴とするパチンコ機」
イ・引用刊行物記載の発明
当審が通知した取消理由において引用した刊行物1(訂正拒絶理由通知において引用した刊行物1と同一である)には、
上記2のウの(1)及び(2)の記載からみて、
「遊技者の操作で打球されるパチンコ球の遊技盤に設けられた始動セーフ孔6’への入賞に起因して識別情報を可変させるパチンコ遊技機において、
遊技盤面上に前記識別情報を可変表示させる多数の発光ダイオードを設けると共に、前記始動セーフ孔6’への入賞に起因して前記識別情報を表示する多数の発光ダイオードの表示順序を順次前記識別情報を完成していくようにしたパチンコ遊技機」を構成とする発明が、
同刊行物7(訂正拒絶理由通知において引用した刊行物2と同一である)には、
上記2のウの(3)、(5)及び(6)の記載からみて、
「図形画像を変動させるように表示する構成としたゲーム用ビデオプロセシングアーキテクチャにおいて、
前記図形画像を変動表示させるマトリクスとして構成されるビデオディスプレイを設けると共に、前記図形画像を表示するマトリクスとして構成されるビデオディスプレイの行毎の表示を順次移動するようにしたゲーム用ビデオプロセシングアーキテクチャ」を構成とする発明が、
それぞれ記載されているものと認められる。
ウ・対比及び判断
本件発明(前者)と刊行物1に記載された発明(後者)とを対比すると、後者の
「打球」、「パチンコ球」、「始動セーフ孔6’」、「識別情報」、「可変」及び「パチンコ遊技機」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「弾発」、「遊技球」、「入賞口」、「少なくとも1以上の図柄」、「変動」及び「パチンコ機」
に相当するものと認められるから、
両者は、
「遊技者の操作で弾発される遊技球の遊技盤に設けられた入賞口への入賞に起因して少なくとも1以上の図柄を変動させるパチンコ機において、
遊技盤面上に少なくとも1以上の前記図柄を変動表示させると共に、前記入賞口への入賞に起因して前記図柄の表示を順次行うようにしたパチンコ機」である、
点において一致し、
前者が、図柄を表示させるためにマトリクス駆動表示素子を設け、該マトリクス駆動表示素子における表示を、行毎に移動させる、
のに対し、
後者が、図柄を表示させるために多数の発光ダイオードを設け、該多数の発光ダイオードにおける表示順序を、前記図柄を完成させるようにする、
点において相違しているものと認められる。
前記相違点についてみるに、
刊行物7に記載された発明の
「図形画像」及び「マトリクスとして構成されるビデオディスプレイ」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「少なくとも1以上の図柄」及び「マトリクス駆動表示素子」
に相当するものと認められるから、
刊行物7に記載された発明には、
「少なくとも1以上の図柄を変動させるように表示する構成としたゲーム用ビデオプロセシングアーキテクチャにおいて、
少なくとも1以上の前記図柄を変動表示させるマトリクス駆動表示素子を設けると共に、前記図柄を表示するマトリクス駆動表示素子の行毎の表示を順次移動するようにしたゲーム用ビデオプロセシングアーキテクチャ」という構成、
すなわち、
前記相違点の前者の構成と一致する
「図柄を変動表示させるためにマトリクス駆動表示素子を設け、該マトリクス駆動表示素子における表示を、行毎に移動させる」という構成、
が備わっているものと認められる。
そうすると、
(ア)刊行物7に記載された発明の「ゲーム用ビデオプロセシングアーキテクチャ」は、後者の「パチンコ機」と同様の技術分野のものである、
(イ)刊行物7に記載された発明の「マトリクス駆動表示素子」は、後者の「多数の発光ダイオード」と共通するところのあるものである、
(ウ)刊行物7に記載された発明の「行毎に移動させる」と、後者の「表示順序を図柄を完成させるようにする」とは、表示を経時的に動かす点で共通するところがある、
という諸点に着目して、
後者に刊行物7に記載された発明を適用し、
後者の「多数の発光ダイオード」に代えて刊行物7に記載された発明の「マトリクス駆動表示素子」を採用し、
後者の「表示順序を図柄を完成させるようにする」に代えて刊行物7に記載された発明の「行毎に移動させる」を採用することは、
当業者が格別困難性を要することではないというべきである。
しかも、前者の効果が後者及び刊行物7に記載された発明のそれぞれの効果の総和以上の格別なものとも認められない。
エ・むすび
以上のとおり、本件発明は、上記刊行物1及び7に記載された各発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条に規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-07-18 
出願番号 特願平9-27187
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (A63F)
P 1 651・ 856- ZB (A63F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 神 悦彦松川 直樹土屋 保光  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 鈴木 寛治
佐藤 昭喜
登録日 1999-01-14 
登録番号 特許第2873944号(P2873944)
権利者 株式会社平和
発明の名称 パチンコ機  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 伸一  

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