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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B62D
管理番号 1055020
異議申立番号 異議2000-71135  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-04-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-03-21 
確定日 2001-12-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2951247号「履帯シュー」の請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2951247号の特許を維持する。 
理由 一.[手続の経緯]
本件特許第2951247号(以下、「本件特許」という)は、平成7年7月27日に出願された特願平7-212492号の特許出願を先の出願として、特許法第41条第1項に規定する優先権を主張して、平成7年11月6日付で出願された特願平7-311608号に係り、平成11年7月9日に設定登録されたが(登録時の請求項の数3)、本件特許に対して、上記特許異議申立人より、全請求項に係る特許異議の申立があったので、当審において当該申立の理由を検討の上、特許取消理由を通知したところ、その通知書で指定した期間内の平成12年11月6日に、特許異議意見書の提出と共に訂正請求があった。当該訂正請求の結果、先に通知した特許取消理由で指摘したところ以外の取消理由が発見されたので、当審より、その旨を指摘した特許取消理由を通知し、特許権者は平成13年5月21日付で特許異議意見書と共に訂正請求書を提出したが、当審において、明細書の記載不備を指摘した更に別の特許取消理由を通知し、これに対して特許権者は、平成12年11月6日付、及び平成13年5月21日付の訂正請求を取下げると共に平成13年10月16日付で新たに訂正請求をしたものである。

二.[訂正請求について]
1.訂正の要旨
上記平成13年10月16日付訂正請求における訂正の要旨は、次のイ〜ハのとおりである。
イ 願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という)における、特許請求の範囲の請求項1において、
「ゴムパッドと帯板の一方端縁に当該履帯シューを履板に係止するための内向きのフック金具を備えたものであり、」という記載を、
「ゴムパッドと帯板の一方端縁に当該履帯シューを履板に係止するための内向きでその外端部がゴムパッドの外端部に一致するフック金具と他端側にナットを溶接しこれをゴムパッド中に埋設したものであり、」と訂正すると共に、
同請求項末尾の
「他端側は履板を挟んでリンク側からボルトにて直接装着することを特徴とする履帯シュー。」という記載を、
「他端側は履板を挟んでリンク側からボルトを前記ナットに螺着して装着することを特徴とする履帯シュー。」と訂正する。
ロ 請求項2および3を削除する。
ハ 特許明細書の「発明の詳細な説明」の欄において、上記イ、ロの訂正事項に関連する箇所(【0006】、【0007】、【0009】、【0010】、【0012】、【0013】、【0021】、【0022】、【0026】、【図面の簡単な説明】の各欄)について、当該イ、ロの訂正趣旨に対応する訂正をする。
2.訂正請求の適否
(1)訂正の目的
上記イの訂正事項は特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるし、上記ロの請求項の削除を行う訂正も同様である。
そして、上記ハの訂正事項は、明細書の前後における齟齬を解消しようとするもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
(2)新規事項の有無
上記イ〜ハの訂正事項は、いずれも登録時における特許明細書に実質上記載された事項の範囲内において、訂正しようとするものと認められる。
(3)拡張、変更の有無
上記イ〜ハの各訂正事項の内容は、その訂正の趣旨からみて、特許明細書に記載されている発明の目的の範囲を逸脱するところはなく、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでない。
(4)訂正事項の適法性と訂正請求の認容
上記(1)〜(3)で検討したところによれば、上記各訂正事項は、特許法第120条の4第2項第1、3号に掲げる事項を目的とするものであって(上記(1))、特許法第120条の4第3項で準用される、特許法第126条第2項(上記(2))、同条第3項(上記(3))の各規定に適合しているので上記訂正の請求は認容される。

三.[特許異議の申立ての理由と提出された証拠]
特許異議申立人の主張の概要は、次の1及び2のとおりである。
1.特許異議申立て理由 -その1-<先願発明との同一性
本願の請求項に係る発明は、本件特許に係る出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された下記の先願A又は先願Bの願書に最初に添付した明細書または図面に記載された発明と同一であって、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反して受けたものである。
先願A:特願平6-255538号(特開平8-119163号、甲第 1号証参照)
先願B:特願平7-78266号(特開平8-244659号、甲第2 号証参照)
2.特許異議申立て理由 -その2-<新規事項>
本件特許明細書の記載は、願書に最初に添付した明細書又は図面(甲第3号証参照)に記載された範囲内のものではない事項を含むから、本件特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたことになる。

四.[当審の判断]
1.特許異議申立て理由 -その1-<先願発明との同一性>について
(1)特許異議申立に係る特許発明の認定
上記のとおり、訂正請求が認容されるので、特許異議申立に係る発明は、特許明細書(上記平成13年10月16日付で提出された訂正明細書)の特許請求の範囲において、請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
【請求項1】「リンクにて無端状に連結される履板に装着される履帯シューであって、当該履帯シューは帯板とこの帯板の外周側に接着されたゴムパッドと帯板の一方端縁に当該履帯シューを履板に係止するための内向きでその外端部がゴムパッドの外端部に一致するフック金具と他端側にナットを溶接しこれをゴムパッド中に埋設したものであり、このフック金具を前記履板の一方端縁に係止し、他端側は履板を挟んでリンク側からボルトを前記ナット螺着して装着することを特徴とする履帯シュー。」(この請求項1に係る発明を、以下、「本件特許発明」という)
(2)先願明細書の記載
上記の先願Aに係る明細書には、「リンクへ固定する」履板1の「履帯用パッド本体2」に関して、「履帯用パッド本体2を構成する金属板2aの一端側に、上記履板1の端部に係合する鉤部2eを形成し、金属板2aの他端側には、ボルト孔2fを穿設して、このボルト孔2fに取付けボルト3を履帯用パッド本体2の弾性体2b側より挿入すると共に、上記取付けボルト3を、履板1の端部に係合させた鉤部2eより取付けボルト3までの距離L1 よりやや遠い位置となるよう履板1に穿設した取付け孔1cに挿入してナット3bで締付ける」ことが記載されている。(【特許請求の範囲】の欄参照)
同じく、先願Bに係る明細書にも、「無限軌道車両の履帯を構成する鉄製の各履板に取り付けられる弾性履板」に関して、「該弾性履板は、その背面に金属プレートを一体に有するとともに、該金属プレートには、その長さ方向の一端部に取り付けボルトを突設させ、さらに他端部には、前記鉄製履板の端部に係着可能な折り曲げフックを設けてなる」ことが記載されている。(【特許請求の範囲】の欄参照)
(3)本件特許発明との対比
本件特許発明と、上記各先願明細書の記載事項とを対比すると、先願Aに係る「履帯用パッド本体2」、及び、先願Bに係る「弾性履板」は、いずれも、リンクによって無端状に連結する履板に装着するものであって、本件特許発明における「履帯シュー」に相当し、先願Aに係る「鉤部2e」、及び先願Bに係る「折り曲げフック」は、いずれも「履帯シューを履板に係止するための内向きのフック金具」といえるものである。
したがって、上記いずれの先願明細書にも、「リンクにて無端状に連結される履板に装着される履帯シュー」の発明に関して、「一方端縁に当該履帯シューを履板に係止するための内向きのフック金具」を、他端側には螺着による固定部材を取り付けるようにした構成の開示があるといえ、この点では本件特許発明の構成と一致するといえる。
しかし、本件特許発明では、螺着による固定部材に関して、「ナットを溶接しこれをゴムパッド中に埋設」して、「リンク側からボルトを前記ナットに螺着して」装着するのに対し、いずれの先願発明においてもボルトとナットとの関係が逆になっているというばかりでなく、本件特許発明における、フック金具の「外端部がゴムパッドの外端部に一致」する点の言及はいずれの先願に係る明細書及び図面にもなく、この点において、本件特許発明と各先願発明との間に構成上の相違がある。
しかも、本件特許発明は、フック金具の外端部を「ゴムパッドの外端部に一致」させることによって、フック金具の「耐久性が向上する」という、独自の作用効果を奏するものであって、当該作用効果に関連する言及も、いずれの先願明細書にもない以上、本件特許発明と各先願発明とが同一であるとすることはできない。
2.特許異議申立て理由 -その2-<新規事項>について
特許異議申立人が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された範囲内のものではない事項として指摘した、訂正前の請求項1中の「履板を挟んでリンク側からボルトにて直接装着する」という記載と、同請求項3中のフック金具が「履帯シューのゴムパッド幅端より外側に突出しない構造」という記載は、いずれも上記二.のとおりの訂正によって、現明細書には存在しない。
したがって、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものとはいえない。
3.当審で指摘した取消理由について
当審では、本件特許の取消理由として、上記1.及び2.の理由に加え、明細書の記載不備を指摘したが、当該記載の不備も、上記の訂正によって解消されている。

五.[むすび]
以上のとおりであるから、本件特許は、特許異議申立人の主張する理由およびその提出した証拠によっては、取り消すことはできないし、また、他に取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
履帯シュ-
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 リンクにて無端状に連結される履板に装着される履帯シューであって、当該履帯シューは帯板とこの帯板の外周側に接着されたゴムパッドと帯板の一方端縁に当該履帯シューを履板に係止するための内向きでその外端部がゴムパッドの外端部に一致するフック金具と他端側にナットを溶接しこれをゴムパッド中に埋設したものであり、このフック金具を前記履板の一方端縁に係止し、他端側は履板を挟んでリンク側からボルトを前記ナットに螺着して装着することを特徴とする履帯シュー。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は建設車両や土木作業用車両に用いる履帯シュ-に関するものであり、更に詳しくは鉄製履板に装着容易とした履帯シュ-に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
建設車両や土木作業用車両に用いるクロ-ラは、多数の履板をリンクによりブッシュ及びピンを介して無端状に連結したものであり、この踏面側にゴムパッドを備えた履帯シュ-をボルトにて装着した構造のものが広く用いられている。
しかるに、ゴムパッドにあけられたボルト孔内に砂や小石が入り込み、このボルト孔近傍からゴムパッドに亀裂が入り耐久性を著しく悪くしているのが現状である。又、履板への装着時にあっても、通常は4本のボルトをクロ-ラ内周側でナットにて装着するものであり、装着作業性が悪く特に車両の内側に位置するボルトにあっては締め付ける作業が容易ではない。又、履板の裏面側にボルトが必要以上に突出することともなり、車両側のフレ-ム等とのスペ-スをせばめる結果、ここに土砂が噛み込みやすくなり、かつ、ナットを損傷して履帯シュ-の取り外しができなくなる等の欠点があった。
【0003】
以上のような欠点を解決するために、ボルトを履帯シュ-のゴムパッド内に予め埋設する技術も開発されているが、ゴムパッドの亀裂等の発生は低減されるものの、履板との装着のための作業性は改善されていない。更に改良されたものとして、例えば実開平6-74594号にて履帯シュ-のゴムパッド内にナットを埋設する技術が開発されている。この履帯シュ-にあっては、ゴムパッドの亀裂等の発生も少なく、かつ履板との装着性もある程度改善され、従来のものに比べてすぐれた性能をもっている。
【0004】
図14はこの履帯シュ-を示す断面図であり、帯板21に袋ナット22が溶接されたもので、この帯板21に袋ナット22を囲んでゴムパッド23が加硫接着されているものである。従って、履板24の裏側より挿入されたボルト25が袋ナット22と螺合されることによって履帯シュ-が装着されることとなる。前記したように、通常履板24と履帯シュ-とは4本のボルト25をもって装着されるため、袋ナット22もゴムパッド23中に4個埋設されるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この提案の履帯シュ-のゴムパッドには装着のためのボルト孔がなく、ここからのゴムパッドの亀裂等の発生はなくなるが、装着時の作業は基本的には4本のボルトをもって装着されるため、装着作業性の悪さは従来のものとそれほど差異はなく、特に車両の内側に位置するボルトの締め付けは容易ではなくこの点での問題は解決されていない。
【0006】
本発明は、前記のような課題の解決を目的としたものであって、ゴムパッドの亀裂等の低減は勿論のこと、履板との装着作業性を改良し、かつ履帯シューの耐久性の向上を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、リンクにて無端状に連結される履板に装着される履帯シューであって、当該履帯シューは帯板とこの帯板の外周側に接着されたゴムパッドと帯板の一方端縁に当該履帯シューを履板に係止するための内向きでその外端部がゴムパッドの外端部に一致するフック金具と他端側にナットを溶接しこれをゴムパッド中に埋設したものであり、このフック金具を前記履板の一方端縁に係止し、他端側は履板を挟んでリンク側からボルトを前記ナットに螺着して装着することを特徴とする履帯シューにかかるものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の履帯シュ-は、基本的には帯板の一方側に内向きにフック金具を備えており、このフック金具をもって履板の一方縁部に引っ掛けて履帯シュ-を係止するものであって、特に車両機体の内側に位置する履板の縁部に引っ掛けることによって装着が極めて容易となったものである。そして、他方側を(この例では車両機体の外側)履板を挟んでリンク側から履帯シュ-側のナットに向かってボルトを差し込んで螺着し履帯シュ-を装着するものである。
【0009】
このため、装着に要する作業は端的に言えばボルトを締め付けるだけで完了するものであり、フック金具における履板と履帯シュ-の係止はワンタッチで行えるためほとんど作業時間を要さない。このフック金具の先端は履板の端縁が嵌り易いように面取りが施されたり、或いは拡開されていたり、更にはフック金具の中間部が狭まっているのが好ましい。しかも、前記したようにフック金具を車両機体の内側に配置することにより、ボルトの締付けは車両機体の外側の作業だけとなるため、装着に要する作業性は著しく短縮し、装着作業性が向上したこととなる。更に、フック金具の外端部をゴムパッドの外端部に一致させたため、フック金具へ直接小石等が衝突することが避けられるので、帯シューの耐久性が向上したものである。
【0010】
【実施例】
以下、図面をもって本発明を更に詳細に説明する。
(フック型履帯シューの基本構造)
図1はフック型履帯シューの基本構造を示す接地面側の平面図であり、図2は正面図、図3は主要部での側断面図である。
図中、1は帯板であり、この帯板1には接地面側に向けてグロ-サ-10が形成されている。そして、このグロ-サ-10、10間の底面11にフック金具3が溶接されている。即ち、このフック金具3は帯板1の一方端に溶接されて履板との係止に供されるものであり、その先端がリンク側に曲げられている。他方、帯板1にはフック金具3と反対側にボルト孔4が穿孔されている。このような構造をもつ帯板1の接地側にゴムパッド5が加硫接着されるもので、このゴムパッド5内にフック金具3の溶接部が埋設されるものである。
【0011】
ゴムパッド5内にはボルト孔4に対応して袋ナット2が配置される。この袋ナット2の背丈について言えば、図示するようにグロ-サ-の背丈と帯板1の厚さとの合計よりも背丈の高いものもあるが、ナット2が保護され、耐久性を向上させるためには、グロ-サ-の背丈と帯板1の厚さの合計よりもナット2の背丈を同等乃至はこれよりも背丈の低い方が好ましい。尚、袋ナット2は帯板1のグロ-サ-10、10間の底面に配置され、好ましくは、この底面に溶接されるものである。
【0012】
図中、一点鎖線で示すものはリンクにて無端状に連結されてなる履板11であって、図示するように、履板11の一方端縁110にフック金具3をもって履帯シュ-を係止し、次いでその反対側の袋ナット2に履板11のボルト孔12を介してボルト13を螺合して履帯シュ-を装着するものである。尚、前述したように、フック金具3側は車両の内側に配置するのが作業性の面からみて好ましいことは明らかである。ただし、フック金具3、3はゴムパッド5の外端部よりも突出している構造となっており、これを保護する必要がある。
【0013】
(本発明の履帯シューの基本構造)
図4は、本発明の履帯シュ-の基本構造を示すもので、帯板1のみを取り出した正面図である。即ち、そのフック金具3の先端30は拡開されて曲げられている。このようにフック金具3の先端30が拡開されていることにより、履板11の端縁110がワンタッチで係止できることとなったものである。勿論、場合によっては先端30が曲げられなくとも面取りを施すだけでもよい。尚、この例にあって、帯板1の一方端にフック金具3が溶接されている。
【0014】
図4中、二点鎖線で示すものはフック金具3の接地面側に加硫接着されたゴム弾性体14であり、これは走行時に小石等が直接フック金具に衝突することを阻止するための保護ブロックである。フック金具3が帯板1の履板11側の底面11に備えることによって、特にこの保護ブロック14の厚さを確保できるため耐久性が著しく向上することとなる。この保護ブロック14は、帯板1の接地面側に加硫接着されるゴムパッド5と同時に加硫成形されるのが一般的である。
【0015】
図5は本発明の履帯シュ-別例の側断面図である。この例にあっては、履板11のグロ-サ-111全体に接触するように帯板1の幅が広くなっているものであり、言い換えればゴムパッド5の全面に帯板1が存在する形態である。
このため、履板11と履帯シュ-とは金属同士(履板11と帯板1)の接触面となるために一体化が強まり、かつゴムパッド5は帯板1に加硫接着されているためこの間に異物が入り込むことなくゴムの損傷を防ぐことができる。
【0016】
この図5において、履帯シュ-は図1におけるフック金具3によって履板11との係止が先ず行われることとなるが、図5における帯板1の形態はフック金具3のない従来の履帯シュ-にも適用可能である。
【0017】
尚、従来より履板11におけるグロ-サ-111、111間の間隔A、Bは、同一寸法には設計されていない。従って、装着する履帯シュ-も又この間隔A、Bに合致させて帯板1が形成されるのが通例であるが、このようにすることにより履帯シュ-に方向性が生じることとなってしまうのが現状である。
【0018】
図6はこれを改良したものであって、履帯シュ-の装着の方向性をなくすこととしたものである。即ち、履板11のグロ-サ-111、111間隔A、B(A>Bとする)に対し、帯板1のグロ-サ-110、110の間隔P、QはB≧P、Qなる関係を有するよう設計することにより履帯シュ-の装着時の方向性をなくすものである。この例にあっても、フック金具3によって履板11との係止が図られることとなるが、図6に示す帯板1と履板11との関係は、従来の形態の履帯シュ-にも適用可能であることは言うまでもない。
【0019】
このように構成したことにより、履板11と履帯シュ-の帯板1との間には場合によって間隔Sが生ずるが、この間隔を構成する部材(履板11と帯板1)がいずれも金属製であるのでここに異物が入り込んでもゴムパッド5にはなんら影響しない。尚、この場合、図例でも分る通り帯板1と履板11との両グロ-サ-110と111とが直接接触しあって装着されることが必要である。
【0020】
図7、図8は更にこの具体例を示したものであり、グロ-サ-の間隔はA>B、P=B=Qとした。即ち、履板11と履帯シュ-の装着にあって、図7はBとPを合わせた場合、図8は履帯シュ-を逆にして装着し、BとQとを合わせた場合の断面図である。図7にあってはA、Q間で間隔S1が、図8にあってはA、P間で隙間S2が,B、Q間で隙間S3が形成されることとなるが、いずれもグロ-サ-部で履板11と帯板1とが接触しているため機能上なんら問題を生じない。
【0021】
(本発明の履帯シューの構造)
図9は本発明の履帯シュ-を示す接触面側の平面図、図10はその正面図、図11は主要部での断面図である。
この履帯シュ-にあっては、そのコ-ナ-部を曲面とするのが好ましく、この図例ではゴムパッド5の各コ-ナ-部50が曲面をなしており、このためゴムパッド5のコ-ナ-部50からのゴムのめくれがなく履帯シュ-の耐久性が向上することとなる。又、帯板1が履帯シュ-の幅方向においてゴムパッドより幅狭のものが用いられており、この帯板1の幅方向端部が確実に多量のゴムにて覆われることとなる。このため、帯板1の幅方向端部でのゴムのめくれはなくなり、耐久性のアップが図られることとなる。
【0022】
更に、フック金具3は帯板1に溶接されるが、履帯シュ-のゴムパッド5の幅端より外側に突出しない構造としたので、フック金具3の耐久性が向上する。即ち、走行中にフック金具3に小石等の衝突を阻止することができるようになったものである。
【0023】
又、この帯板1の幅方向端部に配置されたフック金具3もゴム中に埋設されることとなり、耐久性の向上にも寄与することになる。又、ここに用いられるフック金具3の拡大図を図12に示すが、フック金具3の材質は例えば圧延鋼又はバネ鋼等であり、フックの金具3の先端を内側に湾曲させてフック金具3の間隔dを狭めてあり、履板の厚さよりも狭い間隔とするのが履板11の固定に都合がよい。
【0024】
図9に示した履板シュ-の耐久試験を行った。この試験にあって、用いた履板シュ-は6トン用のものであり、ゴムパッド5の幅は450mm、帯板11の幅は430mmであり、従って帯板11の幅端にはゴムが10mm存在している。
一方、比較例としては帯板11の幅も450mmであり、帯板11の幅端にはゴムが存在しない履帯シュ-を用いた。
連続走行試験の結果、本発明の履帯シュ-にあっては連続走行50時間以上の耐久性が確保されたのに対し、比較例のものにあっては5時間でゴムの剥離が発生した。このことより、帯板の幅端には10mm以上のゴムが存在するのが望ましいことが分かった。
【0025】
図13は本発明の履帯シュ-の更に別例を示す断面図である。この例から分かるように履帯シュ-の長手方向の前後には帯板1が達していない例である。そして、好ましくは帯板1の前後端12、13が履板11のグロ-サ-111の背丈より短く形成され、グロ-サ-111よりも帯板1の前後端12、13が突出しないことが望まれる。もし、帯板1の前後端12、13がグロ-サ-111よりも突出していると、この先端によってゴムパッド5の亀裂破壊が簡単に発生してしまうからである。
更に、履帯シュ-全体として前後端のゴムパッド5の厚さは帯板の分だけ厚くなっており、このため履板シュ-の走行時に石等に乗り上げた際に生じるゴムパッド5の圧壊がゴム厚が厚くなることで改善されるという効果もある。
【0026】
【発明の効果】
本発明は以上の通りであって、履帯シュ-と履板とがフック金具で装着される方法を採用したため、その装着作業性は著しく向上した。更には、フック金具に対する耐久性の向上をも図ったものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1はフック型履帯シュ-の基本構造の接地面側の平面図である。
【図2】
図2は図1における履帯シュ-の正面図である。
【図3】
図3は図1における履帯シュ-の主要部での切断側面図である。
【図4】
図4は本発明の履帯シュ-の基本構造を示すもので、帯板のみを取り出した正面図である。
【図5】
図5は本発明の履帯シュ-の別例の切断側面図である。
【図6】
図6は本発明の履帯シュ-の更に別例の切断側面図である。
【図7】
図7は図6の履帯シュ-の履板との装着例を示す切断側面図である。
【図8】
図8は図6の履帯シュ-を逆に用いた際の履板との装着例を示す切断側面図である。
【図9】
図9は本発明の履帯シュ-を示す接地面側の平面図である。
【図10】
図10は図9の正面図である。
【図11】
図11は図9の主要部での断面図である。
【図12】
図12は図9に示したフック金具の拡大斜視図である。
【図13】
図13は本発明の履帯シュ-の更に別例を示す断面図である。
【図14】
図14は従来の履帯シュ-を示す断面図である。
【符号の説明】
1‥‥帯板、
10‥‥帯板のグロ-サ-、
11‥‥帯板のグロ-サ-間の底面、
2‥‥袋ナット、
3‥‥フック金具、
30‥‥フック金具の先端、
4‥‥ボルト孔、
5‥‥ゴムパッド、
11‥‥リンクにて無端状に連結された履板、
110‥‥履板の一方端縁、
111‥‥履板のグロ-サ-、
12‥‥履板のボルト孔、
13‥‥ボルト、
14‥‥フック金具の接地面側に接着されたゴム弾性体、
A、B‥‥履板のおけるグロ-サ-間の間隔、
P、Q‥‥帯板のグロ-サ-間の間隔、
S1、S2、S3‥‥グロ-サ-間の隙間。
 
訂正の要旨 訂正請求における訂正内容の要旨は、次のイ〜ハのとおりである。
イ 願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という)における、特許請求の範囲の請求項1において、
「ゴムパッドと帯板の一方端縁に当該履帯シューを履板に係止するための内向きのフック金具を備えたものであり、」という記載を、
「ゴムパッドと帯板の一方端縁に当該履帯シューを履板に係止するための内向きでその外端部がゴムパッドの外端部に一致するフック金具と他端側にナットを溶接しこれをゴムパッド中に埋設したものであり、」と訂正すると共に、
同請求項末尾の
「他端側は履板を挟んでリンク側からボルトにて直接装着することを特徴とする履帯シュー。」という記載を、
「他端側は履板を挟んでリンク側からボルトを前記ナットに螺着して装着することを特徴とする履帯シュー。」と訂正する。
ロ 請求項2および3を削除する。
ハ 特許明細書の「発明の詳細な説明」の欄において、上記イ、ロの訂正事項に関連する箇所(【0006】、【0007】、【0009】、【0010】、【0012】、【0013】、【0021】、【0022】、【0026】、【図面の簡単な説明】の各欄)について、当該イ、ロの訂正趣旨に対応する訂正をする。
異議決定日 2001-11-29 
出願番号 特願平7-311608
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B62D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 粟津 憲一大島 祥吾  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 刈間 宏信
鈴木 久雄
登録日 1999-07-09 
登録番号 特許第2951247号(P2951247)
権利者 株式会社ブリヂストン
発明の名称 履帯シュー  
代理人 鈴木 悦郎  
代理人 鈴木 悦郎  

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