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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E05B |
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管理番号 | 1062068 |
審判番号 | 不服2001-18176 |
総通号数 | 33 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-10-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-10-11 |
確定日 | 2002-07-19 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 32242号「受金具」拒絶査定に対する審判事件[平成11年10月 5日出願公開、特開平11-270201]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願の請求項1に係る発明 本願は、昭和61年9月24日に実用新案登録出願された実願昭61-146851号の一部を平成7年6月19日に分割して出願した実願平7-7128号を平成7年7月19日に更に分割して出願した実願平7-8444号を平成11年2月10日に特許出願の特願平11-32242号に変更したものであり、本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、平成11年3月10日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 内方に凹入部を有する取付けボックスと、前記取付けボックスの凹入部に嵌め込まれていて取付けボックスの凹入部内でスライド可能であるスライドボックスと、前記取付けボックスと前記スライドボックスの双方に接触するカムを備え、該カムの回動に伴ってスライドボックスが移動される受金具であって、前記カムの回動軸は内方方向と平行に配されていて表面開放側に露出すると共にドライバーの係合頭部が形成されていることを特徴とする受金具。」 2.出願日 本願と実願平7-8444号との関係では、本願発明と、実願平7-8444号の平成9年2月7日付け手続補正書により補正された請求項1に係る発明とが対応し、実質的に同一のものであるといえるから、出願の変更は適法になされたものであり、出願日は、平成7年7月19日までの遡及が認められる。 つぎに、本願と、実願昭61-146851号及び原出願の実願平7-7128号との関係において分割要件を判断する。 本願発明は、特許請求の範囲の【請求項1】に、「前記取付けボックスと前記スライドボックスの双方に接触するカムを備え」と記載され、また、本願明細書の段落【0010】には、「また取付けボックスは、底板内面に突起を有し、該突起とカムとが係合する構成も可能である。さらにカムは、バネによって付勢され、取付ボックスの一部と接触状態を保っている構成も可能である。」と記載され、この記載を参酌するとカムは、突起以外に取付けボックス自体と接触するものも含まれるものである。 一方、実願昭61-146851号の出願当初の明細書又は図面には、(イ)「取付けボツクスの底板内面の片方側板寄りに突出させた突起と、・・・前記突起に接触させたカム」(1頁実用新案登録請求の範囲)、(ロ)「上記の取付けボツクス1は、底板2と、この底板2の四側縁から連なつて対向させた左右の側板3.3及び上下の端板4.4と、この両端板4.4から連なつて互に外方に突出させた突片5.5と、この両突片5に設けた取付けビス6の挿通孔7とで構成されている。」(4頁第15〜20行)、(ハ)「また、取付けボツクス1の底板2内面の片方の側板3寄りには、突起13が設けられている。」(5頁11〜12行)、(ニ)「なお、上記のカム15は、第1図で示したように周縁に突起を接触させる形式のものと、第8図及び第9図で示したように弧状の長孔に突起を嵌め込んだ形式のものがある。」(6頁3〜6行)、(ホ)「回動軸の回動操作によりカムを回動させると、カムと突起との接触によりスライドボツクスをスライドさせて、上記スライドボツクスの側板をラツチボルトやデツトボルトに接触させることができる」(8頁6〜10行)と記載されている。 また、実願平7-7128号の出願当初の明細書又は図面には、上記実願昭61-146851号の出願当初の明細書又は図面に記載されている(イ)〜(ホ)に相当する事項が、特許請求の範囲の【請求項1】、段落【0009】、段落【0011】、段落【0013】、段落【0019】にそれぞれ記載されている。 上記のとおり、実願昭61-146851号及び実願平7-7128号の出願当初の明細書又は図面には、突起を取付けボックスに付設し、突起にカムを接触させてスライドボックスをスライドさせるという、取付けボックス自体の機能とは別の機能を取付けボックスに付加した技術事項が記載されており、カムがスライドボックスとともに接触するものとして突起以外のものは記載されていない。すなわち、取付けボックス自体には、スライドボックスをスライドさせる機能を果たす役割が担わされておらず、取付けボックス自体が係る機能を有することがそれぞれの出願当初の明細書又は図面に記載された事項からみて自明な事項とも認められない。 したがって、本願を分割出願であるとして判断すれば、本願発明は、実願昭61-146851号及び実願平7-7128号の出願当初の明細書又は図面に記載されていない事項を含むものであるから、出願の分割が適法にされたものとはいえず、出願日の遡及は認められない。 よって、本願は、出願の変更が適法にされているのみであるから、その出願日は、実願平7-8444号の現実の出願日まで遡及し、平成7年7月19日に出願されたものとなる。 3.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に国内に頒布された実願平2-99480号(実開平4-56875号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、 「ラッチ受けプレートとラッチ受け箱とからなるラッチ受座において、ネジ溝を設けた円形突起部を有する回転自在な偏心板をラッチ受け箱底部に配置するとともに、この偏心板の円形突起部に対応する開口部を底部中央部に有し、かつ、スライド片を上部端縁部より幅方向に延設し、ラッチ受け箱の内幅より小さい箱状のスライド体を偏心板に接続して挿入配置してなることを特徴とするラッチ受座。」(1頁実用新案登録請求の範囲)、 「(作 用) この考案のラッチ受座においては、ネジ溝を設けた円形突起部を有する回転自在な偏心板をラッチ受け箱底部に配置するとともに、この偏心板の円形突起部に対応する開口部を底部に有し、かつ、スライド片を上部端縁部より幅方向に延設し、ラッチ受け箱の内幅より小さい箱状のスライド体を偏心板に接続することによって、ドライバで偏心板を回転させることにより、スライド体をプレート受け箱上で幅方向にスライド移動させることができる。ラッチの納まりを簡便かつ容易に調整することができる。」(5頁5〜16行)、 「この考案のラッチ受座においては、ラッチ案内用の開口部(1)を有するラッチ受けプレート(2)と、接合部(3)を上端縁部から長さ方向に延設したラッチ受け箱(4)との間に、ネジ溝(5)を設けた円形の突起部(6)を有する回転自在な偏心板(7)と、この偏心板(7)の円形突起部(6)に対応する開口部(8)を底部中央部に有し、スライド片(9)を上部端縁部より幅方向に延設した箱状のスライド体(10)とを介在させる。このスライド体(10)の外幅(l)はラッチ受け箱(4)の内幅(m)より小さくする。また、偏心板(7)の外径(R)は、ラッチ受け箱(4)の内幅(m)と略同一させ、かつ、第2図に示したように、偏心板(7)本体の中心(11)と円形突起部(6)の中心(12)との間に偏心(x)を設ける。このような偏心板(7)をラッチ受け箱(4)の底部に配置し、上記したスライド体(10)を、その開口部(8)に偏心板(7)の円形突起部(6)を一致させて接続する。 こうすることで、後述するようなスライド体(10)のラッチ受け箱(4)上での幅方向のスライド移動が可能となる。・・・一方、上記したスライド体(10)には、その上端縁部から幅方向にスライド片(9)を延設しているため、そのようなスライド移動時に、ラッチ受け箱(4)から脱落することはない。しかも、ラッチ受け箱(4)に偏心板(7)およびスライド体(10)を装入した後に、スライド体(10)が移動できる程度にラッチ受けプレート(2)をラッチ受け箱(4)に固定するため、スライド体(10)の安定なスライド移動が得られる。ラッチ受けプレート(2)とラッチ受け箱(4)との固定方式については特に制限はないが、たとえば第1図に示したように、ラッチ受けプレート(2)に設けたドア枠部への固定用ネジ穴(13)近傍下部に、突片(14)を配設し、これをラッチ受け箱(4)の接合部(3)に設けたネジ穴(15)に挿入し、かしめて固定することができる。このようにすると、ラッチ受けプレート(2)のラッチ受け箱(4)への取付けと取外しを容易とすることができる。 たとえば以上のような構造および構成を有するラッチ受座のスライド体(10)を幅方向にスライド移動させる場合には、第3図に例示したように、ドライバ(16)をラッチ受けプレート(2)の開口部(1)から挿入し、その先端部を偏心板(7)の円形突起部(6)に設けたネジ溝(5)に一致させ、回転する。すると、スライド体(10)が幅方向にスライド移動する。」(6頁2行〜8頁16行)、 「偏心板(7)を第3図に示したようにドライバ(16)を用いて矢印方向に回転させると、第2図に示したように、円形突起部(6)の中心(12)と偏心板(7)本体の中心(11)との間には偏心(x)を設けているために、円形突起部(6)の中心(12)がラッチ受け箱(4)の幅方向にスライド移動する。この円形突起部(6)の中心(12)のスライド移動により、スライド体(10)が幅方向にスライド移動する。」(9頁8〜19行)及び 「このようにして、ドア施工による建てつけ不良が発生し、ラッチとラッチ受けプレート(2)の納まりが悪い場合には、スライド体(10)を幅方向にスライド移動させることで、ラッチの納まり具合いを調整することができる。従来のラッチ受座の位置変更によるラッチ受けプレート(2)のドア枠部からの飛び出しや、切欠部の露出を防止することができる。また、切欠部を拡大する必要もない。ドライバ1本で簡便かつ容易にラッチの納まりを調整することができる。ラッチ調整の作業手間が著しく軽減される。」(10頁11行〜11頁1行)と記載され、 第1及び3図には、「ラッチ受け箱(4)は内方に凹入部を有し、スライド体(10)がこの凹入部に嵌め込まれており、偏心板(7)の円形突起部(6)はスライド体(10)の底板に設けた開口部(8)を貫通し、内方方向と平行に配されていて表面開放側に露出しており、また、スライド体(10)には前面開口縁から突出するスライド片(9)を有し、スライド体(10)の前面開口と合致する開口部(1)を有するラッチ受けプレート(2)とラッチ受け箱(4)により、スライド体(10)のスライド片(9)を挾圧し押え込む構造。」が記載されている。 以上の明細書及び図面の記載によれば、引用例1には、 「内方に凹入部を有するラッチ受け箱(4)と、前記ラッチ受け箱(4)の凹入部に嵌め込まれていてラッチ受け箱(4)の凹入部内でスライド可能であるスライド体(10)と、前記ラッチ受け箱(4)と前記スライド体(10)の双方に接触する円形突起部(6)を有する回転自在な偏心板(7)を備え、該偏心板(7)の回動に伴ってスライド体(10)が移動されるラッチ受座であって、前記偏心板(7)の円形突起部(6)は内方方向と平行に配されていて表面開放側に露出すると共にドライバーのネジ溝(5)が形成されており、 (イ)スライド体(10)は底板に開口部(8)が設けられ、偏心板(7)の円形突起部(6)はスライド体(10)の底板の開口部(8)と嵌合し、偏心板(7)は当該円形突起部(6)の回転により回動すると共に、当該円形突起部(6)の中心がスライド移動し、スライド体(10)がスライド移動すること、 (ロ)スライド体(10)は開口縁から突出するスライド片(9)を有し、スライド体(10)の前面開口と合致する開口部(1)を有するラッチ受けプレート(2)とラッチ受け箱(4)により、スライド体(10)のスライド片(9)を挾圧し押え込むようにしている、 ラッチ受座。」という発明が記載されていると認められる。 4.対比・判断 本願発明と引用例1記載の発明とを比較すると、 引用例1記載の発明の「ラッチ受け箱(4)」、「スライド体(10)」、「偏心板(7)」、「ラッチ受座」、「円形突起部(6)」は、それぞれ本願発明の「取付けボックス」、「スライドボックス」、「カム」、「受金具」、「回動軸」に相当しているから、両者は、 「内方に凹入部を有する取付けボックスと、前記取付けボックスの凹入部に嵌め込まれていて取付けボックスの凹入部内でスライド可能であるスライドボックスと、前記取付けボックスと前記スライドボックスの双方に接触するカムを備え、該カムの回動に伴ってスライドボックスが移動される受金具であって、前記カムの回動軸は内方方向と平行に配されていて表面開放側に露出すると共にドライバーの係合部が形成されている受金具。」である点で一致し、 ドライバーの係合部として、本願発明は、回動軸に係合頭部を形成しているのに対して、引用例1記載の発明は、回動軸にネジ溝を形成している点で相違している。 上記相違点を検討すると、本願出願前、ドライバーにより回動操作されるネジとして、回動軸にドライバーの係合頭部を有するものが普通に知られており、ドライバーの係合部として、引用例1記載の発明のものに代え本願発明の回動軸に係合頭部を形成した点により、作用効果において格別の差異が認められず、当業者であれば、必要に応じて上記普通に知られたドライバーにより回動されるネジ形状から容易に設計変更できることにすぎない。 そして、本願発明の効果も、引用例1記載の発明から予測できる程度のものであって、格別のものがあるとは認められない。 よって、本願発明は、引用例1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび したがって、本願発明は、上記引用例1記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-05-07 |
結審通知日 | 2002-05-14 |
審決日 | 2002-05-28 |
出願番号 | 特願平11-32242 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 辻野 安人 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 中田 誠 |
発明の名称 | 受金具 |
代理人 | 藤田 隆 |