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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1068648
審判番号 不服2001-12642  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-06-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-19 
確定日 2002-11-28 
事件の表示 平成10年特許願第272682号「無線機」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 6月 8日出願公開、特開平11-154887]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1,手続の経緯、本件発明
本願は、平成6年5月6日に出願した特願平6-94127号(以下、原出願という。)の一部を平成10年9月28日に新たな特許出願として出願したものであって、請求項1乃至9に係るそれぞれの発明は、平成13年5月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】発振器の出力を第1の分周器で分周し送信部の変調器へ供給する局部信号とし、第2の分周器で分周し受信部の混合器へ供給する局部信号とする無線機において、
前記第1の分周器は、送信時には分周動作させ、受信時には分周動作を停止することを特徴とする無線機。
【請求項2】発振器の出力を第1の分周器で分周し送信部の変調器へ供給する局部信号とし、第2の分周器で分周し受信部の混合器へ供給する局部信号とする無線機において、
送信時には前記第1の分周器は動作状態であり、
受信時には前記第1の分周器は非動作状態で、かつ、前記第2の分周器は動作状態であることを特徴とする無線機。
【請求項3】発振器の出力を第1の分周器で分周し、逓倍器で逓倍し送信部の変調器へ供給する局部信号とし、この発振器からの経路の途中にバッファ増幅器を介して変調器に入力する無線機において、
受信時には前記第1の分周器を非動作状態にする他、バッファ増幅器、逓倍器または変調器のうち、1または2以上の動作を停止することを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載の無線機。
【請求項4】前記変調器は直交変調器であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の無線機。
【請求項5】発振器と、
分周器と、
前記分周器の分周率の逆数とは異なる逓倍率を有する逓倍器と、
変調器とを含んで構成され、
前記分周器は、送信時には動作され、受信時には動作停止されることを特徴とする無線機。
【請求項6】発振器と、
前記発振器の発振出力を分周する分周器と、
前記分周器の分周率の逆数とは異なる逓倍率を有し、前記分周器の分周出力を前記逓倍率で逓倍する逓倍器と、
前記逓倍器の逓倍出力が局部信号として供給される変調器とを含んで構成されることを特徴とする無線機。
【請求項7】前記変調器は、直交変調器であることを特徴とする請求項5〜6の何れかに記載の無線機。
【請求項8】前記発振器と前記分周器との間に、バッファを更に具備することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の無線機。
【請求項9】前記発振器の発振出力をL分周(Lは2以上の整数)する第2の分周器を更に具備することを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の無線機。」
なお、平成13年8月17日付けの手続補正は、補正却下の決定がなされている。
2.出願分割の適否
本件出願が特許法第44条の規定を満たしているか否かを以下検討する。
(a)本件の請求項3に「この発振器からの経路の途中にバッファ増幅器を介して変調器に入力する」と記載されているところ、「発振器からの経路の途中」とは、発振器から変調器に至るまでの経路の途中のことであるから、発振器と第1の分周器との間のほか、第1の分周器と逓倍器との間あるいは逓倍器と変調器との間のいずれかに、バッファ増幅器が配置されることが想定される内容となっているが、第1の分周器と逓倍器との間にバッファ増幅器を配置すること、あるいは、逓倍器と変調器との間にバッファ増幅器を配置することは、原出願の出願当初の明細書又は図面には記載されていない。
(b)本件の請求項5は、発振器、分周器、逓倍器、変調器の相互の接続関係に関して特段の限定がないから、請求項5は、発振器の出力を変調器の入力とし、変調器の出力を逓倍器の入力とし、逓倍器の出力を分周器の入力とした無線機も想定される内容であるが、かかる無線機に関しては、原出願の出願当初の明細書又は図面には記載がない。
(c)原出願の請求項1に係る発明は、原出願の明細書の請求項1(以下、原請求項1という。)に記載された次のとおりのものである。
「変調器を有する送信部と受信部とにより構成される無線機であって、前記変調器に入力させる局部信号の局部周波数のN/M(N,Mは互いに相違しかつ共に2以上の整数)倍である発振周波数をもつ発振信号を発振する発振器と、該発振信号の周波数をN分周して、N分周した信号を出力するN分周器と、該分周した信号の周波数をM逓倍し、M逓倍した信号を出力するM逓倍器と、前記発振信号をL(Lは2以上の整数)分周して、L分周した信号を出力するL分周器とを備え、前記M逓倍した信号を前記局部信号として前記変調器へ注入するようにしたと共に、前記L分周した信号を前記無線機の受信部の第2局部信号として用いるように構成した無線機において、N分周器は送信時に動作状態におかれ、受信時に非動作状態におかれることを特徴とする無線機。」
原請求項1に係る発明の「変調器に入力させる局部信号の局部周波数のN/M(N,Mは互いに相違しかつ共に2以上の整数)倍である発振周波数をもつ発振信号を発振する発振器」、「N分周器」、「L分周器」は、本件の請求項1に係る発明の「発振器」、「第1の分周器」、「第2の分周器」に相当するから、原請求項1に係る発明と本件の請求項1に係る発明とは、次の点で相違し、その余では一致する。
原請求項1に係る発明が「M逓倍器」を備えるとするのに対し、本件の請求項1に係る発明は、逓倍器を備えることに言及していない点
しかるに、本件の請求項1に係る発明が逓倍器を備えることに言及していないとしても、本件の明細書の発明の詳細な説明の欄及び図面の記載から明らかなように、本件の請求項1に係る発明を実施するためには逓倍器を備える必要があるから、本件の請求項1に係る発明が逓倍器を備えることに言及していなくとも、そのことは原請求項1に係る発明との実質的差異にはあたらない。
したがって、本件の請求項1に係る発明と原請求項1に係る発明とは、実質的に同一である。
以上のとおりであるから、その余の点を検討するまでもなく、本件出願は適法になされた分割出願であるとはいえない。
よって、本件出願は、出願日の遡及が認めらず、本件出願の出願日は、平成10年9月28日である。
3.刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-303059号(以下、刊行物1という。)には、発振器の出力をバッファ増幅器を介して第1の分周器に入力して分周し、その分周器の出力を逓倍器で逓倍して送信部の変調器へ供給する局部信号とし、また、発振器の出力をバッファ増幅器を介して第2の分周器に入力して分周し、その分周出力を受信部の混合器へ供給する局部信号とする無線機において、受信時には前記第1の分周器を非動作状態にする他、逓倍器または変調器のうち、1または2以上の動作を停止するようにした無線機の発明が記載されている。
同じく、原査定において周知技術として引用された特開平5-206917号公報(以下、刊行物2という。)には、「【0001】【産業上の利用分野】本発明はデジタル無線電話機に適用して好適な時分割二重(TDD:タイム・ディビジョン・デュプレクス)方式又は時分割多元接続(TDMA:タイム・ディビジョン・マルチプル・アクセス)/時分割二重方式の送受信装置に関する。」、「【0005】【発明が解決しようとする課題】しかし、図3に示した従来の送受信装置には次のような欠点がある。即ち、送信系の直交変調器28に供給される搬送波信号の周波数FLは受信系の第1中間周波信号のFi1と等しいため、そのレベルを余り高くすることはできず、混合器31から生じるFO±nFLの周波数成分のスプリアスを除去するためのバンドパスフィルタ32の負担が大きく成る。」、「【0006】又、混合器31から生じるFO±FLの周波数成分のスプリアスも殆ど無視し得る程度に小さくすることはできないので、同一の第1中間周波数の他の送受信機がこのスプリアスを受信すると、その混合器5で(FO+FL)-FO、FO-(FO-FL)からFL=Fi1の周波数成分が発生してスプリアス妨害を与える可能性が高く成る。」、「【0007】かかる点に鑑み、本発明は、送信系でのスプリアス除去フィルタの要求性能が軽減され、近接する他局への妨害を除去し、受信時に送信系からの妨害を排除することのできる時分割二重方式又は時分割多元接続/時分割二重方式の送受信装置を提供しようとするものである。」、「【0009】【課題を解決するための手段及び作用】第1の本発明は、時分割二重方式又は時分割多元接続/時分割二重方式の送受信装置において、ベースバンド信号が供給される送信用直交変調器18と、チャンネル選択用周波数シンセサイザ11と、チャンネル選択用周波数シンセサイザ11からの局部発振信号が供給される分周及び逓倍回路15、16とを設ける。そして、分周及び逓倍回路15、16から得た搬送波信号を送信用直交変調器18に供給するようにすると共に、分周及び逓倍回路15、16を構成する分周器15は、送信時のみ動作状態にされて成るものである。」、「【0010】第に本発明は、時分割二重方式又は時分割多元接続/時分割二重方式の送受信装置において、ベースバンド信号が供給される送信用直交変調器18と、受信用混合器5と、第1のチャンネル選択用周波数シンセサイザ11と、その第1のチャンネル選択用周波数シンセサイザ11からの局部発振信号が供給されて、その周波数がM/N倍(但し、Mは逓倍比、1/Nは分周比)される分周及び逓倍回路15、16と、周波数が(1-M/N)△F(但し、△Fはチャンネル間隔)ステップで可変される第2のチャンネル選択用周波数シンセサイザ12とを設ける。そして、分周及び逓倍回路15、16から得た搬送波信号を送信用直交変調器18に供給する。第1及び第2のチャンネル選択用周波数シンセサイザ11、12からの各局部発振信号を混合して受信用混合器5に供給する。分周及び逓倍回路15、16を構成する分周器15は、送信時のみ動作状態にされて成るものである。」と記載されているから、上記刊行物1には、少なくとも、次の発明が記載されている。
「時分割二重方式又は時分割多元接続/時分割二重方式の送受信装置において、直交変調器に入力させる局部信号の局部周波数のN/M倍である発振周波数をもつ発振信号を発振する発振器と、該発振信号の周波数をN分周して、N分周した信号を出力するN分周器と、該分周した信号の周波数をM逓倍し、M逓倍した信号を出力するM逓倍器と、前記M週倍した信号を前記局部信号として前記変調器へ注入するようにすると共に、前記発振信号を前記無線機の受信部の第2局部信号として用いるように構成した無線機において、N分周器は送信時に動作状態におかれ、受信時に非動作状態におかれる無線機」
4,対比、判断
本件の請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、両者に、格別な差異はない。
したがって、本件発明は、少なくとも、上記刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明と上記刊行物2記載の発明とを対比すると、次の点で相違し、その余では一致する。
本件発明においては、発振器の出力を第2の分周器で分周し受信部の混合器へ供給するとしているのに対し、上記刊行物2記載の発明においては、そのようになっていない点
しかるに、上記刊行物2には、発振器の出力を無線機の受信部の第2局部信号として用いるという技術思想を開示されているのであるから、第2の局部信号の周波数と受信部の混合器が必要とする周波数とが異なるのであれば、第2の局部信号の周波数を分周して受信部の混合器が必要な周波数にするとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
したがって、本件発明は、上記刊行物2記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2002-09-25 
結審通知日 2002-10-01 
審決日 2002-10-17 
出願番号 特願平10-272682
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江口 能弘  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 吉見 信明
橋本 正弘
発明の名称 無線機  
代理人 京本 直樹  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  

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