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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1077398 |
審判番号 | 不服2002-13901 |
総通号数 | 43 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-01-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-24 |
確定日 | 2003-05-21 |
事件の表示 | 特願2000-137527「無線通信装置」拒絶査定に対する審判事件[平成13年 1月19日出願公開、特開2001- 16306]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年5月10日に出願したものであって、平成14年6月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年7月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年8月23日付けで手続補正がなされたものである。 2.出願分割の適否 本件出願は、特願平6-106537号(以下、原出願という。)の一部を新たな特許出願(特願2000ー137527号)として出願したものであるが、本件出願の願書に添付された明細書の請求項1に記載された「該端末に設けられ、音声信号を入力する音声入力部」及び「該端末に設けられ、音声信号を出力する音声出力部」との構成要件は、原出願の出願当初の明細書及び図面には記載されておらず、かつ、それらの記載から自明の事項でもない。 したがって、本件出願が特許法第44条第1項の規定を満たさないことは明らかである。 よって、本件出願においては、出願日の遡及は認められず、したがって、本件出願の出願日は、平成12年5月10日である。 3.平成14年8月23日付けの手続補正についての補正却下の決定 (補正の内容) 請求人は、平成14年8月23日付けで手続補正書(以下、本件手続補正書という。)を提出し、特許請求の範囲を次のとおりに補正している。 「【請求項1】パーソナルコンピュータメモリカード国際協会(PCMCIA)規格に準拠したコネクタと物理的形状を備えると共に端末装置に挿入される第1の筐体と、該第1の筐体に対して折り曲げ可能である第2の筐体とから構成され、端末装置に対して挿抜自在な筐体と、 該端末に設けられ、音声信号を入力する音声入力部と、 該端末に設けられ、音声信号を出力する音声出力部と、 該音声信号および該端末装置に対するデータの変復調を行う変復調部と、 該第2の筐体に設けられ、該端末装置への挿入時に折り曲げられた該第2の筐体の折り曲げ角度の延長線上に突出するアンテナと、 を有することを特徴とする無線通信装置。 【請求項2】前記音声入力部と前記音声出力部と前記変復調部に電力を供給する二次電池を有し、前記端末装置に挿入されることで、該二次電池は前記コネクタを介して該端末装置が有する電源から充電されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。 【請求項3】通信装置の属性情報と前記端末装置のデータに対するデータ通信に必要な情報を記憶した記憶部を有することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。」 (検討) 上記補正は、(平成14年2月4日付けの手続補正書により補正された)特許請求の請求の範囲に記載された請求項を削除するものであるから、その補正は、特許法第17条の2第4項第1号を満たしている。 また、請求項1に「パーソナルコンピュータメモリカード国際協会(PCMCIA)規格に準拠したコネクタと物理的形状を備える」との要件を付加しているが、これは構成要件である筐体を限定的に減縮するものであるから、その補正は、特許法第17条の2第4項第2号の規定を満たしている。 次に、上記した限定的減縮に係る補正が、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定を満たすかどうかについて検討する。 原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-140895号公報(以下、刊行物1という。)には、無線送受信機能を備えたICカードに関する発明が記載されており、「本発明のICカードの具体的形状としては、例えば、折り曲げ自在に連結された2つの部分からなり、該折り曲げ部分に、送受信用のアンテナが配置され、該2つの部分の一方に、マイクが配置され、もう一方に、スピーカが配置され、該2つの部分の両方に分散してまたはいずれか一方に集中して、キーパッドおよびディスプレイが配置されている構造であるようにすることができる。・・・。いずれも、情報処理機器と接続するための端子が配置されていることが好ましく、」(第4頁左下欄第11行〜右下欄第4行。・・・は文章の省略箇所を示す。)、「また、本発明のICカードを用いて無線通信システムを形成することができる。・・・。また、第3の例としては、情報処理機器に接続されて用いられ、該情報処理機器との間でデータを入出力でき、かつ、無線でデータおよび音声を送受信できるICカードと、構内交換機に接続された1つ以上の無線送受信装置とを備え、無線通信システムを形成することができる。この場合、上記無線送受信装置は、上記構内交換機との間で回線を捕捉する機能を有するようにし、上記ICカードは、情報処理機器にされ、上記無線送受信装置から受信したデータを該情報処理機器に出力し、該情報処理機器から入力したデータを上記無線送受信装置に送信する無線モデム機能と、上記無線送受信装置から受信した音声を出力し、入力した音声を上記無線送受信装置に送信する無線電話機能とを有するようにすることができる。」(第4頁右下欄第7行〜第5頁右上欄第7行。・・・は文章の省略箇所を示す。)、「第1図において、110は対ホスト入出力制御部、120はCPU、130はデータバッファ、140はRAM、150は対モデム入出力制御部、160はモデム、170は無線送受信装置、180は表示装置、190はキーパッドである。」(第7頁右上欄第6〜10行)、「キーパッド190は、・・・、本ICカードがホストに接続されていないときの無線電話用ボタンになる。」(第7頁右下欄第8〜10行)、「第2図に示すように、本ICカードは、ホストのICカードインタフェース(I/F)200に、第1図の対ホスト入出力制御部110を接続する。」(第8頁左上欄第8〜10行)、「本ICカードは、CPU120の制御の基に、データバッファ130に記憶されたパラレルデータを、対モデム入出力制御部150により、シリアルデータに変換し、モデム160を介して、無線送受信装置170に出力し、ここから、無線電波として送信する。また、無線電波として受信したデータを、逆のルートをたどって、データバッファ130に記憶する。このようにして、本ICカードは、無線でデータを送受信する。また、キーパッド190から入力された電話番号やマイクから入力された音声を、無線送受信装置170から無線電波として送信し、また、無線電波として受信した音声を、スピーカに送る。このようにして、本ICカードは、無線で音声を送受信する。すなわち、無線電話として動作する。」(第8頁右上欄第14行〜左下欄第10行)、「第3A図は、本ICカードを2つ折り構造とした例を示している。本ICカードは・・・、本ICカードをホストに接続したときに、キーパッドとイヤースピーカとが外部に出る構造となっている。」(第8頁右下欄第4〜12行。・・・は文章の省略箇所を示す。)、「第3A図および第3B図は、ほんの一例であって、例えば、対ホスト入出力端子は、裏側の面に備えても良い。」(第8頁右下欄第20行〜第9頁左上欄第2行)と説明されている。 (対比) 平成14年8月23日付けで手続補正された請求項1に係る発明(以下、本件補正発明という。)と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、 (a)上記刊行物1記載の発明のICカードは、折り曲げ自在に連結された2つの部分からなり、当該ICカードをホスト(情報処理機器)に接続したときに、一方の部分が外部に出る構造となっているとされているから、2つの部分の一方はホスト(情報処理機器)に挿入されるということになる。 したがって、上記刊行物1記載の発明が、折り曲げ自在に連結された2つの部分とからなるICカードを有する点は、本件補正発明が、端末装置に挿入される第1の筐体と、該第1の筐体に対して折り曲げ可能である第2の筐体とから構成され、該端末装置に対して挿抜自在な筐体を有するとする点に相当する。 (b)上記刊行物1記載の発明において、音声信号は無線送受信装置により無線にて送受されているところ、当該音声信号は無線送受信装置によって変調されて送信され、また、受信した後に復調されているとするのが自然であり、また、普通に行われていることである。そして、上記刊行物1記載の発明は、データを変復調するモデムも備えている。 してみると、これらの点は、本件補正発明が、音声信号および端末装置に対するデータの変復調を行う変復調部を備えるとする点と実質的差異はない。 以上(a)、(b)のとおりであるから、本件補正発明と上記刊行物1記載の発明とは、次の点で相違し、その余では一致する。 (i)本件補正発明が、パーソナルコンピュータメモリカード国際協会(PCMCIA)規格に準拠したコネクタと物理形状を備えるとしているのに対し、上記刊行物1記載の発明は、対ホスト入出力端子を備えるとしている点 (ii)本件補正発明が、端末に音声信号を入力する音声入力部と音声信号を出力する音声出力部を設けるとしているのに対し、上記刊行物1にはその点についての記載がない点 (iii)本件補正発明が、第2の筐体に設けられ、該端末装置への挿入時に折り曲げられた該第2の筐体の折り曲げ角度の延長線上に突出するアンテナを有するとしているに対し、上記刊行物1記載のアンテナはそのようになっていない点 (相違点についての判断) そこで、上記相違点(i)〜(iii)について検討すると、パーソナルコンピュータメモリカード国際協会(PCMCIA)規格に準拠したコネクタと物理形状といったものは、本件出願前普通に知られたものである(必要ならば、例えば、特開平6-102967号公報を参照されたい。)から、上記刊行物1記載の発明において、対ホスト入出力端子に代えて、PCMCIA規格に準拠したコネクタと物理形状と用いるとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 また、端末に音声信号を入力する音声入力部と音声信号を出力する音声出力部を設けるとすることは、本件出願前普通に知られたことである(必要ならば、例えば、特開平4-235440号公報、特開平6-52115号公報を参照されたい。)であるから、上記刊行物1記載のホスト(情報処理機器)に音声入力部及び音声出力部を設けるとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 さらに、アンテナを折り曲げられた第2の筐体の折り曲げ角度の延長線上に突出して設けるとすることは、本件出願前普通に知られたことである(必要ならば、例えば、特開平5-336023号公報を参照されたい。)から、上記刊行物1記載の発明において、アンテナをホスト(情報処理機器)に挿入される時に露出する一方の部分の折り曲げ角度の延長線上に突出して設けるとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 してみれば、本件補正発明は、上記刊行物1記載の発明に基づき、周知技術を参酌して、当業者が容易に発明できたものである。 (結論) したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであって、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、本件手続補正書による補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下する。 4.本件発明 (本件発明の内容) 本件手続補正書により補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至6に係る各発明は、平成14年2月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は次のとおりのものである。 「端末装置に挿入される第1の筐体と、該第1の筐体に対して折り曲げ可能である第2の筐体とから構成され、端末装置に対して挿抜自在な筐体と、 該端末に設けられ、音声信号を入力する音声入力部と、 該端末に設けられ、音声信号を出力する音声出力部と、 該音声信号および該端末装置に対するデータの変復調を行う変復調部と、 該第2の筐体に設けられ、該端末装置への挿入時に折り曲げられた該第2の筐体の折り曲げ角度の延長線上に突出するアンテナと、 を有することを特徴とする無線通信装置。」 (引用刊行物) 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1記載の発明については、前記3.に示したものと同じである。 (対比) 本件発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、 (a)上記刊行物1記載の発明のICカードは、折り曲げ自在に連結された2つの部分からなり、当該ICカードをホスト(情報処理機器)に接続したときに、一方の部分が外部に出る構造となっているとされているから、2つの部分の一方はホスト(情報処理機器)に挿入されるということになる。 したがって、上記刊行物1記載の発明が、折り曲げ自在に連結された2つの部分とからなるICカードを有する点は、本件発明が、端末装置に挿入される第1の筐体と、該第1の筐体に対して折り曲げ可能である第2の筐体とから構成され、該端末装置に対して挿抜自在な筐体を有するとする点に相当する。 (b)上記刊行物1記載の発明において、音声信号は無線送受信装置により無線にて送受されているところ、当該音声信号は無線送受信装置によって変調されて送信され、また、受信した後に復調されているとするのが自然であり、また、普通に行われていることである。そして、上記刊行物1記載の発明は、データを変復調するモデムも備えている。 してみると、これらの点は、本件発明が、音声信号および端末装置に対するデータの変復調を行う変復調部を備えるとする点と実質的差異はない。 以上(a)、(b)のとおりであるから、本件発明と上記刊行物1記載の発明とは、次の点で相違し、その余では一致する。 (i)本件発明が、端末に音声信号を入力する音声入力部と音声信号を出力する音声出力部を設けるとしているのに対し、上記刊行物1にはその点についての記載がない点 (ii)本件発明が、第2の筐体に設けられ、該端末装置への挿入時に折り曲げられた該第2の筐体の折り曲げ角度の延長線上に突出するアンテナを有するとしているに対し、上記刊行物1記載のアンテナはそのようになっていない点 (相違点についての判断) そこで、上記相違点(i)〜(ii)について検討すると、端末に音声信号を入力する音声入力部と音声信号を出力する音声出力部を設けるとすることは、本件出願前普通に知られたことである(必要ならば、例えば、特開平4-235440号公報、特開平6-52115号公報を参照されたい。)であるから、上記刊行物1記載のホスト(情報処理機器)に音声入力部及び音声出力部を設けるとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 また、アンテナを折り曲げられた第2の筐体の折り曲げ角度の延長線上に突出して設けるとすることは、本件出願前普通に知られたことである(必要ならば、例えば、特開平5-336023号公報を参照されたい。)から、上記刊行物1記載の発明において、アンテナをホスト(情報処理機器)に挿入される時に露出する一方の部分の折り曲げ角度の延長線上に突出して設けるとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 してみれば、本件発明は、上記刊行物1記載の発明に基づき、周知技術を参酌して、当業者が容易に発明できたものである。 (まとめ) 以上のとおりであるから、本件発明は、上記刊行物1記載の発明に基き、周知技術を参酌して、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-03-06 |
結審通知日 | 2003-03-11 |
審決日 | 2003-03-28 |
出願番号 | 特願2000-137527(P2000-137527) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 健 |
特許庁審判長 |
川名 幹夫 |
特許庁審判官 |
新井 則和 前田 典之 |
発明の名称 | 無線通信装置 |
代理人 | 遠山 勉 |
代理人 | 松倉 秀実 |