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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H04M 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H04M 審判 全部申し立て 1項2号公然実施 H04M |
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管理番号 | 1096336 |
異議申立番号 | 異議2002-72274 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-11-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-09-17 |
確定日 | 2004-05-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3266888号「携帯電話用貼付シート材及びこれを用いた携帯電話」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3266888号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第3266888号の請求項1、2に係る特許は、平成12年5月19日に出願され、平成14年1月11日にその特許権の設定登録がなされ、その後、株式会社サクセスオリエントワークスより特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年5月2日に訂正請求がなされ、平成15年6月3日付けで訂正請求が認められた上で請求項1、2に係る特許を取り消す旨の決定(以下、「取消決定」という。)がなされたところ、本件の請求人はこれを不服として東京高等裁判所に当該決定の取消を求める訴え(平成15年(行ヶ)321号)を平成15年7月19日に提起するとともに、平成15年12月25日に訂正の審判(以下、「訂正審判」という。)を請求し、平成16年2月10日付けで訂正を認める旨の審決がなされ、当該審決が確定し、平成16年3月15日に東京高等裁判所において、前記取消決定を取り消す旨の判決があり確定した。 第2.本件特許発明 本件特許発明は、平成16年2月10日付けの審決(訂正を認める旨の審決)が確定したので、訂正された特許明細書及び図面の記載からみて、本件特許の訂正後における請求項1、2に係る発明(以下、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1又は2に記載された次の事項により特定されるものである。 なお、前記訂正審判において、訂正を認める旨の審決が確定したので、平成15年5月2日付けの訂正請求は取り下げたものとして扱う。 「【請求項1】情報表示記号が付された操作ボタンを有する携帯電話の筐体表面に貼り付けて使用するための携帯電話用貼付シート材であって、樹脂材により形成された基材部分とこの基材部分の裏面側に設けられた接着層とを備えている携帯電話用貼付シート材において、 前記シート材は、前記筐体表面に貼り付けられると同時にその筐体表面に配設された前記操作ボタンを被覆できるように、その操作ボタンに対応する部分においても分断されることなく連続しており、 前記シート材表面には、乾燥後において豊富な柔軟性を示しかつ前記樹脂材に対して馴染みが良好でありしかも前記基材部分をはじめ前記接着層にまで含浸することで溶剤的な結合状態が生じるインクによるつなぎ層と、このつなぎ層の表面側に設けられたインクによる模様が施され、前記つなぎ層及び前記インクによる模様は、前記シート材が前記筐体表面に貼り付けられた後に前記操作ボタンに付された前記記号が外部より視認可能な程度の透過性を有するとともに、前記操作ボタンに対応する部分においても分断されることなく連続していることを特徴とする携帯電話用貼付シート材。 【請求項2】情報表示記号が付された操作ボタンが配設された筐体の表面に、請求項1に記載の携帯電話用貼付シート材が貼り付けられたことを特徴とする携帯電話。」 第3.特許異議申立ての概要 特許異議申立人サクセスオリエントワークスは、以下に示す甲第1号証の1ないし4の証拠を提出し、本件の請求項1、2に係る特許発明は、甲第1号証の1に記載された発明、及び甲第1号証の1ないし4で証明されて既に製造販売された発明と同一であり、少なくともこれらの発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項2号、同法第29条第1項3号、又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号の規定により取消すべきものである旨主張する。 甲第1号証の1 : 株式会社カーメイトの「CAR MATE カーメイト総合カタログ 2000新製品カタログVol.1」 甲第1号証の2 : 「カタログ公知日証明書」社団法人 日本デザイン保護協会の証明 甲第1号証の3 : 株式会社ヴィノ、1999(平成11年)12月20日発行の納入品名「HS91 カラーシートC 量試サンプル」の納入者控 甲第1号証の4 : 株式会社ヴィノ、1999(平成11年)12月20日発行の納入品名「HS92 カラーシートD 量試サンプル」の納入者控 第4.当審の判断 1.刊行物に記載された発明 甲第1号証の1の刊行物( 株式会社カーメイトの「CAR MATE カーメイト総合カタログ 2000新製品カタログVol.1」)(以下、単に「刊行物」という。)には、ドレスアップシート・カモフラージュ/BL HS91、ドレスアップシート・カモフラージュ/GN HS92、及びこれらのドレスアップシートを貼付けた携帯電話の図(写真)とともに、「手軽にケータイをカラーチェンジ!・ドライヤーであたためなくても簡単に貼ることができるドレスアップシートです。透明なシートなのでボタンの上から貼る事ができます。」(4頁3行ないし5行)の記載があり、これらの記載、及びこの分野の技術常識を考慮すれば、上記刊行物には、 「情報表示記号が付された操作ボタンを有する携帯電話の筐体表面に貼り付けて使用するための携帯電話用貼付シート材であって、樹脂材により形成された基材部分とこの基材部分の裏面側に設けられた接着層とを備えている携帯電話用貼付シート材において、前記シート材は、前記筐体表面に貼り付けられると同時にその筐体表面に配設された前記操作ボタンを被覆できるように、その操作ボタンに対応する部分においても分断されることなく連続しており、前記シート材表面にはインクによる模様が施され、この模様は、前記シート材が前記筐体表面に貼り付けられた後に前記操作ボタンに付された前記記号が外部より視認可能な程度の透過性を有するとともに、前記操作ボタンに対応する部分においても分断されることなく連続している携帯電話用貼付シート材。」の発明(以下、「刊行物に記載された発明A」という。)が開示されているものと認められる。 同じく、上記刊行物の記載、及びこの技術常識を考慮すれば、上記刊行物には、「情報表示記号が付された操作ボタンが配設された筐体の表面に、刊行物に記載された発明Aの携帯電話用貼付シート材が貼り付けられた携帯電話。」の発明(以下「刊行物に記載された発明B」という。)が開示されている。 2.刊行物の公知日について 当審の審尋に対する回答書に添付されて、異議申立人 株式会社サクセスオリエントワークスから次の、 a)社団法人日本デザイン保護協会発行の2003年1月7日付け「カタログの公知日証明書」、 b)日本デザイン保護協会のカタログ受け入れ番号、及びカタログ受入日が記載された株式会社カーメイトの「CAR MATE カーメイト総合カタログ 2000新製品カタログVol.1」の写し、 が提出され、そして、上記a)、b)の記載によれば、株式会社カーメイトが発行した「CAR MATE カーメイト総合カタログ 2000新製品カタログVol.1」は、西暦2000年2月18日に、社団法人日本デザイン保護協会に寄託番号000019が付されて寄託されたことが認められ、また、社団法人日本デザイン保護協会は、公益法人であって、カタログ等の公知日認定保管がその事業の1つであることを考慮すると、上記刊行物は、本件特許の出願日である平成12年5月19日(西暦2000年5月19日)前に公知であったといえる。 3.対比・判断 (1)本件特許発明1について 本件特許発明1と刊行物に記載された発明Aとを対比すると、本件特許発明1は、携帯電話用貼付シート材表面には、乾燥後において豊富な柔軟性を示しかつ樹脂材に対して馴染みが良好でありしかも基材部分をはじめ接着層にまで含浸することで溶剤的な結合状態が生じるインクによるつなぎ層と、このつなぎ層の表面側に設けられたインクによる模様が施され、前記つなぎ層及び前記インクによる模様は、前記シート材が筐体表面に貼り付けられた後に操作ボタンに付された記号が外部より視認可能な程度の透過性を有するのに対して、刊行物に記載された発明Aは、携帯電話用貼付シート材表面には、インクによる模様が施され、この模様は、前記シート材が筐体表面に貼り付けられた後に操作ボタンに付された記号が外部より視認可能な程度の透過性を有するものの、つなぎ層がない点で相違する。 そこで、この相違点について検討するに、乾燥後において豊富な柔軟性を示すインクは、本願特許明細書において「帝国インキ製造株式会社製の商品名「セリコールSP2100AUクリヤー(別名、セリコールVKTインキのスクリーン印刷用オーバーコートクリヤー)」、「帝国インキ製造株式会社製の商品名「セリコールEGスクリーンインキ(別名ポリエステル用グロスインキ)」、「株式会社セイコーアドバンス社製の商品名「SG700シリーズ」等のインクが挙げられているように公知であることは認められるものの、携帯電話用貼付シート材表面に、乾燥後において豊富な柔軟性を示しかつ樹脂材に対して馴染みが良好でありしかも基材部分をはじめ接着層にまで含浸することで溶剤的な結合状態が生じるインクによるつなぎ層を設けることが周知・慣用であるといえないから、本件特許発明1は、刊行物に記載された発明Aから当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2は、請求項1を引用する形式で記載された特許発明であって、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、刊行物に記載された発明Bから当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 4.まとめ したがって、本件特許の訂正後における請求項1、2に係る発明は、甲第1号証の1に記載された発明、及び甲第1号証の1ないし4で証明されて既に製造販売された発明と同一ではないから特許法第29条第1項2号、同法第29条第1項3号に該当する発明ではなく、また、これらの発明の基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。 第5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1、2に係る発明を取り消すことはできない。 また、他に特許を受けることができないとする理由を発見できない。 よって、結論のとおり審決する。 |
異議決定日 | 2003-06-03 |
出願番号 | 特願2000-148821(P2000-148821) |
審決分類 |
P
1
651・
112-
Y
(H04M)
P 1 651・ 121- Y (H04M) P 1 651・ 113- Y (H04M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮田 繁仁 |
特許庁審判長 |
佐藤 秀一 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 浜野 友茂 |
登録日 | 2002-01-11 |
登録番号 | 特許第3266888号(P3266888) |
権利者 | 株式会社ハセ・プロ |
発明の名称 | 携帯電話用貼付シート材及びこれを用いた携帯電話 |
代理人 | 永田 元昭 |
代理人 | 渡邊 隆文 |
代理人 | 喜多 秀樹 |
代理人 | 坂本 寛 |
代理人 | 永田 良昭 |