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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て 発明同一 H01L |
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管理番号 | 1117827 |
異議申立番号 | 異議2003-73852 |
総通号数 | 67 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-03-09 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-29 |
確定日 | 2005-03-22 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3468043号「積層圧電体トランス」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3468043号の請求項1、2、3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3468043号の請求項1ないし3に係る発明は、平成9年8月15日に特許出願され、平成15年9月5日にその特許の設定登録がなされ、その後、渡部佳代より平成15年12月29日付で特許異議の申立てがなされ、平成16年5月17日付で、特許異議申立証拠および理由補充書が提出され、平成16年8月26日付で取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年11月8日に訂正請求(平成17年1月21日請求取り下げ)がなされ、平成16年12月16日付で再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年1月21日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 (1-1)訂正事項a 特許請求の範囲を、以下のように訂正する。 「 【請求項1】 圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の外部電極がこのシートの積層体の端面に形成されている積層圧電体トランスにおいて、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、二次側の内部電極と接続されている外部電極および前記一次側の内部電極と接続されている2つの外部電極とが積層体の同じ1つの端面のみに形成されていることを特徴とする積層圧電体トランス。 【請求項2】 圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の外部電極がこのシートの積層体の端面に形成されている積層圧電体トランスにおいて、圧電体シート面の中央部に前記一次側の内部電極が形成され、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、二次側の内部電極と接続されている外部電極および前記一次側の内部電極と接続されている2つの外部電極とが積層体の同じ1つの端面のみに形成されていることを特徴とする積層圧電体トランス。 【請求項3】 圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の内部電極と接続されている外部電極がこのシートの積層体の1つの端面のみに形成されており、前記二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下としたことを特徴とする積層圧電体トランス。」 (1-2)訂正事項b 明細書第7段落を 「【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明の積層圧電体トランスは、圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の外部電極がこのシートの積層体の端面に形成されている積層圧電体トランスにおいて、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、二次側の内部電極と接続されている外部電極および前記一次側の内部電極と接続されている2つの外部電極とが積層体の同じ1つの端面のみに形成されていることを特徴とする。」 と訂正する。 (1-3)訂正事項c 明細書第8段落を 「【0008】 本発明の積層圧電体トランスは、圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の外部電極がこのシートの積層体の端面に形成されている積層圧電体トランスにおいて、圧電体シート面の中央部に前記一次側の内部電極が形成され、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、二次側の内部電極と接続されている外部電極および前記一次側の内部電極と接続されている2つの外部電極とが積層体の同じ1つの端面のみに形成されていることができる。」 と訂正する。 (1-4)訂正事項d 明細書第9段落を 「【0009】 本発明の積層圧電体トランスは、圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の内部電極と接続されている外部電極がこのシートの積層体の1つの端面のみに形成されており、前記二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下とすることが好ましい。」 と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (2-1) 訂正事項aについて 請求項1、2について、本願明細書第11段落の「二次側の内部電極の長さを1.0mm以下とすることが好ましい。・・・一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向の電極長さが1.0mm以下」の記載に基づいて、「二次側の内部電極が形成されており、」の後に、「当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、」と限定し、「外部電極の少なくとも一方および」の記載を「外部電極および」と限定し、また、第19段落の「外部電極44、45を一つの側端面のみに付けたので」の記載及び図4に基づき、「積層体の同じ端面に形成」を、「積層体の同じ1つの端面のみに形成」と限定し、 請求項3について、第7段落の「圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、二次側の内部電極と接続されている外部電極」の記載に基づいて、「圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、」の後に「圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、」を付加し、「二次側の外部電極」を、「二次側の内部電極と接続されている外部電極」と限定し、第11段落の「二次側の内部電極の長さを1.0mm以下とすることが好ましい。・・・一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向の電極長さが1.0mm以下」の記載に基づいて、「1つの端面のみに形成されていることを特徴とする積層圧電体トランス。」を、「1つの端面のみに形成されており、前記二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下としたことを特徴とする積層圧電体トランス。」と限定している。 したがって、上記訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (2-2) 訂正事項b、c、dについて 訂正事項b、c、dは、上記訂正事項aとの整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)申立理由の概要 申立人渡部佳代は、 国際公開第97/28568号パンフレット(1997)(異議申立人の提出した甲第3号証) 特開平8-306984号公報(異議申立人の提出した甲第4号証) 特開平8-187848号公報(異議申立人の提出した甲第2号証) 特願平8-13924号(特開平9-214012号公報、異議申立人の提出した甲第1号証) 特願平9-148232号(特開平10-84143号公報、異議申立人の提出した甲第5号証) を示し、本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、甲第1乃至4号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、また、請求項1、3に係る発明は甲第5号証に記載された発明と同一であるから特許法第29条の2の規定に該当し、特許を受けることができないので、特許を取り消すべきと主張している。 (2)取り消し理由 取り消し理由は、以下のとおりである。なお、異議申立人の提出した甲第1号証は、その公開日平成9年8月15日が、本願出願日平成9年8月15日と同じ日なので、特許法第29条の2を適用した。 「 理 由 1)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公告又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:国際公開第97/28568号パンフレット(1997)(異議申立人の提出した甲第3号証) 刊行物2:特開平8-306984号公報(異議申立人の提出した甲第4号証) 刊行物3:特開平8-187848号公報(異議申立人の提出した甲第2号証) 刊行物等4:特願平8-13924号(特開平9-214012号公報、異議申立人の提出した甲第1号証) 刊行物等5:特願平9-148232号(特開平10-84143号公報、異議申立人の提出した甲第5号証) ・請求項1、2について ・理由 1、2 ・刊行物 1 ・備考 刊行物1、第6図、第7図の実施例において、側端面に電極が形成され、中央部に入力電極(一次側に相当)が形成された発明が記載されている。 ・請求項1について ・理由 3 ・刊行物等 4 ・備考 請求項1に記載の発明は、刊行物等4の図1及びその説明箇所に記載された、側端面に電極が形成された発明と同一である。 ・請求項1、2、3について ・理由 2 ・刊行物 1、2、3 ・備考 刊行物3に記載の、一つの端面に電極を形成する発明を、刊行物1に記載の圧電トランスに適用することは容易である。 ・請求項1、3について ・理由 3 ・刊行物等 5 なお、本件請求項1、2、3に係る発明について、特許異議申立人が提出した特許異議申立書、及び、異議申立証拠および理由補充書の「3.申立ての理由」を参照されたい。」 (3)本件請求項1ないし3に係る発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし3に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定された以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の外部電極がこのシートの積層体の端面に形成されている積層圧電体トランスにおいて、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、二次側の内部電極と接続されている外部電極および前記一次側の内部電極と接続されている2つの外部電極とが積層体の同じ1つの端面のみに形成されていることを特徴とする積層圧電体トランス。 【請求項2】 圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の外部電極がこのシートの積層体の端面に形成されている積層圧電体トランスにおいて、圧電体シート面の中央部に前記一次側の内部電極が形成され、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、二次側の内部電極と接続されている外部電極および前記一次側の内部電極と接続されている2つの外部電極とが積層体の同じ1つの端面のみに形成されていることを特徴とする積層圧電体トランス。 【請求項3】 圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の内部電極と接続されている外部電極がこのシートの積層体の1つの端面のみに形成されており、前記二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下としたことを特徴とする積層圧電体トランス。」 (4)刊行物等 刊行物にはそれぞれ、以下のような発明が記載されている。 (4-1)刊行物1:国際公開第97/28568号パンフレット(1997)(異議申立人の提出した甲第3号証) 刊行物1には、第3図(a)、(b)、(c)および(d)、第5図(a)、(b)、および(c)、第6図(a)、(b)、(c)および(d)、第7図(a)、(b)、(c)および(d)において、圧電セラミックからなる矩形板23の幅方向で対向する両側面に側面電極28a、28b、29a、29bが形成された圧電トランスが記載されている。 (4-2)刊行物2:特開平8-306984号公報(異議申立人の提出した甲第4号証) 刊行物2には、「焼結体の長手方向側面に内部電極12と接続する外部電極13及び圧電トランスの出力部の表面電極14を形成し」(第14段落)た構成が開示されている。図1において、表面電極13、14は、焼結体の両側面に形成されている。 (4-3)刊行物3:特開平8-187848号公報(異議申立人の提出した甲第2号証) 刊行物3には、インクジェット式印字ヘッドに備えられた積層式圧電素子において、「内部電極42、44a〜44cと導通する外部負電極53及び外部正電極54a〜54cは、積層式圧電素子38の同じ側面に形成されているので、電極の取り出しが容易であり、駆動制御を行う電気回路との接続を一側面からのみで行えるためスペースをとらない」(第62段落)ことが記載されている。 (4-4) 刊行物等4:特願平8-13924号(特開平9-214012号公報、異議申立人の提出した甲第1号証) 刊行物等4には、「入力部である矩形板の半分の部分は、一層置きに側面で共通の外部電極に接続する銀-パラジウムの内部電極が・・・積層し、出力部である矩形板の残り半分の部分は、一層置きに側面で共通の外部電極に接続する銀-パラジウムの内部電極が・・・積層した」(第16段落)圧電トランスが、図1とともに記載されており、外部電極は、矩形板の対向する両側面に形成された圧電トランスが記載されている。 (4-5)刊行物等5:特願平9-148232号(特開平10-84143号公報、異議申立人の提出した甲第5号証) 刊行物等5には、 「 【請求項1】 厚み方向に分極されると共に1次側電極が形成された第1の領域と、長手方向に分極されると共に2次側電極が形成された第2の領域とを有し、複数の圧電素子が積層された圧電トランス素子であって、 前記1次側電極として、前記複数の圧電素子の層間に配置され、且つ前記第1の領域に内包された複数の第1内部電極と、 前記2次側電極として、前記複数の圧電素子の層間に配置され、且つ前記第2の領域に内包された複数の第2内部電極と、 前記圧電トランス素子の表面上に形成され、前記複数の第1内部電極に電圧を印加する第1外部電極と、 前記圧電トランス素子の表面上に形成され、前記複数の第2内部電極から、前記電圧の印加によって前記圧電トランス素子に発生した電圧を取り出す第2外部電極と、 を有することを特徴とする圧電トランス素子。 【請求項2】 前記第1及び第2の外部電極が、前記圧電トランス素子の同一平面上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の圧電トランス素子。」(請求項1、2) 「複数の内部電極1aは、層間接続導体8aによりそれぞれ接続されている。そして、接続導体8aは、第1の領域の上面方向に向かって延長されており、外部電極1に接続されている。」(第35段落)、 「当該素子の外周表面の同一面上に外部電極1、2、並びに3だけが露出している構造を実現することができる。」(第51段落)が、図6とともに記載されている。 (5)対比・判断 (5-1)特許法第29条第1項第3号について、 本件請求項1、2に係る発明と上記刊行物1に記載の発明とを対比する。 刊行物1に記載の圧電トランスは、幅方向で対向する側面に外部電極が形成されており、本件請求項1に記載の外部電極が同じ一つの端面のみに形成されているという構成要件を有していない。よって、請求項1に記載の発明は、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 請求項2に記載の発明についても同じ理由により、特許法第29条第1項第3号に該当しない。 (5-2)特許法第29条の2について、 本件請求項1に係る発明と上記刊行物等4に記載の発明とを対比する。 刊行物等4に記載の発明は、幅方向で対向する両側面に外部電極が形成されており、本件請求項1に記載の外部電極が同じ一つの端面のみには形成されているという構成要件を有していない。 よって、本件請求項1に係る発明と上記刊行物等4に記載の発明は同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反しない。 (5-3)特許法第29条の2について、 本件請求項1、3に係る発明と上記刊行物等5に記載の発明とを対比する。 刊行物等5に記載の発明では、圧電トランス素子の表面上に外部電極が形成されており、本件請求項1に記載の外部電極が端面に形成された発明と相違する。また、同じ理由により、本願請求項3に記載の発明とも同一でない。 よって、本件請求項1、3に係る発明と上記刊行物等5に記載の発明は同一ではなく、特許法第29条の2の規定に違反しない。 (5-4)特許法第29条第2項について、 本件請求項1に係る発明と上記刊行物1ないし3に記載の発明とを対比する。 本件請求項1に係る発明は、外部電極が同じ一つの端面のみに形成されているのに対し、刊行物1、2には、幅方向で対向する両側面に外部電極が形成された圧電トランスが記載されている。刊行物3に記載の発明は、プリンタ用のインクジェットの印字ヘッドに関するものであり、圧電トランスとは技術分野が相違し、圧電素子の構造・固定方法などが相違すると認められるので、刊行物3に記載の積層式圧電素子の外部負電極および外部正電極を刊行物1、2に記載の圧電トランスの発明に組み合わせる動機付けがなく、容易に想到しうるとも認められない。また、刊行物1ないし3に記載の発明には、請求項1に記載の発明の1.0mm以下の出力用の内部電極を形成する点の記載もない。よって、請求項1に記載の発明は、刊行物1ないし3に記載の発明から容易になしえたとは認められない。 また、上記と同じ理由により、請求項2、3に記載の発明が、引用例1ないし3に記載の発明から、容易になしうるとも認められない。 よって、請求項1ないし3に記載の発明は、特許法第29条第2項の規定に違反しない。 (5-5)対比のむすび よって、本件請求項1、2に係る発明は、刊行物1に記載された発明ではないので、許法第29条第1項第3号に該当しない。本件請求項1に係る発明は、刊行物等4に記載された発明と同一でなく、請求項1、3に記載の発明と刊行物等5に記載された発明とは同一でないので、特許法第29条の2に該当しない。 また、本件請求項1〜3に係る発明は、刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に成し得たものとは認められないので、特許法第29条第2項の規定に違反しない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 積層圧電体トランス (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の外部電極がこのシートの積層体の端面に形成されている積層圧電体トランスにおいて、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、二次側の内部電極と接続されている外部電極および前記一次側の内部電極と接続されている2つの外部電極とが積層体の同じ1つの端面のみに形成されていることを特徴とする積層圧電体トランス。 【請求項2】 圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の外部電極がこのシートの積層体の端面に形成されている積層圧電体トランスにおいて、圧電体シート面の中央部に前記一次側の内部電極が形成され、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、二次側の内部電極と接続されている外部電極および前記一次側の内部電極と接続されている2つの外部電極とが積層体の同じ1つの端面のみに形成されていることを特徴とする積層圧電体トランス。 【請求項3】 圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の内部電極と接続されている外部電極がこのシートの積層体の1つの端面のみに形成されており、前記二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下としたことを特徴とする積層圧電体トランス。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、圧電体シートのシート面に内部電極を付けたものを積層し一体化焼結して積層圧電体としたものの外面に一次電極と二次電極とを付けてトランスとした積層圧電体トランスに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 積層圧電体トランスは、巻線構造が不要でエネルギー密度も高いために小型化、薄型化が図られるという長所を持っているので、小型電子機器のトランスとして用いられている。特に、ノート型パソコンのようにディスプレイ装置、特に小型化の要求される機器において、そのバックライト用のトランスとして用いられている。 【0003】 この積層圧電体トランスとしては、図9に斜視図、図10に縦断面図、図11に平面断面図に示すようなものが用いられている。ここで9は積層圧電体トランスで、圧電体シート91を積層して圧着し焼結して一体化したものである。圧電体シート91のシート面の例えば中央にAg-Pdの内部電極92を印刷してある。この内部電極92は一層おきに一方の一次側の内部電極、他方の一次側の内部電極とする。積層圧電体トランス9の側端面に一次側の外部電極を設けておき、一方の側端面に設けられた一次側の外部電極94は一方の一次側の内部電極に接続されており、他方の側端面の一次側の外部電極95は他方の一次側の内部電極に接続されている。積層圧電体トランス9の長手方向両端面には二次側の外部電極96が設けられている。この積層圧電体トランスは予め内部電極間に高電圧を印加してこの部分を厚さ方向に分極し、また一次側内部電極と二次側電極との間にも高電圧を印加してこの部分を長さ方向に分極しておく。 【0004】 一次側の外部電極を介して、一次側の内部電極間に交流電圧を印加すると、内部電極間では分極方向に電界が加わり分極とは垂直方向に変位する圧電効果で長さ方向の縦振動が励振され、トランス全体が振動する。この機械的歪みによって一次側内部電極と二次側の外部電極の間に電位差が発生するので二次側の電極に電圧が取り出される。駆動周波数を積層圧電体トランスの共振周波数と等しくすれば非常に高い出力電圧が得られる。また、高電圧を入力し、低電圧を出力させる場合には、一次側と二次側を反対にすればよい。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 このような積層圧電体トランスを製造する場合、圧電体シートをドクターブレード法などで成形し、そのシート面に内部電極を印刷し、それを積層して圧着して一体とし、この積層体を焼成し、加工して必要な大きさの積層圧電体とした上で、外部電極を印刷することになる。外部電極は積層圧電体の4つの端面に印刷しているが、各面毎に外部電極をAg-Pdなどのペースト電極材料で印刷して、それを100℃よりも少し高い温度に加熱して乾燥するという処理が必要である。この処理を4面について行う必要があり、しかも外部電極を焼き付け固定するための加熱工程が入っているので、それを常温まで冷却しなければ次の面の印刷が行えないというものである。 【0006】 そこで、本発明では外部電極を一面あるいは二面に付けるだけでよく、外部電極の印刷時間および印刷作業を大幅に軽減でき、また別の観点からは、外部引出配線への接続を容易かつ確実にすることのできる積層圧電体トランスを提供することを目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明の積層圧電体トランスは、圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の外部電極がこのシートの積層体の端面に形成されている積層圧電体トランスにおいて、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、二次側の内部電極と接続されている外部電極および前記一次側の内部電極と接続されている2つの外部電極とが積層体の同じ1つの端面のみに形成されていることを特徴とする。 【0008】 本発明の積層圧電体トランスは、圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の外部電極がこのシートの積層体の端面に形成されている積層圧電体トランスにおいて、圧電体シート面の中央部に前記一次側の内部電極が形成され、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、当該二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下となし、二次側の内部電極と接続されている外部電極および前記一次側の内部電極と接続されている2つの外部電極とが積層体の同じ1つの端面のみに形成されていることができる。 【0009】 本発明の積層圧電体トランスは、圧電体シート面に一次側の内部電極が形成されており、圧電体シートの端部に近いシート面に二次側の内部電極が形成されており、一次側の内部電極と接続されている外部電極および二次側の内部電極と接続されている外部電極がこのシートの積層体の1つの端面のみに形成されており、前記二次側の内部電極の長さは、一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向に1.0mm以下とすることが好ましい。 【0010】 【0011】 本発明で二次側の内部電極の長さを1.0mm以下とすることが好ましい。また、好ましくは0.3mm〜1.0mmである。圧電体は一次側の内部電極と二次側の電極の間、ここでは二次側の内部電極との間を分極してある。内部電極の分極方向の長さ、すなわち一次側の内部電極と二次側の内部電極を結ぶ方向の電極長さが1.0mm以下であれば、積層圧電体の周波数特性などに影響がない。また、0.3mm以上あれば、内部電極と圧電体の接触が十分に取れる。 【0012】 また、本発明の積層圧電体トランスもケースなどに実装して使用されるが、そのケースとしてはその内側にばね性を持った電極リードを付けておき積層圧電体トランスの外部電極と接触するようにしておく。積層圧電体トランスの一面あるいは二面の側端面に外部電極を有しているので、ケースの内側の一側面あるいは二側面にばね性を持った電極リードを付けておき、その一部のものを積層圧電体トランスの外部電極に半田付けしておき、他の電極リードは外部電極にばねで接触させておくことが望ましい。 【0013】 【発明の実施の形態】 本発明の積層圧電体トランスの一実施例の斜視図を図1に、その縦断面図を図2に、その平面断面図を図3に示す。本発明の他の実施例の斜視図を図4に、その縦断面図を図5に、その平面断面図を図6に、また積層圧電体トランスをケースに実装した状態の平面図を図7および図8に示す。 【0014】 図1、2、3において、積層圧電体トランス1の一方の側端面の中央に一次側の外部電極14と、同じ面上でその両側に二次側の外部電極16、17が設けられている。また、他方の側端面の中央には他の一次側の外部電極15が設けられている。 【0015】 積層圧電体の圧電体シート11のシート面中央には一次側の内部電極12が設けられていて、シート面の両端部に近いところには二次側の内部電極13が設けられている。一次側の内部電極12は一層おきに一方の一次側の外部電極14と他方の一次側の外部電極15とに接続されていて、一次側の外部電極14、15間に電圧が印加されると各シートを挟む内部電極間に電圧が印加されるようになっている。 【0016】 二次側の内部電極13は圧電体シート11の端部付近で0.3〜1.0mmの長さになるように設けられている。二次側の内部電極13は、積層圧電体の端に付けられた二次側の外部電極16、17に接続されている。 【0017】 圧電体は、一次側の内部電極12間および一次側の内部電極12と二次側の内部電極13との間で分極をしておく。分極は通常と同じように、2〜3kV/mmの電界を5〜10分間、120〜140℃のオイル中で印加して行われる。 【0018】 このように、外部電極を二つの側端面のみに付けたので、外部電極を印刷する手間や時間が従来の4面に付けるものに比して半分にすることができた。次に、図4、5、6に示す積層圧電体トランス4において、前の実施例と同じ部品は同じ符号で示しているが、一方の側端面の中央部付近に2つの一次側の外部電極44、45とその両端に二次側の外部電極16、17が設けられている。積層圧電体の圧電シートに付けられた一次側の内部電極42と二次側の内部電極13はほぼ前の実施例と同じものであるが、一次側の外部電極44、45二つが積層圧電体トランス4の一方の側端面に並んで設けられている関係上、一次側の内部電極42も一層おきに一方の一次側の外部電極44と他方の一次側の外部電極45とに接続され、他の外部電極には接続されないようになっている。 【0019】 このように、外部電極44、45を一つの側端面のみに付けたので、外部電極を印刷する手間や時間が従来の4面に付けたものに比して1/4にすることができた。 【0020】 また、この積層圧電体トランス4をケース7に実装したものが図7に平面図で示すもので、ケース7の一つの内端面に一方向に付勢するばね性のある電極71、72、73、74が4個並べて設けられていて、積層圧電体トランス4の外部電極と接触するようになっている。ケース7の左右の内端面にはばね75、76が付けられていて、トランス4を保持している。また、ケース7の上側左右内側に円弧状あるいは楕円弧状の滑り部77、78を設けておき、積層圧電体トランス4が伸縮振動しても、その上を滑るようになっている。この振動は左右のばねで吸収される。また、幅方向の振動はばね性のある電極で吸収される。このばね性のある電極の一部、例えば左右の端にある2つ71、74を積層圧電体トランス4の外部電極17、16に半田付けによって固定しておくと更に信頼性のあるものとなる。 【0021】 図8に積層圧電体トランス4をケース8に実装したものの他の実施例を示す。図7と共通する部分は同じ符号で示している。しかし、ばね75、76に代えて、ばね性のある電極81、82を用いて、その電極を積層圧電体トランス4の外部電極16、17と接触させて、各々半田付けしている。ばね性のある電極81、82は積層圧電体トランス4を抱えるようにしているのでその接続が更に確実なものとなっている。 【0022】 【発明の効果】 本発明の積層圧電体トランスでは、トランスの端面の一面あるいは二面だけに外部電極を付けているので、外部電極の印刷時間及び作業を大幅に軽減することができた。また、ケースに実装する場合も一方向に付勢するばねで押さえることができるので、実装も極めて容易である。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の積層圧電体トランスの一実施例の斜視図である。 【図2】本発明の積層圧電体トランスの一実施例の縦断面図である。 【図3】本発明の積層圧電体トランスの一実施例の平面断面図である。 【図4】本発明の積層圧電体トランスの他の実施例の斜視図である。 【図5】本発明の積層圧電体トランスの他の実施例の縦断面図である。 【図6】本発明の積層圧電体トランスの他の実施例の平面断面図である。 【図7】本発明の積層圧電体をケースに実装したものの平面図である。 【図8】本発明の積層圧電体をケースに実装したものの他の実施例の平面図である。 【図9】従来の積層圧電体トランスの斜視図である。 【図10】従来の積層圧電体の縦断面図である。 【図11】従来の積層圧電体の平面断面図である。 【符号の説明】 1、4 積層圧電体トランス 11 圧電体シート 12、42 一次側の内部電極 13 二次側の内部電極 14、15、44、45 一次側の外部電極 16、17 二次側の外部電極 7、8 ケース 71、72、73、74、81、82 電極 75、76 ばね 77、78 滑り部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-02-25 |
出願番号 | 特願平9-219661 |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YA
(H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 井原 純 |
特許庁審判長 |
岡 和久 |
特許庁審判官 |
橋本 武 松本 邦夫 |
登録日 | 2003-09-05 |
登録番号 | 特許第3468043号(P3468043) |
権利者 | 日立金属株式会社 |
発明の名称 | 積層圧電体トランス |