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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A01K |
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管理番号 | 1151667 |
判定請求番号 | 判定2006-60011 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2007-03-30 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2006-03-07 |
確定日 | 2007-02-06 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3609855号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号写真に示す「ペット用トイレ」は、特許第3609855号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 判定請求書に添付したイ号写真およびその説明に示したところの、被請求人である株式会社リッチェルが製造販売している「ペット用わくわくシーツトレー」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第3609855号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 第2 本件発明 本件発明は、願書に添付された明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件に分説すると、次のとおりである。 A トイレ本体と、 B トイレ本体に対してシーツを固定する押さえ枠と、 C 押さえ枠をトイレ本体に固定する固着手段と、 D トイレ本体の押さえ枠との対峙面に形成された嵌合突起と、 E 押さえ枠のトイレ本体との対峙面に形成されて嵌合突起に筒状を成して嵌合する筒状嵌合部と、 F 前記押さえ枠のほぼ全周に渡り形成され、当該押さえ枠が前記固着手段により前記トイレ本体に固定された状態で、前記トイレ本体に敷かれたシーツに接する押圧部 G とを備えたことを特徴とするペット用トイレ。 (以下、本件発明の構成要件AないしGという。) 第3 イ号物件の特定 1.請求人の主張 請求人は、イ号物件は、判定請求書に添付されたイ号写真(甲第5号証の1乃至8)に示すように、下記の構成を備えていると主張している。 (a)トレー本体120と、 (b)トレー本体120に対してシーツを固定する枠130と、 (c)枠130をトレー本体120に固定する固着手段140と、 (d)トレー本体120の枠130との対峙面に形成された嵌合突起Kaと、 (e)枠130のトレー本体120との対峙面に形成されて嵌合突起Kaに筒状を成して嵌合する筒状嵌合部Taと、 (f)前記枠130のほぼ全周に渡り形成され、当該枠130が前記固着手段140により前記トレー本体120に固定された状態で、前記トレー本体120に敷かれたシーツに接する突状片150 (g)とを備えたことを特徴とするペット用わくわくシーツトレー。 2.被請求人の主張 他方、被請求人は、答弁書において、イ号物件をより明確にするために、イ号物件の写真及び図面である乙第1号証?乙第4号証を提出し、(原則として判定請求人が使用した文言を使い、判定請求人の分説に従うと共に不適切な部分を修正して分説すると、)イ号物件は、下記の構成を備えていると主張している。 (a’)底面の周縁部に凹溝が形成されたトイレ本体120と、 (b’)トイレ本体120に対してシーツを固定する枠130と、 (c’)枠130をトイレ本体120に固定する固着手段140と、 (d’)トイレ本体120の枠130との対峙面に形成された嵌合突起Kaと、 (e’)枠130のトイレ本体120との対峙面に形成されて嵌合突起Kaに筒状を成して嵌合する筒状嵌合部Taと、 (f’)前記枠130のほぼ全周に渡り形成され、当該枠130が前記固着手段140により前記トイレ本体120に固定された状態で、前記トイレ本体120に載置されその周縁部が嵌合突起Kaと筒状嵌合部Taによって固定されたシーツ4を凹溝内に押し下げて張力を与える突状片150 (g’)とを備えたことを特徴とするペット用わくわくシーツトイレ。 3.当審によるイ号物件の特定 上記「1.」及び「2.」に示した両当事者の主張内容並びに、判定請求書に添付された甲第5号証の1乃至8の写真、並びに答弁書に添付された乙第1号証?乙第4号証の写真及び図面を参酌すると、イ号物件の構成は、次のとおりのものと認められる。 (イ号物件の構成) a 底面の周縁部に凹溝が形成されたトイレ本体120と、 b トイレ本体120に対してシーツを固定する枠130と、 c 枠130をトイレ本体120に固定する固着手段140と、 d トイレ本体120の枠130との対峙面に形成された嵌合突起Kaと、 e 枠130のトイレ本体120との対峙面に形成されて嵌合突起Kaに筒状を成して嵌合する筒状嵌合部Taと、 f 前記枠130のほぼ全周に渡り形成され、当該枠130が前記固着手段140により前記トイレ本体120に固定された状態で、前記トイレ本体120に載置されその周縁部が嵌合突起Kaと筒状嵌合部Taによって固定されたシーツ4を凹溝内に押し下げて張力を与える突状片150 g とを備えたことを特徴とするペット用わくわくシーツトレー。 (以下、イ号物件の構成aないしgという。) 第4 本件発明とイ号物件との対比・判断 (1)対比 本件発明とイ号物件とを対比すると、イ号物件の構成a?e及びgは、本件発明の構成要件A?E及びGに、それぞれ相当するといえるから、イ号物件の構成a?e及びgは、本件発明の構成要件A?E及びGを充足するといえる。 (なお、答弁書によれば、被請求人は、イ号物件の構成eにつき、本件発明の構成要件Eとは、そのシーツを押さえ付ける固定形態において異なるから、本件発明の構成要件Eを充足するものではない旨を主張しているが、両者が文言上一致するものであることは明らかであり、採用できない。) しかしながら、イ号物件の構成fが、本件発明の構成要件Fを充足するか否かについては、必ずしも明らかではない。 そこで、イ号物件が、本件発明の構成要件Fを充足するか否かについて、以下検討する。 (2)イ号物件が、本件発明の構成要件Fを充足するか否かについて ところで、本件発明の構成要件Fにおける「シーツに接する押圧部」の技術的意義について、特許明細書の記載を参酌すると、次の記載がある。 (a)「【発明が解決しようとする課題】 従来のペット用トイレは、シーツを固定する力が弱く、ペットがシーツ上で激しく動いた場合には、シーツが外れてしまうことがあった。 本発明は、前記課題に着目してなされたものであり、ペットがシーツ上で激しく動いた場合にも、シーツが外れることを防止できるペット用トイレを提供することを目的とする。」(甲第1号証の1である特許公報の段落【0007】?【0008】) (b)「【作用】 請求項1の発明によれば、押さえ枠とトイレ本体との間に、嵌合突起と、嵌合突起に嵌合する筒状嵌合部とを備えたことにより、嵌合突起と筒状嵌合部との間にシーツを挟み込んで押さえ、かつ、固着手段により押さえ枠がトイレ本体に固定された状態で、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部がトイレ本体に敷かれたシーツに接するので、極めて強い押さえ込みができる。」(同特許公報の段落【0011】) (c)「さらに、トイレ本体12に敷かれたシーツ4は、底面14の凸部16と押さえ枠13の押圧部31とにより上下方向から交互に挟みこまれているので、シーツ4のズレは、より効果的に防止される。」(同特許公報の段落【0023】) (d)「【発明の効果】 請求項1の発明によれば、押さえ枠とトイレ本体との間に、嵌合突起と、嵌合突起に嵌合する筒状嵌合部とを備えたことにより、嵌合突起と筒状嵌合部との間にシーツを挟み込んで押さえ、かつ、固着手段により押さえ枠がトイレ本体に固定された状態で、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部がトイレ本体に敷かれたシーツに接するので、極めて強い押さえ込みができ、トイレ本体内でペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれない信頼性の高いペット用トイレを提供できる。」(同特許公報の段落【0029】) また、本件発明の出願経過を参酌すると、本件発明の構成要件Fは、本件特許の審査の段階での平成16年2月13日付け拒絶理由通知書(判定請求書に添付された甲第4号証の2参照。)に対してなされた、平成16年4月16日提出の手続補正書(同、甲第4号証の4参照。)により加わえられた構成であり、また、同日付けで提出された意見書(甲第4号証の5)に、当該構成に関して、下記の記載がある。 (a)「(4)そして、係る特有の事項を具備する本願発明によれば明細書の段落「0029」に記載したように、「押さえ枠とトイレ本体との間に、嵌合突起と、嵌合突起に嵌合する筒状嵌合部とを備えたことにより、嵌合突起と筒状嵌合部との間にシーツを挟み込んで押さえ、かつ、固着手段により押さえ枠がトイレ本体に固定された状態で、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部がトイレ本体に敷かれたシーツに接するので、極めて強い押さえ込みができ、トイレ本体内でペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれない信頼性の高いペット用トイレを提供できる。」という作用効果を奏します。 つまり、シーツは、 第1に、嵌合突起と筒状嵌合部との間に挟み込んで押さえられ、 第2に、固着手段により押さえ枠がトイレ本体に固定された状態で、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部がシーツのほぼ全周に渡り接することで押さえられることとなります。 そして、この第1及び第2の押さえによる相乗効果により、トイレ本体内でペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれない信頼性の高いペット用トイレを提供できることとなります。しかも、第2の押さえは、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部により、シーツのほぼ全周に渡りなされるので、効果的な押さえともなります。」(甲第4号証の5の第2頁第1?16行参照。) (b)「(5)しかるに、方形状留め部材3(押さえ枠)に形成に形成された前記ピン15と、便器本体1(トイレ本体)に形成された円筒形突片7との係合のみにより、吸水シート2(シーツ)を固定する引用文献記載のものでは、前記第1の押さえは得られても、第2の押さえは得られません。よって、これら第1及び第2の押さえによる相乗効果に起因する「トイレ本体内でペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれない信頼性の高いペット用トイレを提供できる。」という作用効果は、引用文献記載記載の発明によってはそうすることのできない、本願請求項1に係る発明に特有のものに他なりません。」(甲第4号証の5の第2頁第17?23行参照。) 上記特許明細書の記載事項並びに意見書の内容を参酌すると、本件発明は、「嵌合突起と筒状嵌合部との間に挟み込んで押さえ」るという(シーツの位置ずれに対する)第1の押さえ作用に加えて、「押圧部がシーツのほぼ全周に渡り接することで押さえられる」という(シーツの位置ずれに対する)第2の押さえ作用を奏することにより、両者の押さえ作用の相乗効果によってシーツの位置ずれを防止できるという特有の効果を奏することを技術的特徴とするものであるということができる。 そうすると、本件発明の構成要件Fにおける「シーツに接する押圧部」は、(それ自体の構成により)シーツの位置ずれに対する上述の第2の押さえ作用を実現できるものであるということができ、本件発明の上記した特有の効果を奏するために必須の構成であって、発明の本質的部分であるということができる。 他方、乙第2号証の2の図面や乙第4号証の3の写真を参酌すると、イ号物件の突状片150の下方の先端部と(トイレ本体120の)凹溝内の嵌合突起Ka周辺部との間には、明らかに「隙間a」が存在することから、イ号物件の構成fにおける「突状片150」は、「トイレ本体120に載置されその周縁部が嵌合突起Kaと筒状嵌合部Taによって固定されたシーツ4を凹溝内に押し下げて張力を与える」ものであって、シーツに対して押し下げるように接することにより張力を与えるという作用を奏するといえるものの、それ自体の構成によってシーツの位置ずれに対する押さえ作用までを期待できるものではない、言い換えれば、シーツに対して押圧するように接することによりシーツの位置ずれを防止できるという作用を奏するものということができない。 (ちなみに、弁駁書によれば、乙第2号証の2の図面に示されるように、イ号物件に上記「隙間a」が存在することを、請求人は争っていないと解される。) してみると、イ号物件の構成fは、本件発明の構成要件Fを充足しないものといわざるをえない。 なお、請求人は、請求書において、「仮に、イ号の構成が本件発明と異なる場合であっても、イ号は、本件発明の構成と均等である」旨を主張している。 しかしながら、上記検討したように、本件発明の構成要件Fにおける「シーツに接する押圧部」は、本件発明の作用・効果を奏するための本質的部分であり、イ号物件の構成は当該本質的な部分において本件発明と相違するものといえるから、両者の構成上の相違する部分につき均等論適用の要件を欠くものというべきである。 第5 むすび 以上のとおり、イ号物件は、本件発明の構成要件Fを充足しないから、本件発明の技術的範囲に属するということはできない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2007-01-24 |
出願番号 | 特願平6-203108 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(A01K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉田 佳代子 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
柴田 和雄 西田 秀彦 |
登録日 | 2004-10-22 |
登録番号 | 特許第3609855号(P3609855) |
発明の名称 | ペット用トイレ |
代理人 | 小野 友彰 |
代理人 | 笹川 拓 |
代理人 | 羽切 正治 |
代理人 | 石川 壽彦 |
代理人 | 仲村 圭代 |