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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A63B |
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管理番号 | 1157161 |
判定請求番号 | 判定2006-60035 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2003-07-22 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2006-07-18 |
確定日 | 2007-05-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3725481号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「中空ゴルフクラブヘッド」は、特許第3725481号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定の請求は、判定請求書に添付したイ号図面及びイ号説明書に示したところの、被請求人が製造販売しているゴルフクラブに用いた「ゴルフクラブヘッド」(以下、「イ号物件」という。)が、特許第3725481号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 第2 本件発明 本件発明は、本件特許の願書に添付された明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件毎に分説すると、次のとおりである。 A 金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合して中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドであって、 B 前記金属製の外殻部材の接合部に前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を接着すると共に、 C 前記金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け、 D 該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した E ことを特徴とする中空ゴルフクラブヘッド。 (以下、本件発明の構成要件AないしEという。) 第3 イ号物件の特定 1.請求人の主張 判定請求人は、イ号物件が、判定請求書に添付されたイ号図面及びその説明書に記載した事項から次の構成を備えるものであると主張している。 (a)金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合して中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドであって、 (b)前記金属製の外殻部材の接合部に前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を接着すると共に、 (c)前記金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け、 (d’)貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の各貫通穴毎に分離した短小な帯片を前記金属製外殻部材の上面側の繊維強化プラスチック製上部外殻部材との接着界面側とその反対面側の前記金属製外殻部材の下面側の繊維強化プラスチック製下部外殻部材との接着界面側とに通して、前記繊維強化プラスチック製の上部外殻部材と下部外殻部材とを結合してなる (e)中空ゴルフクラブヘッド。 2.被請求人の主張 他方、被請求人は、答弁書において、イ号物件は、次の構成を備えるものであると主張している。 (a)金属製外殻部材1とFRP製外殻部材9、10とを接合して中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドであって、 (b)金属製外殻部材1のフランジ部5にFRP製下部外殻部材9、FRP製上部外殻部材10の接合部を接着すると共に、 (c)金属製外殻部材1のフランジ部5aに透孔7を設け、 (d”)透孔7を介して炭素繊維からなる短小な帯片8を金属製外殻部材1のFRP製上部外殻部材10の接着界面側とその反対面側とに通してFRP製上部外殻部材10と金属製外殻部材1とを結合した (e)ことを特徴とする中空ゴルフクラブヘッド。 3.当審によるイ号物件の特定 上記「1.」及び「2.」に記載したように、イ号物件の構成の内の(a)?(c)及び(e)については(両者に用語の表現上の相違があるものの)当事者間に実質的な争いはなく、イ号物件の残る構成((d’)又は(d”))について相違があるところ、判定請求書に添付されたイ号図面及びその説明書の記載内容から見て、イ号物件は、次のとおりの構成(以下、「イ号物件の構成」という。)を具備するものと認めるのが相当である。 (イ号物件の構成) a 金属製外殻部材1とFRP製外殻部材9、10とを接合して中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドであって、 b 金属製外殻部材1のフランジ部5にFRP製下部外殻部材9、FRP製上部外殻部材10の接合部を接着すると共に、 c 金属製外殻部材1のフランジ部5aに透孔7を設け、 d 透孔7を介して各透孔7毎に分離した炭素繊維からなる短小な帯片8を前記金属製外殻部材1の上面側のFRP製上部外殻部材10との接着界面側とその反対面側の前記金属製外殻部材1の下面側のFRP製下部外殻部材9との接着界面側とに通して、前記FRP製上部外殻部材10とFRP製下部外殻部材9とを結合してなる e 中空ゴルフクラブヘッド。 (以下、イ号物件の構成aないしeという。) 第4 本件発明とイ号物件との対比・判断 (1)対比 本件発明とイ号物件とを対比すると、本件発明の「金属製の外殻部材」、「繊維強化プラスチック製の外殻部材」、「金属製の外殻部材の接合部」、「貫通穴」は、それぞれ、イ号物件の「金属製外殻部材1」、「上部」と「下部」の「FRP製外殻部材9、10」、「金属製外殻部材1のフランジ部5(5a)」、「透孔7」に相当し、イ号物件の構成a、b、c及びeは、本件発明の構成要件A、B、C及びEに、それぞれ相当するから、イ号物件の構成a?c及びeは、本件発明の構成要件A?C及びEを充足するといえる。 (ちなみに、答弁書第2?3頁の「III.対比」の「(1)」に記載されているように、イ号物件が本件発明の構成要件A?C及びEを充足することにつき、当事者間に争いがない。) しかしながら、イ号物件が、本件発明の構成要件Dを充足するか否かについては、必ずしも明らかではない。 そこで、イ号物件が、本件発明の構成要件Dを充足するか否かについて、以下検討する。 (2)イ号物件が、本件発明の構成要件Dを充足するか否か (イ)最初に、本件発明の構成要件Dの「該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した」点の技術的意義につき検討する。 本件の特許明細書の記載を参酌すると、次の記載がある。 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合強度を高めることを可能にした中空ゴルフクラブヘッドを提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するための本発明の中空ゴルフクラブヘッドは、金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合して中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドであって、前記金属製の外殻部材の接合部に前記繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を接着すると共に、前記金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け、該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合したことを特徴とするものである。 【0006】 このように金属製の外殻部材の接合部に繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を接着すると共に、金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け、該貫通穴に繊維強化プラスチック製の縫合材を通し、該縫合材により繊維強化プラスチック製の外殻部材と金属製の外殻部材とを結合したことにより、これら異種素材からなる外殻部材の接合強度を高めることが可能になる。従って、ゴルフクラブヘッドとしての耐久性を確保しながら、異種素材の組み合わせに基づいて飛びを含むゴルフクラブ性能を向上することが可能になる。」 「【0009】 図1(a)?(c)は本発明の実施形態からなるゴルフクラブヘッドを示すものである。図1(a)?(c)に示すように、本実施形態のゴルフクラブヘッドは、フェース部、ソール部及びネック部をなす金属製の外殻部材11と、クラウン部をなす繊維強化プラスチック製の外殻部材21とを接合してなる中空構造のヘッド本体1を備えている。 【0010】 上記中空ゴルフクラブヘッドでは、異種素材の組み合わせに基づいて重心位置を任意に設定したり、限られたヘッド質量の中でヘッド体積を最大限に大きくすることが可能であり、それによって飛びを含むゴルフクラブ性能の向上が可能であるが、金属製の外殻部材11と繊維強化プラスチック製の外殻部材21とを単に重ね合わせて接着しただけでは、その接合強度が不十分である。そこで、本発明では以下に述べる接合形態で、これら異種素材の外殻部材を高い強度で複合するのである。 【0011】 図2(a),(b)の接合形態では、金属製の外殻部材11の接合部11aに繊維強化プラスチック製の外殻部材21の接合部21aを接着し、かつ金属製の外殻部材11の接合部11aに複数の貫通穴13設け、該貫通穴13に繊維強化プラスチック製の縫合材22を通し、該縫合材22により繊維強化プラスチック製の外殻部材21と金属製の外殻部材11とを結合している。上記接合形態によれば、縫合材22が金属製の外殻部材11に対して繊維強化プラスチック製の外殻部材21を強固に結び付けるため、ゴルフクラブヘッドとして十分な耐久性が得られる。なお、外殻部材21と縫合材22はプラスチック同士であって相互接着性が良好であるため図示のように互いに密着するだけで良い。」 「【0019】 【発明の効果】 以上説明したように本発明によれば、金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合して中空構造のヘッド本体を構成するに際して、金属製の外殻部材の接合部に繊維強化プラスチック製の外殻部材の接合部を接着すると共に、金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け、該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を金属製外殻部材の繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して繊維強化プラスチック製の外殻部材と金属製の外殻部材とを結合したから、金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合強度を高めることができる。従って、ゴルフクラブヘッドとしての耐久性を確保しながら、異種素材の組み合わせに基づいて飛びを含むゴルフクラブ性能を向上することが可能になる。」 上記記載事項からすると、本件発明は、金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材とを接合して中空構造のヘッド本体を構成した中空ゴルフクラブヘッドにおいて、当該金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合強度を高めることを目的として採用された接合構成に技術的特徴を有するものであって、その接合構成として、本件発明の構成要件Dである「該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した」構成を採用することにより、「金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合強度を高めることができる」という効果を奏するものと解することができる。 また、特許明細書には、実施例として、図面の図2(a),(b)に示された接合形態のみが例示されているに止まり、他に実施例の記載はなく、上記したように「図2(a),(b)の接合形態では、金属製の外殻部材11の接合部11aに繊維強化プラスチック製の外殻部材21の接合部21aを接着し、かつ金属製の外殻部材11の接合部11aに複数の貫通穴13設け、該貫通穴13に繊維強化プラスチック製の縫合材22を通し、該縫合材22により繊維強化プラスチック製の外殻部材21と金属製の外殻部材11とを結合している。上記接合形態によれば、縫合材22が金属製の外殻部材11に対して繊維強化プラスチック製の外殻部材21を強固に結び付けるため、ゴルフクラブヘッドとして十分な耐久性が得られる。」(注;下線は当審が付記した。)と説示されていることからすると、本件発明の構成要件D(「該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した」)点は、当該図2(a),(b)に示された接合形態を意味したものと解することができる。 そこで、図面の図2(a),(b)に示された接合形態を詳細に見ると、「繊維強化プラスチック製の縫合材22」は、「繊維強化プラスチック製の外殻部材21」の接合部21aとなる上面から(貫通穴13を介して、或いは当該貫通穴を介さないで)金属製の外殻部材11の上面(接合部11aと反対側の面)側へ延び、さらに当該上面に沿って延びてから隣接する貫通穴13を介して下方へ延びることにより上記「繊維強化プラスチック製の外殻部材21」の上面側に再び戻るという、これらの部材間を(貫通穴を通ることにより)ジグザグ状に縫合する態様で一つの連続した部材として配置された接合態様が示されている。 以上のことから、本件の特許明細書の記載を参酌すると、本件発明の構成要件Dの「該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した」点の技術的意義は、図面の図2(a),(b)に示されたような、縫合材が貫通穴を通ることにより繊維強化プラスチック製の外殻部材と金属製の外殻部材との部材間をジグザグ状に縫合する態様で一つの連続した部材で結合するようにした接合形態を意味したものと解することができる。 (ロ)また、本件特許の出願経過を参酌すると、次の手続き経緯がある。 1)平成15年11月18日付け拒絶理由通知書(甲第三号証)により、拒絶理由の「理由1」として、 「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項5における「金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け、該貫通穴に繊維強化プラスチック製の縫合材を通し、該縫合材により前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合したこと」なる発明特定事項については、a)繊維強化プラスチック製の外殻部材と縫合材とを密着させるだけによって結合させる態様(本願図面における【図6】の態様)、b)繊維強化プラスチック製の外殻部材にも貫通穴を設け、該貫通穴にも縫合材を通すことによって、2つの外殻部材どうしを縫合材の縫合力のみによって結合させる態様、c)前記a及びbの態様を併用する態様のうちいずれの態様を意味しているのか明瞭でない。よって、請求項5-7に係る発明は明確でない。」が示された。 2)上記拒絶理由通知に対する平成16年 4月12日付け意見書(甲第四号証)において、 「(3) 記載不備について 審査官殿は、請求項5の発明特定事項が明瞭でないと指摘されております。請求項5については、本願の図6の実施態様に対応するように補正しました。従って、請求項5(補正後の請求項6)に係る発明は補正により明確になったものと思料いたします。」との意見を述べた。 3)その後、拒絶査定されたものの、拒絶査定不服の審判請求の際には、特許請求の範囲の補正を含めた明細書全文を補正するための平成17年5月9日付け手続補正書を提出するとともに、審判請求書の「請求の理由」を補正するための平成17年5月9日付け手続補正書(甲第五号証)において、 「(2) 補正の根拠の明示 平成17年5月9日付けの手続補正書による補正では、拒絶査定において拒絶理由が再度指摘された請求項1?5を削除し、拒絶理由が指摘されていない請求項6を請求項1に書き改め、請求項7?9をそれぞれ請求項2?4に繰り上げて補正後の請求項1に従属させています。 補正後の請求項1において、「接着界面側とその反対面側とに通して」とする補正事項は、出願当初の明細書の段落〔0018〕及び図6の記載に基づいております。即ち、出願当初の図6において、繊維強化プラスチック製の縫合材は貫通穴を介して金属製外殻部材の繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とを通過しています。 この補正事項は、平成16年2月10日付の拒絶理由通知で指摘された特許法第36条第6項第2項に基づく拒絶理由(理由1)に鑑みて、特許請求の範囲を更に明確にするものであります」との意見を述べた。 4)その後、前置審査において、平成17年8月10日付けで特許査定がなされた。 以上の出願経過によれば、本件発明は、出願当初の明細書及び図面に開示した複数の実施例の中から、図6(注;本件の特許公報における「図2」である。)に記載した実施例に対応するものに限定した発明であって、特許請求の範囲の記載における「金属製の外殻部材の接合部に貫通穴を設け、該貫通穴に繊維強化プラスチック製の縫合材を通し、該縫合材により前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した」という発明特定事項は、上記図6(注;本件の特許公報における「図2」である。)に対応する構成を意味したものであり、また、本件発明における「接着界面側とその反対面側とに通して」と記載した事項は、出願当初の図6において、繊維強化プラスチック製の縫合材は貫通穴を介して金属製外殻部材の繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とを通過している構成を意味したものと解することができる。 このことは、本件発明の構成要件Dの「該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した」点の技術的意義を、上記「(イ)」に記載したように理解することとも整合するといえる。 (ハ)以上のことから、本件発明の構成要件Dの「該貫通穴を介して繊維強化プラスチック製の縫合材を前記金属製外殻部材の前記繊維強化プラスチック製外殻部材との接着界面側とその反対面側とに通して前記繊維強化プラスチック製の外殻部材と前記金属製の外殻部材とを結合した」点の技術的意義は、図面の図2(a),(b)に示されたような、縫合材が貫通穴を通ることにより繊維強化プラスチック製の外殻部材と金属製の外殻部材との部材間をジグザグ状に縫合する態様で一つの連続した部材で結合するようにした接合形態を意味したものと解することができ、また、このように理解しても、本件特許の出願経過と矛盾するものではない。 そして、イ号物件の構成を見ると、その「帯片8」は、各「透孔7」毎に分離した炭素繊維からなる短小な部材であって、イ号図面の第3図の断面図に示されるように、当該「透孔7」に通されてはいるものの、相互に接着されるFRP製上部外殻部材10と下面側のFRP製下部外殻部材9の両者間にあって、両者を単に結合する働きをするに止まるものであって、これら部材間をジグザグ状に縫合する態様で結合する働きをするものではないから、本件発明の構成要件Dにおける「縫合材」に期待されるところの、「縫合材22が金属製の外殻部材11に対して繊維強化プラスチック製の外殻部材21を強固に結び付ける」という作用を奏するものではないというべきである。 そうすると、イ号物件は、本件発明の「金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合強度を高める」という効果を奏するものではないといえる。 (ちなみに、本件発明が、「金属製の外殻部材と繊維強化プラスチック製の外殻部材との接合強度を高める」という効果を奏することができるのは、図面の図2(a),(b)に示されたような、縫合材が貫通穴を通ることにより繊維強化プラスチック製の外殻部材と金属製の外殻部材との部材間をジグザグ状に縫合する態様で一つの連続した部材で結合するように構成したからであり、言い換えれば、繊維強化プラスチック製の外殻部材と同質の繊維強化プラスチック製の縫合材とにより全体として繊維強化プラスチック製の一体的な環状構造部分を形成し、当該環状構造部分に、金属製の外殻部材の貫通穴を介して、金属製の外殻部材を結合させた構成を備えているからであるといえる。) (3)まとめ したがって、イ号物件は、本件発明の構成要件Dにおける「縫合材」を備えていないといえるから、本件発明の構成要件Dを充足しないものといわざるをえない。 第5 むすび 以上のとおり、イ号物件は、本件発明の構成要件Dを充足しないから、本件発明の技術的範囲に属するということはできない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2007-04-27 |
出願番号 | 特願2002-4675(P2002-4675) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZA
(A63B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小齊 信之 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
西田 秀彦 宮川 哲伸 |
登録日 | 2005-09-30 |
登録番号 | 特許第3725481号(P3725481) |
発明の名称 | 中空ゴルフクラブヘッド |
代理人 | 島田 哲郎 |
代理人 | 萩尾 保繁 |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |
代理人 | 山口 健司 |