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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680092 審決 特許
無効200680032 審決 特許
無効200680280 審決 特許
無効200680043 審決 特許
無効200680077 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F04B
審判 全部無効 2項進歩性  F04B
管理番号 1157701
審判番号 無効2006-80072  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-21 
確定日 2007-04-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2947243号発明「斜板式圧縮機におけるピストン構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯の概要
本件特許第2947243号に係る発明についての出願は、平成3年11月29日に実用新案登録出願され、平成9年11月14日に特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第2条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた平成5年改正前特許法第46条第1項の規定によって当該実用新案登録出願を特許出願に変更し、平成11年7月2日に特許の設定登録がなされたものである。これに対し平成18年4月21日に請求人より本件無効審判の請求がなされ、平成18年7月18日に被請求人より審判事件答弁書が提出されるとともに、訂正請求書及び訂正請求書に添付された訂正明細書が提出された。その後、請求人から、平成18年10月12日付けで審判事件弁駁書が提出され、平成18年12月19日に口頭審理が実施され、請求人及び被請求人は、各々の口頭審理陳述要領書を陳述した。

第2.請求人の主張概要
請求人は、審判請求書において特許第2947243号発明の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として概ね次の1.及び2.のように主張するとともに、2.の証拠方法として、甲第1号証から甲第4号証を提出した。

1.無効理由1
請求人は、「本件特許の請求項1及び2に係る発明は、出願変更に伴う要旨変更によってもたらされたものであり、特許法第29条第1項の規定に違背し特許を受けることができないものである。」(審判請求書第2頁第15行?同17行)及び、「原出願の考案に開示されていなかった事項を発明内容に取り込むものであるから、要旨変更がされたことは明らかである。よって、出願日の遡及は認められないから、原出願の考案の公開実用新案公報に記載された技術と同一であり、特許法第29条第1項の規定に違背し特許を受けることができない。」(審判請求書第7頁第17行?同22行)と主張している。
すなわち、本件特許に係る発明の出願(以下、「本件特許出願」という。)は、実用新案登録出願が変更出願されて本件特許出願となっているが、本件特許出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明中の「ハウジングと当接可能な微回動規制片」は、原出願である実用新案登録出願の出願当初の明細書又は図面(以下、「原明細書又は図面」という。実願平3-98931号(実開平5-47441号公報)のマイクロフィルムと同じである。)に記載されていないので、出願日の遡及はなく、本件特許出願の出願日は現実の特許出願日である平成9年11月14日となり、原出願の考案の公開実用新案公報(実開平5-47441号公報、平成5年6月25日公開)に記載された技術と同一であり、特許法第29条第1項第3号(新規性)の規定に違反するものである(なお、審判請求の趣旨からみて、特許法第29条第1項の主張は、同第3号との主張とした。)から、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(以下、当該主張を「無効理由1」という。)

2.無効理由2
本件特許第2947243号の請求項1及び2に係る本件発明は、甲第1号証に記載された発明と、甲第3号証に記載された発明に基づいて、或いは甲第1号証乃至第4号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(以下、当該主張を「無効理由2」という。)

3.証拠方法
甲第1号証 実願昭61-22467号
(実開昭62-133973号)のマイクロフィルム
甲第2号証 実願昭61-189652号
(実開昭63-93480号)のマイクロフィルム
甲第3号証 特公平2-61627号
甲第4号証 特開平1-219364号

第3.被請求人の主張概要
1.無効理由1に対して
被請求人は、平成18年7月18日付けで答弁書及び同日付け訂正請求書を提出し、同答弁書において、請求人が主張する出願日不遡及の理由はいずれも訂正によって解消されたかあるいは主張そのものが妥当ではなく、本件発明は何ら出願日不遡及に該当しない。したがって、出願日不遡及を理由とする特許法第29条第1項による特許無効理由は有しない。

2.無効理由2に対して
訂正請求書に添付された全文訂正明細書に基づいて、「本件発明の微回動規制片は、上記構成要件Cのように構成され、この構成によってシリンダブロックの外周が大型化することを抑制する。」(答弁書第9頁第20行?第21行。なお、構成要件Cは、「該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、前記シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が設けられ、該微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造。」である。)と主張し、甲第1号証及び甲第2号証には構成要件Cに相当する構成が記載されておらず、示唆する記載もない。甲第3号証、甲第4号証には「微回動規制片」に相当するものはない。甲第1号証乃至甲第4号証を組み合わせても、本件請求項1及び2に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明に該当せず、特許無効理由を有しない。

第4.訂正の適否
1.訂正の内容
(1)訂正事項1
本件特許明細書の特許請求の範囲に記載された、請求項1の記載の
「【請求項1】ハウジング内で、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、
前記ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成し、該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、前記ハウジングと当接可能な微回動規制片が設けられた斜板式圧縮機におけるピストン構造。」を
「【請求項1】ハウジング内で、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダブロックに形成されたシリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、
前記ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成し、該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、前記シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が設けられ、該微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造。」と訂正する。

(2)訂正事項2
本件特許明細書の特許請求の範囲に記載された、請求項2の記載の
「【請求項2】前記ハウジングは前記ピストンの頸部と対向する内壁面を有し、前記微回動規制片が前記内壁面に沿って延出され、同内壁面と当接可能に設けられている請求項1に記載の斜板式圧縮機におけるピストン構造。」を
「【請求項2】前記シリンダブロックは前記ピストンの頸部と対向する内壁面を有し、前記微回動規制片が前記内壁面に沿って延出され、同内壁面と当接可能に設けられている請求項1に記載の斜板式圧縮機におけるピストン構造。」と訂正する。

(3)訂正事項3
本件特許明細書の段落番号0007の
「【0007】本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的はハウジング外周の大型化を抑制できる斜板式圧縮機のピストン構造を提供することにある。」を
「【0007】本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的はシリンダブロック外周の大型化を抑制できる斜板式圧縮機のピストン構造を提供することにある。」と訂正する。

(4)訂正事項4
本件特許明細書の段落番号0008の
「【0008】【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、ハウジング内で、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、前記ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成し、該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、前記ハウジングと当接可能な微回動規制片が設けらたことを要旨としている。」を
「【0008】【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、ハウジング内で、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダブロックに形成されたシリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、前記ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成し、該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が設けられ、該微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されていることを要旨としている。」と訂正している。

(5)訂正事項5
本件特許明細書の段落番号0009の
「【0009】また、請求項2の発明では、前記請求項1の発明において、前記ハウジングクは前記ピストンの頸部と対向する内壁面を有し、前記微回動規制片が前記内壁面に沿って延出され、同内壁面と当接可能に設けられていることを要旨としている。」を
「【0009】また、請求項2の発明では、前記請求項1の発明において、前記シリンダブロックは前記ピストンの頸部と対向する内壁面を有し、前記微回動規制片が前記内壁面に沿って延出され、同内壁面と当接可能に設けられていることを要旨としている。」と訂正している。

(6)訂正事項6
本件特許明細書の段落番号0010の
「【0010】【作用】
従って、請求項1の発明によれば、駆動軸の回転にともない斜板が回転した際、ピストンがシリンダボア内で往復動される。このとき、ピストンは微回動しようとするが同ピストンの頸部の両側に設けられた微回動規制片とハウジングとが当接するため、斜板外周とピストンとは接触されない。従って、斜板及びピストンの接触による摩耗及び騒音を生じることがない。」を
「【0010】【作用】
従って、請求項1の発明によれば、駆動軸の回転にともない斜板が回転した際、ピストンがシリンダボア内で往復動される。このとき、ピストンは微回動しようとするが同ピストンの頸部の両側に設けられた微回動規制片とシリンダブロックとが当接するため、斜板外周とピストンとは接触されない。従って、斜板及びピストンの接触による摩耗及び騒音を生じることがない。」と訂正する。

(7)訂正事項7
本件特許明細書の段落番号0011の
「【0011】また、請求項2の発明によれば、前記請求項1の発明の作用に加えて、微回動規制片はハウジングの内壁の位置に合わせ、内壁面に沿って延出されているので、ハウジングは微回動規制片と骸合するための構造を必要としない。」を
「【0011】また、請求項2の発明によれば、前記請求項1の発明の作用に加えて、微回動規制片はシリンダブロックの内壁の位置に合わせ、内壁面に沿って延出されているので、シリンダブロックは微回動規制片と骸合するための構造を必要としない。」と訂正する。

(8)訂正事項8
本件特許明細書の段落番号0023の
「【0023】【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、ハウジング外周の大型化を抑制することができる。また、請求項2の発明によれば、前記請求項1の発明の効果に加えて、ハウジング内周に微回動規制片が嵌合するための構造を形成する必要がなく、シンプルかつ強度的に優れた圧縮機とすることができる。」を
「【0023】【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、シリンダブロック外周の大型化を抑制することができる。また、請求項2の発明によれば、前記請求項1の発明の効果に加えて、シリンダブロック内周に微回動規制片が嵌合するための構造を形成する必要がなく、シンプルかつ強度的に優れた圧縮機とすることができる。」と訂正する。

2.訂正の適否についての判断
次に、上記訂正事項1?8について、訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張・変更の存否について検討する。
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、
ア.「ハウジング内で、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機」を、「ハウジング内シリンダブロックに形成されたで、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機」に限定し、
イ.「ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成し、該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、前記ハウジングと当接可能な微回動規制片が設けられた斜板式圧縮機におけるピストン構造」を、「ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成し、該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、前記シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が設けられ、該微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造」に限定するものであるから、訂正事項は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
次に、上記ア.イ.の訂正事項について、新規事項の有無、拡張・変更の存否について検討する。
ア.の 「 シリンダブロックに形成されたシリンダボア」の記載は、本件特許明細書の段落0013「シリンダブロック1にはシリンダボア1aが形成されている。」の記載に基づくものであり、イ.の「シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が設けられ、該微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている」の記載は、本件特許明細書の段落0016「この微回動規制片8cはその上面8dが、片頭ピストン8の最上部Mよりも低く、前記シリンダボア1a内壁以外のシリンダブロック1の内壁面と接触する位置に形成されている。」の記載に基づくものある。そして、ア.及びイ.の訂正事項は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面(本件特許明細書又は図面)に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1についての「ハウジング」の記載を「シリンダブロック」と訂正したことに伴い、請求項1を引用して従属する請求項2についても同様に訂正したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としている。そして、訂正事項1と同様に段落0013及び段落0016の記載に基づいており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3ないし8について
訂正事項3ないし8は、訂正事項1に伴って発明の詳細な説明の記載との整合を図るための明りょうでない記載の釈明と認められ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とし、いずれも願書に添付した明細書又は図面(本件特許明細書又は図面)に記載されている範囲内のものであり、実質上の特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書きに適合し、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第5.無効理由の判断
1.本件特許発明
本件訂正が認められたことにより、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、訂正全文明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】ハウジング内で、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダブロックに形成されたシリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、
前記ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成し、該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、前記シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が設けられ、該微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造。
【請求項2】前記シリンダブロックは前記ピストンの頸部と対向する内壁西南を有し、前記微回動規制片が前記内壁面に沿って延出され、同内壁面と当接可能に設けられている請求項1に記載の斜板式圧縮機におけるピストン構造。」(以下、各々「本件特許発明1」、「本件特許発明2」といい、総称して「本件特許発明」という。)

2.当審の判断
2.-1 無効理由1
(1)請求人の無効理由1の主張概要
請求人は、審判請求書及び弁駁書で、概ね次のように主張した。

ア.「原出願の考案(「原考案」ともいう。)において微回動規制片は、前記内壁面と当接し、その当接する微回動規制片を延出形成するので、微回動規制片の全面がシリンダブロックの内壁面と当接していることが明らかである。また、この当接は、後記実施例及び図2の記載から明らかなように「常時接触」である。
前記請求項の対比から、原考案は、本件特許発明の請求項2に記載された発明すなわち『前記微回動規制片が前記内壁面に沿って延出され』にほかならない。これに対し、本件特許発明は、『微回動規制片』はハウジングと当接可能な微回動規制片へ変更されている。
このように、原考案の「前記シリンダブロックの内壁面とで当接し」は、「当接可能」とは異なるものであることが明らかであるにも拘らず、本件特許発明は、当接していなくても或るときハウジングに当接すればよい、又は、ハウジングに全面でなくその一部でも当接すればよい、とする構造(当接可能)へ変更されている。」(審判請求書第4頁第1行?同14行)

イ.「本件発明の場合は、「微回動」の意味内容は、原因手段たる常時接触構造によって、結果たる微回動はピストンの寸分の回動をも許容しないもの(つまり従来技術とは異なる態様並びに極めて僅少な微回動範囲の微回動規制)であることが明白である。」(弁駁書第6頁第2行?同5行)

(2)被請求人の無効理由1に対する主張概要
被請求人は答弁書において、訂正明細書の特許請求の範囲に基づく発明を本件特許発明として、概ね以下のような主張をした。

ア.「本件発明の微回動規制片は、訂正後の特許請求の範囲請求項1に示されるように「片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、前記シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が設けられ、該微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている」ものである。
本件発明においてピストン頸部の両側に延出形成された微回動規制片は、そもそもピストンの「微回動」を規制するものであり、この「微回動」とは原出願明細書の段落0002「ピストンが微回動して同ピストンと斜板とが接触することがあった。」、同段落0003「そこでピストンの微回動を規制してピストンと斜板との接触を防止するため・・」との記載から、ピストンと斜板とが接触するに至る回動を意味している。
したがって、微回動規制片は、ピストンの寸分の回動をも許容しないものではでなく、上記定義にいう「微回動」を規制するものであれば足りる。」(答弁書第4頁第14行?同26行)

イ.「ピストンの回動特性を考慮すれば、両側の微回動規制片のうち一方の片がシリンダブロックに当接することでピストンの微回動が規制され、そのときに、他方の片がシリンダブロックに当接するか否かは問題ではない。本件特許明細書では、この一方の微回動規制片についてシリンダブロックに当接すると説明しているのである。つまり、両側の微回動規制片のうち一方の片と他方の片とが別のタイミングでシリンダブロックに当接することで、ピストンの往復動に伴うピストンの微回動を規制しているのである。そのため、両側の微回動規制片が同時にシリンダブロックに当接する必要性はない。」(答弁書第5頁第13行?同20行)

(3)当審の検討、判断
本件特許は、原明細書又は図面に記載されている事項の範囲内であるかどうかについて検討する。
(3)-1 原明細書及び図面
原明細書及び図面には、例えば以下の記載がある。

ア.「【0002】【従来の技術】従来、この種の斜板式圧縮機としては、斜板を回転させたとき、即ちピストンをシリンダボア内にて往復動させたとき、ピストンが微回動して同ピストンと斜板とが接触することがあった。これらが接触した場合には、その接触時の騒音を発生したり、ピストンと斜板との接触部が摩耗するという不具合を生じることがあった。」

イ.「【0003】そこでピストンの微回動を規制してピストンと斜板との接触を防止するために、本出願人は次のような斜板式圧縮機を提案している(実開昭62-133973号公報)。
【0004】即ち、図4に示すように、一対の頭部21を頸部22により連結してなる両頭ピストン20に対して、その頸部22上部に高さHの平面部23を形成する。
また、前記ピストン20を往復動可能に収容するシリンダボア(図示せず)には、前記ピストン20の平面部23を嵌合し、ピストンを軸方向に案内する溝部が、前記平面部23の高さHに平面部23とのクリアランスを加えた深さで形成されている。そして、斜板を回転させ、前記シリンダボア内でピストン20を往復動させても、前記ピストン20の平面部23とシリンダボアに形成された溝部とが係合関係にあるため、前記ピストン20は斜板と接触する前にその微回動が規制されるようになっている。従って、ピストン20と斜板外周との接触が防止される。
【0005】【考案が解決しようとする課題】しかしながら、上記斜板式圧縮機のシリンダボアには、ピストン20に形成された平面部23の高さHと、その平面部23とのクリアランスを加えた分の深さで溝部が形成されているため、シリンダボア周壁からシリンダブロック外周までの間の肉厚が薄くなる。その結果、その肉厚が薄くなった分だけシリンダブロックの強度が低下する。そして、その低下された分の強度を補充するために、シリンダボア周壁からシリンダブロック外周までの肉厚を厚くする必要があった。
【0006】従って、その肉厚を厚くするためにはシリンダブロックの外周を大きくしなければならない。その結果、圧縮機が大型化となり、圧縮機の取り付けスペースが限定されるという問題があった。また、特にコンパクト性を必要とする片頭ピストンを使用する斜板式圧縮機に至ってはその問題は深刻である。
【0007】本考案は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的はシリンダブロック外周を小さくして圧縮機の小型化を図ることができる斜板式圧縮機のピストン構造を提供することにある。」

ウ.「【0008】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明では、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダブロックに形成されたシリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、前記ピストンの頸部の両側に、前記シリンダブロックの内壁面と当接し、ピストンの回動を規制する微回動規制片を延出形成した斜板式圧縮機におけるピストン構造をその要旨とする。」

エ.「【0009】【作用】 従って、本発明によれば、駆動軸の回転にともない斜板が回転した際、ピストンがシリンダボア内で往復動される。このとき、ピストンは微回動しようとするが同ピストンの頸部の両側に一体形成された微回動規制片とシリンダブロックの内壁面とが当接しているため、斜板外周とピストンとは接触されない。従って、斜板及びピストンの接触による摩耗及び騒音を生じることがない。」(なお、下線は当審で付した。以下のオ.、カ.も同様)

オ.「【0015】前記シリンダブロック1に形成されたシリンダボア1aには、片頭ピストン8が往復動可能に収容されている。この片頭ピストン8の頸部8aの内側には一対の支持凹部8bが対向した状態で形成され、また、図2及び図3に示すように、前記頸部8aの両側には略長方形板状の微回動規制片8cが一体形成されている。この微回動規制片8cはその上面8dが、片頭ピストン8の最上部Mよりも低く、前記シリンダボア1a内に片頭ピストン8が収容されているとき、シリンダボア1a内壁以外のシリンダブロック1の内壁面1bと常時接触する位置に形成されている。」

カ.「【0018】・・・駆動軸4を駆動するとそれに伴って斜板7が回転される。そして、その回転運動はさらにシリンダボア1a内にて片頭ピストン8の前後動に変換される。このとき、片頭ピストン8はシリンダボア1a内にて時計方向又は反時計方向(図の矢印方向側)に微回動しようとする。しかし、片頭ピストン8の微回動規制片8cはシリンダブロック1の内壁と接触された状態にあるため、片頭ピストン8の微回動規制片は8cはシリンダボア1a内を前後動したときでも微回動が規制される。」

キ.「【0019】・・・また、前記片頭ピストン8の頸部8aに一体形成された微回動規制片8cの上面8dは、片頭ピストン8の最上部Mよりも低い位置で形成されているため、従来のようにシリンダブロック1の内壁に凹状の溝部を形成する必要がない。その結果、シリンダブロック1外周の一部を盛り上げてシリンダブロック1外周からシリンダボア1a内壁までの間の肉厚を調整する必要がなくなるので、シリンダブロック1外径を従来よりも大幅に小さくできる。従って、斜板式圧縮機全体を小型化でき、車両設計時の自由度を広げることができる。」

ク.「【0022】【考案の効果】以上詳述したように、本考案によれば、シリンダブロック外周を小さくして圧縮機の小型化を図ることができるという優れた効果を奏する。」

ケ.上記ア.の記載からすれば、以下の点がわかる。
ピストンの微回動とは、ピストンと斜板とが接触を起こす程度の角度の回動である。

コ.上記ア.?エ.の記載からすれば、以下の点がわかる。
ピストンを往復動させたとき、ピストンが微回動してピストンと斜板とが接触する現象を防止するために、微回動規制片は設けられたものであり、ピストンが回動してピストンと斜板とが接触する前に、微回動規制片がシリンダブロックに当接すれば、ピストンと斜板とが接触するような微回動は規制される。

サ.上記イ.?ク.の記載からすれば、以下の点がわかる。
原明細書又は図面に記載された発明は、リンダブロック外周を小さくして圧縮機の小型化を図ることができる斜板式圧縮機のピストン構造を提供することを目的とし、そのために、特に、微回動規制片8cを片頭ピストン8の頸部8aの両側に形成することによって、シリンダブロック外周を小さくして圧縮機の小型化を図ることができるという効果を奏するものである。

(3)-2 判断
本件特許明細書の特許請求の範囲における「シリンダブロックと当接可能な微回動規制片」なる構成は、原明細書又は図面に記載した事項の範囲内であるかについて検討する。

ア.本件特許明細書が対象とする斜板式圧縮機のような機械製品においては、部品を完全に寸法どおり製作することは、ほとんど不可能で、多少の許容範囲(公差)内の誤差は存在するものであることは技術常識といえることである。してみると、原明細書に添付された図2、3において、微回動規制片8cの上面8dがシリンダブロック1の内壁面1bと全面で接触しているかのような記載があるものの、上記許容範囲(公差)内の誤差にもとずく僅少な隙間は存在し、ある程度は回動して一部で当接すると解するのが上記技術常識と合致する。そして、このことと同趣旨のことを、請求人も弁駁書で「極めて僅少な微回動規制範囲の微回動」(第6頁第4行?同5行)と述べている。

イ.上記ア.で述べたように、原明細書及び図面に記載された実施例においても、極めて僅少としても、ある程度は回動して、一部で当接すると解される。また、上記(3)-1 原明細書及び図面 のコ.で述べたように、ピストンが回動してピストンと斜板とが接触する前に、微回動規制片がシリンダブロックに当接すれば、ピストンと斜板とが接触するような微回動は規制される。これらのことを合わせ考えると、原明細書及び図面に記載された実施例においても、微回動規制片がシリンダブロックに当接して、ピストンと斜板とが接触するような微回動が規制されていると解される。

ウ.上記(3)-1 原明細書及び図面 のサ.によれば、原明細書又は図面に記載された発明が、圧縮機の小型化を図ることができるという効果を奏するためには、微回動規制片8cが片頭ピストン8の頸部8aの両側に位置して形成されれば足りることが理解される。そして、上記の効果を奏するためには、請求人が、原明細書の実施例に関する記載、及び図2、3の記載に基づいて主張する、両側の微回動規制片の全面がシリンダブロックの内壁面と当接していることまでは、必要としない。

エ.請求人は原明細書【0009】【0015】【0018】の下線部(上記(3)-1 原明細書及び図面 エ.?カ.参照)の記載から、両側の微回動規制片が常時接触する旨の主張をしており、これについて検討する。
斜板が回転してピストンがシリンダボア内にて往復動しているとき、ピストンには時計方向、又は反時計方向に回動しようとしている(原明細書の段落【0018】)。この回動によって、微回動規制片は通常、シリンダブロックに当接しているので、さらに回動してピストンと斜板とが接触しようとしても、その接触は防止される。このことが、上記(3)-1 原明細書及び図面 のウ.に示される課題を解決するための手段には、「シリンダブロックの内壁面と当接し、ピストンの回動を規制する微回動規制片」と記載されており、上記(3)-1 原明細書及び図面 のエ.に示される作用には、「ピストンは微回動しようとするが同ピストンの頸部の両側に一体形成された微回動規制片とシリンダブロックの内壁面とが当接しているため、斜板外周とピストンとは接触されない。」と記載されていると解される。
したがって、【0009】【0015】【0018】の記載において、請求人が主張するように「常時接触する位置」の記載及び図面の記載があるからといって、原明細書又は図面には、微回動規制片の全面がシリンダブロックの内壁面と当接したもののみが開示されているとまではいえない。

オ.以上ア.?エ.を総合的に勘案すれば、
原明細書又は図面には、微回動規制片がシリンダブロックに当接可能とすることによって、微回動を規制しようとする発明が開示されているといえる。
なお、請求人が審判請求書(第4頁第18行?同19行)で「微回動規制片の当接が、シリンダブロックからハウジングへと拡張的に変更されている」旨の主張をしているものの、この点に関しては、全文訂正明細書で訂正されているので、主張の理由は解消している。

(3)-3 無効理由1のむすび
したがって、本件特許は、原明細書又は図面すなわち原出願である実用新案登録出願の出願当初の明細書又は図面に記載されている事項の範囲内であり、出願日は遡及して原出願の実用新案登録出願日である平成3年11月29日となる。そして、原出願の公開実用新案公報は公知とはならないことから、本件特許発明は、特許法第29条第1項の規定によって、特許を受けることができないとすることはできない。よって、本件特許は、特許法第123条第1項2号の規定により、無効とすることはできない。

2.-2 無効理由2
(1)請求人の無効理由2の主張概要
請求人は、「進歩性を具備しないから特許法第29条第2項により特許を受けることができない。」として、その主張を立証するための証拠として甲第1号証から甲第4号証を提出した。そして、審判請求書で、概ね次のように主張した。

ア.「請求項1に係る特許発明と、甲第1号証の発明とを対比すると両者は、まずもって、『A:ハウジング内で、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、』の点で完全に一致する。次に、本件特許発明が、『B:前記ピストンをシリンダポア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成し、』としている点について、甲第1号証の発明は、「b:前記ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる両頭ピストンにて構成し、」であり、また、本件特許発明が、『C:該片頭ピストンの頸部には、同頸部から両側に延出され、前記ハウジングと当接可能な微回動規制片が設けられた斜板式圧縮機におけるピストン構造。』としている点について、甲第1号証の発明は、「c:該両頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され前記ハウジングと当接可能な微回動規制片が設けられた斜板式圧縮機におけるピストン構造。」であり、畢寛、両者は、回り止め構造とは関連しない、『片頭ピストン』と「両頭ピストン」の点で相違するに過ぎない。」(審判請求書第37頁第9行?同38頁第5行)

イ.「この種の回り止め構造を案出するに際し、頸部及び一つのピストン部からなる片頭ピストンと、頸部及び二つのピストン部からなる両頭ピストンの技術は、頸部を必須共通技術事項とすることも相僕って、当然、相互に参酌し合うものであり、一方から他方への構成要素の転用とりわけ頸部に関する技術事項の転用は、極めて容易になされ得るものである。」(審判請求書第40頁第19行?同23行)

ウ.「甲第3号証に記載された従来公知の発明は、本件特許発明と同様の斜板式圧縮機であり、この甲第3号証の発明の第1図及び第2図には、ピストン20の左側上部に、当業者をして微回動規制片を想起せしめる線図が記載されている。従って、甲第3号証発明そのものからでも本件特許発明を案出することは容易である」(審判請求書第40頁第24行?同41頁第2行)

エ.「甲第1号証発明、甲第2号証発明や甲第4号証発明の、両頭ピストンに構成された回り止め構造を、甲第3号証の発明の片頭ピストンに適用することは容易想到である。また、甲第1号証発明や甲第2号証発明に、甲第3号証の発明を組み合わせることについて、これを困難とする特段の事由もない。」(審判請求書第41頁第2行?同6行)

(2)被請求人の無効理由2に対する反論概要
被請求人は、訂正請求をした上で、とりわけ構成要件「該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、前記シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が設けられ、該微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造。」(以下、「構成要件C」という。)に相当する構成がないとして、答弁書で下記のように概ね審判請求書に対して反論した。

ア.「本件発明は、微回動規制機能を備える上で、シリンダブロック外周の大型化を抑制するという片頭ピストンにより強く求められる事情を考慮して上記構成要件Cを採用する。構成要件Cに記載する微回動規制片の構成によって、斜板式圧縮機の取り付けスペースが限定されなくなるため、車両設計時の自由度が向上するという作用効果が得られるのであり、こうした点に発明の進歩性を見出すことができる。」(答弁書第9頁第29行?同10頁第5行)

イ.「甲第2号証に記載されている回動防止手段300もピストン7の頭部の最上部に対して盛り上がるように形成されているものと解され、結果として、回動防止手段300そのものがピストンの最上部をなしているため、構成要件Cの「上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている」に相当する構成を有しておらず、その示唆もない。」(答弁書第13頁第8行?同12行)

ウ.「甲第3号証には本件請求項1に係る発明の微回動規制片を想到せしめる記載もない。さらに、甲第4号証には、シリンダ室に形成された吸気通路の開閉部材が記載されているのみであり、これは本件請求項1に係る発明の微回動規制片と機能も思想も異なるものである。」(答弁書第15頁第5行?同10行)

(3) 請求人の弁駁書での主張及び答弁書への反論概要
請求人は弁駁書で、請求人の答弁書に対してア.オ.と反論するとともに、さらにイ.?エ.の主張をした。

ア.「被請求人は、答弁書において、圧縮機大型化の抑制がとりわけ片頭ピストンの構造では求められる旨主張し、構成要件Cが目的達成の構成であるとしている。しかしながら、圧縮機大型化の抑制はシリンダブロック外周の大きさと密接不可分に関連するものであるところ、前述したように、構成要件Cにはシリンダブロックに微回動規制片が当接可能とのみ規定しているのであって、これでは発明目的とシリンダブロック外周の大きさとの関係が不明であるから、構成要件Cが目的達成の構成であるという主張は当を得ないものである。」 (弁駁書第6頁第16行?同24行)

イ.「本件発明は、原明細書の【0020】で「なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、…上記実施例においては、…片頭ピストン8で具体化したが、…両頭ピストンで具体化してもよい。」と記載されまた、審判請求書の(3B-3-3)『片頭ピストン』「両頭ピストン」の相違点について。」で述べたように、本件発明は片頭ピストン、両頭ピストンのいずれにも適用される技術であることは明らかである。」(弁駁書第6頁第25行?同7頁第6行)

ウ.「甲第1号証の第4図のピストンは、平面部12dを切欠形成しているので、この平面部12dが、ピストンの最上部よりも低い位置に形成されていることは明らかである。
すなわち、第4図の平面部12dが切欠形成された結果、この平面部12dにおける左右の端部(回動規制部)が、図中、符号11で示されるシリンダボアの頂部(ピストンの最上部)よりも低い位置に形成されることになる。そして、平面部12dにおける左右の端部はシリンダブロック1の平面部1cと当接可能であるから、甲第1号証の第4図のピストンは答弁書の構成要件Cに合致する。」(弁駁書第7頁第5行?同13行)

エ.「甲第2号証発明の第3図は、円筒状の鞍部の左右端がピストンの最上部よりも低い位置に形成されているものを示している。尚、この点は、第2図からも見て取れるものである。 また、被請求人は、答弁書において、甲第2号証発明の回転防止手段をとらまえて、回転防止手段300そのものがピストンの最上部をなしているため、構成要件Cに相当しないと主張しているが、明らかな誤解である。いうまでもなく回転防止手段300の回転防止部は、当該回転防止手段300の左右端部であり、これら左右端部が、ピストンの最上部よりも低い箇所に位置しているのは、図面上、明らかである。」(弁駁書第7頁第14行?同8頁第6行)

オ.「被請求人は、甲第3号証発明並びに甲第4号証発明は微回動規制片を想起することができない旨論難するが、甲第3号証発明の場合は片頭ピストンの頸部近傍に線図が記載されており、また、甲第4号証発明の場合はまさに甲第1号証発明の第2図や甲第2号証発明の第3図に近似する線図が記載されているのであるから、少なくとも微回動規制片を示唆するものであることは明白である。」(弁駁書第8頁第8行?同第13行)

(4)当審の判断(下線部は、当審で付した。)
(4)-1甲各号証の発明
(4)-1-1甲第1号証の発明
ア.「圧縮機が運転されると斜板が回転し、この回転力により、又、シリンダポア内の圧縮反力により、ピストンがシリンダポア内で微回動する。このとき、ピストン頸部の内側テーパ面が斜板の外周面に接触する以前にピストン側の微回動規制部材がシリンダブロック側の微回動規制部材に接触され、ピストン頸部のテーパ面と斜板の外周面とが接触しない。」(甲第1号証第5頁第1行?同第17行)

イ.「シリンダブロック1,2には駆動軸9と平行に、かつ該駆動軸9を中心とする放射状位置に5対(一対のみ図示)のシリンダボア11が穿設され、各シリンダボア11には一対の頭部12aを頸部12bにより連結してなる両頭のピストン12が嵌挿され、各ピストン12は軸受装置としての半球状のシュー13を介して斜板10に係留されており、該斜板10の回転力によってピストン12はシリンダボア11内を往復動可能である。 前記両頭ピストン12の頸部12bの内側には前記斜板の外周面10aと所定のクリアランスC1を以て対向するテーパ面12bが形成されている。第1図及び第2図に示すように前記ピストン12頸部12bのテーパ面120と反対側外周面には微回動規制部材としての平面部12dが一体に形成され、前記シリンダブロック1の内壁面には前記平面部12dと所定のクリアランスC2を以て対向する微回動規制部材としての平面部1cが一体に形成されている。そして、前記クリアランスC2をクリアランスC1よりも小さくして、ピストン12のテーパ面12cが斜板10の外周面10aに衝突する以前に平面部12dが平面部1cに接触するようにしている。」(甲第1号証第6頁第12行?同7頁第15行)

ウ.「(1)第4図に示すように、ピストン12の頸部12bの外周面に平面部12dを切欠形成すること。
(2)第5図に示すように、シリンダブロック1の内壁面に面一の平面部10を設け、前記ピストン12側の平面部1dを上方へ延長すること。
(3)第6図に示すように、ピストン12の頸部12b外周面の片側のみに平面部12dを形成すること。
(4)第7図に示すようにピストン12の頸部12bに微回動規制部材としての規制ピン24を立設してシリンダボア11内壁に形成した微回動規制部材としての凹部11aに所定のクリアランスC2を以て嵌入すること。」(甲第1号証第10頁第1行?同14行)

エ.図面から、平面部12dの上面は、第1図?第3図、第6図、第7図の実施例では、ピストンの最上部と同じ位置に構成されている。また、第4図の実施例では、平面部12dの上面は、ピストン最上部より低い位置に構成されている。

オ. 以上ア.?エ.の記載から、甲第1号証には以下のことが記載されていることがわかる。
シリンダブロック1,2内で、駆動軸9と一体的に回転する斜板10の両面と、シリンダブロックに形成されたシリンダボア11内に往復動可能に配設されたピストン12の頸部12bとの間に介在された半球状のシュー13を介して前記斜板12の回転力をピストン12の往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機が開示されいる。そして、ピストン12はシリンダボア11内で往復動するピストン頭部12aと頭部に連結された頸部12bとからなる両頭ピストンであって、両頭ピストンの頸部12bには、シリンダブロック平面部1cと所定のクリアランスC2を以て対向する微回動規制部材としてのピストン平面部12dが左右両側に形成され、微回動規制部材であるピストン平面部12dは、ピストン12の最上部位置に形成されているもの(第1、2図の実施例)と微回動規制部材として切欠形成したピストン平面部12dが設けられ、ピストン12の最上部より低い位置に形成されているもの(第4図の実施例)が記載されていることがわかる。
よって、甲第1号証には以下の発明が記載されている。
「シリンダブロック1,2内で、駆動軸9と一体的に回転する斜板10の両面と、シリンダブロックに形成されたシリンダボア11内に往復動可能に配設されたピストン12の頸部12bとの間に介在されたシュー13を介して前記斜板12の回転運動を前記ピストン12の往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、
前記ピストン12をシリンダボア11内で摺動するピストン頭部12aと該頭部に連続形成した頸部12bとからなる両頭ピストンにて構成し、該両頭ピストンの頸部には、シリンダブロック平面部1cと所定のクリアランスC2を以て対向する微回動規制部材としてのピストン平面部12dが左右両側に形成され、該微回動規制部材の上面は、ピストン12の最上部位置に形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造」(第1、2図の実施例対応)
及び「シリンダブロック1,2内で、駆動軸9と一体的に回転する斜板10の両面と、シリンダブロックに形成されたシリンダボア11内に往復動可能に配設されたピストン12の頸部12bとの間に介在されたシュー13を介して前記斜板12の回転運動を前記ピストン12の往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、
前記ピストン12をシリンダボア11内で摺動するピストン頭部12aと該頭部に連続形成した頸部12bとからなる両頭ピストンにて構成し、該両頭ピストンの頸部には、シリンダブロック平面部1cと所定のクリアランスC2を以て対向する微回動規制部材としてのピストン平面部12dが設けられ、該微回動規制部材の上面は、ピストン12の最上部より低い位置に形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造」(第4図の実施例対応)(以下、「甲第1号証の発明」という。)

(4)-1-2 甲第2号証の発明
ア.「実用新案登録請求の範囲
複数のシリンダ空間を有するハウジングと、前記シリンダ空間内に摺動自在に配設されたピストンと、前記ハウジングに回転自在に支持されたシャフトと、このシャフトに傾斜可能に係合し、シャフトと一体回転する斜板と、この斜板の揺動を前記ピストンに伝達するシューとを備え、前記ピストンに回転防止手段を形成するとともに、前記シリンダにこの回転防止手段と係合する係合手段を設け、前記ピストンの前記シリンダ内における回転を規制した斜板型可変容量圧縮機。」(甲第2号証 実用新案登録請求の範囲)

イ.「圧縮機ハウジング120は上述のハウジング103およびハウジング108より形成される。」(甲第2号証第5頁第12行?同14行)

ウ.「シリンダ50内にはピストン7か往復摺動自在に状態で配設されている。またこのピストン7は斜板10をまたぐような形で配設され、かつ斜板10とピストン7との間にはシュー9が配設される。シュ一割は斜板10の両側に配設されており、斜板10に配設された状態で周の外形が球をなす形となっている。」(甲第2号証第6頁第19行?同7頁第5行)

エ.「ピストン7の外周には第3図に示すように回転防止手段300が形成されている。ここでピストン7は回転防止手段300とともにアルミニウム合金もしくは設計料より一体整形されている。そしてピストン7の円筒状部303は回転防止手段300とは別に旋盤等により高精度に切削整形される。そしてこの円筒状部がハウジング103,108のシリンダ空間50内に摺動自在に配設されることになる。回転防止手段300はピストンの中央部外方に形成される。この回転防止手段300も切削等により仕上げ加工され、ハウジング103,108の係合溝310部分に摺動自在に配設される。なおハウジング103,108の係合溝310は第4図に示すように圧縮機の中心部分に形成される。次に上記構成よりなる圧縮機の作動を説明する。図示しない電磁クラッチが接続され、自動車走行用エンジンの回転駆動力がシャフト100に伝達されると、シャフト100および斜板10は圧縮機内で回転する。ここで斜板10はシャフト100の軸栓(「軸線」の誤記。)に対し傾斜しているので、シャフト100の回転にともない斜板10は揺動運動を行う。この揺動が周9を介してピストン7に伝達され、ピストン7はシリンダ50内で往復移動を行う。」(甲第2号証第9頁第3行?同10頁第6行)

オ.「ピストン7がシリンダ50内で回転するようでは、ピストン7の端部307が斜板10の先端199に衝突することになり、上述したように異音発生の原因となる。それに対し、本例の圧縮機ではピストン7に回転防止手段300が一体形成されており、この回転防止手段が係合溝310内に係合している。従って回転防止手段300と係合溝310との係合により、ピストン7がシリンダ50内で回転することが防止される。なお上述の例では回転防止手段として第3図に示すように円筒状の鞍部としたが、回転防止手段の形状を他のものとしてもよいことはもちろんである。」(甲第2号証第13頁第18行?同14頁第11行)

カ.図面から、ピストン円筒状部303とピストン円筒状部303との間には連続形成した頸部がある両頭ピストンの斜板式圧縮機で、図1から、ハウジングに回転防止手段300がピストンの往復動にともなって摺動する溝が形成されている。

キ. 以上ア.?カ.の記載から、甲第2号証には以下のことが開示されていることがわかる。
ハウジング103,108で構成した圧縮機ハウジング120内で、シャフト100と一体的に回転する斜板10の両面と、ハウジング103,108に形成されたシリンダ空間50内に往復動可能に配設されたピストン7との間に介在されたシュー9を介して前記斜板10の回転運動を前記ピストン7往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機が開示されている。そして、ピストン7をシリンダ空間50内で摺動し、ピストン円筒状部303とピストン円筒状部303との間には連続形成した頸部がある両頭ピストンであって、両頭ピストンの頸部には、頸部から両側に延出され、ハウジングの係合溝310と当接可能な回動防止手段が設けられ、円筒状の鞍部形状の回動防止手段300自体は、両頭ピストンの最上部より上の位置に形成されているものの、回転防止手段300の左右端部に着目するとピストンの最上部よりも低い箇所に位置している斜板式圧縮機におけるピストン構造が開示されている。さらに、ハウジングに回転防止手段300がピストンの往復動にともなって摺動する溝が形成されている。
よって、甲第2号証には以下の発明が記載されている。
「圧縮機ハウジング120内で、シャフト100と一体的に回転する斜板10の両面と、ハウジング103,108に形成されたシリンダ空間50内に往復動可能に配設されたピストン7との間に介在されたシュー9を介して前記斜板10の回転運動を前記ピストン7往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、
前記ピストン7をシリンダ空間50内で摺動するピストン円筒状部303と該円筒状部303に連続形成した頸部とからなる両頭ピストンにて構成し、該両頭ピストンの頸部には、同頸部から両側に延出され、前記ハウジングの係合溝と当接可能な回動防止手段300が設けられ、該回動防止手段300の左右端部は、両頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造。」(以下、「甲第2号証の発明」という。)

(4)-1-3 甲第3号証の発明
ア.「斜板10の所定の円周上には斜板10を挟むようにして、球面を有する一対のスライデイングシュー19がその球面を外側にして、斜板10の上記円周上を摺動可能に配設され先端部が2叉に分離されたピストンロッド20がスライデイングシュー19を挟持するようにして配設され、ピストンロッド20の一端(先端部)はスライデイングシュー19上を摺動可能である。またピストンロッド20の先端部はシリンダポア2a内で滑動可能にピストン21が設けられている。即ち、ピストン21の一端が実質的にスライデイングシュー19を挟持していることになる。なお、斜板10上には上述した構造のピストンが複数本設けられている。」(甲第3号証の第4欄第34行?同5欄第3行)

イ.「1……シリンダーケーシング、2……シリンダブロック、3……フロントハウジング、4……シャフト軸」(甲第3号証の第4頁第8欄欄第19行?同第21行)

ウ.図面から、ピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンの斜板式圧縮機におけるピストン構造。

エ.以上ア.?ウ.から、甲第3号証には以下の点が記載されていることがわかる。
シリンダケーシング1内で、シャフト軸4と一体的に回転する斜板10の両面と、シリンダケーシング1に形成されたシリンダボア2a内に滑動可能に配設されたピストンロッド20の一端がスライディングシュー19を挟持して、斜板10の回転運動をピストン21の往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機が開示されており、ピストン21をシリンダボア2a内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストン構造を採っている。
よって、甲第3号証には、以下の発明が記載されている。
「シリンダケーシング1内で、シャフト軸4と一体的に回転する斜板10の両面と、シリンダケーシング1に形成されたシリンダボア2a内に往復動可能に配設されたピストンロッド20の一端部との間に介在されたスライディングシュー19を介して前記斜板10の回転運動を前記ピストン21の往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、前記ピストン21をシリンダボア2a内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成してなる斜板式圧縮機におけるピストン構造」(以下、「甲第3号証の発明」という。)

(4)-1-4 甲第4号証の発明
甲第4号証には、以下の記載がある。
ア.「図中20はアルミニウム合金製のシリンダハウジングで内部にシリンダ室10を5ヶ所有する。第1図では、シリンダ室10は1ヶ所のみ示されているが、5つのシリンダ室10はそれぞれ並行に形成されている。このシリンダハウジング20内にシャフト1がベアリング11及び21を介して回転自在に支持されている。尚、シャフト1上には支持部材3が摺動自在に取付けられており、この支持部材を3を介してベアリング21はシャフト1をスプール22に支持する。そして、スプール22はシリンダハウジング20に形成された円筒状部23及びリヤハウジング24に形成された円筒状部25によって摺動自在に支持される。斜板2がピストン4を往復動する時に生じるスラスト力はスラストベアリング26および27によって支持される。」(甲第4号証第3頁左下欄第3行?同第18行)

イ.「斜板2の端部にはピストン4がシュー36,37を介して連結する。2つのシュー36,37は斜板2に取付けられた状態で単一の球形外面を形成するようになっている。斜板2の回転を伴う揺動運動はシュー36,37を介してピストン4に伝達される。」(甲第4号証第3頁右下欄第15行?同20行)

ウ.「また、上述の例では開閉部材をピストン4と一体成形したが、別体に形成された開閉部材60をピストン4上に取付けるようにしてもよい。」(甲第4号第6頁左下欄第16行?同第18行)

エ.第3図には、頸部から両側に延出された開閉部材がシリンダハウジングに当接した状態で設けられ、ピストン4の頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる両頭ピストンを採っている。開閉部材の上面は、両頭ピストンの最上部よりも高い位置に形成されている。

オ. 以上ア.?エ.から、以下の点がわかる。
シリンダハウジング20内で、シャフト1と一体的に回転する斜板2の両面と、シリンダハウジング20に形成されたシリンダ室10内に往復動可能に配設されたピストン4の頸部との間に介在されたシュー36,37を介して斜板2の回転運動をピストン4の往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機が開示されている。そして、ピストン4をシリンダ室10内で摺動するピストン4の頭部と頭部に連続形成した頸部とからなる両頭ピストンにて構成し、両頭ピストンの頸部には、頸部から両側に延出され、シリンダハウジング20と当接可能な開閉部材60が設けられ、開閉部材60の上面は、両頭ピストンの最上部よりも高い位置に形成されている。
よって、甲第4号証には、以下の発明が記載されている。
「シリンダハウジング20内で、シャフト1と一体的に回転する斜板2の両面と、ハウジング20に形成されたシリンダ室10内に往復動可能に配設されたピストン4の頸部との間に介在されたシュー36,37を介して前記斜板2の回転運動を前記ピストン4の往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、
前記ピストン4をシリンダ室10内で摺動するピストン4頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる両頭ピストンにて構成し、該両頭ピストンの頸部には、同頸部から両側に延出され、前記シリンダハウジングと当接可能な開閉部材が設けられ、該開閉部材の上面は、両頭ピストンの最上部よりも高い位置に形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造。」(以下、「甲第4号証の発明」という。)

(4)-2 対比 本件特許発明1と甲各証の発明との対比・判断
(4)-2-1 対比
本件特許発明1と甲第2号証の発明と対比すると
甲第2号証の発明の「圧縮機ハウジング120」は本件発明の「ハウジング」に相当し、「ハウジング103,108」は「シリンダブロック」に、「ピストン円筒状部303」は「ピストン頭部」に、「シャフト100」は「駆動軸」に、「シリンダ空間50」は「シリンダボア」に、「回動防止手段」は「微回動規制片」に各々相当するから、両者は
「ハウジング内で、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダブロックに形成されたシリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、
前記ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなるピストンにて構成し、該ピストンの頸部には、同頸部から両側に延出され、前記シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造。」の点で一致し、

1)本件特許発明1が片頭ピストンであることに伴って、片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に微回動規制片を設けたのに対して、甲第2号証の発明は両頭ピストンであって、微回動規制片が頭部と反対側の端部とはいえない点(以下、「相違点1」という。)

2)本件特許発明1が、微回動規制片の上面は、ピストンの最上部よりも低い位置に形成されているのに対して、甲第2号証の発明は回動防止手段300の左右端部が、ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている点(以下、「相違点2」という。) で相違する。

(4)-2-2 判断(「上面前面」の下線は、当審で付した。)
そこでまず、相違点2について検討する。
請求人は弁駁書で「第3図は、円筒状の鞍部の左右端がピストンの最上部よりも低い位置に形成されているものを示している。尚、この点は、第2図からも見て取れるものである。」(第7頁第14行?同16行)また、「回転防止手段300の回転防止部は、当該回転防止手段300の左右端部であり、これら左右端部が、ピストンの最上部よりも低い箇所に位置しているのは、図面上、明らかである。」(第8頁第6行?同8行)と主張している。なるほど、甲第2号証に記載される回転防止手段300は、第1図の103,108に設けた回転防止手段300が入る溝、及び第3図を参酌すると、ピストン7の最上部より上からの円筒状の鞍部を形成しており、鞍部の左右端部だけに着目すればピストン最上部より低い位置とはいえる。
しかしながら、そもそも、甲第2号証の回転防止手段300である円筒状の鞍部自体は、ピストン7の最上部より上に配置されているといえ、「ピストン7に回転防止手段330が一体形成されており、この回転防止手段が係合溝310内に係合」(甲第2号証第14頁第2行?同4行)と記載されるように、回転防止手段300である鞍部全体が係合溝310内に入ることで、微回動が規制されることが開示されているのであって、円筒状の鞍部の左右端部がピストン最上部より低いからといって、その低い部分のみを取りだし本件特許発明1の微回動規制片とする契機もなく、本件特許発明1のように微回動規制片の上面全面がピストン最上部より低くなっていること(原明細書及び図面でも明らかであり、口頭審理調書でも両者に争いのない事実として確認されている。)は、甲第2号証には記載も示唆もされていない。
さらに、甲第2号証の発明は、ハウジング103,108に回転防止手段300の入る溝が形成されている分薄くなっているものであって、本件特許発明1の従来例の課題である強度低下を招くことになり、本件特許発明1でいうシリンダボア周壁からシリンダブロック外周までの肉厚を厚くすることが必要となるものである。
すなわち、本件特許発明1は微回動規制片の上面全面がピストン最上部より低くすることで、上記従来技術の問題点である強度の低下を解決しつつ、しかも、シリンダブロック外周を小さくするために、上記構成を採用したものであって、相違点2に係る構成が甲第2号証の発明から当業者が容易に推考できたとういうことはできない。
そして、本件特許発明1は上記構成をとることによって、甲第2号証の発明からは予測できない「シリンダブロック外周を小さくして圧縮機の小型化を図る(本件特許明細書の図2に示されるように、ピストンの両側のシリンダブロック外周が小さくなる。)」という格別な作用効果を奏するものである。

次に、甲第1号証の発明に関して、請求人の「第4図のピストンは、平面部12dを切欠形成しているので、この平面部12dが、ピストンの最上部よりも低い位置に形成されていることは明らかである。すなわち、第4図の平面部12dが切欠形成された結果、この平面部12dにおける左右の端部(回動規制部)が、図中、符号11で示されるシリンダポアの頂部(ピストンの最上部)よりも低い位置に形成されることになる。」(弁駁書第7頁第5行?同11行)との主張はあるものの、第4図の実施例における微回動規制を行う平面部12dは、ピストン頸部から両側に延出されたものではないし、強度の低下の防止、圧縮機の小型を図るものでもなく、相違点2に係る構成を想起できるものではない。
請求人の「甲第1号証発明は、微回動規制片を左右方向へ延出させるものも開示していることは明白である。」(審判請求書第23頁第8行?同9行)と主張しているところ、第1、2図の実施例における微回動規制を行う平面部12dはピストンの最上部の位置であるから、相違点2に係る構成を容易に推考し得るものではない。
また、甲第4号証に記載される開閉部材は、甲第4号証の「第3吸入通路53はシリンダ室10のうち最上方部に位置するシリンダ室に開口している。そして、このシリンダ室10内を摺動するピストン4には第1図および第4図に示すように開閉部材50が形成されている。この開閉部材60が第3吸入通路54と直接対向し得るようになっており、開閉部材60が第3吸入通路54と直接対面した位置では第3吸入通路54は閉じられることになる。」(甲第4号証第4頁左下欄第9行?同17行)の記載から、全てのピストンに設けるものではなく、その目的は吸入通路を開閉するものであり、本件特許発明1の微回動規制片と同じ機能を奏するものでもない。仮に、開閉部材が微回動規制片に相当するとしても、開閉部材の上面はピストンの最上部より高い位置にあり、本件特許発明1のように、微回動規制片の上面全面が、ピストンの最上部よりも低い位置に形成する構成を、甲第4号証の発明から、当業者が容易に推考し得るものとすることはできない。
さらに、甲第3号証について、請求人は「添付図面の第1図及び第2図には、ピストン20の左側上部に、当業者をして微回動規制片を想起せしめる線図が記載されている。」(審判請求書第32頁第19行?20行)と主張している。しかしながら、図面には線図は記載されているものの、その線図自体が何を意味しているか不明であり、まして微回動規制片と断定する根拠もなく、甲第3号証の発明から相違点2に係る構成が容易に推考し得たとすることはできない。
したがって、甲各号証には、相違点2である「微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成」に相当する構成が記載されておらず、またこれを示唆する記載もない。そして、本件特許発明1は、上記構成を採ることによって本件特許明細書に記載されてとおりの「シリンダブロック外周の大型化を抑制することができる。(本件特許明細書の図2に示されるように、ピストンの両側のシリンダブロック外周が小さくなる。)」という甲各証の発明からは予測できない作用効果を奏するものと認められる。 よって、相違点1を検討するまでもなく、本件特許発明1が甲各号証の発明から、当業者が容易に発明することができたものということはできない。
なお、請求人は、本件特許発明における明細書の【従来の技術】と【発明が解決しようとする課題】とが不整合である旨(審判請求書第41頁第14行?同43頁第4行)主張しているものの、明細書全体を勘案すれば、不整合とはいえない。

(4)-3 無効理由2のむすび
したがって、請求人が主張するように、甲第1号証及び甲第3号証を組み合わせて、或いは甲第1号証乃至第4号証を組み合わせても、本件請求項1に係る発明の構成には想到し得ないことから、本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明には該当せず、同項違反を理由とする特許無効理由(特許法第123条第1項第2号)を有しない。
さらに、本件特許発明2については、本件特許発明1に従属し、技術的に限定して具体化しているので、本件特許発明1が特許を受けられない発明に該当しない以上、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明には該当せず、同項違反を理由とする特許無効理由(特許法第123条第1項第2号)を有しない。

第6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
斜板式圧縮機におけるピストン構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ハウジング内で、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダブロックに形成されたシリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、
前記ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成し、該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、前記シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が設けられ、該微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されている斜板式圧縮機におけるピストン構造。
【請求項2】前記シリンダブロックは前記ピストンの頸部と対向する内壁面を有し、前記微回動規制片が前記内壁面に沿って延出され、同内壁面と当接可能に設けられている請求項1に記載の斜板式圧縮機におけるピストン構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、斜板を介して駆動軸の回転運動をピストンの往復運動に変換し、冷媒ガスの吸入、圧縮及び吐出を行う斜板式圧縮機におけるピストン構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の斜板式圧縮機としては、斜板を回転させたとき、即ちピストンをシリンダボア内にて往復動させたとき、ピストンが微回動して同ピストンと斜板とが接触することがあった。これらが接触した場合には、その接触時に騒音を発生したり、ピストンと斜板との接触部が摩耗するという不具合を生じることがあった。
【0003】
そこでピストンの微回動を規制してピストンと斜板との接触を防止するために、本出願人は次のような斜板式圧縮機を提案している(実開昭62-133973号公報)。
【0004】
即ち、図4に示すように、一対の頭部21を頸部22により連結してなる両頭ピストン20に対して、その頸部22上部に高さHの平面部23を形成する。
また、前記ピストン20を往復動可能に収容するシリンダボア(図示せず)には、前記ピストン20の平面部23を嵌合し、ピストンを軸方向に案内する溝部が、前記平面部23の高さHに平面部23とのクリアランスを加えた深さで形成されている。そして、斜板を回転させ、前記シリンダボア内でピストン20を往復動させても、前記ピストン20の平面部23とシリンダボアに形成された溝部とが係合関係にあるため、前記ピストン20は斜板と接触する前にその微回動が規制されるようになっている。従って、ピストン20と斜板外周との接触が防止される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記斜板式圧縮機のシリンダボアには、ピストン20に形成された平面部23の高さHと、その平面部23とのクリアランスを加えた分の深さで溝部が形成されているため、シリンダボア周壁からシリンダブロック外周までの間の肉厚が薄くなる。その結果、その肉厚が薄くなった分だけシリンダブロックの強度が低下する。そして、その低下された分の強度を補充するために、シリンダボア周壁からシリンダブロック外周までの肉厚を厚くする必要があった。
【0006】
従って、その肉厚を厚くするためにはシリンダブロックの外周を大きくしなければならない。その結果、圧縮機が大型化となり、圧縮機の取り付けスペースが限定されるという問題があった。また、特にコンパクト性を必要とする片頭ピストンを使用する斜板式圧縮機に至ってはその問題は深刻である。
【0007】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的はシリンダブロック外周の大型化を抑制できる斜板式圧縮機のピストン構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、ハウジング内で、駆動軸と一体的に回転する斜板の両面と、シリンダブロックに形成されたシリンダボア内に往復動可能に配設されたピストンの頸部との間に介在されたシューを介して前記斜板の回転運動を前記ピストンの往復動に変換させるように構成した斜板式圧縮機において、前記ピストンをシリンダボア内で摺動するピストン頭部と該頭部に連続形成した頸部とからなる片頭ピストンにて構成し、該片頭ピストンの頸部には、前記頭部とは反対側の端部に同頸部から両側に延出され、シリンダブロックと当接可能な微回動規制片が設けられ、該微回動規制片の上面は、片頭ピストンの最上部よりも低い位置に形成されていることを要旨としている。
【0009】
また、請求項2の発明では、前記請求項1の発明において、前記シリンダブロックは前記ピストンの頸部と対向する内壁面を有し、前記微回動規制片が前記内壁面に沿って延出され、同内壁面と当接可能に設けられていることを要旨としている。
【0010】
【作用】
従って、請求項1の発明によれば、駆動軸の回転にともない斜板が回転した際、ピストンがシリンダボア内で往復動される。このとき、ピストンは微回動しようとするが同ピストンの頸部の両側に設けられた微回動規制片とシリンダブロックとが当接するため、斜板外周とピストンとは接触されない。従って、斜板及びピストンの接触による摩耗及び騒音を生じることがない。
【0011】
また、請求項2の発明によれば、前記請求項1の発明の作用に加えて、微回動規制片はシリンダブロックの内壁の位置に合わせ、内壁面に沿って延出されているので、シリンダブロックは微回動規制片と嵌合するための構造を必要としない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車両用揺動斜板式圧縮機で具体化した一実施形態を図1?3に基づいて説明する。
【0013】
図3に示すように、シリンダブロック1の前後にはフロントハウジング2及びリアハウジング3が図示しない連結手段によって連結されている。これら圧縮機外部を構成するシリンダブロック1、フロント及びリヤハウジング2,3及び連結手段等によりハウジングが形成されている。そして、シリンダブロック1にフロントハウジング2及びリアハウジング3が連結されることによって、クランク室2a、吸入室3a及び吐出室3bが形成されている。これらクランク室2a、リアハウジング3内の吸入室3a及び吐出室3bを互いに接続するようにシリンダブロック1にはシリンダボア1aが形成されている。
【0014】
同シリンダブロック1及びフロントハウジング2には駆動軸4が回転可能に支持されている。前記フロントハウジング2内において、駆動軸4には回転支持体5が止着され、その先端側には長孔5aが透設されている。また、前記駆動軸4には球面状のブッシュ6がスライド可能に支持され、同ブッシュ6には斜板7が駆動軸4方向へ傾動するようになっている。
【0015】
前記斜板7前面(同図左側面)には連結片7aが固着されているとともに、同連結片7aの先端部にはピン7bが取付固定されている。同ピン7bは前記回転支持体5に透設された長孔5aと係合し、回転支持体5の長孔5aとピン7bとのスライド関係によって前記斜板7が傾動可能となっている。
【0016】
前記シリンダブロック1に形成されたシリンダボア1aには、片頭ピストン8が往復動可能に収容されている。この片頭ピストン8の頸部8aの内側には一対の支持凹部8bが対向した状態で形成され、また、図2及び図3に示すように、前記頸部8aの両側には略長方形板状の微回動規制片8cが一体形成されている。この微回動規制片8cはその上面8dが、片頭ピストン8の最上部Mよりも低く、前記シリンダボア1a内に片頭ピストン8が収容されているとき、シリンダボア1a内壁以外のシリンダブロック1の内壁面と接触する位置に形成されている。
【0017】
そして、図3に示すように、前記斜板7両面と片頭ピストン8の支持凹部8bとの間には、半球状に形成されたシュー9が介在され、前記斜板7が回転された際、その回転運動がシュー9を介して片頭ピストン8の往復動に変換され、片頭ピストン8が前記シリンダボア1a内を前後動するようになっている。
【0018】
これにより、吸入室3aからシリンダボア1a内へ吸入された冷媒ガスが圧縮されつつ吐出室3bへ吐出されるようになっている。そして、クランク室2a内の圧力とシリンダボア1a内の吸人圧との片頭ピストン8を介した差圧に応じて片頭ピストン8のストロークが変わり、圧縮容量を左右する斜板7の斜板角が変化する。なお、クランク室2a内の圧力は、シリンダブロック1内の電磁制御弁機構10によって制御されるようになっている。
【0019】
続いて、上記のように形成された斜板式圧縮機の作用を説明する。
駆動軸4を駆動するとそれに伴って斜板7が回転される。そして、その回転運動はさらにシリンダボア1a内にて片頭ピストン8の前後動に変換される。このとき、片頭ピストン8はシリンダボア1a内にて時計方向又は反時計方向に微回動しようとする。しかし、片頭ピストン8の微回動規制片8cはシリンダブロック1の内壁と接触する状態になるため、片頭ピストン8はシリンダボア1a内を前後動したときでも微回動が規制される。
【0020】
従って、片頭ピストン8と斜板7外周とが接触することがなくなり、接触時の騒音や斜板7とピストン8の摩耗を防止することができる。
また、前記片頭ピストン8の頸部8aに一体形成された微回動規制片8cの上面8dは、片頭ピストン8の最上部Mよりも低い位置で形成されているため、従来のようにシリンダブロック1の内壁に凹状の溝部を形成する必要がない。その結果、シリンダブロック1外周の一部を盛り上げてシリンダブロック1外周からシリンダボア1a内壁までの間の肉厚を調整する必要がなくなるので、シリンダブロック1外径を従来よりも大幅に小さくできる。従って、斜板式圧縮機全体を小型化でき、車両設計時の自由度を広げることができる。
【0021】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で例えば次のように構成することもできる。
【0022】
(1)上記実施形態においては、微回動規制片8cを略長方形板状で形成したが、この形状を例えば棒状の突起で形成してもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、シリンダブロック外周の大型化を抑制することができる。また、請求項2の発明によれば、前記請求項1の発明の効果に加えて、シリンダブロック内周に微回動規制片が嵌合するための構造を形成する必要がなく、シンプルかつ強度的に優れた圧縮機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した一実施形態を示す片頭ピストンの斜視図。
【図2】片頭ピストンをシリンダボアに収容した状態での正断面図。
【図3】揺動斜板式圧縮機の構成を示す側断面図。
【図4】従来のピストンの片頭ピストンの斜視図。
【符号の説明】
1…ハウジングを構成するシリンダブロック、1a…シリンダボア、2…ハウジングを構成するフロントハウジング、3…ハウジングを構成するリヤハウジング、4…駆動軸、7…斜板、8…ピストンとしての片頭ピストン、8a…頸部、9…シュー、8c…微回動規制片。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-02-13 
結審通知日 2007-02-15 
審決日 2007-02-28 
出願番号 特願平9-313641
審決分類 P 1 113・ 113- YA (F04B)
P 1 113・ 121- YA (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 和寛  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 飯塚 直樹
大橋 康史
登録日 1999-07-02 
登録番号 特許第2947243号(P2947243)
発明の名称 斜板式圧縮機におけるピストン構造  
代理人 恩田 博宣  
代理人 森田 政明  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 森 正澄  
代理人 恩田 誠  

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