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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F23C
管理番号 1157708
審判番号 無効2004-80205  
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-26 
確定日 2007-05-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3153091号発明「廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3153091号の請求項1ないし20に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 本件特許について

1 手続の経緯

本件特許第3153091号発明「廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置」(平成6年3月10日にされた特願平6-65439号及び平成6年4月15日にされた特願平6-101541号を先の出願とする優先権を主張して、平成7年2月9日に出願(特願平7-22000号)されて平成13年1月26日に設定登録されたもの。)について、川崎重工業株式会社、谷内啓子及び佐藤喜久雄よりそれぞれ異議申立てがされて異議2001-72727号事件として審理され、その中で特許の取消しの理由が通知され、意見書を提出する期間内である平成14年2月25日付けで訂正請求書が提出され、平成14年6月10日に「訂正を認める。特許第3153091号の請求項1ないし22に係る特許を維持する。」との異議の決定(以下「本件異議決定」という。)がされたところ、平成16年10月26日に株式会社神鋼環境ソリューションから本件特許権者の株式会社荏原製作所を被請求人として無効審判が請求され、その答弁期間内に被請求人から平成17年1月17日付けで訂正請求が提出されたものである。

2 本件特許の請求項に係る発明

本件特許の請求項に係る発明は、本件異議決定において認容された訂正後の特許請求の範囲、すなわち、平成14年2月25日付けの訂正請求書(甲3)に添付された全文訂正明細書(甲4)の特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものである。
【請求項1】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】 前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】 前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気であることを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】 前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】 前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】 前記流動媒体は砂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】 廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、
前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃?650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、
前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするガス化及び熔融燃焼装置。
【請求項11】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項13】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成されることを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】 前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなることを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項15】 前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項17】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、
該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、
該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項20】 前記流動層炉の炉内は、450℃?650℃に維持されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持されることを特徴とする請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】 前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別されることを特徴とする請求項19記載の方法。

第2 当事者の主張・立証

1 審判請求人の主張の概要

(1) 本件特許の請求項1、10、16、19についての訂正要件違反
本件異議決定が認めた特許請求の範囲請求項1、10、16、19について「チャー」を「該チャーを該循環流中で微粒子とし」とする訂正と、発明の詳細な説明についての同様の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。
したがって、本件特許は、その願書に添付した明細書の訂正が特許法の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)による改正前の特許法120条の4第3項で準用する同法126条2項の規定に違反してされたものであるから、同法123条1項8号の規定に該当し、無効とすべきものである。

(2) 本件特許の請求項1、10、16、19の記載要件違反
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、従来技術として特公昭62-35004号公報(甲7)が掲げられているが、ここに記載された流動層も、「流動層の反応工学」114頁(甲20)の記載を参酌すれば、流動媒体の循環が形成されるものであるから、本件特許の請求項1、10、16、19に記載された「流動媒体の循環流」と甲7記載の流動層に形成される「流動媒体の循環」との差違が明確でなく、循環流の内容が技術的に不明瞭である。
また、本件特許の明細書の実施例では、デフレクタを用いて流動媒体の上向き流を転向させることにより形成された流動媒体の循環が示されているが、仮に「循環流」がこのような循環を意味するものならば、「デフレクタを用いて流動媒体の上向き流を転向させることにより形成される」が「循環流」を特定するための必須の構成要件となるところ、本件特許の請求項1、10、16、19には、かかる構成要件が記載されていない。
したがって、本件特許の請求項1、請求項1に従属する請求項2ないし9、請求項10、請求項10に従属する請求項11ないし15、請求項16、請求項16に従属する請求項17及び18、請求項19、請求項19に従属する請求項20ないし22は、いずれも特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないものである。
したがって、本件特許は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)による改正前の特許法36条5項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法123条1項4号の規定に該当し、無効とすべきものである。

(3) 本件特許の請求項16及び17の新規性の欠如
本件特許の請求項16及び17に係る各発明は、甲7に記載された発明と同一であるから、特許法29条1項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、請求項16及び17に係る本件特許は、特許法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。

(4) 本件特許の請求項1ないし22の進歩性の欠如
本件特許の請求項16ないし18に係る各発明は、甲7?12に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項1ないし9に係る各発明は、甲7?18に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項10ないし14に係る各発明は、甲7?18に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項15に係る各発明は、甲7?19に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項19及び22に係る各発明は、甲7?12に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項20及び21に係る各発明は、甲7?14、甲17及び甲18に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1ないし22に係る各発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1ないし22に係る本件特許は、特許法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。

(5) 証拠方法(甲号証)
甲1 :特許第3153091号公報
甲2 :特開平7-332614号公報
甲3 :訂正請求書(平成14年2月25日)
甲4 :訂正請求書(平成14年2月25日)添付の全文訂正明細書
甲5 :意見書(平成14年2月25日)
甲6 :異議の決定(異議2001-72727号)
甲7 :特公昭62-35004号公報
甲8 :特開平2-147692号公報
甲9 :特開平2-195104号公報
甲10:特開昭57-124608号公報
甲11:「燃料協会誌」第69巻第11号(1990)1034?1041頁
甲12:エバラ時報、No.156(1992-7)45?50頁
甲13:特開昭60-96823号公報
甲14:特開平6-307614号公報
甲15:特開平2-298713号公報
甲16:特開平5-64736号公報
甲17:特公昭51-35467号公報
甲18:「第12回全国都市清掃研究発表会講演論文集」社団法人全国都市清掃会議平成2年12月25日発行、表紙、プログラム3?8頁、論文149?152頁、奥付
甲19:特開平3-241214号公報
甲20:鞭 巌外2名著「流動層の反応工学」培風館昭和59年2月25日発行、表紙、110?117頁、後付
甲21:実願昭57-111269号(実開昭58-58232号)のマイクロフィルム
甲22:鞭 巌外2名著「流動層の反応工学」培風館昭和59年2月25日発行、表紙、270、271頁、後付
甲23:特願平6-65439号の願書及び明細書及び図面
甲24:特願平6-101541号の願書及び明細書及び図面

2 被請求人の反論の概要

(1) 本件特許の請求項1、10、16、19についての訂正要件違反
本件特許明細書の段落0021には、可燃物が循環流中でガス化されることが記載され、段落0023、0015及び0019には、流動層炉においてガス及び灰分その他の微粒子が生成され、これらガス及び灰分その他の微粒子が熔融燃焼炉において燃焼されることが記載され、燃焼する固形分は灰分以外の微粒子である。段落0028、0029及び0057には、循環流中でガスとチャー(固定炭素分)とタールが生成されることが記載され、タールはガス状であり微粒子とはならないため、燃焼する固形分は固定炭素分であるチャーであり、この固定分は微粒子となっているものである。段落0044及び0050には、微粒子がチャーであることを示している。以上より、「該チャーを該循環流中で微粒子とし」との事項は、本件特許明細書の記載から読み取れる。

(2) 本件特許の請求項1、10、16、19の記載要件違反
「形成」とは、広辞苑(乙1)によれば、「形づくること。」を意味するから、「形成し」の対象である「流動媒体の循環流」は、単なる自然発生的なものではなく、「意図的に形成された流動媒体の循環する流れ」を意味するものと解釈することができる。流動媒体の循環流を意図的に形成した「内部循環型流動床炉」と流動媒体を均一に流動化させた「バブリング型流動床炉」とは、当業者により明確に区分されている。「環境技術」28巻12号884頁表1(乙2)では、「一塔式内部循環型」と「一塔式バブリング型」とに明確に区分され、888頁図3に示される「一塔式内部循環型」の図は、本件特許の図面に記載された流動床炉と同一の流動床炉である。当業者であれば、明確に「流動媒体の循環流」の意味を把握し得るものである。
甲20は、粒子のみから形成される流動層において実験的に検証された自然発生的に生じる「粒子循環セル」について記載したものであり、本件特許発明の「意図的に形成された流動媒体の循環する流れ」とは明確に区分されるものであるので、本件特許発明の「循環流」は技術的に明りょうである。
デフレクタは、実施例の単なる一態様において開示されているにすぎず、本件特許発明を特定するための必須の構成要件ではない。

(3) 本件特許の請求項16及び17の新規性の欠如
甲7と対比すると、答弁書と同時に請求する訂正請求に係る請求項16に係る発明の「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」、「流動層温度を450℃?650℃に維持し」、「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」とする構成において相違する。
甲20に記載されたものは、自然発生的なさまざまな粒子循環セルであり、流動媒体の循環流(意図的に形成された流動媒体の循環する流れ)が記載されているわけではない。

(4) 本件特許の請求項1ないし22の進歩性の欠如
甲7には、「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」、「流動層温度を450℃?650℃に維持し」、「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」との構成が記載されていない。
甲8ないし甲11には、「流動層温度を450℃?650℃に維持し」、「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」との構成が記載されていない。
甲7は廃棄物を熱分解炉でガス化してガスとチャーを生成しサイクロン燃焼炉でガスとチャーを燃焼して灰分をスラグ化する二段の廃棄物の処理技術であるのに対し、甲8は石炭から有価な生成ガスを得る石炭ガス化技術であり、甲9は特定炭種の石炭を燃焼させて熱エネルギを回収する技術であるから、甲7とは技術分野を異にする。甲10と甲11の流動床炉は廃棄物を焼却する一段の焼却炉であるから、甲7とは機能面で全く異なる。前提となる技術を全く異にする流動床ボイラ又は焼却炉に関する甲8ないし甲11を根拠に周知技術を主張することは、荒唐無稽の主張である。
甲7と甲8ないし甲12を対比すると、内容中の示唆、課題の共通性、機能・作用の共通性及び技術分野の関連性がないから、これらを組み合わせることはできない。
甲8には熱源として利用し得るチャーが生成されることは記載されていないので、炉外に飛散するチャーは例外的なものであって、甲7のサイクロン燃焼炉で熱源として利用できるものではない。甲9では流動層中で生成したチャーが旋回流動する間に粒径が0.2mm以下になると燃焼ガスに同伴されて流動層から排出されサイクロン等で捕集されて流動層炉に戻されることを繰り返して完全に燃焼してしまうから、流動層炉の後段にチャーを供給するものではない。甲10は流動媒体の循環流中で可燃物が完全燃焼するものであるから、チャーの生成は全くないものである。甲11の流動層部では蒸し焼きにされ水分がなくなってもろくなった燃焼物は短時間に燃えつきると記載されているので、もろくなった燃焼物が仮にチャーだとしても、チャーは流動層中に残らないので、これを甲7に採用すればチャーを生成する機能を発揮することができない。甲12には流動層で熱分解を行わせることは記載されているが生成チャーの記載はない。また、甲7ではサイクロン燃焼炉の前段に流動層熱分解炉を用いているので微細なチャー等がサイクロン燃焼炉に供給されてキャリーオーバーの問題(捕捉しきれないで一部がサイクロン燃焼炉をすり抜けてしまう問題)が生じるが、前段の流動層に請求人主張のような微粒子化の機能を有する循環流を採用すると、後段のサイクロン燃焼炉により微細なチャー等が供給されてキャリーオーバーの問題がより拡大して、甲7の発明の目的である微細な灰分の集塵性能向上に反する改変となる。以上のとおり、甲7と甲8ないし甲12の組み合わせには阻害事由がある。
甲12に記載された温度範囲は、排ガスCO濃度の低下を目的とするものであり、甲13に記載された温度範囲は、NOXの発生や重金属の揮散の抑制を目的とするものであり、特開平3-129206号公報に記載された温度範囲は、クリンカ及びNOXの発生や散気ノズルの損傷の回避を目的とするものであり、特開平3-75406号公報に記載された温度範囲は、安定した燃焼を維持することを目的とするものであり、特開昭62-169921号公報に記載された温度範囲は、燃焼・熱分解を安定して行い、ばいじん等の発生を抑えることを目的とするものであるから、これらの温度範囲を、ガス化してガスとチャーを生成し次段のサイクロン燃焼炉に供給する甲7の分解炉に適用することは困難である。
特開平4-327707号公報に記載の数値範囲は、流動層で燃焼される荒粒子が廃棄物中に占める割合が小さいために設定されたものであり、特開昭55-46370号公報に記載の数値範囲は、部分燃焼を含むものではあるが、炭化水素類の燃焼効率を殆ど完全燃焼に近い状態にまで高めかつ燃焼生成ガスの脱硫及び脱硝効率を著しく向上させるもので、いずれも甲7のガス化してガスとチャーを生成し次段のサイクロン燃焼炉に供給する流動層熱分解炉に供給する流動化ガスの空気量の数値範囲とは技術的意味を全く異にするものであるから、甲7の熱分解炉に適用することは困難である。

(5) 証拠方法(乙号証)
乙1 :広辞苑第5版、岩波書店、1998年、扉、820、821頁、奥付
乙2 :環境技術28巻12号、環境技術研究協会、1999年12月、表紙、目次、27?34、84頁

第3 訂正請求について

1 訂正請求の内容

被請求人が提出した平成17年1月17日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は、本件異議決定が認容した平成14年2月25日付けの訂正請求(甲3)に係る全文訂正明細書(甲4)(以下「本件直前明細書」という。)について、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を理由として、次の訂正事項を請求するものである。

(1) 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項16において、「該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、」とあるのを、「該廃棄物を該流動層炉に供給し、流動層温度を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、」と訂正する。

(2) 訂正事項b
特許請求の範囲の請求項19において、「該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、」とあるのを、「該廃棄物を該流動層炉に供給し、流動層温度を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、」と訂正する。

(3) 訂正事項c
特許請求の範囲の請求項20及び21を削除する。

(4) 訂正事項d
特許請求の範囲の請求項22の請求項の番号を繰り上げて【請求項20】と訂正する。

(5) 訂正事項e
段落0009の記載(8頁13ないし14行)において、「該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、」とあるのを、「該廃棄物を該流動層炉に供給し、流動層温度を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、」と訂正する。

(6) 訂正事項f
段落0009の記載(8頁13ないし14行)において、「該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、」とあるのを、「該廃棄物を該流動層炉に供給し、流動層温度を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、」と訂正する。

(7) 訂正事項g
段落0009の記載(9頁3ないし4行)において、「前記流動層炉の炉内は、450℃?650℃に維持される。また、前記流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持される。」を削除する。

2 訂正請求の適否

(1) 訂正事項aについて
訂正事項aの中の「流動層温度を450℃?650℃に維持し、」は、本件直前明細書(甲4)の段落0050(23頁25?27行)の記載「図10の装置においては、流動層炉2の燃焼が低空気比による低温部分燃焼とされ、流動層温度が450℃?650℃に維持されることにより、高熱量の可燃ガスを発生させることができる。」に基づくものと認められる。
そうすると、この訂正は、本件直前明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(2) 訂正事項bについて
訂正事項aについての上記判断と同じ。

(3) 訂正事項cについて
訂正事項cは、請求項20及び21を削除するものであるから、この訂正は、本件直前明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(4) 訂正事項dについて
訂正事項dは、訂正事項cにおいて請求項20及び21を削除したことに伴って請求項の番号を繰り上げたにすぎないものなので、特許請求の範囲の記載を実質的に訂正するものではない。
また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(5) 訂正事項eについて
訂正事項eは、訂正事項aに記載した請求項16についての訂正の内容に整合させるために、本件直前明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正事項aと同じように訂正するものであるから、訂正事項aについて前示したとおり本件直前明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(6) 訂正事項fについて
訂正事項fは、訂正事項bに記載した請求項19についての訂正の内容に整合させるために、本件直前明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正事項bと同じように訂正するものであるから、訂正事項bについて前示したとおり本件直前明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(7) 訂正事項gについて
訂正事項gは、請求項20及び21を削除したことに伴い、本件直前明細書の発明の詳細な説明の記載の一部を削除するものであるから、この訂正は、本件直前明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(8) むすび
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正前の特許法134条2項ただし書きに適合し、特許法134条の2第5項において準用する平成6年改正前の126条2項の規定に適合するものであるから、これを認容する。

第4 本件訂正請求認容後の本件特許に係る発明

上記のとおり本件訂正請求を認容した結果、本件特許に係る訂正後の発明は、平成17年1月17日付けの訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものとなる。
【請求項1】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】 前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】 前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気であることを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】 前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】 前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】 前記流動媒体は砂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】 廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、
前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃?650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、
前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするガス化及び熔融燃焼装置。
【請求項11】 前記流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項13】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成されることを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】 前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなることを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項15】 前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、流動層温度を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項17】 前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】 前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】 廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、
該廃棄物を該流動層炉に供給し、流動層温度を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、
該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項20】 前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別されることを特徴とする請求項19記載の方法。

上記請求項1ないし20に係る各発明を、以下、「本件発明1」ないし「本件発明20」といい、これらを総称して「本件発明」という。

第5 引用例に記載された事項

1 特開昭62-35004号公報(甲7)の記載

特開昭62-35004号公報は、本件発明の優先権主張日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「固形物の燃焼方法及びその装置」とする発明について、次の記載がある。

1a「本発明は、都市ごみ、廃プラスチックなどの固形廃棄物や、スラジなどの液の中に多く含まれている固形有機物や、石炭などの固形燃料、その他の固形物の燃焼方法及びその装置に関するものである。」(1頁下左欄18ないし22行)

1b「本発明は、熱分解過程を流動層により行い、熱分解の生成ガス中に含まれるチャー及び灰分が微細粒子となる事実を利用して、このガスをサイクロン燃焼炉に導入し、此処で加圧空気によって可燃分(ガス及びチャー)を燃焼せしめることにより、従来の方式の上記の欠点を除き、熱媒体の凝塊形成がなく、灰分の集じん性能が良好であり、流動層炉の大きさも小さくなり、重金属の溶出も防がれ、またサイクロン焼却炉用の特別な微粉砕前処理を必要としない高性能でありかつコンパクトで構造簡単な固形物の燃焼方法及びその装置を提供することを目的とするものである。」(2頁左欄32ないし43行)

1c「本発明は、固形物原料を、流動層熱分解炉において熱分解を行ない、熱分解生成物をサイクロン燃焼炉に導入し、該サイクロン燃焼炉の中で加圧空気により可燃分を燃焼せしめ、灰分の分離を行なうことを特徴とする固形物の燃焼方法、及び、流動層熱分解炉とサイクロン燃焼炉とを備え、前記流動層熱分解炉の炉頂部出口と前記サイクロン燃焼炉の炉頂部入口とを熱分解生成物移送路にて接続し、かつ前記サイクロン燃焼炉に燃焼用加圧空気を供給する空気供給装置を備え、前記流動層熱分解炉の上部には原料固形物供給機構を備え、下部には不燃物排出口を備え、前記サイクロン燃焼炉の上部には排ガス出口を備え、下部には灰分排出機構を備えていることを特徴とする固形物の燃焼装置である。」(2頁左欄末行ないし同頁右欄14行)

1d「本発明を実施例につき図面を用いて説明すれば、第1図及び第2図において、2は流動層熱分解炉、11はサイクロン燃焼炉である。流動層熱分解炉2においては上部に原料供給装置1を備え、下部には分散板6を備えてガス室5が仕切られている。4はガス室5へ流動化ガスを導入するガス入口であり、この流動化ガスが分散板6より噴出して砂を熱媒体とする流動層3を形成するようになっている。7はフリーボード、8はフリーボード7の円筒の円形断面の接線方向に導出された出口である。分散板6はゆるい円錐状をなし、その中央下部に不燃物取り出し用の二重排出弁22が設けられている。」(2頁右欄15ないし27行)

1e「サイクロン燃焼炉11においては、上部に接線方向に入口23が設けられ、上部中央には排ガスの出口18が設けられている。13は溶融スラグの流下を示す矢印であり、14は溶融スラグの排出口である。15は溶融スラグを冷却して粒状固化するための水室、16はコンベア、17は二重排出弁である。」(2頁右欄28ないし34行)

1f「作用につき説明すれば、都市ごみ、スラジなどの原料は原料供給装置1から流動層熱分解炉2に供給され、流動層3内で部分燃焼によって残部が加熱されて熱分解される。
空気はガス入口4からガス室5に入りガス分散板6を通って砂を流動化させ且つ原料の一部を燃焼する。熱分解により生成したチャーと可燃性ガス及び部分燃焼により発成した灰分と燃焼排ガスは、全て塔頂部フリーボード7から分解炉出口8に出て、空気エジェクタ9においてブロワ10により供給される加圧空気によって、吸引加速され、空気とガスとの混合ガスはサイクロン燃焼炉11に接線方向に高速で送られ、矢印12の方向に強力な旋回流を生ぜしめられて熱分解生成物(ガス及びチャー)は燃焼される。」(3頁左欄2ないし16行)

1g「高負荷燃焼を行わせると灰分は融けて壁面を点線矢印13のように流下し、灰分やチャーは旋回流に基づく遠心力によって壁面に衝突して融灰により濡れ状態となった壁面に付着し、チャーは高速の旋回流を行う空気との間に大きな相対速度を生ずるので極めて高い燃焼速度で燃焼する。又遠心力効果と濡れ壁効果とによって灰分は高い効率で捕捉され溶融スラグとなって排出口14から水室15に落下して粒状固化され、コンベア16を介して二重排出弁17によって系外に取り出される。灰中の重金属は灰分の溶融固化によって封じ込められるので、埋立てに際しての重金属溶出が防止できる。」(3頁左欄20ないし33行)

1h「流動層熱分解炉2に供給する空気はブロワ21により熱交換器19を介して昇温されてガス入口4に供給される。」(3頁左欄41ないし43行)

2 特開平2-147692号公報(甲8)

特開平2-147692号公報は、本件発明の優先権主張日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「流動層ガス化方法及び流動層ガス化炉」の発明について、次の記載がある。

2a「ガス化炉の炉底部より上方に向けて噴出せしめた流動化ガスにより、流動媒体を流動化して形成せしめた流動層により、石炭等をガス化する流動層ガス化方法において、・・・・前記流動化ガスは、中央部よりも両側縁部が低く形成されているガス分散機構から噴出せしめられ、前記流動化ガスの質量速度を、前記炉底の中央部付近におけるよりも、該中央部の両側の両側縁部において、より大となし、・・・炉底の中央部には、流動媒体が沈降する移動層を形成し、両側縁部には流動媒体が活発に流動化している両側縁流動層を形成し、前記流動媒体を、前記移動層内で沈降せしめ、該移動層の下部で前記両側縁部に移行せしめ、前記両側縁流動層内で上昇せしめ、該両側縁流動層上部で前記転向する流動化ガスにより前記移動層の頂部に向けて転向せしめて、炉内を循環せしめつゝ前記移動層に石炭等を供給して該石炭等のガス化を行なわしめることを特徴とする流動層ガス化方法。」(1頁下左欄5行ないし下右欄10行、特許請求の範囲請求項1の記載)

2b「・・・石炭と廃木材や廃プラスチックとの混合利用のようなやり方が可能となり、原料の多様化や原料コストの引き下げが図れる。さらに破砕上問題になる不燃物を含むようなものを、ガス化原料として用いることも可能となる。」(6頁上右欄6ないし11行)

3 特開昭57-124608号公報(甲10)

特開昭57-124608号公報は、本件発明の優先権主張日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「流動層熱反応炉」の発明について、次の記載がある。

3a「本発明は、流動層を用いる焼却炉、熱分解炉などの熱反応炉に関するものである。
この種の熱反応炉として、例えば都市ごみの焼却炉においては、近年ストーカ炉よりも燃焼効率がよく、かつ焼却残渣の少ない流動層炉が用いられて来ている。」(2頁上左欄2ないし7行)

3b「焼却炉6の作用につき説明すれば、ブロワ7により、流動化空気を送り込み、空気室43,45からは大なる質量速度にて、空気室44からは小なる質量速度にて噴出せしめる。
通常の流動層においては、流動媒体は沸とうしている水の如く激しく上下に運動して流動状態を形成しているが、空気室44の上方の流動媒体は激しい上下動は伴なわず、弱い流動状態にある移動層を形成する。この移動層の幅は上方は狭いが、裾の方は分散板42の傾斜の作用も相まって、稍広がつており、裾の一部は両側縁部の空気室43,45の上方に達しているので、大きな質量速度の空気の噴射を受け、吹き上げられる。裾の一部の流動媒体が除かれるので、空気室44の直上の層は自重で降下する。この層の上方には後述の如く旋回流10を伴う流動層からの流動媒体が補給され堆積する。これを繰り返して、空気室44の上方の流動媒体は、或る領域の部分がほぼひとまとめとなり、徐々に下降する下降移動層46を形成する。
空気室43,45上に移動した流動媒体は上方に吹き上げられるが、傾斜壁9に当たり反射転向して炉の中央に向きながら上昇し、炉内断面の急増に伴い上昇速度を失い、前述の下降移動層46の頂部に落下し、徐々に下降し、裾に至って再び吹き上げられて循環する。一部の流動媒体は旋回流10として流動層の中で旋回循環する。」(4頁下右欄4行ないし5頁上左欄10行)

3c「このような状態の焼却炉6の炉内に、原料投入口60から投入されたごみは下降移動層46の頂部に下降する。頂部付近においては流動媒体の流れは外側から中心に向かって集中する方向に流れるので、ごみはこの流れに巻き込まれて下降移動層46の頂部にもぐり込まされる。・・・・
下降移動層46の中では部分的に熱分解が行なわれ可燃ガスが発生する。」(5頁上左欄11行ないし上右欄4行)

3d「下降移動層46の表面にびん、アイロンなどの如き重くかつ大きな物体を落下せしめて供給した場合、これらの物体は瞬時に空気室44の上まで落下するのではなく、下降移動層46に支えられて、流動媒体の流れと共に徐々に下降する。
そのため、可燃物はかなりの大きさのものでも、下降移動層46の中で徐々に下降しているうちに乾燥、ガス化、燃焼が行なわれ、裾に達するときには大半が燃焼して細片化しているので、流動層の形成を阻害することがない。
従って、ごみは予め破砕機で破砕をしなくとも、給じん装置5で破袋する程度で差支えなく、破砕機や破砕工程を省略しコンパクトな装置とすることができる。」(5頁上右欄8行ないし下左欄1行)

3e「以上は焼却炉における例を示したが、熱分解炉その他の熱反応炉においても同様である。」(6頁下左欄18ないし19行)

4 「燃料協会誌」第69巻第11号(1990)1034?1041頁(甲11)

「燃料協会誌」第69巻第11号(1990)は、本件発明の優先権主張日前に国内において頒布された刊行物であるが、その1034?1041頁には、本件発明の発明者の一人である木下孝裕による表題を「無破砕旋回流型流動燃焼炉とその応用技術」とする記事中に、次の記載がある。

4a「一般の流動層焼却炉は,流動媒体(砂)があたかも沸騰している湯のように上下に動いて流動するかたちの流動層を形成しているが,本技術では移動層(のみ込み層)と流動層の組合せによって図1に示すように砂が適度に循環・旋回を行い,砂の沈降に伴い投入された燃焼物を熱砂の中にのみ込み,熱的に燃焼物を破壊し拡散する効果を持たせたものである。」(1034頁右欄10行ないし1035頁左欄3行)

4b「TIF旋回流型流動燃焼炉の構造図を図2に示す。流動床は空気分散部を四つのブロックに分け,おのおのに燃焼用空気を送り込むが,中央部の2ブロックには少量の空気を入れて移動層を作り,両端の2ブロックには多量の空気を入れて流動層を形成する。
移動層と流動層との空気量の比は約1:3 である。」(1035頁左欄20ないし27行)

4c「燃焼物中の不燃物は砂の動きとともに炉の両側に送られ,砂とともに炉外に取り出すことができる。」(1035頁左欄末行ないし右欄2行)

5 エバラ時報、No.156(1992-7)45?50頁(甲12)

エバラ時報、No.156(1992-7)45?50頁は、本件発明の優先権主張日前に国内において頒布された刊行物であるが、その46頁には「高効率燃焼型流動床焼却施設-新潟県柏崎地域広域事務組合納入-」について、次の記載がある。

5a「当社における流動床式ごみ焼却分野への参画は1978年石川県珠洲市への納入に始まり,以来納入実績は1992年3月までに42施設に達した。この間,種々の技術改革が行われ,特に流動床焼却炉にとって不可欠とされていた破砕機を不要とする画期的な焼却施設(TIF型炉)を業界に先がけて1983年和歌山県海南市に納入した。以後の施設はすべてこのTIF型炉を採用し,更に改良・改善が加えられてきた。
近年,ごみ焼却施設から有害なダイオキシン類の排出が検出され,社会問題にまでなってきた。このような状況下で,1990年厚生省により「ダイオキシン類防止等ガイドライン」が策定された。この中で,廃棄物焼却炉の煙突から排出されるCO濃度は新設連続炉で50ppm以下とされている。
このような背景の中で,当社は燃焼効率の改善を目的として,炉形状を改良した高効率燃焼型流動床焼却炉の開発を進めてきた。本方式の焼却炉を新潟県柏崎地域広域事務組合向け焼却施設に適用し,1991年12月竣工引渡した(写真1)。
・・・・
本稿では,竣工引渡し後順調に稼動している本施設の設備概要と運転結果について報告する。」(45頁左欄2行ないし右欄末行)

5b「本施設における高温領域(燃焼領域)である3領域は,それぞれ分担役割を持って運転している。これを表1に示す。
流動層,フリーボード部及び後燃焼領域における運転条件基準は以下のとおりである。
(1) 温度範囲の設定基準
(1) 流動層
ごみのガス化速度をより緩慢にするためには,低温の方が好ましい。このことから上限を700℃に設定した。
一方下限は,都市ごみを構成する物質のガス化温度に支配される。ガス化が完全に行われ,不燃物の熱しゃく減量が極めて少ないことが重要である。紙,プラスチック等都市ごみを構成する物質の熱分解温度は400℃以下であり,十分余裕をみて下限を600℃に設定した。」(46頁右欄20行ないし47頁左欄6行、ここに引用した記載中の(1)は、原文の丸数字1を代用したものである)

5c「表1 燃焼領域の分担機能」の「領域」が「流動層」の行には、
「機能」の列に
「<部分燃焼法によるガス化>
1.完全燃焼と異なり,高カロリーごみでも層内温度高温化の抑制が容易。
2.還元雰囲気なので低NOX化が可能。」と記載され、
「温度」の列に
「600?700℃」と記載され、
「空気比」の列に
「1以下」と記載されている。(以上、47頁上)

6 特開平6-307614号公報(甲14)の記載

特開平6-307614号公報は、本件発明の優先権主張日以後であって出願日前の平成6年11月1日に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「廃棄物焼却方法」とする発明について、次の記載がある。

6a「本発明は、ガラス繊維を含む廃棄プラスチックスを、燃焼分解させてスラグとして回収する廃棄物焼却方法に関する。」(2頁左欄11ないし13行)

6b「ガラス繊維を含む廃棄プラスチックス中のプラスチックスを流動層熱分解炉内で熱分解して分解ガスとするために、プラスチックスが500℃以上で熱分解を起こす特性を有するのを利用して、流動層熱分解炉内の温度を500?600℃に温度制御して、廃棄プラスチックス中のプラスチックスを燃焼させて分解ガスとする。
一方、ガラス繊維は800℃以上に加熱されてはじめて軟化溶融するため、流動層熱分解炉中で溶融されずに残されたガラス繊維は、流動層熱分解炉の流動層の砂により微粉砕して飛灰となされる。又、このガラス繊維を0.05mm以下の大きさに微粉砕するために、流動層の砂の粒径は0.5 ?0.8mmのものを使用するのが好ましい。
上記の流動層熱分解炉において、熱分解炉内の温度を500?600℃に保って、廃棄プラスチックスを燃焼させるための温度制御は、廃棄プラスチックスの燃焼による発熱量に応じて、流動層熱分解炉への廃棄プラスチックスの供給量と、後述の空気予熱器から供給される空気温度を加減して行なうようになされている。
同様に旋回式溶融炉においては、旋回燃焼室内の温度を1200?1600℃に保って、流動層熱分解炉で発生した分解ガスと微粒化したガラス繊維の不燃物とを燃焼させるための温度制御は、後述の空気予熱器から供給される空気温度を加減して行なうようになされている。」(2頁右欄9ないし32行)

6c「旋回式溶融炉の旋回燃焼室で燃焼した飛灰を同伴した分解ガス中の飛灰は溶融スラグとなり、この溶融スラグは流下して旋回式溶融炉の下方のスラグ溜めを経てスラグ受けで回収される。」(2頁右欄42ないし45行)

7 特開平2-298713号公報(甲15)の記載

特開平2-298713号公報は、本件発明の優先権主張日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「焼却灰溶融処理装置」の発明について、次の記載がある。

7a「灰ホッパー102から溶融炉100の溶融室101上流側に投入された焼却灰Aを、プッシャー装置103により下流側に送り、溶融室101の天壁に配設された溶融バーナ104により焼却灰Aをたとえば1300℃以上に加熱して溶融させ、この溶融スラグBを燃焼排ガスDと共に排出口105からスラグ冷却室106に流送し、固化している.」(1頁下右欄2ないし9行)

8 特開平5-64736号公報(甲16)の記載

特開平5-64736号公報は、本件発明の優先権主張日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「廃棄物からなる供給原料中の酸化カルシウムと二酸化ケイ素の重量比制御方法及び装置」の発明について、次の記載がある。

8a「下水汚泥等の廃棄物から硬質骨材を得る手段として、この廃棄物を熱分解した後に溶融炉内に入れ、この廃棄物の組成に応じて約1300℃?1600℃の温度範囲で溶融し、溶融スラグを生成した後、これを専用の溶融スラグ容器内に排出し、上記組成に特有の結晶析出ゾーンを含む特定温度領域で上記溶融スラグを冷却する方法が知られている。」(2頁左欄35ないし41行)

8b「図3は、このような方法を実践するための装置の一例を示したものである。まず、下水汚泥等を脱水することにより得られた脱水ケーキが熱分解炉10内に導入され、ここで約800℃の温度で熱分解(すなわち焼却)されて原料灰となり、サイクロン集塵機12を通じてホッパー14内に回収された後、原料灰フィーダ16により溶融炉18内に供給される。」(2頁左欄47行ないし右欄3行)

9 特開平3-241214号公報(甲19)の記載

特開平3-241214号公報は、本件発明の優先権主張日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「溶融炉」の発明について、次の記載がある。

9a「この発明は、下水汚泥の乾燥物、焼却残渣、都市ごみ焼却残渣等の廃棄物に含まれる可燃分即ち被溶融物を溶融固化してスラグを得る溶融炉に関する。」(1頁下右欄7行ないし10行)

9b「被溶融物としては、下水汚泥乾燥物、焼却残渣、都市ごみ焼却残渣等の廃棄物の他、微粉炭、未燃カーボンを含む固体燃料であり、これらの被溶融物は、この旋回流式溶融炉1において溶融処理される。
旋回溶融室は単段でも複数段でもよいが、例えば、2段に構成した場合、第1段旋回溶融室4は、上部に被溶融物供給口13と燃焼用空気吹込口2を円筒部の接線方向に配設して炉内で被溶融物の旋回気流を形成せしめて、燃焼溶融を行わせる。」(4頁上左欄9行ないし18行)

9c「更に、第1段旋回溶融室4の下部には、該下部に対して傾斜した円筒部を有する第2段旋回溶融室5を接続し、第1段旋回溶融室4の出口11と第2段旋回溶融室5の入口部18とを連通している。
更に、第2段旋回溶融室5には、燃焼用空気吹込口3が接線方向に配置されている。第2段旋回溶融室5は、傾斜して下方に伸びる傾斜面17を有し、該傾斜面17の下部には傾斜面によって出口方向に炉内径が順次縮小する絞り部分16が形成されている。この絞り部分16は、上方に位置する排ガス流路9及び下方に位置するスラグ排出口10に接続されている。」(4頁上右欄5行ないし17行)

10 実願昭57-111269号(実開昭58-58232号)のマイクロフィルム(甲21)の記載

実願昭57-111269号(実開昭58-58232号)のマイクロフィルムは、本件発明の優先権主張日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「流動床式焼却炉」とする考案について、次の記載がある。

10a「第1図、第2図は本考案の理解に便ならしめるため、従来の炉を説明するものである。第1図は最も基本的な従来の流動床式炉の説明図的な断面図で、炉体10の下方に空気分散手段、例えば図示の多孔板11、又は散気管を設けこれを介して流動化用の空気を給気孔12より炉内に供給する様になつている。適宜な風圧で空気を供給すると、多孔板11上の砂13が流動化する。焼却物は上部のスクリユーコンベア等の供給手段を備えたホツパー14から炉内の砂上に投入されて燃焼が行われ排気ガスは上部の排気孔15より炉外に排気される。この炉に於いては既述した如く、比重の軽い焼却物成分は砂の上部に停滞し砂の内部に移行しない。尚不燃物は炉体10の下部の取出口16より取出される。」(明細書6頁16行ないし7頁10行)

第6 本件における優先権主張について

本件発明1及び本件発明10は、「炉内を450℃?650℃に維持し」との構成を含むものであるが、かかる事項は、優先権主張に係る先の出願である特願平6-65439号の明細書及び図面(甲23)並びに特願平6-101541号の明細書及び図面(甲24)のいずれにも記載されていないので、本件発明1及びこれを直接又は間接的に引用する本件発明2ないし9並びに本件発明10及びこれを直接又は間接的に引用する本件発明11ないし15について、優先権主張を認めることはできない。
また、本件発明16及び本件発明19は、「流動層温度を450℃?650℃に維持し」との構成を含むものであるが、かかる事項は、上記先の出願の明細書及び図面(甲23、24)のいずれにも記載されていないので、本件発明16及びこれを直接又は間接的に引用する本件発明17及び18並びに本件発明19及びこれを直接的に引用する本件発明20について、優先権主張を認めることはできない。
したがって、本件発明1ないし20は、特許法29条の規定の適用について、現実の出願日である平成7年2月9日を基準とする。
なお、平成17年5月20日の口頭審理において、被請求人は、審判請求書55頁4ないし8行の記載(先の出願には流動層炉内を450℃?650℃に維持するという事項が全く記載されていないため本件特許請求項1の進歩性判断基準日が平成7年2月9日となること)を認めている。(第1回口頭審理調書参照。)

第7 本件発明の進歩性についての判断

1 本件発明1について

(1) 特開昭62-35004号公報(甲7)に記載された発明
・甲7には、上記1a、1c、1d及び1eに掲記した記載並びに第1図によれば、固形廃棄物を流動層熱分解炉に供給し、該熱分解炉の流動層にて熱分解した後、サイクロン燃焼炉にて灰分を溶融スラグ化する方法が開示されていると認められる。
・甲7には、上記1b及び1f掲記した記載によれば、流動層内の熱分解により生成された可燃性ガス並びにチャー及び灰分の微細粒子、すなわち微粒子を、サイクロン燃焼炉に供給することが開示されている。
・甲7には、上記1gに摘示した記載によれば、サイクロン燃焼炉において、遠心力効果と濡れ効果により灰分が高い効率で捕捉され、溶融スラグとなって排出口から排出されることが開示されている。
以上の事実によれば、甲7には、次の発明が記載されているものと認められる。
「固形廃棄物を流動層熱分解炉に供給し、該熱分解炉の流動層にてガス化した後、サイクロン燃焼炉にて灰分を溶融スラグ化する方法において、該流動層内の熱分解により生成されたガス並びにチャー及び灰分の微粒子を、サイクロン燃焼炉に供給し、サイクロン燃焼炉では灰分が捕捉され溶融スラグとなって排出口より排出される固形物の燃焼方法。」(以下「甲7の発明1」という。)

(2) 対比
本件発明1と甲7の発明1を対比すると、甲7の発明1の「溶融」と本件発明1の「熔融」は単に漢字が異なるのみで技術的は意味が異なるものではないと認められ、また、甲7の発明1の「流動層熱分解炉」、「サイクロン燃焼炉」及び「固形物の燃焼方法」は、機能・作用からみて、それぞれ本件発明1の「流動層炉」、「旋回熔融炉」及び「廃棄物の処理方法」に相当すると認められるから、本件発明1と甲7の発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉より排出されたガスと微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化する廃棄物の処理方法。」
(相違点)
・本件発明1は「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」たものであるのに対し、甲7には、かかる構成について明示の記載がない点。(以下「相違点A」という。)
・本件発明1は「(流動層)炉内を450℃?650℃に維持し」たものであるのに対し、甲7には、かかる構成について明示の記載がない点。(以下「相違点B」という。)
・本件発明1は(該廃棄物を)「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」たものであるのに対し、甲7には、かかる構成について明示の記載がない点。(以下「相違点C」という。)
・灰分を熔融してスラグ化することについて、本件発明1は「1300℃以上にて」するものであるのに対し、甲7には、温度については何ら記載がない点。(以下「相違点D」という。)

(3) 相違点についての検討
・相違点Aについて
甲8には、上記2aに掲記した記載及び図、特に第2図によれば、ガス化炉において流動媒体の移動層において沈降し、移動層の下部で両側縁部に移行し、該両側縁流動層内で上昇し、該両側縁流動層上部で前記移動層の上部に向けて転向する循環流が形成されていると認められる。
甲10には、上記3a、3b及び3eに掲記した記載及び第9図によれば、流動層を用いる焼却炉、熱分解炉等の熱反応炉において流動媒体の下降移動層から両側縁流動層に向けて移行し、該両側縁流動層内で上昇し、該両側縁流動層上部で前記移動層の上部に向けて転向する循環流が形成されていると認められる。
甲11には、上記4aに掲記した記載及び図1によれば、流動層燃焼炉において、移動層と流動層の組み合わせによって、流動媒体の循環流が形成されていることが記載されている。
以上の事実に照らせば、流動層を用いる焼却炉、熱分解炉等の流動層炉内に流動媒体の循環流を形成した点は、当業者には本件発明の出願前に周知の技術であったものと認められる。

次に甲7を再度検討してみる。甲21は、本件特許発明の発明者の一人である木下孝裕が考案者の一人となった名称を「流動床式焼却炉」とする考案について本件被請求人がした実用新案登録出願の明細書及び図面を収録したマイクロフィルムであって、上記10aに掲記した記載及び第1図によれば、第1図には最も基本的な従来の流動床式炉であって給気孔より適当な風圧で供給された空気が炉体下方の多孔板を介して炉内に供給されて多孔板上の砂を流動化する流動床炉が開示されている。この第1図が図示する流動床炉は、甲7の第1図が図示する流動層熱分解炉(前示のとおり本件発明の「流動層炉」に相当するもの。)と極めて類似しており、かつ流動化された砂の中には矢印の付いた曲線が描写されており、この曲線は、流動化した砂の流れを図示しているものと認められる。甲21が開示するかかる事実を勘案すると、甲7が開示する流動層炉の流動層中にも何らかの流動媒体の流れが発生することは、当業者の技術常識であったものと認められる。
そうすると、甲7の流動層炉の流動層中に発生する流れを、相違点Aに係る本件発明1の構成、すなわち「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」たことは、甲7の発明1に上記認定した周知の技術を適用することにより当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

・相違点Bについて
甲14には、上記6a及び6bに掲記した記載並びに図1によれば、ガラス繊維を含む廃棄プラスチックスを燃焼分解させる流動層熱分解炉と旋回燃焼炉を備えた廃棄物焼却方法において、流動層炉(流動層熱分解炉)内の温度を500?600℃に温度制御することが記載されている。
そうすると、相違点Bに係る本件発明1の構成は、甲7の発明1に甲14に記載された発明を適用することにより当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

・相違点Cについて
甲7には、上記1b及び1fに掲記した各記載によれば、都市ごみのような廃棄物を流動層熱分解炉に供給すると、流動層内の部分燃焼により灰分が発生し残部が熱分解されるが、この熱分解過程で可燃ガスとチャーが生成され、該チャーと該灰分が微細粒子、すなわち微粒子となることが記載されていると認められる。(なお、この認定は、甲10の上記3c及び3dに掲記した記載からも裏付けられる。)
そうすると、相違点Aにおいて前示したように、甲7の発明1に上記認定した周知の技術である流動層炉内に流動媒体の循環流を形成する技術を適用すれば、かかる循環流中で熱分解により生成されたチャーが微粒子となることは、当業者には自明の事項であったものと認められる。
したがって、相違点Cに係る本件発明1の構成、すなわち(該廃棄物を)「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」たことは、甲7の発明1に周知の技術を適用した結果として当業者には自明の事項であるから、甲7の発明1と周知の技術に基づいて当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

・相違点Dについて
甲14には、上記6a、6b及び6cに掲記した記載並びに図1によれば、ガラス繊維を含む廃棄プラスチックスを流動層熱分解炉で熱分解して分解ガスを生成し、流動層熱分解炉の流動層では熔融されずに残されたガラス繊維の不燃物を流動層の砂で微粒化して飛灰とし、この飛灰を上記分解ガスに同伴させて、上記流動層熱分解炉から旋回式溶融炉に導入して燃焼用空気と共に混合燃焼させて溶融し、スラグ化して回収する廃棄物焼却方法において、該旋回式溶融炉の旋回燃焼室内の温度を1200?1600℃に保つことが記載されている。そして、甲14記載の「飛灰」は本件発明1の「灰分」に、同じく「旋回式溶融炉」は「旋回熔融炉」に相当するものと認められるから、甲14には、旋回熔融炉において1200?1600℃の温度範囲で灰分を熔融してスラグ化する技術が開示されている。
甲15には、上記7aに掲記した記載及び第2図によれば、ごみ焼却炉から排出される焼却灰を溶融固化するバーナ方式の溶融処理装置において、溶融炉(本件発明1の「熔融炉」に相当するものと認められる。)に投入された焼却灰(本件発明1の「灰分」に相当するものと認められる。)を1300℃以上に加熱して溶融させて溶融スラグとすることが記載されている。そうすると、甲15には、熔融炉において1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することが開示されている。
甲16には、上記8a及び8bに掲記した記載及び図3によれば、溶融炉に供給される原料は、熱分解炉で廃棄物を熱分解することにより生成される原料灰であると認められ、この「原料灰」は本件発明1の「灰分」に相当し、「溶融炉」は「熔融炉」に相当するものであるから、甲16には、熔融炉に入れた灰分を1300℃?1600℃の温度範囲で熔融して溶融スラグとすることが開示されている。
上記の事実に照らせば、廃棄物の灰分を熔融してスラグ化する各種の熔融炉において、その処理を1300℃以上にて行うことは、本件発明1の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。
そうすると、相違点Dに係る本件発明1の構成、すなわち「1300℃以上にて」灰分を熔融してスラグ化することは、甲7の発明1の旋回熔融炉(サイクロン燃焼炉)における灰分を熔融してスラグ化する温度として、上記認定した周知の技術を適用することにより当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

そして、相違点Aないし相違点Dについて、これらを全体的にみても、本件発明1の構成を当業者が想到することの困難性を見出すことはできない。
また、本件発明1の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。

(4) 小括
以上によれば、本件発明1は、本件発明1の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

2 本件発明2について

本件発明2は、請求項1記載の方法の発明を引用して、請求項2に記載された構成を付加したものであるので、請求項2で付加した構成について検討する。

甲12には、上記5a、5b及び5cに掲記した記載によれば、被請求人が新潟県柏崎地域広域事務組合に対し1991年12月に竣工引き渡した流動床焼却施設では、その流動層の温度範囲の設定基準を600?700℃としたことが記載されている。
平成17年5月20日の口頭審理の中で当審が示した特開平3-129206号公報は、本件発明の出願日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「廃棄物焼却炉の燃焼制御方法」の発明について、「従来、流動層焼却炉、例えば都市ごみ焼却炉は、都市ごみや補助燃料に自然着火する温度が550℃であり、また900℃以上ではクリンカおよびNOxの発生や散気ノズルの損傷が増大することから、流動層の温度を550?900℃に制御して運転されている。」(1頁下左欄末行ないし下右欄5行)と記載され、この記載によれば、従来の流動層焼却炉、例えば都市ごみの流動層焼却炉において、流動層の温度を550?900℃に制御して運転することが記載されている。
同じく当審が示した特開平3-75406号公報は、本件発明の出願日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「流動床炉における燃焼制御方法」の発明について、「流動床炉は、その燃焼性能が良いため、都市ゴミや産業廃棄物の焼却炉として多く利用されている。」(1頁下右欄3?5行)、「ところで流動床炉において、安定した燃焼を維持するには、炉床温度は600℃?800℃に維持する必要がある。」(2頁上左欄8ないし10行)と記載されており、これらの記載によれば、都市ゴミや産業廃棄物の焼却炉として利用される流動床炉において、安定した燃焼を維持するには、炉床温度を600?800℃に維持する必要があることが記載されている。
同じく当審が示した特開昭62-169921号公報は、本件発明の出願日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「流動床炉の安定燃焼法」の発明について、「流動層内に被焼却物を供給して焼却するに際して、その流動層内の温度を520?650℃に保って燃焼させることを特徴とする流動床炉の安定燃焼法。」(1頁下左欄5ないし8行、特許請求の範囲)、「本発明は、都市ゴミなどの焼却物を流動層内で焼却する焼却方法に係り、特に流動層内での燃焼を安定させることができる流動床炉の安定燃焼法に関するものである。」(1頁下左欄11ないし14行)と記載され、これらの記載によれば、都市ゴミなどの焼却物を流動層内で焼却するに際して、その流動層内の温度を520?650℃に保って燃焼させることが記載されている。
上記の事実に照らせば、請求項2で付加した構成、すなわち、「流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持されること」は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。

本件発明2の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明2は、本件発明1について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明2の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

3 本件発明3について

本件発明3は、請求項1又は2記載の方法の発明を引用して、請求項3に記載された構成を付加したものであるので、請求項3で付加した構成について検討する。

甲8の上記2aに掲記した記載及び第2図、甲10の上記3a、3b及び3cに掲記した記載及び第9図並びに甲11の上記4aに掲記した記載及び図1によれば、これらの引用例には、流動層炉内において、流動媒体の流れが移動層で下降し流動層で上昇して循環流を形成することが開示されている。
上記事実に照らせば、請求項3で付加した構成、すなわち「流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環すること」は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。

本件発明3の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明3は、本件発明1及び2について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明3の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

4 本件発明4について

本件発明4は、請求項3記載の方法の発明を引用して、請求項4に記載された構成を付加したものであるので、請求項4で付加した構成について検討する。

甲8には、上記2aに掲記した記載及び第2図によれば、流動層ガス化炉において、流動化ガスの質量速度を炉底の中央部付近より両側縁部でより大とすることにより、炉底の中央部では移動層を両側縁部では流動層を形成したことが記載されている。
甲10には、上記3a、3b及び3eに掲記した記載及び第9図によれば、流動層を用いた熱反応炉において、流動化空気が炉底の側縁部にある空気室からは大なる質量速度で噴出して流動媒体を吹き上げる流動層を形成し、中央部にある空気室からは小なる質量速度で噴出して弱い流動状態にあり自重で沈下する移動層を形成することが記載されている。
甲11には、上記4bに掲記した記載及び図1によれば、TIF旋回流型流動燃焼炉において、燃焼用空気を送り込む際に、中央部の2ブロックには少量の空気と入れて移動層を作り、両端の2ブロックには多量の空気を入れて流動層を作ることが記載されているので、中央部では移動層が比較的小さい質量速度の流動化ガスによって形成され、両端部では流動層が比較的大きい質量速度の流動化ガスによって形成されていると認められる。
上記の事実に照らせば、請求項4で付加した事項、すなわち「移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されること」は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。

本件発明4の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明4は、本件発明3について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明4の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

5 本件発明5について

本件発明5は、請求項1又は2記載の方法の発明を引用して、請求項5に記載された構成を付加したものであるので、請求項5で付加した構成について検討する。

甲8には、上記2aに掲記した記載及び第2図によれば、流動層ガス化方法において、質量速度が比較的小さい流動化ガスにより形成された移動層内で流動媒体を沈降せしめ、該移動層の下部で流動媒体を両側縁部に移行せしめ、質量速度が比較的大きい流動化ガスにより形成された両側縁流動層内で流動媒体を上昇せしめ、両側縁流動層上部で流動媒体を移動層の頂部に向けて転向せしめて炉内を循環せしめることが記載されているから、作動媒体の循環流が形成されているものと認められる。
甲10には、上記3a、3b及び3eに掲記した記載及び第9図によれば、流動層を用いた熱反応炉において、中央部にある空気室からは小なる質量速度で噴出して弱い流動状態にあり自重で沈下する移動層を形成し、流動化空気が炉底の側縁部にある空気室からは大なる質量速度で噴出して流動媒体を吹き上げる流動層を形成し、吹き上げられた流動媒体は傾斜壁に当たって反射転向して炉の中央に向かい、結局、下降移動層の頂部に落下することにより、流動媒体が流動層の中で旋回循環することが記載されている。
甲11には、上記4bに掲記した記載及び図1によれば、TIF旋回流型流動燃焼炉において、中央部では比較的小さい質量速度の流動化ガスによって形成された移動層と、両端部では比較的大きい質量速度の流動化ガスによって形成された流動層の組み合わせによって、図1に示された流動媒体の循環流が形成されていると認められる。
上記の事実に照らせば、請求項5で付加した構成、すなわち「流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成されること」は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。

本件発明5の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明5は、本件発明1又は2について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明5の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

6 本件発明6について

本件発明6は、請求項4又は5記載の方法の発明を引用して、請求項6に記載された構成を付加したものであるので、請求項6で付加した構成について検討する。

甲10には、上記3bに掲記した記載によれば、「流動化空気」をブロワにより送り込んで中央の空気室からは小なる質量速度にて噴出させ、両側縁の空気室からは大なる質量速度にて噴出させることが記載されている。
甲11には、上記4bに掲記した記載によれば、TIF旋回流型流動燃焼炉において、「燃焼用空気」を中央部の2ブロックには少量入れ、両端の2ブロックには多量に入れて流動層を形成した点が記載されている。
(なお、甲7にも、上記1fに掲記した記載によれば、ガス入口からガス室に「空気」が供給されてガス分散板を通って砂を流動化させていることが記載されているので、流動化ガスとして空気を用いたことが記載されていると認められる。)
そして、本件発明4及び5についての判断においてそれぞれ前示した周知の技術に照らせば、請求項6で付加した構成、すなわち「質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気であること」は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。

本件発明6の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明6は、本件発明4又は5について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明6の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

7 本件発明7について

本件発明7は、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の方法の発明を引用して、請求項7に記載された構成を付加したものであるので、請求項7で付加した構成について検討する。

平成17年5月20日の口頭審理の中で当審が示した特開昭55-46370号公報は、本件発明の出願日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「炭化水素類の燃焼方法」の発明について、「本発明は炭化水素類の燃焼方法に関する。」(1頁下左欄15行)、「本発明の方法において使用される炭化水素類は通常は常圧残渣油、減圧残渣油などの蒸留残渣油,タール,ピッチ,コークスなどの熱分解残渣物であるが、これらに限定されるものではなく、経済性を度外視すれば一般の燃料油のすべてを使用することができる。更には、石炭,タールサンド,オイルシエール或いはこれら固体状炭化水素類から得られる重質油を使用することができる。」(2頁上左欄7ないし15行)、「本発明の実施にあたつては、上記の触媒を流動剤として適宜公知の流動層反応管や、流動燃焼ボイラなどの流動層式燃焼装置が用いられる。触媒流動層への炭化水素類の供給は、炭化水素類の炭素量および水素量の分析値から算出される炭化水素類の完全燃焼に要求される理論酸素量に相当する空気の、通常は10?300%の空気と共に行なわれ、更に炭化水素類の流動層への供給を容易にし、分散を均一化するため、原料炭化水素類に対し10?300%量の水蒸気の共存下に好ましくは供給される」(2頁下左欄3ないし13行)と記載され、これらの記載によれば、同公報には、流動層燃焼ボイラなどの流動層式燃焼装置において、流動層への炭化水素類の供給は、完全燃焼に必要な理論空気量の通常は10?300%の空気と共に行われることが記載されている。
同じく当審が示した特開平4-327707号公報は、本件発明の出願日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「廃棄物燃焼ボイラ」の発明について、「本発明の廃棄物燃焼ボイラは、基本的には 比較的大きな燃焼室と、燃焼室の下部に設けられた比較的小さな流動層と、廃棄物を燃焼室に供給する廃棄物供給口と、廃棄物供給口からの廃棄物を細粒子と荒粒子とに選別して細粒子を燃焼室で浮遊燃焼させると共に荒粒子を流動層で流動燃焼させる風選空気を供給する風選空気ノズルと、廃棄物の細粒子と荒粒子との比率に関係なく流動層の温度を一定に維持する流動層温度維持装置と、から構威した事に特徴が存する。」(2頁右欄16ないし24行)、「流動用空気Eは、燃焼に必要な空気の15?40%、一次空気Bは40?60%、風選空気(二次空気)Cは20?25%,三次空気Hは10?20%とし、空気過剰率を1.4以下にしている。」(3頁右欄48行ないし4頁左欄1行)と記載され、これらの記載及び図4によれば、同公報には、流動層の流動用空気が理論空気量の15?40%の空気であることが記載されている。
特開平7-35322号公報は、本件発明の出願日前に国内において頒布された刊行物であるが、その中には、名称を「塩素含有廃棄物の焼却方法及び装置」の発明について、「本実施例の装置は、図1に示すように、部分燃焼流動層炉70のガス出口72と、この部分燃焼流動層炉70で発生したガスを酸化雰囲気で焼却する二次燃焼炉74のガス入口76とを、サイクロン、衝突式集塵器等の集塵器60を介して接続し、さらに、この集塵器60の下部と前記部分燃焼流動層炉70とを、回収ダスト循環ライン78を介して接続して構成したものである。また、回収ダスト循環ライン78には、ダスト冷却器80が設けられて、冷却されたダストの全部又は一部が部分燃焼流動層炉70へ戻されるようになっている。部分燃焼流動層炉70の流動層12は、450?650℃に制御されており、一次空気比は0.15?0.5の還元雰囲気である。層温度はこの空気比を変えることにより制御される。また、図示していないが、排ガス循環又は/及び水添加で層温度を制御することができる。」(3頁左欄49行ないし右欄14行)と記載され、この記載によれば、同公報には、部分燃焼流動層炉において、その流動層は一次空気比が0.15?0.5であることが記載され、一次空気比とは理論空気量(理論上完全燃焼を行う最小空気量)に対する供給空気量の比であることは当業者の技術常識であるから、同公報には、流動層の流動用空気が理論空気量の15?50%の空気であることが記載されている。
上記の事実に照らせば、流動層炉における流動層の流動化空気を理論空気量の30%以下の空気とすることは、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。
そうすると、請求項7で付加した構成、すなわち「流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気を含むこと」は、上記認定した周知の技術に基づいて当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

本件発明7の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明7は、本件発明4ないし6について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明7の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

8 本件発明8について

本件発明8は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法の発明を引用して、請求項8に記載された構成を付加したものであるので、請求項8で付加した構成について検討する。

甲7には、上記1dに掲記した記載及び第1図によれば、流動層熱分解炉の下部に備えられた分散板がゆるい円錐状をなし、その中央下部に不燃物取り出し用の二重排出弁が記載されている。
そうすると、請求項8に記載された構成、すなわち「廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出すること」は、甲7に記載されているものと認められる。

本件発明8の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明8は、本件発明1ないし7について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明8の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

9 本件発明9について

本件発明9は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法の発明を引用して、請求項9に記載された構成を付加したものであるので、請求項9で付加した構成について検討する。

甲7には、上記1d及び1fに掲記した記載によれば、第1図が示す流動層熱分解炉において流動化ガスが分散板より噴出して砂を熱媒体とする流動層を形成することが記載されている。
そうすると、請求項9に記載された構成、すなわち「流動媒体は砂であること」は、甲7に記載されているものと認められる。

本件発明9の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明9は、本件発明1ないし8について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明9の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

10 本件発明10について

(1) 特開昭62-35004号公報(甲7)に記載された発明
・甲7には、上記1a、1c、1d、1e及び1fに掲記した記載並びに第1図によれば、廃棄物等の固形物を流動層熱分解炉に供給し、該熱分解炉の流動層にて固形物を熱分解し、該熱分解により生成したチャー及び可燃性ガス並びに部分燃焼により発成した灰分及び燃焼排ガスをサイクロン燃焼炉に導入し、該サイクロン燃焼炉では可燃分を燃焼すると共に灰分を溶融スラグ化して排出する固形物の燃焼装置が記載されている。
・甲7には、上記1bに掲記した記載によれば、流動層内の熱分解により生成されたチャー及び灰分が微細粒子、すなわち微粒子となり、これを含む生成ガスをサイクロン燃焼炉に供給することが記載されている。
・甲7には、上記1gに掲記した記載によれば、高負荷燃焼を行わせて灰分を融かし壁面を流下させ、旋回流に基づく遠心力効果と濡れ効果により灰分を高い効率で捕捉して溶融スラグとして排出口から排出するサイクロン燃焼炉が記載されている。
・甲7には、上記1hに摘示した記載によれば、流動層熱分解炉の流動層を流動化する空気をガス入口に供給するブロワが記載されている。
以上の事実によれば、甲7には、次の発明が記載されているものと認められる。
「供給された固形廃棄物をガス化する流動層熱分解炉と、該流動層内の熱分解により生成された可燃性ガス及びチャー並びに部分燃焼により発成した灰分及び燃焼排ガスを導入して該可燃性ガスと該チャーを燃焼し、高負荷燃焼により灰分を熔融するサイクロン燃焼炉とを備えた固形物の燃焼装置において、前記流動層熱分解炉は流動層の流動化空気供給ブロワを備え、前記サイクロン燃焼炉は可燃性ガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層熱分解炉より排出された可燃性ガスと微粒子となったチャーを燃焼して灰分を捕捉し、熔融スラグ化として排出口より排出される固形物の燃焼装置。」(以下「甲7の発明2」という。)

(2) 対比
本件発明10と甲7の発明2を対比すると、甲7の発明2の「溶融」と本件発明10の「熔融」とは技術的に同じ意味で使用されていると認められ、また、甲7の発明2の「流動層熱分解炉」、「サイクロン燃焼炉」、「流動化空気供給ブロワ」、「固形物の燃焼装置」は、機能・作用からみて、それぞれ本件発明1の「流動層炉」、「熔融炉」、「流動化ガス供給手段」、「ガス化及び熔融燃焼装置」に相当すると認められるから、本件発明10と甲7の発明2に記載された上記発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと微粒子となったチャーを燃焼して灰分を熔融してスラグ化するガス化及び熔融燃焼装置。」
(相違点)
・本件発明10は「該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し」たものであるのに対し、甲7には、かかる構成について明示の記載がない点。(以下「相違点E」という。)
・本件発明10は「(流動層)炉内を450℃?650℃に維持し」たものであるのに対し、甲7には、かかる構成について明示の記載がない点。(以下「相違点F」という。)
・本件発明10は「炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」たものであるのに対し、甲7には、かかる構成について明示の記載がない点。(以下「相違点G」という。)
・灰分を熔融してスラグ化することについて、本件発明10は「1300℃以上にて」するものであるのに対し、甲7には、温度については何ら記載がない点。(以下「相違点H」という。)

(3) 相違点についての判断
・相違点Eについて
甲8には、上記2aに掲記した記載及び図、特に第2図によれば、流動層ガス化炉内に供給された流動化ガスは、その質量速度を炉底の中央部付近におけるよりも両側縁部のおいてより大とすることにより、流動媒体が炉底の中央部の移動層では沈降し、該移動層の下部で両側縁部に移行して該両側縁流動層内で上昇し、該両側縁流動層上部で前記移動層の上部に向けて転向する循環流が形成されていると認められる。
甲10には、上記3bに掲記した記載及び第9図によれば、ブロワによって焼却炉内に流動化空気を送り込み、炉底の両側縁部の空気室からは大なる質量速度にて、中央部の空気室からは小なる質量速度にて噴出させることにより、流動媒体が中央の移動層では下降し、次に両側縁流動層に向けて移行し、該両側縁流動層で上昇し、該両側縁流動層上部で前記移動層の上部に向けて転向し、一部の流動媒体は流動層の中で旋回循環するものと認められる。
甲11には、上記4a及び4bに掲記した記載及び図2によれば、TIF旋回流型流動燃焼炉において、中央部の2ブロックには少量の空気を供給し、両端の2ブロックには多量の空気を供給することにより流動層と移動層を形成し、この両者の組み合わせによって、流動媒体の循環流を形成することが記載されている。
以上の事実に照らせば、ブロワのような流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成する点は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。

次に甲7が開示する発明について、前示したとおり、甲21に開示された事実を勘案すると甲7が開示する流動層炉の流動層中にも何らかの流動媒体の流れが発生することは、当業者の技術常識であったと認められる。(本件発明1の相違点Aについての判断参照)。
そうすると、甲7の流動層炉の流動層中に発生する流れを、相違点Eに係る本件発明10の構成、すなわち「流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し」としたことは、甲7の発明2に上記認定した周知の技術を適用することにより当業者であれば容易に想到できたものというべきである。

・相違点Fについて
甲14には、上記6a及び6bに掲記した記載並びに図1によれば、流動層炉(流動層熱分解炉)内の温度を500?600℃に温度制御することが記載されていることも前示のとおりである(本件発明1の相違点Bについての判断参照)。
そうすると、相違点Fに係る本件発明1の構成、すなわち「(流動層)炉内を450℃?650℃に維持し」としたことは、甲7の発明2に甲14に記載された発明を適用することにより当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

・相違点Gについて
甲7には、上記1b及び1fに掲記した各記載によれば、都市ごみのような廃棄物を流動層熱分解炉に供給すると、流動層内の部分燃焼により灰分が発生し残部が熱分解されるが、この熱分解過程で可燃ガスとチャーが生成され、該チャーと該灰分が微細粒子、すなわち微粒子となることが記載されていると認められる。(なお、この認定は、甲10の上記3c及び3dに掲記した記載からも裏付けられる。)
そうすると、相違点Eにおいて前示したように、甲7の発明2に、ブロワのような流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成する周知の技術を適用すると、かかる循環流中で熱分解により生成されたチャーが微粒子となることは、当業者には自明の事項であったと認められる。
したがって、相違点Gに係る本件発明10の構成、すなわち「炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」たことは、甲7の発明2に周知の技術を適用した結果として当業者には自明の事項であるから、甲7の発明2と周知の技術に基づいて当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

・相違点Hについて
甲14、甲15、甲16に開示された前示の事実に照らして、廃棄物の灰分を熔融してスラグ化する各種の熔融炉において、その処理を1300℃以上にて行うことは、本件発明10の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる(本件発明1の相違点Dについての判断参照)。
そうすると、相違点Hに係る本件発明10の構成、すなわち「1300℃以上にて」灰分を熔融してスラグ化することは、甲7の発明2の熔融炉(サイクロン燃焼炉)における灰分を熔融してスラグ化する温度として、上記認定した周知の技術を適用することにより当業者であれば容易に想到することができたものというべきである。

そして、相違点Eないし相違点Hについて、これらを全体的にみても、本件発明10の構成を当業者が想到することの困難性を見出すことはできない。
また、本件発明10の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。

(4) 小括
以上によれば、本件発明10は、本件発明10の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

11 本件発明11について

本件発明11は、請求項10記載の装置の発明を引用して、請求項11に記載された構成を付加したものであるので、請求項11で付加した構成について検討してみる。

請求項11で付加した構成は、発明のカテゴリーを除いて、請求項2で付加した構成と全く同じであり、本件発明2について前示したとおり、「流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持されること」は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。
したがって、本件発明11は、本件発明10について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明11の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

12 本件発明12について

本件発明12は、請求項10又は11記載の装置の発明を引用して、請求項12に記載された構成を付加したものであるので、請求項12で付加した構成について検討する。

請求項12で付加した構成は、発明のカテゴリーを除いて、請求項3で付加した構成と全く同じであり、本件発明3について前示したとおり、「流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環すること」は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。
したがって、本件発明12は、本件発明10又は11について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明12の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

13 本件発明13について

本件発明13は、請求項12記載の装置の発明を引用して、請求項13に記載された構成を付加したものであるので、請求項13で付加した構成について検討する。

請求項13で付加した構成は、発明のカテゴリーを除いて、請求項4で付加した構成と全く同じものに「流動化ガスを供給する手段」を加えたものであるが、この「流動化ガスを供給する手段」について検討すると、請求項4について前示した甲8、甲10、甲11に開示された技術において、流動層を流動させる空気等のガスを供給するためのブロワのようなガス供給手段は、当業者には周知の技術であったものと認められる。

本件発明13の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明13は、請求項12について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明13の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

14 本件発明14について

本件発明14は、請求項10又は11記載の装置の発明を引用して、請求項14に記載された構成を付加したものであるので、請求項14で付加した構成について検討する。

本件発明13についての判断で上記したとおり、流動層を流動させる空気等のガスを供給するブロワのようなガス供給手段は当業者には周知の技術であり、かつ、本件発明4についての判断で前示したとおり、「移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されること」も本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったことに照らせば、請求項14で付加した構成、すなわち「流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなること」は、これらの周知の技術に基づいて当業者であれば容易に想到できたものというべきである。

本件発明14の作用効果を検討しても、甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明14は、本件発明10又は11について前示した理由と上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明14の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

15 本件発明15について

本件発明15は、請求項10ないし14のいずれか1項に記載の装置の発明を引用して、請求項15に記載された構成を付加したものであるので、請求項15で付加した構成について検討する。

甲19には、上記9a、9b、9cに掲記した記載及び第1、第2図によれば、「溶融炉」の発明について、鉛直方向の軸線を有する円筒形の第1段旋回溶融室、該第1段旋回溶融室の頂部近傍に溶融物を円筒形の壁面の接線方向に導入する供給口、該第1段旋回溶融室の下部には水平方向に傾斜して延びた第2段旋回溶融室が連通され、溶融スラグを第2段旋回溶融室の下方に排出する技術が記載されている。そして、甲19に記載された「第1段旋回溶融室」、「第2段旋回溶融室」は、それぞれ本件発明15の「燃焼室」、「室」に相当するものと認められる。
そうすると、請求項15で付加した構成、すなわち「熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出する」構成は、甲19に記載された上記技術に基づいて当業者であれば容易に想到できたものというべきである。

本件発明15の作用効果を検討しても、甲7、甲14及び甲19に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。
したがって、本件発明15も、本件発明10ないし14について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明15の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7、甲14及び甲19に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

16 本件発明16について

本件発明16は方法の発明であるが、請求項16に記載された構成は、本件発明1の構成のうち、「(流動層)炉内を450℃?650℃に維持し」との構成を「流動層温度を450℃?650℃に維持し」とし、「1300℃以上にて」を削除したものであるが、この「流動層温度を450℃?650℃に維持し」とした点については、本件発明2について前示したとおり、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものにすぎない。

したがって、本件発明16は、本件発明1の方法の発明を引用した本件発明2について前示したものと同様の理由により、本件発明16の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

17 本件発明17について

本件発明17は、請求項16記載の方法の発明を引用して、請求項17に記載された構成を付加した方法の発明であるので、請求項17で付加した構成について検討する。

請求項17で付加した構成は、請求項3に記載されて構成と全く同じであり、本件発明3について前示したとおり、「流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環すること」は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。
したがって、本件発明17は、本件発明16について前示した理由に上記の理由を加えた理由により、本件発明17の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

18 本件発明18について

本件発明18は、請求項17記載の方法の発明を引用して、請求項18に記載された構成を付加した方法の発明であるので、請求項18で付加した構成について検討する。

請求項18で付加した構成は、請求項4に記載された構成と全く同じであり、本件発明4について前示したとおり、「移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されること」は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術にすぎなかったものと認められる。
そうすると、本件発明18は、本件発明17について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明18の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲14に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

19 本件発明19について

(1) 甲7に記載された発明
甲7には、「1 本件発明1について」の(1)に前示したとおり、甲7の発明1が記載されていると認められる。
(2) 対比
本件発明19と甲7の発明1を対比すると、甲7の発明1の「溶融」と本件発明19の「熔融」とは技術的に同じ意味で使用されていると認められ、また、甲7の発明1の「流動層熱分解炉」、「サイクロン燃焼炉」及び「固形物の燃焼方法」は、機能・作用からみて、それぞれ本件発明19の「流動層炉」、「旋回熔融炉」及び「廃棄物の処理方法」に相当すると認められるから、本件発明19と甲7の発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、該廃棄物を該流動層炉に供給し、該流動層炉より排出されたガスと微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化する廃棄物の処理方法。」
(相違点)
・本件発明19は「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」たものであるのに対し、甲7には、かかる構成について明示の記載がない点。(以下「相違点I」という。)
・本件発明19は「該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり」としたものであるのに対し、甲7には、かかる構成について明示の記載がない点。(以下「相違点J」という。)
・本件発明19は「流動層温度を450℃?650℃に維持し」としたものであるのに対し、甲7には、かかる構成について明示の記載がない点。(以下「相違点K」という。)
・本件発明19は「該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」と(以下「相違点L」という。)
・本件発明19は「該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し」としたものであるのに対し、甲7には、かかる構成について明示の記載がない点。(以下「相違点M」という。)

(3) 相違点についての検討
・相違点Iについて
相違点Iは、本件発明1において前記認定した相違点Aと全く同じ構成のものであるから、相違点Aについて前示した理由により、相違点Iに係る構成、すなわち「流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し」たことは、甲7の発明1に前記認定した周知の技術を適用することにより当業者であれば容易に想到できたものというべきである。

・相違点Jについて
相違点Jは、本件発明1の構成に請求項3において付加した構成と実質的に同じ構成のものであるから、本件発明3について前示した理由により、相違点Jに係る構成、すなわち「循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり」との構成は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術であったものと認められる。

・相違点Kについて
相違点Kは、請求項2において付加した構成と実質的に同じ構成のものであるから、本件発明2について前示した理由により、相違点Kに係る構成、すなわち「流動層温度を450℃?650℃に維持し」とした点は、本件発明の出願前に当業者には周知の技術にすぎなかったものと認められる。

・相違点Lについて
相違点Lは、本件発明1において前記認定した相違点Cと全く同じ構成のものであるから、相違点Cについて前示した理由により、相違点Lに係る構成、すなわち「流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし」た点は、甲7の発明に周知技術を適用した結果として当業者には自明の事項であるから、甲7の発明と周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものであるというべきである。

・相違点Mについて
甲11には、上記4cに掲記した記載及び図2によれば、流動燃焼炉の不燃物は、流動媒体(砂)とともに炉底部から炉外に排出され、振動篩により不燃物と流動媒体を分別し、該流動媒体を砂循環用エレベータにより炉の側部であって流動層の上方の位置に備えられた砂投入コンベヤまで運び、そこから該流動媒体を該流動燃焼炉の内部に戻す技術が開示されている。
そうすると、相違点Mに係る構成、すなわち「廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し」とした点は、甲11に記載されていると認められる。

そして、相違点Iないし相違点Mについて、これらを全体としてみても、本件発明19の構成を当業者が想到することの困難性を見出すことはできない。
また、本件発明19の作用効果を検討しても、甲7及び甲11に記載された各発明並びに周知の技術から当業者の予測を超えるような格別顕著な効果を奏するものとみることはできない。

(4) 小括
以上によれば、本件発明19は、本件発明19の出願前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲11に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

20 本件発明20について

本件発明20は、請求項19記載の方法の発明を引用して、請求項20に記載された構成を付加したものであるので、請求項20で付加した構成について検討する。

甲11には、図2によれば、流動燃焼炉の不燃物と流動媒体(砂)が炉の両側から下方に取り出され、振動篩により横方向に移動させながら不燃物と流動媒体を分別し、該流動媒体を砂循環用エレベータの下部に運搬する技術が開示されていると認められる。
そうすると、請求項20で付加した構成、すなわち「前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別されること」は、甲11に記載された技術の設計変更程度のものであって、当業者であれば容易に想到できたものというべきである。
したがって、本件発明20は、本件発明19について前示した理由に上記の理由を加えた理由によりその進歩性が否定されるものであるから、本件発明20の出願日前に国内において頒布された刊行物である甲7及び甲11に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

21 被請求人の主張に対する判断

(1) 技術分野について
被請求人は、甲7の発明と甲8ないし甲12の各発明とは技術分野が異なるので、甲8ないし甲11を根拠に周知の技術を主張することはできないし、これらを組み合わせることができないと主張する。しかし、甲7の上記1a及び1bに掲記した記載によれば、熱分解過程を流動層により行う流動層炉において、その対象物として、都市ごみや廃プラスチックなどの固形廃棄物、スラジなどの液の中に含まれた固形有機物、石炭などの固形燃料、その他の固形物が挙げられていること、甲8の上記2a及び2bに掲記した記載によれば、流動層を用いて石炭等をガス化する炉において、石炭と廃木材や廃プラスチックとの混合利用が可能であること、更に、破砕上問題となる不燃物を含むようなものをガス化原料として用いることも可能であることが開示されていること、甲10の上記3a及び3eに掲記した記載によれば、流動層を用いた焼却炉と熱分解炉が挙げられており、熱分解炉やその他の熱反応炉においても焼却炉と同様の作用効果を奏することが開示されていること、甲14の上記6aに掲記した記載によれば、ガラス繊維を含む廃棄プラスチックを燃焼分解させてスラグとして回収する廃棄物焼却方法が開示されていることが認められ、これらの事実に照らせば、流動層を用いた焼却炉又は熱分解炉に投入されて処理される対象物として、都市ごみ、廃プラスチック(ガラス繊維を含むものを含む)、廃木材、その他の固形廃棄物、スラジなどの固形有機物、石炭、その他の固形燃料、更に破砕上問題となる不燃物を含むようなものなどの種々のものがあることは、当業者の技術常識であって、これらの証拠に開示された技術は流動層を用いた熱炉の点で共通するものであると認められる。そうすると、甲7の発明と甲8ないし甲12の各発明は、流動層を用いた熱炉について共通する技術であるから技術分野が共通するものと認められるし、また仮に、炉に投入される対象物の違いや処理目的の違いにより下位の技術分野では多少異なるものとしても、これらの技術が相互に関連した技術分野に属するものであることには変わりがないので、これらの証拠を根拠に周知の技術を主張することができないとみることもできないし、これらを組み合わせることができないとみることもできない。被請求人の主張は採用の限りではない。

(2) 阻害要因について
被請求人は、甲7ではサイクロン燃焼炉の前段に流動層熱分解炉を用いているので微細なチャー等がサイクロン燃焼炉に供給されてキャリーオーバーの問題(捕捉しきれないで一部がサイクロン燃焼炉をすり抜けてしまう問題)が生じるところ、前段の流動層に微粒子化の機能を有する循環流を採用すると、後段のサイクロン燃焼炉により微細なチャー等が供給されてキャリーオーバーの問題がより拡大して、甲7の発明の目的である微細な灰分の集塵性能向上に反する改変となるので、甲7と甲8ないし甲12の組み合わせには阻害事由があると主張する。しかし、甲7には、第1図に集じん器20が図示されているとはいえ、「燃焼排ガスはサイクロン炉の出口18より熱交換器19、及び要すれば未捕集のダストを集じんする為の電気集じん器20を通して系外に排出される。尚、電気集じん器20を設けた場合は、此処から排出されるダストを再びサイクロン燃焼炉11に供給して(供給装置は図示せず)、溶融固化すると良い。」(3頁左欄34ないし40行)と記載されているので、電気集じん器の設置は必須の構成要件として記載されているものではないので、甲7のサイクロン燃焼炉にキャリーオーバーの問題が必ず生じるものとみることはできない。そして、甲7には更に、従来の流動層焼却炉の欠点の一つとして、「流動層燃焼に於ては、灰分は微細粒子となって燃焼ガス中に混入するが、粒径が細かいので一般の機械的集じん装置では充分に捕捉し得ないのみならず・集じん后も発じん防止などに特別な対策を要する。」(1頁下右欄15ないし19行)と記載され、サイクロン燃焼炉を適用することにより、「サイクロン燃焼炉自体が集じん機能を果すのみならず、高負荷燃焼を行えば灰分はサイクロン内壁に捕捉溶融され内壁面は濡れ状態となって微細な灰分の集じん性能が向上し」(3頁右欄27ないし30行)との効果を奏するものと記載され、これらの記載によれば、被請求人が主張するように、前段の流動層に微粒子化の機能を有する循環流を採用すると後段のサイクロン燃焼炉により微細なチャー等が供給されるとしても、サイクロン燃焼炉を高性能化したり電気集じん器を適宜設けたり高性能化したりする対策により対処可能であると認められるので、被請求人が主張する阻害事由は根拠がないものといわざるを得ない。

第8 むすび

以上のとおりであるから、本件発明1ないし20は、甲7、甲11、甲14及び甲19に記載された各発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし20に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するので、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項2】前記流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気であることを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含むことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】前記流動媒体は砂であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、
前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃?650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、
前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするガス化及び熔融燃焼装置。
【請求項11】前記流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項13】前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成されることを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなることを特徴とする請求項10又は11記載の装置。
【請求項15】前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、流動層温度を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項17】前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、
流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、
該廃棄物を該流動層炉に供給し、流動層温度を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、
該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項20】前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、流動層炉において可燃物をガス化し、生成された可燃ガス及び微粒子を熔融燃焼炉において高温燃焼させ灰分を熔融する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、多量に発生する都市ごみ、廃プラスチック等の廃棄物を焼却し減量化すること、及びその焼却熱を有効利用することが望まれている。廃棄物の焼却灰は、通常、有害な重金属を含むので、焼却灰を埋め立てにより処理するためには、重金属成分を固化処理する等の対策が必要である。これらの課題に対応するため、特公昭62-35004号公報の固形物の燃焼方法及びその装置が提案された。この公報の燃焼方法においては、固形物原料が流動層熱分解炉において熱分解され、熱分解生成物、即ち、可燃ガス及び粒子、がサイクロン燃焼炉に導入される。サイクロン燃焼炉の中で加圧空気により可燃分が高負荷燃焼され、旋回流により灰分が壁面に衝突し溶けて壁面を流下し、熔融スラグとなって排出口から水室へ落下し固化される。
【0003】
特公昭62-35004号公報の方法においては、流動層全体が活発な流動化状態であるため、生成ガスに同伴して炉外へ飛散する未反応可燃分が多いため、高いガス化効率が得られない等の短所があった。また、従来、流動層炉が使用できるガス化原料としては、石炭等の場合は、粒径0.5?3mmの粉炭、廃棄物の場合は、数十mmの細破砕物とされてきた。これより大きいと流動化を阻害するし、これより小さいと完全にガス化されないまま未反応可燃分として生成ガスに同伴して炉外へ飛散してしまう。従って、これまでの流動層炉では、ガス化原料を炉に投入する前の前処理として、予め粉砕機等を用いて破砕・整粒することが不可欠であり、所定の粒径範囲に入らないガス化原料は、利用できず、歩留まりをある程度犠牲にせざるをえなかった。
【0004】
上記の問題を解決するため、特開平2-147692号公報の流動層ガス化方法及び流動層ガス化炉が提案された。この公報の流動層ガス化方法においては、炉の水平断面が矩形にされ、炉底中央部から炉内へ上向きに噴出される流動化ガスの質量速度が、炉底の2つの側縁部から供給される流動化ガスの質量速度より小さくされ、炉底側縁部の上方で流動化ガスの上向き流が炉中央部へ転向され、炉中央部に流動媒体が沈降する移動層が形成され、炉の両側縁部に流動媒体が活発に流動化する流動層が形成され、移動層に可燃物が供給される。流動化ガスは、空気と蒸気の混合物、又は酸素と蒸気の混合物であり、流動媒体は、珪砂である。
【0005】
しかしながら、この特開平2-147692号公報の方法は、次の短所を有する。即ち、(1)移動層及び流動層の全体において、ガス化吸熱反応と燃焼反応が同時に生じ、ガス化し易い揮発分がガス化すると同時に燃焼され、ガス化困難な固定炭素(チャー)やタール分等は、未反応物として生成ガスに同伴して炉外へ飛散し、高いガス化効率が得られない。(2)生成ガスを燃焼させ蒸気及びガスタービン複合発電プラントに使用する場合、流動層炉を加圧型とすることが必要であるが、炉の水平断面が矩形のため、加圧型とすることが困難である。好ましいガス化炉の内圧は、生成ガスの用途によって決定される。一般の燃焼用ガスとして使用する場合は、数千mmAq程度で良いが、ガスタービンの燃料として使用する場合は、数kgf/cm2以上が必要であり、更に、高効率ガス化複合発電用の燃料として使用する場合には十数数kgf/cm2以上が適当である。
【0006】
都市ごみ等の廃棄物処理については、依然として可燃性ごみの燃焼による減量化が、重要な役割を担っており、それに付随して、近年、ダイオキシン対策、媒塵の無害化、エネルギー回収効率の向上等、環境保全型のごみ処理技術の必要性が増大している。我が国の都市ごみの焼却量は、約100,000トン/日であり、都市ごみ全量のエネルギーは、我が国の消費電力量の約4%に相当する。現在、都市ごみのエネルギーの利用率は、約10%に止まっているが、利用率を高めることができれば、それだけ化石燃料の消費量が少なくなり、地球温暖化防止にも寄与できる。
【0007】
しかしながら、現在の焼却システムは、次の問題を含んでいる。即ち、▲1▼HClによる腐食の問題があり、発電効率を高くできない。▲2▼HCl、NOx、SOx、水銀、ダイオキシン等に対する公害防止設備が複雑化してコスト及びスペースが増大している。▲3▼法規制の強化、最終処分場の用地難等により、焼却灰の熔融設備の設置が増大しているが、そのため別設備の建設が必要であり、また電力等を多量に消費している。▲4▼ダイオキシンを除去するには、高価な設備が必要である。▲5▼有価金属の回収が困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術の前記の問題点を解消することにあり、都市ごみ、廃プラスチック等の廃棄物や石炭等の可燃物から多量の可燃分を含む可燃ガスを高効率で生成し、生成された可燃ガスの自己熱量により燃焼灰を熔融することができる処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置を提供することにある。本発明においては、熔融炉へ供給される生成ガスは、自己熱量により1300°C以上の高温を発生するような充分な熱量を持ち、チャー、タールを含む均質なガスであるようにされ、またガス化装置から不燃物の排出が支障なく行われるようにされる。本発明の別の目的は、廃棄物中の有価金属を還元雰囲気の流動層炉内から酸化しない状態で取出し回収できるガス化方法及び装置を提供することにある。本発明の更に別の目的は、図面を参照する実施例の説明において明らかにされる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明の廃棄物の処理方法の1態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、炉内を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
更に、前記流動媒体の循環流は、質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給することにより形成される。
前記質量速度が比較的小さい流動化ガスと質量速度が比較的大きい流動化ガスは、ともに空気である。
また、前記流動層炉へ供給される流動化ガスは、廃棄物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む。
また、前記廃棄物に含まれる不燃物を流動層炉の炉底部より排出する。
更に、前記流動媒体は砂である。
本発明のガス化及び熔融燃焼装置は、廃棄物をガス化する流動層炉と、該流動層炉内で生成されたガスとチャーを燃焼して灰分を熔融する熔融炉とを備えたガス化及び熔融燃焼装置において、前記流動層炉は流動化ガスを炉内に供給する流動化ガス供給手段を備え、該流動化ガス供給手段によって炉内に流動媒体の循環流を形成し、炉内を450℃?650℃に維持して炉内に供給された廃棄物を該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、前記熔融炉はガスとチャーを燃焼する燃焼室を備え、該燃焼室によって前記流動層炉より排出されたガスと該微粒子となったチャーを燃焼して1300℃以上にて灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動層炉は、流動層温度が450℃?650℃に維持される。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段によって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段によって形成される。
前記流動化ガス供給手段は、質量速度が比較的小さい流動化ガスを供給する手段と、質量速度が比較的大きい流動化ガスを供給する手段とからなる。
更に、前記熔融炉の燃焼室は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形室からなり、該円筒形室の頂部に前記ガスとチャーを導入し、該円筒形室で該ガスとチャーを旋回させ、該円筒形室の下部には水平方向に対して傾斜して延びた室が連通され、前記熔融した灰分を該傾斜して延びた室の底部よりスラグとして排出する。
本発明の廃棄物の処理方法の他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該廃棄物を該流動層炉に供給し、流動層温度を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
前記流動媒体の循環流は、流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層により形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通り循環する。
また、前記移動層は質量速度が比較的小さい流動化ガスによって形成され、前記流動層は質量速度が比較的大きい流動化ガスによって形成される。
本発明の廃棄物の処理方法の更に他の態様は、廃棄物を流動層炉にてガス化した後に、熔融炉にて灰分を熔融スラグ化する方法において、流動層炉内に流動媒体の循環流を形成し、該循環流は流動媒体が沈降する移動層と流動媒体が上昇する流動層が形成され、流動媒体が該移動層及び流動層を通って循環する循環流であり、該廃棄物を該流動層炉に供給し、流動層温度を450℃?650℃に維持し、該流動層炉内の循環流中でガス化してガスとチャーを生成し該チャーを該循環流中で微粒子とし、該廃棄物に含まれる不燃物と流動媒体を該流動層炉の炉底部より排出し、該不燃物と該流動媒体を分別した後に該流動媒体を該流動層炉に戻し、該流動層炉より排出された該ガスと該微粒子となったチャーを旋回熔融炉に供給して灰分を熔融してスラグ化することを特徴とするものである。
更に、前記不燃物と流動媒体は、前記炉底部より下方へ取り出し、水平方向に定量排出した後、該不燃物と該流動媒体は分別される。
本発明においては、可燃物が流動層炉で可燃ガスにガス化される。本発明の方法において、流動層炉の水平断面がほぼ円形にされ、流動層炉へ供給される流動化ガスが、炉底中央部付近から炉内へ供給される中央流動化ガス及び炉底周辺部から炉内へ供給される周辺流動化ガスから成り、中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように傾斜壁により転向され、それによって、炉の中央部に流動媒体(一般的には、硅砂を使用)が沈降拡散する移動層が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成され、炉内へ供給される可燃物が、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化され、中央流動化ガスの酸素含有量が、周辺流動化ガスの酸素含有量以下であり、流動層の温度が450?650℃に維持される。
【0010】
本発明において、中央流動化ガスは、水蒸気、水蒸気と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つである。また、周辺流動化ガスは、酸素、酸素と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つである。それ故、中央流動化ガスと周辺流動化ガスの組合せは、第1表に示すように、9通りある。どの組合せを選定するかは、ガス化効率を重視するか、経済性を重視するかにより、決められる。
【0011】
【表1】

ガス化効率の最も高い組合せは、No.1の組合せであるが酸素消費量が多いのでコスト高である。酸素消費量、次に水蒸気消費量を少なくする順に、ガス化効率が低下するが、コストも低くなる。本発明において使用される酸素は、高純度のものでも良く、また酸素富化膜を使用して得られる低純度のものでも良い。No.9の空気と空気の組合せは、従来の焼却炉の燃焼空気として公知であるが、流動層炉の水平断面を円形とした本発明においては、炉内周辺部上方に設けられる傾斜壁の下方投影面積が、流動層炉の水平断面を矩形とする場合の傾斜壁の下方投影面積より大きいので、周辺流動化ガスの流量を増大し、従って、酸素供給量を増大できるので、ガス化効率を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、本発明の方法は、流動化ガスが炉底中央部と炉底周辺部の間の炉底中間部から炉内へ供給される中間流動化ガスを更に含む。中間流動化ガスの質量速度は、中央流動化ガスの質量速度と周辺流動化ガスの質量速度の間にある。中間流動化ガスは、水蒸気と空気の混合気体、及び空気の2種の気体の内の1つである。それ故、中央流動化ガス、中間流動化ガス、及び周辺流動化ガスの組合せは、18通りとなるが、酸素含有量は、炉の中心部から周辺部へ順に増加することが好都合であり、好適な組合せは、第2表の15通りである。
【0013】
【表2】

第2表の組合せにおいて、どれを選定するかは、ガス化効率を重視するか、経済性を重視するかにより、決められる。第2表の組合せの内、ガス化効率の最も高い組合せは、No.1の組合せであるが、酸素消費量が多いのでコスト高である。酸素消費量、次に水蒸気消費量を少なくする順に、ガス化効率が低下するが、コストも低くなる。第1表及び第2表において使用される酸素は、高純度のものでも良く、また酸素富化膜を使用して得られる低純度のものでも良い。
【0014】
流動層炉が大型となる場合、中間流動化ガスは、炉底中央部と炉底周辺部の間に設けた複数の同心状の中間部から供給される複数の流動化ガスであることが好ましい。この場合、流動化ガスの酸素濃度は、炉中央部において最も低く、周辺部に近づくに従ってより高くするのが好適である。
【0015】
本発明の方法において、好ましくは、流動層炉へ供給される流動化ガスは、可燃物の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下の空気量を含む。流動層炉の炉底周辺部付近から不燃物が取出され、分級され、得られた砂が流動層炉内へ戻される。流動層炉で生成された可燃ガス及び微粒子が熔融燃焼炉で1300℃以上で高温燃焼され、灰分が熔融される。熔融燃焼炉からの排ガスによりガスタービンが駆動される。流動層炉内の圧力は、用途に応じて大気圧以下又は大気圧以上に維持される。可燃物は、廃棄物、石炭、その他である。
【0016】
本発明は、また流動層炉において可燃物がガス化される装置を提供する。本発明の装置において、流動層炉は、水平断面がほぼ円形の側壁、炉内底部に配置される流動化ガス分散機構、流動化ガス分散機構の外周に配置される不燃物取出口、流動化ガス分散機構の中央部付近から炉内へ流動化ガスを垂直方向上方へ流動するように供給する中央供給手段、流動化ガス分散機構の周辺部から炉内へ流動化ガスを垂直方向上方へ流動するように供給する周辺供給手段、周辺供給手段から垂直方向上方へ流動する流動化ガスを炉中央部へ転向させる傾斜壁、及び傾斜壁の上方に配置されるフリーボードを含み、中央供給手段は、質量速度が比較的小さく、酸素濃度が比較的低い流動化ガスを供給し、周辺供給手段は、質量速度が比較的大きく、酸素濃度が比較的高い流動化ガスを供給する。
【0017】
本発明の装置においては、流動化ガス分散機構の中央部と周辺部の間のリング状中間部から炉内へ流動化ガスを垂直方向上方へ供給する中間供給手段が設けられる。中間供給手段は、中央供給手段と周辺供給手段から供給される流動化ガスの質量速度の中間の質量速度、及び中央供給手段と周辺供給手段から供給される流動化ガスの酸素濃度の中間の酸素濃度の流動化ガスを供給する。周辺供給手段は、リング状の供給ボックスにより形成されることができる。可燃物入口が流動層炉の上方に配置され、可燃物入口は、可燃物を中央供給手段の上方へ落下させ、流動化ガス分散機構は、中央部よりも周辺部が低く形成されることができる。
【0018】
不燃物取出口は、分散機構の外周に配置されるリング部分とリング状部分から下方へ向かって縮小する円錐状部分を有することができる。不燃物取出口は、直列に配列される定量排出器、第1シール用スイング弁、スイングカット弁、及び第2シール用スイング弁を有することができる。
【0019】
本発明の装置は、流動層炉において発生された可燃ガス及び微粒子を高温燃焼させ灰分を熔融させる熔融燃焼炉を含むことができる。熔融燃焼炉は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形一次燃焼室、円筒形一次燃焼室へ前記流動層炉で発生された可燃ガス及び微粒子を軸線のまわりに旋回するように供給する可燃ガス入口、円筒形一次燃焼室に連通される二次燃焼室、二次燃焼室の下方部分に設けられ熔融灰分を排出可能な排出口を有する。熔融燃焼炉の二次燃焼室の排ガスが、廃熱ボイラ及び空気予熱器導入され、廃熱が回収される。熔融燃焼炉の二次燃焼室の排ガスによりガスタービンを駆動させることができる。排ガスは、集塵器に導入され塵埃が除去された後に大気中へ放出されることができる。熔融燃焼炉の二次燃焼室の排ガスは、廃熱ボイラ及び空気予熱器導入され、廃熱が回収され得る。熔融燃焼炉の二次燃焼室の排ガスによりガスタービンを駆動させることができる。排ガスは、集塵器に導入され塵埃が除去された後に大気中へ放出される。
【0020】
【作用】
本発明のガス化装置は、流動層炉の循環流により熱が拡散されるので、高負荷とすることができ、炉を小型にすることができる。
本発明においては、流動層炉が少量の空気で燃焼を維持できるので、流動層炉を低空気比低温度(450?650°C)とし、発熱を最小限に抑えて、ゆるやかに燃焼させることにより、可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができ、ガス、タール、チャーの可燃分の大部分を次段の熔融燃焼炉において利用できる。
本発明の方法又は装置においては、流動層炉の水平断面がほぼ円形にされるから、炉を耐圧構造とし、流動層炉を大気圧以上の加圧状態とし、炉内へ供給される可燃物から生成される可燃ガスの圧力を高圧とすることが容易である。高圧の可燃ガスは、高効率で運転できるガスタービンやボイラ・ガスタービン複合プラント用の燃料として使用可能であり、それ故、そのようなプラントにおいて可燃ガスを使用することにより、可燃物からのエネルギ回収の効率を向上できる。本発明の方法又は装置において、ごみ処理を主体とする場合は、臭気や有害燃焼ガスが流動層炉から漏れるのを防止するため、炉内圧を大気圧以下とすることが好ましいが、この場合にも流動層炉の水平断面が円形であることにより、炉壁は、容易に外圧に耐えることができる。
【0021】
本発明においては、流動層炉へ供給される中央流動化ガスの質量速度が、周辺流動化ガスの質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流が炉の中央部へ向うように転向され、それによって、流動媒体の沈降拡散する移動層が炉の中央部に形成されると共に、炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層が形成される。炉内へ供給された可燃物は、移動層の下部から流動層へ及び流動層頂部から移動層へ、流動媒体と共に循環する間に可燃ガスにガス化される。可燃物は、最初に、炉中央の下降する移動層の中で、主として揮発分が流動媒体(一般的には、硅砂を使用)の熱によりガス化される。そして、移動層を形成する中央流動化ガスの酸素含有量が、小さため、移動層内で生じた可燃ガスは、ほとんど燃焼されずに中央流動化ガスと共にフリーボードへ上昇され、発熱量の高い良質の生成ガスとなる。
【0022】
移動層において揮発分が失われ加熱された可燃物、即ち、固定炭素(チャー)やタール分等は、次に流動層内へ循環され、流動層内の比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガスと接触し燃焼され、燃焼ガス及び灰分に変わると共に炉内を450?650℃に維持する燃焼熱を発生する。この燃焼熱により流動媒体が加熱され、加熱された流動媒体が炉周辺部上方で炉中央部へ転向され移動層内を下降することにより移動層内の温度を揮発分のガス化に必要な温度に維持する。可燃物が投入される炉中央部ほど低酸素状態であるので、高い可燃分を有する生成ガスを発生することができる。また、可燃物中の金属が不燃物取出口から未酸化の有価物として回収することができる。
【0023】
本発明においては、流動層炉において生成されたガス及び灰分その他の微粒子を熔融燃焼炉において燃焼させる場合、生成ガスが高可燃分を含むので、加熱用燃料を必要とすることなく、熔融炉内を1300℃以上の高温にすることができ、熔融炉内で灰分を充分熔融させることができる。熔融した灰は、熔融炉から取り出し水冷等の周知の方法により容易に固化させ得る。それ故、灰分の体積は、著しく減少され、また灰分中の有害金属は、固化されるので、灰分は、埋め立て処理可能な形態となる。本発明のその他の作用は、特許請求の範囲及び図面を参照する実施例の説明から明らかにされる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明するが、本発明は、これらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定義されるものである。また、図1から図14において、同一の符号が付された部材は、同一部材又は対応する部材であり、各図面の説明において、重複した説明は、省略される。
【0025】
図1は、本発明のガス化方法を実施する第1実施例のガス化装置の主要部の図解的な縦断面図、図2は、図1のガス化装置の図解的な水平断面図である。図1に示されるガス化装置において、流動層炉2内へ炉底に配置される流動化ガス分散機構106を介し供給される流動化ガスは、炉底中央部4付近から炉内へ上向き流として供給される中央流動化ガス7及び炉底周辺部3から炉内へ上向き流として供給される周辺流動化ガス8から成る。
【0026】
第1表に示すように、中央流動化ガス7は、水蒸気、水蒸気と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つであり、周辺流動化ガス8は、酸素、酸素と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つである。中央流動化ガスの酸素含有量は、周辺流動化ガスの酸素含有量以下とされる。流動化ガス全体の空気量が、可燃物11の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下とされ、炉内は、還元雰囲気とされる。
【0027】
中央流動化ガス7の質量速度は、周辺流動化ガス8の質量速度より小にされ、炉内周辺部上方における流動化ガスの上向き流がデフレクタ6により炉の中央部へ向うように転向される。それによって、炉の中央部に流動媒体(一般的には硅砂を使用)が沈降拡散する移動層9が形成されると共に炉内周辺部に流動媒体が活発に流動化している流動層10が形成される。流動媒体は、矢印118で示すように、炉周辺部の流動層10を上昇し、次にデフレクタ6により転向され、移動層9の上方へ流入し、移動層9中を下降し、次に矢印112で示すように、ガス分散機構106に沿って移動し、流動層10の下方へ流入することにより、流動層10と移動層9の中を矢印118及び112で示すように循環する。
【0028】
可燃物供給口104から移動層9の上部へ供給された可燃物11は、流動媒体と共に移動層9中を下降する間に、流動媒体の持つ熱により加熱され、主として揮発分がガス化される。移動層9には、酸素が無いか少ないため、ガス化された揮発分から成る生成ガスは燃焼されないで、移動層9中を矢印116のように抜ける。それ故、移動層9は、ガス化ゾーンGを形成する。フリーボード102へ移動した生成ガスは、矢印120で示すように上昇し、ガス出口108から生成ガス29として排出される。
【0029】
移動層9でガス化されない、主としてチャー(固定炭素分)やタール114は、移動層9の下部から、流動媒体と共に矢印112で示すように炉内周辺部の流動層10の下部へ移動し、比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガス8により燃焼され、部分酸化される。流動層10は、可燃物の酸化ゾーンSを形成する。流動層10内において、流動媒体は、流動層内の燃焼熱により加熱され高温となる。高温になった流動媒体は、矢印118で示すように、傾斜壁6により反転され、移動層9へ移り、再びガス化の熱源となる。流動層9の温度は、450?650℃に維持され、抑制された燃焼反応が継続するようにされる。
【0030】
図1及び図2に示すガス化炉1によれば、流動層炉2にガス化ゾーンGと酸化ゾーンSが形成され、流動媒体が両ゾーンにおいて熱伝達媒体となることにより、ガス化ゾーンGにおいて、発熱量の高い良質の可燃ガスが生成され、酸化ゾーンSにおいては、ガス化困難なチャーやタール114を効率良く燃焼させることができる。それ故、可燃物のガス化効率を向上させることができ、良質の可燃ガスを生成することができる。
【0031】
図2に示される流動層炉1の水平断面において、ガス化ゾーンGを形成する移動層9は、炉中心部において円形であり、酸化ゾーンSを形成する流動層10は、移動層9のまわりにリング状に形成される。流動層10の外周にリング状の不燃物排出口5が配置される。ガス化炉1を円筒形とすることにより、高い炉内圧を容易に支持することができる。ガス化炉自体により炉内圧を受ける構造に代えて、ガス化炉の外部に別途圧力容器(図示しない)を設けるができる。
【0032】
図3は、本発明のガス化方法を実施する第2実施例のガス化装置の主要部の図解的な縦断面図、図4は、図3のガス化装置の図解的な水平断面図である。図3に示される第2実施例のガス化装置において、流動化ガスは、中央流動化ガス7及び周辺流動化ガス8に加え、炉底中央部と炉底周辺部の間の炉底中間部から炉内へ供給される中間流動化ガス7’を含む。中間流動化ガス7’の質量速度は、中央流動化ガス7の質量速度と周辺流動化ガス8の質量速度の間に選定される。中間流動化ガスは、水蒸気、水蒸気及び空気の混合気体、又は空気の3種の気体の内のいずれか1つである。
【0033】
図3のガス化装置において、図1のガス化装置の場合と同様に、中央流動化ガス7は、水蒸気、水蒸気と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つであり、周辺流動化ガス8は、酸素、酸素と空気の混合気体、及び空気の3種の気体の内の1つである。中間流動化ガスの酸素含有量は、中央流動化ガスの酸素含有量と周辺流動化ガスの酸素含有量の間に選定される。それ故、流動化ガスの好適な組合せは、第2表の15通りである。各組合せにおいて、流動層炉の中央部から周辺部へ拡がっていくにつれて、酸素供給量が増加することが重要である。流動化ガス全体の空気量が、可燃物11の燃焼に必要な理論燃焼空気量の30%以下とされ、炉内は、還元雰囲気とされる。
【0034】
図1のガス化装置の場合と同様に、図3のガス化装置において、炉の中央部に流動媒体が沈降する移動層9が形成され、炉の周辺部に流動媒体が上昇する流動層10が形成される。流動媒体が、矢印112及び118で示すように移動層及び流動層を通り循環する。移動層9と流動層10の間においては、流動媒体が、主として横方向に拡散する中間層9’が形成される。移動層9及び中間層9’がガス化ゾーンGを形成し、流動層10が酸化ゾーンSを形成する。
【0035】
移動層9の上部へ投入された可燃物11は、流動媒体と共に移動層9中を下降する間に加熱され、その揮発分がガス化する。移動層9中でガス化されなかったチャー及びタール並びに一部の揮発分は、流動媒体と一緒に中間層9’及び流動層10へ移動し、部分的にガス化し部分的に燃焼される。中間層9’でガス化されない主としてチャー及びタールは、流動媒体と共に、炉周辺部の流動層10内へ移動し、比較的酸素含有量の多い周辺流動化ガス8中で燃焼される。流動媒体は、流動層10中で加熱され、移動層9へ循環し、移動層9中の可燃物を加熱する。中間層の酸素濃度については、可燃物の種類(揮発分が多いか、チャー、タール分が多いか)等により、酸素濃度を低くしてガス化を主体にするか、酸素濃度を高くして酸化燃焼を主体にするかが選定される。
【0036】
図4に示す流動層炉の水平断面おいて、ガス化ゾーンを形成する移動層9は、炉中心部において円形であり、その外周に沿って中間流動化ガス7’により形成される中間ゾーン9’があり、酸化ゾーンを形成する流動層10は、中間ゾーン9’のまわりにリング状に形成される。流動層10の外周にリング状の不燃物排出口5が配置される。ガス化炉1を円筒形とすることにより、高い炉内圧を容易に支持することができる。炉内圧は、ガス化炉自体で受けるか、またはガス化炉の外部に別途圧力容器を設けてそれにより受けることができる。
【0037】
図5は、本発明の第3実施例のガス化装置の図解的な垂直断面図である。図5のガス化装置1において、ごみ等の可燃物からなるガス化原料11は、ダブルダンパー12、圧縮フィーダ13、及び給塵フィーダ14により、ガス化装置1の流動層炉2へ供給される。圧縮フィーダ13は、ガス化原料をプラグ状に圧縮し、これにより炉内圧がシールされる。プラグ状に圧縮されたごみは、図示しないほぐし器によりばらばらにされ、給塵フィーダ14により炉内へ送られる。
【0038】
図5のガス化装置において、中央流動化ガス7及び周辺流動化ガス8は、図1の実施例と同様に供給され、それ故、図1の実施例と同様に、流動層炉2に還元雰囲気のガス化ゾーンと酸化ゾーンが形成される。流動媒体が両ゾーンにおいて熱伝達媒体となり、ガス化ゾーンにおいて、発熱量の高い良質の可燃ガスが生成され、また酸化ゾーンにおいて、ガス化困難なチャーやタール114が効率良く燃焼され、高いガス化効率と良質の可燃ガスが得られる。図5の実施例において、ダブルダンパー12とガス化炉1のフリーボード102に連通するルーツブロア15が設けられ、ごみの圧縮が不十分な場合に炉内から圧縮フィーダを通りダブルダンパ12へリークするガスを炉内へ戻す。好ましくは、ルーツブロア15は、ダブルダンパ12の上段部分が大気圧になるように、適当な量の空気及びガスをダブルダンパ12から吸引し炉内へ戻す。
【0039】
図5のガス化装置にいて、流動層炉2から不燃物を排出するため、不燃物排出口5、円錐形シュート16、定量排出器17、シール用第1スイング弁18、スイングカット弁19、シール用第2スイング弁20、トロンメル付き排出器23が、順に配置され、次のように作動される。
【0040】
(1)シール用第1スイング弁18が開にされ、第2スイング弁20が閉にされて炉内圧が第2スイング弁20でシールされる状態において、定量排出器17が運転され、流動媒体の砂を含む不燃物が、円錐形シュート16内からスイングカット弁19へ排出される。(2)スイングカット弁19が所定量の不燃物を受けると、定量排出器17がOFFされ、第1スイング弁18が閉にされて炉内圧が第1スイング弁18でシールされる。そして排出弁22が開にされスイングカット弁19内が大気圧に戻される。次に第2スイング弁20が完全に開にされ、そしてスイングカット19が開にされることにより、不燃物がトロンメル付き連続排出器23へ排出される。(3)第2スイング弁20が完全に閉にされた後に、均圧弁21が開にされ、第1スイング弁18の内部と円錐形シュート16の内部が均圧にされてから、第1スイング弁18が開にされ、最初の工程(1)へ戻る。これらの工程(1)?(3)は、自動的に繰り返し運転される。
【0041】
トロンメル付き連続排出器23は、連続運転され、大きな不燃物27をトロンメルにより系外へ排出し、砂と小さな不燃物を砂循環エレベータ24により輸送し、分級器25により微細な不燃物28を除去した後、砂は、ロックホッパ26を介しガス化炉1へ戻される。このような不燃物排出機構は、2台のスイング弁が不燃物を受けずに圧力シール機能だけ有するので、第1及び第2スイング弁18、20のシール部における不燃物の噛込みを避けることができる。炉内圧が若干負圧でよい場合は、シール機能は不要である。
【0042】
図6は、本発明の第4実施例のガス化装置の図解的な垂直断面図である。図6のガス化装置において、ガス化原料11の供給とそれに関係する炉内圧のシールは、図5の不燃物の排出のための機構と同様に、スイングカット弁19、19’及びシール用第1及び第2スイング弁18の組合せを使用して行われる。圧縮フィーダ13は、除かれている。図6の実施例において、炉内から第1スイング弁18内へ漏れたガスは、排出弁22’及びブロア(図示しない)を介し、炉内へ戻される。また、第1スイング弁18を完全に閉じた後に均圧弁21が開とされ、スイングカット弁19内の圧力が炉内圧と同じにされる。
【0043】
図7は、本発明のガス化装置により製造される生成ガスの精製工程の1例を示すフロー図である。図7の精製工程において、ガス化装置1へガス化原料11及び流動化ガス7、8がガス化炉1へ供給される。ガス化装置1において生成された可燃生成ガスは、廃熱ボイラ31で熱が回収され冷却されて、サイクロン分離器32へ送られ、固形分37、38が分離される。その後、生成ガスは、水洗浄塔33において水により洗浄され冷却され、アルカリ洗浄塔34において硫化水素を除去され、その後、ガスホルダー35に貯留される。サイクロン分離器32で分離された固形分の内の未反応チャー37は、ガス化装置1へ戻され、残りの固形分38は、系外へ排出される。図5の実施例と同様に、ガス化装置1から排出された不燃物の内、大きな不燃物27は、系外へ排出され、砂は、ガス化装置1へ戻される。洗浄塔33、34から出る廃水は、廃水処理器36へ導入され、無害化処理される。
【0044】
図8は、ガス化装置1において発生した可燃生成ガス及び微粒子が、熔融燃焼炉41に導入されて高温燃焼され、灰が熔融される工程の1例を示すフロー図である。図8の工程において、ガス化装置1で製造された可燃分の多い生成ガスが、熔融燃焼炉41へ導入される。熔融燃焼炉41には、酸素、酸素と空気の混合気体、又は空気が吹き込まれ、生成ガス及び微粒子が1300°C以上で燃焼され、灰が熔融され、またダイオキシン、PCB等の有害物質が分解される。熔融燃焼炉41で熔融された灰44は、急冷されスラグとされ減量化される。熔融燃焼炉41で発生した燃焼排気ガスは、スクラバー42で急冷され、ダイオキシンの再合成が防止される。スクラバー41で急冷された排気ガスは、フィルター43において更に塵埃38が除去され、排気塔55から大気へ排出される。
【0045】
図9は、本発明の第5実施例のガス化及び熔融燃焼装置の垂直断面斜視図である。図9において、ガス化装置1は、図1の実施例とほぼ同一であるが、ガス出口108は、熔融燃焼炉41の可燃ガス入口142に連通されている。熔融燃焼炉41は、ほぼ垂直方向の軸線を有する円筒形一次燃焼室140、及び水平方向に傾斜する二次燃焼室150を含む。流動層炉2で発生された可燃ガス120及び微粒子は、可燃ガス入口142を介し一次燃焼室140へその軸線のまわりに旋回するように供給される。
【0046】
一次燃焼室140は、上端に始動バーナを備えると共に、燃焼用空気を軸線のまわりに旋回するように供給する複数の空気ノズル134を備える。二次燃焼室150は、、一次燃焼室140とその下端で連通されると共に、二次燃焼室の下方部分に配置され熔融灰分を排出可能な排出口152、排出口152の上方に配置される排気口154、一次燃焼室と連通する部分の付近に配置される助燃バーナ136、及び燃焼用空気を供給する空気ノズル134を備える。排気口154は、輻射板162を備え、輻射により排気口154から失われる熱量を減少させている。
【0047】
図10は、廃熱ボイラ及びタービンと組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図である。図10において、ガス化装置1は、排出器23から排出された大きな不燃物27及び分級器25から排出された微細な不燃物28を一緒に搬送するコンベヤ172を具備する。流動層炉2の下部から不燃物を取り出す円錐形シュート16のまわりに空気ジャケット185が配置され、高温の抜き出し砂により空気ジャケット185内の空気が加熱される。補助燃料Fが、熔融燃焼炉41の一次及び二次燃焼室140、150へ供給される。熔融燃焼炉41の排出口152から排出される熔融状態の灰44は、水室178に受け入れられ急冷されて、スラグ176として排出される。
【0048】
図10において、熔融燃焼炉41から排出される燃焼ガスは、廃熱ボイラ31、エコノマイザ183、空気予熱器186、集塵器43、誘引通風機54を経て大気へ排出される。空気予熱器186から出た燃焼ガスは、集塵器43に入る前に、消石灰等の中和剤Nを添加される。水Wがエコノマイザ183へ供給され、予熱された後、ボイラ31で加熱されて蒸気にされ、蒸気タービンSTを駆動する。空気Aが空気予熱器186へ供給され、加熱された後、空気ジャケット185で更に加熱され、空気管184を介し、熔融燃焼炉41、及び必要に応じてフリーボード102へ供給される。
【0049】
廃熱ボイラ31、エコノマイザ183、及び空気予熱器186の底部に溜まる微粒子180、190は、砂循環エレベータ24で分級器25へ搬送され微細な不燃物28が除去され、流動層炉2へ戻される。フィルター43において分離される飛灰38は、高温で揮散したNa、Kなどのアルカリ金属塩を含むので、処理器194において薬品により処理される。
【0050】
図10の装置においては、流動層炉2の燃焼が低空気比による低温部分燃焼とされ、流動層温度が450°C?650°Cに維持されることにより、高熱量の可燃ガスを発生させることができる。また、低空気比により還元雰囲気で燃焼が行われるので、不燃物中に鉄、アルミが未酸化の有価物として得られる。流動層炉2で発生された高熱量の可燃ガス及びチャーは、熔融燃焼炉41において、1300°C以上の高温燃焼することができ、灰を熔融させ、ダイオキシンを分解させることができる。
【0051】
図11は、ガス冷却室280と組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図である。図11において、ガス化装置1、熔融燃焼炉41、水室178、集塵器43、誘引通風機54等は、図10と同様である。図11においては、廃熱ボイラに代えて、ガス冷却器280、独立空気予熱器188が設けられ、熔融燃焼炉41から高温燃焼排ガスを耐火断熱被覆された高温ダクト278を介してガス冷却器280に導入する。ガス冷却器280において、燃焼ガスは、微細水噴霧により、瞬時に減温され、ダイオキシンの再合成が防止される。高温ダクト278の排ガス流速は、5m/秒以下の低速とされる。ガス冷却器280の上部に温水発生器283が配置される。空気予熱器188で加熱された空気がガス化炉1のフリーボード102及び熔融燃焼炉41へ供給される。
【0052】
図12は、廃熱ボイラ31及び反応塔310と組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図である。図12において、ガス化装置1、熔融燃焼炉41、水室178、廃熱ボイラ31、蒸気タービンST、エコノマイザ183、空気予熱器186、集塵器43、誘因通風機54等は、図10と同様である。図12においては、廃熱ボイラ31とエコノマイザ183の間に、反応塔310、スーパーヒータ加熱燃焼器320が配置される。反応塔310において、消石灰スラリー等の中和剤Nが燃焼排ガスに添加され、HClが除去される。反応塔310から排出される固体微粒子312は、廃熱ボイラ31から排出される固体微粒子312と一緒に砂循環エレベータ24により分級器25へ送られる。加熱燃焼器320において、未燃焼ガス及び補助燃料Fを燃焼させ、蒸気温度を500°C程度に上げる。図12の装置においては、蒸気が高温高圧であることと、空気比が小さく排ガスの持ち出し顕熱が小さいことにより、発電効率を約30%とすることができる。
【0053】
図13は、本発明の実施例のガス化コジェネレーション型の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図である。図13において、ガス化装置1、熔融燃焼炉41、水室178、廃熱ボイラ31、集塵器43、誘引通風機54等は、図10の装置と同様である。図13においては、廃熱ボイラ31と集塵器43の間に反応塔310が配置され、反応塔310において、消石灰スラリー等の中和剤Nが燃焼排ガスに添加され、HClが除去される。反応塔310の排ガスが、集塵器43を経てガスタービン420で使用される。ガスタービン420においては、空気Aが圧縮機Cにより圧縮され燃焼器CCに供給され、燃焼器CCおいて燃料Fが燃焼され、この燃焼ガス及び圧縮機410で圧縮されて燃焼器CCへ供給され排ガスが、タービンTの作動流体となる。ガスタービン420の排気ガスは、スーパーヒータ430、節炭器440、及び空気予熱器450を順に通過され、誘因通風機54により大気へ放出される。廃熱ボイラ31において発生された蒸気が、スーパーヒータ430において、ガスタービン420の排気ガスにより加熱され、蒸気タービンSTへ供給される。
【0054】
図14は、本発明の実施例の加圧ガス化複合発電型の流動層ガス化及び熔融燃焼方法の工程を示すフロー図である。加圧型のガス化炉1で生成された高温高圧の生成ガス29は、廃熱ボイラ31’へ導入され、蒸気を発生させると共にそれ自体は冷却される。廃熱ボイラを出た生成ガスは、2分され、一方が熔融燃焼炉41へ他方が中和剤Nを添加されHClが中和されて集塵器43’へ導入される。集塵器43’において、温度低下により固化した生成ガス中の低融点物質が、生成ガスから分離されて熔融燃焼炉41へ送られ、熔融される。低融点物質が除去された生成ガスが、ガスタービンGTにおいて燃料ガスとして利用される。ガスタービンGTの排気ガスは、スーパーヒータSH、エコノマイザECoで熱交換され、その後、排ガス処理器510で処理され、大気中へ放出される。熔融燃焼炉41の排気ガスは、熱交換器EX、集塵器43を経て、排ガス処理器510へ導入される。熔融炉から排出された熔融灰44は、急冷しスラグにされる。集塵器43から排出された固形分38は、処理器194において薬品処理される。
【0055】
図14の工程によれば、廃棄物から生成されたガスが、HCl及び固形分が除去された後、燃料として使用されるから、ガスタービンを腐食させるることがなく、また、HClが除去されているので、ガスタービン排気ガスにより高温の蒸気を発生させることができる。
【0056】
【発明の効果】
(1)本発明のガス化装置は、流動層炉の循環流により熱が拡散されるので、高負荷とすることができ、炉を小型にすることができる。
【0057】
(2)本発明においては、流動層炉が少量の空気で燃焼を維持できるので、流動層炉を低空気比低温度(450?650°C)とし、発熱を最小限に抑えて、ゆるやかに燃焼させることにより、可燃分を多量に含む均質な生成ガスを得ることができ、ガス、タール、チャーの可燃分の大部分を次段の熔融燃焼炉において利用できる。
【0058】
(3)本発明においては、流動層炉の循環流により大きな不燃物も容易に排出できる。また、不燃物中の鉄、アルミが、未酸化の有価物として利用できる。
【0059】
(4)本発明によれば、ごみ処理を無害化し、高いエネルギ利用率を有する方法又は設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施例のガス化装置の主要部の図解的な垂直断面図。
【図2】
図1のガス化装置の流動層炉の図解的な水平断面図。
【図3】
本発明の第2実施例のガス化装置の主要部の図解的な垂直断面図。
【図4】
図2のガス化装置の流動層炉の図解的な水平断面図。
【図5】
本発明の第3実施例のガス化装置の図解的な垂直断面図。
【図6】
本発明の第4実施例のガス化装置の図解的な垂直断面図。
【図7】
生成ガスの精製工程の1例を示すフロー図。
【図8】
灰が熔融される工程の1例を示すフロー図。
【図9】
本発明の第5実施例のガス化及び熔融燃焼装置の図解的な垂直断面斜視図。
【図10】
廃熱ボイラ及びタービンと組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図。
【図11】
ガス冷却室と組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図。
【図12】
廃熱ボイラ及び反応塔と組み合わせて使用される本発明の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図。
【図13】
本発明のガス化コジェネレーション型の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼装置の配置図。
【図14】
本発明の加圧ガス化複合発電型の実施例の流動層ガス化及び熔融燃焼方法の工程を示すフロー図。
【符号の説明】
1;ガス化装置、2;流動層炉、3;炉底周辺部、4;炉底中央部、5;不燃物排出口、6;傾斜壁、7;中央流動化ガス、7’;中間流動化ガス、8;周辺流動化ガス、9;移動層、9’;中間層、10;流動層、11;ガス化原料(可燃物)、12;ダブルダンパー、13;圧縮フィーダ、14;給塵フィーダ、15;ルーツブロア、16;円錐形シュート、17;定量排出器、18、20;スイング弁、19、19’;スイングカット弁、22;排出弁、23;トロンメル付き連続排出器、24;砂循環エレベータ、25;分級器、27、28;不燃物、29;生成ガス、31、31’;廃熱ボイラ、32;サイクロン分離機、36;廃水処理器、37;未反応チャー、38;固形分、41;熔融燃焼炉、43、43’;集塵器、44;熔融灰、54;誘引通風機、55;排気塔、102;フリーボード、104;可燃物供給口、106;ガス分散機構、108;ガス出口、114;チャー・タール、134;助燃バーナ、140;一次燃焼室、142;可燃ガス入口、150;二次燃焼室、162;輻射板、176;スラグ、178;水室、183;エコノマイザ、185;空気ジャケット、186、188;空気予熱器、194、510;処理器、280;ガス冷却器、310;反応塔、320;スーパーヒータ加熱燃焼器、420;ガスタービン、A;空気、C;圧縮機、CC;燃焼器、ECo;エコノマイザ、F;補助燃料、G;ガス化ゾーン、N;中和剤、S;酸化ゾーン、SH;スーパーヒータ、ST;蒸気タービン、T;タービン、W;水。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-08-01 
結審通知日 2005-08-04 
審決日 2005-08-18 
出願番号 特願平7-22000
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (F23C)
最終処分 成立  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 櫻井 康平
原 慧
登録日 2001-01-26 
登録番号 特許第3153091号(P3153091)
発明の名称 廃棄物の処理方法及びガス化及び熔融燃焼装置  
代理人 小山 雄一  
代理人 渡邉 勇  
代理人 宮川 貞二  
代理人 渡邊 勇  
代理人 松村 貴司  
代理人 松村 貴司  
代理人 伊藤 茂  
代理人 大野 聖二  
代理人 藤本 昇  
代理人 中谷 寛昭  
代理人 大野 聖二  
代理人 伊藤 茂  
代理人 宮川 貞二  

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