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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1199957
審判番号 不服2007-9442  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-04 
確定日 2009-06-01 
事件の表示 平成7年特許願第504677号「洗剤-パッケージ組み合わせ」拒絶査定不服審判事件〔平成7年1月26日国際公開、WO95/02677、平成9年3月18日国内公表、特表平9-502742〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
国際出願 平成 6年(1994年)7月13日
(優先権主張 1993年 7月14日 EP
1994年 6月23日 EP)
拒絶理由通知 平成15年11月18日(起案日)
意見書・手続補正書提出 平成16年 5月18日
拒絶査定 平成19年 1月10日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 平成19年 4月 4日
手続補正書提出 平成19年 4月 4日
審尋 平成20年 3月 3日(起案日)

第2 平成19年4月4日の手続補正及び本願発明について
1 補正の内容
平成19年4月4日の手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の、
「1. ペルカーボネート漂白剤を含有する粒状洗剤組成物と前記組成物を収納するパッケージ化システムからなる包装物であって、前記組成物が35℃で30%未満の平衡相対湿度を有し且つパッケージ化システムが水蒸気移動速度1g/m^(2)/日から20g/m^(2)/日未満の値を有することを特徴とする包装物。
2. 前記パッケージ化システムが水蒸気移動速度1g/m^(2)/日?15g/m^(2)/日を有する、請求項1に記載の包装物。
3. 前記パッケージ化システムが単層または積層紙および/またはプラスチックフィルムから作られたバッグまたはパウチからなる、請求項1または2に記載の包装物。
4. 前記パッケージ化システムがこのようなバッグまたはパウチからなる、請求項3に記載の包装物。
5. 前記バッグまたはパウチが詰め替えバッグである、請求項3または4に記載の包装物。
6. 粒状洗剤組成物が界面活性剤とビルダーとを含有する洗濯洗剤組成物である、請求項1?5のいずれか1項に記載の包装物。
7. 前記組成物が650g/リットルより高い嵩密度を有する、請求項6に記載の包装物。
8. 前記洗剤組成物がビルダーを含有する自動皿洗い組成物である、請求項1?5のいずれか1項に記載の包装物。
9. 前記洗剤組成物がペルカーボネート20?80重量%を含有する洗濯
添加剤組成物である、請求項1?5のいずれか1項に記載の包装物。」
を、以下のとおりとする補正である。
「1. ペルカーボネート漂白剤を含有する粒状洗剤組成物と前記組成物を収納するパッケージ化システムからなる包装物であって、前記組成物が35℃で30%未満の平衡相対湿度を有し且つパッケージ化システムが水蒸気移動速度1g/m^(2)/日から15g/m^(2)/日未満の値を有し、単層または積層紙および/またはプラスチックフィルムから作られたバッグまたはパウチからなる、ことを特徴とする包装物。
2. 前記バッグまたはパウチが詰め替えバッグである、請求項1に記載の包装物。
3. 粒状洗剤組成物が界面活性剤とビルダーとを含有する洗濯洗剤組成物である、請求項1または2に記載の包装物。
4. 前記組成物が650g/リットルより高い嵩密度を有する、請求項3に記載の包装物。
5. 前記洗剤組成物がビルダーを含有する自動皿洗い組成物である、請求項1または2に記載の包装物。
6. 前記洗剤組成物がペルカーボネート20?80重量%を含有する洗濯
添加剤組成物である、請求項1または2に記載の包装物。」 (下線は、補正箇所を示す。)

2 補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1?3を削除し、補正前の請求項4を請求項1とし、補正前の請求項5?9を請求項2?6に繰り上げるものであるから、本件補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項第1号に規定する「請求項の削除」を目的とするものといえ、当然に、いわゆる新規事項を追加するものでもない。
そうすると、本件補正は、同法第17条第2項に規定する要件及び同法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
(なお、仮に、請求人のいうとおり、請求項1についての補正が、補正前の請求項1を、いわゆる限定的に減縮することを目的とした補正であるとしても、補正後の請求項1に記載された発明は、下記「第4」に示すとおりの理由で特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができず、本件補正は不適法なものとして却下され、補正前の請求項4に係る発明(補正後の請求項1に係る発明)が、同じ理由により特許を受けることができない、ということになるから、結論が変わるものではない。)

3 本願発明
この出願の発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「ペルカーボネート漂白剤を含有する粒状洗剤組成物と前記組成物を収納するパッケージ化システムからなる包装物であって、前記組成物が35℃で30%未満の平衡相対湿度を有し且つパッケージ化システムが水蒸気移動速度1g/m^(2)/日から15g/m^(2)/日未満の値を有し、単層または積層紙および/またはプラスチックフィルムから作られたバッグまたはパウチからなる、ことを特徴とする包装物。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定は、「この出願については、平成15年11月18日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものである」というものであるところ、その「理由1」は、概略以下のとおりのものである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1?10
・引用文献
1 国際公開第92/6163号パンフレット(引用文献1)
2 特公昭58-024361号公報(引用文献2)
3 特開平0l-311197号公報(引用文献3)
4 特開平01-240461号公報(引用文献4)

引用文献1に記載された発明において、洗剤組成物の35℃での平衡相対湿度を30%未満とすること、及び、パッケージ化システムを1g/m^(2)/日?20g/m^(2)/日の水分蒸気移動速度を有する少なくとも1つのユニットを含有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

第4 当審の判断
1 引用文献に記載された事項
(1) 引用文献1
引用文献1には、以下の事項が記載されている(引用部分を日本語に翻訳して示す。)。
1a 「過炭酸ナトリウムは、鉄、銅、マンガンなどの重金属のイオンの存在下で、そして水分の存在下でも有効酸素を有意速度で失い、これらの影響は約30℃を超える温度で促進される。」(2頁3?8行)
1b 「それゆえ、本発明の目的は、アルカリ金属過炭酸塩漂白剤を配合した濃厚粒状洗濯洗剤組成物(前記漂白剤は商売で組成物の所期の通常の貯蔵寿命にわたって満足な粒子流れおよび溶解度特性と一緒に許容可能な貯蔵安定性を示す)を提供することにある。」(3頁第3パラグラフ)
1c 「製品中のペルカーボネートの安定性は、製品の平衡相対湿度の関数であり、それ自体は製品中の活性水分の量を反映することが見出された。…」(28頁第3パラグラフ)
1d 「例I
下記組成物を調製した。製品AおよびBは本発明に係るものである一方、製品Cは比較製品である。
A B C
C_(12)LAS 6.80 6.80 5.90


ペルカーボネート 14.00 14.00^(★) 15.00


平衡相対湿度RH(%) 25 25 51
^(★) 製品Aと同一量の有効O_(2)(製品の1.88%)を与えるために調節された被覆ペルカーボネート

次いで、製品を閉じたロウ積層厚紙カートン中において32℃およびRH80%で貯蔵状態に置き、0、1、2、3および4週間で各々の有効酸素値の測定を行った。これらの条件下での4週間の貯蔵は、南欧の夏の条件下での少なくとも6ケ月間の貯蔵に相関すると信じられる。
結果は、元の有効酸素量の%として表現して次の通りであった。
1週間 2週間 3週間 4週間
A 90 80 70 60
B 97 94 91 88
C 64 23 20 17
本発明に係る製品AおよびBは前記貯蔵条件下で許容可能なペルカーボネート安定性を示す一方、比較製品Cは許容可能なペルカーボネート安定性を有していないことがわかる。」(38頁?40頁)
1e 「1.重量比で
a)有機界面活性剤5%?20%;
b)1種以上の非ホスフェート洗浄性ビルダー塩25%?60%;
c)アルカリ金属過炭酸塩漂白剤3%?20%;
d)a)?c)のもの以外の洗剤成分0%?67%を含み、組成物は
i)嵩密度少なくとも650g/lを有し且つ少なくとも1種の多成分系成分を含み;
ii)鉄イオンと銅イオンとマンガンイオンとの合計25ppm未満を含有し;
iii)32℃で30%以下の平衡相対湿度を有し、閉じたロウ積層厚紙カートン中で32℃および相対湿度80%において28日貯蔵後に未分解のままである元のペルカーボネートの重量%が少なくとも60%であることを特徴とする、固体洗濯洗剤組成物。
…」(41頁「CLAIMS」)

(2) 引用文献3
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
3a 「耐候試験器中で、調べるべき洗剤を大気相対湿度70%、温度37℃で貯蔵した。この場合、洗剤はロウ引厚紙に包装した。包装の水蒸気透過率は0.4g /m^(2)・hであつた。
表1には、試験した洗剤製品が列挙されている。」(3頁左上欄下から3行?右上欄3行)
3b 「表1
洗剤製品
内容物


アニオン界面活性剤


2Na_(2)CO_(3)・3H_(2)O_(2)
…」(3頁下欄)

2 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、「…アルカリ金属過炭酸塩漂白剤…を含み、組成物は…32℃で30%以下の平衡相対湿度を有し、閉じたロウ積層厚紙カートン中で32℃および相対湿度80%において28日貯蔵後に未分解のままである元のペルカーボネートの重量%が少なくとも60%であることを特徴とする、固体洗濯洗剤組成物」(摘示1e)について記載され、この固体洗濯洗剤組成物は「本発明の目的は、アルカリ金属過炭酸塩漂白剤を配合した濃厚粒状洗濯洗剤組成物(前記漂白剤は商売で組成物の所期の通常の貯蔵寿命にわたって…許容可能な貯蔵安定性を示す)を提供する。」(摘示1b)とされることから、「粒状」の「洗剤組成物」であることが認められる。
そして、この洗剤組成物は「ロウ積層厚紙カートン」に収納された包装物となるものであることが認められる。
そうすると、引用文献1には、
「アルカリ金属過炭酸塩漂白剤を含み、32℃で30%以下の平衡相対湿度を有する、粒状洗剤組成物が、ロウ積層厚紙カートンに収納された包装物」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「アルカリ金属過炭酸塩漂白剤」は本願発明の「ペルカーボネート漂白剤」に包含され、引用発明の「32℃で30%以下の平衡相対湿度」も本願発明の「35℃で30%未満の平衡相対湿度」も、高温で低い平衡相対湿度である点で軌を一にするものである。また、引用発明の「ロウ積層厚紙カートン」は本願発明の「パッケージ化システム」に包含される。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「ペルカーボネート漂白剤を含有する粒状洗剤組成物と前記組成物を収納するパッケージ化システムからなる包装物であって、前記組成物が高温において低い平衡相対湿度を有する包装物。」
である点で一致し、以下の点A,Bにおいて一応の相違が認められる。
A 平衡相対湿度が、本願発明においては、「35℃で30%未満」であるのに対し、引用発明においては、「32℃で30%以下」である点
B パッケージ化システムが、本願発明においては、「水蒸気移動速度1g/m^(2)/日から15g/m^(2)/日未満の値を有し、単層または積層紙および/またはプラスチックフィルム」から作られたものであるのに対し、引用発明においては、「ロウ積層厚紙」から作られたものである点
C パッケージ化システムが、本願発明においては、「バッグまたはパウチ」であるのに対し、引用発明においては、「カートン」である点

4 相違点についての判断
(1) 相違点Aについて
引用発明の組成物の平衡相対湿度は「32℃で30%以下」であり、本願発明の「35℃で30%未満」とは、少なくとも、平衡相対湿度の低い範囲において重複すると認められる。
したがって、この点は、両者の実質的な相違点ではない。
また、引用文献1には、「過炭酸ナトリウムは、…重金属のイオンの存在下で、そして水分の存在下でも有効酸素を有意速度で失い、これらの影響は約30℃を超える温度で促進される。」(摘示1a)と、過炭酸ナトリウムは、水分の存在により、また、温度が高いと有効酸素を失いやすいことが示され、さらに、「製品中のペルカーボネートの安定性は、製品の平衡相対湿度の関数であり、それ自体は製品中の活性水分の量を反映することが見出された。」(摘示1c)と、製品の平衡相対湿度が低いほど製品中のペルカーボネートの貯蔵安定性が向上することが示されていると認められることから、製品の貯蔵安定性に影響するとされる「温度」を考慮して、その貯蔵温度における平衡相対湿度の上限を設定することは、当業者であれば容易に想到し得ることであるといえる。

(2) 相違点Bについて
引用文献1には、上記のとおり、アルカリ金属過炭酸塩漂白剤である、「過炭酸ナトリウムは、…水分の存在下でも有効酸素を有意速度で失」うこと(摘示1a)、洗剤の「製品中のペルカーボネートの安定性は、製品の平衡相対湿度の関数であり、それ自体は製品中の活性水分の量を反映することが見出された。」(摘示1c)ことが、それぞれ記載されている。
すなわち、「製品中のペルカーボネート」は、水分の存在下に有効酸素を有意速度で失うことが知られているのであるから、その製品のパッケージ化システムは、水分が進入しない、水蒸気の透過率が低いものとすることは、当然のことである。
他方、製品のパッケージ化システムとして、例えば、引用文献3には、「2Na_(2)CO_(3)・3H_(2)O_(2)」漂白剤を含有する洗剤(摘示3b)を高温多湿下(大気相対湿度70%、温度37℃(摘示3a))で、「包装の水蒸気透過率は0.4g /m^(2)・h」(摘示3a)である「ロウ引厚紙」に包装し貯蔵したことが記載されている。そのロウ引厚紙の水蒸気透過率は、1日当たりに換算すると、「9.6g/m^(2)/日」という低いものである。このように、「1g/m^(2)/日から15g/m^(2)/日未満の値を有」するロウ引厚紙、すなわち「単層または積層紙」のパッケージ化システムは、漂白剤を含有する洗剤の包装材として格別なものではないということができる。
そうすると、引用発明において、製品の貯蔵安定性を向上させるために、引用文献3などにより従来から知られた水蒸気透過率の低い上記包装材を採用することは、当業者にとって、容易になし得たことと認められる。
そして、この点によって、本願発明が格別顕著な効果を奏すると認めることもできない。

(3) 相違点Cについて
包装の形態としては、カートン(箱)やバッグ(袋)はごくありふれたものであり(必要ならば、引用文献4、9頁左上欄下から6?2行等参照)、包装の形態は当業者が取り扱い性などを考慮して適宜変更しうる程度のものであるから、引用発明において、カートンをバッグとする程度のことは、当業者にとって格別創作力を要したとは認められない。
そして、この点によって、本願発明が格別顕著な効果を奏すると認めることはできない。

5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1?4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 結び
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-05 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-20 
出願番号 特願平7-504677
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之井上 典之  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 原 健司
坂崎 恵美子
発明の名称 洗剤-パッケージ組み合わせ  
代理人 中村 行孝  
代理人 横田 修孝  
代理人 吉武 賢次  
代理人 紺野 昭男  

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