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審決分類 審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A63F
審判 全部無効 2項進歩性  A63F
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A63F
管理番号 1204006
審判番号 無効2008-800147  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-08-11 
確定日 2009-08-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2954445号発明「遊技機の回路基板ボックス」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第2954445号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)についての主な手続は、以下のとおりである。

平成 5年 3月19日 特許出願(特願平5-085228号)
平成11年 7月16日 特許の設定登録
平成12年 3月22日 特許異議申立(異議2000-71205号)
平成12年 6月 8日 特許異議の決定(維持)
平成20年 8月11日 無効審判請求
平成20年12月 1日 被請求人より答弁書と訂正請求書提出
平成21年 2月25日 請求人より弁駁書提出

第2.訂正請求について
1.訂正事項
訂正請求書による訂正の請求(以下「訂正請求」という。)は、本件特許明細書を、本件訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、次の訂正事項1?4を含んでいる。

訂正事項1:本件特許明細書、請求項1記載の
「 遊技機に設けられる回路基板を被覆する回路基板ボックスにおいて、
該回路基板ボックスは、回路基板を被覆するための構成部品に係る所定の部位を破壊しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設けたことを特徴とする遊技機の回路基板ボックス。」を、
「 遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、
該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設けたことを特徴とする遊技機の回路基板ボックス。」と訂正する(下線部が訂正箇所)。

訂正事項2:本件特許明細書、段落【0004】記載の
「【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明においては、遊技機に設けられる回路基板を被覆する回路基板ボックスにおいて、該回路基板ボックスは、前記回路基板を被覆するための構成部品に係る所定の部位を破壊しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設けたことを特徴とするものである。」を、
「【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明においては、遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、
該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設けたことを特徴とする遊技機の回路基板ボックス。」と訂正する(下線部が訂正箇所)。

訂正事項3:本件特許明細書、段落【0005】記載の
「【作用】回路基板を被覆する構成部品に係る所定の部位を破壊しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段が設けられているので、内部に被覆される回路基板を取り出すには、回路基板ボックスの一部又は全部を破壊する以外に方法はなく、仮に回路基板ボックスの一部が破壊されていれば、不正な処理が行われたことが直ちに分かる。」を、
「【作用】係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段が設けられているので、内部に被覆される回路基板を取り出すには、回路基板ボックスの一部又は全部を破壊する以外に方法はなく、仮に回路基板ボックスの一部が破壊されていれば、不正な処理が行われたことが直ちに分かる。」と訂正する(下線部が訂正箇所)。

訂正事項4:本件特許明細書、段落【0039】記載の
「【発明の効果】以上、説明したところから明らかなように、本発明においては、回路基板を被覆する構成部品に係る所定の部位を破壊しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段が設けられているので、内部に被覆される回路基板を取り出すには、回路基板ボックスの一部又は全部を破壊する以外に方法はなく、仮に回路基板ボックスの一部が破壊されていれば、不正な処理が行われたことが直ちに分かる。」を、
「【発明の効果】以上、説明したところから明らかなように、本発明においては、前記係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段が設けられているので、内部に被覆される回路基板を取り出すには、回路基板ボックスの一部又は全部を破壊する以外に方法はなく、仮に回路基板ボックスの一部が破壊されていれば、不正な処理が行われたことが直ちに分かる。」と訂正する(下線部が訂正箇所)。

2.訂正請求についての請求人の主張
平成21年2月25日付け弁駁書における、請求人の訂正請求についての主張は次のとおりである。
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)における「前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片」と「前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片」という2つの「係止垂下片」に関する記載内容はどのような技術的構成を意味するものなのか不明である。
よって、本件訂正発明は特許明細書に記載された事項の範囲外のものであり、不明な訂正は当然明りょう化でも減縮でもないので、認められるべきでない。

3.訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1のうち「回路基板ボックス」について、「箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックス」とする訂正は、特許明細書の段落【0017】における「しかして、回路基板ボックス50は、遊技制御回路基板70を被覆支持する箱体51と、該箱体51の上面を閉塞するカバー体60とから組付構成され、」との記載及び段落【0021】における「一方、上記した箱体51の上面を閉塞するカバー体60は、透明な合成樹脂によって一体的に成形されるもので、」との記載に基づいて、「回路基板ボックス」を「箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる」ものに限定するものである。
また、訂正事項1のうち「回路基板を被覆するための構成部品に係る所定の部位を破壊しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段」について、「前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段」とする訂正は、特許明細書の段落【0019】における「また、箱体51の長手方向両側壁内側には、係止突起57が形成されている。この係止突起57は、カバー体60を箱体51に被覆したときにカバー体60の裏面に垂下形成される係止垂下片66と係合するようになっており、この係止突起57と係止垂下片66との係合状態は、外部から操作してその係合状態を解除することができない固着手段を構成している。」との記載及び段落【0024】における「係止垂下片66は、箱体51の側壁内側に設けられる係止突起57に対応するもので、図1(B)に示すように、係止垂下片66は、カバー体60に形成された貫通穴66bを貫通して一旦上方に突出された後U字状に曲折されてカバー体60の上面と一体的に接続されて形成され、その下端に外側に突設する爪部66aが形成されている。一方、係止突起57は、その上面が傾斜面57aとなっており、その下部が鋭角的に切り込まれた係合面57bとなっている。・・・一旦カバー体60を箱体51に装着した後には、簡単にカバー体60を箱体51から外すことはできない。しかして、これを外そうと思えば、図1(B)に示すように回路基板ボックス50に対して外部に突出している部分をB-B線に沿ってニッパ等で切断して図1(C)に示すように、係止垂下片66をカバー体60から分離させなければならない。」との記載に基づいて、「固着手段」を限定するものである。
請求人の主張は、2つの「係止垂下片」に関する記載からはその構成が不明であるというものであるが、それらの記載は、それぞれ特許明細書における別の段落の記載に基づいてなされたために若干わかりにくくはなっているものの、カバー体の裏面に垂下し下端に外側に突設する爪部が形成された部分を有する係止垂下片が、カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されていることを特定しようとしたものであって、「係止垂下片」の構成が不明であるということはできず、かつ、そのような構成は特許明細書に記載されていたものである。
よって、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的としている。

(2)訂正事項2?4について
訂正事項2?4は、訂正後の特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載が整合するように、本件特許明細書の段落【0004】、【0005】、【0039】の記載を訂正するものであって、全て上記訂正事項1に対応するものとなっている。
よって、訂正事項2乃至4は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

以上のとおりであるから、上記訂正事項1?4は、いずれも特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的としており、かつ、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。
したがって、上記訂正事項1?4は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第134条第2項ただし書に適合し、同法第134条第5項において準用する同法第126条第2項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3.請求人の主張
1.概要
請求人「日本電動式遊技機特許株式会社」は、審判請求書において、本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである旨主張し(審判請求書第3頁第10?12行の主張)、証拠方法として甲第1?15号証(以下「甲1?15」という。)を提出している。
さらに、弁駁書においては、訂正が認められたとしても、本件訂正発明は甲1、甲4及び甲5?15に記載の従来周知の技術に基づき容易に想到し得る程度のものに過ぎないと主張している(弁駁書第3頁第18行?第10頁第4行の主張)。

2.証拠方法
甲1 :実願昭62-57955号(実開昭64-26085号)のマイクロフィルム
甲2 :特開昭64-17677号公報
甲3 :実願昭61-198257号(実開昭63-102484号)のマイクロフィルム(なお、審判請求書の第18頁「8 証拠方法」には、特開昭63-102484号とあるが、誤記と認める。)
甲4 :特開平5-42249号公報
甲5 :実願昭61-98744号(実開昭63-3915号)のマイクロフィルム
甲6 :実公平3-12653号公報
甲7 :実公平2-37717号公報
甲8 :実公昭60-27412号公報
甲9 :実公平2-10547号公報
甲10:実公平4-1583号公報
甲11:実公平4-3333号公報
甲12:実公昭63-6047号公報
甲13:実願昭53-91825号(実開昭55-9550号)のマイクロフィルム
甲14:特開平5-41466号公報
甲15:特開平5-42790号公報

3.進歩性について
(1)本件訂正発明の分説
(a)遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、
(b)該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と
(c)前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、
(d)前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設けた
(e)ことを特徴とする遊技機の回路基板ボックス。

(2)本件訂正発明と甲1記載の発明との対比
上記分説(a)の「箱体」と「カバー体」からなる「回路基板ボックス」は、甲1記載の発明(以下「甲1発明」という。)の支持板(21)とボックス本体(22)からなる制御基板収納ボックス(20)と一致し、上記分説(b)の「係止突起」、同じく分説(c)の「係止垂下片」、分説(d)の「固着手段」は、甲1発明にない点で相違する。

(3)判断
しかし、甲4の段落【0026】に「枠制御ボックス70の一部を構成する下カバー72は、周縁部に起立片84を有すると共に、適宜位置に係止爪85を有しており、該係止爪85を後述する上カバー73の係止孔86に係止」と記載され、図4、図6(B)、図7(A)(B)を見ればわかるように、係止爪85の先端が係止孔86に嵌り込んで係止している。そして、係止爪85と係止孔86の組み合わせ以外に、種々の部材の組み合わせにより、「係止」を実現することは当業者であれば容易に思い付く。
また、甲4のものにおいて、係止爪85が弾性変形しつつ係止孔86に嵌ること及び係止爪85と係止孔86を鋭角的に形成することは容易に推測可能であり、摺動面に傾斜をつけることも、当業者にとって設計事項の範囲内の事項である。
してみると、甲4のものと本件訂正発明とは、前者の「固着手段」がケース外部に全体を露出した状態で設けられているのに対し、後者は係止垂下片の上部が回路基板ボックスから露出しているから、ケース或いはボックスの外か内のどちら側に「固着手段」が配置されるかの相違しかない。
しかしながら、「固着手段」をどちら側に配置するかは、当業者が必要に応じて行う設計変更の範囲内の事項である。
さらに、甲4のものも係止孔86に嵌り込んだ係止爪85の先端を簡単に操作することはできず、外部に露出している係止爪85のいずれかの部分を切断或いは破壊して係止状態を解除することは、甲5?15に開示されているように、当業者であれば容易に予測可能である。
よって、本件訂正発明は依然として進歩性が無く、審判請求書で申し立てた無効理由を解消できないものである。

第4.被請求人の主張
1.概要
被請求人「株式会社三共」は、「本件無効審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求め」(答弁の趣旨)、答弁書において、以下の理由により本件訂正発明は当業者が容易に発明できたものとは言えないから、請求人が提出した証拠及びその理由によって本件訂正発明の特許を無効とすることはできないと主張している。

2.進歩性について
(1)請求人は、甲1発明の「封印シール」が本件特許発明の「固着手段」に該当すると結論づけているが、訂正により「固着手段」の構成が限定されたため、シール状接着部材による固定の構成は含まれなくなった。

(2)請求人は、甲1に「パチンコ機の制御基板を収納するためのボックスの封印構造において使用される封印シールは、これを剥すと封印シールの一部が破損して不正の発見が容易になる旨がすでに明記されている」と主張するが、本件訂正発明は、箱体の長手方向両側壁内側に設けた係止突起と、前記カバー体の裏面に垂下形成された係止垂下片とが係合する構成、つまり、固着手段の係合部分が箱体内部にあり外部からは外すことができない構成とするとともに、「回路基板を被覆するための構成部品に係る所定の部位を破壊」の部分を「係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断」と限定したため、回路基板ボックスの一部又は全部を破壊すること、及び単に破損すると不正の発見が容易であることとは明確に区別されることとなった。

(3)請求人は、甲5?15の記載から、「構成部品の一部若しくは全部を破壊しない限り内部のものを取り出せないようにし、構成部品の一部若しくは全部の破壊によって不正行為の痕跡・形跡が残るようにすること」が従来周知であるとしているが、本件訂正発明の「固着手段」は訂正後の請求項1記載の構成を備え、「係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない」ようにしているから、単なる「内部に収納物を収納した収納体を封印する技術」ではない。

第5.本件訂正発明
訂正請求は、上記第2.に記載したとおり適法なものであるので、本件訂正発明は本件訂正明細書及び図面の記載からみて、その訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、
該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設けたことを特徴とする遊技機の回路基板ボックス。」

第6.甲1?15
請求人が証拠方法として提出した甲1?15は、上記第3.2.に記載したとおりである。
1.甲1発明
甲1(実願昭62-57955号(実開昭64-26085号)のマイクロフィルム)には、図面とともに、
(1)「 パチンコ機に使用される制御基板を支持する支持板と、この支持板を覆蓋するボックス本体とからなるパチンコ機の裏面に取付けられる制御基板収納ボックスにおいて、
前記支持板の一部にこれから延出する延出部を形成し、
この延出部上と前記ボックス本体の外面に封印シールを貼付したことを特徴とする封印構造。」(請求項1)
(2)「支持板(21)から外方に延出する延出部(25)によって、封印シール(30)の貼付箇所が確保されるのである。」(明細書第7頁第8?10行)
(3)「 制御基板収納ボックス(20)は、第3図に示すように、主として上記玉寄せ板(11)側に固定される支持板(21)と、この支持板(21)を覆蓋するためのボックス本体(22)とからなっている。支持板(21)の内面側には当該制御基板収納ボックス(20)内に収納される制御基板(23)のための突起が形成してあり、第5図に示すように、この突起に記憶素子(24)等の電子部品を搭載した制御基板(23)が取付けられる。また、この支持板(21)の外縁には、第1図、第3図及び第4図に示すように、左右一対の延出部(25)が形成してあり、」(明細書第8頁第6?14行)
(4)「 本実施例の封印構造において使用される封印シール(30)は、製造番号や許認可番号等の各種の表示をしたシール状基材の裏面に貼付のための糊等を塗布したもので、一旦どこかに貼付した後にこれを剥すと、その糊等とともに上記表示の一部も剥れ、剥したことが明確に分るように構成したものである。」(明細書第9頁第18行?第10頁第6行)
(5)「延出部(25)の上側に位置するボックス本体(22)の一部を、第7図に示すように、延出部(25)側に延出する固定部とし、この固定部にネジ止め穴(26)に対応するネジ止め穴を形成しておけば、一本のネジによって支持板(21)とボックス本体(22)を玉寄せ板(11)に同時に固定することができるとともに、封印シール(30)の貼付箇所をも確保することができる。」(明細書第11頁第13行?第12頁第2行)
と記載されている。
これらの記載及び図面等からみて、甲1には、
「 パチンコ機に使用される制御基板(23)を収納するための支持板(21)と、この支持板(21)を覆蓋するためのボックス本体(22)とからなる制御基板収納ボックス(20)において、
該制御基板収納ボックス(20)には、前記支持板(21)の外縁に形成してある左右一対の延出部(25)と、前記ボックス本体(22)の一部を延出部(25)側に延出した固定部とを一本のネジによって玉寄せ板(11)に同時に固定することができるとともに、前記固定部には、一旦どこかに貼付した後にこれを剥すと、その糊等とともに上記表示の一部も剥れ、剥したことが明確に分るように構成した封印シール(30)を貼り付けたパチンコ機の制御基板収納ボックス(20)。」
の発明(甲1発明)が開示されていると認めることができる。

2.甲2記載の発明
甲2(特開昭64-17677号公報)には、
「 パチンコ遊技機の制御回路基板71を固定する固定カバー51と、該固定カバー51を覆う被覆カバー63とから成る保護カバー50において、
該保護カバー50には、前記固定カバー51の案内壁58a、58b、58c、58e、58f、58hに形成された係合部59a?59fと、前記被覆カバー63の側壁65a?65cに形成された被係合部67a?67fとを係合させ、被係合部67d、67eのネジ穴68と係合部59d、59eのネジ穴60にビス78、79をそれぞれ挿入して螺着することにより前記被覆カバー63を前記固定カバー51に固定することができるとともに、前記固定カバー51の側壁と前記被覆カバー63の側壁との重ね合わせによって形成された平面部に封印紙を貼付するパチンコ遊技機の保護カバー50。」
の発明(以下「甲2発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.甲3記載の発明
甲3(実願昭61-198257号(実開昭63-102484号)のマイクロフィルム)には、
「 パチンコ機の制御基板6を収納する下蓋9と、該下蓋9に被せるカバー枠7とから成る制御基板ボックス1において、
該制御基板ボックス1には、前記下蓋9の止着孔24と、前記カバー枠7の止着孔14とを連通させ、この状態で各止着孔内に金属製ネジ等の止着部材27を挿通し、前記下蓋9と前記カバー枠7とを一体化するパチンコ機の制御基板ボックス1。」
の発明(以下「甲3発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.甲4記載の発明
甲4(特開平5-42249号公報)には、図面とともに、
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はパチンコ機に関し、特に入賞球処理装置や賞球払出装置等を制御する枠制御基板の回路ボックスに関するものである。
【0022】上記枠制御ボックス70は、リヤプレート18に設けた機構枠体の一種である取付ベース71に対して着脱自在に取り付けられる箱状の部材であり、例えば合成樹脂製の浅い皿状の下カバー72と、同じく合成樹脂製の箱状の上カバー73と、各カバー72,73の内面に添設した金属製のシールド板74,75等とからなる。
【0026】枠制御ボックス70の一部を構成する下カバー72は、周縁部に起立片84を有すると共に、適宜位置に係止爪85を有しており、該係止爪85を後述する上カバー73の係止孔86に係止さることにより、上カバー73と下カバー72とを一体とする。この下カバー72の一側、図示の実施例によれば保護ガイド部80側の上下の隅部には、先端に顎部を有する係止柱87を設け、反対側の隅部に取付台座88を設ける。尚、この実施例における取付台座88は隅部の一つに設けてあり、他の隅部は平坦になっているが、他の隅部にも取付台座88を設けるようにしてもよい。
【0027】下カバー72の他の側縁、この実施例では係止柱87を設けた側と反対側の側縁には、回路基板89の縁をキャッチするコ字状の爪片部90を設け、この爪片部90で第2コネクタ66bの基礎部分を支えるようにする。また、この爪片部90に回路基板89の側縁をキャッチさせると共に、上記した係止柱87を回路基板89の取付孔91に通して顎部を回路基板89の表面に係止させると、回路基板89を安定して支持できると共に、ワンタッチで回路基板89を着脱できる。
と記載されている。
これらの記載及び図面等からみて、甲4には、
「 パチンコ機の回路基板89を支持する下カバー72と、合成樹脂製の箱状の上カバー73とからなる枠制御ボックス70において、
該枠制御ボックス70は、前記下カバー72が周縁部の適宜位置に有する係止爪85と、前記上カバー73の係止孔86とを係止させることにより、前記下カバー72と前記上カバー73とを一体とするパチンコ機の枠制御ボックス70。」
の発明(甲4発明)が開示されていると認めることができる。

5.甲5記載の技術
甲5(実願昭61-98744号(実開昭63-3915号)のマイクロフィルム)には、薬、菓子等の内容物を収納するための箱において、開封に際しては、天板(11)に設けた開封部(10)を破って内容物を取り出すようにして、使用前に内容物に対する不正使用を防止できる技術が開示されている。

6.甲6記載の技術
甲6(実公平3-12653号公報)には、紙材により組み立てられた箱体の開口縁に形成したフラップの一辺に、この一辺と交差する複数の切れ目又は開口を形成し、フラップを閉じて接着テープにより箱体を封緘した後にその接着テープを剥がすと、切れ目又は開口の切断縁からフラップが破壊され、開梱の形跡が残される技術が開示されている。

7.甲7記載の技術
甲7(実公平2-37717号公報)には、化粧用壜容器等を収容する外装容器において、一旦開封すると帯部6が切断されてしまうために、開封の事実が明らかとなり、最終消費者が自ら開封するまでは内容物の未使用が保証される技術が開示されている。

8.甲8記載の技術
甲8(実公昭60-27412号公報)には、ガス等のメーター用の封印具において、本体部12の肉薄部16をさらに凹溝20によって一部的に極く肉薄に形成することにより、封印体Aをこじ開けようとすると破壊されて不正開封を発見できるようにする技術が開示されている。

9.甲9記載の技術
甲9(実公平2-10547号公報)には、電力量計器等の閉鎖箇所を固定する固定金具を封印する封印具において、張出片部2の内壁面に切込溝8を設けることにより、封印具の張出片部2等を動かそうとすれば、張出片部2の先端部分が切離され、不正行為が行われたことが明瞭に看取されるようにする技術が開示されている。

10.甲10記載の技術
甲10(実公平4-1583号公報)には、計器箱の不正な開閉を防止するための封印具において、封印具本体1の水平片部2及び垂直片部3の表面に圧潰し易いように先鋭状としたリブ7を突設することにより、封印具を回そうとする行為によりリブ7の形が崩れて不正を行おうとした跡が残るようにする技術が開示されている。

11.甲11記載の技術
甲11(実公平4-3333号公報)には、積算電力計等の封印ねじの頭部を隠蔽させる封印具において、本体部材1の外側壁2の上部を肉薄にすることにより、不正行為に伴う衝撃が加えられると封印具を修復不能に破断されるようにして不正行為があったことを速やかに発見できるようにする技術が開示されている。

12.甲12記載の技術
甲12(実公昭63-6047号公報)には、合成樹脂製のキャップにおいて、嵌合されたキャップを開栓方向に回動させると、キャップのスカート2に設けられた上部弱化ライン3aが破壊されるようにして、内容物の詰め替えなどの不正が防止できる技術が開示されている。

13.甲13記載の技術
甲13(実願昭53-91825号(実開昭55-9550号)のマイクロフィルム)には、通信機器の筐体の封印機構において、封印キャップの外周に溝11が形成されており、開封時には治具を用いて溝11に沿って切断するようにする技術が開示されている。

14.甲14記載の技術
甲14(特開平5-41466号公報)には、半導体装置において、半導体素子をモールド樹脂3で覆う技術が開示されている。

15.甲15記載の技術
甲15(特開平5-42790号公報)には、ICカードにおいて、チップ状部品4を樹脂モールド部5で封入する技術が開示されている。

第7.本件訂正発明と甲1発明との対比
そこで、本件訂正発明と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「パチンコ機」は、本件訂正発明の「遊技機」に相当し、以下同様に、
「パチンコ機に使用される制御基板(23)」は「遊技機に設けられる回路基板」に、
「収納するための」は「被覆するための」に、
「支持板(21)」は「箱体」に、
「支持板(21)を覆蓋するためのボックス本体(22)」は「カバー体」に、
「制御基板収納ボックス(20)」は「回路基板ボックス」に、それぞれ相当する。
また、甲1の記載全体から見て、次のことがいえる。
a.甲1発明の「延出部(25)」は支持板(21)<本件訂正発明の「箱体」に相当>の外縁に左右一対形成してあり、「延出部(25)」と「固定部」とを一本のネジによって玉寄せ板(11)に同時に固定するのであるから、甲1発明の「延出部(25)」、「固定部」及び「一本のネジ」と、本件訂正発明の「固着手段」とは、“箱体の両側に設けた固定手段”である点で共通している。

b.甲1発明の「固定部」には、「延出部(25)」と「固定部」とを一本のネジによって玉寄せ板(11)に同時に固定した状態で「封印シール(30)」が貼り付けてあるから、甲1発明の「延出部(25)」、「固定部」及び「一本のネジ」は、「封印シール(30)」を剥さない限り「延出部(25)」と「固定部」との固定状態を解除することができないものであることが明らかである。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体とカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、
該回路基板ボックスには、前記箱体の両側に設けた固定手段を設けたことを特徴とする遊技機の回路基板ボックス。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1] 本件訂正発明は「カバー体」が「透明な合成樹脂で一体成形された」ものであるのに対し、引用発明は「ボックス本体(22)」<本件訂正発明の「カバー体」に相当>が透明であるか否か、合成樹脂で一体成形されたものであるか否か明らかでない点。

[相違点2] 本件訂正発明は、回路基板ボックスに設けた「固定手段」が、「前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と、前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段」となっているのに対し、甲1発明は「前記支持板(21)の外縁に形成してある左右一対の延出部(25)と、前記ボックス本体(22)の一部を延出部(25)側に延出した固定部とを一本のネジによって玉寄せ板(11)に同時に固定することができるとともに、」「封印シール(30)」を剥さない限り「延出部(25)」と「固定部」との固定状態を解除することができないものとなっている点。

第8.当審の判断
[相違点1]について
甲4発明は第6.4.に記載したとおり、
「 パチンコ機の回路基板89を支持する下カバー72と、合成樹脂製の箱状の上カバー73とからなる枠制御ボックス70において、
該枠制御ボックス70は、前記下カバー72が周縁部の適宜位置に有する係止爪85と、前記上カバー73の係止孔86とを係止させることにより、前記下カバー72と前記上カバー73とを一体とするパチンコ機の枠制御ボックス70。」である。
そして、甲1発明及び甲4発明ともにパチンコ機の基板を内部に支持するボックスである点で共通しており、回路基板ボックスを透明とすることも、例えば、特開平4-231987号公報(特に、段落【0020】、【0042】)や特開平4-303483号公報(特に、段落【0018】)に記載されるように、遊技機の分野において従来周知の技術であるから、甲1発明に甲4発明を適用するとともに上記周知の技術を採用して、上記相違点1に係る本件訂正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

[相違点2]について
甲1発明は、「封印シール(30)」を剥さない限り「延出部(25)」と「固定部」との固定状態を解除することができないものであるが、「封印シール(30)」は「固定部」の上面に貼り付けてあるから剥すことができないものではなく、剥してしまえば「一本のネジ」をはずすことにより、支持板(21)とボックス本体(22)を分離することができ、支持板(21)とボックス本体(22)を破壊することなく制御基板収納ボックス(20)を開け、その後にもとの状態に戻すことができるものであって、本件訂正発明の固着手段のようにカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の外部に突出している部分を切断しない限り、カバー体が箱体を被覆している状態を解除することができないというものではない。
そして、本件特許発明は本件特許明細書の段落【0003】に記載されるように、そのような不正行為が行われないようにすることを、発明が解決しようとする課題としているものである。
次に、甲4発明は上記のとおり、下カバー72と上カバー73とからなる枠制御ボックスにおいて、前記下カバー72の係止爪85と、前記上カバー73の係止孔86とを係止させることにより、前記下カバー72と前記上カバー73とを一体とするものであるが、これらは枠制御ボックスの外側で係止されるものであり、係止された後は係止爪85と係止孔86との係止状態を解除できない格別の工夫が施されていない以上、係止爪85を切断等しない限り係止状態を解除できないというものではない。
請求人は上記第3.3.(3)に記載したとおり、弁駁書において、甲4のものと本件訂正発明とは、ケース或いはボックスの外か内のどちら側に「固着手段」が配置されるかの相違しかなく、「固着手段」をどちら側に配置するかは、当業者が必要に応じて行う設計変更の範囲内の事項であると主張しているが、「固着手段」をケース或いはボックスの内側に配置する証拠は何も示されていないから、請求人の該主張は採用できない。
また、請求人は同じく弁駁書において、甲4のものも係止孔86に嵌り込んだ係止爪85の先端を簡単に操作することはできず、外部に露出している係止爪85のいずれかの部分を切断或いは破壊して係止状態を解除することは、甲5?15に開示されているように、当業者であれば容易に予測可能であるとも主張しているが、甲4のものがたとえ係止爪85の先端を簡単に操作することができないものであるとしても、上述のとおり係止爪85を切断等しない限り係止状態を解除できないものとまではいうことができず、甲5?15に開示されている事項を考慮しても、本件訂正発明の構成の一部である「前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と、前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段」を当業者が容易に想到し得たということができるものではない。
さらに、本件訂正発明と甲2発明又は甲3発明とを対比してみても、少なくとも相違点2と同様の相違点が認められ、該相違点は上記したと同様の理由により当業者が容易に想到し得たということができるものではない。
したがって、相違点2に係る本件訂正発明の構成は、請求人が提出した証拠である甲1?15に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

そして、本件訂正発明の該固着手段の構成により、本件特許明細書の【0037】に記載されるように「回路基板ボックス50が遊技制御回路基板70を含む箱体51やカバー体60の複数の構成部品によって組み付け構成される一方、組付構成部品であるカバー体60を組み付けたときに係止垂下片66と係止突起57とからなる固着手段が設けられているので、内部に被覆される遊技制御回路基板70を取り出すには、カバー体60の一部である係止垂下片66の回路基板ボックス50に対して外部に突出している部位を切断する以外に方法はなく、仮にカバー体60の一部である係止垂下片66が切断されていれば、不正な処理工作が行われたことが直ちに分かる。」という甲1発明?甲4発明では得られない格別の効果を奏するものである。

よって、本件訂正発明は、甲1?15に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第9.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件訂正発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機の回路基板ボックス
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設けたことを特徴とする遊技機の回路基板ボックス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、遊技機、例えば、パチンコ遊技機やスロットマシンに設けられる回路基板を収納する回路基板ボックスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、遊技機に設けられる回路基板の代表的なものとして遊技動作を制御する遊技制御回路基板が挙げられるが、その遊技制御回路基板には、マイクロコンピュータを構成するMPU、ROM、RAM等の電子素子が多数実装されている。そして、遊技動作を制御するプログラムが格納されるROMを交換することにより、多くの場合、異なる遊技内容を実現することが可能である。しかし、このようなROM交換は、当初の認められた遊技内容と異なるため、許可されておらず、これを防止するために、遊技制御回路基板を被覆する回路基板ボックスの組付構成部品に破損し易い封印紙を貼付し、この封印紙が破損していた場合には、不正なROM交換が行われたとみなしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近、封印紙の糊を特殊な方法で解かして封印紙を剥し、内部のROMを交換して再度封印紙を貼り付ける不正行為が行われ、封印紙の破損状態を見ただけでは、回路基板ボックスを開放して遊技制御回路基板に不正な処理がされたか否かが分からないという問題が生起してきた。本発明は、上記した問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、内部に被覆される回路基板に不正な処理を施すことができない遊技機の回路基板ボックスを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明においては、遊技機に設けられる回路基板を被覆するための箱体と透明な合成樹脂で一体成形されたカバー体とからなる回路基板ボックスにおいて、該回路基板ボックスには、前記箱体の長手方向両側壁内側に設けたその上面が傾斜面となっていると共にその下部が鋭角的に切り込まれた係合面となっている係止突起と前記カバー体の裏面に垂下形成されその下端に外側に突設する爪部が形成された係止垂下片とを係合することにより、前記カバー体に形成された貫通穴を貫通して一旦上方に突出した後U字状に曲折されてカバー体の上面と一体に接続されて形成された係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段を設けたことを特徴とするものである。
【0005】
【作用】係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段が設けられているので、内部に被覆される回路基板を取り出すには、回路基板ボックスの一部又は全部を破壊する以外に方法はなく、仮に回路基板ボックスの一部が破壊されていれば、不正な処理が行われたことが直ちに分かる。
【0006】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。まず、図11及び図12を参照して、実施例に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機1の構成について説明する。図11は、パチンコ遊技機1の正面図であり、図12は、パチンコ遊技機1の背面図である。図12において、パチンコ遊技機1の額縁状に形成された前面枠2の開口には、扉保持枠3が周設され、該扉保持枠3にガラス扉枠4と前面扉板5とが一側(左側)を軸として開閉自在に設けられている。ガラス扉枠4の後方には、遊技盤11が配置され、前面扉板5の前面には、打球供給皿6が取り付けられている。この打球供給皿6は、払い出された景品玉を貯留し且つ打玉として発射位置に1個ずつ供給するものであり、その上流側の内部空間に遊技に関連する効果音を発生するスピーカ7が内蔵されている。また、前記前面枠2の下方には、打玉を発射する際に操作する操作ハンドル9と、前記打球供給皿6に貯留し切れない余剰の景品玉を貯留する余剰玉受皿8とが設けられている。また、前面枠2には、その上部前面に特定遊技状態となったことを報知する遊技効果ランプ装置10が設けられている。
【0007】ところで、前記遊技盤11の表面には、発射された打玉を誘導するための誘導レール12がほぼ円状に植立され、該誘導レール12で区画された領域が遊技領域13を構成している。遊技領域13のほぼ中央上部には、複数(3つ)の回転ドラム15a?15cを有する可変表示装置14が配置されている。この可変表示装置14の回転ドラム15a?15cは、図示しないが独立したドラムモータ16によって回転駆動され、その図柄停止位置を検出するためにドラムセンサ18が内蔵され、更に表示される図柄を照射装飾するためのドラムランプ17(符号は、いずれも図5のブロック図に表示)を内蔵している。また、各回転ドラム15a?15cの外周面に描かれる図柄は、図10に示すようになっているが、これについては、後に詳述する。
【0008】また、可変表示装置14には、その上部に飾りLED20が設けられ、該飾りLED20の下部に始動記憶LED21が設けられている。飾りLED20は、0?9までの符号のついた10個のLEDから構成され、後述する特定遊技状態となったときに所定のランダム数から抽出される値に対応するLEDが点灯するようになっている。そして、飾りLED20は、特定遊技状態の発生に関連していずれか1つがランダムに点灯表示されるもので、遊技内容には直接関係しないが、遊技場が所定のサービス(例えば、特定遊技状態で獲得した多量の景品玉を使用して継続して遊技を行うことを許可するサービス)を提供する場合に使用できる。例えば、「7」の飾りLED20で点灯停止したときに所定のサービスを提供するようにすれば良い。また、始動記憶LED21は、後述する始動入賞口23に入賞した打玉のうち記憶したものを表示するものである。更に、可変表示装置14の両サイドには、回転ドラム15a?15cの縦横3つの図柄によって構成される5本の当りラインを表示するライン表示LED22が設けられている。本実施例における当りラインは、図示するように、上段水平の当りライン1と、右下がり対角線の当りライン2と、中断水平の当りライン3と、右上り対角線の当りライン4と、下段水平の当りライン5と、があり、いずれかの当りライン上に所定の図柄(大当り図柄という場合がある)が並んだときに大当りとなって特定遊技状態を生起せしめる。
【0009】なお、本実施例における3つの回転ドラム15a?15cの外周面に描かれる図柄は、図10に示すように、全部で21個あり、大当り図柄として「7(赤)」「7(青)」「FEVER(以下、FVと略称)」「トランプのキング(以下、Kと略称)」「トランプのクィーン(以下、Qと略称)」「トランプのジャック(以下、Jと略称)」「トランプのエース(以下、Aと略称)」「トランプのジョーカー(以下、JKと略称)」の8種類と、外れ図柄として各列15a?15cに13個の「ハートマーク」「スペードマーク」「ダイヤマーク」がそれぞれ描かれている。そして、上記した同一の大当り図柄が前記した当りライン1?5のいずれかに並んだときに大当りとなるが、すべての大当り配列パターンは、図9に示すように、予め所定のランダム数に対応させてあり、始動入賞時にそのランダム数の中から1つの値を抽出することにより、どの大当り図柄がどの当りラインに並ぶかが決定される。また、大当り図柄の種類によって特定遊技状態の出現確率が所定期間向上するようにしても良い。
【0010】上記のように構成される可変表示装置14の下方には、前記回転ドラム15a?15cの回転を許容する始動入賞口23が設けられている。この始動入賞口23に入賞した入賞玉は、遊技盤11の裏面に導かれて始動口スイッチ24によって検出される。なお、始動入賞口23への入賞に基づく可変表示装置14の回転は、所定回数(例えば、4回)記憶され、その旨が可変表示装置14に設けられる始動記憶LED21によって表示されるようになっている。
【0011】前記可変表示装置14の下方に入賞領域26を有する可変入賞球装置25が設けられている。可変入賞球装置25の入賞領域26には、下端両サイドを軸支して、遊技盤11面に対して垂直方向に開閉自在とされる開閉板27によって塞がれている。この開閉板27は、開閉板用ソレノイド28によって開閉制御され、開成中には、遊技盤11の表面を落下する打玉を受止めて入賞領域26に導き入賞玉とする。また、入賞領域26の内部は、3つに区画され、その中央に特定領域29が形成され、その左右に通常領域が形成されている。特定領域29には、特定領域スイッチ30が設けられ、また、通常入賞領域にも10カウントスイッチ31a,31bが設けられている。
【0012】なお、入賞領域26の後面壁には、その中央に打玉が特定領域29に入賞して特定領域スイッチ30をONしたときに、継続権が成立した旨を報知するV表示LED32が設けられ、その一側に特定遊技状態における開閉板27の開放回数を表示する開成回数表示器33が設けられている。また、入賞領域26の下方のには、特定領域スイッチ30及び10カウントスイッチ31a,31bで検出された打玉数を表示する個数表示LED34が設けられている。更に、可変入賞球装置25の取付基板7の左右部には、通常の入賞口(符号なし)が一体的に形成され、入賞口の外側にアタッカーランプ35が設けられている。
【0013】しかして、上記のように構成される可変入賞球装置25は、以下のように作動する。即ち、打玉がいずれかの始動入賞口23に入賞して始動口スイッチ24をONさせると、可変表示装置14の回転ドラム15a?15cが回転を開始し、一定時間(例えば、5秒)が経過すると、左側の回転ドラム15a?15caから順次停止され、すべての回転ドラム15a?15cの停止時の図柄の組み合せが前記大当り図柄の組合せとなったときに特定遊技状態となる。そして、この特定遊技状態においては、可変入賞球装置25の開閉板27が所定期間(例えば、20秒経過するまで、あるいは10個の入賞玉が発生するまで)開放するように設定され、その開放している間遊技盤11の表面を落下する打玉を受止めるようになっている。そして、入賞領域26内に設けられた特定領域29に入賞すると、再度上記した開放状態を繰り返し、特定領域29に入賞玉が入賞する毎に継続権が成立して開放状態を最高16回繰り返すことができるようになっている。
【0014】更に、遊技盤11の表面には、前記可変表示装置14の上部左右側方に風車ランプ37が設けられ、下部側方に入賞口(符号なし)が設けられている。また、前記風車ランプ37は、前記特定遊技状態時や始動入賞時等に点灯又は点滅してその旨を報知するものであり、同様な機能を有するものとして、遊技領域13の左右にサイドランプ36が設けられている。また、遊技盤11の表面の最下方には、上記したいずれの入賞領域にも入賞しなかった打玉が遊技盤11の後方に導かれるアウト口(図示しない)が設けられている。また、誘導レール12の外周に沿ってレール飾りランプ38が設けられている。
【0015】一方、パチンコ遊技機1の裏面構成においては、図12に示すように、機構板41が開閉自在に設けられている。この機構板41の中央には、窓開口42が開設され、該窓開口42に対応する遊技盤11の裏面には、入賞玉集合カバー体39が設けられている。入賞玉集合カバー体39には、前記可変表示装置14の後面突出部が貫通しており、その後面突出部の裏面にドラム中継基板19が設けられている。このドラム中継基板19には、前記ドラムモータ16、ドラムランプ17、ドラムセンサ18等からの配線がコネクタを介して接続される一方、後述する遊技制御回路基板70とを接続される配線もコネクタを介して接続されるようになっている。また、入賞玉集合カバー体39の裏面には、可変表示装置14以外の遊技盤11に設けられる電気機器(例えば、始動口スイッチ24、ソレノイド28、特定領域スイッチ30、10カウントスイッチ31a,31b、各種の表示器及びランプ等)からの配線がコネクタを介して接続される一方、遊技制御回路基板70からの配線もコネクタを介して接続される中継基板40も設けられている。要は、ドラム中継基板19も中継基板40も遊技制御回路基板70と遊技盤11に設けられる電気機器との配線の中継を行うものである。
【0016】ところで、機構板41には、周知のように発生した入賞玉に基づいて所定個数の景品玉を払い出すための景品玉タンク43、景品玉払出装置44、入賞玉処理装置45等の各種の機構が設けられるものであるが、更に、前記した遊技盤11に設けられる可変表示装置14や可変入賞球装置25等の遊技装置の遊技動作を制御する遊技制御回路基板70を収納する基板収納ボックス50も機構板41の裏面に取り付けられている。この基板収納ボックス50に収納される遊技制御回路基板70は、機構板41の上部一側に設けられるターミナル基板46に接続されて電源の供給を受けている。また、ターミナル基板46は、遊技制御回路基板70に電源を供給するだけでなく、パチンコ遊技機1に設けられる電気的駆動源、例えば、打球発射装置47にも電源を供給すると共に、パチンコ遊技機1の内部での信号線の中継、あるいはパチンコ遊技機1と外部との信号線の中継を行うための端子も設けられている。
【0017】次に、本実施例の要部を構成する回路基板ボックス50の構成について図1乃至図4を参照して説明する。図1は、回路基板ボックス50の断面図と拡大部分断面図であり、図2は、回路基板ボックス50の分解斜視図であり、図3は、回路基板ボックス50の平面図であり、図4は、回路基板ボックス50の側面図である。しかして、回路基板ボックス50は、遊技制御回路基板70を被覆支持する箱体51と、該箱体51の上面を閉塞するカバー体60とから組付構成され、そのように組付構成された回路基板ボックス50は、前記機構板41の裏面に止着される取付台80に着脱自在に取り付け得るようになっている。以下、各組付構成部品毎に説明する。
【0018】まず、箱体51は、上面が開放した直方体状に合成樹脂(金属でも良い)で形成され、その側壁のほぼ全域に内部で発生する熱を放熱するための放熱孔52が多数穿設されている。また、箱体51の底面には、比較的大きな長方形状の開口53が開設され、該開口53の長手方向開口縁には、取付台80の後述する係合レール81に係合するL字状の係合片54が垂下形成されている。なお、箱体51の底面は、図1(A)に示すように、側壁の下端よりもやや上方の位置に底上げ状態で形成されているため、垂下形成される上記係合片54は、箱体51の側壁と同一平面状に位置することとなる。
【0019】更に、箱体51には、その前方部中央に係止孔51aが形成され、その前方部左右に支持位置決め突起55が突設され、その後方部左右に止め突起56が突設されている。係止孔51aは、回路基板ボックス50を取付台80に装着した際に取付台80に形成される係止突起84と係合して回路基板ボックス50全体を機構板41の裏面に支持固定するものである。また、支持位置決め突起55は、遊技制御回路基板70の前方部両端をカバー体60に設けられる後述する押え部材67と挾持して支持するものであり、止め突起56は、遊技制御回路基板70の後方部両端をビス73で止着支持するものである。なお、支持位置決め突起55及び止め突起56については、後に詳述する。また、箱体51の長手方向両側壁内側には、係止突起57が形成されている。この係止突起57は、カバー体60を箱体51に被覆したときにカバー体60の裏面に垂下形成される係止垂下片66と係合するようになっており、この係止突起57と係止垂下片66との係合状態は、外部から操作してその係合状態を解除することができない固着手段を構成している。この点については、後に詳述する。更に、箱体51の後部側壁は、高さが低く形成された配線引き出し凹部58となっている。
【0020】また、箱体51の前記開口53を閉塞するために透明板59が箱体51の内側から底面に当接して設けられる。このため、透明板59の四隅には、間隔保持筒部59aが上面に形成され、この間隔保持筒部59aが図1(A)に示すように、前記支持位置決め突起55及び止め突起56を貫通して所定の位置に保持され、また、間隔保持筒部59aの上面に遊技制御回路基板70の下面が当接して透明板59と遊技制御回路基板70との間隔を保持している。しかして、箱体51の底面を透明板59で閉塞することにより、遊技制御回路基板70の裏面(ハンダ面)が外部から透視し得ることとなり、仮にハンダ面に不正な工作(例えば、ジャンパー配線を接続したり、電子素子を実装したりする不正工作)をした場合には、直ちに分かるようになっている。この意味で、透明板59によって閉塞される開口53の大きさは、回路基板ボックス50を傾けながらハンダ面の全域が見える程度の大きさがあれば十分である。
【0021】一方、上記した箱体51の上面を閉塞するカバー体60は、透明な合成樹脂によって一体的に成形されるもので、その後方部が下方向に曲折された仕切片61となっている。この仕切片61の位置は、カバー体60を箱体51に装着したときに図3に示すように、遊技制御回路基板70のコネクタ実装領域72が外部に現れて接続開口62を形成するような位置で曲折される。これにより、箱体51にカバー体60を組付構成した状態で接続開口62に臨むコネクタに外部からの配線を接続することができる。また、カバー体60の表面のほぼ全域には、内部で発生した熱を外部に放出するための放熱孔63が表示領域69を除く範囲(図3の二点鎖線で囲んだ範囲)で多数形成されている。また、カバー体60の上面両サイドには、L字状のL型突起64が列状に形成されている。このL型突起64は、外部からのノイズの影響が大きい場合に、必要に応じてノイズ防止用の金属薄板を挿入することができるものである。更に、カバー体60の長手方向端縁には、図1(A)及び図3に示すように、箱体51の側壁上端縁と係合する掛止部65が上下2カ所ずつ突設され、該掛止部65の間のカバー体60には、下方に向かって垂下される係止垂下片66が形成されている。更に、カバー体60の前方部両側に押え部材67が垂下されており、また、カバー体60を箱体51に組み付けた状態で前方の掛止部65の間であって係止垂下片66の上端と箱体51の側壁との間を差し渡すように封印紙68が貼付される。
【0022】上記した押え部材67と係止垂下片66の詳細な説明をする前に、遊技制御回路基板70の構造について簡単に説明すると、遊技制御回路基板70は、周知のようにプリント配線基板によって構成され、その上面が電子部品の実装面とされ、その実装面の大部分が電子部品実装領域71として使用され、後方の一部がコネクタ実装領域72とされる。また、遊技制御回路基板70には、その前方左右に前記支持位置決め突起55に対応する係止穴74が形成され、その後方左右に前記止め突起56に対応する止め穴75が形成されている。
【0023】上記のように構成されるカバー体60の押え部材67と係止垂下片66の作用について以下説明する。まず、押え部材67の作用について説明する。透明板59が装着された状態の箱体51において、遊技制御回路基板70の前方の係止穴74を支持位置決め突起55の先端突起部に差し込み、後方の止め穴75を止め突起56に載置する。この状態で止め穴75と止め突起56の穴を一致させてビス73を螺着することにより、一応、遊技制御回路基板70を箱体51に止着したこととなる。そして、その後、カバー体60を箱体51の上方から装着する。この際、押え部材67の先端部が図1(A)(この図は、図3のA-A線で切断した断面図である)に示すように、遊技制御回路基板70の上面に当接すると共に、係止穴74を貫通している支持位置決め突起55の先端突起部が押え部材67の中心に形成された穴に係合するので、遊技制御回路基板70の前方部が支持位置決め突起55と押え部材67とによって挾持止着された状態となり、後方部のビス73による止着とで完全に遊技制御回路基板70を回路基板ボックス50内に止着したこととなる。
【0024】一方、係止垂下片66の作用について説明すると、係止垂下片66は、箱体51の側壁内側に設けられる係止突起57に対応するもので、図1(B)に示すように、係止垂下片66は、カバー体60に形成された貫通穴66bを貫通して一旦上方に突出された後U字状に曲折されてカバー体60の上面と一体的に接続されて形成され、その下端に外側に突設する爪部66aが形成されている。一方、係止突起57は、その上面が傾斜面57aとなっており、その下部が鋭角的に切り込まれた係合面57bとなっている。しかして、カバー体60を箱体51の上方から装着すると、係止垂下片66の爪部66aが傾斜面57aに沿って弾性変形しながら下方に移動し、遂には、爪部66aと係合面57bとが係合した状態となる。この状態で係止垂下片66と係止突起57の係合状態は、係止垂下片66の爪部66aを内側に移動させなければならないが、回路基板ボックス50の外側からこのような移動操作はできないので、一旦カバー体60を箱体51に装着した後には、簡単にカバー体60を箱体51から外すことはできない。しかして、これを外そうと思えば、図1(B)に示すように回路基板ボックス50に対して外部に突出している部分をB-B線に沿ってニッパ等で切断して図1(C)に示すように、係止垂下片66をカバー体60から分離させなければならない。
【0025】このように、本実施例においては、回路基板ボックス50が遊技制御回路基板70を含む箱体51やカバー体60の複数の構成部品によって組み付け構成される一方、組付構成部品であるカバー体60を組み付けたときに係止垂下片66と係止突起57とからなる固着手段が設けられているので、内部に被覆される遊技制御回路基板70を取り出すには、カバー体60の一部である係止垂下片66の回路基板ボックス50に対して外部に突出している部位を切断する以外に方法はなく、仮にカバー体60の一部である係止垂下片66が切断されていれば、不正な処理工作が行われたことが直ちに分かる。なお、上記した係止垂下片66をカバー体60の裏面に直接(貫通穴66bを形成することなく)形成しても良く、この場合には、係止垂下片66部分のカバー体60を破壊しなければ、カバー体60と箱体51の係合状態を解除することができない。また、係止垂下片66が多数形成されている場合には、カバー体60のほぼ全部を破壊しなければ係合状態を解除することができない。
【0026】上記のように外部からは分離できないように組付構成された回路基板ボックス50は、図2に示すような機構板41に止着される取付台80に着脱自在に取り付けられるようになっている。ここで簡単に取付台80について説明すると、取付台80は、合成樹脂(金属でも良い)によって一体的に形成され、その中央に前記係合片54と係合する一対の係合レール81が逆L字状に形成され、その上下端縁に回路基板ボックス50の側壁を案内するガイド片82(このガイド片82は必ずしも必要でない)が突設されている。一方、取付台80の一側端部には、弾性変形する係止解除レバー83が形成され、該係止解除レバー83の基部に前記係止孔51aと係合する係止突起84が突設されている。しかして、回路基板ボックス50を取付台80に装着するときには、取付台80の側方から係合片54が係合レール81に係合するように押し込み、更に強く押し込むことにより係止突起84上面の傾斜面に沿って係止解除レバー83が下方に弾性し、遂には、係止突起84と係止孔51aとが係合して装着が完了する。一方、回路基板ボックス50を取り外すには、係止解除レバー83を下方に押圧して係止孔51aと係止突起84との係合を解除した状態で回路基板ボックス50を押し込み方向とは逆の方向に引き抜くことにより簡単に取り外すことができる。
【0027】ところで、図11に示すパチンコ遊技機1によって出現される遊技動作は、前述したとおりであるが、その遊技動作を制御する遊技制御回路基板70に形成される回路構成は、図5に示すようになっている。図5は、遊技制御回路をブロック構成で示す回路図であり、MPU、ROM、RAM、入出力回路を含むメインの基本回路90によって制御される。また、可変表示装置14は、基本回路90によって制御されるサブの基本回路91によって制御される。しかして、メイン基本回路90には、スイッチ入力回路98を介して10カウントスイッチ31a,31b、特定領域スイッチ30、及び始動口スイッチ24からの検出信号が入力され、アドレスデコード回路92からメイン基本回路90にチップセレクト信号が与えられる。また、電源投入時に初期リセット回路93からメイン基本回路90にリセット信号が与えられ、所定時間毎にクロック用リセットパルス発生回路94からメイン基本回路90及びサブ基本回路91に定期リセット信号が与えられる。
【0028】一方、メイン基本回路90からは、以下の装置及び回路に制御信号が与えられる。即ち、音回路95を介してスピーカ7に音声信号が与えられ、7セグ・LED・ランプ駆動回路96を介して開成回数表示器33、個数表示LED34、飾りLED20、V表示LED32、ライン表示LED22、及び始動記憶LED21に表示制御信号が与えられ、また、ランプ・ソレノイド・情報出力回路97を介して開閉板用ソレノイド28、サイドランプ36、レール飾りランプ38、アタッカーランプ35、遊技効果ランプ10、風車ランプ37が駆動され、大当り情報、当り情報、及び有効始動情報が外部に導出される。
【0029】また、前記した可変表示装置14の回転ドラム15a?15cは、専用のサブ基本回路91によって制御されるが、このサブ基本回路91にメイン基本回路90から制御信号が与えられる。しかして、サブ基本回路91からは、ドラムランプ回路99を介してドラムランプ17に駆動信号が与えられ、ドラムモータ回路100を介してドラムモータ16に駆動信号が与えられ、ドラムモータ16に内蔵されるドラムセンサ18からは、センサ入力回路101を介してサブ基本回路91及び基本回路90に入力信号が送られる。なお、上記したドラムランプ17を除く装置や回路には、電源回路102から各種の電圧を有する電力が供給され、ドラムランプ17には、ドラムランプ用電源103から所定の電圧を有する電力が供給されている。
【0030】以上、説明した遊技制御回路の具体的な動作の一例を図6乃至図10に示すタイムチャート及び説明図を参照して説明する。図6は、始動入賞口23への打玉の入賞に基づく可変表示装置14の可変表示動作を示すタイムチャートであり、図7は、当り外れに使用されるランダム数の一覧表図であり、図8は、打玉が始動入賞口23に入賞したときに決定される当り図柄の選択方法を説明する説明図であり、図9は、大当り図柄とランダム数との対応関係を示す一覧表図であり、図10は、回転ドラム15a?15cの外周面に形成される図柄の展開図である。図6において、始動入賞口23に打玉が通過して始動口スイッチ24をONさせ、始動信号S1が導出されると、その始動信号S1の立ち上がり時にランダム1から1つの値が抽出されて格納される。ランダム1は、図7に示すように、当り図柄か否かを決定するためのランダム数であり、電源投入後「0?253」の254通りの数値が刻々と変動している。
【0031】また、始動信号S1導出後、0.128秒又は0.130秒経過したときに格納したランダム1の値を読み出すと共に、始動信号S1導出後、0.132秒又は0.134秒経過したときにランダム1の読み出した値が当りでない時にランダム3から1つの値が抽出され、ランダム1の読み出した当りが当りである時にランダム2、4、5から1つの値が抽出される。図7に示すように、ランダム2は、図9に示す大当り図柄の配列を決定するためのランダム数であり、「0?39」の40通りの数値が刻々と変化する。ランダム3は、「0?9260」の9261通りの数値が刻々と変化するものであり、抽出された値に対応する図柄が遊技者に視認し得る位置であって所定の位置に表示されるようになっている。また、ランダム4は、飾りLED20の点灯位置を決定するためのランダム数であり、ランダム5は、リーチ時又は大当り時における回転ドラム15a?15cの回転パターンを決定するためのランダム数である。
【0032】しかして、ランダム1から抽出された数値が「8」であるときには、図8に示すように、大当りと判定され、ランダム2データにより大当りとなる図柄及び配列が決定され、ランダム1から抽出された数値が「8」以外であるときには、大当りではなく、外れと判定され、前記したようにランダム3で抽出された値に対応する図柄が遊技者に視認し得る位置であって所定の位置に表示されるようになっている。ただし、抽出した値が偶然に大当り図柄と一致した場合には、ランダム3データに1を加算して外れ図柄にして表示する。
【0033】上記したように、始動信号S1の導出時に、可変表示装置14に表示される図柄の組合せが当りか否かが決定されると共に、停止時に表示される図柄も決定され、それらの決定が終了した後(本実施例においては、始動信号S1導出後0.206秒経過後)、まず、左側の回転ドラム15a(以下、図柄15aという)が変動を開始し、僅かな時間間隔(0.100秒)を置いて右側の回転ドラム15c(以下、図柄15cという)、中央の回転ドラム15b(以下、図柄15bという)が順次変動を開始する。なお、図柄15a?15cの可変開始動作においては、通常時は上記のように決められた順序で回転を開始し、リーチ時又は大当り時には、その開始順序が変化するようにしても良い。これにより、変動結果がリーチ又は大当りとなることを予告的に遊技者に知らせることができる。
【0034】しかして、図柄15aの変動表示においては、基本時間(6.300秒)の間、所定の変動速度に設定されて変動し、基本時間が経過すると、1図柄分の変動時間が経過したときに停止される。同様に図柄15cの変動表示においては、上記よりやや短い基本時間(6.200秒)の間、所定の変動速度に設定されて変動し、基本時間が経過すると、6図柄分の変動時間が経過したときに停止される。
【0035】一方、図柄15bの変動表示においては、既に停止した図柄15a,15cに表示される当りライン上の停止図柄が当り図柄でないとき(リーチ状態でないとき)と、当り図柄であるとき(リーチ状態のとき)とでは、異なる態様で変動表示される。そこで、まずリーチ状態でないときの変動表示について説明すると、上記よりさらに短い基本時間(6.100秒)の間、所定の変動速度に設定されて変動し、基本時間が経過すると、11図柄分の変動時間が経過したときに停止される。
【0036】一方、リーチ状態のときの変動表示においては、前記ランダム5の抽出された値によって異なるパターンで変動表示される。具体的には、ランダム5の抽出された値が「4」以外のときには、リーチ1と表示される変動パターン、即ち、基本時間(6.100秒)の間、所定の変動速度に設定されて変動し、基本時間が経過すると、ややゆっくりとした変動速度で21?42図柄変動して停止される。また、ランダム5の抽出された値が「4」であるときには、リーチ2と表示される変動パターン、即ちリーチ1と同じパターンで変動して停止した後、再度短い変動と停止とを複数回行って停止する。この短い変動と停止は、停止図柄が「7(赤)」である場合には、その停止図柄「7(赤)」の4図柄手前の当り図柄「7(青)で一旦停止し、次に3図柄手前の当り図柄「J」で一旦停止し、次に2図柄手前の当り図柄「A」で一旦停止し、更に1図柄手前の当り図柄「JK」で一旦停止し、最後に停止図柄「7(赤)」で停止するようになっている。つまり、停止図柄の4個(この数の計算には外れ図柄を数えない)手前の当り図柄毎に停止するように制御される。なお、このような短い変動と停止を最後に停止する図柄15bだけでなく、他の図柄15a,15cにおいても同時に行わせても良い。また、リーチ2の変動態様は、最終的に大当りとなるときにだけ行うようにしても良い。
【0037】以上、実施例に係る遊技制御回路基板70を被覆する回路基板ボックス50の構成及び作用について説明してきたが、本実施例によれば、回路基板ボックス50が遊技制御回路基板70を含む箱体51やカバー体60の複数の構成部品によって組み付け構成される一方、組付構成部品であるカバー体60を組み付けたときに係止垂下片66と係止突起57とからなる固着手段が設けられているので、内部に被覆される遊技制御回路基板70を取り出すには、カバー体60の一部である係止垂下片66の回路基板ボックス50に対して外部に突出している部位を切断する以外に方法はなく、仮にカバー体60の一部である係止垂下片66が切断されていれば、不正な処理工作が行われたことが直ちに分かる。
【0038】上記した実施例では、回路基板ボックス50の組付構成部品として、箱体51とカバー体60と遊技制御回路基板70としたが、遊技制御回路基板70を被覆するものであれば、どのような構造のものでも良い。例えば、回路基板ボックスを一体的に構成し、その一体的に構成された回路基板ボックスの挿入口から遊技制御回路基板70を挿入した時に破壊しない限り解除できない固着手段によって遊技制御回路基板70が被覆される構造のものでも良い。また、回路基板ボックス50に被覆される基板も遊技動作を制御するものに限らず、不正行為が行われ易い制御回路(例えば、景品玉払出制御回路)を被覆する回路基板ボックスにも応用することができる。
【0039】
【発明の効果】以上、説明したところから明らかなように、本発明においては、前記係止垂下片の、前記回路基板ボックスに対して外部に突出している部分を切断しない限りその被覆状態を解除することができない固着手段が設けられているので、内部に被覆される回路基板を取り出すには、回路基板ボックスの一部又は全部を破壊する以外に方法はなく、仮に回路基板ボックスの一部が破壊されていれば、不正な処理が行われたことが直ちに分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る回路基板ボックスの断面図と拡大部分断面図である。
【図2】回路基板ボックスの分解斜視図である。
【図3】回路基板ボックスの平面図である。
【図4】回路基板ボックスの側面図である。
【図5】遊技制御回路基板に形成される遊技制御回路をブロック構成で示す回路図である。
【図6】始動入賞口への打玉の入賞に基づく可変表示装置の可変表示動作を示すタイムチャートである。
【図7】当り外れに使用されるランダム数の一覧表図である。
【図8】打玉が始動入賞口に入賞したときに決定される当り図柄の選択方法を説明する説明図である。
【図9】大当り図柄とランダム数との対応関係を示す一覧表図である。
【図10】回転ドラムの外周面に形成される図柄の展開図である。
【図11】実施例に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の正面図である。
【図12】パチンコ遊技機の背面図である。
【符号の説明】
1 パチンコ遊技機
50 回路基板ボックス
51 箱体
57 係止突起(固着手段)
57a 傾斜面
57b 係合面
60 カバー体
66 係止垂下片(固着手段)
66a 爪部
66b 貫通穴
70 遊技制御回路基板(回路基板)
80 取付台
90 基本回路
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-06-11 
結審通知日 2009-06-18 
審決日 2009-06-30 
出願番号 特願平5-85228
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A63F)
P 1 113・ 851- YA (A63F)
P 1 113・ 853- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 深田 高義
伊藤 陽
登録日 1999-07-16 
登録番号 特許第2954445号(P2954445)
発明の名称 遊技機の回路基板ボックス  
代理人 根本 恵司  
代理人 川下 清  
代理人 加治 信貴  
代理人 加治 信貴  
代理人 杉山 猛  
代理人 振角 正一  
代理人 池垣 彰彦  
代理人 根本 恵司  
代理人 杉山 猛  
代理人 梁瀬 右司  

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