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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B02C
審判 全部無効 2項進歩性  B02C
管理番号 1207550
審判番号 無効2008-800093  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-05-21 
確定日 2009-11-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3966892号発明「細断機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3966892号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3966892号発明「細断機」の出願は、平成14年9月19日に特許出願された特願2002-272376号(以下、「本件原出願」という。)の一部を平成18年2月8日に新たな特許出願(以下、「本件分割出願」という。)としたものであって、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明に対して、平成19年6月8日に設定登録がされたものである。
これに対して、平成20年5月21日に請求人から無効審判請求がなされ、平成20年8月8日付けで被請求人から答弁書の提出がなされ、平成20年10月24日に請求人及び被請求人から、それぞれ口頭審理陳述要領書の提出がなされるとともに、同日に口頭審理が実施され、さらに、平成20年10月27日付けで被請求人から上申書の提出がなされ、平成20年10月31日付けで請求人から上申書の提出がなされたものである。

[2]本件特許発明
本件特許第3966892号の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を併せて「本件特許明細書」といい、さらに図面を含めて「本件特許明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
所定間隔をあけて配された1対の固定側壁と、
両固定側壁に回転自在に渡され、回転刃を有する回転軸と、
該回転軸と平行に、両固定側壁の下側両端部に渡し止められた1対の支持軸と、
該支持軸夫々に揺動開閉自在に設けられた揺動側壁と、
一方の揺動側壁の内側に設けられ、前記回転刃との協働により被処理物を細断する固定刃と、
他方の揺動側壁の内側に設けられたスクレーパーと
を有し、
前記固定刃とスクレーパーとの間に前記回転刃が位置するようになされ、
前記回転刃は、
アーム状の粗切断用回転刃と外周に鋸歯状の細断歯を有する細切断用回転刃を有し、
前記固定刃及びスクレーパーの下方に位置するようにして前記粗切断用回転刃の移動軌跡空間を囲う覆い部材が設けられ、
前記覆い部材は、
前記一方の揺動側壁に設けられた第1側部材と、
前記他方の揺動側壁に設けられた第2側部材と、
前記第1側部材と第2側部材とを繋ぎ、前記第1側部材及び第2側部材とは別体であって、着脱自在となされた中間部材と
を有することを特徴とする細断機。
【請求項2】
前記回転軸の一端の内側部に左螺旋部が形成され、
前記回転軸の他端の内側部に右螺旋部が形成され、
前記左螺旋部及び右螺旋部が前記固定側壁の回転軸が嵌まる孔の内面に対向するようになされていることを特徴とする請求項1に記載の細断機。
【請求項3】
前記粗切断用回転刃の側壁には、
角孔を形成してあることを特徴とする請求項1に記載の細断機。
【請求項4】
前記固定刃及びスクレーパー夫々は、
前記一方の揺動側壁の内側及び他方の揺動側壁の内側にボルトで固定され、
該ボルトの頭部は、
上方に凸状の曲面をなしていることを特徴とする請求項1に記載の細断機。
【請求項5】
平面形状コ字状であって、平面視が相互に対向して先端側に向かって開くテーパー面を有するロック片と、
該ロック片に形成された貫通孔と、
前記固定側壁及び揺動側壁夫々に設けられ、前記テーパー面に対向する傾斜面と、
前記固定側壁に設けられ、前記貫通孔を通じて貫通される螺子を螺子嵌められる螺子孔と
を備え、
前記螺子を締め付け、前記テーパー面を傾斜面に押し当てることにより前記揺動側壁を固定側壁に固定するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の細断機。」

[3]請求人の主張の概要
1.請求人の主張の全体概要、証拠方法
請求人は、「特許第3966892号の請求項1ないし5に係る各発明についての特許は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、下記の甲第1号証ないし甲第4号証を証拠方法として提出し、
「本件特許は、特願2002-272376号を原出願とする分割出願についてのものであるところ、本件分割出願は特許法第44条第1項の規定に違反するから、その出願日は遡及せず、現実の出願日である平成18年2月8日となる結果、本件特許発明は、本件原出願の公開公報である特開2004-105863号公報に記載された発明と同一又はその発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」(審判請求書第3ページ第1?8行)
旨主張する。

(証拠方法)
甲第1号証:特許第3966892号公報(本件特許発明の特許公報)
甲第2号証:特開2004-105863号公報(本件原出願の公開公報)
甲第3号証:特開2006-55797号公報
(被請求人によるほかの出願の公開公報)
甲第4号証:特許第3936268号公報(本件原出願の発明の特許公報)

2.本件分割出願が分割要件を満たさないとする理由の概要
請求人は、本件分割出願が分割要件を満たさない理由として、本件発明1ないし本件発明5は、本件原出願の願書に最初に添付した明細書(以下、単に「本件原出願の明細書」という。)の特許請求の範囲において特定されている「左右の固定側壁の上部前部に渡し止められた連結材」(以下、「本件連結材」という。)を発明特定事項としていないため、本件連結材を具備しない発明もその技術的範囲に含まれるが、本件原出願の明細書又は図面(以下、「本件原出願の明細書等」という。)には、本件連結材を具備しない発明は記載されておらず、また、本件連結材を備えなくてもよいことを示唆する記載もない旨を主張する。(審判請求書第6ページ第5?13行)
さらに、請求人が主張する具体的な理由は、要すれば以下のとおりである。

2-1.判例及び審査基準に照らした本件分割出願の適法性について
(1)判例について
分割要件について、東京地裁平成16年(ワ)26092号特許権侵害差止請求事件(平成18年10月18日判決言渡。)は、「分割出願が行われた場合、新たな特許出願(分割出願)はもとの特許出願(原出願)の時にしたものとみなされる(特許法44条)ところ、このように出願日の遡及が認められるためには、分割出願に係る発明がその原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか、同明細書等に記載した事項から自明な事項であることを要するといわなければならない。」と判示し、これは、その控訴審である知財高裁平成18年(ネ)第10077号特許権侵害差止請求控訴事件(平成19年5月30日判決言渡。)において支持されている。
また、「当初明細書等に記載した事項から自明」との意義について、東京高裁平成14年(行ケ)第3号審決取消請求事件(平成16年6月28日判決言渡。)は、「『願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項』とは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されているか、記載されていなくとも、現実に記載されているものから自明であるかいずれかの事項に限られるというべきである。そして、そこで現実に記載されたものから自明な事項であるというためには、現実には記載がなくとも、現実に記載されたものに接した当業者であれば、だれもが、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解するような事項であるといえなければならず、その事項について説明を受ければ簡単に分かる、という程度のものでは、自明ということはできないというべきである。」と判示する。
そして、上記判示事項を踏まえて本件分割出願を検討すると、本件原出願の請求項に係る発明(以下、「本件原出願の発明」という。)の目的及び構成の相互依存関係に鑑みれば、本件原出願の明細書等には本件連結材を具備する発明しか記載されていないというべきであり、現実に記載されたものに接した当業者であれば、だれもが「本件連結材を具備しない発明」がそこに記載されているのと同然であると理解するとはいえないものである。(口頭審理陳述要領書第2ページ第10行?同第3ページ第22行)

(2)審査基準について
特許・実用新案審査基準(以下、単に「審査基準」という。)「第V部 第1章 第1節 出願の分割の要件」には、出願分割の実体的要件として、「分割出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項が、原出願の当初明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内あること」が挙げられている。また、分割出願の明細書等に記載された事項が原出願の出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内であるか否かの判断については、補正の適法性の判断基準が適用される旨記載されている。
そして、審査基準「第III部 第I節 新規事項」には、「特許請求の範囲の補正」について「各論」として、「(1)上位概念化、下位概念化等」等の各項目が列挙されて、項目ごとに補正の適否の判断基準が示されており、「(1)上位概念化、下位概念化等」において、「請求項の発明特定事項を概念的に上位の事項に補正する(発明特定事項を削除する場合を含む)ことにより当初明細書等に記載した事項以外の事項が追加されることに…(中略)…なる場合は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でする補正とはいえない。」とされ、また、「請求項の発明特定事項の一部を削除して、これを概念的に上位の事項に補正する場合において、削除する事項が本来的に技術上の意義を有さないものであって、この補正により新たな技術上の意義が追加されないことが明らかな場合(削除する事項が、任意の付加的事項であることが明細書等の記載から自明である場合も同様)は、新たに追加される事項はないから、当初明細書等に記載した事項の範囲内でする補正といえる。」とされている。
本件分割出願は、正に「(1)上位概念化、下位概念化等」に記載された「請求項の発明特定事項を概念的に上位の事項に補正する(発明特定事項を削除する場合を含む)」場合に当たる。
本件連結材の技術的意義は本件原出願の明細書等において発明の目的として記載されていたものであり、本件連結材を発明特定事項から削除した結果、「支持軸」の技術的意義にも変更がもたらされているものである。さらに、本件原出願の発明の目的及び構成の相互依存関係に鑑みれば、本件連結材を任意の付加的事項ということもできない。(口頭審理陳述要領書第3ページ第23行?第7ページ末行)

2-2.本件原出願の明細書等の記載事項について
(1)請求人の主張の概要
本件原出願の特許請求の範囲の請求項1ないし5及びこれに対応する本件原出願の明細書の【前記目的を達成するための手段】(段落【0003】)のいずれにも、本件連結材を具備する発明しか記載されておらず、本件連結材を具備しない発明については一切記載されていない。
本件原出願の明細書の【発明の目的】(段落【0002】)には、(ア)メンテナンスの容易化、(イ)部品点数の削減、及び、(ウ)高剛性化という3つの目的をすべて達成するものとして記載されている。本件連結材は、少なくとも上記目的のうちの「(ウ)高剛性化」を達成するために不可欠なものであるから、本件原出願の発明は、本件連結材を有することを必須の発明特定事項としているものである。
また、本件原出願の明細書の実施例及び図面には、「左右の固定側壁9の上部前部に渡し止められた連結材12」を備えたものしか記載されていない。
以上のとおり、本件原出願の明細書等には、本件連結材を具備する発明しか記載されていない。むしろ、【発明の効果】(段落【0004】)の「2本の支持軸と1本の連結材で左右の固定側壁を連結するので、細断機の剛性を大きくすることが出来る」との記載に鑑みれば、本件原出願の明細書等では、本件原出願の発明の有利な効果が本件連結材を有さない場合と対比され、それとの比較において記載されているから、本件連結材を有しない発明は外形的にも意識的にも本件原出願の発明から除外されているというべきである。(審判請求書第6ページ第15行?同第8ページ第21行)
上記段落【0002】及び【0003】のいずれにも、「本件連結材を具備しない発明」の目的及び解決手段は記載されていない。(口頭審理陳述要領書第10ページ第2?18行)

(2)被請求人の主張に対する反論
1)本件原出願の明細書の段落【0006】の記載について
被請求人は、本件原出願の明細書の段落【0006】の「前記支持軸10は、揺動側壁11を揺動自在に支持する枢軸と固定側壁9を連結する連結材としての機能を有している。」との記載を根拠に、本件原出願の明細書等には、本件連結材に代えて支持軸10を備える発明が記載されているのと同様であるから、本件連結材を具備しない構成が記載されていると認められると主張するが、失当である。
本件原出願の明細書の段落【0006】の記載は、支持軸10が左右の固定側壁9を連結する連結機能を有していることを記載しているにすぎず、支持軸10が「左右の固定側壁9の上部前部に渡し止められた連結材12」(すなわち「本件連結材」)に代わり得ること、したがって、本件連結材を省略してもよいことまで意味しているものではない。
被請求人の主張は、同段落【0006】の記載を本件原出願の明細書等の文脈から切り離し、本件連結材を省略してもよいことの根拠とするものであり、それ自体、本件原出願の明細書等に記載されていた支持軸10の技術的意義を大きく超えるものである。(口頭審理陳述要領書第8ページ第8行?第9ページ第23行)

2)本件原出願の明細書等のロック装置46について
被請求人は、本件原出願の明細書の段落【0016】の「揺動側壁11を固定側壁9にロックすることが出来る」との記載に基づいて、細断機の剛性は、連結材だけではなくロック装置46によっても大きくすることができるから、本件連結材は、本件原出願の明細書等において付加的な要素であり、高剛性化を達成するために不可欠なものであるとは認められない旨を主張するが、失当である。
同段落【0016】は本件連結材を具備する実施例についての記載であり、「連結材12」とともにロック装置46をも具備している実施例について記載しているものである。ロック装置46が本件連結材の代替手段としての意義を有することは、本件原出願の明細書等のどこにも記載されておらず、示唆もされていない。
ロック装置46に係る上記記載をもって直ちにロック装置46が本件連結材の代替手段としての意義を有するという、被請求人の主張自体、ロック装置46に対する新たな技術的意義を追加するものであり、本件原出願の明細書及び図面に記載されていた事項の範囲を超えるものである。
さらに、仮に被請求人の主張のとおりロック装置46によって高剛性化を達成できるとしても、本件特許明細書の請求項1にはロック装置46が発明特定事項として記載されていない以上、本件発明1は、本件連結材を具備しない発明のみならず、ロック装置46も具備しない発明をも含んでいるものであるから、ロック装置46を前提として本件分割出願の適法性を主張すること自体失当というべきである。(口頭審理陳述要領書第10ページ第19行?第11ページ第25行)

3)特許請求の範囲の記載(特許法第36条第5項)について
被請求人は、特許法第36条第5項の規定を根拠に、本件連結材を本件発明1の発明特定事項とするか否かは、出願人自ら判断することができ、したがって、本件原出願の請求項1において、本件連結材を具備する発明しか記載されていないからといって、本件原出願の明細書等には、本件連結材を具備しない発明については一切記載されていないということはできない旨主張するが、失当である。
分割出願が出願日遡及効(特許法第44条第2項)を有する以上、原出願の出願当初明細書又は図面に記載された事項の範囲を超えることができないのは先願主義の下では当然であり、分割出願の出願人がこのような制限を甘受しなければならないことは特許法第36条第5項も予定していることである。(口頭審理陳述要領書第11ページ第26行?第13ページ第5行)

2-3.本件連結材等の技術的意義とその変更について
(1)本件連結材の技術的意義
1)左右の固定側壁の前後部下部に支持軸を渡し止めて前後の揺動側壁を揺動開閉自在に構成した場合、メンテナンスを容易にすることができるものの、左右の固定側壁の上部を渡し止める部材がなくなるため、片持ち状となって細断機の剛性が低下するところ、本件原出願の発明は、本件連結材によって左右の固定側壁の上部を渡し止めることにより、本件連結材を備えない場合と比較して、細断機の剛性を大きくすることができるという作用効果を奏しているものである。
つまり、固定側壁の上部を本件連結材によって渡し止めることは、揺動側壁を揺動開閉自在に支持する支持軸を固定側壁の前後部下部に渡し止める構成を採用したことに呼応して採用されているものであり、本件原出願の明細書等において、支持軸と揺動側壁と本件連結材は相補的一体的関係ないし相互依存の関係にあるものである。(審判請求書第8ページ第22行?第9ページ第11行)

2)被請求人は、本件連結材は、ロック装置46により得られる剛性をさらに補うために設けることができるものであって、細断機に必要な剛性を得るために不可欠なものではない旨を主張するが、失当である。
仮に、清掃等のメンテナンス時に揺動側壁を開いた状態では、特段の力を受けるものではないので剛性は不要であるとしても、かかる剛性は、細断機が作動中に受ける力に対して必要であることは被請求人自身認めているものである。このような剛性の必要性に対し、本件連結材及びロック装置46をともに具備しない発明を含む本件発明1がその要求を満たし得る保証はない。
むしろ、本件原出願の明細書等の記載はその逆を示唆するものである。本件原出願の明細書等では、ロック装置46こそ付加的な構成であり、本件連結材を具備することを前提として、さらに追加的にロック装置46を設けることができるものとして記載されていたものである。(口頭審理陳述要領書第15ページ第10行?第16ページ第14行)

(2)ほかの出願(甲第3号証)の参酌
本件連結材により左右の固定側壁の上部を渡し止めることが揺動側壁を揺動開閉自在に構成したことと密接に関連するものであることが、被請求人によるほかの出願の公開公報である特開2006-55797号公報(甲第3号証)に示されている。同公報の段落【0034】?【0038】において、強度メンバーとして見た場合、本件特許発明の「支持軸」に相当する「2本のタイロッド軸3」によって、本件特許発明の「固定側壁」に相当する「前壁1及び後壁2」の両下端を架け渡して連結することによりハウジングHを構成すると記載した後、「本件連結材」に相当する「補助アーム9」の前壁1及び後壁2の上端側の撓み防止ないし高剛性化という技術的意義を明らかにするとともに、「補助アーム9」の必要性がタイロッド軸3を前壁1及び後壁2の下端に設けたことに呼応して生じたものであることを明らかにしている。(審判請求書第9ページ第12?末行)
ここで、同公報の段落【0037】に「従来同様の補助アーム9」と記載され、同公報の【背景技術】及び【特許文献1】にて本件原出願(甲第2号証)が従来技術として記載されているから、同公報に記載されている補助アーム9の技術的意義は、本件原出願の発明における本件連結材の技術的意義そのものというべきである。(口頭審理陳述要領書第16ページ第15行?第17ページ第19行)

(3)技術的意義の変更
1)本件特許明細書の段落【0010】の「2本の支持軸が、揺動側壁の枢軸と左右の固定側壁を連結する連結材とを兼ねているので、部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができる。」との記載は、本件原出願の明細書の段落【0004】にも記載されているから、外形上は、両者の意味に相違はないように思われる。
しかし、本件原出願の明細書の段落【0004】における上記記載の意味は、本件連結材の存在を前提として、2本の支持軸が連結材を兼ねているためそれ以外には他の連結材を設ける必要がない、言い換えれば、本件連結材と2本の支持軸以外の連結材(4本目の連結材)を設ける必要がないという意味にとどまっていたのに対し、本件特許明細書の段落【0010】における上記記載の意味は、本件連結材の存在を前提としないため、2本の支持軸以外の連結材(3本目の連結材)を設ける必要がないということまで意味するからである。
つまり、本件分割により本件連結材を発明特定事項から削除した結果、外形上は変更されていないように見える「2本の支持軸」の技術的意義をも大きく変更させ、本件原出願の明細書等には記載されていない技術的意義まで包含することになったものである。(審判請求書第10ページ第5?25行)

2)被請求人は、本件特許発明の【発明の目的】としては「メンテナンスが行いやすく、且つ、部品点数を少なくしつつも剛性の大きな(強度の高い)細断機を提供すること」であるところ、剛性を保つことと部品点数を削減することは相矛盾する要請であって、この両者のバランスをとることによって発明の目的が達成され得ることから、本件特許明細書等において、「本件連結材を具備しない発明」では、必要な剛性の大きさを保ちながら、これをさらに大きくする効果を有さないために、【発明の効果】を記載した段落【0010】の記載において、本件原出願の明細書に存する「2本の支持軸と1本の連結材で左右の固定側壁を連結するので、細断機の剛性を大きくすることが出来る」との記載が省略されていると主張するが、失当である。
確かに、剛性を保つことと部品点数を削減することは相矛盾する要請であり、また、メンテナンスを容易化するために揺動開閉自在な揺動側壁を設けることと、高剛性化を達成することも相矛盾する要請である。他方、メンテナンスの容易化という観点のみからみれば、本件連結材はメンテナンスの際に邪魔になり、その限度で目的の達成は制限されることになる。
このように、(ア)メンテナンスの容易化、(イ)部品点数の削減、(ウ)高剛性化という3つの目的は相互に矛盾するものであるところ、本件原出願の発明は、これら相互に矛盾する3つの目的をすべて実現するものとして本件原出願の明細書等に記載されていたにもかかわらず、これら3つの目的の間で事後的にそのウェイトをシフトさせ、取捨選択することにより発明を再構築することは、本件原出願の明細書等の範囲を超える新たな発明の創作というべきものである。(口頭審理陳述要領書第14ページ第6行?第15ページ第9行)

3)被請求人は、本件特許明細書の段落【0017】の「前記支持軸10は、揺動側壁11を揺動自在に支持する枢軸と固定側壁9を連結する連結材としての機能を有している。」との記載が、本件原出願の明細書の段落【0006】の記載と同一であることをもって、「支持軸の技術的意義」は、両者において全く同一であること、そして、本件連結材が、本件原出願の明細書等において付加的な要素であり、本件連結材の有無にかかわらず、支持軸が連結材をも兼ねているので、「部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができる」という点において、本件原出願の発明と本件特許発明とで何らの相違もない旨を主張するが、失当である。
本件特許発明が本件原出願の明細書等に記載されていた事項の範囲を超えていることに対し実施例の記載が同一であることは正当な理由にならないものである。
「部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができる」という発明の効果についても、本件連結材を有する限度で部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができる本件原出願の発明と、本件連結材まで削除して部品点数を少なくしコスト低減を図っている本件特許発明とでは、明らかに技術的意義が相違し、後者が前者の範囲を超えていることは明らかである。(口頭審理陳述要領書第17ページ第20行?第18ページ第14行)

4)被請求人は、仮に本件特許発明が、本件原出願の明細書等に記載されていない発明(すなわち、本件連結材を具備しない発明)であるとするならば、当然に本件原出願の明細書には記載のない格別の効果を奏する旨の記載が本件特許明細書に記載されているべきであるが、本件特許明細書には、「連結材を具備しない発明」に係る格別の効果を奏することの記載がないのであるから、この点からも、本件原出願の明細書等は、「連結材を具備する発明」及び「連結材を具備しない発明」という2つの発明を包含するものであるといえる旨を主張するが、失当である。
本件原出願の発明は、メンテナンスの容易化という発明の目的について、本件連結材が存在する限度で達成されていたものにすぎないのであり、部品点数の削減という発明の目的についても、本件連結材が存在する限度で達成されていたにすぎない。これに対し、本件特許発明は、本件連結材を削除することにより、本件原出願の発明以上にメンテナンスの容易化及び部品点数の削減を図るものであるから、本件原出願の明細書等にはない格別の効果を奏するものである。(口頭審理陳述要領書第18ページ第15行?第19ページ第3行)

[4]被請求人の主張の概要
1.被請求人の主張の全体概要
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人の主張に対して、
「本件分割出願は、特許法第44条第1項の規定に違反するから、その出願日は遡及せず、現実の出願日である平成18年2月8日となる結果、本件特許発明は、本件原出願の公開公報である特開2004-105863号公報に記載された発明と同一又はその発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができず、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである、という請求人の主張は、失当である。」(答弁書第2ページ第16?末行)
旨主張する。

2.本件分割出願が分割要件を満たしているとする理由の概要
被請求人は、本件分割出願が適法である理由として、本件原出願の明細書等には、本件連結材を具備しない発明が記載されており、本件原出願の明細書等は、「本件連結材を具備する発明」及び「本件連結材を具備しない発明」という2つの発明を包含するものであるから、本件分割出願は、特許法第44条第1項にいう「二以上の発明を包含する特許出願の一部」を新たな特許出願としたものである旨を主張する。(答弁書第10ページ第5?9行)
さらに、被請求人が主張する具体的な理由は、要すれば以下のとおりである。

2-1.判例及び審査基準に照らした本件分割出願の適法性について
請求人は、本件分割出願を判例及び審査基準に当てはめて、分割要件を満たしていない旨を主張するが、失当である。
仮に、本件分割出願が、「請求項の発明特定事項を概念的に上位の事項に補正する(発明特定事項を削除する場合を含む)」場合に当たるとしても、審査基準「第III部 第I節 新規事項 4.2各論(1)上位概念化、下位概念化等」に照らせば、削除する事項が、任意の付加的事項であることが明細書等の記載から自明である場合は、当初明細書等に記載した事項の範囲内で補正するといえるところ、本件連結材は、作動時の剛性の大きな細断機を得るのに不可欠な要素ではなく、付加的な要素であることが本件原出願の明細書等の記載から自明である。(上申書第3ページ右欄第1行?同第4ページ右欄末行)

2-2.本件原出願の明細書等の記載事項に係る請求人の主張に対して
(1)本件原出願の明細書等の記載事項について
1)請求人は、本件原出願の明細書等に記載された発明は、本件連結材を具備する発明のみである旨を主張するが、失当である。
本件連結材に関する事項として、本件原出願の明細書の段落【0006】の「前記支持軸10は、揺動側壁11を揺動自在に支持する枢軸と固定側壁9を連結する連結材としての機能を有している。」との記載の意義は、支持軸10が存在すれば、連結材としての機能も果たすということであり、本件連結材が無くても支持軸10が存在すれば連結材としての機能は失われないということである。そして、かかる記載から、本件連結材の代わりに支持軸10を備える発明があり得ること及び支持軸10が存在すれば本件連結材を具備しない発明があり得ることは明らかである。
すなわち、同段落【0006】の上記記載から、本件原出願の明細書等には、本件連結材に代えて支持軸10を備える発明が記載されているのと同様であるから、本件連結材を具備しない構成が記載されていると認められる。
このことから、本件原出願の明細書等には、「本件連結材を具備する発明」及び「本件連結材を具備しない発明」という2つの発明が記載されていると解さざるを得ない。そして、本件原出願の明細書の段落【0002】及び【0003】の記載は、「本件連結材を具備する発明」及び「本件連結材を具備しない発明」について共通する目的、手段であり、同段落【0004】の記載は、「本件連結材を具備する発明」の効果について触れたものである。(答弁書第3ページ第4行?第4ページ末行)

2)請求人は、本件原出願の明細書の【発明の効果】(段落【0004】)の記載に鑑みれば、本件原出願の明細書等では、本件原出願の発明の有利な効果が本件連結材を有しない場合との比較において記載されているから、本件連結材を有しない発明は外形的にも意識的にも本件原出願の発明から除外されているというべきである旨を主張するが、失当である。
本件原出願の明細書等には、「本件連結材を具備する発明」及び「本件連結材を具備しない発明」という2つの発明が記載されており、上記効果の記載は、「本件連結材を具備する発明」及び「本件連結材を具備しない発明」を対比して剛性の大きさを比較したものではありえず、「本件連結材を具備する発明」及び「本件連結材を具備しない発明」が、支持軸及び/又は本件連結材を備えていることにより、剛性が大きくなることを記載しているものである。そして、本件連結材を発明特定事項とする本件原出願の発明にあって、剛性に関しては支持軸と本件連結材とを具備しているので、「2本の支持軸と1本の連結材で左右の固定側壁を連結するので、細断機の剛性を大きくすることが出来る」との効果を奏することを単純に記載しているにすぎず、本件原出願の明細書等において、本件連結材を有しない発明を外形的にも意識的にも除外するものではない。(答弁書第5ページ第26行?第6ページ第13行)
請求人の主張は、発明の効果に寄与しない構成は外形的にも意識的にも明細書から除外されなければならない、と同義であり、失当である。(上申書第13ページ右欄)

(2)本件原出願の明細書等のロック装置46について
1)本件原出願の明細書の段落【0016】の記載において、「揺動側壁11を固定側壁9にロックすることが出来る。」との記載の意義は、細断機の四隅に設けられたロック装置46により、揺動側壁11を固定側壁9にロックすることができ、細断機の作動時、すなわち、被処理物を裁断する際に、受ける力に対して細断機の剛性を大きくすることができるというものである。
すなわち、細断機の剛性は、連結材だけではなくロック装置46によっても大きくすることができるのであるから、本件連結材は、本件原出願の明細書等において付加的な要素であり、高剛性化を達成するために不可欠なものであるとは認められない。(答弁書第5ページ第1?25行)

2)請求人の「ロック装置46に対する新たな技術的意義を追加するものであり、本件原出願の明細書等に記載されていた事項の範囲を超えるものである。」旨の主張の意味は不明であるが、被請求人は、細断機の作動時の剛性は、本件連結材の有無にかかわらずロック装置46によっても大きくすることができるのであるから、本件連結材は、付加的な要素であり、作動時の剛性の大きな細断機を得るのに不可欠な要素ではないことを主張するものである。(上申書第8ページ右欄)

(3)特許請求の範囲の記載(特許法第36条第5項)について
特許請求の範囲の記載は、どのような発明について特許を受けようとするかは特許出願人が判断すべきことであるので、特許を受けようとする発明を特定するために必要と出願人自らが認める事項のすべてを記載することとされているところ(特許法第36条第5項)、本件連結材を請求項1に係る発明の発明特定事項とするか否かは、出願人自ら判断することができる。
したがって、本件原出願の請求項1において、本件連結材を具備する発明しか記載されていないからといって、本件原出願の明細書等には、本件連結材を具備しない発明については一切記載されていないということはできない。(答弁書第5ページ第16?25行)

(4)本件特許明細書等の記載について
本件原出願の明細書等において、本件連結材を有しない発明を外形的にも意識的にも除外するものではないことは、本件連結材を具備しない発明が記載された本件発明1に対応する【発明の効果】を記載した段落【0010】において、本件原出願の明細書に存する「2本の支持軸と1本の連結材で左右の固定側壁を連結するので、細断機の剛性を大きくすることが出来る」との記載が省略されている点とも合致するものである。
すなわち、本件特許発明の【発明の目的】としては「メンテナンスが行いやすく、且つ、部品点数を少なくしつつも剛性の大きな(強度の高い)細断機を提供すること」であるところ、剛性を保つことと部品点数を削減することは相矛盾する要請であって、この両者のバランスをとることによって発明の目的が達成され得ることから、「本件連結材を具備する発明」においては、細断機の剛性を大きくする効果を発揮しているが、「本件連結材を具備しない発明」においては、必要な剛性の大きさを保ちながら、これをさらに大きくする効果を有さないために、上記記載が省略されている。(答弁書第6ページ第14行?第7ページ第1行)

2-3.本件連結材等の技術的意義とその変更について
(1)本件連結材の技術的意義について
1)請求人は、本件連結材の技術的意義について、支持軸と揺動側壁と本件連結材とが相補的一体的関係ないし相互依存の関係にある旨を主張するが、失当である
細断機の四隅に設けられたロック装置46により揺動側壁を固定側壁に固定すれば、「片持ち状」となることもなく、十分な剛性を得ることができることは自明である。そして、かかる剛性は、細断機が作動中に受ける力に対して必要であり、清掃等のメンテナンス時に揺動側壁を開いた状態では、特段の力を受けるものではないので剛性は不要である。
本件連結材は、ロック装置46により得られる剛性をさらに補うために設けることができるものであって、細断機に必要な剛性を得るために不可欠なものではない。
すなわち、固定側壁の上部を本件連結材によって渡し止めることと、揺動側壁を支持軸の回りに揺動開閉自在に構成したこととの2つの事項は一体不可分の構成ではなく、かつ密接に関連するものではない。そして、固定側壁の上部を本件連結材によって渡し止めることは、揺動側壁を揺動開閉自在に支持する支持軸を固定側壁の前後部下部に渡し止める構成を採用したことに呼応して採用されたものではなく、支持軸と揺動側壁と本件連結材とが相補的一体的関係ないし相互依存の関係にあるものでもない。(答弁書第7ページ第4?26行)

2)請求人は、ロック装置46が本件連結材の代替手段にならないことを主張するが、被請求人は、ロック装置46が本件連結材の代替手段になると主張しているのではなく、細断機の作動時の剛性は、ロック装置46により大きくすることができるという、当業者にとって自明なことを主張している。(上申書第16ページ右欄)

(2)ほかの出願(甲第3号証)の参酌
請求人は、本件連結材により左右の固定側壁の上部を渡し止めることが揺動側壁を揺動開閉自在に構成したことと密接に関連するものであることを、特開2006-55797号公報(甲第3号証)の段落【0034】?【0038】の記載に基づいて主張しているが、失当である。
請求人は、同公報に記載された「タイロッド軸3」が本件特許発明の「支持軸」に相当するものとしているが、タイロッド軸3は、同公報の段落【0034】?【0038】に記載のとおり、前壁1と後壁2とを所定間隔に調整可能とするためのものであり、開閉扉4、5を開閉させるための支持軸6とは別に設けられたものである。したがって、タイロッド軸3と本件特許発明の支持軸とで構成、機能が異なることから、両者の材質、寸法等が同一であるとは限らず、細断機の高剛性化に寄与する度合いも同列に論じることはできない。
そして、タイロッド軸3だけでは、前壁1及び後壁2の上端部が撓み易いため、補助アーム9を設けるという技術的思想が、同公報に記載されているからといって、全く同じ技術的思想が本件特許発明にも取り入れられたという記載が本件原出願の明細書等にない以上、同公報とは全く個別の出願である本件原出願において、本件連結材により左右の固定側壁の上部を渡し止めることが揺動側壁を揺動開閉自在に構成したことと密接に関連するものであるということはできない。(答弁書第7ページ第27行?第9ページ第6行)
なお、同公報の段落【0036】の記載から、タイロッド軸3は、前壁1及び後壁2との所定間隔を調整するものであり、同段落【0037】の「タイロッド軸3だけでは、…上端側が撓み易いため」との記載からすれば、補助アーム9は、前壁1と後壁2とを所定間隔を調整するためにタイロッド軸3を補助するものであり、また、同段落【0037】が、枠板基台H1上に前壁1及び後壁2等を取り付ける方法を記載していると認められるところ、前壁1と後壁2の上端側が撓み易いために補助アーム9を用いるのであるから、補助アーム9の技術的意義は、前壁1及び後壁2の取り付け時の撓みを防止するものであると認められる。そうすると、本件連結材も固定側壁の取り付け時の撓みを防止するものといえる。(上申書第18ページ右欄第1行?第19ページ右欄末行)

(3)技術的意義の変更
1)請求人は、本件特許発明において本件連結材を発明特定事項から削除した結果、本件特許明細書の【0010】の「2本の支持軸が、揺動側壁の枢軸と左右の固定側壁を連結する連結材とを兼ねているので、部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができる。」との記載の意味は大きく変更されることとなり、「2本の支持軸」の技術的意義をも大きく変更させ、本件原出願の明細書等には記載されていない技術的意義まで包含することになった旨を主張するが、失当である。
本件特許明細書の段落【0017】と本件原出願の明細書の段落【0006】との「前記支持軸10は、揺動側壁11を揺動自在に支持する枢軸と固定側壁9を連結する連結材としての機能を有している。」という記載のとおり、支持軸の技術的意義は、連結材としての機能を有しているという点において何ら変わることがなく、両者において、その技術的意義は全く同一である。
そして、本件連結材が上述のとおり、本件原出願の明細書等において付加的な要素であり、本件連結材の有無にかかわらず、支持軸が連結材をも兼ねているので、「部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができる」という点において、本件原出願の発明と本件特許発明とで何らの相違もないというべきである。
また、仮に本件特許発明が、本件原出願の明細書等に記載されていない発明(すなわち、本件連結材を具備しない発明)であるとするならば、当然に本件原出願の明細書には記載のない格別の効果を奏する旨の記載が本件特許明細書に記載されているべきところ、本件特許明細書には、「本件連結材を具備しない発明」に係る格別の効果を奏することの記載がないのであるから、この点からも、本件原出願は、「本件連結材を具備する発明」及び「本件連結材を具備しない発明」という2つの発明を包含するものであるといえる。(答弁書第9ページ第7行?第10ページ第4行)

2)請求人は、上記1)に関して、実施例の記載が同一であることは正当な理由にならない旨を主張するが、失当である。
被請求人は、実施例が同一である旨の主張はしておらず、請求人の「2本の支持軸の技術的意義をも大きく変更させ、本件原出願の明細書等には記載されていない技術的意義まで包含することになった旨の主張に対して、支持軸が連結材としての機能を有しているという点において、本件特許明細書と本件原出願の明細書とで何ら変わることがないことを主張している。
また、部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができるという効果は、本件原出願の明細書にも記載されているものであるから、本件原出願の発明と本件特許発明とで格別の差異はない。(上申書第20ページ右欄)

3)請求人は、メンテナンスを容易化するために揺動開閉自在な揺動側壁を設けることと、高剛性化を達成することは相矛盾する要請であり、本件原出願の発明は、(ア)メンテナンスの容易化、(イ)部品点数の削減、(ウ)高剛性化という相互に矛盾する3つの目的をすべて実現するものとして本件原出願の明細書等に記載されていたものであるにもかかわらず、これら3つの目的の間で事後的にそのウェイトをシフトさせ、取捨選択することにより発明を再構築することは、本件原出願の明細書等の範囲を超える新たな発明の創作というべきものである旨を主張する。
かかる請求人の主張は、高剛性化を達成するためには本件連結材が不可欠であることを前提としたものであるが、作動時の剛性の大きな細断機を得るためには、本件連結材は付加的な要素であるから、失当である。
また、本件連結材が存在しても、揺動側壁が開くことにより、メンテナンスが行いやすくなるのであり、さらに言えば、本件連結材は、固定側壁の上部前部に渡し止められてあり、固定側壁の上部後部には存在しないから、請求人が主張するようにメンテナンスの邪魔になることもない。
そして、「本件連結材を具備する発明」においては、細断機の剛性を大きくする効果を発揮しているが、「本件連結材を具備しない発明」においては、作動時の剛性の大きさを保ちながら、これをさらに大きくする効果を有さないために、本件発明1の【発明の効果】を記載した段落【0010】において、本件原出願の明細書に存在する「2本の支持軸と1本の連結材で左右の固定側壁を連結するので、細断機の剛性を大きくすることが出来る」との記載が省略されているのであり、本件特許発明は、何ら本件原出願の明細書等の範囲を超えるものではない。(上申書第14ページ右欄第1行?第15ページ右欄末行)

4)請求人は、本件特許発明は、本件連結材を削除することにより、本件原出願の発明以上にメンテナンスの容易化及び部品点数の削減を図るものであるから、本件原出願の明細書等にはない格別の効果を奏するものである旨を主張するが、失当である。
本件原出願の発明では、前後の揺動側壁が開くので、メンテナンスが行いやすいのであって、本件連結材が存在するか否かによって、メンテナンスの行いやすさに特段の違いはない。
また、部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができるという効果は、本件原出願の明細書にも記載されているものであるから、本件原出願の明細書等にはない格別の効果ということはできない。(上申書第21ページ右欄)

[5]当審の判断
1.本件分割の適否について
(1)判断の前提
本件分割出願に対しては、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項により「なお従前の例による」とされる同法律による改正前の特許法第44条(以下、単に「特許法旧第44条」という。)の規定が適用される。そして、特許法旧第44条第1項は、「特許出願人は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる期間内に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。」と規定し、さらに、特許法旧第44条第2項本文は、「前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。」と規定している。
分割出願が行われた場合、特許法旧第44条第2項により、新たな出願がもとの特許出願の時にしたものとみなされる効果を有することからすれば、新たな出願に係る発明は、もとの出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内であることを要し、ここで、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項」とは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に現実に記載されているか、記載されていなくとも、現実に記載されているものから自明であるか、いずれかの事項に限られると解される。さらに、「現実に記載されたものから自明な事項」であるというためには、現実には記載がなくとも、現実に記載されたものに接した当業者であれば、だれもが、その事項がそこに記載されているのと同然であると理解するような事項であるといえなければならず、その事項について説明を受ければ簡単に分かる、という程度のものでは、自明ということはできないと解される。
なお、本件原出願の願書に添付すべき書類に対しては、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項により「なお従前の例による」とされる同法律による改正前の特許法第36条(以下、単に「特許法旧第36条」という。)の規定が適用される。そして、特許法旧第36条第2項は「願書には、明細書、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。」と規定し、特許法旧第36条第3項は「3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。」と規定して同項第4号にて「特許請求の範囲」を掲げている。この規定により、本件原出願の明細書には、特許請求の範囲が含まれているから、本件原出願についてみれば、上記「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項」は、「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項」となる。
これらを踏まえて、本件分割出願についてみると、本件原出願の発明においては、後記(2)1)ア.【請求項1】(下線部を参照。)の記載のとおり、「左右の固定側壁の上部前部に渡し止められた連結材」なる事項、すなわち「本件連結材」が特定されていたが、本件発明1ないし本件発明5においては、上記「[2]本件特許発明」の記載のとおり、「本件連結材」が削除されていることが認められる。そこで、本件分割出願において「本件連結材」が削除されたことが適法であるかが問題となる。
ところで、原出願の請求項の発明特定事項の一部を削除して分割出願の請求項とする場合において、もとの出願の願書に最初に添付した明細書(特許請求の範囲を含む)又は図面に記載された事項の範囲内であるとして、分割出願が適法であるとするためには、削除する事項が本来的に技術的意義を有さないものであって、削除により新たな技術上の意義が追加されないことが明らかな場合(削除する事項が、任意の付加的事項であることが明細書等の記載から自明である場合も同様)であることが求められる。なお、かかる前提については、上記[3]2-1.の請求人の主張及び上記[4]2-1.の被請求人の主張からみて、両当事者の間に争いはない。
そこで、本件分割出願において、削除する事項である「本件連結材」が、(ア) 本来的に技術的意義を有さないものであって、削除により新たな技術上の意義が追加されないことが明らかな場合、又は、(イ)任意の付加的事項であることが明細書等の記載から自明である場合、に該当するかについて以下検討する。

(2)本件原出願の明細書等の記載事項
本件原出願の明細書(甲第2号証)には、図面とともに以下の記載があることが認められる。(なお、下線は当審で付した。)

1)【特許請求の範囲】
ア.【請求項1】
「所定間隔をあけて配された左右の固定側壁と、固定側壁の前後部下部に渡し止められた前後の支持軸と、支持軸に前後揺動開閉自在に設けられた前後の揺動側壁と、左右の固定側壁の上部前部に渡し止められた連結材と、固定側壁に回転自在に渡された、回転刃を有する回転軸と、前の揺動側壁の内側に設けられた回転刃との協働により被処理物を細断する固定刃と、後の揺動側壁の内側に設けられたスクレーパーとを有し、固定刃とスクレーパーとの間に回転刃が位置するようになされている細断機。」

イ.【請求項2】
「前記回転軸にアーム状の粗切断用回転刃と外周に鋸歯状の細断歯を有する細切断用回転刃とが設けられ、固定刃及びスクレーパーの下方に位置するようにして粗切断用回転刃の移動軌跡空間を囲う覆い部材が設けられ、前記覆い部材が、前の揺動側壁に設けられた前側部材と、後の揺動側壁に設けられた後側部材と、前側部材と後側部材とを繋ぐ、それらと別体の中間部材とを有し、前記中間部材が着脱自在となされている請求項1記載の細断機。」

ウ.【請求項3】
「前記前後の揺動側壁に、それらが開いた状態において覆い部材の中間部材を支承する支承部材が設けられ、前後の揺動側壁が起立状態となった際、前の揺動側壁に設けられた支承部材及び覆い部材の前側部材と後の揺動側壁に設けられた支承部材及び覆い部材の後側部材とにより、覆い部材の中間部材が前後方向に動かないようになされている請求項2記載の細断機。」

エ.【請求項4】
「前記固定刃が、左右方向に長い、粗切断用回転刃の先端の移動軌跡の前側に位置する前部材と、前部材と別体である、粗切断用回転刃の移動軌跡の位置で分断された後部材とを有している請求項2記載の細断機。」

オ.【請求項5】
「前記回転軸の左端部の内側部に左螺旋部が形成され、同右端部の内側部に右螺旋部が形成され、これら左右螺旋部が固定側壁の回転軸が嵌まる孔の内面に対向するようになされている請求項1?4のいずれかに記載の細断機。」

2)【発明の目的】
段落【0002】
「本発明は、メンテナンスが行ないやすく、且つ、部品点数を少なくしつつも剛性の大きな(強度の高い)細断機を提供することを目的とするものである。」

3)【前記目的を達成するための手段】
段落【0003】
「本発明は前記目的を達成するために以下の如き手段を採用した。
▲1▼請求項1の発明は、所定間隔をあけて配された左右の固定側壁と、固定側壁の前後部下部に渡し止められた前後の支持軸と、支持軸に前後揺動開閉自在に設けられた前後の揺動側壁と、左右の固定側壁の上部前部に渡し止められた連結材と、固定側壁に回転自在に渡された、回転刃を有する回転軸と、前の揺動側壁の内側に設けられた回転刃との協働により被処理物を細断する固定刃と、後の揺動側壁の内側に設けられたスクレーパーとを有し、固定刃とスクレーパーとの間に回転刃が位置するようになされているものである。
▲2▼請求項2の発明は、前記回転軸にアーム状の粗切断用回転刃と外周に鋸歯状の細断歯を有する細切断用回転刃とが設けられ、固定刃及びスクレーパーの下方に位置するようにして粗切断用回転刃の移動軌跡空間を囲う覆い部材が設けられ、前記覆い部材が、前の揺動側壁に設けられた前側部材と、後の揺動側壁に設けられた後側部材と、前側部材と後側部材とを繋ぐ、それらと別体の中間部材とを有し、前記中間部材が着脱自在となされている請求項1記載のものである。
▲3▼請求項3の発明は、前記前後の揺動側壁に、それらが開いた状態において覆い部材の中間部材を支承する支承部材が設けられ、前後の揺動側壁が起立状態となった際、前の揺動側壁に設けられた支承部材及び覆い部材の前側部材と後の揺動側壁に設けられた支承部材及び覆い部材の後側部材とにより、覆い部材の中間部材が前後方向に動かないようになされている請求項2記載のものである。
▲4▼請求項4の発明は、前記固定刃が、左右方向に長い、粗切断用回転刃の先端の移動軌跡の前側に位置する前部材と、前部材と別体である、粗切断用回転刃の移動軌跡の位置で分断された後部材とを有している請求項2記載のものである。
▲5▼請求項5の発明は、前記回転軸の左端部の内側部に左螺旋部が形成され、同右端部の内側部に右螺旋部が形成され、これら左右螺旋部が固定側壁の回転軸が嵌まる孔の内面に対向するようになされている請求項1?4のいずれかに記載のものである。」

4)【発明の効果】
段落【0004】
「本発明は前記した如き構成によって以下の如き効果を奏する。
▲1▼請求項1の発明によれば、前後の揺動側壁が開くので、メンテナンスが行ないやすい。また、2本の支持軸と1本の連結材で左右の固定側壁を連結するので、細断機の剛性を大きくすることが出来る。更に、2本の支持軸が、揺動側壁の枢軸と左右の固定側壁を連結する連結材とを兼ねているので、部品点数を少なくしてコスト低減を図ることが出来る。
▲2▼請求項2の発明によれば、覆い部材の中間部材が着脱自在となされているので、メンテナンスが行ないやすい。
▲3▼請求項3の発明によれば、覆い部材の中間部材の固定を簡単に行なうことが出来る。
▲4▼請求項4の発明によれば、固定刃の前部材と同後部材とを別個・独立に位置調節出来るので、固定刃の、回転刃(粗切断用回転刃及び細切断用回転刃)に対する位置調節が行ないやすい。
▲5▼請求項5の発明によれば、螺旋部によって被処理物を内側に送り出すことが出来るので、被処理物によって回転軸の回転が阻害されるというようなトラブルを防止することが出来る。」

5)【発明の実施の形態】
ア.段落【0006】
「細断機1の水平な基板2に取り付けられたケーシング3は、上部に入口4を、下部に出口5を有している。前記基板2には、出口5に対向するようにして開口6が形成されている。基板2の開口6の下方には細断片を受ける受け箱(図示略)が配置されている。
前記ケーシング3は、左右方向に所定間隔をあけて配された左右の固定側壁9と、これら固定側壁9の前後部下部に渡し止められた前後の支持軸10と、これら支持軸10に前後揺動開閉自在に設けられた前後の揺動側壁11と、左右の固定側壁9の上部前部に渡し止められた連結材12とを有している。前記支持軸10は、揺動側壁11を揺動自在に支持する枢軸と固定側壁9を連結する連結材としての機能を有している。なお、前の揺動側壁11は連結材12に当たって図5の位置を越えて後に揺動しないようになされ、後の揺動側壁11は図示略のストッパー(固定側壁9に設けられている)に当たって図5の位置を越えて前に揺動しないようになされている。」

イ.段落【0007】
「図4に示すごとく、前記固定側壁9に軸心を左右方向に向けた、同心の貫通孔15が形成され、これら貫通孔15に軸受16が取り付けられ、これら軸受16に軸心を左右方向に向けた回転軸17が回転自在に渡されている。前記回転軸17は、モーター18(図1参照)によって矢印Aの方向に回転させられるようになされている。また、前記回転軸17の左端部の内側部に左螺旋部19が形成され、同右端部の内側部に右螺旋部20が形成され、これら左右螺旋部19、20が貫通孔15の内面に対向するようになされている。このような構成により、回転軸17が矢印Aの方向に回転するのに伴って、左右螺旋部19、20と貫通孔15の内面との間に入り込んだ被処理物(細断片も含む)は、ケーシング3の内部に送り出される。」

ウ.段落【0008】
「前記回転軸17に、少なくとも1つ、本実施の形態では2つのアーム状の粗切断用回転刃23が左右方向に所定間隔をあけて、且つ、固定側壁9との間にも間隔をあけるようにして、嵌め止められている。また、回転軸17には、少なくとも1つ、本実施の形態では3つの細切断用回転刃24が嵌め止められている。なお、相互に隣接する粗切断用回転刃23と細切断用回転刃24とは密接させられ、一番左及び一番右の細切断用回転刃24は固定側壁9にそれらの回転を阻害しないように僅かの間隙をあけて対向させられている。前記粗切断用回転刃23には回転工具用の角孔25が形成されている。このような構成により、角孔25に回転工具を嵌めて粗切断用回転刃23を手動で回転させることが出来る。前記細切断用回転刃24には、左右方向に所定間隔で環状溝27が形成され、環状溝27と環状溝27との間の突部28に鋸歯状の細断歯29が形成されている(図7参照)。」

エ.段落【0009】
「前記前の揺動側壁11の内側に、粗切断用回転刃23及び細切断用回転刃24との協働により被処理物を細断する固定刃32が、後方に向かって下り傾斜するようにして取り付けられている。前記固定刃32は、左右方向に長い、粗切断用回転刃23の先端の移動軌跡の前側に位置する前部材32aと、この前部材32aと別体である、粗切断用回転刃23の移動軌跡の位置で分断された後部材32b(図3参照)とを有している。」

オ.段落【0010】
「前記前部材32aは、図7に示すごとく所要本のボルト33により前の揺動側壁11に固定されており、粗切断用回転刃23の移動軌跡に臨む後縁部が刃(粗切断用回転刃23との協働により被処理物を細断する刃)として機能するようになされている。」

カ.段落【0011】
「前記後部材32bは、図7に示すごとく所要本のボルト34及びナット35により前の揺動側壁11に固定されており、粗切断用回転刃23の移動軌跡に臨む側縁が刃(粗切断用回転刃23との協働により被処理物を細断する刃)として機能するようになされている。また、後部材32bの後縁部は、細切断用回転刃24と噛み合うように凹凸となされ(図3参照)、この凹凸部が刃(細切断用回転刃24との協働により被処理物を細断する刃)となされている。前記ボルト34の頭は、被処理物が嵌まり込む窪みのない上方に凸の曲面となされている。また、ボルト34の軸部の上部(頭部の下の部分)は角軸部(断面が矩形の軸)となされ、この角軸部が後部材32bに形成された角孔に嵌まって、ボルト34は後部材32bに対して相対回転しないようになされている。」

キ.段落【0012】
「前記後の揺動側壁11の内側に、細切断用回転刃24との協働により被処理物を掻き落とす3つのスクレーパー38が、前方に向かって下り傾斜するようにして取り付けられている。前記スクレーパー38は粗切断用回転刃23と衝突・干渉しないようにして配されている。前記スクレーパー38は、図7に示すごとく所要本のボルト34及びナット35により後の揺動側壁11に固定されており、スクレーパー38の前縁部は、細切断用回転刃24と噛み合うように凹凸となされ(図3参照)、この凹凸部が掻き落とし部(細切断用回転刃24との協働により被処理物を掻き落とす部)となされている。」

ク.段落【0013】
「上記のごとき構成により、固定刃32とスクレーパー38との間に粗切断用回転刃23及び細切断用回転刃24が位置するようになされている。」

ケ.段落【0014】
「図5及び図6に示すごとく、前記固定刃32及びスクレーパー38の下方に位置するようにして粗切断用回転刃23の移動軌跡空間を囲う覆い部材40が設けられている。前記覆い部材40は、前の揺動側壁11に設けられた前側部材40aと、後の揺動側壁11に設けられた後側部材40cと、前側部材40aと後側部材40cとを繋ぐ、それらと別体の中間部材40bとを有している。なお、図5において、前側部材40aと中間部材40bとの境が「L」で、中間部材40bと後側部材40cとの境が「M」で示されている。」

コ.段落【0015】
「前記中間部材40bは以下のような手段によりケーシング3に着脱自在となされている。
前記前後の揺動側壁11に、それらが開いた状態において覆い部材40の中間部材40bを支承する支承部材42が設けられている。また、前後の揺動側壁11に、中間部材40bの左右方向の移動を阻止するホルダー43が設けられている。そして、前後の揺動側壁11を閉じた際(起立状態とした際)、前後の支承部材42、前側部材40a及び中間部材40bにより、中間部材40bが前後方向に動かないようになされると共に、ホルダー43により左右方向にも動かないようになされている。このような構成により、前後の揺動側壁11を開くことにより中間部材40bをケーシング3に対して簡単に取り出すことが出来るので、中間部材40b内の掃除を簡単に行なうことが出来る。」

サ.段落【0016】
「前記前後の揺動側壁11は図5の状態位置で図8に示すロック装置46によりロックされるようになされている。
前記ロック装置46は、相互に対向する、上方から見て先端側に向かって開くテーパー面47を有する平面形状コ字状のロック片48と、ロック片48に形成された貫通孔49を通じて固定側壁9に形成されたねじ孔50にねじ嵌められたハンドル付きねじ51と、テーパー面47に対向する固定側壁9に形成された傾斜面52と、揺動側壁11に形成された傾斜面52とを有している。このような構成により、テーパー面47を傾斜面52に対向させた後、ねじ51を締め付けてテーパー面47を傾斜面52に押し当てることにより、揺動側壁11を固定側壁9にロックすることが出来る。」

シ.段落【0020】
「【変形例等】
以下に変形例等について説明を加える。
(1)粗切断用回転刃23及び細切断用回転刃24が請求項1でいう回転刃である。粗切断用回転刃23及び細切断用回転刃24の構造は任意である。
(2)インターロック装置57はなくてもよい。」

(3)本件特許明細書等の記載事項
本件特許明細書(甲第1号証)には、図面とともに以下の記載があることが認められる。(なお、下線は当審で付した。)

1)【特許請求の範囲】
上記「[2]本件特許発明 」に記載したとおりである。

2)【発明が解決しようとする課題】
段落【0003】
「本発明は、メンテナンスが行ないやすく、且つ、部品点数を少なくしつつも剛性の大きな(強度の高い)細断機を提供することを目的とするものである。」

3)【課題を解決するための手段】
段落【0004】ないし【0008】
「【0004】
第1発明に係る細断機は、所定間隔をあけて配された1対の固定側壁と、両固定側壁に回転自在に渡され、回転刃を有する回転軸と、該回転軸と平行に、両固定側壁の下側両端部に渡し止められた1対の支持軸と、該支持軸夫々に揺動開閉自在に設けられた揺動側壁と、一方の揺動側壁の内側に設けられ、前記回転刃との協働により被処理物を細断する固定刃と、他方の揺動側壁の内側に設けられたスクレーパーとを有し、前記固定刃とスクレーパーとの間に前記回転刃が位置するようになされ、前記回転刃は、アーム状の粗切断用回転刃と外周に鋸歯状の細断歯を有する細切断用回転刃を有し、前記固定刃及びスクレーパーの下方に位置するようにして前記粗切断用回転刃の移動軌跡空間を囲う覆い部材が設けられ、前記覆い部材は、前記一方の揺動側壁に設けられた第1側部材と、前記他方の揺動側壁に設けられた第2側部材と、前記第1側部材と第2側部材とを繋ぎ、前記第1側部材及び第2側部材とは別体であって、着脱自在となされた中間部材とを有することを特徴とする。
【0005】
第2発明に係る細断機は、第1発明において、前記回転軸の一端の内側部に左螺旋部が形成され、前記回転軸の他端の内側部に右螺旋部が形成され、前記左螺旋部及び右螺旋部が前記固定側壁の回転軸が嵌まる孔の内面に対向するようになされていることを特徴とする。
【0006】
第3発明に係る細断機は、第1発明において、前記粗切断用回転刃の側壁には、角孔を形成してあることを特徴とする。
【0007】
第4発明に係る細断機は、第1発明において、前記固定刃及びスクレーパー夫々は、前記一方の揺動側壁の内側及び他方の揺動側壁の内側にボルトで固定され、該ボルトの頭部は、上方に凸状の曲面をなしていることを特徴とする。
【0008】
第5発明に係る細断機は、第1発明において、平面形状コ字状であって、平面視が相互に対向して先端側に向かって開くテーパー面を有するロック片と、該ロック片に形成された貫通孔と、前記固定側壁及び揺動側壁夫々に設けられ、前記テーパー面に対向する傾斜面と、前記固定側壁に設けられ、前記貫通孔を通じて貫通される螺子を螺子嵌められる螺子孔とを備え、前記螺子を締め付け、前記テーパー面を傾斜面に押し当てることにより前記揺動側壁を固定側壁に固定するように構成してあることを特徴とする。」

4)【発明の効果】
段落【0010】
「第1発明にあっては、前後の揺動側壁が開くので、メンテナンスが容易になる。また、2本の支持軸が、揺動側壁の枢軸と左右の固定側壁を連結する連結材とを兼ねているので、部品点数を少なくしてコスト低減を図ることができる。さらに、覆い部材の中間部材が着脱自在となされているので、メンテナンスが容易になる。」

5)【発明を実施するための最良の形態】
ア.段落【0017】
「図1、図2に示すごとく、細断機1の水平な基板2に取り付けられたケーシング3は、上部に入口4を、下部に出口5を有している。前記基板2には、出口5に対向するようにして開口6が形成されている。基板2の開口6の下方には細断片を受ける受け箱(図示略)が配置されている。前記ケーシング3は、左右方向に所定間隔をあけて配された左右の固定側壁9と、これら固定側壁9の前後部下部に渡し止められた前後の支持軸10と、これら支持軸10に前後揺動開閉自在に設けられた前後の揺動側壁11と、左右の固定側壁9の上部前部に渡し止められた連結材12とを有している。前記支持軸10は、揺動側壁11を揺動自在に支持する枢軸と固定側壁9を連結する連結材としての機能を有している。なお、前の揺動側壁11は連結材12に当たって図5の位置を越えて後に揺動しないようになされ、後の揺動側壁11は図示略のストッパー(固定側壁9に設けられている)に当たって図5の位置を越えて前に揺動しないようになされている。」

イ.段落【0027】
「前記前後の揺動側壁11は図5の状態位置で図8に示すロック装置46によりロックされるようになされている。前記ロック装置46は、相互に対向する、上方から見て先端側に向かって開くテーパー面47を有する平面形状コ字状のロック片48と、ロック片48に形成された貫通孔49を通じて固定側壁9に形成されたねじ孔50にねじ嵌められたハンドル付きねじ51と、テーパー面47に対向する固定側壁9に形成された傾斜面52と、揺動側壁11に形成された傾斜面52とを有している。このような構成により、テーパー面47を傾斜面52に対向させた後、ねじ51を締め付けてテーパー面47を傾斜面52に押し当てることにより、揺動側壁11を固定側壁9にロックすることができる。」

ウ.段落【0031】
「以下に変形例等について説明を加える。
(1)粗切断用回転刃23及び細切断用回転刃24が請求項1でいう回転刃である。粗切断用回転刃23及び細切断用回転刃24の構造は任意である。
(2)インターロック装置57はなくてもよい。」

(4)ほかの出願の公開公報の記載事項
被請求人によるほかの出願の公開公報である特開2006-55797号公報(甲第3号証)には、図面とともに以下の記載があることが認められる。(なお、下線は当審で付した。)

ア.段落【0002】及び【0003】
「【背景技術】
【0002】
従来、被粉砕物を収容するホッパーの下部にハウジングを連設し、前記ホッパーから落下される上記被粉砕物を、ハウジング内の回転軸外周に設けた回転刃と、この回転刃の適所に設置された2つの大きな粗砕刃と、これら回転刃及び粗砕刃と、ハウジングの両側壁内面に設けられた固定刃との協働によって粉砕し、その粉砕物をハウジングの下方に形成した排出口から排出してなる粉砕機があった(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このハウジングは、所定間隔をあけて配置された前、後壁と、これら前、後壁の所定間隔を維持するために架け渡されたタイロッド軸と、前、後壁の間に略密接して配置されると共に、下端を支点にして各々が外側に向けて起倒可能な左、右の開閉扉とから成り、この開閉扉の下端は、上記タイロッド軸で軸支されている。」

イ.【特許文献1】
特願2002-272376号」

ウ.段落【0034】ないし【0038】
「【0034】
このホッパーPの下部には、ハウジングHが連設されてなる。
【0035】
ハウジングHは、水平な枠板基台H1の前、後に、所定間隔をあけて前壁1及び後壁2を立設すると共に、これら前壁1及び後壁2の両下端には、これを貫通するタイロッド軸3を架け渡して連結している。
【0036】
このタイロッド軸3は、両端にネジ山が形成されており、前壁1及び後壁2の両下端を各々貫通したうえで、先端からナット31を締め付けて、前壁1及び後壁2との所定間隔を調整可能にしており、ナット31の外側から更にナット31’を螺合させた、所謂、二重ナット構造にして、調整後のナット31の緩みを防止している。
【0037】
このようにしてタイロッド軸3をナット31で締付け、前壁1及び後壁2の所定間隔を調整した後、これら前壁1及び後壁2と、枠板基台H1とを結合するボルト、ナットH2を締付けて、枠板基台H1上に所定間隔をあけた前壁1及び後壁2が固定されている。
もっとも、これら2本のタイロッド軸3だけでは、前壁1及び後壁2の上端側が撓み易いため、前壁1及び後壁2の少なくとも上端一側には、これら前壁1及び後壁2に架け渡された従来同様の補助アーム9をボルト(不図示)等で固着している。
【0038】
なお、補助アーム9は、前壁1及び後壁2の上端両側に設けても良く、前壁1及び後壁2の上端側の撓みを防止できるものであれば良い。」

(5)判断
以上に基づいて、本件特許発明において「本件連結材」が削除されている点の適否について以下判断する。

1)本件原出願の明細書等に現実に記載された事項について
上記(2)1)【特許請求の範囲】、2)【発明の目的】、3)【前記目的を達成するための手段】、4)【発明の効果】及び5)【発明の実施の形態】並びに図面の記載事項からみて、本件原出願の明細書等では、その特許請求の範囲において、本件連結材を発明特定事項とした発明が記載されており、発明の詳細な説明の【前記目的を達成するための手段】(段落【0003】)においても、特許請求の範囲の記載と対応して本件連結材を特定するものが記載されている。また、同様に、発明の詳細な説明の【発明の実施の形態】(段落【0006】以降)においても、本件連結材に対応した構成である「左右の固定側壁9の上部前部に渡し止められた連結材12」(以下、「実施例連結材」という。)を備える形態の細断機のみが記載され、さらに、図1ないし図9のいずれにも、本件原出願の発明の実施の形態として実施例連結材を有する細断機が図示されている。
また、上記(2)5)シ.段落【0020】の記載からみて、発明の実施の形態の変形例等についての説明においても、本件連結材又は実施例連結材を有さなくてもよいことを意味する記載はない。
このように、本件原出願の明細書等には、本件連結材を備える発明が記載されているのみであり、本件連結材を省略又は他の手段により代替可能である旨の直接的な記載はないから、本件連結材を有しない発明、又は、本件連結材が任意の付加的事項であることが、本件原出願の明細書等に現実に記載されているとすることはできない。

2)本件連結材の技術的意義とその変更について
ア.削除する事項である「本件連結材」の技術的意義について
上記(2)2)【発明の目的】の記載事項からみて、本件原出願の発明の目的として、細断機について、(ア)メンテナンスが行ないやすく、且つ、(イ)部品点数を少なくしつつも剛性の大きな(強度の高い)細断機を提供する、という2つの目的(課題)が、本件原出願の明細書等に記載されていると認められる。
また、上記(2)4)【発明の効果】の記載事項によれば、本件原出願の発明の効果として、前記(ア)の目的(課題)に対しては、「前後の揺動側壁が開く」ことにより解決し、前記(イ)の目的(課題)のうち、「部品点数を少なく」することは、「2本の支持軸が、揺動側壁の枢軸と左右の固定側壁を連結する連結材とを兼ねている」ことにより解決しつつ、一方で、「剛性の大きな(強度の高い)細断機」とすることは、「2本の支持軸と1本の連結材で左右の固定側壁を連結する」(本件連結材を有する)ことより解決したことが記載されていると認められる。このことからすれば、本件連結材には、2本の支持軸とあいまって、細断機の剛性を大きくする(強度を高くする)という技術的意義が存していることが分かる。
この点に関して、被請求人は、ロック装置46により、細断機の作動時の剛性をより大きくすることができることを理由に、本件連結材は、細断機に必要な剛性を得るために不可欠なものではないことを主張している。
しかし、本件連結材により細断機の剛性を高めることは、上記のとおり、正に本件原出願の明細書等に記載されている事項であり、他方、ロック装置46に係る記載である本件原出願の明細書の段落【0016】の記載事項をみても、ロック装置46と細断機の剛性との関連性に関する記載はない。むしろ、本件原出願の発明に係る細断機では、その基板2に対して「所定間隔をあけて配された左右の固定側壁」の下部が組付けられて起立し、この起立した左右の固定側壁に対して、例えば回転軸等の細断機を構成する種々の要素が組付けられているところ、かかる構成に鑑みれば、細断機の作動時又は揺動側壁の開放時のいずれにおいても、左右の固定側壁を中心としてケーシング3を構成することが、細断機の剛性を確保することにおいて重要であると理解できる。さらに、所定の距離を隔てて基板2上に起立する平面である左右の固定側壁にあっては、その上部を連結する機能を有する本件連結材がなければ、上部が自由端となり本件連結材を有さない場合と比較して強度が低下することは明らかであるから、起立した左右の固定側壁同士を強固に連結するに当たっては、機械設計上、本件連結材が重要な役割を果たしていることが、当業者であれば理解し得るところである。そして、このことは、揺動側壁を閉じた際に利用するロック装置46の存在と直接的に関連するものではない。
なお、以上の点は、ほかの文献を参酌するまでもないことではあるが、本件原出願を従来技術として例示している特開2006-55797号公報(甲第3号証)の上記(4)に示した一連の記載事項、特に「これら2本のタイロッド軸3だけでは、前壁1及び後壁2の上端側が撓み易いため、前壁1及び後壁2の少なくとも上端一側には、これら前壁1及び後壁2に架け渡された従来同様の補助アーム9をボルト(不図示)等で固着している。」との記載事項とも整合するものである。ここで、「補助アーム9」が本件連結材に相当することは、その記載から明らかである。
このように、ロック装置46を根拠に本件連結材の技術的意義を否定することはできないものであるから、被請求人の主張には理由がない。

イ.削除による技術的意義の変更又は追加について
上記ア.「削除する事項である『本件連結材』の技術的意義について」で検討したように、本件原出願の明細書等の記載からすると、本件連結材の存在は、本件原出願の発明にとって重要であり、本件原出願の発明は、細断機に必要な所定の剛性を本件連結材により得ることを前提としているということができる。
他方、本件特許発明においては、本件原出願の発明が備える本件連結材が削除されているから、本件連結材の有無は任意のものとなり、本件特許発明には、本件連結材を備える細断機又は本件連結材を備えていない細断機のいずれもが包含されると解される。また、本件原出願の明細書の上記(2)4)【発明の効果】及び本件特許明細書の上記(3)4)【発明の効果】の記載事項からみて、本件原出願の発明が備える本件連結材が削除されていることに伴い、本件原出願の明細書には存在する【発明の効果】の「2本の支持軸と1本の連結材で左右の固定側壁を連結するので、細断機の剛性を大きくすることが出来る。」との記載が、本件特許明細書の【発明の効果】では削除されていると認められる。これらから、本件特許発明のうち本件連結材を備えないものは、剛性を必ずしも得られない細断機という細断機自体の技術的意義が変更されたものに等しい発明、又は、本件連結材以外の何らかの手段、例えば、左右の固定側壁自体又は支持軸10その他の事項、により必要な剛性を確保した細断機という本件連結材以外の事項の技術的意義が変更又は追加されたものに等しい発明であるということができる。
してみると、本件原出願の発明において重要な事項である本件連結材が削除されていることにより、本件特許発明は、本件原出願の発明と比べて、少なくとも細断機の剛性確保に関して、細断機自体の技術的意義が実質的に変更されたもの、又は、本件連結材以外の何らかの事項の技術的意義が実質的に変更されたものであり、新たな技術的意義が実質的に追加されたものである。
なお、被請求人は、本件特許明細書の段落【0017】と本件原出願の明細書の段落【0006】との「前記支持軸10は、揺動側壁11を揺動自在に支持する枢軸と固定側壁9を連結する連結材としての機能を有している。」という記載のとおり、支持軸の技術的意義は、連結材としての機能を有しているという点において何ら変わることがなく、両者において、その技術的意義は全く同一である旨、及び、本件特許発明が、本件原出願の明細書等に記載されていない本件連結材を具備しない発明であるとするならば、当然に記載されるべき「本件連結材を具備しない発明」に係る格別の効果を奏することの記載が本件特許明細書等にはない旨を主張する。
しかしながら、上記のとおり、本件特許発明において本件連結材が削除されていることにより、本件特許明細書等と本件原出願の明細書等の間で、記載上の形式的な変更がなくとも、少なくとも細断機の剛性確保に関して、細断機自体又は本件連結材以外の何らかの事項の技術的意義を実質的に変更するものであるから、被請求人の主張には理由がない。

3)自明性について
上記1)「本件原出願の明細書等に現実に記載された事項について」で検討したとおり、本件原出願の明細書等では、本件原出願の発明及びその実施の形態において、細断機に必要な剛性を確保するために本件連結材を用いること以外の構成については現実には記載がない。また、上記2)ア.「削除する事項である『本件連結材』の技術的意義について」で検討したとおり、本件原出願の発明では、本件連結材による剛性確保が重要であり、本件連結材は技術的意義を有するということができる。そうすると、本件連結材を備えることは、本件原出願の発明に係る細断機の全体構成と一体として捉えるべきものであると解するのが相当である。
これらに鑑みれば、本件原出願の明細書等に現実に記載されたものに接した当業者であれば、本件連結材を備える発明のみが本件原出願の明細書等に記載されていると理解する方がむしろ自然であって、その当業者のだれもが、本件連結材を有しない発明が本件原出願の明細書等に記載されているのと同然である、又は、本件連結材が任意の付加的事項であることが本件原出願の明細書等に記載されているのと同然である、と理解するとはいえないというべきである。
よって、本件連結材を有しない発明又は本件連結材が任意の付加的事項であることが、本件原出願の明細書等に現実に記載されたものから自明であるとはいえない。
この点に関して、被請求人は、本件原出願の明細書の段落【0006】の「前記支持軸10は、揺動側壁11を揺動自在に支持する枢軸と固定側壁9を連結する連結材としての機能を有している。」との記載から、本件原出願の明細書等には、本件連結材に代えて支持軸10を備える発明が記載されているのと同様であるから、本件原出願の明細書等には、「本件連結材を具備する発明」及び「本件連結材を具備しない発明」という2つの発明が記載されている旨主張し、同時に、本件原出願の明細書の【発明の目的】及び【目的を達成するための手段】の記載は、「本件連結材を具備する発明」及び「本件連結材を具備しない発明」について共通する目的、手段について、また、【発明の効果】の記載は、「本件連結材を具備する発明」の効果について触れたものであると主張している。
しかしながら、同段落【0006】の上記記載事項は、その前後の文脈からみて、支持軸10が「揺動側壁11を揺動自在に支持する枢軸」と「固定側壁9を連結する連結材」としての2つの機能を兼ねていることを記述するものであり、あくまで、支持軸10が枢軸と連結材を兼ねていることで、品点数を少なくしていることを説明するにとどまる。このことは、同段落【0006】の上記記載事項が、本件原出願の請求項1に係る発明の「固定側壁の前後部下部に渡し止められた前後の支持軸と、支持軸に前後揺動開閉自在に設けられた前後の揺動側壁」なる発明特定事項に対応していること、及び、【発明の効果】において「2本の支持軸が、揺動側壁の枢軸と左右の固定側壁を連結する連結材とを兼ねているので、部品点数を少なくしてコスト低減を図ることが出来る。」と記載されていることによっても裏付けられている。そうすると、段落【0006】の上記記載事項は、下部の連結材である支持軸10が、上部の連結材である本件連結材の代わりになることや、本件連結材を備えない発明を示唆するものでもないから、被請求人の主張には理由がない。
また、被請求人は、細断機の作動時の剛性は、本件連結材の有無にかかわらずロック装置46によっても大きくすることができるのであるから、本件連結材は、付加的な要素であることを主張している。
しかしながら、上記2)ア.「削除する事項である『本件連結材』の技術的意義について」でも示したとおり、本件原出願の明細書の段落【0016】をみても、ロック装置46と細断機の剛性との関連性に関する記載はなく、むしろ、本件原出願の発明において、起立した左右の固定側壁同士を強固に連結するに当たっては、機械設計上、本件連結材が重要な役割を果たしていることが、当業者であれば理解し得ることに照らせば、本件原出願の明細書等に接した当業者のだれもが、ロック装置46に関する記載に基づいて本件連結材が付加的な要素であると理解するとはいえないというべきである。よって、被請求人の主張には理由がない。

4)被請求人のそのほかの主張について
ア.特許請求の範囲の記載(特許法第36条第5項)について
被請求人は、特許請求の範囲の記載について、特許法第36条第5項の規定を根拠に、本件連結材を請求項に係る発明の発明特定事項とするか否かは、出願人自ら判断できる旨を主張するが、失当である。
平成14年法律第24号改正附則第3条第1項により、特許法第44条第2項の規定に基づいて施行前(平成15年7月1日前)にした特許出願とみなされる出願であっても改正後の特許法第36条の規定が適用されるところ、本件分割出願に対して適用がある、特許法第36条第5項は、「第二項の特許請求の範囲には、…各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。」と規定している。
そして、かかる規定の趣旨は、特許請求の範囲は、
a)特許出願人が自らの判断で特許を受けることによって保護を求める発明について記載するものであること、
b)そこに記載した事項は、特許出願人自らが「発明を特定するために必要と認める事項のすべて」と判断した事項であること、
を明確にすることであり、これにより、審査等における特許要件の判断の対象が明確になるとともに、特許後において、そこに記載した事項以外に必須の要件があるとか、記載した事項の一部は必須の要件ではないなどの主張は許されないというものである。つまり、当該規定は、特許請求の範囲の性格を明らかにするためのものにとどまり、そこに記載した発明が特許を受けることができるか否かについては、特許法における、本項以外の手続の規定又は特許要件の規定に服するものである。
してみると、特許法旧第44条第2項の規定により分割出願の出願日が遡及する効果を有する以上、分割出願の発明は原出願の出願当初明細書又は図面に記載された事項の範囲内にあることを要するのであって、特許法第36条第5項の規定を根拠に、分割出願の適法性を主張することはできないというべきであるから、被請求人の主張は理由がない。

イ.その余の主張について
被請求人は、上記1)ないし4)に関連してほかにも縷々主張するが、上記判断に影響を及ぼすものではないので、被請求人の主張には理由がない。

5)むすび
以上のとおり、削除する事項である「本件連結材」が、(ア) 本来的に技術的意義を有さないものであって、削除により新たな技術上の意義が追加されないことが明らかな場合、又は、(イ)任意の付加的事項であることが明細書等の記載から自明である場合、のいずれにも該当しない。よって、本件分割出願の際に、その特許請求の範囲から「本件連結材」を削除することは、本件原出願の明細書等に記載された事項の範囲内でするものではないから、特許法旧第44条第1項の分割要件を満たしているとは認められない。

(6)むすび
以上のとおり、本件分割出願は、特許法旧第44条第1項の分割要件を満たしているとは認められない不適法なものであるから、出願日の遡及は認められず、本件分割出願の出願日は現実の出願日となる。
そうすると、上記「[1]経緯」のとおり、本件分割出願は、平成14年9月19日に特許出願された本件原出願につき、平成18年2月8日に分割出願されたものであるから、その出願日は、平成18年2月8日となる。

2.本件特許発明の新規性又は進歩性について
(1)本件特許発明
本件特許発明1ないし5は、本件特許明細書等の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、上記「[2]本件特許発明」の請求項1ないし5に記載したとおりのものである。
なお、本件特許発明は、本件連結材に相当する事項は特定していないから、本件連結材の有無は任意のものとなり、そのため、本件特許発明には、本件連結材を備える細断機又は本件連結材を備えていない細断機のいずれをも包含すると解される。また、本件特許発明が本件連結材を備える細断機を包含することは、本件特許明細書等において、本件特許発明の実施の形態として、本件連結材に対応する連結材12を備える細断機が記載されていることからも理解できる。

(2)引用刊行物の記載事項
本件分割出願の出願前(平成18年2月8日前)に頒布された刊行物である特開2004-105863号公報(甲第2号証、以下、「引用刊行物」という。)の記載事項は、上記[5](2)に記載したとおりである。
そして、引用刊行物の記載事項並びに各図の記載によれば、引用刊行物には、次のア.?オ.に記載した発明が記載されていると認められる。

ア.「所定間隔をあけて配された左右の固定側壁9と、
両固定側壁9に回転自在に渡され、回転刃23、24を有する回転軸17と、
両固定側壁9の下側両端部に渡し止められた前後の支持軸10と、
該支持軸10夫々に揺動開閉自在に設けられた揺動側壁11と、
前記左右の固定側壁9の上部前部に渡し止められた連結材12と、
一方の揺動側壁11の内側に設けられ、前記回転刃23、24との協働により被処理物を細断する固定刃32と、
他方の揺動側壁11の内側に設けられたスクレーパー38と
を有し、
前記固定刃32とスクレーパー38との間に前記回転刃が位置するようになされ、
前記回転刃23、24は、
アーム状の粗切断用回転刃23と外周に鋸歯状の細断歯29を有する細切断用回転刃24を有し、
前記固定刃32及びスクレーパー38の下方に位置するようにして前記粗切断用回転刃23の移動軌跡空間を囲う覆い部材40が設けられ、
前記覆い部材40は、
前記一方の揺動側壁11に設けられた前側部材40aと、
前記他方の揺動側壁11に設けられた後側部材40cと、
前記前側部材40aと後側部材40cとを繋ぎ、前記前側部材40a及び後側部材40cとは別体であって、着脱自在となされた中間部材40bとを有する細断機。」(以下、「引用発明1」という。)

イ.「上記ア.の事項に加えて、
前記回転軸17の左端部の内側部に左螺旋部19が形成され、
前記回転軸17の右端部の内側部に右螺旋部20が形成され、
前記左螺旋部19及び右螺旋部20が前記固定側壁9の回転軸が嵌まる貫通孔15の内面に対向するようになした細断機。」(以下、「引用発明2」という。)

ウ.「上記ア.の事項に加えて、
前記粗切断用回転刃23には、角孔25を形成してある細断機。」(以下、「引用発明3」という。)

エ.「上記ア.の事項に加えて、
前記固定刃32及びスクレーパー38夫々は、
前記一方の揺動側壁11の内側及び他方の揺動側壁11の内側にボルト34で固定され、
該ボルト34の頭部は、
上方に凸状の曲面をなしている細断機。」(以下、「引用発明4」という。)

オ.「上記ア.の事項に加えて、
平面形状コ字状であって、平面視が相互に対向して先端側に向かって開くテーパー面47を有するロック片48と、
該ロック片48に形成された貫通孔49と、
前記固定側壁9及び揺動側壁11夫々に設けられ、前記テーパー面47に対向する傾斜面52と、
前記固定側壁9に設けられ、前記貫通孔49を通じて貫通されるねじ51をねじ嵌められるねじ孔50と
を備え、
前記ねじ51を締め付け、前記テーパー面47を傾斜面52に押し当てることにより前記揺動側壁11を固定側壁9に固定するように構成してある、細断機。」(以下、「引用発明5」という。)

(3)対比・判断
1)本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「左右の固定側壁9」が、その構成又は機能からみて、本件発明1の「1対の固定側壁」に相当する。同様に、引用発明1の「回転刃23、24」が本件発明1の「回転刃」に、「回転軸17」が「回転軸」に、「前後の支持軸10」が「1対の支持軸」に、「揺動側壁11」が「揺動側壁」に、「固定刃32」が「固定刃」に、「スクレーパー38」が「スクレーパー」に、「粗切断用回転刃23」が「粗切断用回転刃」に、「鋸歯状の細断歯29」が「鋸歯状の細断歯」に、「細切断用回転刃24」が「細切断用回転刃」に、「覆い部材40」が「覆い部材」に、「前側部材40a」が「第1側部材」に、「後側部材40c」が「第2側部材」に、「中間部材40b」が「中間部材」に、それぞれ相当する。(以下、単に「相当関係1」という。)

してみると、両者は、
「所定間隔をあけて配された1対の固定側壁と、
両固定側壁に回転自在に渡され、回転刃を有する回転軸と、
両固定側壁の下側両端部に渡し止められた1対の支持軸と、
該支持軸夫々に揺動開閉自在に設けられた揺動側壁と、
一方の揺動側壁の内側に設けられ、前記回転刃との協働により被処理物を細断する固定刃と、
他方の揺動側壁の内側に設けられたスクレーパーと
を有し、
前記固定刃とスクレーパーとの間に前記回転刃が位置するようになされ、
前記回転刃は、
アーム状の粗切断用回転刃と外周に鋸歯状の細断歯を有する細切断用回転刃を有し、
前記固定刃及びスクレーパーの下方に位置するようにして前記粗切断用回転刃の移動軌跡空間を囲う覆い部材が設けられ、
前記覆い部材は、
前記一方の揺動側壁に設けられた第1側部材と、
前記他方の揺動側壁に設けられた第2側部材と、
前記第1側部材と第2側部材とを繋ぎ、前記第1側部材及び第2側部材とは別体であって、着脱自在となされた中間部材と
を有する細断機。」の点(以下、単に「一致点」という。)で一致しており、以下の点で一応相違する。

・相違点
両固定側壁の下側両端部に渡し止められた1対の支持軸に関して、本件発明1では、回転軸と平行であるのに対して、引用発明1では、回転軸と平行であるか明らかではない点(以下、「相違点1」という。)。

そこで、上記相違点1について検討する。引用刊行物の上記(2)5)ア.段落【0006】、イ.段落【0007】、図1及び図5の記載から、支持軸10が、左右方向に配された固定側壁9の前後部下部に渡し止められていることが分かり、また、回転軸17が、固定側壁9の軸受16に左右方向に向けて渡されていることが分かる。これらから、引用刊行物には、回転軸17と支持軸10は平行であることが実質的に記載されているといえる。そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点ではないから、本件発明1は、引用発明1と実質的に同一である。
また、仮に、引用刊行物に回転軸17と支持軸10は平行であることが実質的に記載されているといえないとしても、引用刊行物の上記[5](2)5)ア.段落【0006】及び同イ.段落【0007】の記載事項並びに図1及び図5の記載に接した当業者であれば、両固定側壁の下側両端部に渡し止められた1対の支持軸に関して、引用発明1において、回転軸と平行であると特定すること、すなわち、相違点1に係る本件発明1のように構成することは、格別の創作力を要することなくなし得ることである。よって、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものである。

2)本件発明2について
本件発明2と引用発明2とを対比すると、上記相当関係1に加えて、引用発明2の「回転軸17の左端部の内側部に左螺旋部19が形成され」が、その構成又は機能からみて、本件発明2の「回転軸の一端の内側部に左螺旋部が形成され」に相当する。同様に、引用発明2の「回転軸17の右端部の内側部に右螺旋部20が形成され」が本件発明2の「回転軸の他端の内側部に右螺旋部が形成され」に、「回転軸が嵌まる貫通孔15」が「回転軸が嵌まる孔」に、それぞれ相当する。

してみると、両者は、上記一致点に加えて、
「前記回転軸の一端の内側部に左螺旋部が形成され、前記回転軸の他端の内側部に右螺旋部が形成され、前記左螺旋部及び右螺旋部が前記固定側壁の回転軸が嵌まる孔の内面に対向する」点で一致しており、上記相違点1の点で一応相違する。
そうすると、上記本件発明1と同様の理由により、本件発明2は、引用発明2と実質的に同一である、又は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明できたものである。

3)本件発明3について
本件発明3と引用発明3とを対比すると、上記相当関係1に加えて、引用発明3の「角孔25」は本件発明3の「角孔」に相当する。
してみると、両者は、上記一致点に加えて、
「前記粗切断用回転刃には、角孔を形成してある」点で一致しており、上記相違点1及び以下の点で一応相違する。

・相違点
粗切断用回転刃に形成してある角孔に関して、本件発明3では、粗切断用回転刃の側壁に形成されているのに対して、引用発明3では、側壁に形成されているのか明らかではない点(以下、「相違点2」という。)。

そこで、相違点1及び2について検討する。
まず、相違点1については、上記本件発明1と同様の理由により、実質的な相違点ではない、又は、格別の創作力を要することなくなし得ることである。
次に、相違点2について検討する。引用刊行物の上記[5](2)5)ウ.段落【0008】の記載から、粗切断用回転刃23には角孔25が形成されており、該角孔25に回転工具を嵌めて粗切断用回転刃23を手動で回転させることができることが分かり、図5と併せてみれば、角孔25は、粗切断用回転刃23の側壁に設けられていることが実質的に記載されているといえる。そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。
また、仮に、引用刊行物に、角孔25が、粗切断用回転刃23の側壁に設けられていることが実質的に記載されているといえないとしても、引用刊行物の上記[5](2)5)ウ.段落【0008】の記載事項及び図5の記載に接した当業者であれば、粗切断用回転刃に形成してある角孔に関して、引用発明3において、粗切断用回転刃の側壁に形成されていると特定すること、すなわち、相違点2に係る本件発明3のように構成することは、格別の創作力を要することなくなし得ることである。
以上のとおり、相違点2についても、実質的な相違点ではない、又は、格別の創作力を要することなくなし得ることである。
よって、本件発明3は、引用発明3と実質的に同一である、又は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明できたものである。

4)本件発明4について
本件発明4と引用発明4とを対比すると、上記相当関係1に加えて、引用発明4の「ボルト34」が、その構成又は機能からみて、本件発明4の「ボルト」に相当する。
してみると、両者は、上記一致点に加えて、
「前記固定刃及びスクレーパー夫々は、前記一方の揺動側壁の内側及び他方の揺動側壁の内側にボルトで固定され、該ボルトの頭部は、上方に凸状の曲面をなしている」点で一致しており、上記相違点1の点で一応相違する。
そうすると、上記本件発明1と同様の理由により、本件発明4は、引用発明4と実質的に同一である、又は、引用発明4に基いて当業者が容易に発明できたものである。

5)本件発明5について
本件発明5と引用発明5とを対比すると、上記相当関係1に加えて、引用発明4の「テーパー面47」が、その構成又は機能からみて、本件発明5の「テーパー面」に相当する。同様に、引用発明5の「ロック片48」が本件発明5の「ロック片」に、「貫通孔49」が「貫通孔」に、「傾斜面52」が「傾斜面」に、「ねじ51」が「螺子」に、「ねじ嵌め」が「螺子嵌め」に、「ねじ孔50」が「螺子孔」に、それぞれ相当する。
してみると、両者は、上記一致点に加えて、
「平面形状コ字状であって、平面視が相互に対向して先端側に向かって開くテーパー面を有するロック片と、該ロック片に形成された貫通孔と、前記固定側壁及び揺動側壁夫々に設けられ、前記テーパー面に対向する傾斜面と、前記固定側壁に設けられ、前記貫通孔を通じて貫通される螺子を螺子嵌められる螺子孔とを備え、前記螺子を締め付け、前記テーパー面を傾斜面に押し当てることにより前記揺動側壁を固定側壁に固定するように構成してある」点で一致しており、上記相違点1の点で一応相違する。
そうすると、上記本件発明1と同様の理由により、本件発明5は、引用発明5と実質的に同一である、又は、引用発明5に基いて当業者が容易に発明できたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件発明1ないし5は、引用刊行物に記載された発明であるから、又は、引用刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

[6]結論
以上のとおりであるから、本件特許1ないし5は、特許法第29条第1項第3号の規定、又は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件発明1ないし5の特許は無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-25 
結審通知日 2009-01-08 
審決日 2009-01-23 
出願番号 特願2006-31352(P2006-31352)
審決分類 P 1 113・ 113- Z (B02C)
P 1 113・ 121- Z (B02C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村山 禎恒  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 森藤 淳志
深澤 幹朗
登録日 2007-06-08 
登録番号 特許第3966892号(P3966892)
発明の名称 細断機  
代理人 木村 俊之  
代理人 野口 富弘  
代理人 河野 英仁  
代理人 鈴江 正二  
代理人 河野 登夫  
代理人 室谷 和彦  

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