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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1212266
審判番号 不服2008-18835  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-24 
確定日 2010-02-18 
事件の表示 特願2002-199302「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年2月12日出願公開、特開2004-41262〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成14年7月8日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成19年11月15日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成20年7月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年8月22日に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。
また、当審において、平成21年7月8日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成21年9月11日に回答書が提出されている。

第二.平成20年8月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年8月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)は次のとおりである。
「 固定記憶領域たるROMから、下位8ビットが0で16ビット長の基端アドレスから開始されるRAM作業領域に転送されて使用される8ビット長の動作情報と、前記動作情報の転送先を規定する、前記基端アドレスからの相対アドレス値である8ビット長の下位アドレス情報とで一対とされ、この一対16ビット長の情報を、8ビット長の識別データで特定される個数Nだけ、前記識別データと共に前記ROMに記憶して構成され、記憶されたデータの合計が(2×N+1)×8ビットであるデータセットテーブルと、
前記データセットテーブルの一群の動作情報を、各動作情報に対応する前記下位アドレス情報と前記基端アドレスの上位アドレス情報とを結合して規定される、前記動作情報ごとの転送先に、まとめて転送する転送処理を含んだ制御プログラムと、を備える遊技機であって、
同種の前記データセットテーブルが複数個設けられ、前記転送処理は、複数個のデータセットテーブルの何れかの先頭アドレスを特定して実行を開始されるよう構成され、
前記動作情報は、遊技制御動作の進行と共に変化して、その時の遊技機の動作状態を特定する、フラグ、動作ステイタス、カウンタ、及びタイマの全部又はその一部についての設定値であることを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正によって追加又は変更された箇所)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である、
(i)「データセットテーブル」の「固定記憶領域」を「ROM」に限定し、
(ii)「作業領域」を「下位8ビットが0で16ビット長の基端アドレスから開始されるRAM」に限定し、
(iii)「データセットテーブル」の「固定記憶領域」に記憶される「動作情報」、「転送先を特定するアドレス情報」及び「識別データ」について、各々「8ビット長の動作情報」、「転送先を規定する、前記基端アドレスからの相対アドレス値である8ビット長の下位アドレス情報」及び「8ビット長の識別データ」に限定し、動作情報とアドレス情報とで一対とされる「一対の情報」を「一対16ビット長の情報」に限定し、
(iv)「識別データで特定される個数」を「識別データで特定される個数N」に限定し、
(v)「データセットテーブル」の「固定記憶領域」に記憶する「動作情報」、「アドレス情報」及び「識別データ」の情報量について、「記憶されたデータの合計が(2×N+1)×8ビットである」と限定し、
(vi)複数個の「データセットテーブル」が同種のものであることを限定し、
さらに、それら「データセットテーブル」の「先頭番地」を「先頭アドレス」と言い換える補正である。
してみると、前記各補正は、補正前の各発明特定事項を限定する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-85774号公報(以下「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
【0020】【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。・・
【0041】基本回路53は、ゲーム制御用のプログラム等を記憶するROM54、ワークメモリとして使用される記憶手段の一例であるRAM55、プログラムに従って制御動作を行うCPU56およびI/Oポート部57を含む。この実施の形態では、ROM54,RAM55はCPU56に内蔵されている。・・・
【0123】図15は、この実施の形態でのROM54のアドレスマップを示す説明図である。図15に示す例では、0000(H)番地からプログラム領域が割り当てられている。また、1000(H)番地?1FFF(H)番地に制御用データ領域が割り当てられている。
【0127】制御用データ領域において、内蔵デバイスレジスタの初期設定のためのデータ(ステップS4,S5で使用するデータ)の次には、作業領域,ワークエリア設定テーブルが格納されている。作業領域,ワークエリア設定テーブルは、CPU56が遊技制御の実行中に使用する作業領域,ワークエリア(RAM)の初期値および遊技進行中の各状態における作業領域の設定値を設定するためのテーブルであり、作業領域,ワークエリアのアドレスと設定されるべき値とが格納されている。CPU56は、例えば、メイン処理のステップS11で、所定の汎用レジスタ(HLレジスタ等)に作業領域,ワークエリア設定テーブルのアドレスを設定し、HLレジスタ等の内容が指すアドレスのデータ(作業領域,ワークエリアの初期値)を順次ロードして、作業領域,ワークエリアに初期値を設定する。また、ステップS25(特別図柄プロセス処理)で、遊技状態の変化(例えば、図柄変動中状態から大入賞口開放状態への変化)が生じたときに、作業領域,ワークエリアに設定されている値を用いて、作業領域の値を設定する。
【0132】以上のように、内蔵デバイスのレジスタの初期設定のためのデータ、およびCPU56が制御プログラムを実行する際に使用するワークエリアの初期設定のためのデータは、制御用データ領域の前部に格納されている。・・・
【0133】また、作業領域,ワークエリア設定テーブルも、制御用データ領域の前部に格納されている。すなわち、マイクロコンピュータが制御プログラムを実行する際に使用する作業領域,ワークエリアの初期設定のためのデータは、複数の機種間で共通に使用される可能性が高いので、記憶領域における前部に配置される。

なお、段落【0127】では「ワークエリア(RAM)の初期値および遊技進行中の各状態における作業領域の設定値」、「設定されるべき値」及び「データ(作業領域,ワークエリアの初期値)」が同様の意味で用いられているので、本審決では、統一して「設定値及び初期値」ということとする。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 ROM54にプログラム領域と、制御用データ領域が割り当てられ、作業領域,ワークエリアのアドレスと設定値及び初期値が格納されている、作業領域,ワークエリア設定テーブルが、前記制御用データ領域に格納され、
CPU56が制御プログラムを実行する際に使用する前記作業領域,ワークエリアに、前記作業領域,ワークエリア設定テーブルの設定値及び初期値を順次ロードして設定する基本回路53を備えるパチンコ遊技機であって、
前記CPU56は、所定の汎用レジスタに前記作業領域,ワークエリア設定テーブルのアドレスを設定し、前記所定の汎用レジスタの内容が指すアドレスの設定値及び初期値を順次ロードしており、
前記設定値は遊技進行中の各状態における作業領域に対して設定されるものであるパチンコ遊技機。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「ROM54」は、本願補正発明の「固定記憶領域たるROM」に対応し、以下同様に、
「作業領域,ワークエリア」は「RAM作業領域」に、
「作業領域,ワークエリア設定テーブル」は「データセットテーブル」に、
「パチンコ遊技機」は「遊技機」に各々対応する。
さらに、引用文献の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明の「設定値及び初期値」は、「ROM54」から「作業領域,ワークエリア」にロードされるものであるから、「ROM54」から「作業領域,ワークエリア」に転送されて使用されることが明らかである。
よって、本願補正発明の「RAM作業領域に転送されて使用される8ビット長の動作情報」と引用発明の「設定値及び初期値」は、“ROMから、RAM作業領域に転送されて使用される作業情報”の点で共通している。

b.引用発明の「作業領域,ワークエリアのアドレス」が「設定値及び初期値」のロードされる場所を規定する情報であることは明らかであるから、上記a.で述べた事項を考え合わせると、本願補正発明の「動作情報の転送先を規定する、前記基端アドレスからの相対アドレス値である8ビット長の下位アドレス情報」と引用発明の「作業領域,ワークエリアのアドレス」とは“作業情報の転送先を規定する、アドレス情報”である点で共通している。
また、引用発明の「作業領域,ワークエリア設定テーブル」には、「作業領域,ワークエリアのアドレスと設定値及び初期値が格納されている」から、本願補正発明と引用発明は、“作業情報とアドレス情報とで一対とされ”ている点でも共通している。
さらに、テーブルである以上、その一対の情報を複数個備えることを想定していることは明らかであるから、本願補正発明と引用発明は、“一対の情報を、個数Nだけ、前記ROMに記憶して構成され”ている点でも共通している。

c.引用発明の「制御プログラム」の実行によって、「作業領域,ワークエリアに、前記作業領域,ワークエリア設定テーブルの設定値及び初期値を順次ロードして設定」することとなるところ、順次ロードして設定するということは、まとめて転送する転送処理を行うことに相当し、そのロードされる場所は「作業領域,ワークエリアのアドレス」によって「設定値及び初期値」ごとに規定されているといえるから、上記a.b.で述べたことを考え合わせると、本願補正発明と引用発明とは“データセットテーブルの一群の作業情報を、各作業情報に対応するアドレス情報で規定される、前記作業情報ごとの転送先に、まとめて転送する転送処理を含んだ制御プログラムを備える”点で共通している。

d.引用発明の「CPU56」が「所定の汎用レジスタに前記作業領域,ワークエリア設定テーブルのアドレスを設定」することは、「作業領域,ワークエリア設定テーブル」が格納されている制御用データ領域におけるアドレスを特定することにほかならず、「前記所定の汎用レジスタの内容が指すアドレスの設定値及び初期値を順次ロード」することは「設定値及び初期値」の転送処理を実行することに相当するから、本願補正発明と引用発明とは“転送処理は、データセットテーブルの何れかのアドレスを特定して実行されるよう構成され”ている点で共通している。

e.引用発明において「設定値は遊技進行中の各状態における作業領域に対して設定されるものである」から、本願補正発明の「設定値」と“遊技制御動作の進行と共に変化して、その時の遊技機の動作状態を特定する”ものである点では共通しているといえる。

以上を総合すると、両者は、
「 固定記憶領域たるROMから、RAM作業領域に転送されて使用される作業情報と、
前記作業情報の転送先を規定する、アドレス情報とで一対とされ、この一対の情報を、個数Nだけ、前記ROMに記憶して構成されるデータセットテーブルと、
前記データセットテーブルの一群の作業情報を、各作業情報に対応するアドレス情報で規定される、前記作業情報ごとの転送先に、まとめて転送する転送処理を含んだ制御プログラムと、を備える遊技機であって、
前記転送処理は、データセットテーブルの何れかのアドレスを特定して実行されるよう構成され、
前記作業情報は、遊技制御動作の進行と共に変化して、その時の遊技機の動作状態を特定する設定値である遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明の「データセットテーブル」は「基端アドレスからの相対アドレス値である8ビット長の下位アドレス情報」を有し、「動作情報」が「下位8ビットが0で16ビット長の基端アドレスから開始されるRAM作業領域に転送」され、「一群の動作情報」が「各動作情報に対応する前記下位アドレス情報と前記基端アドレスの上位アドレス情報とを結合して規定される、前記動作情報ごとの転送先に、まとめて転送」されるのに対し、引用発明においては、「設定値及び初期値」が、対応するアドレスの作業領域,ワークエリアに順次ロードされるものの、そのアドレスがどのように規定されているか明らかでない点。

[相違点2]本願補正発明の「データセットテーブル」は「一対16ビット長の情報を、8ビット長の識別データで特定される個数Nだけ、前記識別データと共に前記ROMに記憶して構成され、記憶されたデータの合計が(2×N+1)×8ビットである」のに対し、引用発明の「作業領域,ワークエリア設定テーブル」は、格納されている「アドレスと設定値及び初期値」の個数Nを特定する8ビット長の識別データを有さず、データの合計ビット数も明らかでない点。

[相違点3]本願補正発明は「同種の前記データセットテーブルが複数個設けられ」ているのに対し、引用発明の「作業領域,ワークエリア設定テーブル」はどのような構成か明らかでない点。

[相違点4]転送処理に関して、本願補正発明は「複数個のデータセットテーブルの何れかの先頭アドレスを特定して実行を開始」するのに対し、引用発明は「作業領域,ワークエリア設定テーブルのアドレスを設定」して実行するものであって、「作業領域,ワークエリア設定テーブル」の先頭アドレスを特定し、そこから実行を開始するものではない点。

[相違点5]作業情報に関して、本願補正発明は「設定値」が「フラグ、動作ステイタス、カウンタ、及びタイマの全部又はその一部についての」ものであるのに対し、引用発明の「設定値」は何についてのものであるか明らかでない点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
遊技機の分野において、各種情報のデータ長を8ビットとすることは、例を挙げるまでもなく従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるとともに、アドレス情報を上位アドレスと下位アドレスに分けることも、例えば、特開平4-239354号公報(特に、段落【0012】)や特開平1-309133号公報(特に、第2頁右下欄第5?18行)に記載されるように、情報処理分野における従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
また、引用文献の段落【0119】に、主基板31から各電気部品制御手段に送出される制御コマンドのコマンド形態についての説明ではあるが、「図14(B)は、各電気部品制御手段に対する制御コマンドを構成する8ビットの制御信号CD0?CD7とINT信号との関係を示すタイミング図である。」と記載され、同じく段落【0096】に、内蔵デバイスからの割込要求を処理する割込モード2についての説明ではあるが、「CPU56の特定レジスタ(Iレジスタ)の値(1バイト)と内蔵デバイスが出力する割込ベクタ(1バイト:最下位ビット0)から合成されるアドレスが、割込番地を示すモードである。すなわち、割込番地は、上位アドレスが特定レジスタの値とされ下位アドレスが割込ベクタとされた2バイトで示されるアドレスである。」と記載されていることからみても、引用発明の「作業領域,ワークエリアのアドレス」に関する情報を、それぞれ8ビット長の上位アドレス情報と下位アドレス情報に分け、「作業領域,ワークエリア設定テーブル」には「下位アドレス情報」のみを格納するとともに、上位アドレス情報と下位アドレス情報とを結合して「設定値及び初期値」のロードされる「作業領域,ワークエリア」における場所を規定するようにして、相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得る。

[相違点2について]
N個の情報を同じ手順で転送するに際して、まずその処理数をセットし、そのセットされた回数分転送処理を繰り返して行うようにすることは、例を挙げるまでもなく、情報処理分野における従来周知の技術(以下「周知技術3」という。)である。
また、引用文献の段落【0143】及び【0144】に、全ての出力ポートにクリアデータを設定するための処理についての説明ではあるが、「CPU56は、クリアデータ(00)を適当なレジスタにセットし(ステップS71)、処理数(この例では「7」)を別のレジスタにセットする(ステップS72)。また、出力ポート0のアドレスをIOポインタに設定する(ステップS73)。・・・なお、処理数「7」はI/Oポートの数に相当する。」及び「そして、IOポインタが指すアドレスにクリアデータをセットするとともに(ステップS74)、IOポインタの値を1増やし(ステップS75)、処理数の値を1減算する(ステップS77)。ステップS74?S76の処理が、処理数の値が0になるまで繰り返される。」と記載されていることからみても、引用発明において、「作業領域,ワークエリアに、前記作業領域,ワークエリア設定テーブルの設定値及び初期値を順次ロードして設定する」に際して、ロードする「設定値及び初期値」の個数Nをセットし、そのセットされた回数分ロード処理を繰り返して行うようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、そのような処理を行うに際して、「作業領域,ワークエリア設定テーブル」に「設定値及び初期値」の個数Nを特定するための8ビット長の情報を設けることは、ごく普通に行われることであり、上記[相違点1について]の項で述べたように、「作業領域,ワークエリア設定テーブル」に8ビットの「下位アドレス」及び「設定値及び初期値」を格納すれば、作業領域,ワークエリア設定テーブルには、8ビット+N×(8ビット+8ビット)、すなわち(2×N+1)×8ビットのデータが格納されることとなるから、結局、相違点2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることということができる。

[相違点3及び4について]
相違点3及び4は、互いに密接に関連しているので合わせて検討する。
情報処理分野において、複数群の情報を記憶する際に、群毎に一連のアドレス領域を用いることは、例を挙げるまでもなく従来周知の技術(以下「周知技術4」という。)である。
そして、引用発明の「設定値」は、「遊技進行中の各状態における作業領域に対して設定」、すなわち該各状態において必要な情報として作業領域にロードされるものであるから、引用発明の「設定値」に関する情報を、遊技進行中の状態別に区別して複数の群とし、群毎に一連のアドレス領域を用いてROM54の制御用データ領域に格納するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、そのようにした場合、「作業領域,ワークエリア」への「設定値」のロード処理は同様の処理によって行われることから、同種の「作業領域,ワークエリア設定テーブル」が複数個格納されることとなるのは当然である。
さらに、「設定値」を順次ロードするに際して、上記[相違点2について]の項で述べたように、ロードする「設定値及び初期値」の個数Nをセットし、そのセットされた回数分ロード処理を繰り返して行うようにするならば、利用する「作業領域,ワークエリア設定テーブル」の先頭アドレスを設定して、ロード処理を開始することとなるのは明らかであるから、結局、相違点3及び4に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることということができる。

[相違点5について]
遊技機の分野において、各種フラグ、動作ステイタス、カウンタ及びタイマについての情報を用いて遊技機の制御を行うことは、例を挙げるまでもなく従来周知の技術(以下「周知技術5」という。)である。
また、引用発明の「設定値」は「遊技進行中の各状態における作業領域に対して設定されるものである」こと、引用文献の段落【0102】に、「初期化処理では、CPU56は、まず、RAMクリア処理を行う(ステップS11)。また、所定の作業領域(例えば、普通図柄判定用乱数カウンタ、普通図柄判定用バッファ、特別図柄左中右図柄バッファ、払出コマンド格納ポインタなど)に初期値を設定する初期値設定処理も行われる。」と記載されていること、及び同じく段落【0109】に、「CPU56は、特別図柄プロセス処理を行う(ステップS25)。特別図柄プロセス制御では、遊技状態に応じてパチンコ遊技機1を所定の順序で制御するための特別図柄プロセスフラグに従って該当する処理が選び出されて実行される。」と記載されていること等を考え合わせると、引用発明の「設定値」を各種フラグ、動作ステイタス、カウンタ及びタイマの全部又はその一部についての情報として、相違点5に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

(4)まとめ
以上のように相違点1?5は、いずれも当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献記載の事項及び周知技術1?5に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明、引用文献記載の事項及び周知技術1?5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成20年8月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年11月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 固定記憶領域から作業領域に転送されて使用される動作情報と、前記動作情報の転送先を特定するアドレス情報とで一対とされ、このような一対の情報を識別データによって特定される個数だけ固定記憶領域に記憶するデータセットテーブルと、
前記データセットテーブルの一群の動作情報を、作業領域にまとめて転送する転送処理を含んだ制御プログラムと、を備える遊技機であって、
前記データセットテーブルが複数個設けられ、前記転送処理は、複数個のデータセットテーブルの何れかの先頭番地を特定して実行を開始されるよう構成され、
前記動作情報は、遊技制御動作の進行と共に変化して、その時の遊技機の動作状態を特定する、フラグ、動作ステイタス、カウンタ、及びタイマの全部又はその一部についての設定値であることを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比及び判断
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、
(i)「データセットテーブル」の「固定記憶領域たるROM」から「ROM」の構成を省き、
(ii)「下位8ビットが0で16ビット長の基端アドレスから開始されるRAM作業領域」から「下位8ビットが0で16ビット長の基端アドレスから開始されるRAM」の構成を省き、
(iii)「データセットテーブル」の「ROM」に記憶される「動作情報」、「転送先を規定するアドレス情報」、「識別データ」及び「一対の情報」について、各々の限定事項である「8ビット長」、「前記基端アドレスからの相対アドレス値である8ビット長の下位」、「8ビット長」及び「16ビット長」を省き、
(iv)「識別データで特定される個数N」から「N」を省き、
(v)「データセットテーブル」の「ROM」に記憶する「動作情報」、「アドレス情報」及び「識別データ」の情報量についての限定事項である「記憶されたデータの合計が(2×N+1)×8ビットである」を省き、
(vi) 複数個の「データセットテーブル」が同種のものであるという限定事項を省き、
さらに、それら「データセットテーブル」の「先頭アドレス」を「先頭番地」と言い換える補正である。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献記載の事項及び周知技術1?5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献記載の事項及び周知技術1?5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献記載の事項及び周知技術1?5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2?5)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-17 
結審通知日 2009-12-22 
審決日 2010-01-06 
出願番号 特願2002-199302(P2002-199302)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順高橋 三成  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 井上 昌宏
吉村 尚
発明の名称 遊技機  
代理人 野中 誠一  

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