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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1213714
審判番号 不服2008-20662  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-12 
確定日 2010-03-18 
事件の表示 特願2003-276002「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年2月10日出願公開、特開2005-34480〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【手続の経緯】
本願は、平成15年7月17日の出願であって、手続きの概要は、次のとおりである。
平成18年 6月16日 :審査請求、手続補正書提出
平成20年 5月 7日起案:拒絶理由通知(発送日は同年同月13日)
平成20年 6月23日 :意見書、手続補正書提出
平成20年 7月11日起案:拒絶査定(発送日は同年同月15日)
平成20年 8月12日 :審判請求
平成20年 9月11日 :手続補正書提出
(審判請求書、特許請求の範囲、明細書)
平成20年 9月26日起案:前置報告
平成21年 7月 8日起案:前置審尋(発送日は同年同月14日)
平成21年 8月25日 :前置審尋に対する審判請求人からの回答

【平成20年9月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定】
【補正の却下の決定の結論】
平成20年9月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

【補正の却下の決定の理由】
【本件補正の内容】
本件補正は、本件補正前であって、拒絶査定時に審査の対象となった、平成20年6月23日に提出された手続補正書に記載の特許請求の範囲及び明細書について、それらの請求項1?4のうち、請求項1、2を削除し、請求項3、4を、新たに請求項1、2に繰り上げると共に、出願当初の開示範囲内で限定事項を一部付加し、これらの請求項の補正に対応させるべく、発明の詳細な説明を一部補正するものである。

特許請求の範囲についての補正は、次のとおりである。

(本件補正前、平成20年6月23日付け手続補正の内容)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技用の操作部の操作に基づいて図柄の変動が開始および停止する複数の図柄の表示部と、遊技球貯留皿に貯留した遊技球を取り込む球取込装置と、遊技の帰趨に応じて上記遊技球貯留皿に賞球として遊技球を払い出す賞球払出装置と、予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を許容し、図柄の変動と遊技球の取り込みおよび払い出しとを司る制御装置とを有する遊技機において、
上記操作部には上記遊技球貯留皿から遊技球を取り込むときに操作する自動投入操作手段を設け、
上記球取込装置を、遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備する構成とし、
上記制御装置を、上記遊技球送出手段を連続作動せしめるとともに、遊技球の取り込み数が所定回数の遊技に必要な単位球数になるごとに、遊技可能な回数を上記所定回数ずつ加算し記憶するようなし、
かつ上記記憶される遊技可能な回数には最大値を設定し、
上記自動投入操作手段の操作により、上記球取込装置が上記遊技可能な回数の最大値を目標とする遊技球の取り込み作動を行い、
上記賞球払出装置により遊技球を上記遊技球貯留皿へ送出する賞球の払い出し速度を上記球取込装置により遊技球を遊技球貯留皿から取り込む取り込み速度以上に設定し、
賞球払出装置の賞球払い出しにより上記遊技球貯留皿が満タンとなったときに、賞球払出装置を停止し、これにより未払いとなった賞球の数を未払い賞球数として記憶するようになしたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
請求項1に記載の遊技機において、
上記球取込装置はモータで駆動する上記遊技球送出手段を具備し、
上記賞球払出装置は、モータで駆動して遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備して上記球取込装置と同一の構成となし、
上記球取込装置の遊技球送出手段および上記賞球払出装置の遊技球送出手段の両モータの回転速度を合わせて、球取込装置による上記取り込み速度と賞球払出装置による上記賞球の払い出し速度とを同一速度に設定した遊技機。
【請求項3】
遊技用の操作部の操作に基づいて図柄の変動が開始および停止する複数の図柄の表示部と、遊技球貯留皿に貯留した遊技球を取り込む球取込装置と、遊技の帰趨に応じて上記遊技球貯留皿に賞球として遊技球を払い出す賞球払出装置と、予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を許容し、図柄の変動と遊技球の取り込みおよび払い出しとを司る制御装置とを有する遊技機において、
上記操作部には上記遊技球貯留皿から遊技球を取り込むときに操作する自動投入操作手段を設け、
上記球取込装置を、遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備する構成とし、
上記制御装置を、上記遊技球送出手段を連続作動せしめるとともに、遊技球の取り込み数が所定回数の遊技に必要な単位球数になるごとに、遊技可能な回数を上記所定回数ずつ加算し記憶するようなし、
かつ上記記憶される遊技可能な回数には最大値を設定し、
上記自動投入操作手段の操作により、上記球取込装置が上記遊技可能な回数の最大値を目標とする遊技球の取り込み作動を行い、
上記賞球払出装置の賞球払い出しにより上記遊技球貯留皿が満タンとなったときに、賞球払出装置を停止し、これにより未払いとなった賞球の数を未払い賞球数として記憶するようになし、
上記記憶された遊技可能な回数が上記最大値に満たない場合には、上記未払い賞球数を減算してその分、上記遊技可能な回数に割当てるようになしたことを特徴とする遊技機。
【請求項4】
請求項3に記載の遊技機において、
上記賞球払出装置により遊技球を上記遊技球貯留皿へ送出する賞球の払い出し速度を上記球取込装置により遊技球を遊技球貯留皿から取り込む取込み速度以上に設定した遊技機。

(本件補正後、平成20年9月11日付け手続補正の内容)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技用の操作部の操作に基づいて図柄の変動が開始および停止する複数の図柄の表示部と、遊技球貯留皿に貯留した遊技球を取り込む球取込装置と、遊技の帰趨に応じて上記遊技球貯留皿に賞球として遊技球を払い出す賞球払出装置と、予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を許容し、図柄の変動と遊技球の取り込みおよび払い出しとを司る制御装置とを有する遊技機において、
上記操作部には上記遊技球貯留皿から遊技球を取り込むときに操作する自動投入操作手段を設け、
上記球取込装置を、遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備する構成とし、
上記制御装置を、上記遊技球送出手段を連続作動せしめるとともに、遊技球の取り込み数が所定回数の遊技に必要な単位球数になるごとに、遊技可能な回数を上記所定回数ずつ加算し記憶するようなし、
かつ上記記憶される遊技可能な回数には最大値を設定し、
上記自動投入操作手段の操作により、上記球取込装置が上記遊技可能な回数の最大値を目標とする遊技球の取り込み作動を行い、
上記賞球払出装置の賞球払い出しにより上記遊技球貯留皿が満タンとなったときに、賞球払出装置を停止し、未払いとなった賞球の数を未払い賞球数として記憶して遊技続行を可能となし、
上記記憶された遊技可能な回数が上記最大値に満たない場合には、上記未払い賞球数を減算してその分、上記遊技可能な回数に割当てるようになしたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
請求項1に記載の遊技機において、
上記賞球払出装置により遊技球を上記遊技球貯留皿へ送出する賞球の払い出し速度を上記球取込装置により遊技球を遊技球貯留皿から取り込む取込み速度以上に設定した遊技機。

【本件補正の目的について】
上記本件補正内容から観て、本件補正は、請求項の削除、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1、2号の規定に合致する。

【独立特許要件について:発明の容易想到性】
そこで、本件補正後の請求項1、2に記載された両発明が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)ついて、以下に検討する。
なお、本件補正後の請求項1に記載された発明を本願補正発明1、本件補正後の請求項2に記載された発明を本願補正発明2と称する。

【引用刊行物の記載事項】
原査定の拒絶理由に引用された刊行物である、特開2003-126352号公報(以下、引用刊行物という)には、次のことが記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技球を用いて1ゲームに対して賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、表示状態を変化させることが可能な可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果に応じて所定の入賞が発生可能な遊技球を用いたスロットマシンにおいて、
遊技球の取込を行う遊技球取込手段と、
前記遊技球取込手段に供給される遊技球が待機する遊技球待機部と、
前記遊技球取込手段により取り込まれた遊技球に応じて遊技者が所有する有価価値の大きさが蓄積される有価価値蓄積手段と、を備え、
該有価価値蓄積手段に蓄積可能な有価価値の大きさには所定の上限値が定められており、
前記遊技球取込手段は、所定条件の成立により前記遊技球待機部に遊技球が待機しているか否かに関わらず取込動作を開始し、該取込動作を前記有価価値蓄積手段に蓄積された有価価値の大きさが前記所定の上限値となるまで継続して行うとともに、前記所定条件の成立中に前記有価価値蓄積手段に蓄積された有価価値の大きさが消費されて減少した場合には、該減少した有価価値の大きさに応じた遊技球の自動取込動作を行うことを特徴とする遊技球を用いたスロットマシン。
【請求項2】
遊技球の自動取込動作を設定する際に操作される自動取込動作設定手段を備え、該自動取込動作設定手段の操作により前記所定条件が成立する請求項1に記載の遊技球を用いたスロットマシン。
【請求項3】
前記ゲームを実施可能に起動されることにより前記所定条件が成立する請求項1または2に記載の遊技球を用いたスロットマシン。
【請求項4】
遊技球の払出を行う遊技球払出手段を備え、該遊技球払出手段は、遊技球が供給されているか否かに関わらず遊技球の払出動作を行う請求項1?3のいずれかに記載の遊技球を用いたスロットマシン。
【請求項5】
前記ゲームの進行を制御するメイン制御手段と、電源断時におけるゲーム状態を保持可能なゲーム状態保持手段と、を備え、前記メイン制御手段は電源復旧時に前記ゲーム状態保持手段に保持されているゲーム状態に復帰させるための処理を行う請求項1?4のいずれかに記載の遊技球を用いたスロットマシン。
【請求項6】
前記ゲームの進行を制御するメイン制御手段と、該メイン制御手段とは別個に設けられたサブ制御手段と、を備え、前記サブ制御手段は、前記遊技球取込手段及び/または遊技球払出手段の制御を行う請求項1?5のいずれかに記載の遊技球を用いたスロットマシン。
【請求項7】
前記有価価値蓄積手段に蓄積された有価価値の大きさを精算する際に操作される精算指示手段と、遊技球が返却される遊技球返却部と、前記遊技球待機部に待機する遊技球を前記遊技球返却部に返却させる際に操作される返却指示手段と、を備え、前記精算指示手段と前記返却指示手段とが共通の指示手段にて兼用されている請求項1?6のいずれかに記載の遊技球を用いたスロットマシン。
【請求項8】
遊技球が返却される遊技球返却部と、前記遊技球待機部に待機する遊技球を前記遊技球返却部に返却させる際に操作される返却指示手段と、を備え、前記遊技球取込手段は前記遊技球待機部に待機する遊技球を前記遊技球返却部に返却させる返却動作を行うことが可能とされており、該遊技球取込手段は、前記返却指示手段が操作された場合に前記返却動作を行う請求項1?7のいずれかに記載の遊技球を用いたスロットマシン。
【請求項9】
前記遊技球返却部に返却される遊技球を検出する返却遊技球検出手段を備え、該返却遊技球検出手段による遊技球の検出状況に応じて前記返却動作を停止する請求項8に記載の遊技球を用いたスロットマシン。
【請求項10】
前記遊技球取込手段により取込可能な遊技球を検出する遊技球検出手段を備え、該遊技球検出手段が1球以上の遊技球を検出している状態で前記所定条件が成立した場合に、前記遊技球取込手段は取込動作を開始する請求項1?9のいずれかに記載の遊技球を用いたスロットマシン。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遊技媒体を使用してゲームを行うスロットマシンに関し、特にはパチンコ球等の遊技球を使用してゲームを行うことが可能なスロットマシンに関する。
・・・
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明の実施例を図面を用いて説明すると、図1は、本発明が適用された遊技機の一例であるパチンコ球を用いて賭数を設定して遊技を行う遊技球を用いたスロットマシン1並びに該スロットマシン1に並設されて使用されるカードユニット800の正面図、図2はスロットマシン1並びにカードユニット800の裏面図である。スロットマシン1は、前後面が開口する枠体4と、この枠体4の側端に回動自在に枢支された前面扉2とから構成されており、前面扉2の裏面に設けられた施錠装置(図示略)の鍵穴3aに挿入した所定のキーを時計回り方向に回動操作することにより施錠が解除されて前面扉2を開放することができるようになっている。
【0020】
前面扉2の前面上部には遊技効果ランプ部41、入賞図柄説明パネル5、遊技に関連する演出が行われる液晶表示部15がそれぞれ設けられており、中央部には、遊技パネル6や各種表示部が設けられている。また、遊技パネル6の下方にはゲームに使用する遊技球としてのパチンコ球を載置(待機)可能な遊技球待機部としての上皿7が突設されており、この上皿7の上面7a並びに前面7bには、各種操作ボタン36a、36b、37a、37b、40L、40C、40R、302a、302b並びにスタートレバー38、度数表示部301等が設けられている。また、前面扉2の左右側並びに上皿7の左右部には、遊技効果ランプ部42?44がそれぞれ設けられている。また、前面扉2の前面下部には上皿7からオーバーフローしたパチンコ球を貯留可能な遊技球返却部としての下皿11が突設されており、この下皿11の前面には、該下皿11に貯留されたパチンコ球を外部に排出するための返却レバー16が設けられている。
・・・
【0026】
クレジット表示部31は、内部に設けられたクレジット表示器109(図6参照)の該当するセグメントが点灯してクレジット数が表示される表示部である。クレジット数とは、遊技者所有の有価価値としてスロットマシン1内部の記憶部(後述するRAM212(図7参照)に設定された有価価値蓄積手段としてのクレジット球カウンタ)に記憶されているパチンコ球(クレジット球)数に相当するBET数(1BET(最小単位の賭数設定に必要なパチンコ球数)=クレジット球数/5)であり、入賞の発生による賞球の付与や上皿7に載置されているパチンコ球の取込に基づいてクレジット球数が加算更新されたり、賭数の設定や精算操作によるパチンコ球の払出に基づいてクレジット球数が減算更新されることにより、クレジット表示部31のクレジット数も表示更新される。このスロットマシン1では、クレジット球数として記憶可能な価値の上限値が最大で250球分(50BET分)とされており、この上限値に達した場合で、かつ上限値を越えるクレジット球数の加算更新の要求が発生した場合にはその上限を越える球数のパチンコ球が上皿7に払い出される。
・・・
【0029】
上皿7の上面7aの右側には、遊技球取込指示手段としての1BETボタン36a、MAXBETボタン36bがそれぞれ設けられているとともに、左側には共通指示手段(精算指示手段並びに返却指示手段)としての精算ボタン37a、自動取込動作設定手段としての自動クレジットボタン37bが設けられている。
・・・
【0032】
自動クレジットボタン37bは、自動クレジットモードの設定/解除を行う際に押圧するボタンであり、自動クレジットモードが設定されていない状態でこの自動クレジットボタン37bが押圧操作されると、自動クレジットモードが設定され、クレジット球カウンタのクレジット球数が上限値である250球に到達するまで上皿7に載置されているパチンコ球が自動的に取り込まれてクレジット球カウンタのクレジット球数に加算されるとともに、自動クレジットモードが設定されている状態でこの自動クレジットボタン37bが押圧操作されると、自動クレジットモードが解除されるようになっている。自動クレジットボタン37bの内部には自動クレジットボタンランプ124が内蔵されており(図6参照)、自動クレジットボタンランプ124は、自動クレジットモードが設定されている場合に点灯し、自動クレジットモードが解除されている場合に消灯する。
【0033】
上皿7の前面7bには、スタートレバー38、ストップボタン40L、40C、40R、度数表示部301、球貸ボタン302a、返却ボタン302bがそれぞれ設けられている。スタートレバー38は、ゲームを開始する際に操作するレバーであり、賭数の設定終了後においてスタートレバー38を操作することにより各リール51L、51C、51Rの回転が開始される。
【0034】
各ストップボタン40L、40C、40Rは、ゲームが開始した後にリール51L、51C、51Rの回転を停止させる際に操作するボタンであり、ストップボタン40Lの内部には操作有効ランプ122Lが、ストップボタン40Cの内部には操作有効ランプ122Cが、ストップボタン40Rの内部には操作有効ランプ122Rが内蔵されている(図6参照)。これら操作有効ランプ122L、122C、122Rは、対応するストップボタン40L、40C、40Rの操作が有効である場合に点灯し、操作が無効である場合に消灯する。また、ストップボタン40L、40C、40Rが配列されたストップボタンユニット39は、BB入賞やRB入賞の内部当選フラグが設定されている場合に、その内部に内蔵されたボーナス告知ランプ120(図6参照)が点灯する。
・・・
【0038】
また、図4(a)?(c)に示すように、取込準備球通路710の各条に対応して球切り用のスプロケット706が設けられている。このスプロケット706の外周には3カ所の切欠(図4(b)参照)が形成されており、これらスプロケット706が取込モータ701の駆動により回転されることで切欠内に入り込んだパチンコ球が1球ずつ下方に排出されるようになっている。また、各条に対応したスプロケット706は切欠の位置が互いにずれるように配置されており、双方のスプロケット706が同期回転することで交互にパチンコ球が排出されるようになっている。
【0039】
これらスプロケット706の下方には、振分ソレノイド702の励磁または解除により揺動し、前記スプロケット706の回転により排出されたパチンコ球の流下通路を、後述する取込球誘導通路708または返却球誘導通路709のいずれか一方に切り替えるための流路切替弁707が設けられている。また取込球誘導通路708に繋がる排出口には賭数設定のために内部に取り込まれたパチンコ球の通過を検出するための取込球検出手段としての取込球検出スイッチ704が設けられているとともに、返却球誘導通路709に繋がる排出口には後述する返却球流下通路509を介して下皿11に排出されるパチンコ球の通過を検出するための返却遊技球検出手段としての返却球検出スイッチ705が設けられている。
・・・
【0041】
図2に示すように、枠体4内略中央部には、複数種の図柄、本実施例では「7」、「BAR」、「スイカ」、「チェリー」、「ベル」、「プラム」からなる図柄が印刷された透光性を有する帯状のリールシートが外周に巻回されたリール51L、51C、51R(ゲームの進行を実行するために用いるゲーム用リール)を有する可変表示装置50が設けられている。それぞれのリール51L、51C、51Rは、各々に対応して設けられたステッピングモータからなるリールモータ54L、54C、54Rによりそれぞれ独立して縦方向に回転(駆動)、停止するように構成されており、各リール51L、51C、51Rが回転することにより、表示窓14には前記各種図柄が連続的に変化しつつ表示されるようになっている。尚、本実施例では可変表示装置としてリール式の可変表示装置50が適用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばこれらリールに替えて、複数種の図柄が印刷された無端状のベルトを用いた可変表示装置としても良い。
・・・
【0052】
本実施例では、図4(a)並びに図5(a)に示すように、払出手段である払出装置600として、前述した取込装置700と同一の構造とされた装置が用いられている。このように本実施例では、払出装置600と取込装置700とが同一の構造とされており、スロットマシン1の製造コストを軽減できることから好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、これら遊技球払出手段と遊技球取込手段とに異なる構造の装置を用いるようにしても良い。
・・・
【0057】
払出装置600の下方には前面扉2の上皿7に連通する連絡口10が設けられており、払出装置600から払い出されたパチンコ球は、連絡口10を通って上皿7に払い出され、載置されるようになっている。また、この連絡口10の側方には、最下端部が下皿払出口9を介して前面扉2の下皿11に連通する余剰球通路507に連設されており、上皿7に載置されたパチンコ球が満タンの状態であるために連絡口10から溢れたパチンコ球が、この余剰球通路507を流下して下皿11に払い出されるようになっている。尚、図3に示す508は、下皿11に貯留されているパチンコ球が満タンとなり、余剰球通路507の下部がパチンコ球で閉塞されている状態を検出する満タンスイッチである。
・・・
【0074】
また、1BETボタン36aが押圧されると上皿7に載置されたパチンコ球から、1BET分の球数(本実施例では5球)のパチンコ球が取り込まれて1BET分に該当する5球がクレジット球数に加算されるとともにクレジット表示部31のクレジット数が1BET分加算表示される。
【0075】
尚、クレジット球数は1BET分である5球が取り込まれる毎に5球が加算されるようになっており、取り込まれた遊技球のうち、単位数に満たないために端数となった遊技球は所定時間が経過した後、上皿7に払い出されて返却されるようになっている。
【0076】
また、1BETボタン36a並びにMAXBETボタン36bの操作により遊技球が取り込まれてクレジット球数が上限値である250球となった場合には、1BETボタン36a並びにMAXBETボタン36bの操作は無効となり、BETボタンランプ121a、121bは消灯する。
【0077】
賭数の設定またはパチンコ球の取込によるクレジット球数の加算が可能な状態において自動クレジットボタン37bが操作されると、自動クレジットランプ124が点灯して自動クレジットモードが設定される。この自動クレジットモードが設定されている状態においては、クレジット球数が上限値である250球となるまで上皿7に載置されたパチンコ球が取り込まれてクレジット球数に加算されるようになっている。
【0078】
また、最大賭数である3BETが設定されていない状態において自動クレジットモードが設定された場合には、上皿7に載置されたパチンコ球から最大賭数を設定するのに必要な球数のパチンコ球が取り込まれて3BET分の賭数が設定された後、クレジット球数が上限値である250球となるまで上皿7に載置されたパチンコ球が取り込まれてクレジット球数に加算される。また、クレジット球数に250球が残存している状態でMAXBETボタン36bまたは1BETボタン36aが操作されてクレジット球数が賭数の設定に使用された場合には、使用されたクレジット球数分のパチンコ球が取り込まれ、クレジット球数が常時250球に保たれるようになっている。
【0079】
尚、取り込まれた球数にてクレジット球数が250球に到達しない場合には、取込動作が停止されて、上皿7にパチンコ球が載置され、リトライスイッチ107に検出された際に再び取込動作が開始されてこれら載置されたパチンコ球が取り込まれてクレジット球数への加算が行われるようになっている。
【0080】
また、自動クレジットモードが設定されている状態において、自動クレジットボタン37bが操作されると、自動クレジットランプ124が消灯して自動クレジットモードは解除される。
【0081】
賭数の設定またはパチンコ球の取込によるクレジット球数の加算が可能な状態において精算ボタン37aが操作されると、クレジット球数として記憶されている数のパチンコ球が精算されて上皿7に払い出された後、上皿7に載置されたパチンコ球が下皿11へ排出されるようになっている。
・・・
【0085】
さらに全てのリール51L、51C、51Rが停止された時点で、賭数に応じて有効化されたいずれかの入賞ラインL1、L2、L2'、L3、L3'上に予め定められた図柄の組み合わせが表示された場合は入賞となり、各種遊技効果ランプ部41?44の内部に内蔵された遊技効果ランプ130?133(図6参照)や入賞ラインL1、L2、L2'、L3、L3'に対応するリールランプ55等が点灯するとともに、スピーカ136a、136b、137から効果音等が出力されること等による入賞演出が実行される。そして、入賞内容に対応して予め定められた賞球が遊技者に対して付与され、賞球数がクレジット球数に加算され、それに応じてクレジット表示部31に表示されたクレジット数も加算更新される。また、クレジット球数が上限値に達した場合には、賞球が直接上皿7へ払い出されるようになっている。また、これら付与された賞球数に相当するBET数がペイアウト表示部33に表示される。
・・・
【0093】
図6は、スロットマシン1に設けられた各種基板と電気部品との接続状況を説明するためのブロック図である。また、図7は、遊技制御基板200に設けられたメイン制御手段としての遊技制御部210の構成と、演出制御基板201に設けられた演出制御部230の構成と、を説明するためのブロック図である。また、図8は、遊技制御基板200に設けられた遊技制御部210の構成と、払出制御基板400に設けられたサブ制御手段としての払出制御部401の構成と、を説明するためのブロック図である。
【0094】
スロットマシン1に設けられた各種基板のうち、遊技制御基板200によって主に遊技状態が制御され、演出制御基板201によって遊技状態に応じた演出制御等が実施され、払出制御基板400によって球貸や賞球によるパチンコ球の払出制御が実施される。・・・
・・・
【0096】
遊技制御基板200は、演出制御基板201、払出制御基板400、電源基板202、リール中継基板203と配線接続されているとともに、リール中継基板203を介して外部出力基板205と、また、演出制御基板201を介してリールランプ中継基板204と接続されている。
【0097】
遊技制御基板200の遊技制御部210は、遊技状態がRB状態であることを示すRB中信号や、遊技状態がBB状態であることを示すBB中信号、各リール51L、51C、51Rに対応するリールモータ54L、54C、54Rを制御するためのリール制御信号(モータ位相信号)、賭数を設定するために用いられた球数を示す球IN信号、入賞の発生により遊技者に付与された球数を示す球OUT信号などをリール中継基板203を介して外部出力基板205からスロットマシン1の外部に出力する制御を行う。なお、ストップスイッチ103L、103C、103Rの操作がなされた旨を示すストップスイッチ信号は、後述するようにストップスイッチ103L、103C、103Rから直接出力された信号である。
【0098】
遊技制御基板200には、各種のスイッチ、ランプ、及び表示器からの配線が接続されている。
【0099】
例えば、電源基板202に配線接続された設定スイッチ83、設定キースイッチ82、第2リセットスイッチ81は、電源基板202によって中継されて遊技制御基板200と配線接続されており、それぞれのスイッチの検出信号は、遊技制御基板200の遊技制御部210に入力される。
【0100】
リール中継基板203に配線接続されたリールモータ54L、54C、54R、及びリールセンサ56は、リール中継基板203によって中継されて遊技制御基板200に配線接続されており、リールセンサ56の検出信号は、遊技制御基板200の遊技制御部210に入力される。リールランプ55は、リールランプ中継基板204によって中継されて演出制御基板201に配線接続されている。遊技制御基板200の遊技制御部210は、始動条件(スタートスイッチ102の検出信号の入力)が成立すると、リールモータ54L、54C、54Rに制御信号を出力してリールの変動を開始させた後、表示結果を導出表示させる可変表示制御を実行する。
【0101】
遊技制御基板200に配線接続されたスイッチのうち、1BETスイッチ100は1BETボタン36aの操作を検出し、MAXBETスイッチ101はMAXBETボタン36bの操作を検知するスイッチであり、スタートスイッチ102はスタートレバー38の操作を検出するスイッチであり、左、中、右ストップスイッチ103L、103C、103Rは、左、中、右ストップボタン40L、40C、40Rの操作を検出するスイッチである。精算スイッチ104は、精算ボタン37aの操作を検出するスイッチであり、自動クレジットスイッチ106は、自動クレジットボタン37bの操作を検出するスイッチであり、第1リセットスイッチ105は、施錠装置3の鍵穴3aに挿入したキーによるスロットマシン1のリセット操作を検出するスイッチである。
【0102】
また、遊技制御基板200に配線接続されたスイッチのうち、賞球検出スイッチ604は、払出装置600により賞球の発生またはクレジット数の精算に際して払い出されたパチンコ球を検出するスイッチである。また、リトライスイッチ107は、取込準備球通路710におけるパチンコ球の有無を検出するスイッチである。
【0103】
ゲーム回数表示器108はゲーム回数表示部32を構成する表示器であり、クレジット表示器109はクレジット表示部31を構成する表示器であり、ペイアウト表示器110はペイアウト表示部33を構成する表示器である。
【0104】
BET指示ランプ111は、BET指示表示部30に内蔵されるランプであり、1BET賭けランプ112は1BET賭け表示部21に、2BET賭けランプ113、114は2BET賭け表示部22、23に、3BET賭けランプ115、116は3BET賭け表示部24、25に内蔵されるランプである。
【0105】
ゲームオーバーランプ117は、ゲームオーバー表示部26に内蔵されるランプであり、スタートランプ118は、スタート表示部29に内蔵されるランプであり、リプレイランプ119は、リプレイ表示部27に内蔵されるランプであり、ボーナス告知ランプ120はストップボタンユニット39に内蔵されるランプである。BETボタンランプ121aは1BETボタン36aに、BETボタンランプ121bはMAXBETボタン36bに内蔵されるランプである。精算ボタンランプ123は精算ボタン37aに内蔵されるランプであり、自動クレジットボタンランプ124は自動クレジットボタン37bに内蔵されるランプである。左操作有効ランプ122Lは、左ストップボタン40Lに内蔵されるランプであり、中操作有効ランプ122Cは、中ストップボタン40Cに内蔵されるランプであり、右操作有効ランプ122Rは、右ストップボタン40Rに内蔵されるランプであり、ウェイトランプ139はウェイト表示部28に内蔵されるランプである。
【0106】
また、遊技制御基板200には、取込装置700を構成する取込モータ701、振分ソレノイド702、取込球検出スイッチ704、返却球検出スイッチ705が配線接続されており、これら取込装置700の各スイッチからの検出信号が遊技制御部210に入力されるとともに、取込モータ701や振分ソレノイド702の駆動制御が遊技制御部210により実施されるようになっている。
【0107】
遊技制御基板200に配線接続された各種ランプ及び表示器、取込装置700は、遊技制御基板200に搭載された遊技制御部210によって制御される。また、遊技制御部210は、遊技制御基板200に接続され、または、電源基板202あるいはリール中継基板203を介して遊技制御基板200に接続された各種スイッチの検出信号を受け、遊技状態を制御する。
【0108】
特に、遊技制御部210によって制御される「クレジット表示器109、ゲーム回数表示器108、ペイアウト表示器110、BET指示ランプ111、1BET賭けランプ112?3BET賭けランプ116、スタートランプ118、リプレイランプ119、ボーナス告知ランプ120、ゲームオーバーランプ117、左、中、右操作有効ランプ122L、122C、122R、ウェイトランプ139」は、遊技の進行に関わる情報を報知するものであり、それが機能しなければ遊技を行うことに支障が出るような、いわば"必須報知装置"といえる。これらの"必須報知装置"が遊技状態を制御する遊技制御部210によって制御されるために、たとえ、演出制御基板201が故障したとしても、少なくとも遊技の進行に必要な情報が遊技者に提供される。このため、遊技者に不利な状態で遊技が進行してしまうことを防止できる。
【0109】
遊技制御基板200に設けられた遊技制御部210は、図7並びに図8に示すように、制御動作を所定の手順で実行することのできるCPU(Central Processing Unit)211と、CPU211の制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)213と、必要なデータの書き込み及び読み出しができるRAM(Random Acess Memory)212と、CPU211と外部回路との信号の整合性をとるためのI/Oポート214とを含む。
【0110】
また、図7並びに図8に示すように、遊技制御基板200には、電源投入時にCPU211にリセットパルスを与える初期リセット回路217と、CPU211にクロック信号を与えるクロック発生回路218と、クロック発生回路218からのクロック信号を分周して割込パルスを定期的にCPU211に与えるパルス分周回路(割込パルス発生回路)219と、一定範囲の乱数を高速で連続的に発生している乱数発生回路221と、乱数発生回路221から乱数をサンプリングするサンプリング回路222と、バッファ回路220と、が設けられる。さらに、遊技制御基板200には、各種スイッチからの信号が入力されるスイッチ回路215や、モータ回路216、取込装置700における取込モータ701並びに振分ソレノイド702の駆動制御を行う駆動ドライバ225等が設けられている。さらに、遊技制御基板200には、電源断時においてもRAM212の記憶を保持させるためのゲーム状態保持手段としてのバックアップ電源223が設けられており、電源供給が遮断された場合には遊技に必要な情報がバックアップされるとともに、電源立ち上げ時に行われる初期処理において、バックアップデータを参照し、電源断前の遊技状態に復帰させるための処理が行われるようになっている。このため停電が発生した場合にも、停電復旧時に停電前の遊技状態に復帰させることができる。
【0111】
RAM212には、有価価値としてのクレジット球数が記憶される有価価値蓄積手段としてのクレジット球カウンタと、賞球数が記憶される賞球カウンタと、取込球数が記憶される取込球カウンタと、取込球数のうち既に取り込まれた球数が記憶される取込済カウンタと、賭数が設定される賭数カウンタと、が設定されている。
【0112】
クレジット球カウンタのクレジット球数には、入賞の発生に基づき付与された賞球数や後述の球貸処理により貸し出された貸球数が上限値である250球までの範囲で加算されるとともに、1BETスイッチ100やMAXBETスイッチ101の検出に基づき該当するBET数分の球数が減算される。また、これらクレジット球カウンタに記憶されたクレジット球数に基づくクレジット数(クレジット球数/5)がクレジット表示器31に表示されるようになっており、これらクレジット球カウンタのクレジット球数が更新される毎にクレジット表示器31に表示されているクレジット数も表示更新されるようになっている。
【0113】
賞球カウンタには、入賞が発生した際に該当する賞球数が設定されるとともに、これら賞球数は上限値の範囲内において5球ずつクレジット球カウンタに移行されるとともに、クレジット球カウンタの上限値を超える賞球数は、賞球検出スイッチ604にてパチンコ球が検出される毎に1球ずつが減算される。
【0114】
取込球カウンタには、取込装置700における1回の取込動作で連続して取り込むパチンコ球数が設定されるとともに、取り込まれたパチンコ球が取込球検出スイッチ704にて検出される毎に1球ずつが減算される。
【0115】
取込済カウンタには、デフォルトで0球が設定されているとともに、取込装置700により取り込まれたパチンコ球が取込球検出スイッチ704にて検出される毎に1球ずつが加算され、取込球カウンタの取込球数が全て取り込まれた時点でクリアされる。
【0116】
賭数カウンタは、遊技者の操作により設定された賭数が記憶されるカウンタであり、これら賭数カウンタに設定される賭数の上限は3BETとされている。また、これら賭数カウンタに設定された賭数はゲームが終了することでクリアされる。尚、リプレイ(再遊技)が入賞した場合には、賭数カウンタはクリアされず、賭数カウンタに設定されている賭数が次回のゲームの賭数として用いられる。
【0117】
また、RAM212には、これら各カウンタに加えて内部当選フラグや各種遊技状態等を示す各種設定フラグ、出球率の設定値等の遊技に必要な情報が記憶されるようになっている。
・・・
【0130】
遊技制御基板200の遊技制御部210から払出制御基板400へは、バッファ回路220を介してパチンコ球の払出を指示する旨の払出コマンドが出力される。バッファ回路220は、遊技制御基板200の内部から外部への信号の出力を許容するが遊技制御基板200の外部から内部へ信号が入力されることを阻止するように機能する。このため、遊技制御基板200と払出制御基板400との間において、遊技制御基板200から払出制御基板400への一方向通信が担保され、コマンドの伝送経路を介して遊技制御基板200に信号を入力させて不正な制御動作を行わせる不正行為を防止できる。
【0131】
払出制御基板400には、払出装置600を構成する払出モータ601、振分ソレノイド602、貸球検出スイッチ603、賞球検出スイッチ604が配線接続されており、これら払出装置の各スイッチからの検出信号が後述の払出制御部401に入力されるとともに、払出モータ601や振分ソレノイド602の駆動制御が払出制御部401により実施されるようになっている。
【0132】
また、払出制御基板400には、操作基板800に実装された球貸スイッチ811、返却スイッチ812、度数表示器813が配線接続されているとともに、前述のように信号ケーブル814を介して並設して使用されるカードユニット800の制御ユニットと各種信号を送受可能に接続されている。
【0133】
図8に示すように、払出制御基板400には、払出制御部401と、各種スイッチからの信号が入力されるスイッチ回路408や、払出装置600における払出モータ601並びに振分ソレノイド602の駆動制御を行う駆動ドライバ409、遊技制御基板200より出力された払出コマンドを入力するバッファ回路407、カードユニット800の制御ユニットとの信号の入出力を行う入出力回路410等が設けられている。さらに、払出制御基板400には、電源断時においても後述のRAM403の記憶を保持させるためのバックアップ電源223が設けられており、電源供給が遮断された場合には未払出球数等の払出制御に必要な情報がバックアップされるとともに、電源立ち上げ時に行われる初期処理において、バックアップデータを参照し、電源断前の状態に復帰させるための処理が行われるようになっている。このため停電が発生した場合にも、停電復旧時に停電前の状態に復帰させることができる。
【0134】
払出制御部401は、CPU402と、必要なデータの書き込み、及び書き出しができるRAM403と、制御プログラムを格納するROM404と、I/Oポート405と、を含む。
【0135】
RAM403には、未払出球数が記憶される未払出球カウンタと、払出球数が記憶される払出球カウンタと、貸球数が記憶される貸球カウンタと、が設定されている。
【0136】
RAM403に設定された未払出球カウンタの未払出球には、遊技制御基板200から送信された払出コマンドにより特定される払出球数が加算され、払出装置600により払い出されたパチンコ球が賞球検出スイッチ604にて検出される毎に1球ずつ減算される。
【0137】
払出球カウンタには、払出装置600における1回の払出動作で連続して払い出すパチンコ球数が設定されるとともに、払い出されたパチンコ球が賞球検出スイッチ604にて検出される毎に1球ずつが減算される。
【0138】 貸球カウンタでは、払出装置600にて1回の払出動作で払い出される貸球数(25球)が設定されるとともに、払い出されたパチンコ球が貸球検出スイッチ603にて検出される毎に1球ずつが減算される。
・・・
【0161】
Sb2、Sb4?Sb9の状態においては、Sb2において自動クレジットモードが設定されているかを確認するようになっており、自動クレジットモードが設定されている場合には、上皿7に載置されているパチンコ球を取り込んで最大賭数が設定された後、クレジット球カウンタのクレジット球数が上限値である250球となるまで、上皿7に載置されているパチンコ球を取り込んでクレジット球数に加算する自動クレジット処理を実行する(Sb3)。
・・・
【0172】
また、Sb2、Sb4?Sb6、Sb13、Sb29、Sb30、Sb9、Sb10の状態で1BETボタン36aが操作され、1BETスイッチ100が検出された場合には、5球を取込球カウンタにセットし(Sb36)、上皿7に載置されたパチンコ球から取込球カウンタにセットした球数分のパチンコ球を取り込むための取込処理を実行する(Sb37)。すなわち、1BETボタン36aの操作により、上皿7に載置されたパチンコ球から5球が取り込まれてクレジット球数に加算されることとなる。
【0173】
また、MAXBETボタン36bまたは1BETボタン36aの操作に基づきクレジット球カウンタが250となった場合、すなわちクレジット球カウンタが上限値に到達している場合には、自動クレジットモードの設定/解除要求の検出待ち、精算処理要求の検出待ち、スタートスイッチ102の検出待ちの状態となる(Sb2、Sb4?Sb6、Sb13、Sb9、Sb10)。この状態ではMAXBETボタン36bや1BETボタン36aの操作に基づくパチンコ球の取込によるクレジット球数への加算要求の受付けが検出されないようになっており、クレジット球数が上限値に到達しているにも関わらず、上皿7に載置されたパチンコ球の取込が行われてしまうことによる不都合が回避されるようになっている。
・・・
【0199】
図15は、遊技制御部210がSb3において実行する自動クレジット処理の制御内容を示すフローチャートである。
【0200】
この処理で遊技制御部210は、まず球切れフラグがセットされているか、すなわち前回実行した取込処理において上皿7に載置されたパチンコ球が全て取り込まれてしまったか否かを確認する(Se1)。
【0201】
Se1において球切れフラグがセットされている場合にはリトライスイッチ107による取込可能なパチンコ球の有無を確認し(Se2)、リトライスイッチ107により取込可能なパチンコ球が検出されない場合には処理を終了する。
【0202】
Se1において球切れフラグがセットされていない場合、またはSe2においてリトライスイッチ107により取込可能なパチンコ球が検出された場合には、クレジット球カウンタの値を確認し(Se3?Se5)、クレジット球カウンタが上限値である250である場合には処理を終了し、クレジット球カウンタが245の場合には5球を取込球カウンタにセットし(Se6)、クレジット球カウンタが240の場合には10球を取込球カウンタにセットし(Se7)、クレジット球カウンタが240未満の場合には15球を取込球カウンタにセットする(Se8)。次いで上皿7に載置されたパチンコ球から取込球カウンタにセットした球数分のパチンコ球を取り込むための取込処理を実行する(Se9)。これにより上皿7に載置されたパチンコ球から最大15球が取り込まれて賭数が設定されるとともに、最大賭数が設定されている場合にはクレジット球数に加算されることとなる。
【0203】
次いで自動クレジットモードの解除要求があるか、すなわち自動クレジットボタン37bが操作されたかを確認し(Se10)、自動クレジットモードの解除要求がなければ、Se3の処理に移行して、クレジット球カウンタが250となるまでこれらSe3?Se10の処理が繰返し実施され、クレジット球カウンタが250に到達すると処理を終了する。
【0204】
また、Se10において自動クレジットモードの解除要求が検出された場合、すなわちSe3?Se10の処理中に自動クレジットボタン37bが操作され、自動クレジットスイッチ106が検出された場合には、モード変更を行い(Se11)、自動クレジットボタンランプ124を消灯するとともに、自動クレジットモードを解除して処理を終了する。この際クレジット球数が上限値である250球に満たない場合でもその後の取込は停止されるようになっている。尚、本発明はこれに限定されるものではなく、自動クレジット処理中に自動クレジットボタン37bが操作され、自動クレジットスイッチ106が検出された場合には、クレジット球数が上限値である250球となるまで取り込まれるか、または上皿7のパチンコ球が全て取り込まれた時点で自動クレジットモードを解除するようにしても良い。
【0205】
このように自動クレジット処理においては、上皿7に載置されているパチンコ球が取り込んで最大賭数を設定するとともに、クレジット球カウンタのクレジット球数が上限値である250となるまで更にパチンコ球を取り込んでクレジット球数に加算する処理が行われる。
【0206】
また、クレジット球カウンタが250に到達していない場合であっても、前述のようにSe9の取込処理において上皿7に載置されたパチンコ球が全て取り込まれてしまった場合には、BET処理のSd9に移行するようになっている。この際球切れフラグがセットされるようになっており、再び自動クレジット処理に移行してもリトライスイッチ107により取込可能なパチンコ球が検出されるまでは取込が行われないようになっているため、無駄な取込動作が行われてしまうことを回避できるようになっている。
【0207】
図16は、遊技制御部210がSa7において実行する払出処理の制御内容を示すフローチャートである。
【0208】
この処理で遊技制御部210は、まず入賞による賞球の払出があるかを確認する(Sf1)。賞球の払出があるかは、Sa6において設定される賞球数によって判定される。この判定で賞球の払出がないと判定された場合には、BBまたはRB以外の内部当選フラグをクリアし(Sf10)、遊技状態の変更がある場合には遊技状態を変更した後(Sf11)、処理を終了する。
【0209】
また、Sf1の判定において賞球の払出があると判定した場合には、Sa6において設定された賞球数を賞球カウンタにセットする(Sf2)。
【0210】
次いでクレジット球カウンタが上限値である250であるかを確認し(Sf3)、クレジット球カウンタが250未満であれば、賞球カウンタが0となるかクレジット球カウンタが250となるまで、賞球カウンタを5減算し、クレジット球カウンタに5を加算する処理(Sf3?Sf5)を繰り返し実施する。
【0211】
Sf3?Sf5の処理で賞球カウンタが0となった場合、すなわち賞球数が全てクレジット球カウンタに加算された場合には、BBまたはRB以外の内部当選フラグをクリアし(Sf10)、遊技状態の変更がある場合には遊技状態を変更した後(Sf11)、処理を終了する。
【0212】
また、Sf3?Sf5の処理でクレジット球カウンタが上限値である250となった場合には、賞球カウンタに残存する賞球数分のパチンコ球の払出を指示する旨の払出コマンドを払出制御基板400の払出制御部401に送信した後(Sf6)、賞球検出スイッチ604によるパチンコ球の払出の検出待ちの状態となる(Sf7?Sf9)。この状態で賞球検出スイッチ604によりパチンコ球の払出が検出されると(当審注:「と」は誤挿入文字と推測される)毎に、賞球カウンタが0となるまで1ずつ減算され、賞球カウンタが0となった場合、すなわち賞球カウンタに残存する賞球数分のパチンコ球の払出が終了した場合には、BBまたはRB以外の内部当選フラグをクリアし(Sf10)、遊技状態の変更がある場合には遊技状態を変更した後(Sf11)、処理を終了する。
【0213】
このように遊技制御部210が行う払出処理では、パチンコ球の払出を伴う入賞の発生に基づきパチンコ球の払出を行うようになっている。具体的には、賞球として付与されたパチンコ球はまずクレジット球カウンタに加算されるとともに、クレジット球カウンタが上限値である250に到達した場合には、賞球カウンタに残存する賞球数分の払出を指示する払出コマンドを払出制御基板400の払出制御部401に送信し、これら賞球カウンタに残存する賞球数分の払出を実施させるようになっている。
・・・
【0234】
図21は、払出制御部401がSg5において実行する払出制御処理の制御内容を示すフローチャートである。
【0235】
この処理で払出制御部401は、まず未払出球カウンタが0であるか、すなわち払い出すべきパチンコ球数があるかを確認し(Sj1)、未払出球カウンタが0の場合には、再びSg2における割込信号の監視状態に戻るようになっている。
【0236】
Sj1において未払出球カウンタが0でない場合には、未払出球カウンタが25以上であるかを確認する(Sj2)。Sj2において未払出球カウンタが25以上であれば払出球カウンタに25球をセットし、未払出球カウンタから25を減算する処理を行うとともに(Sj3)、未払出球カウンタが25未満である場合には、未払出球カウンタに残存する未払出球数全てを払出球カウンタにセットし、未払出球カウンタをクリアする(Sj4)。
【0237】
次いで満タンスイッチ508のonが検出されているかを確認し(Sj5)、満タンスイッチ508のonが検出された場合、すなわち下皿11に貯留されたパチンコ球が余剰球通路の下部を閉塞している場合には、満タンスイッチ508がoffとなるまで待機する。
【0238】
次いで、払出モータ601の駆動を開始する(Sj6)。この際供給球検出スイッチ505によるパチンコ球の検出の有無に関わらず払出モータ601の駆動は開始される。
【0239】
次いで、賞球検出スイッチ604による賞球の検出または払出モータ601の回転の終了待ちの状態となる(Sj7?Sj9)。払出モータ601の回転が終了したか否かは払出球カウンタにセットされた払出球数の払出に対応した回転が完了したかにより確認される。払出に対応した回転は、払出モータ位置センサ(図示略)の出力によって監視される。Sj9において払出に対応した回転の完了を確認した場合には、払出モータ601の駆動を停止するとともに、払出モータ601の回転により払い出されたパチンコ球が賞球検出スイッチ603にて検出されるまでの時間である賞球検出待ち時間をセットし(Sj12)、賞球検出スイッチ604によるパチンコ球の検出待ちの状態となる(Sj7、Sj8、Sj13)。
【0240】
また、Sj7?Sj9またはSj7、Sj8、Sj13における状態で賞球検出スイッチ604により払い出されたパチンコ球の通過が検出された場合には払出球カウンタを1減算し、払出球カウンタが0であるか否かを確認する(Sj11)。
【0241】
Sj11において払出球カウンタが0でない場合にはSj7の処理へ移行する。また、払出球カウンタが0である場合、すなわち払出球カウンタにセットされたパチンコ球が全て検出された場合には、再びSg2における割込信号の監視状態に戻るようになっている。
【0242】
また、Sj7、Sj8、Sj13における状態で賞球検出スイッチ604によりパチンコ球の通過が検出されずに、賞球検出待ち時間が経過した場合には、供給球検出スイッチ505によるパチンコ球の検出待ちの状態となる(Sj14)。
【0243】
このSj14の状態で供給球検出スイッチ505によりパチンコ球が検出された場合には、Sj5の処理へ移行し、満タンスイッチ508のonが検出されていなければ再び払出モータ601の駆動が開始されて賞球カウンタにセットされている球数分の払出が行われる。
【0244】
このように、払出制御処理では、未払出球カウンタに記憶されている未払出球数、すなわち遊技制御部210より送信された払出コマンドにより払出が指示された球数のパチンコ球が最大で25球ずつ、上皿7に払い出されるようになっている。
・・・
【0277】
また、前記実施例の払出装置には2条の供給通路から供給されたパチンコ球の払出を行う2条式の払出装置600が適用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1条式の払出装置や3条式以上の払出装置を適用するようにしても良い。
・・・
【0280】
また、前記実施例の取込装置には2条の供給通路から供給されたパチンコ球の取込を行う2条式の取込装置700が適用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1条式の取込装置や3条式以上の取込装置を適用するようにしても良い。
・・・

【引用刊行物に記載された引用発明の認定
上記引用刊行物の記載から観て、この刊行物には、次の発明(以下、引用発明という)が開示されていると認められる。

(引用発明)
遊技球を用いて1ゲームに対して賭数が設定されることによりゲームが開始可能となるとともに、上皿7の前面7bに設けられたスタートレバー38が操作されることにより、各リール51L、51C、51Rの回転が開始され、上皿7の前面7bに設けられた各ストップボタン40L、40C、40Rにより、ゲーム開始後に、複数種の図柄、例えば、「7」、「BAR」、「スイカ」、「チェリー」、「ベル」、「プラム」からなる図柄が印刷された透光性を有する帯状のリールシートが外周に巻回されたリール51L、51C、51Rの回転が停止させられ、これらのリールで構成されて表示状態を変化させることが可能な可変表示装置50の表示結果が、導出表示されることにより1ゲームが終了し、可変表示装置50の表示結果に応じて所定の入賞が発生可能な、遊技球を遊技媒体として用いるスロットマシン1において、
遊技球の取込を行う遊技球取込手段700が設けられ、
遊技球取込手段700に供給される遊技球としてのパチンコ球が、載置可能な遊技球待機部としての上皿7が設置され、
遊技球取込手段700により取り込まれた遊技球に応じて遊技者が所有する有価価値の大きさが蓄積される有価価値蓄積手段としてのクレジット球カウンタが備えられ、
クレジット数が、遊技者所有の有価価値として、スロットマシン1内部の記憶部であるRAM212に設定された有価価値蓄積手段としてのクレジット球カウンタに記憶されているパチンコ球(クレジット球)数に相当するBET数(1BET(最小単位の賭数設定に必要なパチンコ球数)=クレジット球数/5)と設定され、
入賞の発生による賞球の付与や上皿7に載置されているパチンコ球の取込に基づいてクレジット球数が加算更新されたり、賭数の設定や精算操作によりクレジット球数が減算更新されることにより、クレジット表示部31のクレジット数が表示更新され、
有価価値蓄積手段に蓄積可能な有価価値の大きさには所定の上限値、例えば、250球(50BET)が定められており、
上皿7の上面7a左側に設けられた自動クレジットボタン37bは、自動クレジットモードの設定/解除を行う際に押圧するボタンであり、自動クレジットモードが設定されていない状態で、この自動クレジットボタン37bが押圧操作されると、自動クレジットモードが設定され、クレジット球カウンタのクレジット球数が上限値である250球に到達するまで、上皿7に載置されているパチンコ球が5球(1BET)毎に自動的に取り込まれてクレジット球カウンタのクレジット球数に加算され、
取込準備球通路710の各条(例えば、1条2条3条以上)に対応して球切り用のスプロケット706が設けられ、これらスプロケット706が取込モータ701の駆動により回転されることで切欠内に入り込んだパチンコ球が1球ずつ下方に排出され、取込装置700が取り込むパチンコ球数が、取込球検出スイッチ704にて検出され、
払出手段である払出装置600として、取込装置700と同一の構造とされた装置が用いられ、
遊技球の払出を行う遊技球払出装置600(例えば、1条式、2条式、3条式以上のパチンコ球供給通路を有するもの)の下方には、前面扉2の上皿7に連通する連絡口10が設けられており、払出装置600から払い出されたパチンコ球は、連絡口10を通って上皿7に払い出され、
連絡口10の側方には、最下端部において下皿払出口9を介して前面扉2の下皿11に連通する余剰球通路507が連設されており、上皿7に載置されたパチンコ球が満タンの状態である場合には、連絡口10から溢れたパチンコ球が、余剰球通路507を流下して下皿11に払い出され、
下皿11に貯留されているパチンコ球が満タンとなり、余剰球通路507の下部がパチンコ球で閉塞されている状態を検出する満タンスイッチ508が設けられ、
遊技制御部210に含まれるRAM212には、クレジット球数が記憶されるクレジット球カウンタと、賞球数が記憶される賞球カウンタと、取込球数が記憶される取込球カウンタと、取込球数のうち既に取り込まれた球数が記憶される取込済カウンタと、賭数が設定される賭数カウンタとが設定され、
自動クレジットモードが設定されている場合には、まず、これら賞球数は上限値の範囲内において、賞球カウンタから5球分づつ減算され、5球分づつクレジット球カウンタに加算されることで移行され、この上限値に達した場合で、かつ上限値を越えるクレジット球数の加算更新の要求が発生した場合には、その上限を越える球数のパチンコ球が上皿7に払い出され、
払出制御部401に含まれるRAM403には、未払出球数が記憶される未払出球カウンタと、払出球数が記憶される払出球カウンタとが設定され、
満タンスイッチ508のonが検出された場合、すなわち下皿11に貯留されたパチンコ球が余剰球通路507の下部を閉塞している場合には、満タンスイッチ508がoffとなるまで待機し、払出モータ601が再び駆動されることにより、未払出球の払出しが再開され、
予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を実行可能とし、図柄の変動や遊技球の取り込み等の遊技状態を主に制御する遊技制御基板200に、メイン制御手段としての遊技制御部210が設けられ、
球貸や賞球によるパチンコ球の払出制御を行う払出制御基板400に、サブ制御手段としての払出制御部401が設けられたもの。

【本願補正発明1と引用発明との対比】
本願補正発明1の図柄の変動を開始・停止させる「遊技用の操作部」には、引用発明の「上皿7の前面7bに設けられたスタートレバー38」及び「上皿7の前面7bに設けられた各ストップボタン40L、40C、40R」が該当する。
本願補正発明1の「図柄の変動が開始および停止する複数の図柄の表示部」には、引用発明の「複数種の図柄、例えば、「7」、「BAR」、「スイカ」、「チェリー」、「ベル」、「プラム」からなる図柄が印刷された透光性を有する帯状のリールシートが外周に巻回されたリール51L、51C、51Rの回転が停止させられ、これらのリールで構成されて表示状態を変化させることが可能な可変表示装置50」が該当する。
本願補正発明1の「遊技球貯留皿」には、引用発明の「遊技球としてのパチンコ球が、載置可能な遊技球待機部としての上皿7」及び「上皿7に載置されたパチンコ球が満タンの状態である場合には、連絡口10から溢れたパチンコ球が、余剰球通路507を流下して」「払い出され」る「下皿11」が該当する。
本願補正発明1の「貯留した遊技球を取り込む球取込装置」には、引用発明の「遊技球の取込を行う遊技球取込手段700」が該当する。
本願補正発明1の「遊技の帰趨に応じて上記遊技球貯留皿に賞球として遊技球を払い出す賞球払出装置」には、引用発明の「遊技球の払出を行う遊技球払出装置600」が該当する。
本願補正発明1の「予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を許容し、図柄の変動と遊技球の取り込みおよび払い出しとを司る制御装置」には、引用発明の「メイン制御手段としての遊技制御部210」及び「サブ制御手段としての払出制御部401」が該当する。
本願補正発明1の「遊技機」には、引用発明の「スロットマシン1」が該当する。
本願補正発明1の「遊技球貯留皿から遊技球を取り込むときに操作する自動投入操作手段」には、引用発明の「上皿7の上面7a左側に設けられた自動クレジットボタン37b」が該当する。
本願補正発明1の「遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段」には、引用発明の「スプロケット706」及び「取込モータ701」が該当する。
本願補正発明1の「遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段」には、引用発明の「取込球検出スイッチ704」が該当する。
本願補正発明1の「遊技球送出手段を連続作動せしめるとともに、遊技球の取り込み数が所定回数の遊技に必要な単位球数になるごとに、遊技可能な回数を上記所定回数ずつ加算し記憶する」ことには、引用発明の「遊技球取込手段700により取り込まれた遊技球に応じて遊技者が所有する有価価値の大きさが蓄積される有価価値蓄積手段としてのクレジット球カウンタ」によって「クレジット球数」が「加算更新」され、「パチンコ球(クレジット球)数に相当するBET数(1BET(最小単位の賭数設定に必要なパチンコ球数)=クレジット球数/5)」として設定された「クレジット数」が「クレジット表示部31」により「表示更新」されることが該当する。
本願補正発明1の「記憶される遊技可能な回数には最大値を設定」することには、引用発明の「有価価値蓄積手段に蓄積可能な有価価値の大きさには所定の上限値、例えば、250球(50BET)が定められ」ることが該当する。
本願補正発明1の「自動投入操作手段の操作により、上記球取込装置が上記遊技可能な回数の最大値を目標とする遊技球の取り込み作動を行」うことには、引用発明の「自動クレジットモードが設定されていない状態で、この自動クレジットボタン37bが押圧操作されると、自動クレジットモードが設定され、クレジット球カウンタのクレジット球数が上限値である250球に到達するまで、上皿7に載置されているパチンコ球が5球(1BET)毎に自動的に取り込まれてクレジット球カウンタのクレジット球数に加算され」ることが該当する。

【本願補正発明1と引用発明との一致点の認定
上記両発明の対比の結果、文言上の違いは存在するものの、本願補正発明1の複数の構成要素のうち、前記したものに関しては、両者に技術思想上の実質的差異は見当たらない。
よって、本願補正発明1と引用発明とは、次の点に関し一致している。

(両発明の一致点)
遊技用の操作部の操作に基づいて図柄の変動が開始および停止する複数の図柄の表示部と、遊技球貯留皿に貯留した遊技球を取り込む球取込装置と、遊技の帰趨に応じて上記遊技球貯留皿に賞球として遊技球を払い出す賞球払出装置と、予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を許容し、図柄の変動と遊技球の取り込みおよび払い出しとを司る制御装置とを有する遊技機において、
上記操作部には上記遊技球貯留皿から遊技球を取り込むときに操作する自動投入操作手段を設け、
上記球取込装置を、遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備する構成とし、
上記制御装置を、上記遊技球送出手段を連続作動せしめるとともに、遊技球の取り込み数が所定回数の遊技に必要な単位球数になるごとに、遊技可能な回数を上記所定回数ずつ加算し記憶するようなし、
かつ上記記憶される遊技可能な回数には最大値を設定し、
上記自動投入操作手段の操作により、上記球取込装置が上記遊技可能な回数の最大値を目標とする遊技球の取り込み作動を行う点。

【本願補正発明1と引用発明との相違点の認定
前記両発明の対比の結果と、特に、引用刊行物の段落【0113】の記載「賞球カウンタには、入賞が発生した際に該当する賞球数が設定されるとともに、これら賞球数は上限値の範囲内において5球ずつクレジット球カウンタに移行されるとともに、クレジット球カウンタの上限値を超える賞球数は、賞球検出スイッチ604にてパチンコ球が検出される毎に1球ずつが減算される。」及び、同じく、段落【0213】の記載「このように遊技制御部210が行う払出処理では、パチンコ球の払出を伴う入賞の発生に基づきパチンコ球の払出を行うようになっている。具体的には、賞球として付与されたパチンコ球はまずクレジット球カウンタに加算されるとともに、クレジット球カウンタが上限値である250に到達した場合には、賞球カウンタに残存する賞球数分の払出を指示する払出コマンドを払出制御基板400の払出制御部401に送信し、これら賞球カウンタに残存する賞球数分の払出を実施させるようになっている。」から観て、引用発明においては、遊技球貯留皿が賞球で満タンであろうが、非満タンであろうが、記憶された遊技可能な回数が最大値に満たない場合には、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てる制御がなされる構成に関し、本願補正発明1とは相違している。
そして、この相違をさらに詳細に分析すると、自動投入操作手段が操作されているという前提において、本願補正発明1と引用発明とは、以下の三点に関し実質的に相違している。
なお、これらの相違点の認定に関しては、用語や文言を技術思想上の実質的差異がない限り、本願補正発明1の表現に統一して記載した。

(両発明の相違点1)
本願補正発明1は、遊技球貯留皿が満タンでなければ、賞球払出装置の賞球払い出しにより遊技球貯留皿に賞球を払い出すことが優先されるのに対し、引用発明は、遊技球貯留皿が満タンでなければ、記憶された遊技可能な回数が最大値に満たない場合に、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てることが優先される点。

(両発明の相違点2)
本願補正発明1は、賞球払出装置の賞球払い出しにより遊技球貯留皿が満タンとなったときに、賞球払出装置を停止し、未払いとなった賞球の数を未払い賞球数として記憶して遊技続行を可能となしているのに対し、引用発明は、賞球払出装置の賞球払い出しにより遊技球貯留皿が満タンとなったときに、賞球払出装置を停止し、未払いとなった賞球の数を未払い賞球数として記憶してはいるが、遊技球貯留皿が満タンとなったときに遊技続行を可能となしているかどうか不明である点。

(両発明の相違点3)
本願補正発明1は、賞球払出装置の賞球払い出しにより遊技球貯留皿が満タンとなっても、記憶された遊技可能な回数が最大値に満たない場合には、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てるようになしているのに対し、引用発明は、賞球払出装置の賞球払い出しにより遊技球貯留皿が満タンとなって、記憶された遊技可能な回数が最大値に満たない場合に、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てることが、遊技球貯留皿からの遊技球の自動投入より優先されているかどうか不明である点。

【上記相違点1、2、3についての当審の判断】
これら三つの相違点は、相互に関連する面はあるが、最初に各々の相違点に関して個別に検討する。

(上記相違点1について)
引用発明においても、賞球に関し、自動投入状態で、記憶された遊技可能な回数が最大値を超えている場合には、遊技球貯留皿が満タンになるまで、遊技球貯留皿に払い出されるので、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てることだけでなく、賞球を実際に遊技球貯留皿に払い出すことがなされている。そして、賞球の処理については、実際上の払い出しを優先するか、遊技可能な回数への割当てを優先するかは、遊技者への賞球付与の実感を重要視するか、遊技の進行速度や省エネや機械的ロスの低減等を重要視するか、諸条件を勘案し、当業者が適宜設計すれば済む事項でしかない。
また、上記相違点1に起因する技術上の効果も、当業者の予測の範囲内であって、格別のものとは言えない。
結局、上記相違点1は当業者が容易に成し得る事項である。

(上記相違点2について)
引用刊行物の記載からでは、引用発明に関し、遊技球貯留皿が賞球で満タンの時に遊技続行可能であるかどうか、不明である。しかし、この満タン時に、遊技機をどう制御するかは、大別すれば二者択一であることが明らかである。即ち、第一には遊技続行不可能に制御することであり、第二には遊技続行可能に制御することである。
そして、引用刊行物の記載から観て、引用発明において、前記二者のうち満タン時に遊技続行を可能に制御する技術を採用し、遊技球貯留皿が賞球で満タンの時に、賞球の払い出しが一旦停止されても、満タンが解除されて未払出し球が再び払い出されるのを待つことなく、遊技続行可能に制御させて、賭数を設定させ図柄の変動を開始させ可変表示装置の表示結果を導出表示させ入賞を発生可能にさせることに、技術上の不都合は無いことは明らかである。
補足説明すると、賞球が払い出せない状況においても、未払出し賞球数さえ記憶されていれば、遊技球貯留皿の満タン解除後に、賞球が払い出せるので、満タン時に遊技自体を続行させることに、技術上の問題が生じることは有り得ない。
よって、引用発明において、賞球払出装置の賞球払い出しにより遊技球貯留皿が満タンとなったときに、賞球払出装置を停止し、未払いとなった賞球の数を未払い賞球数として記憶して遊技続行を可能に制御することは、当業者が適宜成し得る設計事項にすぎない。
また、上記相違点2に起因する技術上の効果も、当業者の予測の範囲内であって、格別のものとは言えない。
結局、上記相違点2は当業者が容易に成し得る事項である。

(上記相違点3について)
前記したように、上記相違点1、2は共に、当業者が容易に成し得る事項である。そして、引用発明において、上記相違点1について賞球払出しを優先する制御を採用し、上記相違点2について遊技続行を可能とする制御を採用すると、例えば、次のような事態が想定される。

(事態1)
遊技球貯留皿が賞球で非満タンの時には、先ず賞球は遊技球貯留皿に払い出され、その後賞球により遊技球貯留皿が満タンになれば、賞球は遊技球貯留皿に払い出されなくなるが、未払いとなった賞球の数が未払い賞球数として記憶され、遊技続行に伴い、遊技遊技可能な回数が最大値から減る。

その後、大別して、例えば、次のような三つの事態が、必然的に想定される。

(事態2-1:「割当て」が「自動投入」より優先されているとすると)
上記(事態1)の後、引用発明において、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てることが、遊技球貯留皿からの遊技球の自動投入より優先されているとすると、賞球払出装置の賞球払い出しにより遊技球貯留皿が満タンとなっても、記憶された遊技可能な回数が最大値に満たない場合には、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てることになる。
結果的に、相違点3に関し、引用発明においても、本願補正発明1と実質的に同じ制御がなされることになる。

(事態2-2:「自動投入」が「割当て」より優先されているとすると)
上記(事態1)の後、引用発明において、遊技球貯留皿からの遊技球の自動投入が、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てることより優先されているとすると、賞球払出装置の賞球払い出しにより遊技球貯留皿が満タンとなって、記憶された遊技可能な回数が最大値に満たない場合には、遊技球貯留皿からの遊技球の自動投入により、その分、遊技可能な回数に加算記憶されることになる。
結果的に、相違点3に関し、引用発明においては、本願補正発明1とは全く違う制御がなされることになる。
即ち、引用発明においては、本件審判請求人が提出した前置審尋に対する回答書で主張されているとおり、
「遊技球貯留皿が満タン」→「賞球を停止し、未払い賞球数を記憶」→
「遊技球貯留皿の遊技球が消費されて満タンを解除」→「賞球の払出し」→「遊技球貯留皿が満タン」
といった制御が繰り返され、
「未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てる」
という制御が、満タン時に実行されることはない。

(事態2-3:「割当て」と「自動投入」とが同等であるとすると)
上記(事態1)の後、引用発明において、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てることと、遊技球貯留皿からの遊技球の自動投入とに、優先度の差がないとすると、賞球払出装置の賞球払い出しにより遊技球貯留皿が満タンとなって、記憶された遊技可能な回数が最大値に満たない場合には、未払い賞球数を減算して、遊技可能な回数に割当てることと、並列して、遊技球貯留皿からの遊技球の自動投入により、遊技可能な回数に加算記憶されることになる。
結果的に、相違点3に関し、引用発明においては、本願補正発明1とは全く違う制御がなされることになる。

(上記相違点3についての、さらなる検討)
本件審判請求人が主張していることでもあるが、引用刊行物には、引用発明において、上記(事態2-1)を想定した「割当て」優先制御について、直接的な記載も間接的な示唆も見当たらず、そうすることの積極的動機付けが、引用刊行物の記載自体からは見い出せないことは、当審も認める。
しかし、前記したように、上記(事態1)の後に、必然的に想定されることは、上記(事態2-1)(事態2-2)(事態2-3)として例示したように、せいぜい三つに大別される程度のことにすぎず、上記(事態2-1)を想定した「割当て」優先制御について、引用刊行物に、この制御を排除すべき記載もまた見い出せない。
そうすると、引用発明において、賞球払出しを優先する制御と、遊技続行を可能とする制御とを採用した場合に、さらに、上記(事態2-1)を想定した「割当て」優先制御を採用することも、当業者が適宜選択し得る事項と言わざるを得ない。

(上記相違点3に基く効果について)
上記相違点3に基く効果についても検討する。
本願補正発明1における「賞球払出装置の賞球払い出しにより遊技球貯留皿が満タンとなっても、記憶された遊技可能な回数が最大値に満たない場合には、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てる」という構成により、遊技球の実体的移動を省略してデータを移行すること伴う効果は、前述の賞球払出条件や、遊技続行条件や、遊技球取込条件を別にすれば、引用発明からも当業者が予期できる効果でしかない。
何故なら、この相違点に関し、例えば、本件審判請求人が提出した意見書や前置審尋に対する回答書等で縷々主張される効果は「賞球払出装置および球取込装置を作動させずに遊技可能な回数の記憶を増やすことができ、両装置の作動頻度が減って両装置の故障率の軽減、長寿命化および省エネがはかれる」ことや、「賞球の払出し、貯留皿からの遊技球の取込みが不要となり、省エネ、騒音軽減、遊技球の流下に伴って発生する静電気の防止といった有用な効果」等であるが、これらの効果は、引用刊行物にも開示されているように、未払い賞球数を減算して、その分、遊技可能な回数に割当てることにより、遊技球の物理的移動を少なくすることに伴って、実質的に達成されるからである。
よって、上記相違点3に起因する効果は、本願補正発明1の進歩性を肯定的に推認する間接事実としては、決定力に欠けている。

(上記相違点3についてのまとめ)
結局、本願補正発明1において、上記相違点3に関する構成に関し、新規性が有り、その構成に起因する効果は存在するにしても、上記相違点3は、前述したように、やはり当業者が容易に成し得る事項である。

(上記三相違点についてのまとめ)
前述したように上記相違点1、2、3は全て、当業者が容易に成し得る事項であって、これらの三相違点を総合的に考慮しても、本願補正発明1は、引用刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【本願補正発明2と引用発明の対比】
本願補正発明2は、平成20年9月11日付け手続補正書の請求項2に記載された事項により、本願補正発明1をさらに限定的に減縮したものであって、賞球払出装置により遊技球を遊技球貯留皿へ送出する賞球の払い出し速度を球取込装置により遊技球を遊技球貯留皿から取り込む取込み速度以上に設定した点が付加されている。

【本願補正発明2と引用発明との一致点の認定
本願補正発明2と引用発明との一致点は、本願補正発明1と引用発明との一致点と同じであり、既述のとおりである。

【本願補正発明2と引用発明との相違点の認定
本願補正発明2と引用発明とは、本願補正発明1と引用発明との前記相違点1、2、3の三相違点に加えて、次の相違点4に関し、相違している。
なお、この相違点の認定に関しては、用語や文言を技術思想上の実質的差異がない限り、本願補正発明2の表現に統一して記載した。

(両発明の相違点4)
本願補正発明2は、賞球払出装置により遊技球を遊技球貯留皿へ送出する賞球の払い出し速度を球取込装置により遊技球を遊技球貯留皿から取り込む取込み速度以上に設定しているのに対し、引用発明は、賞球の払い出し速度を遊技球の取込み速度以上に設定しているかどうか不明である点。

【上記四相違点についての当審の判断】
相違点1、2、3の三相違点については全て、既述のとおり、当業者が容易に成し得る事項である。

(上記相違点4について)
引用刊行物の段落【0052】に「本実施例では、図4(a)並びに図5(a)に示すように、払出手段である払出装置600として、前述した取込装置700と同一の構造とされた装置が用いられている。・・・」と記載され、同じく段落【0277】に「また、前記実施例の払出装置には2条の供給通路から供給されたパチンコ球の払出を行う2条式の払出装置600が適用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1条式の払出装置や3条式以上の払出装置を適用するようにしても良い。」と記載され、同じく段落【0280】に「また、前記実施例の取込装置には2条の供給通路から供給されたパチンコ球の取込を行う2条式の取込装置700が適用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1条式の取込装置や3条式以上の取込装置を適用するようにしても良い。」と記載されている。
よって、上記各記載から観て、引用発明においては、賞球払出装置と球取込装置との構造を同一にすることを基本にしながらも、各々の装置の供給通路の数の多少を適宜設計可能にすることによって、単位時間当たりの賞球の払い出し量に相当する賞球の払い出し速度を、単位時間当たりの遊技球の取込み量に相当する遊技球の取込み速度以上に設定することも含めて、色々に設定可能にすることを予定しているものである。
そうすると、引用発明において、賞球の払い出し速度を遊技球の取込み速度以上に設定することは、当業者が適宜成し得る設計事項でしかない。
また、上記相違点4に起因する技術上の効果も、当業者の予測の範囲内であって、格別のものとは言えない。
結局、上記相違点4は当業者が容易に成し得る事項である。

(上記四相違点についてのまとめ)
上記相違点1?4は全て、当業者が容易に成し得る事項であって、これらの四相違点を総合的に考慮しても、本願補正発明2は、引用刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【独立特許要件、発明の容易想到性についてのまとめ】
既述のとおり、本願補正発明1、2はどちらも、引用刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【補正の却下の決定のむすび】
以上のとおり、前記本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【原審の拒絶査定の理由の概要】
原審の拒絶査定の理由の概要は、拒絶査定時に審査の対象となった前記本件補正前の請求項1、2に係る両発明は、依然、拒絶理由通知に記載されたように、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
なお、拒絶査定時に審査の対象となった前記本件補正前の請求項1、2に係る両発明を、各々、本願発明1、本願発明2とし、以下に引用する。

【引用刊行物に記載された引用発明の認定
上記原審の拒絶理由に引用された刊行物の一つは、特開2003-126352号公報であって、前記本件補正について、補正の却下の決定の理由において、独立特許要件の判断の際に引用したものであるので、この刊行物を前記と同様に、以下も、引用刊行物という。
引用刊行物に記載された事項は、前記したとおりであり、その記載は再掲しない。
引用刊行物に記載されていると認められる引用発明についても、前記したとおりであるが、その記載を、次に再掲する。

(引用発明)
遊技球を用いて1ゲームに対して賭数が設定されることによりゲームが開始可能となるとともに、上皿7の前面7bに設けられたスタートレバー38が操作されることにより、各リール51L、51C、51Rの回転が開始され、上皿7の前面7bに設けられた各ストップボタン40L、40C、40Rにより、ゲーム開始後に、複数種の図柄、例えば、「7」、「BAR」、「スイカ」、「チェリー」、「ベル」、「プラム」からなる図柄が印刷された透光性を有する帯状のリールシートが外周に巻回されたリール51L、51C、51Rの回転が停止させられ、これらのリールで構成されて表示状態を変化させることが可能な可変表示装置50の表示結果が、導出表示されることにより1ゲームが終了し、可変表示装置50の表示結果に応じて所定の入賞が発生可能な、遊技球を遊技媒体として用いるスロットマシン1において、
遊技球の取込を行う遊技球取込手段700が設けられ、
遊技球取込手段700に供給される遊技球としてのパチンコ球が、載置可能な遊技球待機部としての上皿7が設置され、
遊技球取込手段700により取り込まれた遊技球に応じて遊技者が所有する有価価値の大きさが蓄積される有価価値蓄積手段としてのクレジット球カウンタが備えられ、
クレジット数が、遊技者所有の有価価値として、スロットマシン1内部の記憶部であるRAM212に設定された有価価値蓄積手段としてのクレジット球カウンタに記憶されているパチンコ球(クレジット球)数に相当するBET数(1BET(最小単位の賭数設定に必要なパチンコ球数)=クレジット球数/5)と設定され、
入賞の発生による賞球の付与や上皿7に載置されているパチンコ球の取込に基づいてクレジット球数が加算更新されたり、賭数の設定や精算操作によりクレジット球数が減算更新されることにより、クレジット表示部31のクレジット数が表示更新され、
有価価値蓄積手段に蓄積可能な有価価値の大きさには所定の上限値、例えば、250球(50BET)が定められており、
上皿7の上面7a左側に設けられた自動クレジットボタン37bは、自動クレジットモードの設定/解除を行う際に押圧するボタンであり、自動クレジットモードが設定されていない状態で、この自動クレジットボタン37bが押圧操作されると、自動クレジットモードが設定され、クレジット球カウンタのクレジット球数が上限値である250球に到達するまで、上皿7に載置されているパチンコ球が5球(1BET)毎に自動的に取り込まれてクレジット球カウンタのクレジット球数に加算され、
取込準備球通路710の各条(例えば、1条2条3条以上)に対応して球切り用のスプロケット706が設けられ、これらスプロケット706が取込モータ701の駆動により回転されることで切欠内に入り込んだパチンコ球が1球ずつ下方に排出され、取込装置700が取り込むパチンコ球数が、取込球検出スイッチ704にて検出され、
払出手段である払出装置600として、取込装置700と同一の構造とされた装置が用いられ、
遊技球の払出を行う遊技球払出装置600(例えば、1条式、2条式、3条式以上のパチンコ球供給通路を有するもの)の下方には、前面扉2の上皿7に連通する連絡口10が設けられており、払出装置600から払い出されたパチンコ球は、連絡口10を通って上皿7に払い出され、
連絡口10の側方には、最下端部において下皿払出口9を介して前面扉2の下皿11に連通する余剰球通路507が連設されており、上皿7に載置されたパチンコ球が満タンの状態である場合には、連絡口10から溢れたパチンコ球が、余剰球通路507を流下して下皿11に払い出され、
下皿11に貯留されているパチンコ球が満タンとなり、余剰球通路507の下部がパチンコ球で閉塞されている状態を検出する満タンスイッチ508が設けられ、
遊技制御部210に含まれるRAM212には、クレジット球数が記憶されるクレジット球カウンタと、賞球数が記憶される賞球カウンタと、取込球数が記憶される取込球カウンタと、取込球数のうち既に取り込まれた球数が記憶される取込済カウンタと、賭数が設定される賭数カウンタとが設定され、
自動クレジットモードが設定されている場合には、まず、これら賞球数は上限値の範囲内において、賞球カウンタから5球分づつ減算され、5球分づつクレジット球カウンタに加算されることで移行され、この上限値に達した場合で、かつ上限値を越えるクレジット球数の加算更新の要求が発生した場合には、その上限を越える球数のパチンコ球が上皿7に払い出され、
払出制御部401に含まれるRAM403には、未払出球数が記憶される未払出球カウンタと、払出球数が記憶される払出球カウンタとが設定され、
満タンスイッチ508のonが検出された場合、すなわち下皿11に貯留されたパチンコ球が余剰球通路507の下部を閉塞している場合には、満タンスイッチ508がoffとなるまで待機し、払出モータ601が再び駆動されることにより、未払出球の払出しが再開され、
予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を実行可能とし、図柄の変動や遊技球の取り込み等の遊技状態を主に制御する遊技制御基板200に、メイン制御手段としての遊技制御部210が設けられ、
球貸や賞球によるパチンコ球の払出制御を行う払出制御基板400に、サブ制御手段としての払出制御部401が設けられたもの。

【本願発明1の認定】
本願発明1は、本件補正前の平成20年6月23日付け手続補正によって補正された請求項1に記載されたとおりのものであって、前記したとおりであるが、再掲すると、次のとおりである。

(本願発明1)
遊技用の操作部の操作に基づいて図柄の変動が開始および停止する複数の図柄の表示部と、遊技球貯留皿に貯留した遊技球を取り込む球取込装置と、遊技の帰趨に応じて上記遊技球貯留皿に賞球として遊技球を払い出す賞球払出装置と、予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を許容し、図柄の変動と遊技球の取り込みおよび払い出しとを司る制御装置とを有する遊技機において、
上記操作部には上記遊技球貯留皿から遊技球を取り込むときに操作する自動投入操作手段を設け、
上記球取込装置を、遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備する構成とし、
上記制御装置を、上記遊技球送出手段を連続作動せしめるとともに、遊技球の取り込み数が所定回数の遊技に必要な単位球数になるごとに、遊技可能な回数を上記所定回数ずつ加算し記憶するようなし、
かつ上記記憶される遊技可能な回数には最大値を設定し、
上記自動投入操作手段の操作により、上記球取込装置が上記遊技可能な回数の最大値を目標とする遊技球の取り込み作動を行い、
上記賞球払出装置により遊技球を上記遊技球貯留皿へ送出する賞球の払い出し速度を上記球取込装置により遊技球を遊技球貯留皿から取り込む取り込み速度以上に設定し、
賞球払出装置の賞球払い出しにより上記遊技球貯留皿が満タンとなったときに、賞球払出装置を停止し、これにより未払いとなった賞球の数を未払い賞球数として記憶するようになしたことを特徴とする遊技機。

【本願発明1と引用発明との対比】
本願発明1の図柄の変動を開始・停止させる「遊技用の操作部」には、引用発明の「上皿7の前面7bに設けられたスタートレバー38」及び「上皿7の前面7bに設けられた各ストップボタン40L、40C、40R」が該当する。
本願発明1の「図柄の変動が開始および停止する複数の図柄の表示部」には、引用発明の「複数種の図柄、例えば、「7」、「BAR」、「スイカ」、「チェリー」、「ベル」、「プラム」からなる図柄が印刷された透光性を有する帯状のリールシートが外周に巻回されたリール51L、51C、51Rの回転が停止させられ、これらのリールで構成されて表示状態を変化させることが可能な可変表示装置50」が該当する。
本願発明1の「遊技球貯留皿」には、引用発明の「遊技球としてのパチンコ球が、載置可能な遊技球待機部としての上皿7」及び「上皿7に載置されたパチンコ球が満タンの状態である場合には、連絡口10から溢れたパチンコ球が、余剰球通路507を流下して」「払い出され」る「下皿11」が該当する。
本願発明1の「貯留した遊技球を取り込む球取込装置」には、引用発明の「遊技球の取込を行う遊技球取込手段700」が該当する。
本願発明1の「遊技の帰趨に応じて上記遊技球貯留皿に賞球として遊技球を払い出す賞球払出装置」には、引用発明の「遊技球の払出を行う遊技球払出装置600」が該当する。
本願発明1の「予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を許容し、図柄の変動と遊技球の取り込みおよび払い出しとを司る制御装置」には、引用発明の「メイン制御手段としての遊技制御部210」及び「サブ制御手段としての払出制御部401」が該当する。
本願発明1の「遊技機」には、引用発明の「スロットマシン1」が該当する。
本願発明1の「遊技球貯留皿から遊技球を取り込むときに操作する自動投入操作手段」には、引用発明の「上皿7の上面7a左側に設けられた自動クレジットボタン37b」が該当する。
本願発明1の「遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段」には、引用発明の「スプロケット706」及び「取込モータ701」が該当する。
本願発明1の「遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段」には、引用発明の「取込球検出スイッチ704」が該当する。
本願発明1の「遊技球送出手段を連続作動せしめるとともに、遊技球の取り込み数が所定回数の遊技に必要な単位球数になるごとに、遊技可能な回数を上記所定回数ずつ加算し記憶する」ことには、引用発明の「遊技球取込手段700により取り込まれた遊技球に応じて遊技者が所有する有価価値の大きさが蓄積される有価価値蓄積手段としてのクレジット球カウンタ」によって「クレジット球数」が「加算更新」され、「パチンコ球(クレジット球)数に相当するBET数(1BET(最小単位の賭数設定に必要なパチンコ球数)=クレジット球数/5)」として設定された「クレジット数」が「クレジット表示部31」により「表示更新」されることが該当する。
本願発明1の「記憶される遊技可能な回数には最大値を設定」することには、引用発明の「有価価値蓄積手段に蓄積可能な有価価値の大きさには所定の上限値、例えば、250球(50BET)が定められ」ることが該当する。
本願発明1の「自動投入操作手段の操作により、上記球取込装置が上記遊技可能な回数の最大値を目標とする遊技球の取り込み作動を行」うことには、引用発明の「自動クレジットモードが設定されていない状態で、この自動クレジットボタン37bが押圧操作されると、自動クレジットモードが設定され、クレジット球カウンタのクレジット球数が上限値である250球に到達するまで、上皿7に載置されているパチンコ球が5球(1BET)毎に自動的に取り込まれてクレジット球カウンタのクレジット球数に加算され」ることが該当する。
本願発明1の「賞球払出装置の賞球払い出しにより上記遊技球貯留皿が満タンとなったときに、賞球払出装置を停止し、これにより未払いとなった賞球の数を未払い賞球数として記憶するようになしたこと」には、引用発明の「満タンスイッチ508のonが検出された場合、すなわち下皿11に貯留されたパチンコ球が余剰球通路507の下部を閉塞している場合には、満タンスイッチ508がoffとなるまで待機し、払出モータ601が再び駆動されることにより、未払出球の払出しが再開され」ることが該当する。

【本願発明1と引用発明との一致点の認定
上記両発明の対比の結果、文言上の違いは存在するものの、本願発明1の複数の構成要素のうち、前記したものに関しては、両者に技術思想上の実質的差異は見当たらない。
よって、本願発明1と引用発明とは、次の点に関し一致している。

(両発明の一致点)
遊技用の操作部の操作に基づいて図柄の変動が開始および停止する複数の図柄の表示部と、遊技球貯留皿に貯留した遊技球を取り込む球取込装置と、遊技の帰趨に応じて上記遊技球貯留皿に賞球として遊技球を払い出す賞球払出装置と、予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を許容し、図柄の変動と遊技球の取り込みおよび払い出しとを司る制御装置とを有する遊技機において、
上記操作部には上記遊技球貯留皿から遊技球を取り込むときに操作する自動投入操作手段を設け、
上記球取込装置を、遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備する構成とし、
上記制御装置を、上記遊技球送出手段を連続作動せしめるとともに、遊技球の取り込み数が所定回数の遊技に必要な単位球数になるごとに、遊技可能な回数を上記所定回数ずつ加算し記憶するようなし、
かつ上記記憶される遊技可能な回数には最大値を設定し、
上記自動投入操作手段の操作により、上記球取込装置が上記遊技可能な回数の最大値を目標とする遊技球の取り込み作動を行い、
賞球払出装置の賞球払い出しにより上記遊技球貯留皿が満タンとなったときに、賞球払出装置を停止し、これにより未払いとなった賞球の数を未払い賞球数として記憶するようになした点。

【本願発明1と引用発明との相違点の認定
両発明の相違点の認定に関し、用語や文言を技術思想上の実質的差異がない限り、本願発明1の表現に統一して記載すると、両者は、次の点に関し相違している

(両発明の相違点)
本願発明1は、賞球払出装置により遊技球を遊技球貯留皿へ送出する賞球の払い出し速度を球取込装置により遊技球を遊技球貯留皿から取り込む取込み速度以上に設定しているのに対し、引用発明は、賞球の払い出し速度を遊技球の取込み速度以上に設定しているかどうか不明である点。

【本願発明1と引用発明との上記相違点についての当審の判断】
引用刊行物の段落【0052】に「本実施例では、図4(a)並びに図5(a)に示すように、払出手段である払出装置600として、前述した取込装置700と同一の構造とされた装置が用いられている。・・・」と記載され、同じく段落【0277】に「また、前記実施例の払出装置には2条の供給通路から供給されたパチンコ球の払出を行う2条式の払出装置600が適用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1条式の払出装置や3条式以上の払出装置を適用するようにしても良い。」と記載され、同じく段落【0280】に「また、前記実施例の取込装置には2条の供給通路から供給されたパチンコ球の取込を行う2条式の取込装置700が適用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1条式の取込装置や3条式以上の取込装置を適用するようにしても良い。」と記載されている。
よって、上記各記載から観て、引用発明においては、賞球払出装置と球取込装置との構造を同一にすることを基本にしながらも、各々の装置の供給通路の数の多少を適宜設計可能にすることによって、単位時間当たりの賞球の払い出し量に相当する賞球の払い出し速度を、単位時間当たりの遊技球の取込み量に相当する遊技球の取込み速度以上に設定することも含めて、色々に設定可能にすることを予定しているものである。
そうすると、引用発明において、賞球の払い出し速度を遊技球の取込み速度以上に設定することは、当業者が適宜成し得る設計事項でしかない。
また、上記相違点に起因する技術上の効果も、当業者の予測の範囲内であって、格別のものとは言えない。
結局、上記相違点は当業者が容易に成し得る事項である。

【本願発明1の容易想到性についてのまとめ】
上記両発明の相違点は、当業者が容易に成し得る事項であって、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【本願発明2の認定】
本願発明2は、本件補正前の平成20年6月23日付け手続補正によって補正された請求項2に記載されたとおりのものであって、前記したとおりであるが、再掲すると、次のとおりである。

(本願発明2)
請求項1に記載の遊技機において、
上記球取込装置はモータで駆動する上記遊技球送出手段を具備し、
上記賞球払出装置は、モータで駆動して遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備して上記球取込装置と同一の構成となし、
上記球取込装置の遊技球送出手段および上記賞球払出装置の遊技球送出手段の両モータの回転速度を合わせて、球取込装置による上記取り込み速度と賞球払出装置による上記賞球の払い出し速度とを同一速度に設定した遊技機。

【本願発明2と引用発明との対比】
本願発明2の構成のうち、本願発明1と共通する構成についての引用発明との比較結果は、本願発明1について記載したとおりである。

次に、本願発明2において、本願発明1の構成をさらに限定した部分について、引用発明と比較する。

本願発明2の「上記球取込装置はモータで駆動する上記遊技球送出手段を具備」することには、引用発明の「球切り用のスプロケット706が設けられ、これらスプロケット706が取込モータ701の駆動により回転されることで切欠内に入り込んだパチンコ球が1球ずつ下方に排出され、取込装置700が取り込む」ことが該当する。
本願発明2の「上記賞球払出装置は、モータで駆動して遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備して上記球取込装置と同一の構成と」することには、引用発明の「払出手段である払出装置600として、取込装置700と同一の構造とされた装置が用いられ」ること、及び「球切り用のスプロケット706が設けられ、これらスプロケット706が取込モータ701の駆動により回転されることで切欠内に入り込んだパチンコ球が1球ずつ下方に排出され、取込装置700が取り込むパチンコ球数が、取込球検出スイッチ704にて検出され」ることが該当する。

本願発明2の「上記球取込装置の遊技球送出手段および上記賞球払出装置の遊技球送出手段の両モータの回転速度を合わせて、球取込装置による上記取り込み速度と賞球払出装置による上記賞球の払い出し速度とを同一速度に設定」することには、引用発明の「払出手段である払出装置600として、取込装置700と同一の構造とされた装置が用いられ」ること、及び「球切り用のスプロケット706が設けられ、これらスプロケット706が取込モータ701の駆動により回転されることで切欠内に入り込んだパチンコ球が1球ずつ下方に排出され、取込装置700が取り込む」ことが該当する。
補足説明すると、引用発明において、払出手段である払出装置600として、取込装置700と同一の構造のものが用いられることからして、わざわざ、両装置に具備されるモータの回転速度を変えることは想定されていないと認定できる。
また、本願発明2の前提として、本願発明1において、賞球払出装置により遊技球を遊技球貯留皿へ送出する賞球の払い出し速度を球取込装置により遊技球を遊技球貯留皿から取り込む取込み速度以上に設定しているが、この本願発明1の設定は、本願発明2の設定と矛盾するものではない。
即ち、本願発明1においては、本願の出願当初の明細書の記載から観て、賞球払出装置と球取込装置とに具備されるモータの回転速度は同一にした上で、賞球払出装置と球取込装置とに具備される球通路の条数について、 賞球払出装置の条数を球取込装置の条数により多くすることで、単位時間当たりの賞球の払い出し量に相当する賞球の払い出し速度を、単位時間当たりの遊技球の取込み量に相当する遊技球の取込み速度以上に設定することを実現しているからである。

【本願発明2と引用発明との一致点の認定
上記両発明の対比の結果、文言上の違いは存在するものの、本願発明2の複数の構成要素のうち、前記したものに関しては、両者に技術思想上の実質的差異は見当たらない。
よって、本願発明2と引用発明とは、次の点に関し一致している。

(両発明の一致点)
遊技用の操作部の操作に基づいて図柄の変動が開始および停止する複数の図柄の表示部と、遊技球貯留皿に貯留した遊技球を取り込む球取込装置と、遊技の帰趨に応じて上記遊技球貯留皿に賞球として遊技球を払い出す賞球払出装置と、予め設定した複数個の取り込み遊技球に対し1回の遊技を許容し、図柄の変動と遊技球の取り込みおよび払い出しとを司る制御装置とを有する遊技機において、
上記操作部には上記遊技球貯留皿から遊技球を取り込むときに操作する自動投入操作手段を設け、
上記球取込装置を、遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備する構成とし、
上記制御装置を、上記遊技球送出手段を連続作動せしめるとともに、遊技球の取り込み数が所定回数の遊技に必要な単位球数になるごとに、遊技可能な回数を上記所定回数ずつ加算し記憶するようなし、
かつ上記記憶される遊技可能な回数には最大値を設定し、
上記自動投入操作手段の操作により、上記球取込装置が上記遊技可能な回数の最大値を目標とする遊技球の取り込み作動を行い、
賞球払出装置の賞球払い出しにより上記遊技球貯留皿が満タンとなったときに、賞球払出装置を停止し、これにより未払いとなった賞球の数を未払い賞球数として記憶するようになし、
上記球取込装置はモータで駆動する上記遊技球送出手段を具備し、
上記賞球払出装置は、モータで駆動して遊技球を1つずつ下流へ送出する遊技球送出手段と、該遊技球送出手段の下流で、取り込まれる遊技球の通過を検出する遊技球通過検出手段とを具備して上記球取込装置と同一の構成となし、
上記球取込装置の遊技球送出手段および上記賞球払出装置の遊技球送出手段の両モータの回転速度を合わせて、球取込装置による上記取り込み速度と賞球払出装置による上記賞球の払い出し速度とを同一速度に設定した点。

【本願発明2と引用発明との相違点の認定
結局、本願発明2において、本願発明1の構成をさらに限定した部分については、引用発明と一致しており、構成上の差異はない。
よって、両発明の相違点は、本願発明1と引用発明との相違点でもあるから、本願発明2と引用発明とは、次の点に関し相違している

(両発明の相違点)
本願発明2は、賞球払出装置により遊技球を遊技球貯留皿へ送出する賞球の払い出し速度を球取込装置により遊技球を遊技球貯留皿から取り込む取込み速度以上に設定しているのに対し、引用発明は、賞球の払い出し速度を遊技球の取込み速度以上に設定しているかどうか不明である点。

【本願発明2と引用発明との上記相違点についての当審の判断】
上記相違点については、本願発明1と引用発明との相違点について、既に当審が判断したように、当業者が容易に成し得る事項である。

【本願発明2の容易想到性についてのまとめ】
上記両発明の相違点は、当業者が容易に成し得る事項であって、本願発明2は、引用刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【原審の拒絶査定の妥当性】
したがって、本願は、拒絶査定時に審査の対象となった請求項1、2に係る両発明が、原審の拒絶査定の理由により、特許を受けることができないものであるから、上記請求項1、2に係る両発明以外の、請求項3、4に係る両発明の特許性については述べるまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-18 
結審通知日 2010-01-19 
審決日 2010-02-01 
出願番号 特願2003-276002(P2003-276002)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 森 雅之
井上 昌宏
発明の名称 遊技機  
代理人 伊藤 求馬  

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