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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1213716
審判番号 不服2008-21683  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-25 
確定日 2010-03-18 
事件の表示 特願2001-278172「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年3月18日出願公開、特開2003-79886〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成13年9月13日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成20年4月28日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年8月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年9月5日に手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成21年7月8日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成21年8月26日に回答書が提出されている。

第二.平成20年9月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。
「 複数の識別情報による変動表示ゲームを表示可能な表示手段を備え、該変動表示ゲームの結果が予め定められた特別表示態様となったことに関連して遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記変動表示ゲームにおいてリーチ演出表示を実行する場合に、演出表示態様が異なるとともに前記特別表示態様の成立に対する信頼度の異なる複数種のリーチのうちから何れかを選択するリーチ選択手段と、
前記リーチ選択手段が選択した過去の所定期間に発生したリーチに関わるデータを記憶可能な記憶手段と、
リーチに関わる情報を前記表示手段に表示可能なリーチ情報表示手段と、
を備え、
前記記憶手段が記憶するリーチに関わるデータには、
前回の特別遊技状態を導出させることとなったリーチに関わるデータと、_前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチに関わるデータと、を含み、
前記リーチ情報表示手段は、
前記記憶手段の記憶データに基づいて、
現在発生しているリーチの特別表示態様を導出する確率としての信頼度を、前回の特別遊技状態を導出させることとなったリーチの信頼度と、前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチの信頼度と比較可能であって、当該リーチの信頼度が全てのリーチの信頼度順に並べたうちのどの順番であるか識別可能に表示するようにしたことを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正によって変更又は追加された箇所。)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である、「リーチに関わるデータ」について、「過去の所定期間に発生した」及び「前記記憶手段が記憶するリーチに関わるデータには、前回の特別遊技状態を導出させることとなったリーチに関わるデータと、前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチに関わるデータと、を含み、」を付加する補正、並びに「リーチ情報表示手段」について、「記憶手段の記憶データに基づいて、現在発生している」及び「前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチの信頼度と比較可能であって、当該リーチの信頼度が全てのリーチの信頼度順に並べたうちのどの順番であるか識別可能に」を付加する補正である。
してみると、前記各補正は、補正前の各発明特定事項を限定する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-94333号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。
【0012】図1は、遊技機の一例の第1種のパチンコ遊技機1およびカード処理機12を示す正面図である。
【0016】遊技領域101内に打込まれたパチンコ玉が特別図柄用始動口109あるいは第1の状態となっている普通可変入賞球装置110内に入賞すれば、その始動入賞玉が始動入賞玉検出スイッチ113により検出され、その検出信号に基づいて可変表示装置102の特別図柄表示部103が可変開始された後、左図柄,右図柄,中図柄の順に停止制御される。この特別図柄表示部103は、CRTによる画像表示装置32b(図6参照)の表示画面で構成されており、0?9,A?Eの15種類の識別情報を可変表示可能なものであり、その停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報の組合せ(たとえば777などの15通りのぞろめ)となれば、大当りとなり特定遊技状態が発生して特別可変入賞球装置114の開閉板116が開成して打玉が入賞しやすい遊技者にとって有利な第1の状態とする大当り時の制御が行なわれる。・・・
【0022】本実施の形態に係るパチンコ遊技機1では、複数種類のリーチ表示動作状態をその特別図柄表示部103に表示させることが可能である。このようなリーチ表示動作状態の種類として、リーチ1,リーチ2,リーチ3が予め定められている。パチンコ遊技機1は、リーチが成立した場合に、遊技状況に応じてリーチ1?リーチ3のうちいずれかのリーチ表示動作状態を選択して、その表示を可変表示部103に行なう。リーチ1?リーチ3の表示動作の違いとして、たとえば、図柄の変動速度や変動方向などが挙げられる。また、本実施の形態に示すパチンコ遊技機1の場合には、リーチ1,リーチ2,リーチ3それぞれでリーチが成立してからそのリーチが大当りに発展する割合が異なっている。
【0057】遊技制御基板20からCPU29には、可変表示装置102または普通可変表示装置202において可変表示される特別図柄の表示がリーチ表示動作状態となった場合に、前回の大当り発生から現在に至るまでに成立したリーチの履歴と現在発生しているリーチが大当りに移行する信頼度とを表示する画像(図12参照)に切換える旨の画像切換信号が送信される。
【0058】CPU29は、この要求に応じた表示コマンドを画像表示制御基板32aに送信可能である。これを受信した画像表示制御基板32aは、要求に応じた画像を選択するとともに遊技制御基板20から送信されているリーチの履歴情報と信頼度に関する情報とを受信し、選択した画像に受信した情報を割り付けて画像表示装置32bの表示画面上にその画像の表示を行なう制御を実行する。なお、遊技制御基板20から画像表示制御基板32aには、リーチの履歴情報や信頼度に関する情報、さらには可変表示装置の可変表示が行なわれた回数である始動回数に関する情報などが、それぞれの情報が逐次更新されつつ送信されている。
【0080】「前回大当りからの始動回数」とは、前回大当りが発生した後、現在に至るまでに可変表示装置102あるいは普通可変表示装置202が可変表示された回数を示す。「リーチ1」,「リーチ2」,「リーチ3」は、前回大当りが発生してから現在に至るまでに成立したリーチの回数を、リーチの種別ごと(リーチ表示動作状態種類ごと)に表わしたものである。
【0081】このような表示がなされることで、遊技者は大当りの成立に関する情報を収集することができ、次回大当りが発生する時期などを予想しつつ、遊技を行なうことができる。これにより、より一層遊技の興趣性が向上する。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 0?9,A?Eの15種類の識別情報を可変表示可能な特別図柄表示部103を構成する画像表示装置32bの表示画面を備え、その停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報の組合せとなれば、遊技者にとって有利な特定遊技状態が発生するパチンコ遊技機1において、
リーチの履歴情報と信頼度に関する情報を送信する遊技制御基板20と、
前記リーチの履歴情報と信頼度に関する情報を選択した画像に割り付けて前記画像表示装置32bの表示画面上にその画像の表示を行なう制御を実行する画像表示制御基板32aと、を備え、
前記リーチの履歴情報と信頼度に関する情報には、前回大当りが発生した後、現在に至るまでに成立したリーチの種別ごとの回数を含み、
前記画像表示制御基板32aは、前記遊技制御基板20から送信されている前記リーチの履歴情報と信頼度に関する情報とを受信し、
現在発生しているリーチが大当りに移行する信頼度と、前記前回大当りが発生した後、現在に至るまでに成立したリーチの種別ごとの回数を示す表示がなされることで、遊技者は大当りの成立に関する情報を収集することができるパチンコ遊技機1。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当し、以下同様に、
「0?9,A?Eの15種類の識別情報」は「複数の識別情報」に、
「可変表示可能な」は「変動表示ゲームを表示可能な」に、
「特別図柄表示部103を構成する画像表示装置32bの表示画面」は「表示手段」に、
「その停止時の表示結果」は「該変動表示ゲームの結果」に、
「特定の識別情報の組合せとなれば」は「特別表示態様となったことに関連して」に、
「特定遊技状態が発生する」は「特別遊技状態を発生可能な」に、
「リーチが成立した場合」は「前記変動表示ゲームにおいてリーチ演出表示を実行する場合」に、
「図柄の変動速度や変動方向などの表示動作が違い」は「演出表示態様が異なる」に、
「前記リーチが成立してからそのリーチが大当りに発展する割合が異なっている」は「前記特別表示態様の成立に対する信頼度の異なる」に、
「リーチ1?リーチ3」は「複数種のリーチ」に、
「リーチ1?リーチ3のうちいずれかのリーチが選択され」は「複数種のリーチのうちから何れかを選択する」に、
「前回大当りが発生した後、現在に至るまでに成立した」は「前回の特別遊技状態の終了後に発生した」に、
「現在発生しているリーチが大当りに移行する信頼度」は「現在発生しているリーチの特別表示態様を導出する確率としての信頼度」に、
各々相当する。
さらに、引用文献の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明と本願補正発明のリーチ及びリーチ選択に関する構成の相当関係からみて、引用発明は本願補正発明の「前記変動表示ゲームにおいてリーチ演出表示を実行する場合に、演出表示態様が異なるとともに前記特別表示態様の成立に対する信頼度の異なる複数種のリーチのうちから何れかを選択するリーチ選択手段」に相当する手段を備えたものであるといえる。

b.引用発明の「遊技制御基板20」は、リーチの履歴情報と信頼度に関する情報を送信しており、履歴情報が過去の所定期間に発生した情報であることは当然である。
そして、上記a.で述べたことを考え合わせると、引用発明の「リーチの履歴情報と信頼度に関する情報」は、本願補正発明の「リーチ選択手段が選択したリーチに関わるデータ」に相当するから、引用発明の「遊技制御基板20」は、本願補正発明の「リーチ選択手段が過去の所定期間に発生したリーチに関わるデータを記憶可能な記憶手段」に相当する手段を含むものであるということができる。

c.引用発明の「前記リーチの履歴情報と信頼度に関する情報」は、本願補正発明の「リーチに関わる情報」に相当するものでもあり、引用発明の「前記画像表示装置32bの表示画面」は、本願補正発明の「前記表示手段」に相当するから、引用発明の「前記リーチの履歴情報と信頼度に関する情報を選択した画像に割り付けて画像表示装置32bの表示画面上にその画像の表示を行なう制御を実行する画像表示制御基板32a」は、「リーチに関わる情報を前記表示手段に表示可能なリーチ情報表示手段」に相当するものといえる。

d.引用発明においては「前回大当りが発生した後、現在に至るまでに成立したリーチ」と「現在発生しているリーチ」を区別しているから、「前回大当りが発生した後、現在に至るまでに成立したリーチ」が大当りを発生させていないことは明らかである。
よって、引用発明の「前回大当りが発生した後、現在に至るまでに成立したリーチの種別ごとの回数」は、本願補正発明の「前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチに関わるデータ」に相当するものといえる。

e.引用発明の「遊技制御基板20」は、上記b.で述べたように、本願補正発明の「過去の所定期間に発生したリーチに関わるデータを記憶可能な記憶手段」に相当する手段を含むものということができるから、引用発明の「前記遊技制御基板20から送信されている前記リーチの履歴情報と信頼度に関する情報とを受信し」は、本願補正発明の「前記記憶手段の記憶データに基づいて」に相当しているといえる。

f.引用発明において「現在発生しているリーチ」は、リーチ1?リーチ3のいずれかであるとともに、リーチ1?リーチ3は「リーチが成立してからそのリーチが大当りに発展する割合が異なっている」のであり、成立する可能性のあるリーチについては、遊技機自体への表示、遊技場での掲示又は攻略本等での解説により、遊技者がリーチから大当りに発展する割合について把握しているのが通常であるから、引用発明においても信頼度について比較可能に表示されているといえる。
そして、上記d.で述べたように、引用発明の「前回大当りが発生した後、現在に至るまでに成立したリーチ」は本願補正発明の「前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチ」に相当するから、引用発明の「前記現在発生しているリーチが大当りに移行する信頼度と、前記前回大当りが発生した後、現在に至るまでに成立したリーチの種別ごとの回数を示す表示がなされること」と、本願補正発明の「現在発生しているリーチの特別表示態様を導出する確率としての信頼度を、前回の特別遊技状態を導出させることとなったリーチの信頼度と、前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチの信頼度と比較可能」であることとは、“現在発生しているリーチの特別表示態様を導出する確率としての信頼度を、前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチの信頼度と比較可能”である点では共通しているといえる。

g.引用発明は、現在発生しているリーチが大当りに移行する信頼度と、成立する可能性のあるリーチの種類の全て(リーチ1?リーチ3)について表示しており、上記f.で述べたように、「現在発生しているリーチ」は、リーチ1?リーチ3のいずれかであるとともに、成立する可能性のあるリーチについては、遊技者がリーチから大当りに発展する割合について把握しているのが通常であるから、引用発明は本願補正発明の「当該リーチの信頼度が全てのリーチの信頼度順に並べたうちのどの順番であるか識別可能に表示するようにした」に相当する機能を有するものといえる。

以上を総合すると、両者は、
「 複数の識別情報による変動表示ゲームを表示可能な表示手段を備え、該変動表示ゲームの結果が予め定められた特別表示態様となったことに関連して遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記変動表示ゲームにおいてリーチ演出表示を実行する場合に、演出表示態様が異なるとともに前記特別表示態様の成立に対する信頼度の異なる複数種のリーチのうちから何れかを選択するリーチ選択手段と、
前記リーチ選択手段が選択した過去の所定期間に発生したリーチに関わるデータを記憶可能な記憶手段と、
リーチに関わる情報を前記表示手段に表示可能なリーチ情報表示手段と、
を備え、
前記記憶手段が記憶するリーチに関わるデータには、
前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチに関わるデータ、を含み、
前記リーチ情報表示手段は、
前記記憶手段の記憶データに基づいて、
現在発生しているリーチの特別表示態様を導出する確率としての信頼度を、前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチの信頼度と比較可能であって、当該リーチの信頼度が全てのリーチの信頼度順に並べたうちのどの順番であるか識別可能に表示するようにしたことを特徴とする遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明のリーチに関わるデータには、前回の特別遊技状態を導出させることとなったリーチに関わるデータが含まれているのに対し、引用発明のリーチの履歴情報と信頼度に関する情報には、前回の大当りを発生させることとなったリーチに関する情報は含まれていない点。

[相違点2]本願補正発明は、現在発生しているリーチの特別表示態様を導出する確率としての信頼度を、前回の特別遊技状態を導出させることとなったリーチの信頼度とも比較可能であるのに対し、引用発明は、そのような比較を可能とする表示がなされていない点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
引用発明において履歴の範囲を如何にするかは、引用文献の段落【0115】に「図11に示したリーチ種別(リーチ表示動作状態種別)ごとのリーチ成立回数は、前回大当りが発生してから現在に至るまでに成立したリーチの回数が表示されるように構成した。しかしながら、遊技場の開店時からのリーチ回数の累計値を表示するように構成してもよく、あるいは、双方を同時に表示するようにしてもよい。」という記載事項(以下「引用文献記載事項」という。)からみて、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が適宜設定できることといえる。
そして、引用発明において履歴の範囲を「前回の大当り発生から現在に至るまで」に限らなければ、前回の大当りを発生させることとなったリーチに関する情報も含まれることとなるのは当然であるから、引用発明の履歴の範囲を「前回の大当り発生より前から現在に至るまで」とし、上記相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

[相違点2について]
特別遊技状態を導出させることとなったリーチ等についての履歴を記憶しておき、遊技者に履歴データを公開することは、例えば、特開平9-140898号公報(段落【0032】【0064】【0065】)や特開平10-174774号公報(段落【0020】【0072】【0073】)に示されるように、従来遊技機の分野において周知の技術(以下「周知技術」という。)であるから、前回大当りを発生させることとなったリーチについての情報を記憶しておき、該リーチについての情報を遊技者に公開することは、当業者にとって格別困難なことではなく、現在発生しているリーチが大当りに移行する信頼度と、前記前回大当りが発生した後、現在に至るまでに成立したリーチの種別ごとの回数表示に追加して、前回大当りを発生させることとなったリーチについての情報を公開する際に、該リーチの信頼度又はリーチの種別表示を選択することも、当業者が適宜実施し得ることであるから、上記[相違点1について]の項で述べた事項を考え合わせると、引用発明において、現在発生しているリーチが大当りに移行する信頼度と、前回大当りを発生させることとなったリーチの信頼度又はリーチの種別表示と、前回大当りが発生した後、現在に至るまでに成立したリーチの種別ごとの回数表示がなされるようにして、それぞれのリーチの信頼度を比較可能とし、上記相違点2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

(4)まとめ
以上のように相違点1及び2は、いずれも当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献記載事項及び周知技術に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明、引用文献記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成20年9月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年4月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 複数の識別情報による変動表示ゲームを表示可能な表示手段を備え、該変動表示ゲームの結果が予め定められた特別表示態様となったことに関連して遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記変動表示ゲームにおいてリーチ演出表示を実行する場合に、演出表示態様が異なるとともに前記特別表示態様の成立に対する信頼度の異なる複数種のリーチのうちから何れかを選択するリーチ選択手段と、
前記リーチ選択手段が選択した前回の特別遊技状態を導出させることとなったリーチに関わるデータを記憶可能な記憶手段と、
リーチに関わる情報を前記表示手段に表示可能なリーチ情報表示手段と、
を備え、
前記リーチ情報表示手段は、
前記リーチ選択手段が選択したリーチが特別表示態様を導出する確率としての信頼度を、前回の特別遊技状態を導出させることとなったリーチの信頼度と比較可能な態様で表示するようにしたことを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比及び判断
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、「リーチに関わるデータ」について、その限定事項である「過去の所定期間に発生した」及び「前記記憶手段が記憶するリーチに関わるデータには、前回の特別遊技状態を導出させることとなったリーチに関わるデータと、前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチに関わるデータと、を含み、」との構成を省き、さらに、「リーチ情報表示手段」について、その限定事項である「記憶手段の記憶データに基づいて、現在発生している」及び「前回の特別遊技状態の終了後に発生した特別遊技状態を導出させることとならなかったリーチの信頼度と比較可能であって、当該リーチの信頼度が全てのリーチの信頼度順に並べたうちのどの順番であるか識別可」との構成を省いたものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-19 
結審通知日 2010-01-21 
審決日 2010-02-03 
出願番号 特願2001-278172(P2001-278172)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 井上 昌宏
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 大日方 富雄  

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