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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1215851
審判番号 不服2008-29745  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-20 
確定日 2010-04-30 
事件の表示 特願2001- 50276「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年9月3日出願公開、特開2002-248219〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成13年2月26日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成20年8月8日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年11月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月22日に手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成21年10月2日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年12月10日に回答書が提出された。

第二.平成20年12月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年12月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。
「 電装装置と、制御情報を記憶するRAMと、そのRAMに記憶されている制御情報に基づいて電装装置を制御する制御装置とを有し、その制御装置は、電源遮断時にRAMに記憶されている制御情報を保存し、電源投入時にその保存した制御情報に基づいて中断された処理を再開させる機能を備えたパチンコ機において、
遊技条件を初期化するために操作される遊技条件初期化スイッチと、
電源投入時以外において遊技条件初期化スイッチが操作されたときは、RAMに記憶されている制御情報をクリアせず、電源投入時において遊技条件初期化スイッチが操作されたときは、RAMに記憶されている制御情報をクリアする第1のクリア手段と、
電源投入時においてRAMに記憶されている制御情報に異常が発生しているときに、RAMに記憶されている制御情報をクリアする第2のクリア手段と、
第1のクリア手段によりRAMに記憶されている制御情報がクリアされたときに、その制御情報のクリアを音で報知する第1の報知手段と、
第2のクリア手段によりRAMに記憶されている制御情報がクリアされたときに、その制御情報のクリアを音で報知する第2の報知手段が付加されていることを特徴とするパチンコ機。」
(下線部は補正によって変更又は追加された箇所。)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「記憶装置」、「電源復帰時」、「遊技機」及び「報知」について、各々「RAM」、「電源投入時」、「パチンコ機」及び「音で報知」とする補正である。そして、「記憶装置」、「遊技機」及び「報知」についての補正は、夫々下位概念化した「RAM」、「パチンコ機」及び「音で報知」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当し、「電源復帰時」についての補正は、本願明細書の段落【0019】の、電源復帰後に電源スイッチ108と初期化スイッチ102を同時にON操作する旨の記載、及び電源投入時に初期化スイッチ102を操作する旨の記載等を斟酌すると、誤記の訂正を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条の2)の検討
(1)先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された、特願2000-262370号(特開2001-347032号)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。
【0005】本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、バックアップ手段によりメモリの記憶内容が保持されて遊技が続行されているのか、初期状態に復帰しているのかを報知することができる遊技機を提供することを目的としている。
【0051】また、本実施の形態の主基板41では、CPU41a、ROM41b、RAM41cが、1チップにモジュール化された64ピンのマイコンとして形成されており、このマイコンでは、バックアップ用の電源端子であるVBB端子を備える。・・・
【0055】ここで、図8を参照して、図7に示すフローチャートの電源投入処理(S1)の手順を詳細に説明する。主基板41に電源基板42から電源がONされると(電源ON)、すなわち、電源基板42の電源スイッチ80がONとなるか、又は、停電状態が回復すると、主基板41のCPU41aが立ち上がり、ROM41aから読みだした制御プログラムに従って以下のような手順を行う。・・・
【0056】パチンコ機1は、電源スイッチ80が閉じられている場合にはRAM41cは、電源基板42のDC+5Vの電源電流の供給を受け、記憶内容が保持されるが、電源スイッチ80を切断した場合でも、電源基板42に備えられたバックアップ用電源の電池から電源供給線82aを介して、主基板41に備えられたワンチップマイコンのVBB端子からRAM41cに電源電流が入力されているため、RAM41cに記憶された内容はそのまま保持される。
【0057】ここで、S20において消去スイッチ42sがONされていないと判断された場合(S20:NO)、つまり消去スイッチ42sが押下されていない場合は、復電処理(S26)が行われる。復電処理(S26)は、CPU41aにより、記憶内容保持用の電源が供給されてバックアップされているRAM41cに記憶されている内容を読み出して、このRAM41cに記憶されている内容に基づいて、電源が管理者の意志により或いは意志に反して切断された場合に、パチンコ機1の状態を電源が切断される前の状態に復旧させるものである。そのため、例えば、遊技者の遊技中に事故による停電があったような場合でも、遊技者が停電前に大当たり状態であれば、電源の復旧後にRAM41cに記憶された大当たりフラグがオンになっているので、再び大当たり状態で遊技を継続することができる。
【0059】一方、消去スイッチ42sが電源投入時に押下されているとすると、消去スイッチ42sがONされていることがI/Oインタフェイス41d、信号線79aを介して検出され(S20:YES)、CPU41aにより、バックアップされているRAM41cの記憶内容をソフト的にクリアするバックアップRAMクリアの手順が実行される(S22)。この場合、RAM41cの記憶内容は完全にクリアされる。そして、バックアップRAMクリア(S22)の処理が完了すると、復電処理(S26)後と同様に、バックアップ状態報知処理(S28)が行われる。
【0062】さらに、バックアップ状態の報知を発声手段により行う場合、主基板41上のCPU41aから音基板43にスピーカー61で発声するパターンを指定する信号が送られる。音基板43では、そのパターンに従った音声情報をROM43bから読み出し駆動回路を介してスピーカー61から発声させる。ここで、消去スイッチ42sがONされていない場合には、例えば、「復旧しました」等と発声させ、消去スイッチ42sがONされている場合には、「リセットしました」等と発生したり<当審注:「発声したり」の誤記と認める。>、又は何も発声させないようにする。・・・
【0065】図7に示すフローチャートでは、電源投入処理(S1)が終了すると、次にスタックポインタの指定アドレスをセットするためのスタックポインタセット処理を行う(S2)。次いで、RAM41cの記憶内容をチェックするRAMチェックが行われる(S3)。このRAMチェック(S3)は、電源投入時の初期設定処理(S4)が行われているか否かを判断するものである。このとき、RAM41cの初期設定記憶エリアに電源投入時初期設定処理(S4)で書き込まれる所定の数値が書き込まれているか否かが判断される。
【0066】図8のバックアップRAMクリア(S22)の処理が行われている場合は、RAM41cの初期設定記憶エリアに所定の数値が書き込まれていないので(S3:NO)、電源投入時初期設定処理が行われる(S4)。また、電源投入時以外でも何らかの理由でRAM41cの記憶が正常でない状態になった場合もこのRAMチェック(S3)により正常でないと判断される。この処理では、RAM41cの各記憶エリアの記憶値を所定のデフォルト値にセットする。例えば、ループカウンタ記憶エリア(図示外)に記憶されている各ループカウンタの値を各々初期値(例えば、「0」)にセットし、初期設定記憶エリアに所定の数値を記憶させる。そして、図7の処理を一旦終了させる(終了)。
【0067】リセット信号で、また、スタートから処理が行われる。まず、電源投入処理(S1)で、消去スイッチ42sが押下されてなければ(図8:S20:NO)、復電処理(S26)が行われるが、既にRAM41cの記憶に基づいて処理されているので前述のようにここでは何も行われずスタックポインタセット処理(S2)に移行する。そしてRAMチェック(S3)では、初期設定記憶エリアに所定の数値が書き込まれているので、RAM41cは正常と判断され(S3:YES)、次の液晶画面コマンド出力処理(S5)に移行する。この液晶画面コマンド出力処理(S5)では、主基板41から図柄表示基板44に液晶画面の表示を制御する信号が送られ、図柄表示基板44ではこの制御信号を一旦RAM44cに記憶するとともに、この制御信号に基づいて指定された或いは抽選によって、ROM44bに記憶されたテーブルにより所定の図柄の情報を読み出し、図示しない駆動回路から特別図柄表示装置8に画像情報を送信する。次いで、音コマンド出力処理(S6)に移行する。この音コマンド出力処理(S6)では、主基板41から音基板43にスピーカー61で発声するパターンを指定する信号が送られ、音基板43では、そのパターンに従った音声情報をROM43bから読み出し駆動回路を介してスピーカー61から発声させる。次いで、ランプコマンド出力処理(S7)を行う。このランプコマンド出力処理(S7)では、パチンコ機1に設けられている各種のランプの点滅のパターンを指定する信号を主基板41から電飾基板46へ出力する。電飾基板46では、このパターンの電飾制御の情報をROM46bから読み取って各種ランプに駆動信号を送出する。・・・
【0080】なお、電源スイッチ80のONと消去スイッチ42sのONとをAND条件とし、電源スイッチ80をONする時点で消去スイッチ42sがONされたときのみRAM41c,43c,44c,45c,46cの消去ができ、以後は電源を一旦切断し、電源の再投入をしない限りは、消去スイッチ42sを押下してもRAM41c,43c,44c,45c,46cは、消去されないように構成してもよい。

また、上記段落【0066】には「図8のバックアップRAMクリア(S22)の処理が行われている場合は、RAM41cの初期設定記憶エリアに所定の数値が書き込まれていないので(S3:NO)、電源投入時初期設定処理が行われる(S4)。また、電源投入時以外でも何らかの理由でRAM41cの記憶が正常でない状態になった場合もこのRAMチェック(S3)により正常でないと判断される。」と記載され、電源投入処理(S1)において、復電処理(S26)が行われたときにRAMチェック(S3)が行われるのか明記されていないが、図7及び段落【0065】の記載等を参酌すると、電源投入処理(S1)の後にRAMチェック(S3)を行わない手順はなく、上記復電処理(S26)が行われたときにもRAMチェック(S3)は行われるものと考えられるので、先願発明は、電源投入処理(S1)が終了すると、RAMチェック(S3)により正常でないと判断されたときに、RAM41cの各記憶エリアの記憶値を所定のデフォルト値にセットする電源投入時初期設定処理(S4)が行われるものであると認められる。

摘記した上記の記載や図面等及び上記認定によれば、先願明細書には以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。
「 CPU41a、ROM41b、RAM41cが、1チップにモジュール化された主基板41から、図柄表示基板44に液晶画面の表示を制御する信号が送られ、該図柄表示基板44では駆動回路から特別図柄表示装置8に画像情報を送信し、次いで、前記主基板41から音基板43にスピーカー61で発声するパターンを指定する信号が送られ、該音基板43では、そのパターンに従った音声情報を前記スピーカー61から発声させ、次いで、前記主基板41から電飾基板46へ各種ランプの点滅のパターンを指定する信号を出力し、該電飾基板46では、前記各種ランプに駆動信号を送出し、前記主基板41に電源基板42から電源がONされると、前記CPU41aにより、バックアップされている前記RAM41cに記憶されている内容を読み出して、電源が切断される前の状態に復旧させるパチンコ機1において、
消去スイッチ42sを備え、
電源スイッチ80をONする時点で前記消去スイッチ42sがONされたときのみ前記RAM41cの消去ができ、以後は前記消去スイッチ42sを押下しても前記RAM41cは消去されないように構成し、
前記RAM41cの消去が完了すると、バックアップ状態報知処理(S28)が行われ、リセットしました等と発声し、
電源投入処理(S1)が終了すると、RAMチェック(S3)により正常でないと判断されたときに、前記RAM41cの各記憶エリアの記憶値を所定のデフォルト値にセットする電源投入時初期設定処理(S4)が行われるパチンコ機1。」

(2)先願発明と本願補正発明との対比
先願発明の「RAM41c」は、本願補正発明の「制御情報を記憶するRAM」に相当し、以下同様に、
「主基板41」は「制御装置」に、
「前記主基板41に電源基板42から電源がONされると」は「電源投入時に」に、
「パチンコ機1」は「パチンコ機」に、
「電源スイッチ80をONする時点」は「電源投入時」に、
「RAM41cの消去ができ」は「RAMに記憶されている制御情報をクリアする」に、
「RAM41cは消去されない」は「RAMに記憶されている制御情報をクリアせず」に、
「RAMチェック(S3)により正常でないと判断されたときに」は「RAMに記憶されている制御情報に異常が発生しているときに」に、
「RAM41cの各記憶エリアの記憶値を所定のデフォルト値にセット」は「RAMに記憶されている制御情報をクリア」に、各々相当する。
さらに、先願明細書の記載等からみて、以下のことが言える。

a.先願発明の「特別図柄表示装置8」、「スピーカー61」及び「各種ランプ」は、本願補正発明の「電装装置」に相当している。そして、先願発明の「主基板41」は「図柄表示基板44」、「音基板43」及び「電飾基板46」を介して、それぞれ「特別図柄表示装置8に画像情報を送信し」、「スピーカー61から発声させ」及び「各種ランプに駆動信号を送出」しており、先願明細書の段落【0057】及び【0058】等からみて、これらの処理がRAM41cに記憶されている内容に基づいて行われていることは明らかであるから、先願発明の「主基板41」は、本願補正発明における「RAMに記憶されている制御情報に基づいて電装装置を制御する」に相当する機能を備えるものといえる。

b.先願発明において「RAM41c」が「バックアップされている」ということは、電源遮断時に「RAM41c」に記憶されている内容が保存されているということであり、その「内容」は、本願補正発明の「制御情報」に相当するものといえるから、先願発明の「主基板41」は、本願補正発明における「電源遮断時にRAMに記憶されている制御情報を保存し」に相当する機能を備えるものといえる。
また、先願発明において「電源が切断される前の状態に復旧させる」ということは、電源が切断される前の状態に戻して処理を再開させるということにほかならず、先願発明の「RAM41cに記憶されている内容を読み出して」は、本願補正発明の「保存した制御情報に基づいて」に相当するものといえるから、先願発明の「主基板41」は、本願補正発明における「電源投入時にその保存した制御情報に基づいて中断された処理を再開させる」に相当する機能を備えるものといえる。

c.先願発明の「消去スイッチ42s」は、「RAM41cの消去」を行うために操作されるものであり、摘記した先願明細書の段落【0057】に「電源の復旧後にRAM41cに記憶された大当たりフラグがオンになっているので、再び大当たり状態で遊技を継続することができる。」と記載されていることからみて、「RAM41c」に記憶されている内容は、本願補正発明の「遊技条件」に相当するものを含んでいるといえる。
そして、「RAM41cの消去」を行うことは、「RAM41c」に記憶されている内容を初期化することにほかならないから、先願発明の「消去スイッチ42s」は、本願補正発明における「遊技条件を初期化するために操作される遊技条件初期化スイッチ」に相当するものといえる。

d.先願発明において「電源スイッチ80をONする時点で消去スイッチ42sがONされたときのみRAM41cの消去ができ、以後は消去スイッチ42sを押下してもRAM41cは消去されない」ということは、「電源スイッチ80をONする時点」以外において「消去スイッチ42sがONされたとき」は、「RAM41cは消去されない」ということであり、また逆に「電源スイッチ80をONする時点」において「消去スイッチ42sがONされたとき」は、「RAM41cの消去ができ」るということであるといえる。
そして、上記c.で述べたとおり、先願発明の「消去スイッチ42s」が本願補正発明の「遊技条件初期化スイッチ」に相当することを考慮すれば、先願発明の「消去スイッチ42sがONされたとき」は、本願補正発明における「遊技条件初期化スイッチが操作されたとき」に相当するから、先願発明は、本願補正発明における「電源投入時以外において遊技条件初期化スイッチが操作されたときは、RAMに記憶されている制御情報をクリアせず、電源投入時において遊技条件初期化スイッチが操作されたときは、RAMに記憶されている制御情報をクリアする第1のクリア手段」に相当する構成を有するものといえる。

e.先願発明において「前記RAM41cの消去が完了する」ことは、本願補正発明において「第1のクリア手段によりRAMに記憶されている制御情報がクリアされ」ることに相当し、また、先願発明において「バックアップ状態報知処理(S28)が行われ、リセットしました等と発声する」ことは、本願補正発明において「その制御情報のクリアを音で報知する」ことに相当するといえるから、先願発明は、本願補正発明の「第1のクリア手段によりRAMに記憶されている制御情報がクリアされたときに、その制御情報のクリアを音で報知する第1の報知手段」に相当する構成を有するものということができる。

f.先願発明の「電源投入時初期設定処理(S4)」は、電源投入処理(S1)が終了すると行われるものであるが、「電源投入処理(S1)」と「RAMチェック(S3)」との間には、段落【0065】に記載されるようにスタックポインタの指定アドレスをセットするためのスタックポインタセット処理(S2)が行われるだけである。
そうしてみると、「RAMチェック(S3)」及び「電源投入時初期設定処理(S4)」は「電源投入処理(S1)」の直後に行われることが明らかであるから、本願補正発明の「電源投入時において」に相当する時に行われる処理であるといえる。
そして、先願発明の「RAMチェック(S3)により正常でないと判断されたときに」及び「RAM41cの各記憶エリアの記憶値を所定のデフォルト値にセット」は、本願補正発明の「RAMに記憶されている制御情報に異常が発生しているときに」及び「RAMに記憶されている制御情報をクリア」に、それぞれ相当するから、先願発明は、本願補正発明の「電源投入時においてRAMに記憶されている制御情報に異常が発生しているときに、RAMに記憶されている制御情報をクリアする第2のクリア手段」に相当する構成を有するものといえる。

以上を総合すると、両者は、
「 電装装置と、制御情報を記憶するRAMと、そのRAMに記憶されている制御情報に基づいて電装装置を制御する制御装置とを有し、その制御装置は、電源遮断時にRAMに記憶されている制御情報を保存し、電源投入時にその保存した制御情報に基づいて中断された処理を再開させる機能を備えたパチンコ機において、
遊技条件を初期化するために操作される遊技条件初期化スイッチと、
電源投入時以外において遊技条件初期化スイッチが操作されたときは、RAMに記憶されている制御情報をクリアせず、電源投入時において遊技条件初期化スイッチが操作されたときは、RAMに記憶されている制御情報をクリアする第1のクリア手段と、
電源投入時においてRAMに記憶されている制御情報に異常が発生しているときに、RAMに記憶されている制御情報をクリアする第2のクリア手段と、
第1のクリア手段によりRAMに記憶されている制御情報がクリアされたときに、その制御情報のクリアを音で報知する第1の報知手段が付加されているパチンコ機。」
の点で一致し、以下の点で一応相違している。

[相違点1]本願補正発明は「第2のクリア手段によりRAMに記憶されている制御情報がクリアされたときに、その制御情報のクリアを音で報知する第2の報知手段が付加されている」のに対し、先願発明は、本願補正発明の「第2のクリア手段によりRAMに記憶されている制御情報がクリアされたとき」に相当する電源投入時初期設定処理(S4)が行われたときにおいて、そのことを音で報知する手段が付加されているか否か明らかでない点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
発生している異常が解除されたことを報知することは、例えば、特開平11-267335号公報(特に、段落【0040】)、特開2000-279616号公報(特に、段落【0242】)、特開2000-288201号公報(特に、段落【0024】)及び特開2001-46716号公報(特に、段落【0080】)に記載されているように、パチンコ機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術」という。)であり、音による報知も従来ごく一般的な手法である。
そして、先願明細書には摘記した段落【0005】に「本発明は、・・・バックアップ手段によりメモリの記憶内容が保持されて遊技が続行されているのか、初期状態に復帰しているのかを報知することができる遊技機を提供することを目的としている。」と記載されているところ、先願発明において「RAMチェック(S3)により正常でないと判断されたときに、前記RAM41cの各記憶エリアの記憶値を所定のデフォルト値にセット」したことを報知することが、その目的に反していないことは明らかであるから、当該「セット」の際にも「音による報知」が行われるようにすることは、単なる周知技術の付加であり、その付加により新たな効果が奏されるものでもない。
よって、上記相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎず、本願補正発明と先願発明とは実質的に同一である。

(4)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、その出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された特願2000-262370号(特開2001-347032号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、両発明の発明者が同一ではなく、また両出願の出願人がその出願の時において同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成20年12月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年8月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 電装装置と、制御情報を記憶する記憶装置と、その記憶装置に記憶されている制御情報に基づいて前記電装装置を制御する制御装置とを有し、その制御装置は、電源遮断時に前記記憶装置に記憶されている制御情報を保存し、電源復帰時にその保存した制御情報に基づいて中断された処理を再開させる機能を備えた遊技機において、
遊技条件を初期化するために操作される遊技条件初期化スイッチと、
電源復帰時以外において遊技条件初期化スイッチが操作されたときは、前記記憶装置に記憶されている制御情報をクリアせず、電源復帰時において遊技条件初期化スイッチが操作されたときは、前記記憶装置に記憶されている制御情報をクリアする第1のクリア手段と、
電源復帰時において前記記憶装置に異常が発生しているときに、前記記憶装置に記憶されている制御情報をクリアする第2のクリア手段と、
第1のクリア手段により前記記憶装置に記憶されている制御情報がクリアされたときに、その制御情報のクリアを報知する第1の報知手段と、
第2のクリア手段により前記記憶装置に記憶されている制御情報がクリアされたときに、その制御情報のクリアを報知する第2の報知手段が付加されていることを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条の2の検討
(1)先願発明
原査定の拒絶の理由に引用された先願明細書及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)先願発明と本願発明との対比及び判断
本願発明は、実質的には前記「第二」で検討した本願補正発明における「RAM」、「パチンコ機」及び「音で報知」の各々を「記憶装置」、「遊技機」及び「報知」と上位概念化したものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、当該構成要件の一部を具体的手段に下位概念化したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、先願発明と同一であるから、当該一部の構成要件が上位概念化されている本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、先願発明と同一となる。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、その出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された特願2000-262370号(特開2001-347032号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、両発明の発明者が同一ではなく、また両出願の出願人がその出願の時において同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2?6)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-23 
結審通知日 2010-03-02 
審決日 2010-03-15 
出願番号 特願2001-50276(P2001-50276)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 161- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 年彦  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 池谷 香次郎
森 雅之
発明の名称 遊技機  
代理人 小玉 秀男  

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