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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1219674
審判番号 不服2008-29057  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-13 
確定日 2010-07-08 
事件の表示 特願2002-305079「コンテンツ価格管理システム及び方法並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月13日出願公開、特開2004-139471〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は,平成14年10月18日の出願であって,平成20年6月11日付けで拒絶理由が通知され,同年8月18日に手続補正書が提出され,同年10月8日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年11月13日に審判請求がされるとともに,同年12月15日に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成20年12月15日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

補正却下の決定の結論

本件補正を却下する。

理由

1 補正の内容

本件補正は,本件補正前の

「【請求項1】
配信された暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵の配信の際に売上金の分配を決定するコンテンツ価格管理システムにおいて、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した者を示す配信関係者IDが加えられた経路データとを受け付ける受付手段と、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段と、
前記受付手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記分配データと、前記経路データとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段と
を具備するコンテンツ価格管理システム。
【請求項2】
配信された暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵の配信の際に売上金の分配を決定するコンテンツ価格管理システムにおいて、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した者を示す配信関係者IDが加えられた経路データとを受け付ける受付手段と、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段と、
前記分配データと前記経路データとをパラメータとして用いて前記課金形態に応じた分配処理を実行するプログラムを、前記受付手段によって受け付けられたコンテンツIDに対応する前記価格設定ルールに基づいて選択するプログラム選択手段と、
前記受付手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記分配データと、前記経路データと、前記プログラム選択手段によって選択されたプログラムとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段と
を具備するコンテンツ価格管理システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコンテンツ価格管理システムにおいて、
前記配信関係者から自己についての価格の振り分け内容を設定する設定命令を受け付け、前記記録手段に記録されている分配データのうち前記配信関係者に設定権限のある部分を前記設定命令にしたがって設定する設定手段を具備するコンテンツ価格管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか記載のコンテンツ価格管理システムにおいて、
前記分配データは、分配金の計算を依頼する依頼先を示す参照データを含み、
前記実行手段は、前記参照データに基づいて前記依頼先に分配金の計算命令を渡し、前記依頼先から分配金の計算結果を受け付け、前記分配金の計算結果に基づいて前記配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する
ことを特徴とするコンテンツ価格管理システム。
【請求項5】
請求項4記載のコンテンツ価格管理システムから前記分配金の計算命令を受け付ける手段と、
前記分配金の計算命令にしたがって分配金の計算を実行する手段と、
前記分配金の計算結果を、前記コンテンツ価格管理システムに渡す手段と
を具備するローカルコンテンツ価格管理システム。
【請求項6】
配信された暗号化コンテンツを復号化する復号鍵を前記暗号化コンテンツの配信先に配信するコンテンツ流通システムの鍵管理システムにおいて、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した者を示す配信関係者IDが加えられた経路データとを前記配信先から受け付け、前記コンテンツIDに対応する前記復号鍵を前記配信先に配信する鍵配信手段と、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段と、
前記鍵配信手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記分配データと、前記経路データとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段と、
前記実行手段による処理によって得られた価格データを記録する課金手段と
を具備する鍵管理システム。
【請求項7】
請求項6記載の鍵管理システムにおいて、
前記鍵配信手段は、前記配信先から前記配信先を示すユーザIDを受け付け、
前記ユーザIDに基づいて前記配信先の属するグループを判断し、前記配信先の属するグループに応じて所定の割引規則にしたがった前記価格データの変更を行う属性管理手段を具備し、
前記課金手段は、変更された前記価格データを記録する
ことを特徴とする鍵管理システム。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の鍵管理システムにおいて、
前記配信関係者から自己についての価格の振り分け内容を設定する設定命令を受け付け、前記分配データのうち前記配信関係者に設定権限のある部分を前記設定命令にしたがって設定する設定手段を具備する鍵管理システム。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれか記載の鍵管理システムにおいて、
前記分配データは、分配金の計算を依頼する依頼先を示す参照データを含み、
前記実行手段は、前記参照先データに基づいて前記依頼先に分配金の計算命令を渡し、前記依頼先から分配金の計算結果を受け付け、前記分配金の計算結果に基づいて前記配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する
ことを特徴とする鍵管理システム。
【請求項10】
コンテンツ提供システムに記録されている暗号化コンテンツをコンテンツ配信システムによって配信先に配信するとともに、鍵管理システムによって前記暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵を前記配信先に配信するコンテンツ流通システムにおいて、
前記鍵管理システムは、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した者を示す配信関係者IDが加えられた経路データとを前記配信先から受け付け、前記コンテンツIDに対応する前記復号鍵を前記配信先に配信する鍵配信手段と、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段と、
前記鍵配信手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記分配データと、前記経路データとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段と、
前記実行手段による処理によって得られた価格データを記録する課金手段とを具備し、
前記コンテンツ提供システムは、前記記録手段に記録されている分配データのうち前記コンテンツ提供システムの運営者に設定権限のある部分を設定し、
前記コンテンツ配信システムは、前記記録手段に記録されている分配データのうち前記コンテンツ配信システムの運営者に設定権限のある部分を設定する
ことを特徴とするコンテンツ流通システム。
【請求項11】
コンピュータによって、配信された暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵の配信の際に価格の分配を決定する方法において、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した者を示す配信関係者IDが加えられた経路データとを受け付けるとともに、前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた価格管理データを、記録手段から読み出し、
受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記分配データと、前記経路データとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
配信された暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵の配信の際に価格の分配を決定する管理システムに用いられるプログラムであって、
コンピュータを、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した者を示す配信関係者IDが加えられた経路データとを受け付ける受付手段、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段、
前記受付手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記分配データと、前記経路データとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項12記載のプログラムにおいて、
前記分配データは、分配金の計算を依頼する依頼先を示す参照データを含み、
前記実行手段は、前記参照データに基づいて前記依頼先に分配金の計算命令を渡し、前記依頼先から分配金の計算結果を受け付け、前記分配金の計算結果に基づいて前記配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項14】
請求項13記載のプログラムによって制御される前記管理システムとデータをやり取り可能なローカルシステムに用いられるプログラムであって、
コンピュータを、
前記管理システムから前記分配金の計算命令を受け付ける手段、
前記分配金の計算命令にしたがって分配金の計算を実行する手段、
前記分配金の計算結果を、前記管理システムに渡す手段
として機能させるためのプログラム。」

とある記載を,

「【請求項1】
暗号化コンテンツと当該暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵とを別々に配信する流通形態で用いられ、前記復号鍵の配信の際に売上金の分配を決定するコンテンツ価格管理システムにおいて、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した配信関係者を示す配信関係者IDが前記暗号化コンテンツの配信毎に加えられた経路データとを受け付ける受付手段と、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた、設定権限内で前記配信関係者が自由に設定可能な価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段と、
前記受付手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記設定権限内で設定された前記価格設定ルール及び前記分配データと、前記経路データの示す配信関係者IDとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段と
を具備するコンテンツ価格管理システム。
【請求項2】
暗号化コンテンツと当該暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵とを別々に配信する流通形態で用いられ、前記復号鍵の配信の際に売上金の分配を決定するコンテンツ価格管理システムにおいて、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した配信関係者を示す配信関係者IDが前記暗号化コンテンツの配信毎に加えられた経路データとを受け付ける受付手段と、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた、設定権限内で前記配信関係者が自由に設定可能な価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段と、
前記分配データと前記経路データとをパラメータとして用いて前記課金形態に応じた分配処理を実行するプログラムを、前記受付手段によって受け付けられたコンテンツIDに対応する前記設定権限内で設定された前記価格設定ルールに基づいて選択するプログラム選択手段と、
前記受付手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記設定権限内で設定された前記分配データと、前記経路データの示す配信関係者IDと、前記プログラム選択手段によって選択されたプログラムとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段と
を具備するコンテンツ価格管理システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコンテンツ価格管理システムにおいて、
前記配信関係者から自己についての価格の振り分け内容を設定する設定命令を受け付け、前記記録手段に記録されている分配データのうち前記配信関係者に設定権限のある部分を前記設定命令にしたがって設定する設定手段を具備するコンテンツ価格管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか記載のコンテンツ価格管理システムにおいて、
前記分配データは、分配金の計算を依頼する依頼先を示す参照データを含み、
前記実行手段は、前記参照データに基づいて前記依頼先に分配金の計算命令を渡し、前記依頼先から分配金の計算結果を受け付け、前記分配金の計算結果に基づいて前記配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する
ことを特徴とするコンテンツ価格管理システム。
【請求項5】
請求項4記載のコンテンツ価格管理システムから前記分配金の計算命令を受け付ける手段と、
前記分配金の計算命令にしたがって分配金の計算を実行する手段と、
前記分配金の計算結果を、前記コンテンツ価格管理システムに渡す手段と
を具備するローカルコンテンツ価格管理システム。
【請求項6】
暗号化コンテンツと当該暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵とを別々に配信する流通形態で用いられ、前記復号鍵を前記暗号化コンテンツの配信先に配信するコンテンツ流通システムの鍵管理システムにおいて、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した配信関係者を示す配信関係者IDが前記暗号化コンテンツの配信毎に加えられた経路データとを前記配信先から受け付け、前記コンテンツIDに対応する前記復号鍵を前記配信先に配信する鍵配信手段と、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた、設定権限内で前記配信関係者が自由に設定可能な価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段と、
前記鍵配信手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記設定権限内で設定された前記価格設定ルール及び前記分配データと、前記経路データの示す配信関係者IDとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段と、
前記実行手段による処理によって得られた価格データを記録する課金手段と
を具備する鍵管理システム。
【請求項7】
請求項6記載の鍵管理システムにおいて、
前記鍵配信手段は、前記配信先から前記配信先を示すユーザIDを受け付け、
前記ユーザIDに基づいて前記配信先の属するグループを判断し、前記配信先の属するグループに応じて所定の割引規則にしたがった前記価格データの変更を行う属性管理手段を具備し、
前記課金手段は、変更された前記価格データを記録する
ことを特徴とする鍵管理システム。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の鍵管理システムにおいて、
前記配信関係者から自己についての価格の振り分け内容を設定する設定命令を受け付け、前記分配データのうち前記配信関係者に設定権限のある部分を前記設定命令にしたがって設定する設定手段を具備する鍵管理システム。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれか記載の鍵管理システムにおいて、
前記分配データは、分配金の計算を依頼する依頼先を示す参照データを含み、
前記実行手段は、前記参照先データに基づいて前記依頼先に分配金の計算命令を渡し、前記依頼先から分配金の計算結果を受け付け、前記分配金の計算結果に基づいて前記配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する
ことを特徴とする鍵管理システム。
【請求項10】
コンテンツ提供システムに記録されている暗号化コンテンツをコンテンツ配信システムによって配信先に配信するとともに、鍵管理システムによって前記暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵を前記暗号化コンテンツとは別々に前記配信先に配信するコンテンツ流通システムにおいて、
前記鍵管理システムは、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した配信関係者を示す配信関係者IDが前記暗号化コンテンツの配信毎に加えられた経路データとを前記配信先から受け付け、前記コンテンツIDに対応する前記復号鍵を前記配信先に配信する鍵配信手段と、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された、設定権限内で前記配信関係者が自由に設定可能な価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段と、
前記鍵配信手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記設定権限内で設定された前記価格設定ルール及び前記分配データと、前記経路データの示す配信関係者IDとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段と、
前記実行手段による処理によって得られた価格データを記録する課金手段とを具備し、
前記コンテンツ提供システムは、前記記録手段に記録されている分配データのうち前記コンテンツ提供システムの運営者に設定権限のある部分を設定し、
前記コンテンツ配信システムは、前記記録手段に記録されている分配データのうち前記コンテンツ配信システムの運営者に設定権限のある部分を設定する
ことを特徴とするコンテンツ流通システム。
【請求項11】
暗号化コンテンツと当該暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵とを別々にコンピュータによって配信する流通形態で用いられ、前記復号鍵の配信の際に価格の分配を決定する方法において、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した配信関係者を示す配信関係者IDが前記暗号化コンテンツの配信毎に加えられた経路データとを受け付けるとともに、前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた、設定権限内で前記配信関係者が自由に設定可能な価格管理データを、記録手段から読み出し、
受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記設定権限内で設定された前記価格設定ルール及び前記分配データと、前記経路データの示す配信関係者IDとに基づいて、記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
暗号化コンテンツと当該暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵とを別々に配信する流通形態において、前記復号鍵の配信の際に価格の分配を決定する管理システムに用いられるプログラムであって、
コンピュータを、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した配信関係者を示す配信関係者IDが前記暗号化コンテンツの配信毎に加えられた経路データとを受け付ける受付手段、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた、設定権限内で前記配信関係者が自由に設定可能な価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段、
前記受付手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記設定権限内で設定された前記価格設定ルール及び前記分配データと、前記経路データの示す配信関係者IDとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項12記載のプログラムにおいて、
前記分配データは、分配金の計算を依頼する依頼先を示す参照データを含み、
前記実行手段は、前記参照データに基づいて前記依頼先に分配金の計算命令を渡し、前記依頼先から分配金の計算結果を受け付け、前記分配金の計算結果に基づいて前記配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項14】
請求項13記載のプログラムによって制御される前記管理システムとデータをやり取り可能なローカルシステムに用いられるプログラムであって、
コンピュータを、
前記管理システムから前記分配金の計算命令を受け付ける手段、
前記分配金の計算命令にしたがって分配金の計算を実行する手段、
前記分配金の計算結果を、前記管理システムに渡す手段
として機能させるためのプログラム。」

と補正しようとするものである。(下線は,補正された部分を示すものとして,手続補正書に付されたものを援用したものである。)

2 本件補正の補正目的の適否

本件補正は,補正前の請求項1において,補正前の「コンテンツ価格管理システム」という構成につき,「暗号化コンテンツと当該暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵とを別々に配信する流通形態で用いられ」るものと限定し,補正前の「暗号化コンテンツの流通に関係した者」という構成を,「暗号化コンテンツの流通に関係した配信関係者」と限定し,補正前の「配信関係者IDが加えられた経路データ」という構成を,「配信関係者IDが前記暗号化コンテンツの配信毎に加えられた経路データ」と限定し,補正前の「価格管理データ」という構成を「設定権限内で前記配信関係者が自由に設定可能な価格管理データ」と限定し,補正前における「暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理」の実行を,「前記設定権限内で設定された前記価格設定ルール」及び「前記経路データの示す配信関係者ID」とに基づいて行われるものと限定することで,補正後の新たな請求項1とし,さらに,補正前の請求項2,6,10,11,12において,前述の請求項1と同様の観点から限定を行うことで,補正後の新たな請求項2,6,10,11,12とするものである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。

そこで,次に,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(独立特許要件)について,検討する。

3 引用例の記載内容と引用発明

(1)原査定の拒絶理由に引用された,本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である特開2002-109398号公報(平成14年4月12日出願公開。以下「引用例」という。)には,図とともに,次の記載がある。なお,下線は,当審で付加したものである。

(ア)「【0002】【従来の技術】インターネットを始めとするネットワークの発達により、電子書籍などのデータを、オンラインで通信して、または媒体に記録して、販売する形態が最近広まっている。電子書籍についてこのような販売形態をとるシステムとして、特開2000-113050号公報に開示される電子書籍システムがある。
【0003】この公報に開示された電子書籍システムは、テキスト文書、図表および画像により構成された書籍を電子化した電子書籍として配付し、電子書籍を特定の手順を実行することでしか読み出せない電子書籍システムであって、電子書籍を作成および販売するためにコンピュータおよび通信機器等により構成された電子書店と、電子書籍の購入・管理・閲覧等を特定の手順で行なうためにコンピュータおよび通信機器等により構成された電子書籍ビューアとを含み、電子書店は、電子書籍毎の閲覧鍵を用いて、電子書籍の一部の情報が閲覧不可となる暗号化を施して配付するための配布手段と、暗号化を解除する閲覧鍵を販売および配付するための送信手段と、配布手段および通信手段を制御するための制御手段とを含み、電子書籍ビューアは、暗号化された電子書籍を記録および映像出力するための暗号化情報出力手段と、電子書籍の正規情報を映像化するための閲覧鍵の購入および受信するための受信手段と、閲覧鍵により暗号化を解除して電子書籍の正規情報を出力するための正規情報出力手段とを含む。
【0004】この公報に開示された電子書籍システムによると、電子書籍の発行元である電子書店は、電子書籍を専用に表示する電子書籍ビュアーでのみ読み出せる形式で、かつ、その書籍専用の閲覧鍵により一部暗号化し、閲覧鍵のない状態では一部の情報が正常に読み出せない形式で、配布する。購読者は、一部の内容が欠落した電子書籍を閲覧してみて、正規の情報入手を希望する場合、閲覧鍵を有償にて入手し、暗号部分を解除して全ての情報を閲覧する。」

(イ)「【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0022】図1を参照して、本実施の形態に係る課金収受装置100を含む、電子コンテンツ販売システムは、コンテンツの著者がコンテンツを作成して、作成したコンテンツを記憶させる著者サーバ200と、著者サーバ200から著者が作成したコンテンツを受信して、各配信サーバに送信することによりコンテンツを仮想的に出版する出版会社サーバ300と、出版会社サーバ300からコンテンツを受信して広告情報および配布経路ID(Identification)を付加して、ユーザ端末500、550に送信する配信サーバ400、450と、配信サーバ400から受信したコンテンツの試読範囲を表示したり、試読範囲制限を解除するための購読要求情報を課金収受サーバ100に送信したり、課金収受サーバ100から試読範囲を解除する購読許可情報を受信して、コンテンツ全体を表示したりするユーザ端末500、550と、ユーザ端末500のハードウェア製作会社サーバ600と、ユーザ端末500のソフトウェア製作会社サーバ700とを含む。なお、ユーザ端末550のハードウェア製作会社サーバおよびソフトウェア製作会社は、ユーザ端末500のハードウェア製作会社サーバおよびソフトウェア製作会社とは異なる製作会社である。
【0023】各サーバは、ネットワークにより接続され、互いにデータ通信が可能である。出版会社サーバ300は、著者サーバ200から受信したコンテンツに、無料で購読できる範囲を示す試読範囲情報などを付加したコンテンツ本体データを作成する。このコンテンツ本体データのデータ構造を図2に示す。図2に示すように、コンテンツ本体データは、コンテンツを特定するためのコンテンツIDと、このコンテンツIDに基づいてこのコンテンツの著者を特定するための著者IDと、このコンテンツIDに基づいてこのコンテンツの出版会社を特定するための出版会社IDと、このコンテンツの販売価格と、このコンテンツの購読可能期間を示す使用期限情報と、試読範囲情報とを含む。試読範囲情報とは、購読許可情報を課金収受装置から受信していない場合に、ユーザ端末500において無料で購読できるコンテンツの範囲を示したものである。作成されたコンテンツ本体データは、複数の配信サーバ400、450に送信される。
【0024】配信サーバ400は、出版会社サーバ300から受信したコンテンツ本体データに、広告情報と配布経路IDとを付加したユーザ端末向けコンテンツ本体データと、受信したコンテンツ本体データから必要なデータを抽出したコンテンツ特定情報とを生成する。このユーザ端末向けコンテンツ本体データのデータ構造を図3に、コンテンツ特定情報のデータ構造を図4に示す。
【0025】図3に示すように、ユーザ端末向けコンテンツ本体データは、図2に示すコンテンツ本体データに、配布経路IDと広告情報とを付加したものである。広告情報は、配信サーバ400に記憶された中から、適宜選択されてコンテンツ本体データに付加され、このコンテンツとともにユーザ端末に表示される広告を表わす情報である。配布経路IDは、仮想的にコンテンツを出版する正規の出版会社を特定するためのものであって、これに基づいて、ユーザ端末500において、正規でない方法により出版されたコンテンツ(たとえば、不正にコピーしたコンテンツ)とを区別する。広告情報などが付加されたユーザ端末向けコンテンツ本体データは、ユーザ端末500からの要求に応答して、ユーザ端末500に配信される。
【0026】図4に示すように、コンテンツ特定情報は、図2に示すコンテンツ本体データから抽出したコンテンツIDと著者IDと出版会社IDと販売価格と、コンテンツ本体データに付加した広告情報の広告主を特定するための広告主IDと、その広告主が負担する負担金を表わす情報とを含む。コンテンツ特定情報は、課金収受装置100がユーザ端末500から購読希望を要求されたときに、コンテンツを特定するための情報である。また、課金収受装置100は、このコンテンツ特定情報に基づいて、コンテンツの購読に対する課金を分配した分配金情報を作成する。
【0027】なお、ネットワークを介してオンラインで配信するのではなく、広告情報と配布経路IDとを付加したユーザ端末向けコンテンツ本体データを記録媒体に記録して、その記録媒体をユーザに配送してもよい。
【0028】なお、本実施の形態で送受信される全てのデータは、暗号化されかつデータ改ざんを防止する情報が付与されている。
【0029】ユーザ端末500は、配信サーバ400から受信したコンテンツの試読範囲を表示する。ユーザが試読範囲を購読して、試読範囲以外の購読を希望する場合、図5に示す購読要求情報を課金収受装置100に送信する。図5に示すように、購読要求情報は、試読範囲の制限を解除したいコンテンツを特定するためのコンテンツIDと、ユーザ端末500が受信したコンテンツ本体データから抽出した配布経路IDと、ユーザを特定するためのユーザIDと、ユーザ端末500を特定するためのビューアIDとを含む。【0030】課金収受装置100は、ユーザ端末から購読要求情報を受信して、ユーザから課金を収受すると、図6に示す購読許可情報をユーザ端末500に送信する。図6に示すように、購読許可情報は、コンテンツIDとユーザIDとビューアIDとに加えて、購読許可期間を表わす有効期限の情報と、再生範囲を示す情報と、広告情報を再生するための広告再生情報とを含む。この再生範囲を示す情報に基づいて、ユーザ端末500にコンテンツの内容が表示され、ユーザがその内容を購読できる。」

(ウ)「【0036】図9を参照して、課金収受装置100の固定ディスク124に記憶されるコンテンツ毎の販売価格の分配テーブルについて説明する。図9に示すように、分配テーブルは、コンテンツID毎に、出版会社、著者、配布業者およびユーザ端末製造会社の販売価格の分配割合が記憶される。なお、販売価格とは、コンテンツ毎に定められたコンテンツの購読に対する対価である。販売価格のうち、広告主が負担する広告主負担金を差引いた価格が、コンテンツを購読するユーザが負担する金額になる。」

(エ)「【0039】図12を参照して、配信サーバ400で実行されるプログラムは、コンテンツ作成処理に関し、以下のような制御構造を有する。
【0040】まず、ステップ100(以下、ステップをSと略す。)にて、CPU420は、出版会社サーバ300から図2に示すコンテンツ本体データを受信したか否かを判断する。出版会社サーバ300からコンテンツ本体データを受信すると(S100にてYES)、処理はS102へ移される。一方、出版会社サーバ300からコンテンツ本体データを受信しないと(S100にてNO)、出版会社サーバ300からコンテンツ本体データの受信を待つ。
【0041】S102にて、CPU420は、コンテンツ本体データから、コンテンツID、著者ID、出版会社IDおよび販売価格を抽出して、図4に示すコンテンツ特定情報を作成する。
【0042】S104にて、CPU420は、この配信サーバ400を特定するための、配布経路IDを、固定ディスク424から読出す。なお、この配布経路IDは、各配信サーバ毎に、配信サーバを一意に特定できるように予め設定されている。
【0043】S106にて、CPU420は、S100にて受信したコンテンツ本体データに、S104にて読出した配布経路IDを付加する。
【0044】S108にて、CPU420は、コンテンツ本体データに広告情報を付加するか否かを判断する。この判断は、コンテンツ毎に予め定められた広告付加情報(広告情報付加フラグ、広告種類ID、広告主ID等)に基づいて行なわれる。コンテンツ本体データに広告情報を付加する場合には(S108にてYES)、処理はS110へ移される。一方、コンテンツ本体データに広告情報を付加しない場合には(S108にてNO)、処理はS116へ移される。
【0045】S110にて、CPU420は、固定ディスク424に記憶された広告情報から、広告付加情報に基づいて該当する広告情報を読出す。このとき、広告主IDと広告主負担金が、広告情報とともに読出される。
【0046】S112にて、CPU420は、コンテンツ本体データに広告情報を付加して、ユーザ端末向けコンテンツ本体データを作成する。
【0047】S114にて、CPU420は、S102にて作成したコンテンツ特定情報に広告主IDと広告主負担金を付加する。
【0048】S116にて、CPU420は、コンテンツ特定情報を課金収受装置100に送信する。このとき課金収受装置100に送信されるコンテンツ特定情報は、図4に示すデータ構造を有する。
【0049】S118にて、CPU420は、ユーザ端末向けコンテンツ本体データを固定ディスク424に記憶する。」

(オ)「【0064】ユーザ端末500が購読要求情報を送信したことに応答して、課金収受装置100のCPU120は、ユーザ端末500から購読要求情報を受信したか否かを判断する。ユーザ端末500から購読要求情報を受信すると(S300にてYES)、処理はS300に移される。一方、ユーザ端末500から購読要求情報を受信しないと(S300にてNO)、ユーザ端末500から購読要求情報を受信するまで待つ。
【0065】S302にて、CPU120は、S300にて受信した購読要求情報のコンテンツIDに基づいて、コンテンツ特定情報を読出す。このコンテンツ特定情報は、上述のように、固定ディスク124に記憶されている。なお、このコンテンツ特定情報は、図4に示すデータ構造を有する。
【0066】S304にて、CPU120は、S302にて固定ディスク124から読出したコンテンツ特定情報に基づいて、(販売価格-広告主負担金)をユーザIDにより特定されるユーザから収受する。
【0067】S306にて、CPU120は、コンテンツ特定情報に基づいて、広告主負担金を、広告主IDにより特定される広告主から収受する。この、S304およびS306における課金の収受については、オンライン口座における決済を用いるものであっても、電子マネーにおける決済を用いるものであっても構わない。
【0068】S308にて、CPU120は、ユーザおよび広告主から課金を収受する処理が完了したか否かを判断する。課金を収受する処理が完了すると(S308にてYES)、処理はS310へ移される。一方、課金を収受する処理が完了しないと(S308にてNO)、処理はS312へ移される。
【0069】S312にて、CPU120は、課金を収受する処理の開始から一定時間が経過したか否かを判断する。課金を収受する処理の開始から一定時間が経過すると(S312にてYES)、処理はS314に移される。一方、課金を収受する処理の開始から一定時間が経過するまでは(S312にてNO)、処理はS308へ戻され、課金を収受する処理の完了を待つ。
【0070】S314にて、CPU120は、一定時間が経過するまでに課金処理を終了しなかったことに基づくエラー処理を行なう。たとえば、広告主から広告主負担金を収受できない場合、ユーザ端末500に、広告主からの広告主負担金が収受できない旨が送信される。
【0071】S310にて、CPU120は、図6に示すコンテンツの購読の有効期限と再生範囲とを含む購読許可情報を生成して、購読要求情報を送信したユーザ端末500に送信する。
【0072】課金収受装置100の購読許可情報の送信に応答して、S228にて、ユーザ端末500のCPU500には、課金収受装置100から購読許可情報を受信したか否かを判断する。課金収受装置100から購読許可情報を受信すると(S228にてYES)、処理はS230へ移される。一方、課金収受装置100から購読許可情報を受信しないと(S228にてNO)、課金収受装置100から購読許可情報を受信するまで待つ。
【0073】S230にて、CPU502は、S228にて受信した購読許可情報に基づいて、コンテンツ本体データの再生範囲を、表示部514に表示する。なおこのとき、購読許可情報に含まれる広告再生情報に基づいて、図3に示すコンテンツ本体データに含まれる広告情報が再生され、表示部514に広告情報が表示される。
【0074】図16を参照して、S316にて、CPU120は、S310における処理の後、ユーザ端末500から受信した購読要求情報に含まれるコンテンツIDに基づいて、分配テーブルから分配比率を読出す。このとき使用される分配テーブルは、固定ディスク124に予め記憶され、図9に示す分配テーブルである。
【0075】S318にて、CPU120は、購読要求情報に含まれるビューアIDに基づいて、ビューアID毎に定められた分配テーブルから分配比率を読出す。このとき使用される分配テーブルは、予め固定ディスク124に記憶された、図10に示す分配テーブルである。
【0076】S320にて、CPU120は、S316およびS318にて読出した分配比率と、ユーザおよび広告主から収受した販売代金とに基づいて、分配金を算出する。
【0077】S322にて、CPU120は、S320にて算出した分配金の情報を、出版会社IDに基づく出版会社、著者IDに基づく著者、配布経路IDに基づく配送業者、ビューアIDに基づくユーザ端末500のハードウェア製造会社とソフトウェア製造会社の各サーバにオンラインで送信する。」

(2)以上によれば,引用例には

「出版会社サーバは,受信したコンテンツに出版会社IDを付加したコンテンツ本体データを作成し,それを配信サーバに送信し,
配信サーバは,出版会社サーバから受信したコンテンツ本体データに,配信サーバを一意に特定する配信経路IDを付加したユーザ端末向けコンテンツ本体データを生成し,それをユーザ端末に配信し,
また,配信サーバは,出版会社IDを含むコンテンツ特定情報を課金収受装置に送信し,
ユーザ端末は,受信したユーザ端末向けコンテンツ本体データの試読範囲以外の購読を希望する場合,コンテンツを特定するためのコンテンツIDと配布経路IDとを含む購読要求情報を課金収受装置に送信し,
課金収受装置は,コンテンツID毎に,出版会社,著者,配送業者の販売価格の分配割合が記憶される分配テーブルを記憶しており,ユーザ端末から受信した購読要求情報に含まれるコンテンツIDに基づいて,分配テーブルから分配比率を読出し,読出した分配比率に基づいて,ユーザから収受した課金につき分配金を算出し,出版会社IDに基づく出版会社,配布経路IDに基づく配送業者に分配金の情報を送信し,
また,課金収受装置は,購読許可情報をユーザ端末に送信する
ことを特徴とするシステム。」(以下「引用発明」という。)

が記載されていると認められる。

4 対比

ア 引用発明におけるコンテンツ本体データ及びユーザ端末向けコンテンツ本体データは,試読範囲が制限されたコンテンツであり,課金収受装置から購読許可情報を取得することにより,その制限が解除されるものである。そして,引用発明において前提となる従来技術の説明では,コンテンツの一部を閲覧不可とするために暗号化を行い,それを解除するために閲覧鍵を入手することが記載されているから(前記第2,3,(1),(ア)参照。),引用発明においても,暗号化によって試読範囲の制限が行われ,その制限を解除するために取得される購読許可情報が閲覧鍵を含むものであると考えるのが自然である。そうすると,引用発明の「コンテンツ本体データ」及び「ユーザ端末向けコンテンツ本体データ」は,本願補正発明の「暗号化コンテンツ」に相当し,引用発明の「購読許可情報」は,本願補正発明の「暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵」に相当する。
イ 引用発明の「課金収受装置」は,購読許可情報をユーザ端末に送信するとともに,分配比率に基づいて,ユーザから収受した課金につき分配金を算出する装置であるから,本願補正発明の「復号鍵の配信の際に売上金の分配を決定するコンテンツ価格管理システム」に相当する。
ウ 引用発明では,ユーザ端末に対し,ユーザ端末向けコンテンツ本体データ(本願補正発明の「暗号化コンテンツ」に相当。)は,配信サーバから,購読許可情報(本願補正発明の「暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵」に相当。)は,課金収受装置から,それぞれ別々に配信されているから,引用発明の課金収受装置は,本願補正発明と同様に「暗号化コンテンツと当該暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵とを別々に配布する流通形態」で用いられるものであると認められる。
エ 引用発明の「出版会社ID」及び「配信経路ID」は,コンテンツの流通に関わった出版会社及び配送業者を識別する情報であるから,それぞれが,本願補正発明の「暗号化コンテンツの流通に関係した配信関係者を示す配信関係者ID」に相当する。
オ 引用発明のユーザ端末向けコンテンツ本体データに付された「出版会社ID」及び「配信経路ID」からなる情報は,当該コンテンツが,出版会社ID及び配布経路IDで特定される出版会社及び配送業者を経由して流通されたことを示す情報であるから,本願補正発明の「経路データ」に相当する。
カ 引用発明では,出版会社サーバにおいて,配信サーバに送信されるコンテンツに出版会社IDが,配信サーバにおいて,ユーザ端末に配信されるコンテンツに配信経路IDが,それぞれ付加されているから,暗号化コンテンツの流通に関係した配信関係者を示す配信関係者IDが,本願補正発明と同様に「暗号化コンテンツの配信毎に加えられ」ているものと認められる。
キ 引用発明では,「出版会社ID」及び「配信経路ID」からなる情報(本願補正発明の「経路データ」に相当。)は,ユーザ端末向けコンテンツ本体データに付されてユーザ端末に配信されるから,本願補正発明と「暗号化コンテンツとともに流通」されるものである点において共通している。
ク 引用発明では,課金収受装置が,ユーザ端末から,コンテンツIDを含む購読要求情報を受け付けているから,本願補正発明と同様に「暗号化コンテンツのコンテンツIDを受け付ける受付手段」を備えているといえる。
ケ 引用発明の「分配テーブル」は,コンテンツID毎に記憶され,分配金を算出するための分配内容を示す情報であるから,後述する相違点はあるものの,本願補正発明の価格管理データと,「暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと,前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた」ものである点において共通している。そして,引用発明では,課金収受装置は,記憶されている分配デーブルの情報を読み出して算出に利用しているから,本願補正発明と同様に「価格管理データを,記録手段から読み出すデータ読み出し手段」を備えていると認められる。
コ 引用発明では,ユーザ端末から受信した購読要求情報に含まれるコンテンツIDに基づいて,分配テーブルから分配比率を読出し,読出した分配比率に基づいて,ユーザから収受した課金につき分配金を算出しており,さらに,当該分配は,出版会社IDに基づく出版会社,配布経路IDに基づく配送業者等に対してなされているから,引用発明の課金収受装置は,本願補正発明のコンテンツ価格管理システムと「受け付け手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記配分データと,配信関係者IDとに基づいて,前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段」を備える点で共通している。

(3)一致点と相違点について

そうすると,本願補正発明と引用発明の一致点と相違点は,次のとおりと認められる。

ア 一致点

「暗号化コンテンツと当該暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵とを別々に配信する流通形態で用いられ,前記復号鍵の配信の際に売上金の分配を決定するコンテンツ価格管理システムにおいて,
前記暗号化コンテンツの流通に関係した配信関係者を示す配信関係者IDが前記暗号化コンテンツの配信毎に加えられた経路データが,前記暗号化コンテンツとともに流通しており,
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDを受け付ける受付手段と,
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと,前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた,価格管理データを,記録手段から読み出すデータ読み出し手段と,
前記受付手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記分配データと,配信関係者IDとに基づいて,前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段と
を具備するコンテンツ価格管理システム。」

イ 相違点

[相違点1]本願補正発明では,暗号化コンテンツの価格の振り分けにおいて,暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者を特定するための配信関係者IDが,暗号化コンテンツとともに流通する経路データを受け付けることで取得されているのに対し,引用発明では,そうではない点。

[相違点2]本願補正発明では,価格管理データに,暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールが含まれ,暗号化コンテンツの価格の振り分けが,当該価格設定ルールにも基づいて行われるのに対し,引用発明では,それが明らかでない点。

[相違点3]本願補正発明では,価格管理データが,設定権限内で配信関係者が自由に設定可能なものであるのに対し,引用発明では,それが明らかでない点。

5 判断

(1)相違点1について

コンテンツの価格の振り分けにおいて,コンテンツの配信に関係した者を特定するための識別子を,コンテンツとともに流通する経路データを受け付けることで取得するようにすることは,当業者においては,周知の技術的事項にすぎない。
これに関して,例えば,特開2002-229960号公報には,デジタルコンテンツとともに流通する流通履歴情報(特に段落【0030】参照。)を受け付けることで,デジタルコンテンツの配信に関係した者を特定し(特に段落【0038】,【0040】参照。),デジタルコンテンツの価格の振り分けを行う(特に段落【0046】,【0047】参照。)ことが開示され,特開2000-298689号公報には,デジタル著作物とともに流通する利用経路情報(特に段落【0032】参照。)を受け付けることで,デジタル著作物の配信に関係した者を特定し(特に段落【0037】参照。),デジタル著作物の価格の振り分けを行う(特に段落【0048】-【0050】参照。)ことが開示されている。
そうすると,引用発明において,かかる周知の技術的事項を適用し,暗号化コンテンツの価格の振り分けにおいて,暗号化コンテンツの配信に関係した者を特定する配信関係者IDを,暗号化コンテンツとともに流通する経路データを受け付けることで取得するようにし,相違点1にかかる構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。

(2)相違点2について

価格設定を課金形態に応じて行わせることは,広く行われている程度のことであり,当業者においては,周知の技術的事項にすぎない。
そうすると,引用発明において,かかる周知の技術的事項を適用し,暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールを価格管理データに含ませるようにして,暗号化コンテンツの価格の振り分け処理を価格設定ルールにも基づいて行うようにし,相違点2にかかる構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。

(3)相違点3について

引用発明においても,価格管理データは,流通させるコンテンツに対応して設定しなければならないから,設定可能であるのは明らかである。そして,その設定を行うにあたり,いかなる者がいかなる権限に基づきこれを行うかは,システム構成外の単なる取り決めに過ぎず,当業者が必要に応じて適宜採用し得ることである。
そうすると,引用発明において,価格管理データを,設定権限内で配信関係者が自由に設定可能なものにし,相違点3にかかる構成とすることは,必要に応じて,当業者が適宜なし得たことといえる。

(4)結論

以上のとおり,相違点1?3に係る構成は,いずれも,当業者が容易に想到し得たものである。そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明及び周知の技術的事項に基づき,当業者が,予測できる範囲のものである。
したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 むすび

以上の次第で,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法第126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明

1 本願発明の内容

以上のとおり,本件補正(平成20年12月15日に提出された手続補正書による補正)は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本件補正前の請求項1(平成20年8月18日に提出された手続補正書により補正された請求項1)に記載されたとおりのものであり,以下に再掲する。

「【請求項1】
配信された暗号化コンテンツを復号化するための復号鍵の配信の際に売上金の分配を決定するコンテンツ価格管理システムにおいて、
前記暗号化コンテンツのコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツとともに流通し前記暗号化コンテンツの流通に関係した者を示す配信関係者IDが加えられた経路データとを受け付ける受付手段と、
前記暗号化コンテンツを示すコンテンツIDと、前記暗号化コンテンツの課金形態に応じて設定された価格設定ルールと、前記暗号化コンテンツの価格の振り分け内容を示す分配データとを対応付けた価格管理データを、記録手段から読み出すデータ読み出し手段と、
前記受付手段によって受け付けられた前記コンテンツIDに対応する前記分配データと、前記経路データとに基づいて、前記暗号化コンテンツの配信に関係した配信関係者に対して前記暗号化コンテンツの価格を振り分ける処理を実行する実行手段と
を具備するコンテンツ価格管理システム。」

2 引用例の記載内容と引用発明

引用例の記載内容については,前記第2,3,(1)で,引用発明については,前記第2,3(2)で認定したとおりである。

3 対比・判断

第2,2で述べたように,本願補正発明は,本願発明に限定的減縮を加えたものである。逆に言えば,本件補正前の発明(本願発明)は,本願補正発明から,この限定をなくしたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定したものである本願補正発明が,前記第2,5において検討したとおり,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものということができる。また,その作用効果も,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が予測できる程度のものである。

4 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。

したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-30 
結審通知日 2010-05-11 
審決日 2010-05-24 
出願番号 特願2002-305079(P2002-305079)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 幸一  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 山本 穂積
小林 義晴
発明の名称 コンテンツ価格管理システム及び方法並びにプログラム  
代理人 河野 哲  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河井 将次  
代理人 中村 誠  
代理人 村松 貞男  

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