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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1223587
審判番号 不服2009-10128  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-21 
確定日 2010-09-17 
事件の表示 特願2003-49130「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年9月16日出願公開、特開2004-254931〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成15年2月26日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成21年1月29日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成21年5月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成22年1月27日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成22年3月19日に回答書が提出されている。

第二.平成21年5月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年5月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。
「 数字を含んで形成される複数の識別情報を複数列に渡って変動表示可能な表示装置と、前記識別情報を複数列に変動表示させた後に、複数列の前記識別情報を停止表示させる制御を実行する表示制御手段と、変動表示終了後に停止表示される前記識別情報が複数列に渡って同一の数字が揃った特定の表示結果となった場合に、遊技者にとって有利な特定遊技状態を生起させる制御手段とを備え、前記特定の表示結果には、前記特定遊技状態が生起されるとともに前記特定遊技状態とは異なる特典遊技状態が生起されることを示す特別表示結果と、前記特定遊技状態が生起される一方、前記特典遊技状態が生起されないことを示す非特別表示結果とが含まれる遊技機において、
前記特別表示結果を形成する識別情報には、後記第2、3の数字とは異なる数字の第1の数字により形成される第1の識別情報と、前記第1の数字とは異なる数字で、かつ後記第3の数字と同一の数字の第2の数字及び当該数字の周りに描写される模様、数字の形状または数字の色の装飾により予め定められた形態で形成される第2の識別情報とが含まれ、前記非特別表示結果を形成する前記識別情報には、前記第2の数字と同一の数字の第3の数字及び当該数字の周りに描写される模様、数字の形状または数字の色の装飾が前記第2識別情報の装飾と僅かに異なって、前記第2の識別情報と容易に識別できないように予め定められた形態で形成される第3の識別情報が含まれ、
前記表示制御手段は、前記特定の表示結果になるように前記識別情報を停止表示させる場合、前記識別情報を停止表示される以前に、前記特定の表示結果となる識別情報を一旦停止表示する一旦停止表示制御手段と、前記一旦停止表示した後に再度変動させて前記特定の表示結果となる識別情報を停止表示する再変動表示制御手段と、前記第2の識別情報または前記第3の識別情報が同一の数字で揃った表示結果である場合の前記特定遊技状態中、数字以外の画像を前記表示装置に表示することによって、前記特定の表示結果が、前記特別表示結果または前記非特別表示結果のいずれであるかを報知する特定遊技状態表示制御手段とを有することを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正によって追加又は変更された箇所。)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である、「第2の識別情報」、「第3の識別情報」及び「特定遊技状態中」について、それぞれ「後記第3の数字と同一の数字の第2の数字及び当該数字の周りに描写される模様、数字の形状または数字の色の装飾により予め定められた形態で形成される」点、「前記第2の数字と同一の数字の第3の数字及び当該数字の周りに描写される模様、数字の形状または数字の色の装飾が前記第2識別情報の装飾と僅かに異なって、前記第2の識別情報と容易に識別できないように予め定められた形態で形成される」点、及び「前記第2の識別情報または前記第3の識別情報が同一の数字で揃った表示結果である場合の」ものである点を限定する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-263306号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

【0011】図1は、本発明による遊技機の制御方式の好適な実施形態を説明する簡単なフローチャートである。このフローチャートは、遊技者の利益として上述した確率変動を制御するものである。先ず、遊技球が始動領域27を通過したか否かを判断する(ステップS1)。これは、図5に示す遊技領域20内に設けられた始動領域27に内蔵する近接センサ等の検知出力により判断する。次に、遊技球が始動領域27を通過した場合(ステップS1:Y)には、図柄表示装置30の表示図柄の変動を開始する(ステップS2)。なお、この際に、後述のように少なくとも1つの図柄表示領域の周囲に複数種類(例えば第1および第2)の装飾図柄を表示する。遊技球が始動領域27に入賞しなかった場合(ステップS1:N)には、入賞するのを待ち、図柄表示装置30の表示図柄は変動しない。上述したステップS2の後に、変動中の表示図柄が順次停止して確定表示図柄が表示されると、この確定表示図柄が「大当り図柄」か否かを判断する(ステップS4)。「大当り図柄」でない場合(ステップS4:N)には、「外れ」となる(ステップS3)。
【0012】一方、「大当り図柄」の場合(ステップS4:Y)には、図柄表示装置30の表示図柄に第1装飾図柄(キャラクタ)が付加されているか否か判断する(ステップS5)。第1装飾図柄が付加されている場合(ステップS5:Y)には、遊技者の利益が高い、例えば「確率変動の大当り状態」とする(ステップS6)。また、第1装飾図柄の付加がない場合(ステップS5:N)には、第2装飾図柄が付加され「通常の大当り状態」とする(ステップS7)。ここで、ステップS7の「通常の大当り状態」では、遊技領域の大入賞口28を一定時間開放し、遊技領域20を流下する遊技球の入賞を容易にし、遊技者に多数の賞球が払い出される。また、ステップS6に示す「確率変動の大当り状態」の場合には、上述した「通常の大当り」と同様に大入賞口28が開放して多数の賞球を払い出すとともに、次回に遊技球が始動領域27に入賞したとき、「大当り発生確率」を上述した約1/300の通常確率より高い大当り確率、例えば1/30等に変更して遊技者の利益を高める。なお、図1に示す特定例では、この利益変動を、通常確率から高確率状態の2種類に変更しているが、必ずしもこれに限定するものではなく、表示図柄に第1装飾図柄が付加される場合、第2装飾図柄が表示されている場合および第1および第2装飾図柄ともに表示されていない場合の3つの場合に応じて遊技者の利益(例えば、大当り発生確率)を変更することも可能である。
【0013】次に、図2(A)?(D)は、本発明による遊技機の制御方式の第1実施形態に基づく図柄表示装置(図5の図柄表示装置30参照)の図柄表示例である。図2(A)は、遊技球が始動領域27に入賞し、図柄表示装置30の第1、第2および第3(左、中央および右)図柄表示領域に表示される表示図柄が変動(スクロール)を開始した状態を示す。各図柄表示領域に選択表示される表示図柄50は、例えば「1」?「15」の15種類の数字である。変動は高速であるので、一度変動を開始すると、停止するまで表示図柄を視認するのは困難である。そこで、図2(A)中では、変動中の各表示図柄50を3本の矢印40で示している。また、図2(A)中の第1(または左)図柄表示領域には、変動中の表示図柄(矢印40)の周囲に、別の矢印46で示すように図柄表示装置30の複数の方向から複数の第1装飾図柄(例えばハッピーマーク)42および第2装飾図柄(例えばアングリーマーク)44が飛来する(または飛び込む)。この装飾図柄の飛来は、同時または順次(連続的)であっても良い。この特定例では、第1装飾図柄42および第2装飾図柄44は、それぞれ4個である。しかし、これら第1装飾図柄42および第2装飾図柄44の個数および割合は、何ら制限がなく、任意に選定可能である。
【0014】図2(B)は、図2(A)に示す図柄変動開始から一定時間が経過した停止時間に近づき、第1図柄表示領域の表示図柄50の変動速度が低下した状態を示す。この停止直前状態では、変動(スクロール)中の表示図柄50の視認が可能になる。この特定例では、第1図柄表示領域に低速で変動中の表示図柄「5」および「4」が視認できる。ここで、表示図柄「5」には第1装飾図柄42が付加され、表示図柄「4」には第2装飾図柄44が付加されている。上述した図2(A)では、第1装飾図柄42および第2装飾図柄44の割合が1:1であるので、表示図柄50には、第1装飾図柄42および第2装飾図柄44が略1:1の割合で選択的に付加されることを予告可能である。また、この状態で、第2図柄表示領域(右)および第3図柄表示領域(中央)の表示図柄は高速で変動中であり、矢印40で示す。
【0015】次に、図2(C)は、上述した図2(B)より少し時間が経過して、第1図柄表示領域(左)の表示図柄50の変動が終了し、確定図柄「2」が停止表示されている状態を示す。この特定例では、表示図柄「2」には、第1装飾図柄42が付加されている。このとき、第2および第3図柄表示領域の表示図柄は、まだ変動中である。一方、図2(D)は、図2(C)の状態からさらに時間が経過して、第2図柄表示領域(右)および第3図柄表示領域(中央)の表示図柄50の変動も停止し、全ての表示図柄50が停止表示されている。この特定例では、確定表示図柄「222」が表示され、第1図柄表示領域の表示図柄「2」に第1装飾図柄42が付加されている状態を示す。なお、これら第2および第3図柄表示領域の表示図柄50は、同時に停止表示されるのではなく、第1表示図柄(左)、第2表示図柄(右)および第3表示図柄(中央)の順に、順次停止表示され、遊技者の関心を惹きつけるように演出表示すること、従来の遊技機と同様である。ここで、第1および第2図柄表示領域の確定(または停止)表示図柄50が同じ(例えば「2」)のとき、「リーチ状態」という。
【0016】図2(D)の確定表示図柄「222」は、3個の表示図柄50が揃った「大当り図柄」である。従って、遊技機は、「大当り状態」となり、大入賞口28が開放して、遊技者に有利な遊技状態となる。さらに、第1図柄表示領域(左)の確定表示図柄「2」に第1装飾図柄44が付加されているので、「確率変動の大当り状態」であることを示す。そこで、次回に遊技球が始動領域27に入賞すると、「大当り図柄」の発生確率を通常の場合よりも高くなること、上述のとおりである。すなわち、本発明の遊技機の制御方式によると、確定表示図柄が、予め遊技機が乱数により選択した「111」、「333」、…のように「特定図柄」であるか否かではなく、特定図柄表示領域の確定表示図柄50に第1装飾図柄42が付加されているか、第2装飾図柄44が付加されているかで決定され、さらに表示図柄50の確定前(または表示図柄の変動中)にこの図柄表示領域の周囲に表示される装飾図柄42および44の個数等により、表示図柄に50に装飾図柄42、44が付加される期待度も同時に表示可能である。従って、遊技者は図柄表示装置30の表示に常時注目することとなり、遊技者の興ざめを解消する。
【0017】なお、図2(D)の「大当り状態」では、第1図柄表示領域の表示図柄「2」に第1装飾図柄42が付加されているが、第2装飾図柄44が付加された場合には、「通常の大当り」となる。そこで、遊技者は、第1図柄表示領域の表示図柄50に、第2装飾図柄44が付加しないことを期待しながら遊技することとなる。また、図2の実施形態では、第1図柄表示領域の表示図柄50に第1装飾図柄42または第2装飾図柄44を選択的に付加するよう制御したが、第2または第3図柄表示領域の表示図柄50に装飾図柄42、44が付加するようにしても良い。
【0022】以上、本発明による遊技機の制御方式の好適な実施形態の構成および動作を詳述した。しかし、これら実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能である。上述の実施形態では、第1装飾図柄42として円形のハッピーマーク(にこにこマーク)を使用し第2装飾図柄44として円形のアングリーマークを使用たが、例えば比較的小さい円形(丸)と四角形でも良く、また表示図柄の表示色と異なる例えば赤丸と黒丸等であっても良い。さらに、装飾図柄が表示される表示図柄の位置は、任意位置で良いが、第1装飾図柄および第2装飾図柄を、それぞれ表示図柄50の下方および上方のように予め決められた位置とするのが、判断を容易にするために好ましい。・・・

なお、引用文献1においては、第1装飾図柄42及び第2装飾図柄44に関して「付加」及び「表示」の両者が混在しているので、本審決では「付加」に統一することとする。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 15種類の数字である表示図柄50を左、中央および右図柄表示領域に表示する図柄表示装置30と、前記表示図柄50が変動を開始し、左、右および中央の順に、順次停止表示され、全ての表示図柄50が停止表示され、確定表示図柄が表示されると、3個の表示図柄50が揃った大当り図柄か否かを判断し、大当り図柄の場合、遊技機は大入賞口28が開放して遊技者に有利な大当り状態となる遊技機において、
大当り図柄に第1装飾図柄42が付加されている場合、第2装飾図柄44が付加されている場合および第1および第2装飾図柄ともに付加されていない場合の3つの場合に応じて、大入賞口28を開放するとともに、次回に遊技球が始動領域27に入賞したときの大当り発生確率を変更し、
第1装飾図柄42および第2装飾図柄44としては、比較的小さい円形と四角形であっても良く、さらに第1装飾図柄42および第2装飾図柄44が付加される位置は下方および上方のように予め決められた位置とする遊技機。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
引用発明の「15種類の数字である表示図柄50」は、本願補正発明の「数字を含んで形成される複数の識別情報」に相当し、同様に、
「左、中央および右図柄表示領域に表示する図柄表示装置30」は「複数列に渡って変動表示可能な表示装置」に相当している。

さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。
a.引用発明において「表示図柄50が変動を開始し、左、右および中央の順に、順次停止表示され」ることは、本願補正発明において「識別情報を複数列に変動表示させた後に、複数列の前記識別情報を停止表示させる」ことに相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の「識別情報を複数列に変動表示させた後に、複数列の前記識別情報を停止表示させる制御を実行する表示制御手段」に相当する構成を有する。

b.引用発明の「3個の表示図柄50が揃った大当り図柄」及び「大入賞口28が開放して遊技者に有利な大当り状態」は、それぞれ本願補正発明の「複数列に渡って同一の数字が揃った特定の表示結果」及び「遊技者にとって有利な特定遊技状態」に相当するから、引用発明において「全ての表示図柄50が停止表示され、確定表示図柄が表示されると、3個の表示図柄50が揃った大当り図柄か否かを判断し、大当り図柄の場合、遊技機は大入賞口28が開放して遊技者に有利な大当り状態とな」ることは、本願補正発明において「変動表示終了後に停止表示される前記識別情報が複数列に渡って同一の数字が揃った特定の表示結果となった場合に、遊技者にとって有利な特定遊技状態を生起させる」ことに相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の「変動表示終了後に停止表示される前記識別情報が複数列に渡って同一の数字が揃った特定の表示結果となった場合に、遊技者にとって有利な特定遊技状態を生起させる制御手段」に相当する構成を有する。

c.引用文献1の図1に示す特定例(段落【0011】、【0012】)では、大当り図柄に第1装飾図柄42が付加されている場合と第2装飾図柄44が付加されている場合の2つだけがあり、前者の場合には大入賞口28が開放して遊技者に有利な大当り状態にするとともに、次回に遊技球が始動領域27に入賞したときの大当り発生確率を通常確率より高い確率に変更し、後者の場合には前記大当り状態にするのみである。そして、「大入賞口28が開放して遊技者に有利な大当り状態」及び「次回に遊技球が始動領域27に入賞したときの大当り発生確率を通常確率より高い確率に変更」することは、それぞれ本願補正発明の「遊技者にとって有利な特定遊技状態」及び「特定遊技状態とは異なる特典遊技状態が生起されること」に相当している。
ここで、引用文献1には引用発明の3つの場合に応じて、どのように大当り発生確率を変更するのか明記はされていないが、図1に示す特定例からみて、通常確率より高い確率に変更する場合としない場合を含むことは明らかであるから、上記の相当関係を勘案すれば、引用発明の「大当り図柄」には、本願補正発明の「前記特定遊技状態が生起されるとともに前記特定遊技状態とは異なる特典遊技状態が生起されることを示す特別表示結果と、前記特定遊技状態が生起される一方、前記特典遊技状態が生起されないことを示す非特別表示結果」に相当するものが含まれるものと認められる。

d.上記c.で述べたように、引用発明の「大当り図柄」には、本願補正発明の「特別表示結果」と「非特別表示結果」に相当するものが含まれるものと認められるから、引用発明において「大当り図柄に第1装飾図柄42が付加されている場合、第2装飾図柄44が付加されている場合および第1および第2装飾図柄ともに付加されていない場合の3つの場合」の図柄は、本願補正発明の「前記特別表示結果を形成する識別情報」及び「前記非特別表示結果を形成する識別情報」のうちのいずれかに相当している。
そして、引用発明の「大当り図柄に第1および第2装飾図柄ともに付加されていない場合」の図柄と、本願補正発明の「後記第2、3の数字とは異なる数字の第1の数字により形成される第1の識別情報」とは、“数字により形成される第1の識別図柄”である点で共通している。
また、引用発明の「大当り図柄に第1装飾図柄42が付加されている場合」の図柄と、本願補正発明の「後記第3の数字と同一の数字の第2の数字及び当該数字の周りに描写される模様、数字の形状または数字の色の装飾により予め定められた形態で形成される第2の識別情報」とは、引用発明の「第1装飾図柄42」が付加される位置が下方および上方のように予め決められた位置とされていることからみて、“数字の周りに描写される模様により予め定められた形態で形成される第2の識別図柄”である点で共通している。
さらに、引用発明の「大当り図柄に第2装飾図柄44が付加されている場合」の図柄と、本願補正発明の「前記第2の数字と同一の数字の第3の数字及び当該数字の周りに描写される模様、数字の形状または数字の色の装飾が前記第2識別情報の装飾と僅かに異なって、前記第2の識別情報と容易に識別できないように予め定められた形態で形成される第3の識別情報」とは、引用発明の第1装飾図柄42が比較的小さい円形の場合第2装飾図柄44は比較的小さい四角形であっても良いとされていること、及び引用発明において第2装飾図柄44の付加される位置が下方および上方のように予め決められた位置とされていることからみて、“数字の周りに描写される模様が前記第2の識別図柄の装飾と異なって、予め定められた形態で形成される第3の識別図柄”である点で共通している。

以上を総合すると、両者は、
「 数字を含んで形成される複数の識別情報を複数列に渡って変動表示可能な表示装置と、前記識別情報を複数列に変動表示させた後に、複数列の前記識別情報を停止表示させる制御を実行する表示制御手段と、変動表示終了後に停止表示される前記識別情報が複数列に渡って同一の数字が揃った特定の表示結果となった場合に、遊技者にとって有利な特定遊技状態を生起させる制御手段とを備え、前記特定の表示結果には、前記特定遊技状態が生起されるとともに前記特定遊技状態とは異なる特典遊技状態が生起されることを示す特別表示結果と、前記特定遊技状態が生起される一方、前記特典遊技状態が生起されないことを示す非特別表示結果とが含まれる遊技機において、
前記特別表示結果を形成する識別情報及び前記非特別表示結果を形成する前記識別情報のいずれかには、数字により形成される第1の識別図柄と、数字の周りに描写される模様により予め定められた形態で形成される第2の識別図柄と、数字の周りに描写される模様が前記第2の識別図柄の装飾と異なって、予め定められた形態で形成される第3の識別図柄が含まれる遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明の「前記特別表示結果を形成する識別情報」に「第1の識別情報」と「第2の識別情報」が含まれ、「前記非特別表示結果を形成する前記識別情報」に「第3の識別情報」が含まれるのに対し、引用発明の「大当り図柄」における3つの場合の図柄のうちのどれが大当り発生確率を変更し、どれが大当り発生確率を変更しないものであるか明らかでない点。
[相違点2]本願補正発明の「第1の識別情報」は「後記第2、3の数字とは異なる数字の第1の数字により形成され」、「第2の識別情報」は「前記第1の数字とは異なる第2の数字の周りに描写される模様の装飾により予め定められた形態で形成され」、「第3の識別情報」は「前記第1の数字とは異なる第3の数字(第2の数字と同一)の周りに描写される模様の装飾が前記第2識別情報の装飾と僅かに異なって、前記第2の識別情報と容易に識別できないように予め定められた形態で形成され」ているのに対し、引用発明の「大当り図柄に第1および第2装飾図柄ともに付加されていない場合」の図柄、「大当り図柄に第1装飾図柄42が付加されている場合」の図柄及び「大当り図柄に第2装飾図柄44が付加されている場合」の図柄においては、それらの図柄を構成する数字、第1装飾図柄42及び第2装飾図柄44がそのような関係になっていない点。
[相違点3]本願補正発明は「前記特定の表示結果になるように前記識別情報を停止表示させる場合、前記識別情報を停止表示される以前に、前記特定の表示結果となる識別情報を一旦停止表示する一旦停止表示制御手段と、前記一旦停止表示した後に再度変動させて前記特定の表示結果となる識別情報を停止表示する再変動表示制御手段」を有するのに対し、引用発明はそのような手段を有していない点。
[相違点4]本願補正発明は「前記第2の識別情報または前記第3の識別情報が同一の数字で揃った表示結果である場合の前記特定遊技状態中、数字以外の画像を前記表示装置に表示することによって、前記特定の表示結果が、前記特別表示結果または前記非特別表示結果のいずれであるかを報知する特定遊技状態表示制御手段」を有するのに対し、引用発明はそのような手段を有していない点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1及び2について]
相違点1及び2は密接に関連しているので、合わせて検討する。
引用発明は、従来奇数が揃った場合を「特定図柄」としていたところ(引用文献1の段落【0005】を参照)、遊技の初期段階で結果が判り、遊技者が興ざめするのを回避することを目的としてなされたものである(引用文献1の段落【0007】を参照)。
一方、例えば特開平9-135947号公報(特に、段落【0004】、【0031】?【0033】)や特開2000-271281号公報(特に、段落【0005】、【0120】、【0121】)に記載されるように、引用発明と同様の目的で、特定の図柄で揃った大当り図柄が停止表示された場合そのまま確率変動を発生するようにし、特定の図柄以外の図柄で揃った大当り図柄が停止表示された場合には、別途確率変動が発生するか否かの表示を行うようにすることは、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
よって、引用発明に周知技術1を適用し、引用発明において一見して何の図柄であるかが認識できる「大当り図柄に第1装飾図柄42および第2装飾図柄44ともに付加されていない場合」の図柄を構成する数字として特定の数字(例えば奇数)を採用するとともに、一見しただけでは何の図柄であるかが認識しにくい「大当り図柄に第1装飾図柄42が付加されている場合」及び「大当り図柄に第2装飾図柄44が付加されている場合」の図柄を構成する数字として上記特定の数字以外の数字(例えば偶数)を採用することは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、ごく普通に採用し得る事項である。
また、第1装飾図柄42及び第2装飾図柄44を付加するに際して、引用文献1に記載されている第2実施形態では、複数の装飾図柄が付加され、第1装飾図柄42または第2装飾図柄44の何れが優勢かにより遊技者の利益を変更しており(図3及び段落【0018】?【0020】を参照)、第1装飾図柄42または第2装飾図柄44が付加される第1実施形態より複雑で遊技者に判りにくくしているということができる。そして、表示図柄が「特定図柄」になるものであるか否かを判りにくくすることは、引用発明の目的である興ざめ回避にも沿っているので、引用発明において、第1装飾図柄42および第2装飾図柄44であっても良い比較的小さい円形と四角形に代え、比較的小さい円形と楕円形や比較的小さい正方形と菱形といった遊技者に容易に識別できないような組合せを採用することは当業者にとって格別困難なことではない。
さらに、上記(2)c.で述べた引用文献1の図1に示す特定例(大当り図柄に第1装飾図柄42が付加されている場合、大当り発生確率を通常確率より高い確率に変更し、第2装飾図柄44が付加されている場合、大当り発生確率を変更しない)に鑑みれば、引用発明において、上記特定の数字が揃った大当り図柄(第1および第2装飾図柄ともに付加されていない場合)及び上記特定の数字以外の数字に第1装飾図柄42が付加された図柄が揃った大当り図柄(第1装飾図柄42が付加されている場合)によって、大入賞口28を開放するとともに、次回に遊技球が始動領域27に入賞したときの大当り発生確率を通常確率より高い確率に変更し、上記特定の数字以外の数字に第2装飾図柄44が付加された図柄が揃った大当り図柄(第2装飾図柄44が付加されている場合)によって、大入賞口28を開放するのみとして、上記相違点1及び2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

[相違点3について]
特開2001-187202号公報(以下「引用文献2」という。)の図28及び段落【0363】、【0364】には、一時停止図柄を非確変大当り図柄、最終停止図柄を非確変大当り図柄として再変動制御する点、一時停止図柄を非確変大当り図柄、最終停止図柄を確変大当り図柄として再変動制御する点、一時停止図柄を確変大当り図柄、最終停止図柄を確変大当り図柄として再変動制御する点(以下「引用文献2記載の技術」という。)が記載され、その非確変大当り図柄及び確変大当り図柄は、いずれも本願補正発明の「特定の表示結果」に相当しており、引用発明、引用文献2記載の技術ともに、遊技機における図柄の変動を工夫する点で共通しているから、引用発明に引用文献2記載の技術を適用して、上記相違点3に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

[相違点4について]
変動停止した表示結果が確率変動図柄の大当りであること、すなわち本願補正発明の「特別表示結果」であることを数字以外の画像により、大当たり遊技の開始時や高確率中に表示することは、例えば、特開平11-188150号公報(特に、段落【0077】及び【図16】を参照)、特開2001-113024号公報(特に、段落【0070】及び【図2】を参照)及び特開2002-17997号公報(特に、段落【0019】、【0118】、【0121】及び【図28(e)】を参照)に示されるように、遊技機の分野において従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)であるから、引用発明に周知技術2を適用して、上記相違点4に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

(4)まとめ
以上のように相違点1?4は、いずれも当業者が容易に想到し得るものであり、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1、2に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成21年5月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年1月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 数字を含んで形成される複数の識別情報を複数列に渡って変動表示可能な表示装置と、前記識別情報を複数列に変動表示させた後に、複数列の前記識別情報を停止表示させる制御を実行する表示制御手段と、変動表示終了後に停止表示される前記識別情報が複数列に渡って同一の数字が揃った特定の表示結果となった場合に、遊技者にとって有利な特定遊技状態を生起させる制御手段とを備え、前記特定の表示結果には、前記特定遊技状態が生起されるとともに前記特定遊技状態とは異なる特典遊技状態が生起されることを示す特別表示結果と、前記特定遊技状態が生起される一方、前記特典遊技状態が生起されないことを示す非特別表示結果とが含まれる遊技機において、
前記特別表示結果を形成する識別情報には、後記第2、3の数字とは異なる数字の第1の数字により形成される第1の識別情報と、前記第1の数字とは異なる数字で、かつ後記第3の数字とは同一の第2の数字により形成される第2の識別情報とが含まれ、前記非特別表示結果を形成する前記識別情報には、前記第2の数字とは同一の数字であるが、当該数字が表示される表示部に描写される模様、数字の形状または数字の色が前記第2識別情報とは僅かに異なる第3の数字で形成される第3の識別情報が含まれ、
前記表示制御手段は、前記特定の表示結果になるように前記識別情報を停止表示させる場合、前記識別情報を停止表示される以前に、前記特定の表示結果となる識別情報を一旦停止表示する一旦停止表示制御手段と、前記一旦停止表示した後に再度変動させて前記特定の表示結果となる識別情報を停止表示する再変動表示制御手段と、前記特定遊技状態中、数字以外の画像を前記表示装置に表示することによって、前記特定の表示結果が、前記特別表示結果または前記非特別表示結果のいずれであるかを報知する特定遊技状態表示制御手段とを有することを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比及び判断
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、「第2の識別情報」、「第3の識別情報」及び「特定遊技状態中」について、それぞれ「後記第3の数字と同一の数字の第2の数字及び当該数字の周りに描写される模様、数字の形状または数字の色の装飾により予め定められた形態で形成される」点、「前記第2の数字と同一の数字の第3の数字及び当該数字の周りに描写される模様、数字の形状または数字の色の装飾が前記第2識別情報の装飾と僅かに異なって、前記第2の識別情報と容易に識別できないように予め定められた形態で形成される」点、及び「前記第2の識別情報または前記第3の識別情報が同一の数字で揃った表示結果である場合の」ものである点の限定を省いたものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2?4)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-30 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-29 
出願番号 特願2003-49130(P2003-49130)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 池谷 香次郎
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 竹沢 荘一  

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