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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C09J
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C09J
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C09J
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C09J
管理番号 1233535
審判番号 訂正2010-390131  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2010-12-24 
確定日 2011-02-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3485333号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3485333号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第3485333号(以下、「本件特許」という。)は、平成5年8月2日の出願であって、その請求項1ないし請求項4に係る発明について平成15年10月24日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成22年12月24日に本件訂正審判の請求がなされた。

第2 請求の要旨
本件訂正審判請求の要旨は、本件特許の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記訂正事項のとおりに訂正することを求めるものである。

1 訂正事項1
請求項1において、「該第1印刷層上に」とあるのを「該第1の印刷層上に」と訂正する。

2 訂正事項2
請求項1において、「該第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられている」とあるのを「該第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられ、
該第1の印刷層は、所定の表示及びデザインの画像を形成するためにグラビア印刷により印刷され、該第1の印刷層の上に該第2の印刷層がグラビア印刷で印刷されることにより該所定の表示及びデザインの画像にメタリック感を有する色調が付与される」と訂正する。

3 訂正事項3
発明の詳細な説明の段落【0008】の「前記目的を達成するために、・・・特徴とする。」とあるのを「前記目的を達成するために、本発明の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムは、缶体材料用金属板に熱硬化型樹脂系接着剤を介して加熱接着されて保護被覆層を形成するポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムの一方の面にパール顔料を除く顔料を含む樹脂組成物からなる第1の印刷層が設けられ、該第1の印刷層上に金属粉末が分散された樹脂組成物からなる第2の印刷層が設けられ、該第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられ、該第1の印刷層は、所定の表示及びデザインの画像を形成するためにグラビア印刷により印刷され、該第1の印刷層の上に該第2の印刷層がグラビア印刷で印刷されることにより該所定の表示及びデザインの画像にメタリック感を有する色調が付与されることを特徴とする」と訂正する。

第4 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更について

1 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1において「該第1印刷層上に」とあるのを「該第1の印刷層上に」と訂正しようとするものである。
訂正前の「該第1印刷層」の前には、「第1の印刷層」という表現しかなく、「第1印刷層」という表現はないから、「該第1印刷層」が上記「第1の印刷層」のことを意味することは明らかである。
したがって、訂正事項1は誤記の訂正を目的とするものである。
また、当該訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1において「該第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられている」とあるのを「該第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられ、該第1の印刷層は、所定の表示及びデザインの画像を形成するためにグラビア印刷により印刷され、該第1の印刷層の上に該第2の印刷層がグラビア印刷で印刷されることにより該所定の表示及びデザインの画像にメタリック感を有する色調が付与される」と訂正しようとするものである。
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1の第1及び第2の印刷層を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「該第1の印刷層は、所定の表示及びデザインの画像を形成するためにグラビア印刷により印刷され」の部分は、本件特許明細書等の段落【0036】に、「第1印刷層3aは、缶外面側に所定の表示及びデザインの画像を形成するために、所要の各色の顔料を含む前記印刷インキが1色ごとにグラビア印刷により積層されて、多色印刷されている。」と記載されていることから、この部分についての訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、「該第1の印刷層の上に該第2の印刷層がグラビア印刷で印刷されることにより該所定の表示及びデザインの画像にメタリック感を有する色調が付与される」の部分は、本件特許明細書等の【請求項1】に「・・・該第1印刷層上に金属粉末が分散された樹脂組成物からなる第2の印刷層が設けられ・・・」と記載されていること、同段落【0035】に「・・・アルミニウム粉末を含むシルバーインキによりグラビア印刷が施された第2印刷層3b・・・が設けられ・・・」と記載されていること及び同段落【0029】に「・・・第1印刷層と前記缶体材料用金属板の金属下地との間に金属粉末が分散された樹脂組成物からなる第2印刷層が介在するので、第1及び第2印刷層の印刷が前記金属下地の色調に支配されることなく、前記第2印刷層により前記所定の表示及びデザインの画像に優れたメタリック感を有する色調が付与される。」と記載されていることからみて、この部分についての訂正も、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 訂正事項3について
訂正事項3は、上記訂正事項1及び2との整合をとるための発明の詳細な説明の訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、当該訂正事項3による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

4 まとめ
したがって、訂正事項1ないし3による訂正は、平成6年法律第116号附則第6条第1項によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法(以下、「平成6年改正前特許法」という。)第126条第1項及び第2項の規定に適合する。

第5 独立特許要件について
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、当該訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明、すなわち上記訂正によって訂正された請求項1及びそれを引用する請求項2及び3に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討する。

1 本件訂正発明
訂正事項2による訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、当該訂正後の請求項1ないし3に記載される次のとおりのものである。
「【請求項1】缶体材料用金属板に熱硬化型樹脂系接着剤を介して加熱接着されて保護被覆層を形成するポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムの一方の面にパール顔料を除く顔料を含む樹脂組成物からなる第1の印刷層が設けられ、該第1の印刷層上に金属粉末が分散された樹脂組成物からなる第2の印刷層が設けられ、該第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられ、該第1の印刷層は、所定の表示及びデザインの画像を形成するためにグラビア印刷により印刷され、該第1の印刷層の上に該第2の印刷層がグラビア印刷で印刷されることにより該所定の表示及びデザインの画像にメタリック感を有する色調が付与されることを特徴とする缶体材料被覆用ポリエステルフィルム。
【請求項2】前記第2の印刷層を形成する樹脂組成物にアルミニウム粉末が17?25重量%の範囲で分散されていることを特徴とする請求項1記載の缶体材料被覆用ポリエステルフィルム。
【請求項3】前記ポリエステルフィルムの前記接着剤層が設けられている面の反対側に熱硬化型樹脂からなる硬化オーバーコート層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の缶体材料被覆用ポリエステルフィルム。」
(以下、これらの発明を、それぞれ「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」、及び「本件訂正発明3」という。)

2 刊行物
本件審判請求書には、「公知文献」として次の刊行物が提示されている。

特公昭61-51988号公報(以下「刊行物」という。)

3 刊行物に記載された事項
本件特許の出願日前に頒布されたものである刊行物には、次の記載がある。
摘記1:「従来から、ポリエステル樹脂フイルムをラミネート法により、金属板に被覆した複合材料は、家庭電化製品などの分野に使用されてきた。しかしながら、これらのポリエステル樹脂フイルム複合材料は、ポリエステル樹脂フイルムと金属板の間に、接着剤層、塩化ビニル樹脂層を介しているものがほとんどであり、ポリエステル樹脂フイルムにアルミニウム蒸着が施されたものはあるが、花柄模様、木目模様等の印刷を施されたものは見当たらない。アルミニウム蒸着を施したものは、耐水性、加工密着性が悪く、意匠性の問題もあり用途が限定されている。
本発明は、意匠性、経済性の優れたものを得るために、前記樹脂の1種または2種以上から成る樹脂の固形分100重量部に対し、無機顔料、有機顔料の粒径0.1?10μm、金属粉末の粒径0.1?25μmの粉末の1種または2種以上を5?200重量部添加配合した印刷インクで、5?200μmの透明あるいは半透明なポリエステル樹脂フイルムに柄を印刷し、塩化ビニル樹脂や、その他の樹脂を介さないで、金属板に直に高速でラミネートし、従来のものより意匠性の優れた独特な表面外観を有し、しかも経済性の優れたものである。」(第2欄第8行?第3欄第2行)

摘記2:「また印刷部が表面に露出していないので、色落ちのない印刷されたポリエステル樹脂フイルムを被覆した金属板を提供するものである。」(第3欄第2?第5行)

摘記3:「実施例 2
脱脂した板厚0.6mmの電解クロム酸処理鋼板に、顔料、金属粉末を添加した印刷インクを用いて、本願の発明の処理方法により印刷したポリエステル樹脂フイルムをその片面に被覆した。
被覆樹脂フイルム
ポリエステル樹脂フイルム
(商品名:メリネツクス ICI社製
厚 み:20μm)
印刷インク
シアニンブルー、カーミン、シアニングリーン、チタンイエロー、アルミニウム粉末の5種類の印刷インクを作成した。配合を次に示す。
アクリル樹脂(固形分30%)
(商品名:SC?462
ソニーケミカル社製) 100重量部
エポキシ樹脂(固形分30%)
(商品名:EP?5700
旭電化社製) 20重量部
硬化剤
(商品名:触媒F
旭電化社製) 5重量部
有機顔料
(シアニンブルー、カーミン、シアニングリーン)
(粒径:1?3μm) 20重量部
無機顔料
(チタンイエロー)
(粒径:1?3μm) 50重量部
アルミニウム粉末(りん片状)
(粒径:1?25μm) 20重量部
処理方法
上記印刷インクを前記ポリエステル樹脂フイルムの片面に印刷設備を用いて花柄模様を印刷した後、その印刷表面にアルミニウム色の印刷インクをベタ印刷し、100?140℃の雰囲気温度で10?30秒間乾燥させ、ついで200?230℃に加熱した鋼板にラミネートし、直ちに急冷した。
印刷されたポリエステル樹脂フイルム被覆金属板は、従来のものと違つた独特な外観を得ることができた。また加工密着性は実施例1と同様に良好であつた。」(第5欄第23行?第6欄第20行)

4 刊行物に記載された発明
刊行物の実施例2には、ポリエステル樹脂フィルムの片面に、印刷インクを用いて花柄模様を印刷し、その印刷表面にアルミニウム色の印刷インクをベタ印刷し、100?140℃の雰囲気温度で10?30秒間乾燥させ、ついで200?230℃に加熱した鋼板にラミネートし、直ちに急冷し、印刷されたポリエステル樹脂フイルム被覆金属板を得たことが記載されており、その印刷インクとして、5種類のもの、すなわち固形分30%のアクリル樹脂100重量部、固形分30%のエポキシ樹脂20重量部、硬化剤5重量部に対し、以下の5種類の粉末を配合したものをそれぞれ用いたことが記載されている(摘記3)。
有機顔料(シアニンブルー、カーミン、シアニングリーン),粒径1?3μm,20重量部
無機顔料(チタンイエロー),粒径1?3μm,50重量部
アルミニウム粉末(りん片状),粒径1?25μm,20重量部
刊行物には、鋼板にラミネートする前の、印刷されたポリエステル樹脂フィルム自体の発明も記載されているといえるから、刊行物には、
「ポリエステル樹脂フィルムの片面に、印刷インクを用いて花柄模様を印刷し、その印刷表面にアルミニウム色の印刷インクをベタ印刷して得られる、200?230℃に加熱した鋼板にラミネートされるための印刷されたポリエステルフイルムであって、該印刷インクとして、固形分30%のアクリル樹脂100重量部、固形分30%のエポキシ樹脂20重量部、硬化剤5重量部に対し、以下の5種類の粉末のいずれかを配合したものを用いた、ポリエステルフィルム
粒径1?3μmのシアニンブルー、カーミン又はシアニングリーンから選ばれる有機顔料 20重量部
粒径1?3μmのチタンイエローからなる無機顔料 50重量部
粒径1?25μmのアルミニウム粉末 20重量部」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

5 本件訂正発明1について
(1)対比
本件訂正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「ポリエステル樹脂フィルムの片面」、「200?230℃に加熱した鋼板にラミネートされ」、「花柄模様」は、それぞれ、本件訂正発明1の「ポリエステルフィルムの一方の面」、「金属板に・・・加熱・・・され」、「所定の表示及びデザインの画像」に相当する。
引用発明における「印刷インク」にはパール顔料は含まれておらず、かつ当該印刷インクは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、粉末を含む樹脂組成物であり、当該粉末は有機顔料、無機顔料又はアルミニウム粉末であり、アルミニウム粉末も水に不溶の着色成分であって顔料の一種といえるから、引用発明における「印刷インクを用いて花柄模様を印刷」することによって得られる印刷層は、本件訂正発明1の「パール顔料を除く顔料を含む樹脂組成物からなる第1の印刷層」に相当する。
引用発明における「その印刷表面にアルミニウム色の印刷インクをベタ印刷」して得られる印刷層は、本件訂正発明の「第2の印刷層」に相当する。
また、刊行物には、引用発明のポリエステルフィルムによって被覆された金属板が「印刷部が表面に露出していないので、色落ちのない」ことが記載されている(摘記2)から、当該ポリエステルフィルムは、鋼板の保護被覆層としての働きを有するものといえる。
そうすると、両者は、
「金属板に加熱されて保護被覆層を形成するポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムの一方の面にパール顔料を除く顔料を含む樹脂組成物からなる第1の印刷層が設けられ、該第1の印刷層上に第2の印刷層が設けられ、該第1の印刷層は、所定の表示及びデザインの画像を形成するために印刷されることを特徴とする被覆用ポリエステルフィルム。」
である点において一致し、以下の点において相違する。

相違点1:本件訂正発明1の金属板は「缶体材料用」の金属板であり、被覆用ポリエステルフィルムも「缶体材料」を被覆するためのものであるのに対し、引用発明の、ポリエステルフィルムによってラミネートされる鋼板は「缶体材料」用のものか明らかでない点

相違点2:本件訂正発明1では、「第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられ」、当該「熱硬化型樹脂系接着剤を介して」金属板に「接着」されるのに対し、引用発明は熱硬化型樹脂系接着剤層を有さず、鋼板に「ラミネート」される点

相違点3:本件訂正発明1では、第2の印刷層が「金属粉末が分散された樹脂組成物からなる」ものであるのに対し、引用発明では「アルミニウム色の印刷インク」というだけでその組成が明らかでない点

相違点4:本件訂正発明1では、第1の印刷層及び第2の印刷層は「グラビア印刷」により印刷されたものであるのに対し、引用発明では印刷方法が明らかでない点

相違点5:本件訂正発明1では、「所定の表示及びデザインの画像にメタリック感を有する色調が付与される」ものであるのに対し、引用発明では当該色調が付与されるか否かが明らかでない点

(2)相違点についての判断
事案にかんがみ、まず相違点2について検討する。
刊行物には、「従来から、ポリエステル樹脂フイルムをラミネート法により、金属板に被覆した複合材料は、家庭電化製品などの分野に使用されてきた。しかしながら、これらのポリエステル樹脂フイルム複合材料は、ポリエステル樹脂フイルムと金属板の間に、接着剤層、塩化ビニル樹脂層を介しているものがほとんどであり」(摘記1)と記載され、さらに、「本発明は、意匠性、経済性の優れたものを得るために、・・・塩化ビニル樹脂や、その他の樹脂を介さないで、金属板に直に高速でラミネートし、従来のものより意匠性の優れた独特な表面外観を有し、しかも経済性の優れたものである。」(摘記1)と記載されている。
そうすると、引用発明のポリエステルフィルムは、塩化ビニル樹脂や接着剤等の他の樹脂を介さずに、金属板に直に高速でラミネートすることを目的とするものであるから、そのようなポリエステルフィルムに熱硬化型樹脂系接着剤層を設け、当該接着剤層を介して鋼板にラミネートすることは極めて不合理であり、阻害要因があるというべきである。
したがって、引用発明において、相違点2に係る本件訂正発明1の構成を適用することは、当業者が容易に想到することではない。

(3)まとめ
以上のとおり、引用発明において、相違点2に係る本件訂正発明1の構成を適用することは当業者が容易に想到することではないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 本件訂正発明2及び3について
本件訂正発明2及び3は、本件訂正発明1の構成をすべて含むものであり、本件訂正発明1が刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、本件訂正発明2及び3についても、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

7 まとめ
したがって、本件訂正発明1ないし3は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件訂正発明1ないし3について、その他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見あたらない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、訂正事項1ないし3による訂正は、平成6年改正前特許法第126条第1項ないし第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
缶体材料被覆用ポリエステルフィルム及びそれを用いた溶接缶体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体材料用金属板に熱硬化型樹脂系接着剤を介して加熱接着されて保護被覆層を形成するポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムの一方の面にパール顔料を除く顔料を含む樹脂組成物からなる第1の印刷層が設けられ、該第1の印刷層上に金属粉末が分散された樹脂組成物からなる第2の印刷層が設けられ、該第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられ、
該第1の印刷層は、所定の表示及びデザインの画像を形成するためにグラビア印刷により印刷され、該第1の印刷層の上に該第2の印刷層がグラビア印刷で印刷されることにより該所定の表示及びデザインの画像にメタリック感を有する色調が付与されることを特徴とする缶体材料被覆用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記第2の印刷層を形成する樹脂組成物にアルミニウム粉末が17?25重量%の範囲で分散されていることを特徴とする請求項1記載の缶体材料被覆用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムの前記接着剤層が設けられている面の反対側に熱硬化型樹脂からなる硬化オーバーコート層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の缶体材料被覆用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
缶体材料用金属板の缶胴部外面側に対し、その両側端縁部を除いた部分に、一方の面にパール顔料を除く顔料を含む樹脂組成物からなる第1の印刷層が設けられ、該第1印刷層上に金属粉末が分散された樹脂組成物からなる第2の印刷層が設けられ、該第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられている缶体材料被覆用ポリエステルフィルムを該接着剤層を介して加熱接着して保護被覆層を形成し、該金属板の両側端縁部を重ね合せて溶接接合することにより缶胴部を形成してなることを特徴とする溶接缶体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、缶体材料用金属板、例えば溶接缶体の缶胴形成用表面処理鋼板等の金属板に熱硬化型樹脂系接着剤を介して加熱接着されて保護被覆層を形成するポリエステルフィルム及びそれを用いる溶接缶体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飲料物等の容器に使用される金属缶体として、缶胴形成用表面処理鋼板を短冊状に裁断した缶胴ブランクの両側縁を溶接して接合することにより缶胴部を形成し、この缶胴部の両端に別途製造された缶蓋を二重巻締めされてなる溶接缶体が知られている。前記溶接缶体では、基体金属である缶胴形成用表面処理鋼板と内容物との接触により基体金属が腐食されたり溶出した金属成分のために内容物のフレーバーが変化することを避けるために缶内面側をエポキシ・フェノール樹脂等の塗料を塗布して被覆する一方、缶外面側には所定の表示及びデザイン等の画像を形成する塗装が施されて被覆されている。
【0003】
従来、前記溶接缶体の缶胴形成用表面処理鋼板の内外面側に対する前記塗装は、前記塗料を塗布するごとに加熱オーブンで焼き付けをすることにより行なわれている。前記塗装をこのようにして行うときには、加熱オーブンの熱と揮散する有機溶媒とにより作業環境が害される傾向があり、特に多色印刷となる外面側では、2?4色の塗装を施すごとに加熱オーブンによる焼き付けを行なうため、前記傾向が強くなる。
【0004】
そこで、缶胴形成用表面処理鋼板の缶内外面側をポリエステルフィルムで被覆して保護被覆層を形成することが検討されている。このようにして保護被覆層を形成するときに、缶外面側を被覆するポリエステルフィルムに予め印刷を施して所定の表示及びデザイン等の画像を形成しておけば、前記ポリエステルフィルムからなる保護被覆層により缶外面側に塗装によらずに所定の表示及びデザイン等の画像による美粧性を付与することができ、塗装及び焼き付けを行わずに溶接缶体が得られるので、作業環境の向上が期待される。
【0005】
前記缶外面側を被覆するポリエステルフィルムとして、特開平5-96627号公報に記載されているもののように、その一方の面に熱硬化型樹脂系接着剤層を設け、該ポリエステルフィルムと該熱硬化型樹脂系接着剤層との間に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層が設けられてなるポリエステルフィルムが知られている。前記公報記載のポリエステルフィルムによれば、前記熱硬化型樹脂系接着剤層を介して缶胴形成用表面処理鋼板に熱接着することにより、高温で短時間の加熱により缶胴形成用表面処理鋼板との間で優れた接着強度を得ることができると共に、前記印刷層により所定の表示及びデザイン等の画像を形成することができる。前記画像は、缶胴形成用表面処理鋼板に美粧性を付与する点から、特殊な色調を有することが望ましい。
【0006】
しかしながら、前記ポリエステルフィルムを缶胴形成用表面処理鋼板に熱接着する際に、金属下地上に前記熱硬化型樹脂系接着剤層を介して接着すると、前記印刷層の色調が前記金属下地の色調に支配され、前記所定の表示及びデザインの画像に特殊な色調が得られないとの不都合がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、缶体材料用金属板の缶外面側をポリエステルフィルムで被覆して保護被覆層を形成する際に、前記所定の表示及びデザインの画像にメタリック感を有する特殊な色調を付与することができる缶体材料被覆用ポリエステルフィルム及びこのポリエステルフィルムを用いる美粧性に優れた溶接缶体を提供することを目的とする。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムは、缶体材料用金属板に熱硬化型樹脂系接着剤を介して加熱接着されて保護被覆層を形成するポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルムの一方の面にパール顔料を除く顔料を含む樹脂組成物からなる第1の印刷層が設けられ、該第1の印刷層上に金属粉末が分散された樹脂組成物からなる第2の印刷層が設けられ、該第2の印刷層上に、熱硬化型樹脂系接着剤層が設けられ、該第1の印刷層は、所定の表示及びデザインの画像を形成するためにグラビア印刷により印刷され、該第1の印刷層の上に該第2の印刷層がグラビア印刷で印刷されることにより該所定の表示及びデザインの画像にメタリック感を有する色調が付与されることを特徴とする。
【0009】
前記第1及び第2印刷層を形成する樹脂組成物としては、エポキシブチラール系樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物、またはポリエステルポリウレタン樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物を用いることが好ましい。溶接缶体では、内容物を充填したのち、加熱殺菌処理(レトルト殺菌処理)が行われるのが通常であるが、ポリエステルフィルムと熱硬化型樹脂系接着剤層との間に顔料を含む樹脂組成物からなる印刷層が設けられてなるポリエステルフィルムにより保護被覆層を形成した缶体材料用金属板から形成してなる溶接缶体に前記レトルト処理を施すと、前記印刷層が白化し該印刷層により形成される所定の表示及びデザイン等の画像が不明瞭になることがある。しかし、前記第1及び第2印刷層が前記エポキシブチラール系樹脂とポリイソシアネート系樹脂とから、またはポリエステルポリウレタン樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物により形成されていることにより、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムにより保護被覆層を形成した缶体材料用金属板から形成してなる溶接缶体に前記レトルト処理を施しても、前記印刷層に白化を生じず、鮮明な画像が得られるので好ましい。
【0010】
前記第2印刷層を形成する樹脂組成物に分散される金属粉末としては、アルミニウム、亜鉛、真鍮、ステンレス等の粉末を挙げることができるが、優れたメタリック感を有する色調を付与するために平均粒径10?100μm、厚さ0.1?2μmの銀色の金属光沢を有する鱗片状アルミニウム粉末が好ましい。
【0011】
前記第2印刷層を形成する樹脂組成物は前記アルミニウム粉末が17?25重量%の範囲で分散されていることにより、前記ポリエステルフィルムが前記缶体材料用金属板に加熱接着されてなる保護被覆層に形成される所定の表示及びデザイン等の画像に特に優れたメタリック感を有する色調を付与することができる。前記樹脂組成物に分散されているアルミニウム粉末が17重量%未満のときには前記所定の表示及びデザイン等の画像にメタリック感が得られないことがあり、25重量%を超えてもメタリック感を付与する効果はそれ以上には得られない。
【0012】
前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムは、強度及び透明性等に優れているものであって、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合により得られるポリエステルであればどのようなものであってもよいが、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール類との重縮合により得られるポリエステルであることが好ましく、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとの重縮合により得られるポリエステル(ポリエチレンナフタレート)またはテレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合により得られるポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)であることが特に好ましい。
【0013】
前記ポリエステルは、所望に応じて前記ジカルボン酸成分またはジオール成分に他のジカルボン酸成分またはジオール成分を含んでいてもよい。ポリエチレンテレフタレートの他の前記好ましいポリエステルとしては、特開昭51-42786号、特開昭64-70352号、特開平2-242738号等の各公報に記載されているポリエステルを挙げることができる。
【0014】
前記ポリエステルフィルムは、後述の熱硬化型樹脂系接着剤による接着力を向上させるために、前記接着剤層が形成される面に予めコロナ放電等の表面酸化処理が施されていることが好ましい。
【0015】
また、前記ポリエステルフィルムは5?50μmの範囲の厚さを有することが好ましい。前記ポリエステルフィルムの厚さが5μm以下であるときには、該フィルムの保護被覆層が形成された缶体材料用金属板を溶接缶体に加工するときに、該フィルムが傷付きやすく、ピンホール等が発生して、缶体の腐食、金属の溶出を防止する効果が十分に得られないことがある。また、50μm以上のときには残留応力が大きくなり、溶接缶体に加工するときに缶胴部にネックイン加工等の絞り加工を施すと、前記ポリエステルフィルムの前記缶体材料用金属板に対する密着性が低下する傾向がある。
【0016】
さらに、前記ポリエステルフィルムは、前記第1及び第2印刷層を設けるための強度及び前記缶体材料用金属板に接着される際の熱処理に対する寸法安定性が要求されるので、ポリエチレンナフタレート等の耐熱性ポリエステルフィルム、一軸または二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム等が好ましく、特に、材料物性的には150℃に30分保持したときの長手方向の熱収縮率が1.2%以下、幅方向の熱収縮率が0%の二軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
【0017】
前記ポリエステルフィルムは、前記寸法安定性を確保するために、予め160℃で6秒間程度保持する熱処理を施してもよいが、前記接着剤層が設けられている面の反対側に熱硬化型樹脂からなる硬化オーバーコート層が設けられていることが特に好ましい。前記硬化オーバーコート層を設けることにより、前記ポリエステルフィルムの残留応力が緩和されると共にフィルムの伸縮が規制され前記寸法安定性が確保されるとともに、耐傷付性が向上される。また、前記硬化オーバーコート層を設けることにより、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムにより保護被覆層を形成した缶体材料用金属板から形成してなる溶接缶体に前記レトルト殺菌処理等の加熱処理を施す際にポリエステルフィルム中の低重合度成分(オリゴマー)が表面に析出することが防止される。また、滑り性がよくなる。
【0018】
前記硬化オーバーコート層を形成する熱硬化型樹脂は、高温短時間で硬化フィルムを形成する樹脂であることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂とアミノプラスト樹脂とからなり短時間硬化触媒として有機酸またはリン酸、ポリリン酸等の無機酸が添加されているものが適している。前記熱硬化型樹脂は、耐傷付性の向上、滑り性向上のために、シリコン或はワックスが添加されていることが好ましい。
【0019】
前記缶体材料用金属板は、缶体用各種表面処理鋼板、缶体用各種アルミニウム合金板などを用いることができる。
【0020】
前記熱硬化型樹脂系接着剤層は、数平均分子量5000?20000のエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とを70/30?99/1の重量比で含む樹脂またはポリエステル樹脂とアミノプラスト樹脂とを70/30?90/10の重量比で含む樹脂からなるものを用いることにより、高温で短時間の加熱で、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムと前記缶体材料用金属板との間で十分な接着強度を得ることができる。
【0021】
前記接着剤層がエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とからなるときには、前記エポキシ樹脂は数平均分子量が5000未満のときには接着強度が不足し、20000を超えるときには高粘度となり塗布作業性が劣るので、共に好ましくない。また、前記数平均分子量が5000未満であると、前記ポリエステルフィルムに予め塗布乾燥して接着剤層を形成するときに、前記接着剤層の粘着性が高くなり、タックフリー性が低下する。
【0022】
前記接着剤層において、前記エポキシ樹脂と前記酸無水物系硬化剤との重量比が99/1未満では高温で加熱しても前記エポキシ樹脂の硬化に長時間を要し、また70/30を超える割合としても前記エポキシ樹脂の硬化を促進する効果はそれ以上には向上されない。
【0023】
前記酸無水物系硬化剤としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸及びその誘導体等を挙げることができるが、硬化性、塗布後の膜の耐ブロッキング性、タックフリー性等に優れている点から無水トリメリット酸及びその誘導体からなる無水トリメリット酸系硬化剤が適している。無水トリメリット酸の誘導体としては、例えば、グリセロールトリストリメリテート無水物、無水トリメリット酸の二量体、エチレングリコールビストリメリテート無水物等を挙げることができる。
【0024】
前記接着剤層を形成するエポキシ樹脂は、ビスフェノールとエピクロルヒドリンとの反応により得られるビスフェノール型エポキシ樹脂であることが好ましく、前記酸無水物系硬化剤以外にさらにフェノール樹脂などの他の硬化剤を含んでいてもよい。
【0025】
また、前記接着剤層がポリエステル樹脂とアミノプラスト樹脂とからなるときには、その重量比が90/10未満では高温で加熱しても該接着剤層の硬化に長時間を要し、また70/30を超える割合とすると硬化が進みすぎ、該接着剤層の加工性が低下するので好ましくない。前記ポリエステル樹脂としては、公知のポリエステル樹脂を単独で用いてもよく、エポキシ樹脂等で変性したエポキシ変性ポリエステル樹脂を用いてもよい。また、前記アミノプラスト樹脂としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等を用いることができる。また、前記接着剤層は、ポリエステル樹脂及びアミノプラスト樹脂とともに、エポキシ樹脂を併用しても差し支えない。
【0026】
前記接着剤層を形成する樹脂組成物は、高温で短時間の加熱で、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムと前記缶体材料用金属板との間で十分な接着強度を得るために、前記第1及び第2印刷層を形成する樹脂の種類に応じて選択的に使用されることが好ましい。即ち、前記第1及び第2印刷層を形成する樹脂組成物が、エポキシブチラール系樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなり顔料を含みまたは前記金属粉末が分散された樹脂組成物であるときには、前記接着剤層は前記平均分子量のエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤とを前記重量比で含む樹脂または前記ポリエステル樹脂とアミノプラスト樹脂とを前記重量比で含む樹脂からなることが適している。また、前記第1及び第2印刷層を形成する樹脂組成物が、ポリエステルポリウレタン樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなり顔料を含みまたは前記金属粉末が分散された樹脂組成物であるときには、前記接着剤層は前記ポリエステル樹脂とアミノプラスト樹脂とを前記重量比で含む樹脂からなることが適している。
【0027】
本発明の溶接缶体は、缶体材料用金属板の缶胴部外面側に対し、その両側端縁部を除いた部分に、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムを前記接着剤層を介して加熱接着して保護被覆層を形成し、該金属板の両側端縁部を重ね合せて溶接接合することにより缶胴部を形成してなることを特徴とする。
【0028】
前記溶接缶体は、缶胴部内面側にもポリエステルフィルムからなる保護被覆層が形成されていてもよい。缶胴部内面側に保護被覆層を形成するポリエステルフィルムとしては、前記外面側に保護被覆層を形成するポリエステルフィルムと同様の熱硬化型樹脂系接着剤層が一方の面に設けられているポリエステルフィルムが挙げられる。尚、このようなポリエステルフィルムは、無地でよく、印刷層を設ける必要がないので、前記外面側に保護被覆層を形成するポリエステルフィルムのような強度、寸法安定性などが厳格には要求されない。従って、延伸されていないポリエステルフィルムであってもよく、一軸または二軸延伸されたポリエステルフィルムであってもよいが、缶体材料用金属板を被覆する工程への適性、缶体となったときの缶品質の面からポリエチレンテレフタレートフィルムが適している。
【0029】
【作用】
本発明の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムは、その一方の面に設けられた前記接着剤層により缶体材料用金属板に加熱接着されて保護被複層を形成するときに、該ポリエステルフィルムに設けられている第1及び第2印刷層により前記缶胴形成用金属板の缶外面側に塗装によらずに所定の表示及びデザインの画像が形成される。このとき、第1印刷層と前記缶体材料用金属板の金属下地との間に金属粉末が分散された樹脂組成物からなる第2印刷層が介在するので、第1及び第2印刷層の印刷が前記金属下地の色調に支配されることなく、前記第2印刷層により前記所定の表示及びデザインの画像に優れたメタリック感を有する色調が付与される。また、前記第1及び第2印刷層は、前記のようにポリエステルフィルムと接着剤層との間に設けられるので、特に第1印刷層が該ポリエステルフィルムにより遮蔽され外傷から保護される。
【0030】
前記第2印刷層を形成する樹脂組成物は、金属粉末としてアルミニウム粉末が17?25重量%の範囲で分散されていることにより、前記所定の表示及びデザインの画像にさらに優れたメタリック感を有する色調が付与される。
【0031】
本発明の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムは、前記接着剤層が設けられている面の反対側に熱硬化型樹脂からなる硬化オーバーコート層が設けられていることにより、缶体材料用金属板に前記接着剤層を介して加熱接着される際に、前記ポリエステルフィルムの残留応力が緩和されると共に伸縮が規制されるので熱処理に対する寸法安定性が確保される。また、前記硬化オーバーコート層により、前記ポリエステルフィルムを加熱接着して前記保護被覆層を形成した缶体材料用金属板から溶接缶体を形成したのち、前記レトルト殺菌処理等の加熱処理を施す際に缶表面にポリエステルフィルム中のオリゴマーの析出、フィルム表面の傷付きが防止され、缶表面の滑り性がよくなる。
【0032】
また、本発明の溶接缶体によれば、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムでその缶外面側が被覆され、前記所定の表示及びデザインの画像に優れたメタリック感を有する色調が付与された缶体材料用金属板から缶胴部が形成されるので、該画像によりその缶胴部外面側に優れた美粧性が得られる。
【0033】
【実施例】
次に、添付の図面を参照しながら本発明についてさらに詳しく説明する。図1は本実施例の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムの構成を示す説明的断面図であり、図2は図1示の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムの保護被覆層が形成された金属板の構成を示す説明的断面図であり、図3は図2示の金属板から形成される溶接缶体の缶胴部を示す説明的部分断面図である。
【0034】
まず、本実施例の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムについて説明する。
【0035】
ポリエステルフィルム1は、溶接缶体の缶胴形成用ブリキ板の缶外面側に接着されるポリエステルフィルムであって、図1示のように、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、ポリエチレンテレフタレートをPETと略記する)フィルム2の一方の面に、パール顔料を除く顔料を含む印刷インキによりグラビア印刷が施された第1印刷層3a、アルミニウム粉末を含むシルバーインキによりグラビア印刷が施された第2印刷層3b、熱硬化型樹脂系接着剤からなる接着剤層4が設けられ、反対側の面には熱硬化型樹脂により形成された透明な硬化オーバーコート層5が設けられている。
【0036】
第1印刷層3aは、エポキシブチラール樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなりパール顔料を除く顔料を含む印刷インキから形成されている。第1印刷層3aは、缶外面側に所定の表示及びデザインの画像を形成するために、所要の各色の顔料を含む前記印刷インキが1色ごとにグラビア印刷により積層されて、多色印刷されている。また、第2印刷層3bは、エポキシブチラール樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなり20重量%のアルミニウム粉末が分散されているシルバーインキから形成されており、第1印刷層3a及び第2印刷層3bの厚さが、乾燥後に約1μmになるようにされている。そして、第1印刷層3a及び第2印刷層3bにより所定の表示及びデザインの画像が形成されている。
【0037】
接着剤層4は、ビスフェノールとエピクロルヒドリンとの反応により得られるビスフェノール型エポキシ樹脂で数平均分子量10000のエポキシ樹脂と無水トリメリット酸系硬化剤としてグリセロールトリストリメリテート無水物とを95/5の重量比で含む熱硬化型樹脂系接着剤から形成されている。接着剤層4は、例えば、前記エポキシ樹脂とグリセロールトリストリメリテート無水物とを前記重量比で有機溶剤に溶解した樹脂溶液を塗布し、接着剤の硬化反応が進行しないように120℃で10秒間の乾燥を行って前記熱硬化型樹脂系接着剤の塗布量が2.5g/m2になるようにして形成される。尚、PETフィルム2の接着剤層4が形成される面には、予めコロナ放電処理が施されていることが好ましい。
【0038】
硬化オーバーコート層5は、エポキシ樹脂とアミノプラスト樹脂とからなりリン酸触媒を添加した熱硬化型樹脂により形成されている。また、硬化オーバーコート層5は、ポリエステルフィルム1により保護被覆層が形成された溶接缶体において、ポリエステルフィルム1の耐傷付性向上及び前記溶接缶体表面の滑り性向上のために、シリコンまたはワックスが添加されていることが好ましい。
【0039】
次に、本実施例のポリエステルフィルム1を用いる溶接缶体について説明する。
【0040】
本実施例の溶接缶体は、図2示の缶胴形成用ブリキ板11から形成される。缶胴形成用ブリキ板11は、その缶外面となる側の両側端縁部11a,11aを除いた部分に図1示のポリエステルフィルム1が接着剤層4を介して熱接着されて保護被覆層12が形成されている。また、ブリキ板11の缶内面となる側の両側端縁部11a,11aを除いた部分には、透明なPETフィルム13がポリエステルフィルム1と同様の熱硬化型樹脂系接着剤層14を介して熱接着されて内面保護被覆層15が形成されている。
【0041】
ブリキ板11はポリエステルフィルム1によりその缶外面側が被覆されているので、保護被覆層12に形成されている前記所定の表示及びデザインの画像に、第2印刷層3bにより優れたメタリック感が付与されている。
【0042】
保護被覆層12及び内面保護被覆層15が形成されたブリキ板11は図2に矢示するように丸められ、図3示のように両側端縁部11a,11aを重ね合わせて溶接接合することにより缶胴部16が形成される。缶胴部16の保護被覆層12及び内面保護被覆層15が形成されていない部分には、公知の被覆補正塗料17により、被覆補正がなされる。そして、缶胴部16の両端縁部をネックイン加工、フランジ加工したのち、別途製造された缶蓋を二重巻締めすることにより、溶接缶体が得られる。前記溶接缶体は、その缶外面側が印刷が施されたポリエステルフィルム1で被覆されて保護被覆層12が形成されているブリキ板11から缶胴部16が形成されるので、保護被覆層12に形成されている前記所定の表示及びデザインの画像により缶胴部16の外面側に優れた美粧性が得られ、食缶、飲料缶等に好適に用いられる。
【0043】
溶接缶体では、通常、内容物を充填したのち、レトルト殺菌処理が行われるが、前記溶接缶体では保護被覆層12を形成するポリエステルフィルム1の第2印刷層3bにおいて、前記シルバーインキを形成する樹脂組成物がエポキシブチラール樹脂とポリイソシアネート系樹脂を用いると、前記レトルト殺菌処理を行っても前記第1及び第2印刷層に白化が生じることがない。従って、前記所定の表示及びデザインに鮮明な画像が得られる。
【0044】
尚、本実施例では前記各印刷層を形成する樹脂組成物にエポキシブチラール樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物を用いているが、ポリエステルポリウレタン樹脂とポリイソシアネート系樹脂とからなる樹脂組成物を用いてもよく、この場合にも前記レトルト殺菌処理の際に前記各印刷層に白化が生じることがなく、前記所定の表示及びデザインに鮮明な画像が得られる。
【0045】
また、本実施例では、接着剤層4に数平均分子量10000のエポキシ樹脂と無水トリメリット酸系硬化剤としてグリセロールトリストリメリテート無水物とを95/5の重量比で含む熱硬化型樹脂系接着剤を用いているが、エポキシ樹脂の数平均分子量は5000?20000の範囲で、またエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤との重量比は70/30?99/1の範囲で適宜選択することができる。また、接着剤層4はポリエステル樹脂とアミノプラスト樹脂とを70/30?90/10の重量比で含む熱硬化型樹脂系接着剤であってもよい。
【0046】
また、接着剤層4はホワイト顔料を含むものであってもよい。接着剤層4がホワイト顔料を含むことにより、缶胴形成用ブリキ板11に接着された際に金属下地が確実に遮蔽され、さらに優れたメタリック感が得られる。
【0047】
尚、本実施例では、ポリエステルフィルム1による保護被覆層12が形成されたブリキ板11により溶接缶体を形成しているが、ブリキ板11は缶詰の蓋、エアゾール缶の底蓋或はドーム状部等を形成するために使用することもできる。
【0048】
【発明の効果】
以上のことから明らかなように、本発明の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムによれば、缶胴材料用金属板に加熱接着されて保護被覆層を形成したときに、前記金属粉末が分散された樹脂組成物からなる第2印刷層により金属下地の色調に支配されることなく、所定の表示及びデザインに優れたメタリック感を有する色調を付与することができる。
【0049】
また、前記第2印刷層がアルミニウム粉末を17?25重量%の範囲で含むことにより、さらに優れたメタリック感を有する色調を付与することができる。
【0050】
また、本発明の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムは、前記接着剤層が設けられている面の反対側に熱硬化型樹脂からなる硬化オーバーコート層が設けられているので、前記加熱接着の際の熱処理に対して寸法安定性に優れているとともに、缶体を形成したときにレトルト殺菌処理等の熱処理によるオリゴマーの析出を防止することができ、さらに耐傷付性及び缶材、缶体の滑り性を向上させることができる。
【0051】
本発明の溶接缶体によれば、前記缶体材料被覆用ポリエステルフィルムでその缶外面側が被覆され、前記所定の表示及びデザインの画像に優れたメタリック感を有する色調が付与された缶体材料用金属板から缶胴部が形成されるので、該画像によりその缶胴部外面側に優れたた美粧性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる缶体材料被覆用ポリエステルフィルムの一構成例を示す説明的断面図。
【図2】図1示の缶体材料被覆用ポリエステルフィルムの保護被覆層が形成された缶体材料用金属板の構成を示す説明的断面図。
【図3】図2示の金属板から形成される溶接缶体の缶胴部を示す説明的部分断面図。
【符号の説明】
1…缶体材料被覆用ポリエステルフィルム、3a…第1印刷層、3b…第2印刷層、4…熱硬化型樹脂系接着剤層、5…硬化オ-バーコート層、11…缶体材料用金属板、11a…側端縁部、12…保護被覆層、16…缶胴部。
【図面】



 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-02-01 
出願番号 特願平5-191219
審決分類 P 1 41・ 852- Y (C09J)
P 1 41・ 851- Y (C09J)
P 1 41・ 853- Y (C09J)
P 1 41・ 856- Y (C09J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 栄和  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 齊藤 真由美
小出 直也
登録日 2003-10-24 
登録番号 特許第3485333号(P3485333)
発明の名称 缶体材料被覆用ポリエステルフィルム及びそれを用いた溶接缶体  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 吉田 雅比呂  
代理人 吉田 雅比呂  

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