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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1235412 |
審判番号 | 不服2008-14536 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-09 |
確定日 | 2011-04-13 |
事件の表示 | 特願2006-182274「再生装置、再生方法及びその記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月24日出願公開、特開2006-318639〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成16年3月26日(パリ条約による優先権主張 平成15年3月28日 韓国(KR)、平成15年3月31日 米国(US)、平成15年11月19日 韓国(KR))を国際出願日とする特願2006-507774号の一部を平成18年6月30日に新たな特許出願としたものであって、平成19年11月8日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成20年2月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年7月9日付けで手続補正がなされたものである。 その後、平成22年6月4日付けで前置報告に基づく審尋がなされ、同年9月7日に回答書が提出されたものである。 第2 平成20年7月9日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年7月9日付けの手続補正を却下する。 「理由」 1.本件補正 平成20年7月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前に、 「【請求項1】 再生方法において、 メインストリームデータに別途に付加されたサブオーディオデータを、前記サブオーディオをデパケット化するために用いられるサブオーディオATCと、前記デパケット化されたサブオーディオデータをデコードするために用いられるサブオーディオSTCとを用いて再生する段階を含むことを特徴とする再生方法。 【請求項2】 前記メインストリームデータは静止画像データを含むことを特徴とする請求項1に記載の再生方法。 【請求項3】 再生方法において、 静止画像データを含むメインストリームデータを、前記メインストリームデータをデパケット化するATCを用いて前記メインストリームデータをデパケット化して、前記デパケット化されたメインストリームデータをデコードするSTCを用いて前記メインストリームデータをデコードすることによって、再生する段階と、 前記メインストリームデータに別途に付加されたサブオーディオデータを、前記サブオーディオデータをデパケット化するATCを用いて前記サブオーディオデータをデパケット化して、前記デパケット化されたサブオーディオデータをデコードするSTCを用いて前記サブオーディデータをデコードすることによって、再生する段階とを含むことを特徴とする再生方法。 【請求項4】 前記メインストリームデータをデコーディングする前に前記デパケット化されたメインストリームデータをデマルチプレクスする段階をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の再生方法。」 とあったところを、本件補正後、 「【請求項1】 再生方法において、 静止画像データを含むメインストリームデータを、前記メインストリームデータをデパケット化するために用いられるメインストリームATCを用いて前記メインストリームデータをデパケット化して、前記デパケット化されたメインストリームデータをデコードするために用いられるメインストリームSTCを用いて前記メインストリームデータをデコードすることによって、再生する段階と、 前記メインストリームデータに別途に付加されたサブオーディオデータを、前記サブオーディオデータをデパケット化するために用いられる、前記メインストリームATCから独立したサブオーディオATCを用いて前記サブオーディオデータをデパケット化して、前記デパケット化されたサブオーディオデータをデコードするために用いられる、前記メインストリームSTCから独立したサブオーディオSTCを用いて前記サブオーディデータをデコードすることによって、再生する段階とを含むことを特徴とする再生方法。 【請求項2】 前記メインストリームデータをデコーディングする前に前記デパケット化されたメインストリームデータをデマルチプレクスする段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の再生方法。」 とするものである。 本件補正は、本件補正前の請求項1及び2を削除するものであり、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項3に対応する。 そこで、本件補正後の請求項1について検討すると、本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項である「メインストリームデータをデパケット化するATC」、「デパケット化されたメインストリームデータをデコードするSTC」、「サブオーディオデータをデパケット化するATC」、「デパケット化されたサブオーディオデータをデコードするSTC」を、それぞれ「メインストリームデータをデパケット化するために用いられるメインストリームATC」、「デパケット化されたメインストリームデータをデコードするために用いられるメインストリームSTC」、「サブオーディオデータをデパケット化するために用いられる、前記メインストリームATCから独立したサブオーディオATC」、「デパケット化されたサブオーディオデータをデコードするために用いられる、前記メインストリームSTCから独立したサブオーディオSTC」と限定するものである。 そして、本件補正後の請求項1に記載された発明は、本件補正前の請求項3に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たすか)否かについて検討する。 2.先願発明 原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前の他の特許出願であり、その出願後に出願公開された特願2006-507738号(優先権主張 平成15年2月24日)(特表2006-522554号公報参照)の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下「先願明細書等」という。)には、図面とともに次の記載がある。なお、下線は当審が付した。 ア) 「【請求項1】 記録媒体から静止画像データとオーディオデータを再生する方法において、 それぞれ独立したシステム時間(STC)を基盤にして、前記記録媒体から再生される静止画像データとオーディオデータを復号するステップを備えることを特徴とする方法。」 イ) 「【0011】 本発明による高密度光ディスク、例えばBD-ROM、BD-REなどは、図1に示したように、ビデオとオーディオデータの再生を管理するファイルまたはデータ構造を有する。図1のような本発明によるデータ構造は、いろいろな面において公知のBD-REのデータ構造と同様である。したがって、同様の部分についての詳細な説明は省略する。 【0012】 図1に示したように、ルートディレクトリには少なくとも1つ以上のBDディレクトリがある。BDディレクトリには、一般ファイル(図示せず)、プレイリスト(例えば、*.mpls)ファイルが記憶されるPLAYLISTディレクトリ、クリップ情報ファイル(*.clpi)が記憶されるCLIPINFディレクトリ、並びに、クリップ情報ファイルに対応するMPEG-2フォーマットのA/Vストリームクリップファイル(*.m2ts)が記憶されるSTREAMディレクトリがある。 【0013】 STREAMディレクトリには、クリップまたはクリップファイルと呼ばれるMPEG-2フォーマットのA/Vストリームクリップファイルが含まれ、A/Vストリームにはビデオおよびオーディオソースパケット(Source Packets)が含まれる。例えば、ビデオデータのソースパケットにはヘッダーとトランスポートパケット(Transport Packet)が含まれる。ソースパケットにはソースパケット番号が含まれるが、ソースパケット番号は、一般的にソースパケットにアクセスするためのアドレスの役割をするように連続して割り当てられる番号である。トランスポートパケットにはパケット識別子(PID:Packet Identifier)が含まれるが、PIDはトランスポートパケットが属するトランスポートパケットのシーケンス(Sequence)を識別する。このシーケンスにある各トランスポートパケットは、PIDが同じである。 【0014】 CLIPINFディレクトリには、各A/Vストリームファイルに連係するクリップ情報ファイルが含まれる。クリップ情報ファイルは、連係するA/Vストリームのタイプ、シーケンス情報、プログラム情報、およびタイミング情報が含まれる。シーケンス情報は、到着時間基準(ATC)とシステム時間基準(STC)のシーケンスを説明する。例えば、シーケンス情報はシーケンスの数、各シーケンスの開始および終了時間情報、各シーケンスでの1番目のソースパケットのアドレス、および各シーケンスでのトランスポートパケットのPIDを示す。プログラムのコンテンツが絶え間のないものにおけるソースパケットのシーケンスは、プログラムシーケンスと呼ばれる。プログラム情報は、プログラムシーケンスの数、各プログラムシーケンスの開始アドレス、およびプログラムシーケンスにあるトランスポートパケットのPIDを指す。 【0015】 タイミング情報は、特徴ポイント情報(CPI:Characteristic Point Information)と呼ばれる。CPIの1つの形態がエントリーポイント(EP:Entry Point)マップ(Map)である。EPマップは、例えば到着時間(ATC)および/またはシステム時間(STC)を基準にして、プレイゼンテーションタイムスタンプ(PTS:Presentation Time Stamp)をソースパケット番号(SPN:Source Packet Number)のようなソースパケットアドレスにマップする。プレイゼンテーションタイムスタンプとソースパケット番号は、A/Vストリームにあるエントリーポイント(EP)と関連づけられる。すなわち、PTSとこれと関連したSPNは、A/Vストリームのエントリーポイント(EP)を指す。指されたパケットは、しばしばエントリーポイントパケットと呼ばれる。 【0016】 PLAYLISTディレクトリには、1つ以上のプレイリストファイルがある。プレイリストは、再生用クリップを簡単に編集したり組み合わせたりするために導入された概念である。プレイリストファイルは、クリップにある再生区間(Playing Intervals)の集合であって、各再生区間はプレイアイテム(Playitem)と呼ばれる。プレイリストファイルは、プレイリストを形成する各プレイアイテムを識別して、各プレイアイテムは、例えばATCまたはSTCを基準にするプレイゼンテーションタイムスタンプのような、クリップの時間軸上の位置を指すIN-pointおよびOUT-pointの対である。プレイリストファイルは、クリップファイルの時間軸上の位置を指し示すIN-pointおよびOUT-pointの対を、これもまた提供するサブプレイアイテム(sub-playitem)も含むことができる。言い換えると、プレイリストファイルは、プレイアイテムおよびサブプレイアイテムを識別し、各プレイアイテムまたはサブプレイアイテムは、1つのクリップファイルまたはその一部を指してクリップファイルと連係するクリップ情報ファイルを識別する。クリップ情報ファイルは、プレイアイテムをソースパケットのクリップファイルにマップするのに使われる。プレイリストはクリップファイル内の特定位置(例えば、特定アドレス)を指し示すプレイリストマーク(Playlist mark)も含むことができる。」 ウ) 「【0025】 図4には、図3を参照して説明した静止画像ファイルの再生を制御するためのプレイリストが図示されている。示されたように、プレイリスト内のプレイアイテム(PlayItem)には、再生する静止画像ファイル内のスチル映像の開始位置と終了位置にそれぞれ対応するインピクチャ(IN_picture)情報とアウトピクチャ(OUT_picture)情報が含まれる。プレイリスト内のサブプレイアイテム(SubPlayItem)には、静止画像ファイルと関連付けられて再生される別途のオーディオファイルに対するサブプレイアイテムインタイム(SubPlayItem_IN_time)情報とサブプレイアイテムアウトタイム(SubPlayItem_OUT_time)情報が含まれる。オーディオデータは、関連付けられたスチル映像と同期してまたは非同期で再生され得る。」 エ) 「【0032】 図6に示したように、VDPシステム112は、スイッチ120、トラックバッファ121、TSデマルチプレクサ122、ビデオバッファ123、グラフィックバッファ124、字幕バッファ125、オーディオバッファ126、ビデオデコーダ127、グラフィックデコーダ128、字幕デコーダ129、オーディオデコーダ130、マイクロコンピュータ131、第1のSTC生成器140、および第2のSTC生成器141で構成されることができる。 【0033】 マイクロコンピュータ131は、ユーザのキー入力またはプレイゼンテーション時間情報によってスイッチ120の動作を制御して、静止画像V、グラフィックデータG、そして字幕データSTをトラックバッファ121に選択的に出力する。TSデマルチプレクサ122は、トラックバッファ121に一時的に保存されたデータストリームのパケットID(PID)を参照して、静止画像データ、グラフィックデータ、そして字幕データをそれぞれビデオバッファ123、グラフィックバッファ124、そして字幕バッファ125に分配する。 【0034】 ビデオデコーダ127は静止画像データを復号し、グラフィックデコーダ128はグラフィックデータを復号し、字幕デコーダ129は字幕データを復号して、1つの静止画像、関連したグラフィックおよび字幕データが、例えば同期して再生される。 【0035】 同様に、マイクロコンピュータ131は、スイッチ120の動作を制御して、光ディスクから読み出すオーディオデータAをトラックバッファ121に選択的に出力する。TSデマルチプレクサ122は、トラックバッファ121に一時的に保存されたオーディオデータストリームのパケットID(PID)を参照して、オーディオデータをオーディオバッファ126に分離して出力する。 【0036】 TSデマルチプレクサ122は、再生されるオーディオデータストリームから各オーディオプレイゼンテーションタイムスタンプ(A_PTS)を分離して、オーディオデコーダ130に送る。また、TSデマルチプレクサ122は、再生されるオーディオデータストリームからオーディオプログラムクロックレファレンス(A_PCR)を分離して第1のSTC生成器140に送るが、第1のSTC生成器140はA_PCRをカウントしてオーディオSTC(A_STC)を生成して、A_STCはオーディオデコーダ130に送られる。オーディオデコーダ130は、A_PCRとA_STCを比較して、その値が一致する時点にデコーディングされたオーディオを出力する。 【0037】 同様な方法によって、TSデマルチプレクサ122は、再生される静止画像データストリームから各静止画像プレイゼンテーションタイムスタンプ(S_PTS)を分離して、ビデオデコーダ127、グラフィックデコーダ128および字幕デコーダ129により構成されるMPEGデコーダ170に送る。また、TSデマルチプレクサ122は、再生される静止画像データストリームから静止画像プログラムクロックレファレンス(S_PCR)を分離して第2のSTC生成器141に送るが、第2のSTC生成器141はS_PCRをカウントして静止画像STC(S_STC)を生成して、S_STCはMPEGデコーダ170に送られる。 【0038】 MPEGデコーダ170は、S_PCRとS_STCを比較して、その値が一致する時点に静止画像を出力する。静止画像のプレイゼンテーション時間が無限である場合、マイクロコンピュータ131は第2のSTC生成(141)を制御して、カウンティング動作を中止させる。 【0039】 ユーザのキー入力によって静止画像が表示される場合、マイクロコンピュータ131は、表示される静止画像から読み出すPCRを第2のSTC生成器141にローディングさせて、PCRカウンティング動作が再開されるようにする。 【0040】 これにより、光ディスク再生装置は、第1のSTC生成器140および第2のSTC生成器141を利用することによって、動映像データの再生のためのMPEGデコーダ170を利用して光ディスクに記録されたスチル映像を再生することができるようになり、ユーザのキー入力などによってスチル映像に対するブラウザブルスライドショー動作を実行することができるようになる。ブラウザブルスライドショーと関連して、第1のSTC生成器140および第2のSTC生成器141によりSTC制御が独立に提供されるため、例えばオーディオデータと静止画像データ(または静止画像および関連したピクチャデータ)が独立に再生されることができる。すなわち、ユーザが表示されている静止画像を変更しても、オーディオデータの復号には影響を及ぼさない。」 前掲ア)ないしエ)の記載事項及び図面からみて、先願明細書等には、次の発明 (以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。 「記録媒体から静止画像データとオーディオデータを再生する再生方法において、 A/Vストリームにはビデオおよびオーディオソースパケット(Source Packets)が含まれており、 第1のSTC生成器は、A_PCRをカウントしてオーディオSTC(A_STC)を生成して、A_STCはオーディオデコーダに送られ、 オーディオデコーダは、A_PCRとA_STCを比較して、その値が一致する時点にデコーディングされたオーディオを出力し、 第2のSTC生成器は、S_PCRをカウントして静止画像STC(S_STC)を生成して、S_STCはMPEGデコーダに送り、 MPEGデコーダは、S_PCRとS_STCを比較して、その値が一致する時点に静止画像を出力し、 第1のSTC生成器および第2のSTC生成器を利用することによって、ブラウザブルスライドショー動作を実行することができるようになり、第1のSTC生成器および第2のSTC生成器によりSTC制御が独立に提供されるため、オーディオデータと静止画像データ(または静止画像および関連したピクチャデータ)が独立に再生されることができる再生方法。」 3.対比 本願補正発明と先願発明とを対比する。 先願発明の「再生方法」は、本願補正発明の「再生方法」に相当する。 また、先願発明の「静止画像データ」、「静止画像ファイルと関連付けられて再生される別途のオーディオデータ」は、それぞれ本願補正発明の「静止画像データを含むメインストリームデータ」、「メインストリームデータに別途に付加されたサブオーディオデータ」に相当する。 また、先願発明の「第2のSTC生成器」は、S_PCRをカウントして静止画像STC(S_STC)を生成し、このS_STCが送られたMPEGデコーダが、S_PCRとS_STCを比較して、その値が一致する時点に静止画像を出力するものであるから、前記「第2のSTC生成器」は、静止画像データをMPEG2デコーダでデコードするのに利用されているといえる。 そして、先願発明においても、記録媒体に記録されている静止画データはビデオソースパケットとしてパケット化されているところ、デコードに先だってこのパケット化されている静止画データをデパケット化してからデコードしていることは明らかであるから、結局、先願発明の「第2のSTC生成器」は、本願補正発明の「デパケット化されたメインストリームデータをデコードするために用いられるメインストリームSTC」に相当するといえる。 また、先願発明の「第1のSTC生成器」は、A_PCRをカウントしてオーディオSTC(A_STC)を生成し、かつ、このA_STCが送られたオーディオデコーダが、A_PCRとA_STCを比較して、その値が一致する時点にデコーディングされたオーディオを出力するものであるから、前記「第1のSTC生成器」は、オーディオデータをオーディオデコーダでデコードされるのに利用されているといえ、さらに「第2のSTC生成器」とは別個に設けられSTC制御を独立して制御するものであることから、「第2のSTC生成器」から独立していることは明らかである。 そして、先願発明においても、記録媒体に記録されているオーディオデータはオーディオソースパケットとしてパケット化されているところ、デコードに先だってこのパケット化されているオーディオデータをデパケット化してからデコードしていることは明らかであるから、結局、先願発明の「第1のSTC生成器」は、本願補正発明の「デパケット化されたサブオーディオデータをデコードするために用いられる、前記メインストリームSTCから独立したサブオーディオSTC」に相当する。 また、先願発明においても、「第2の生成器」を用いて静止画データを再生し、「第1の生成器」を用いてオーディオデータを再生しているので、本願補正発明の「メインストリームSTCを用いて前記メインストリームデータをデコードすることによって、再生する段階」、「サブオーディオSTCを用いて前記サブオーディデータをデコードすることによって、再生する段階」を備えていることは明らかである。 以上のことからすると、本願補正発明と先願発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「再生方法において、 静止画像データを含むメインストリームデータを、デパケット化されたメインストリームデータをデコードするために用いられるメインストリームSTCを用いて前記メインストリームデータをデコードすることによって、再生する段階と、 前記メインストリームデータに別途に付加されたサブオーディオデータを、デパケット化されたサブオーディオデータをデコードするために用いられる、前記メインストリームSTCから独立したサブオーディオSTCを用いて前記サブオーディデータをデコードすることによって、再生する段階とを含むことを特徴とする再生方法。」 そして、次の点で一応相違する。 <一応の相違点> デパケット化に関して、本願補正発明は、「メインストリームデータをデパケット化するために用いられるメインストリームATCを用いて前記メインストリームデータをデパケット化」し、「サブオーディオデータをデパケット化するために用いられる、前記メインストリームATCから独立したサブオーディオATCを用いて前記サブオーディオデータをデパケット化」するのに対して、先願発明は、このようなデパケット化するのに用いられるATCについては特定していない点。 4.当審の判断 上記一応の相違点について検討する。 記録媒体から読み出したAVストリームファイルをデパケット化して再生する際に、ATCを用いてデパケット化することは本願出願時における周知技術である(この点について、必要に応じて、特開2003-6979号公報(【0076】ないし【0078】、図7)、国際公開WO 02/075739号パンフレット(図6)等を参照されたい。)。 一方、先願発明においても、前掲イ)に示されているように、記録媒体に記録されているシーケンス情報には到着時間基準(ATC)とシステム時間基準(STC)が含まれ、このATCまたはSTCを基準にしてプレイゼンテーションタイムスタンプとするものあって、さらに、ブラウザブルスライドショーを実現するために、デパケット化されたオーディオデータ、静止画データは、2つの独立したSTC生成器である第1のSTC生成器と第2のSTC生成器によりSTC制御が独立に提供されるものである。 このように2つの独立したSTCにより独立してSTC制御されるオーディオデータ、静止画データについて、それぞれのデータをSTC制御に先だってデパケット化する際に、ATCをSTCと同様に2つ独立して設けてデパケット化することは、周知技術であるATCの単なる付加というべきものであり、また、かかるATCを付加することによって新たな効果を奏するものでもない。 してみると、本願補正発明も先願発明も、ブラウザブルスライドショーを実現するという課題において共通し、かつ、かかる課題を解決するために、メインストリームデータとサブオーディオデータを2つの独立したSTCカウンタを用いてデコードするという課題解決手段も同一であるところ、上記一応の相違点である2つの独立したATCカウンタを用いることは、かかる課題解決のための具体化手段における微差というべきものであり、先願発明において、周知技術であるATCカウンタを特定していないことが本願補正発明に対して実質的な差異をもたらすものとはいえない。 よって、上記一応の相違点を検討しても、本願補正発明と上記先願明細書等に記載された発明とは、実質的に同一の発明であるといえ、しかも、本願補正発明の発明者が上記先願明細書等に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5.本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成20年7月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明のうち、請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年2月13日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項3】 再生方法において、 静止画像データを含むメインストリームデータを、前記メインストリームデータをデパケット化するATCを用いて前記メインストリームデータをデパケット化して、前記デパケット化されたメインストリームデータをデコードするSTCを用いて前記メインストリームデータをデコードすることによって、再生する段階と、 前記メインストリームデータに別途に付加されたサブオーディオデータを、前記サブオーディオデータをデパケット化するATCを用いて前記サブオーディオデータをデパケット化して、前記デパケット化されたサブオーディオデータをデコードするSTCを用いて前記サブオーディデータをデコードすることによって、再生する段階とを含むことを特徴とする再生方法。」 2.先願発明 原査定の拒絶の理由に引用された先願発明、及びその記載事項は、前掲「第2 [理由]2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前掲「第2 [理由]1.」で検討した本願補正発明において、「メインストリームデータをデパケット化するために用いられるメインストリームATC」、「デパケット化されたメインストリームデータをデコードするために用いられるメインストリームSTC」、「サブオーディオデータをデパケット化するために用いられる、前記メインストリームATCから独立したサブオーディオATC」、「デパケット化されたサブオーディオデータをデコードするために用いられる、前記メインストリームSTCから独立したサブオーディオSTC」との限定を削除して、それぞれ「メインストリームデータをデパケット化するATC」、「デパケット化されたメインストリームデータをデコードするSTC」、「サブオーディオデータをデパケット化するATC」、「デパケット化されたサブオーディオデータをデコードするSTC」とするものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前掲「第2 [理由]3.4.」に記載したとおり、上記先願明細書等に記載された発明と実質的に同一であるから、本願発明も同様の理由により、上記先願明細書等に記載された発明と実質的に同一である。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、先願明細書等に記載された発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-09 |
結審通知日 | 2010-11-16 |
審決日 | 2010-11-29 |
出願番号 | 特願2006-182274(P2006-182274) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G11B)
P 1 8・ 161- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 津幡 貴生 |
特許庁審判長 |
小松 正 |
特許庁審判官 |
井上 信一 月野 洋一郎 |
発明の名称 | 再生装置、再生方法及びその記録媒体 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |