• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65G
管理番号 1235636
審判番号 無効2009-800246  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-12-15 
確定日 2011-04-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第4206361号発明「被処理物搬送装置および被処理物の装飾方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4206361号(以下、「本件特許」という。)に対する無効審判事件の手続の経緯は、以下のとおりである。
(1)出願:平成16年5月10日
(2)登録:平成20年10月24日
(3)審判請求書:平成21年12月15日
(4)答弁書:平成22年2月24日
(5)弁駁書:平成22年4月15日
(6)審理事項通知書:平成22年12月9日
(7)被請求人による口頭審理陳述要領書:平成23年1月21日
(8)請求人による口頭審理陳述要領書:平成23年1月24日
(9)被請求人による上申書:平成23年2月1日
(10)口頭審理:平成23年2月7日

第2 本件特許の請求項に係る発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件特許発明1ないし6」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
被処理物を取り付けるための複数のスピンドルを有する、長さが60?2000mmの範囲内の値である長尺物と、当該長尺物を取り外し可能に係合する長尺台車と、当該長尺台車を移動させるための移動手段と、を備えた被処理物搬送装置であって、
前記長尺台車と、前記移動手段との間に、複数の接合箇所を設けるとともに、前記長尺台車の非直進進行に伴って、当該複数の接合箇所間の距離を変更するための可変部材が設けてあり、かつ、当該可変部材が、軸受けを介して支持棒に係合しているとともに、当該支持棒に沿って、前記接合箇所が平行移動可能なスライド機構を有する距離アジャスタであり、
さらに、前記複数のスピンドルを回転させるための回転手段が設けてあることを特徴とする被処理物搬送装置。
【請求項2】
前記回転手段の寸法が、前記長尺物の幅よりも大きくて、前記回転手段の一部が、前記長尺物よりも側方にはみ出しているとともに、当該はみ出た回転手段の一部と、前記回転手段の側方に設けてある一対のベルトとを、接触させることによって、前記複数のスピンドルを回転させることを特徴とする請求項1に記載の被処理物搬送装置。
【請求項3】
前記移動手段が、コンベヤチェーンであることを特徴とする請求項1または2に記載の被処理物搬送装置。
【請求項4】
被処理物搬送装置を用いて、被処理物に対して、装飾処理を行う製造方法において、下記工程(1)および(2)を含むことを特徴とする被処理物の装飾方法。
(1)前記被処理物を取り付けるための複数のスピンドルを有する、長さが60?2000mmの範囲内の値である長尺物と、当該長尺物を取り外し可能に係合する長尺台車と、当該長尺台車を移動させるための移動手段と、を備えた被処理物搬送装置であって、前記長尺台車と、前記移動手段との間に、複数の接合箇所を設けるとともに、前記長尺台車の非直進進行に伴って、当該複数の接合箇所間の距離を変更するための可変部材が設けてあり、かつ、当該可変部材として、軸受けを介して支持棒に係合しているとともに、当該支持棒に沿って、前記接合箇所が平行移動可能なスライド機構を有する距離アジャスタが、前記接合箇所の少なくとも一つに設けてあり、さらに、前記複数のスピンドルを回転させるための回転手段が設けてある被処理物搬送装置を用いて、前記被処理物に対して、表面処理を行う工程
(2)表面処理した被処理物をスピンドルに取り付けたまま、当該スピンドルを有する長尺物を長尺台車から取り外し、表面処理した被処理物を加熱または蒸着処理する工程
【請求項5】
前記回転手段の寸法が、前記長尺物の幅よりも大きくて、前記回転手段の一部が、前記長尺物よりも側方にはみ出しているとともに、前記回転手段の一部と、前記回転手段の側方に設けてある一対のベルトとを、接触させることによって、前記複数のスピンドルを回転させることを特徴とする請求項4に記載の被処理物の装飾方法。
【請求項6】
前記工程(1)において、前記移動手段を周回動作させながら、前記長尺物のスピンドルの取り付けた被処理物に対して、表面処理を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の被処理物の装飾方法。」

第3 請求人の主張
請求人は、以下に示す理由を挙げ、本件特許発明1ないし6についての特許を無効とし、審判費用を被請求人の負担とすることを求め、証拠方法として甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証を提出し、口頭審理陳述要領書と共に甲第9号証を提出した。
審判請求書、弁駁書及び口頭審理(口頭審理陳述要領書及び第1回口頭審理調書を含む)において、これまで主張したことを整理すると、概ね次のとおり主張している。

1.無効理由
(1)無効理由1(29条1項1号)
本件特許発明1は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第4号証により立証される公然知られた発明と同一であるから、本件特許発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものであると主張していたが、口頭審理において、口頭審理陳述要領書に記載のとおり、この理由については取り下げる旨陳述し、被請求人は同意した。

(2)無効理由2(29条2項)
本件特許発明1ないし6は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証、甲第7号証及び甲第9号証により立証される公然知られた発明並びに甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1ないし6についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
なお、本件特許発明1についての特許に関して、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証については、口頭審理において、審判長からの審尋に対し、請求人は、証拠方法として補正により追加する旨陳述し、被請求人は同意した。
また、本件特許発明2ないし6についての特許に関して、甲第5号証の1及び甲第5号証の2については、口頭審理において、審判長からの審尋に対し、請求人は、審判請求書の「(1)請求の理由の要約」及び「(4)本件特許を無効にすべきである理由」において補正により追加する旨陳述し、被請求人は同意した。

2.無効理由についての具体的主張
請求人は、甲第4号証は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証に示された装置が本件特許出願前に公然知られたものであることを立証するためのものと主張している。また、請求人は、甲第7号証は、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証が本件特許出願前に公然知られたものであることを立証するためのものと主張している。さらに、口頭審理陳述要領書と共に提出した甲第9号証は、甲第1号証の1及び甲第3号証が本件特許出願前に公然知られたものであることを立証するためのものと主張している。
また、請求人は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証は同一の装置を表し、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証は同一の装置を表していると主張している。
さらに、請求人は、口頭審理において、「平成22年4月15日付け弁駁書第8ページ第11行ないし第12行の「また、甲第2号証の1枚目下段の写真には、長尺台車3の表面に、冶具バー(スピンドル9)の回転により生じた円形状の跡が見受けられる。」の主張は取り下げる。」と陳述した。

3.証拠方法
(1)甲第1号証の1
右下の上側枠内の「顧客名」欄に「東洋加工株式会社殿」、同下側枠内の「KAWAGUCHI SPRING CO.,LTD.」、「DSND」欄に「S.FUKUDA」、「TITLE」欄に「冶具バーワークセット コンベアー構想図」と記載された図面
(2)甲第1号証の2
右下枠内の「納入先」欄に「東洋加工殿」、「設計」欄に「渡辺」、「日付」欄に「4 12,25」、「尺度」欄に「1/1」、「機器名」欄に「伸縮バー受」、最下行に「株式会社 川口スプリング製作所」と記載された図面
(3)甲第1号証の3
右下枠内の「納入先」欄に「東洋加工(株)殿」、「設計」欄に「渡辺」、「日付」欄に「5,1,22」、「尺度」欄に「1/5」、「機器名」欄に「2080-208 リンク」、最下行に「株式会社 川口スプリング製作所」、右下枠直上に「コンベアーチェン2080」と記載された図面
(4)甲第2号証
装置らしきものが写された5枚の写真
(5)甲第3号証
1枚目に「東洋加工 株式会社 殿」、「検査ライン被塗装物着脱装置 仕様書」、「株式会社 川口スプリング製作所」及び「塗装機 事業開発部」と記載された2枚からなる紙葉
(6)甲第4号証
平成21年9月25日付けの「証明書」と表題された紙葉
(7)甲第5号証の1
最下枠内の「部品名」欄に「2080コンベヤーチェン断面U.V」、「機器名」欄に「106.7Mスピンドルタイプ」、「設計」欄に「t.5」、「製図」欄に「Shimizu」、「縮尺」欄に「1/1」、「日付」欄に「‘00.08.21」及び「98 01 06」、「塗装色」欄に「S14-535」、「製造番号」欄に「0061」、「図番」欄に「1999-0106A」、「顧客名」欄に「株式会社 富士メタル殿」、同枠内最右下に「株式会社 川口スプリング製作所」と記載された図面
(8)甲第5号証の2
最下枠内の「部品名」欄に「2080コンベヤーチェン塗装室用断面」、「機器名」欄に「106.7Mスピンドルタイプ」、「設計」欄に「t.5」、「製図」欄に「Shimizu」、「縮尺」欄に「1/1」、「日付」欄に「‘00.11.30」及び「’00.11.14」、「塗装色」欄に「S14-535」、「製造番号」欄に「0061」、「図番」欄に「2000-1114A」、「顧客名」欄に「株式会社 富士メタル殿」、同枠内最右下に「株式会社 川口スプリング製作所」と記載された図面
(9)甲第6号証
1枚目に「株式会社 富士メタル 殿」、「106M スピンドルタイプ 3コート2ベークUV硬化塗装ライン 仕様書」、「製造番号 0061」、「2001年 1月19日」、「第 3 版」、「株式会社 川口スプリング製作所」及び「塗装機事業部 開発室」と記載された31枚からなる紙葉
(10)甲第7号証
平成21年6月2日付けの「証明書」と表題された紙葉
(11)甲第8号証
特開2002-87570号公報
(12)甲第9号証
「御見積書」と表題された紙葉

第4 被請求人の主張
被請求人は、答弁書、上申書及び口頭審理(口頭審理陳述要領書を含む)において概ね次のように主張し、審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めた。

1.請求人の主張に対する反論
(1)無効理由1及び無効理由2について、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証は、無効理由1及び無効理由2の証拠としての信憑性に欠けるものである。甲第2号証については、乙第1号証から判断しても証拠としての信憑性に欠けるものである。そして、甲第1号証の1及び甲第3号証の公知日は甲第9号証によって立証されるものではない。
また、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に示された装置の同一性並びに甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証に示された装置の同一性に疑義がある。

(2)本件特許発明1についての特許に関する無効理由1及び無効理由2について、下記(2)-1ないし(2)-6のように、本件特許発明1の発明特定事項は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3及び甲第2号証に示された発明と同一ではなく、また、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に示された発明並びに甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)-1 本件特許発明1の「被処理物を取り付けるための複数のスピンドルを有する、長さが60?2000mmの範囲内の値である長尺物と、当該長尺物を取り外し可能に係合する長尺台車と、当該長尺台車を移動させるための移動手段と、を備えた被処理物搬送装置」について、甲第1号証の1及び甲第1号証の2には開示されていない。

(2)-2 本件特許発明1の「前記長尺台車と、前記移動手段との間に、複数の接合箇所を設けるとともに、前記長尺台車の非直進進行に伴って、当該複数の接合箇所間の距離を変更するための可変部材が設けてあり、かつ、当該可変部材が、軸受けを介して支持棒に係合しているとともに、当該支持棒に沿って、前記接合箇所が平行移動可能なスライド機構を有する距離アジャスタであり、」について、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第8号証には開示されていない。

(2)-3 本件特許発明1の「さらに、前記複数のスピンドルを回転させるための回転手段が設けてあること」について、甲第1号証の1、甲第5号証の1、甲第5号証の2には開示されていない。
被請求人は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第2号証及び甲第3号証について、答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において「スピンドルを回転させることができない」と繰り返し主張している。

(2)-4 甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3及び甲第2号証に示された発明と甲第5号証の1及び甲第5号証の2に示された発明とは、組み合わせることができない阻害要因がある。

(2)-5 甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3及び甲第2号証に示された発明は、本件特許発明1とは作用効果が異なる。

(2)-6 甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3及び甲第2号証に示された発明と甲第8号証に示された発明とは、組み合わせることができない阻害要因がある。

(3)本件特許発明2についての特許に関する無効理由2について、本件特許発明2の発明特定事項は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に示された発明並びに甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
具体的には、請求項2が引用する請求項1についての上記(2)に加え、本件特許発明2の「前記回転手段の寸法が、前記長尺物の幅よりも大きくて、前記回転手段の一部が、前記長尺物よりも側方にはみ出しているとともに、当該はみ出た回転手段の一部と、前記回転手段の側方に設けてある一対のベルトとを、接触させることによって、前記複数のスピンドルを回転させる」について、甲第1号証の1、甲第5号証の1及び甲第5号証の2には開示されておらず、また、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3及び甲第2号証に示された発明と甲第5号証の1及び甲第5号証の2に示された発明とは、組み合わせることができない阻害要因がある。

(4)本件特許発明3についての特許に関する無効理由2について、本件特許発明3の発明特定事項は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に示された発明並びに甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
具体的には、請求項3が引用する請求項1及び請求項2についての上記(2)及び(3)に加え、本件特許発明3の「前記移動手段が、コンベヤチェーンである」について、甲第1号証の1、甲第5号証の1及び甲第5号証の2には開示されておらず、また、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3及び甲第2号証に示された発明と甲第5号証の1及び甲第5号証の2に示された発明とは、組み合わせることができない阻害要因がある。

(5)本件特許発明4についての特許に関する無効理由2について、下記(5)-1及び(5)-2のように、本件特許発明4の発明特定事項は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に示された発明並びに甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)-1 本件特許発明4の「被処理物搬送装置を用いて、被処理物に対して、装飾処理を行う製造方法において、下記工程(1)および(2)を含むことを特徴とする被処理物の装飾方法。」及び「(2)表面処理した被処理物をスピンドルに取り付けたまま、当該スピンドルを有する長尺物を長尺台車から取り外し、表面処理した被処理物を加熱または蒸着処理する工程」について、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3及び甲第3号証には開示されていない。

(5)-2 本件特許発明4の「(1)前記被処理物を取り付けるための複数のスピンドルを有する、長さが60?2000mmの範囲内の値である長尺物と、当該長尺物を取り外し可能に係合する長尺台車と、当該長尺台車を移動させるための移動手段と、を備えた被処理物搬送装置であって、前記長尺台車と、前記移動手段との間に、複数の接合箇所を設けるとともに、前記長尺台車の非直進進行に伴って、当該複数の接合箇所間の距離を変更するための可変部材が設けてあり、かつ、当該可変部材として、軸受けを介して支持棒に係合しているとともに、当該支持棒に沿って、前記接合箇所が平行移動可能なスライド機構を有する距離アジャスタが、前記接合箇所の少なくとも一つに設けてあり、さらに、前記複数のスピンドルを回転させるための回転手段が設けてある被処理物搬送装置を用いて、前記被処理物に対して、表面処理を行う工程」について、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証には開示されていない。

(6)本件特許発明5についての特許に関する無効理由2について、本件特許発明5の発明特定事項は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に示された発明並びに甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
具体的には、請求項5が引用する請求項4についての上記(5)に加え、本件特許発明5の「前記回転手段の寸法が、前記長尺物の幅よりも大きくて、前記回転手段の一部が、前記長尺物よりも側方にはみ出しているとともに、当該はみ出た回転手段の一部と、前記回転手段の側方に設けてある一対のベルトとを、接触させることによって、前記複数のスピンドルを回転させる」について、甲第1号証の1、甲第5号証の1及び甲第5号証の2には開示されておらず、また、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3及び甲第2号証に示された発明と甲第5号証の1及び甲第5号証の2に示された発明とは、組み合わせることができない阻害要因がある。

(7)本件特許発明6についての特許に関する無効理由2について、本件特許発明6の発明特定事項は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に示された発明並びに甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
具体的には、請求項6引用する請求項4及び請求項5についての上記(5)及び(6)に加え、本件特許発明6の「前記工程(1)において、前記移動手段を周回動作させながら、前記長尺物のスピンドルの取り付けた被処理物に対して、表面処理を行う」について、甲第3号証及び甲第6号証には開示されていない。

2.証拠方法
乙第1号証
甲第2号証の写真の部分拡大図と称する紙葉

第5 当審の判断
無効理由1については、上記「第3 請求人の主張」の「(1)無効理由1(29条1項1号)」のように、口頭審理において、請求人より「取り下げる」旨の陳述があったので、以下、無効理由2について検討する。
また、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証の成立性及び公知性(本件特許出願前に公然知られたものであるか否か)、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に示された装置間の同一性並びに甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証に示された装置間の同一性、さらには、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載された装置と東洋加工株式会社に設置されたと請求人が主張する装置との同一性並びに甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証に記載された装置と株式会社富士メタルに設置されたと請求人が主張する装置との同一性について争いがあるが、ここでは、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証の成立性及び公知性、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に示された装置間の同一性及び甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証に示された装置間の同一性、さらには、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証に記載された装置と東洋加工株式会社に設置されたと請求人が主張する装置との同一性及び甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証、甲第7号証に記載された装置と株式会社富士メタルに設置されたと請求人が主張する装置との同一性についての判断は保留し(公知性に関しては、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証に示された装置が本件特許出願前に公然知られたものであることを立証するためのものと主張する甲第4号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証が本件特許出願前に公然知られたものであることを立証するためのものと主張する甲第7号証並びに甲第1号証の1及び甲第3号証が本件特許出願前に公然知られたものであることを立証するためのものと主張する甲第9号証についての検討は保留し)、仮に、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証が真正に成立し本件特許出願前に公然知られたものであって、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証が同一の装置を示しかつ甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証が同一の装置を示し、さらには、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載された装置と東洋加工株式会社に設置されたと請求人が主張する装置は同一の装置であって、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証に記載された装置と株式会社富士メタルに設置されたと請求人が主張する装置は同一の装置であるとした場合について、以下に検討する。

1.甲号証から認定できる事項
(1)甲第1号証の1について
甲第1号証の1は、「TITLE」が「治具バーワークセットコンベアー構想図」なる図面であり、そのうち、上段と中段の図の記載から、甲第1号証の1には、
「複数のピン状の部位1を有する、長尺状の部位2と、当該長尺状の部位2と隣接しガイドローラーを備えた長尺状のベース板3と、当該ガイドローラーを備えた長尺状のベース板3のガイドローラーに近接して設けられた上側ガイドレール及び下側ガイドレールと、を備えた治具バーワークセットコンベアーであって、
前記ガイドローラーを備えた長尺状のベース板3と、前記上側ガイドレール及び下側ガイドレールとの間に、複数の連接部位5a,5bを設けるとともに、当該複数の連接部位5a,5bの1つ5aがスライドレール8に隣接して、
さらに、前記複数のピン状の部位1の長手方向下部に前記複数のピン状の部位1よりも大径の略円盤状の部位9が隣接して設けてある治具バーワークセットコンベアー。」(以下、「甲第1号証の1記載の発明」という。便宜上、甲第1号証の1の説明図における符号を付した。)が記載されているものと認められる。

(2)甲第1号証の2について
甲第1号証の2は、「機器名」が「伸縮バー受」なる図面であり、甲第1号証の2には、
「断面コの字状の板状部3を備えた伸縮バー受であって、
前記断面コの字状の板状部3に、複数の連接部位8、7、6、5a、4を設けてある伸縮バー受。」(以下、「甲第1号証の2記載の発明」という。便宜上、甲第1号証の2の説明図における符号を付した。)が記載されているものと認められる。

(3)甲第1号証の3について
甲第1号証の3は、「機器名」が「2080-208リンク」なる図面であり、甲第1号証の3には、
「略直線状に複数連続的に連なった略円盤状の部位4及び該部位4の間に間隔をおいて配置された断面略T字状の1つの5a及び2つの部位5bを備えた2080-208リンク。」(以下、「甲第1号証の3記載の発明」という。便宜上、甲第1号証の3の説明図における符号を付した。)が記載されているものと認められる。

(4)甲第2号証について
甲第2号証は、装置らしきものが写された5枚の写真であって、それぞれの写真から次の事項(便宜上、甲第2号証の説明図における符号を付した。)がうかがえる。

(4)-1 1枚目の写真
装置らしきものを斜めから撮影したものであって、略環状に形成された経路上に沿って略円盤状の部材4が略全経路にわたって連接して配されるとともに、該連接して配された一連の略円盤状の部材4の途中に柱状の部材5a,5bが間隔を置いて複数本立設され、該経路上に沿って複数の長尺状の板3が1枚あたり2本の該柱状の部材5a,5bの上に載置され、該長尺上の板3の上面には長尺方向の両端部にそれぞれ2枚の一組の板らしきものが間隔を空けて該長尺方向に平行に立設されかつその上部が該2枚の一組の板らしきものの間隔が上方にいくにつれて拡大する方向に略ハの字状に拡開したものであること。

(4)-2 2枚目の写真
装置らしきものを斜めから撮影したものであって、略環状に形成された経路上に沿って略円盤状の部材4が略全経路にわたって連接して配されるとともに、該連接して配された一連の略円盤状の部材4の途中に柱状の部材5a,5bが間隔を置いて複数本立設され、該経路上に沿って複数の長尺状の板3が1枚あたり2本の該柱状の部材5a,5bの上に載置されたものであり、該長尺上の板3の上面には長尺方向の両端部にそれぞれ2枚の一組の板らしきものが間隔を空けて該長尺方向に平行に立設されかつその上部が該2枚の一組の板らしきものの間隔が上方にいくにつれて拡大する方向に略ハの字状に拡開したものであり、さらに、該複数の長尺上の板の上面には両端部に立設された該2枚の一組の板の間に1枚当たり複数の円弧状の模様らしきものがあること。

(4)-3 3枚目の写真
装置らしきものの一部を接写したものであって、略環状に形成された経路上に沿って略円盤状の部材4が略全経路にわたって連接して配されるとともに、該連接して配された一連の略円盤状の部材4の途中に柱状の部材5a,5bが間隔を置いて複数本立設され、該経路上に沿って複数の長尺状の板3が1枚あたり2本の該柱状の部材5a,5bの上に載置されたものであり、該長尺上の板3の上面には長尺方向の両端部にそれぞれ2枚の一組の板らしきものが間隔を空けて該長尺方向に平行に立設されかつその上部が該2枚の一組の板らしきものの間隔が上方にいくにつれて拡大する方向に略ハの字状に拡開したものであり、さらに、該柱状の部位と長尺状の板との間には、横長の略長方形断面の部位とその両側面及び上面の三方を覆う板状の部位が設けられていること。

(4)-4 4枚目の写真
操作盤らしきものを斜め上方から撮影したものであって、蓋のない箱状の部材を写真手前側を開放する向きに立設して、その上面には、左端の手前位置に「1993.3.27設置」と記載した帯状のテープらしきものが貼り付けられるとともに3本の管状の部材が上方に向けて延設され、また該箱状の部材の中には、左寄りに上下に2つの機器らしきものが複数の電気線を伴って装着され、その右側には1つの機器らしきものが複数の電気線を伴って装着されていること。

(4)-5 5枚目の写真
装置らしきものを斜めから撮影したものであって、略環状に形成された経路上に沿って略円盤状の部材4が略全経路にわたって連接して配されるとともに、該連接して配された一連の略円盤状の部材4の途中に柱状の部材5a,5bが間隔を置いて複数本立設され、該経路上に沿って複数の長尺状の板3が1枚あたり2本の該柱状の部材5a,5bの上に載置され、該長尺上の板3の上面には長尺方向の両端部にそれぞれ2枚の一組の板らしきものが間隔を空けて該長尺方向に平行に立設されかつその上部が該2枚の一組の板らしきものの間隔が上方にいくにつれて拡大する方向に略ハの字状に拡開したものであり、さらに、写真手前の上記経路の下方左寄り付近に、操作盤らしきものが配され、蓋のない箱状の部材を写真手前側を開放する向きに立設して、その上面には、3本の管状の部材が上方に向けて延設され、また該箱状の部材の中には、左寄りに上下に2つの機器らしきものが複数の電気線を伴って装着され、その右側には1つの機器らしきものが複数の電気線を伴って装着されていること。

そして、仮に請求人が主張するように、5枚の写真が全て同一の装置らしきものを写したものとした場合、甲第2号証には、
「長尺状の板3を備えた装置らしきものであって、
前記長尺状の板3と、円盤状の部位4との間に、複数の柱状の部材5a,5bが設けてある装置らしきもの。」(以下、「甲第2号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

(5)甲第3号証について
甲第3号証は、2枚からなる紙葉であって、次のとおり記載されている。

1枚目には、上方に「東洋加工 株式会社 殿」、「検査ライン被塗装物着脱装置 仕様書」と記載され、下方に「株式会社 川口スプリング製作所」及び「塗装機 事業開発部」と記載されている。
2枚目には、上から順に「検査ライン被塗装物着脱装置 仕様書」、「1.概 要」、「本装置は 治具バーにワークをセットする為のコンベアー装置です。」、「2.コンベアー」、「寸 法 2040mmW×4900mmL×2350mmH」、「方 式 治具バーエンドレスタイプ」、「チェーンタイプ スピンドルチェーン」、「チェーンピッチ 50.8mm」、「チェーン長 10566.4mm」、「コンベアースピード 2?10m」、「治具台固定方法 二点支持スライド方式 8式」、「スライド方式 スライドパック式(THK製) FBW 3590NF」、「治具バー 11×11×1200mm ローラー径φ30mm」、「二点支持寸法 812.8mm」、「スライド寸法 178mm」、「コンベアーホイル #2080-21B」、「駆動モーター ギャードモーター 0.4KW 1/150 (日立製)HGGE」、「駆動ギャー #60-44B」、「従動ギャー #60-54B」、「速度調整 インバーター制御 (三木製)」、「キャスター 自在 65φ×38(内村製)105HB-PA 8台」、「照明 40W×2灯 ラビットスタート スイッチ付 6台 (東芝製)」、「ティクアップ装置 ネジ調整式」及び「指定色 R13-535」と記載されている。

(6)甲第4号証について
甲第4号証は、「証明書」と表題された紙葉であって、次のとおり記載されている。

上から順に、「添付の写真の装置は、1993年3月27日に弊社に設置されたものであり、また添付の図面は1993年3月27日以前に弊社に提出されたものであり、弊社はいずれもその技術内容について守秘義務を負うものでないことを照明します。」、「「○1」治具バーワークセットコンベアー構想図」、「「○2」伸縮バー受」、「「○3」2080-208リンク」、「「○4」装置写真」及び「平成21年9月25日」と印字され(ただし、「9」及び「25」は手書き)、右下に「埼玉県川口市青木4丁目21番31号 東洋加工株式会社 代表取締役 福島康充」のゴム印らしき黒色の印字とともに角印及び福島の丸印が朱色にて押印されている(「○数字」の表記は、○付き数字を表す。)。

(7)甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証が同一の装置を示しているとした場合について

仮に、請求人が主張するように、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証が同一の装置を示しているとした場合において、本件特許発明1及び4の発明特定事項のうち、被請求人が答弁書、上申書及び口頭審理陳述要領書において「スピンドルを回転させることができない」と繰り返し主張する、「複数のスピンドルを回転させるための回転手段」が設けてあるかについて、以下に検討する。

まず、甲第1号証の1には、「長尺状の部位2」の長手方向の寸法として「1200」という数字が記載されているものの、その単位は明らかでない。また、同「長尺状の部位2」の幅方向の寸法として「11」という数字が単位を伴わずに記載されている。ただ、右上の「仕様」と表題された表においては、「1200」という数字は見当たらないものの、他の数値とともに「mm」が用いられている。
他方、甲第3号証には、「治具バー 11×11×1200mm ローラー径φ30mm」と記載されている。
そして、口頭審理において、請求人より「治具バー」は上記「長尺状の部位2」を含む部位のことを意味する旨主張されるとともに被請求人からは特段の反論はなく、また、甲第1号証の1において、甲第3号証の上記記載と同様な数字は、上記「長尺状の部位2」においてしか見当たらないところ、仮に甲第1号証の1と同一の装置を示しているとした場合、上記「長尺状の部位2」の長手方向の寸法は「1200mm」と認めることができる。

そうすると、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証には、
「複数のピン状の部位1を有する、長さが1200mmの長尺状の部位2と、当該長尺状の部位2と隣接しガイドローラーを備えた長尺状のベース板3と、当該ガイドローラーを備えた長尺状のベース板3のガイドローラーに近接して設けられた上側ガイドレール及び下側ガイドレールと、を備えた治具バーワークセットコンベアーであって、
前記ガイドローラーを備えた長尺状のベース板3と、前記上側ガイドレール及び下側ガイドレールとの間に、複数の柱状の連接部位5a,5bを設けるとともに、当該複数の柱状の連接部位5a,5bの1つ5aがスライドレール8に隣接して設けてある治具バーワークセットコンベアー。」(以下、「甲第1号証の1ないし甲第3号証記載の発明」という。便宜上、甲第1号証の1ないし甲第2号証の説明図における符号を付した。)が記載されているものと認められる。

しかしながら、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証には、本件特許発明1及び4の発明特定事項のうち、少なくとも「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「被処理物を取り付けるための複数のスピンドル」を「回転させるための回転手段」に相当するものが設けてあることについては、何ら記載もないし示唆もない。
以下に詳述する。

まず、上記(1)ないし(3)のように、甲第1号証の1、甲第1号証の2及び甲第1号証の3の図面には、いずれにも「複数のスピンドルを回転させるための回転手段」が設けてあることは記載されていない。

これに対し、請求人は、平成22年4月15日付け弁駁書第8ページ第4行ないし第10行において「甲第3号証における、検査ライン被塗装物着脱装置の仕様書2.コンベアーの冶具バーには、ローラー径φ 30mmと記載されており、甲第3号証の装置における冶具バーが回転するのは明らかである。・・・したがって、甲第3号証のかかる記載から、甲1号証の1の装置におけるスピンドル1が回転することは明らかである。」と主張する。
しかしながら、弁駁書における上記主張のように甲第3号証の「コンベアー」の「冶具バー」の欄に「ローラー径φ30mm」と記載されてはいるものの、「甲第1号証の1の装置におけるスピンドル1」との関係は何ら明らかでなく、ましてや、請求人が主張するように、該「スピンドル1」が「回転する」ことまで記載ないし示唆されていると認めることはできない。
また、同弁駁書第8ページ第7行ないし第8行において「冶具バーはスピンドル1に相当する」と主張しているが、甲第3号証の「冶具バー」欄には「11×11×1200mm」と記載されており、甲第1号証の1において符号「1」が付された部位の寸法とは大きく異なっており、何ら採用できるものではない。
そして、甲第3号証においては、「複数のスピンドル」を有することや、この「複数のスピンドル」を「回転させる」こと、さらには、「複数のスピンドルを回転させるための回転手段」については何ら記載されていない。
そうすると、甲第3号証は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証において「複数のスピンドルを回転させるための回転手段」が設けてあることを記載ないし示唆するものとは認められない。

また、請求人は、上記弁駁書第8ページ第7行の「甲第2号証は、甲第1号証の1の装置を納品先に設置した写真であり」に続く、同弁駁書第8ページ第11行ないし第12行の「また、甲第2号証の1枚目下段の写真には、長尺台車3の表面に、冶具バー(スピンドル9)の回転により生じた円形状の跡が見受けられる。」の主張について、上記「第3 請求人の主張」の「2.無効理由についての具体的主張」のように、口頭審理において、取り下げる旨陳述したことにより、甲第2号証をもって、甲第1号証の1において回転する部位及び該部位を回転させるための回転手段が存在すると認めることはできない。
そして、甲第2号証においては、「複数のスピンドル」を有することや、この「複数のスピンドル」を「回転させる」こと、さらには、「複数のスピンドルを回転させるための回転手段」については何ら記載されていない。
そうすると、甲第2号証は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証において「複数のスピンドルを回転させるための回転手段」が設けてあることを記載ないし示唆するものとは認められない。

以上からみると、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証には、本件特許発明1及び4の発明特定事項である「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「被処理物を取り付けるための複数のスピンドル」を「回転させるための回転手段」に相当するものが設けてあることについては、何ら記載もないし示唆もされていない。

(8)甲第5号証の1について
甲第5号証の1は、「部品名」が「2080コンベヤーチェン断面U.V」、「機器名」が「106.7Mスピンドルタイプ」なる図面であり、甲第5号証の1には、
「ピン状の部位1を備えた106.7Mスピンドルタイプであって、
ピン状の部位1に、複数の軸受けを設けるとともに、ピン状の部位1に長手方向に連接して設けられた部位9が複数の軸受けにより軸支されるとともに該部位9がシリコンゴム製の断面L字状の部位が接触して設けてある106.7Mスピンドルタイプ。」(以下、「甲第5号証の1記載の発明」という。便宜上、甲第5号証の1の説明図における符号を付した。)が記載されているものと認められる。

(9)甲第5号証の2について
甲第5号証の2は、「部品名」が「2080コンベヤーチェン塗装室用断面」、「機器名」が「106.7Mスピンドルタイプ」なる図面であり、甲第5号証の2には、
「ピン状の部位1を備えた106.7Mスピンドルタイプであって、
ピン状の部位1に、複数の軸受けを設けるとともに、ピン状の部位1に長手方向に連接して設けられた部位9が複数の軸受けにより軸支されている106.7Mスピンドルタイプ。」(以下、「甲第5号証の2記載の発明」という。便宜上、甲第5号証の2の説明図における符号を付した。)が記載されているものと認められる。

(10)甲第6号証について
甲第6号証は、31枚からなる紙葉であって、次のとおり記載されている。

1枚目には、上方に「株式会社 富士メタル 殿」、「106M スピンドルタイプ 3コート2ベークUV硬化塗装ライン 仕様書」、「製造番号 0061」、「2001年 1月19日」及び「第 3 版」と記載され、下方に「株式会社 川口スプリング製作所」及び「塗装機事業部 開発室」と記載されている。
2枚目(下部に「- 1 -」と記載されたページ)には、上から順に「106M スピンドルタイプ 3コート2ベークUV硬化塗装ライン 仕様書」、「1.仕様設定条件」、「ワーク名 化粧品ビン」、「ワーク寸法 MAX φ250×300H」、「ワーク重量 1000g/個」、「ワーク材質 ガラス・樹脂」、「装置の目的 装飾塗装 及 ハードコート」、「塗装方式 スピンドルスプレー塗装 ワーク自転 スプレーガン固定」、「塗装部位 外周面」、「予備乾燥 遠赤外線ヒーター乾燥」、「硬化方式 UV照射 高圧水銀方式」、「ワーク投入 ハンド」、「ワーク取出 ハンド」、「コンベアー方式 スピンドル エンドレス式 コンベアー連続運転」及び「設備工程 投入 - 除塵 - No.0スピンドルスプレー塗装 - - No.1スピンドルスプレー塗装 - No.1 I・R乾燥炉 - - No.1冷却 - No.2スピンドルスプレー塗装 - - No.2 I・R乾燥炉 - No.2冷却 - UV照射 - - 取出」と記載されている。
3枚目(下部に「- 2 -」と記載されたページ)には、「2.コンベアー 1式」、「タイプ スピンドル エンドレス連続運転式」、「チェーン長 106680mm」、「チェーンピッチ 50.8mm」、「スピンドルピッチ 50.8mm」、「スピンドル治具数 2100組」、「スピンドル治具材質 硬質アルミニューム」、「スピンドル上治具 別途打合せ」、「チェーンホイルピッチ径 PCD389.2 180°ターン部・コンベアー駆動部 PCD308.6 90°ターン部」、「スピード 8m/min」、「駆動方法 連続運転 前進後退インチング」、「変速範囲 3.0?8.5m/min」、「駆動モーター KHE×135 1.5kw 1/250 AC200V 4台」、「変速方法 インバーター制御」、「テークアップ ネジ調整式」、「コンベアーチェン給油装置 ワンサイクル自動給油 糸潤滑法チェン給油 (ES-2/CU-6 フロート付) ポンプモーター 0.1kw AC200V オイルタンク 6・」、「操作機能 生産数表示(タッチパネル) コンベアー ON/OFFスイッチ キー付非常停止スイッチ」、「非常スイッチ位置 ワーク投入取出コンベアー両サイド」、「警報ブザー装置 No.1コンベアー駆動モーター部・ワーク投入取出中央部(電子音)」及び「渡り梯子位置 除塵室コンベアー入口側・No.1セッテング側」と記載されている。
9枚目(下部に「- 8 -」と記載されたページ)には、「5.No.1 塗装 1式」(第1行)、「自転装置 安全増 減速モーター CNHM05-5085-11 0.4kw 1/11 AC200V 1台 モーター回転右転左転切替式」(第5行ないし第7行)、「自転変速方式 インバーター制御」(第8行)及び「ベルト調整装置 ハンドル手動回転式 1式」(第9行)と記載されている。
11枚目(下部に「- 10 -」と記載されたページ)には、「6.No.2 塗装 1式」(第1行)、「自転装置 安全増 減速モーター CNHM05-5085-11 0.4kw 1/11 AC200V 1台 モーター回転右転左転切替式」(第5行ないし第7行)、「自転変速方式 インバーター制御」(第8行)及び「ベルト調整装置 ハンドル手動回転式 1式」(第9行)と記載されている。
21枚目(下部に「- 20 -」と記載されたページ)には、「15.UV照射」(第1行)及び「自転装置 自走回転式 シリコンベルト方式」(第5行)と記載されている。

(11)甲第7号証について
甲第7号証は、「証明書」と表題された紙葉であって、次のとおり記載されている。

上から順に、「「○1」株式会社川口スプリング製作所で作図された下記図面」、「製造番号 0061 機器名 106.7Mスピンドルタイプ」、「「○2」株式会社川口スプリング製作所で作成された弊社宛の下記仕様書」、「106Mスピンドルタイプ 3コート2ベークUV硬化塗装ライン 仕様書」、「製造番号 0061 第3版」、「は、2001年 1月19日に弊社に開示されたものであり、弊社はその内容について守秘義務を負うものでないことを証明します。」及び「平成21年6月2日」と印字され(ただし、「6」及び「2」は手書き)、右下に「千葉県香取市沢1763番地 株式会社富士メタル 代表取締役 加藤賢二」のゴム印らしき黒色の印字とともに角印が朱色にて押印されている(「○数字」の表記は、○付き数字を表す。)。

(12)甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証が同一の装置を示しているとした場合について

仮に、請求人が主張するように、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証が同一の装置を示しているとした場合において、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証には、本件特許発明1及び4に係る発明の発明特定事項のうち、被請求人が答弁書及び口頭審理陳述要領書において「甲第5号証の1及び甲第5号証の2に開示されているのは、・・・少なくとも長尺物に備えてある複数の小型スピンドルを回転させるための特定の回転手段ではない。」と繰り返し主張する、「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「被処理物を取り付けるための複数のスピンドル」を「回転させるための回転手段」が設けてあるかについて、以下に検討する。

まず、上記(8)及び(9)のように、甲第5号証の1及び甲第5号証の2の図面には、そのうち、甲第5号証の1に「ピン状の部位1にシリコンゴム製の断面L字状の部位が接触して設けてある」点が記載されているものの、甲第5号証の1及び甲第5号証の2のいずれにも「長尺物」及び「長尺物を取り外し可能に係合する長尺台車」を備えていることは記載されておらず、本件特許発明1及び4の発明特定事項である、「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「被処理物を取り付けるための複数のスピンドル」を「回転させるための回転手段」が設けてあることは記載されていない。
また、上記(10)のように、甲第6号証には、「自転装置」とあり回転手段らしきものが記載されてはいるが、「長尺物」及び「長尺物を取り外し可能に係合する長尺台車」を備えていることは記載されておらず、本件特許発明1及び4の発明特定事項である、「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「被処理物を取り付けるための複数のスピンドル」を「回転させるための回転手段」が設けてあることは記載されていない。

そして、請求人は、口頭審理において、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に示されたものは、「長尺物」及び「長尺台車」を備えておらず、チェンに直接立設したピン状の部位1を回転させるものである旨陳述した。

以上からみると、甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証には、本件特許発明1及び4の発明特定事項である「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「被処理物を取り付けるための複数のスピンドル」を「回転させるための回転手段」に相当するものが設けてあることについては、何ら記載もないし示唆もされていない。

(13)甲第8号証について
甲第8号証には、「トレーによる物品搬送装置」が記載されており、図面とともに、例えば、次のような事項が記載されている。

ア.「【0007】
【実施例】本発明の各実施例について図面を参照して具体的に説明する。
実施例1(図1?5参照)
図1?5に示す実施例1は、複数のモーターで無端チェーンを駆動するようにし、下面に設けたローラーで移動するトレーを無端チェーンに取り付けるようにしたトレーによる物品搬送装置の例である。図1は実施例1のトレーによる物品搬送装置の平面図である。図2は図1のA-A断面図である。図3は実施例1のトレーによる物品搬送装置のトレーの底面図である。図4は実施例1のトレーによる物品搬送装置のトレーの側面図である。図5は実施例1のトレーによる物品搬送装置の説明図である。図中、1はトレーによる物品搬送装置、2は棚状循環式搬送路、2a,2b,2cは搬送路ユニット、2dはスリット、3は溝レール、4は無端索状体として用いたチェーン、4aはプレート、4bはころ、4cはブッシュ、5は駆動装置、5aは駆動モーター、5bはギヤ部、6はトレー、6aは円盤、6bはローラー、6cはL字板、6dはドグ、6eは接続部、6fは穴、6gは長穴、wはワークである。」(段落【0007】)

イ.「【0009】次に、図2,5に示すように循環するように接続した溝レール3にチェーン4を取り付ける。チェーン4は並行に配置したプレート4aをころ4b及びブッシュ4cで別のプレート4aに所定の範囲で回転自在に多数連結し、無端となるようにしたものである。チェーン4の長さは、溝レール3の長さと略同じになるようにする。このチェーンを、並行に位置するプレート4aを上下に位置するようにし、下方のプレート4aが溝レール3の内部に嵌入され、上方のプレート4aが溝レール3から上方に突出するようにする。
【0010】次に、搬送路ユニット2a,2bの溝レール3の一部が切欠されて、チェーン4が溝レール3で支持されない部分を設け、この部分で、駆動のためのギヤ部5bを係合させ、ギヤ部5bを駆動する駆動モーター5aを設ける。このようにして、チェーン4は駆動モーター5a,ギヤ部5bからなる駆動装置5によって複数箇所で駆動される。
【0011】次に、搬送面上に搬送する物品を載せるためのトレー6を設ける。トレーは、図2?5に示すように円盤6aの下面中央に前後に長いL字板6cを設ける。L字板6cは円盤6aの下面から所定の長さ下方に伸びその下端で円盤を並行になるようL字に折曲させたものである。次にL字板6cの円盤6aと並行な部分の前後に一方が穴6f、他方が長穴6gとなるように貫通させた部分を設ける。次に、L字板6cによって左右に分けられた円盤6aの下面にそれぞれローラー6bを設ける。ローラー6bは、円盤6aの下面左右いずれか一方に1箇所、他方に2箇所設けるようにする。次に、円盤6a下面のL字板6cと2箇所に設けたローラー6b側のローラー6bとの間に、前後に長いドグ6dを設ける。ドグ6dの前後端部には、テーパー部を設ける。次に、上下に長い棒状の接続部6eを設け、上端には径が大きい径大部分を設ける。この接続部6eの下端を、L字板6cに設けた穴6fと長穴6gに上方から貫通させ、径大部分を係合させるようにして、接続部6eをL字板6cに取り付ける。このようにして構成させるトレー6は最大30kgのワークを載せることができる。
【0012】次に、トレー6を棚状循環搬送路2上に載せる。この際には、トレー6の下面に設けたL字板6cの前後に取り付けた接続部6eの下端を棚状循環搬送路2のスリット2d内部に嵌入し、接続部6eの下端を脱着自在にチェーン4のブッシュ4cに取り付ける。また、トレー6を棚状循環搬送路2上に載せる際には、棚状循環搬送路2上のスリット2d外周側にローラーを2箇所設けた側を位置させ、棚状循環搬送路2上のスリット2dの内周側にローラーを1箇所設けた側を位置させるようにする。このようにして棚状循環搬送路2上に複数のトレー6を取り付ける。
【0013】本実施例1のトレーによる物品搬送装置は、加工用のワークを搬送するものである。このワークwをトレー6の円盤6aの上に載置し、駆動装置5を作動させると、駆動モーター5aの駆動がギヤ部5bを介してチェーン4に伝えられ、チェーン4が溝レール3に沿って回転する。これによってチェーン4が棚状循環搬送路2に沿って回転することになる。チェーン4とトレー6は、接続部6eによって接続されているので、チェーンの回転によって接続部6eで連結しているトレー6が移動する。棚状循環搬送路2の直線部分においては、トレー6のL字板6cの前方及び後方の穴6fと長穴6gがそれぞれ接続部6eによってチェーン4に連結されていることによって、トレー6は前後の2箇所がチューン4上を移動することになり、棚状循環搬送路2からはずれることなく移動する。棚状循環搬送路2のユーターン部及びカーブ部においては、図5に示すようにチェーン4がユーターン部又はカーブ部の曲率に沿って曲がるように循環移動する。接続部6eが取り付けられているチェーン4の2箇所は、カーブ部の曲率に沿って曲げられることによって、この2箇所の接続部の間の距離は直線部分の場合と比較すると短かくなる。接続部6eと係合しているトレー6のL字板6cは、片方が長穴6gで係合するようにしているので、この接続部6e間の距離の変化に対応して長穴6gと係合している接続部6eの上端部分がスライドする。しかし長穴6gに対し、接続部6eの上端部は左右方向には動きがわずかな量しか動けないので、トレー6は、チェーン4上からはずれることなく移動する。
【0014】このようにトレー6を移動させることによって円盤形状のトレー6の重心は、チェーン4から離れることなくカーブ部を通過するため、必要以上にトレー6が方向をターンすることはない。よってトレー6自体の回転を必要最低限に抑えることができ、トレー6上に載せたワークwに働く、カーブ部での遠心力を小さく抑えることができる。よって、従来に比べて小さな曲率でカーブさせることができ、あるいは、従来よりも速い搬送スピードにできる。従来より小さな曲率でカーブさせることができることにより、従来より狭いスペースで使用でき、スペースを有効に活用できるようになり、また、従来より速い搬送スピードにできることにより、より効率を向上させることができる。また、本実施例のトレーによる物品搬送装置では、ユーターン部の搬送ユニット2a,直線部の搬送路ユニット2b,カーブ部の搬送路ユニット2cを単数あるいは複数組み合わせることによって様々な棚状循環搬送路2を構築できる。全体の棚状循環搬送路2が延長された場合には、チェーン4を延長分に合わせて継ぎたすようにすればよい。
【0015】図6に示すのは、実施例1の他の例である。図6は実施例1のトレーによる物品搬送装置の他の例のユーターン部分の断面図である。図中、7は回転盤である。実施例1の他の例では、溝レールを用いずにチェーンを支持する。ユーターン部においてはチェーンをユーターンさせる曲率に合わせた回転盤7をチェーン4の上下のプレート4aの間に係合させることでチェーンを所定の曲率でカーブさせてユーターンさせるようにしている。このようにしてチェーンを支持するようにしてもよい。」(段落【0009】ないし【0015】)

そして、上記ア.及びイ.並びに図1ないし5の記載から、甲第8号証には、
「トレー6と、当該トレー6を移動させるためのチェーン4と、を備えたトレーによる物品搬送装置であって、
前記トレー6と、前記チェーン4との間に、2つの接続部6eを設けるとともに、前記トレー6のカーブ部の通過に伴って、当該2つの接続部6e間の距離を変更するための長穴6gが設けてあるトレーによる物品搬送装置。」(以下、「甲第8号証記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

そして、本件特許発明1及び4の発明特定事項のうち、被請求人が答弁書及び口頭審理陳述要領書において「回転不可」と繰り返し主張する、「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「被処理物を取り付けるための複数のスピンドル」を「回転させるための回転手段」に相当するものが設けてあることについては、何ら記載もないし示唆もされていない。

(14)甲第9号証について
「御見積書」と表題された紙葉であって、次のような記載がある。

上から順に、「平成4年10月15日」、「東洋加工 株式会社 御中」、「株式会社 川口スプリング製作所」及び角印、「鬼塚の丸印」、「受渡場所 御社 美里工場」、「納期 受注後 30日間」、「御支払方法 従来通り」、「見積有効期間 平成4年11月30日」、「機種・品名」及び「数量」欄に「治具バーセットコンベア 1式 (内訳)コンベア・架台及駆動関係 治具バー用ホルダー及スライド機構 電気関係 搬入,調整費」としその下に「1992.10.19 福島社長と面会し決定 (但し.ケイ光灯 6灯or8灯 付 キャスター付とする)」

2.無効理由2についての対比、判断
2-1.本件特許発明1について
上記1.(1)ないし(13)より、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証のいずれにも、本件特許発明1の発明特定事項である、「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「被処理物を取り付けるための複数のスピンドル」を「回転させるための回転手段」に相当するものについては、何ら記載もないし示唆もされていない。
また、そもそも甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証のうち、唯一、甲第1号証の1に記載されている長尺状のベース板3に隣接した長尺状の部位2が有する「ピン状の部位1」について、上記1.(7)のように、仮に請求人が主張するように甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証が同一の装置を示しているとしたとしても、該ピン状の部位1が「回転する」ことについて記載ないし示唆されているとは認められない以上、たとえ甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に「スピンドルを回転させるための回転手段」が開示されていたとしても、甲第1号証の1に記載されている「回転する」とは認められない「ピン状の部位1」に甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に「スピンドルを回転させるための回転手段」を組み合わせる動機付けがなく、また、その組み合わせには阻害要因があるといえる。
そうすると、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明1の「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「複数のスピンドルを回転させるための回転手段」に想到することは当業者が容易になし得たものとすることはできない。

2-2.本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項をその発明特定事項の一部とするものであるから、本件特許発明1についての理由と同様の理由により、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明1を発明することは、当業者にとって容易になし得たものとすることはできない。

2-3.本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1の発明特定事項をその発明特定事項の一部とするものであるから、本件特許発明1についての理由と同様の理由により、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明1を発明することは、当業者にとって容易になし得たものとすることはできない。

2-4.本件特許発明4について
上記1.(1)ないし(13)より、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証のいずれにも、本件特許発明4の発明特定事項である、「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「被処理物を取り付けるための複数のスピンドル」を「回転させるための回転手段」に相当するものについては、何ら記載もないし示唆もされていない。
また、そもそも甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証のうち、唯一、甲第1号証の1に記載されている長尺状のベース板3に隣接した長尺状の部位2が有する「ピン状の部位1」について、上記1.(7)のように、仮に請求人が主張するように甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証及び甲第3号証が同一の装置を示しているとしたとしても、該ピン状の部位1が「回転する」ことについて記載ないし示唆されているとは認められない以上、たとえ甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に「スピンドルを回転させるための回転手段」が開示されていたとしても、甲第1号証の1に記載されている「回転する」とは認められない「ピン状の部位1」に甲第5号証の1、甲第5号証の2及び甲第6号証に「スピンドルを回転させるための回転手段」を組み合わせる動機付けがなく、また、その組み合わせには阻害要因があるといえる。
さらに、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証のいずれにも、本件特許発明4の発明特定事項である、「被処理物の装飾方法」、「被処理物に対して、表面処理を行う工程」及び「表面処理した被処理物を加熱または蒸着処理する工程」について記載されていない。
そうすると、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明4の「長尺台車」に「取り外し可能に係合する」「長尺物」が有する「複数のスピンドルを回転させるための回転手段」に想到することは当業者が容易になし得たものとすることはできない。

2-5.本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明4の発明特定事項をその発明特定事項の一部とするものであるから、本件特許発明4についての理由と同様の理由により、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明5を発明することは、当業者にとって容易になし得たものとすることはできない。

2-6.本件特許発明6について
本件特許発明6は、本件特許発明4の発明特定事項をその発明特定事項の一部とするものであるから、本件特許発明4についての理由と同様の理由により、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明6を発明することは、当業者にとって容易になし得たものとすることはできない。

2-7.まとめ
以上より、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証の成立性及び公知性(本件特許出願前に公然知られたものであるか否か)、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に示された装置間の同一性並びに甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証及び甲第7号証に示された装置間の同一性、さらには、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証に記載された装置と東洋加工株式会社に設置されたと請求人が主張する装置との同一性及び甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証、甲第7号証に記載された装置と株式会社富士メタルに設置されたと請求人が主張する装置との同一性にかかわらず(公知性に関しては、甲第4号証、甲第7号証及び甲第9号証など何ら検討するまでもなく)、本件特許発明1ないし6は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第1号証の3、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の1、甲第5号証の2、甲第6号証、甲第7号証により認められる発明及び甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、審判請求人の主張する無効理由によっては、本件特許発明1ないし6についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-03-11 
出願番号 特願2004-139541(P2004-139541)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 良憲  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 河端 賢
中川 隆司
登録日 2008-10-24 
登録番号 特許第4206361号(P4206361)
発明の名称 被処理物搬送装置および被処理物の装飾方法  
代理人 大塚 明博  
代理人 江森 健二  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ