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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A63F
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部無効 2項進歩性  A63F
審判 全部無効 発明同一  A63F
管理番号 1241628
審判番号 無効2009-800194  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-09-09 
確定日 2011-07-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3053475号「遊技機」の特許無効審判事件についてされた平成22年10月6日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成22年(行ケ)第10346号,平成23年2月7日決定言渡)があったので,さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

平成 3年11月28日 本件出願(特願平3-314518号)
平成12年 4月 7日 設定登録(特許第3053475号)
平成12年12月18日 特許異議の申立て(異議2000-74485号 申立人:根本 淳子)
平成12年12月19日 特許異議の申立て(申立人:弓桁 忠)
平成13年 7月24日 訂正請求
平成13年12月12日 異議決定(特許維持)

平成21年 9月 9日 無効審判請求(書面には9月8日の日付)
平成21年12月22日 答弁書,訂正請求(被請求人)
平成22年 2月 5日 弁駁書(請求人)
平成22年 3月17日 第2回答弁書(被請求人)
平成22年 6月25日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成22年 6月25日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成22年 7月 9日 口頭審理
平成22年 8月 3日 上申書(被請求人)
平成22年 8月 9日 上申書(請求人)
平成22年10月 6日 審決(特許を無効とする)

平成22年11月11日 審決取消訴訟の提起(被請求人による)(平成2 2年行(行ケ)10346号)
平成23年 1月20日 訂正の審判請求(訂正2011-390008号)
平成23年 2月 7日 特許法181条2項の規定に基づく決定(特許庁 が無効2009-800194号事件について平 成22年10月6日にした審決を取り消す。) 平成23年 2月21日(2月23日発送)訂正請求のための期間指定通知平成23年 3月 7日 訂正請求
平成23年 4月13日 弁駁書(請求人)
なお,被請求人は平成23年2月21日付け訂正請求のための期間指定通知に対して訂正請求をしなかったので,被請求人が行った平成23年1月20日付けの訂正審判請求(訂正2011-390008号)は,特許法134条の3第5項の規定により,当該期間の末日である平成23年3月7日に,その訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書を援用した訂正請求とみなされた。

第2 本件審判事件にかかる両当事者の主張

請求人と被請求人の主張は以下のとおりである。なお,以下において,平成13年7月24日付けで訂正請求され,同年12月12日付けの異議決定で維持された特許の請求項1?3を「訂正前の請求項1?3」といい,平成23年3月7日付けの訂正請求及びそれに基づく請求項1に係る発明を「本件訂正」及び「本件訂正発明」という。

1.請求人の主張
請求人は,平成21年9月9日差出の審判請求書において,「特許第3053475号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求め」(請求の趣旨),その理由として以下の理由を提示した。
[無効理由1]
平成13年12月12日付けの異議決定で維持された特許は,本件出願当時施行の旧特許法第36条第4項および第5項第1号に規定された要件を満たしていないものであるから,同法第123条第1項第4号により無効とすべきものである。
[無効理由2]
訂正前の請求項1?3に係る発明は,本件特許に係る出願日の前に出願され本件特許に係る出願日の後に公開された先願明細書たる甲第3号証に記載された発明と実質的に同一であって,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから,同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
[無効理由3]
訂正前の請求項1?3に係る発明は,甲第10号証に記載された発明に,周知技術及び甲第11,12号証に記載された発明を組み合わせることで,当業者が容易に成し得たものに過ぎず,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。

甲第1号証:平成13年12月12日(異議決定日)付けの異議の決定
甲第2号証:平成5年7月20日付け社団法人発明協会発行の特許庁編「特 許実用新案審査基準」の「第3章 特許法第29条の2」の抜 粋コピー
甲第3号証:特開平4-102486号公報
甲第4号証:特開平2-277482号公報
甲第5号証:特開平3-9774号公報
甲第6号証:特開平3-55080号公報
甲第7号証:特開平3-251278号公報
甲第8号証:特開平3-254774号公報
甲第9号証:特開平3-258277号公報
甲第10号証:株式会社双葉社発行の雑誌「パチンコ攻略マガジン1990 年12月号」の抜粋コピー
甲第11号証:実願昭62-86912号(実開昭63-195891号) のマイクロフィルム
甲第12号証:特開平3-77569号公報

請求人は,平成23年4月13日付け弁駁書において,被請求人による度重なる訂正の請求は訂正の回数に制限がない現行制度の欠点を突いて無効な特許を徒に延命することを狙った訂正請求の繰り返しであって,およそ法的保護に値する行為でなく,また,訂正が認められるとしても,本件訂正発明は,甲第10号証に記載された発明に甲第11,12号証に記載された発明及び周知技術を組み合わせることで,当業者が容易に成し得たものに過ぎず,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである旨,主張している。

2.被請求人の主張
被請求人は,平成21年12月22日付け答弁書において,「本件審判請求は成り立たない,審判費用は審判請求人の負担とする,との審決を求め」,平成23年1月20日付けの訂正審判請求書(13?19頁)において,「特許法第36条第4項第5項第1号,および特許法第29条の2に規定する要件は,本訂正審判による訂正発明が満たしていることは明白」であり,また,本件訂正発明は甲10発明および公知刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない旨,主張している。

第3 被請求人による訂正請求について

1.訂正請求の内容
本件訂正は,本件特許第3053475号の平成13年7月24日付けの訂正請求によって訂正された明細書(以下,「特許明細書」という。)を,本件訂正請求書に添付した明細書によって訂正しようとするものであって,以下の事項を訂正内容とするものである(当審において,訂正請求書における訂正事項1を,訂正事項1-1?1-4に分割した)。

・訂正事項1-1
【請求項1】の「複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を複数有し,該複数の可変表示部により組合せ有効列が定められ,前記複数の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが成立した場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機であって」を「特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報とを含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を3個有し,該3個の可変表示部により組合せ有効列が定められ,前記3個の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃った場合または同じ前記所定識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機であって」に訂正する。

・訂正事項1-2
【請求項1】の「可変表示部を可変表示させた後」を,「可変表示部にて前記複数種類の識別情報を可変表示させた後」に訂正する。

・訂正事項1-3
【請求項1】の「前記組合せ有効列上に前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせることが可能であるとともに」を,「最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で前記複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせるとともに」に訂正する。

・訂正事項1-4
【請求項1】の「前記特定可変表示動作以外に,前記複数の可変表示部の表示結果を時期を異ならせて導出表示させて一部の可変表示部の表示結果がまだ導出表示されていない段階で既に導出表示された可変表示部の表示結果が前記特定の識別情報の組合せとなる条件を満たしている場合に前記一部の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせることが可能であることを特徴とする」を,「最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ,次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させて,前記組合せ有効列上に同じ前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせることを特徴とする」に訂正する。

・訂正事項2
【特許請求の範囲】の【請求項2】と【請求項3】を削除する。

・訂正事項3
段落【0001】の「本発明は,パチンコ遊技機やコイン遊技機あるいはスロットマシンなどで代表される遊技機に関する。詳しくは,複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を複数有し,該複数の可変表示部により組合せ有効列が定められ,前記複数の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが成立した場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機に関する。」を「本発明は,パチンコ遊技機やコイン遊技機あるいはスロットマシンなどで代表される遊技機に関する。詳しくは,特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報とを含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を3個有し,該3個の可変表示部により組合せ有効列が定められ,前記3個の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃った場合または同じ前記所定識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機に関する。」に訂正する。

・訂正事項4
段落【0005】の「請求項1に記載の本発明は,・・・請求項3に記載の本発明は,請求項1または請求項2に記載の発明の構成に加えて,前記可変表示制御手段は,前記複数の可変表示部のうちの或る可変表示部の表示結果を導出表示させた後,残りの可変表示部により前記特定可変表示動作を行なわせることを特徴とする。」を,「請求項1に記載の本発明は,特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報とを含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を3個有し,該3個の可変表示部により組合せ有効列が定められ,前記3個の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃った場合または同じ前記所定識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機であって,
所定の可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示部にて前記複数種類の識別情報を可変表示させた後前記可変表示部の表示結果を導出表示させる制御が可能な可変表示制御手段を含み,
前記可変表示制御手段は,
最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で前記複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせるとともに,
最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ,次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させて,前記組合せ有効列上に同じ前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせることを特徴とする。」に訂正する。

・訂正事項5
段落【0006】の「請求項1に記載の本発明によれば,・・・請求項3に記載の本発明によれば,請求項1または請求項2に記載の発明の作用に加えて,可変表示制御手段の働きにより,前記複数の可変表示部のうちの或る可変表示部の表示結果が導出表示された後,残りの可変表示部により前記特定可変表示動作が行なわれる。」を,「請求項1に記載の本発明によれば,可変表示制御手段の働きにより,所定の可変開始条件の成立に基づいて可変表示部にて複数種類の識別情報が可変表示された後その可変表示部の表示結果を導出表示させる制御が可能となる。そして,可変表示制御手段は,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で前記複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせるとともに,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ,次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させて,前記組合せ有効列上に同じ前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせる。」に訂正する。

・訂正事項6
段落【0081】の「請求項1に記載の本発明によれば,・・・請求項3に記載の本発明によれば・・・一層盛り上げることが可能となる。」を,「請求項1に記載の本発明によれば,最初に表示結果が導出表示される1個の可変表示部における組合せ有効列上に表示結果として特別識別情報が導出表示されたときに,未だ表示結果が導出表示されていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示された特別識別情報との組合せにより組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,前記導出表示された特別識別情報と同じ特別識別情報が2つ揃った状態で複数種類の識別情報が可変表示する特定可変表示動作が行なわれるため,特定の識別情報が表示結果として導出表示されることに対する遊技者の期待を,可変表示の比較的早期の段階から高めることができ,可変表示中の遊技の興趣をより一層盛り上げることが可能となるとともに,最初に表示結果が導出表示される1個の可変表示部における組合せ有効列上に表示結果として所定識別情報が導出表示され,次に表示結果が導出表示される1個の可変表示部における組合せ有効列上に表示結果として所定識別情報が導出表示されて,組合せ有効列上に同じ所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果が未だ導出表示されていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせるために,可変表示動作のバリエーションが豊富となり変化に富んだ面白味のある可変表示を提供することができる。」に訂正する。

2.訂正の適否に対する判断
上記各訂正事項についてその適否を以下に検討する。なお,本件訂正について,請求人は,無効な特許を徒に延命することを狙った訂正請求の繰り返しであって,およそ法的保護に値する行為でない旨主張しているが,具体的な訂正要件違反について主張していない。
(1)訂正事項1-1について
当該訂正は,訂正前の「複数種類の識別情報」を「特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報とを含む」ものであると限定し,訂正前の「可変表示部」の個数を「複数」から「3個」に限定するものであり,遊技者にとって有利な状態に制御可能となる条件である「特定の識別情報の組合せが成立した場合」を「同じ前記特別識別情報が3つ揃った場合または同じ前記所定識別情報が3つ揃った場合」に限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0008】には「・・・前記可変表示装置3の各図柄表示部3a,3b,3cが可変開始される。そして,所定時間の経過に基づいてまず中図柄表示部3bが停止し,その停止した中図柄が特定の識別情報以外のときにはその後左図柄表示部3aが停止し,最後に右図柄表示部3cが停止し,停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報になれば,可変入賞球装置4の開閉板を開成させて遊技者にとって有利な第1の状態とし所定の遊技価値が付与可能な状態にする。」と記載され,同【0009】には「一方,中図柄表示部3bが停止した時点で,停止した中図柄が特定の識別情報(たとえば7)のとき(これを特別リーチ状態と呼ぶ)には,以下のような可変表示が行なわれる。左右の図柄表示部3a,3cは可変表示を続けるが,この場合各図柄表示部3a,3c上に描かれた「7」の図柄を水平または右下がりまたは右上がりに揃えた状態でゆっくり回転させた後,左右同時またはまず左,続いて右の順序で停止させる。」と記載され,同【0021】には「さらに,これら大当り図柄のうち,38a?38cの図柄が特定の大当り図柄であり,39a?43cの図柄は通常の大当り図柄である。すなわち,本実施例の場合には図柄表示部3bの中央に図柄38bの「7」が停止した場合に,前述のように左図柄表示部と右図柄表示部に「7」が,有効ライン上に揃うような状態で可変表示され,それ以外の場合にはこのような可変表示は行なわれない。」と記載されている。
上記記載によれば,特定の大当り図柄である38a?38cの図柄が「特別識別情報」に相当し,通常の大当り図柄である39a?43cの図柄が「特別識別情報とは異なる所定識別情報」に相当することは明らかであるから,「特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報とを含む複数種類の識別情報」及び「同じ前記特別識別情報が3つ揃った場合または同じ前記所定識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる」は特許明細書に記載されているということができる。また,可変表示装置3は左図柄表示部3a,中図柄表示部3b,右図柄表示部3cからなるものであって,各図柄表示部3a?3cは可変表示部に相当するから,可変表示部が3個あることは特許明細書に記載されているということができる。
そうすると,訂正事項1-1は,特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(2)訂正事項1-2について
当該訂正は,「可変表示」させる対象を,「可変表示部」から「可変表示部にて前記複数種類の識別情報」に限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0008】?【0011】には,可変表示部において,複数種類の識別情報を可変表示させることが記載されているから,訂正事項1-2は,特許明細書に記載された事項内において,特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項1-3について
訂正事項1-3の検討にあたって,初めに,訂正前及び訂正後の特許請求の範囲に記載されている「組合せ有効列」について検討する。
訂正前の請求項1の記載は以下のとおりである。
「複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を複数有し,該複数の可変表示部により組合せ有効列が定められ,前記複数の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが成立した場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機であって,
所定の可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示部を可変表示させた後前記可変表示部の表示結果を導出表示させる制御が可能な可変表示制御手段を含み,
前記可変表示制御手段は,前記組合せ有効列上に前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせることが可能であるとともに,前記特定可変表示動作以外に,前記複数の可変表示部の表示結果を時期を異ならせて導出表示させて一部の可変表示部の表示結果がまだ導出表示されていない段階で既に導出表示された可変表示部の表示結果が前記特定の識別情報の組合せとなる条件を満たしている場合に前記一部の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせることが可能であることを特徴とする,遊技機。」
ここに記載されている「組合せ有効列」のうち,請求項1の前段部の「複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を複数有し,該複数の可変表示部により組合せ有効列が定められ,前記複数の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが成立した場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機であって」における「組合せ有効列」については,「組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが成立した場合に遊技者にとって有利な状態」になることが記載されており,遊技者から見えない裏側の部分において,特定の識別情報の組合せが成立したとしても,遊技者にとって有利な状態となることはないという遊技機における常識を考慮すると,「組合せ有効列」は,可変表示装置の前面側で,遊技者から見える部分に形成されるものであることは明らかである。また,このことは,特許明細書の段落【0008】の「各図柄表示部3a?3cには,縦方向に3つの図柄が表示可能である。したがって可変表示装置3によって表示される図柄は,3×3のマトリックス状の配列となる。このマトリックスにより,水平方向の3本のラインと,2本の対角線との合計5本の表示ラインが形成される。本実施例においては,この5つのラインのいずれも組合せ有効列とされており,このライン上に特定の識別情報の組合せが形成されれば,前記第1の状態となるように遊技機が制御される。」の記載からも裏付けられる。
一方,請求項1の中段に記載されている「前記組合せ有効列上に前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせることが可能であるとともに」における「組合せ有効列」については,特許明細書の段落【0009】の「一方,中図柄表示部3bが停止した時点で,停止した中図柄が特定の識別情報(たとえば7)のとき(これを特別リーチ状態と呼ぶ)には,以下のような可変表示が行なわれる。左右の図柄表示部3a,3cは可変表示を続けるが,この場合各図柄表示部3a,3c上に描かれた「7」の図柄を水平または右下がりまたは右上がりに揃えた状態でゆっくり回転させた後,左右同時またはまず左,続いて右の順序で停止させる。したがって図柄表示部3a,3cの可変表示中には,中央の水平方向表示ライン,または右下がりの対角表示線または右上がりの対角表示線上に揃うことが可能な状態が形成される。したがって可変表示の比較的早い段階から特定の識別情報の組合せの成立に対する期待感が高まることとなり,遊技者の遊技の興趣を従来よりも一層盛り上げることが可能となる。」等を参照しても,「組合せ有効列」が,前段部と同様に可変表示装置の前面側に形成されるものを指しているのか,中央の水平方向表示ライン,または右下がりの対角表示線または右上がりの対角表示線に揃うことが可能な状態を形成するべく,遊技者からは見えない可変表示装置の裏面側においても,仮想的に揃っている列を指しているのかが明りょうではない。

これに対して,訂正後の特許請求の範囲の請求項1においては,請求項1の前段部に記載されている「組合せ有効列」については,訂正前と同様に,可変表示装置の前面側で,遊技者から見える部分に形成されるものであることは明らかである。
そして,訂正後の請求項1の中段部に記載されている「組合せ有効列」について検討する。請求項1の中段部については,本件訂正によって,「最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で前記複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせるとともに」と訂正された。ここで,請求項1の前段部では「前記3個の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃った場合または同じ前記所定識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる」と規定されていることから,「表示結果」は,可変表示装置の前面側に停止した「表示結果」であることが明らかであり,かかる表示結果を用いて,中段部において「最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で」と規定されており,可変表示装置の前面側に停止して導出表示された1個の可変表示部と,残りの可変表示部と合わせて,組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが表示されるように揃えられるということから,本件訂正によって,中段部における「組合せ有効列」についても,可変表示装置の前面側で,遊技者から見える部分に形成されているものであることが明りょうとなったものと認められる。
また,訂正事項1-3は,訂正前の「前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作」について限定するものであることは明らかである。

次に,訂正事項1-3による訂正後の事項が,本件特許明細書に記載されている事項か否かについて検討する。
特許明細書の段落【0009】には「中図柄表示部3bが停止した時点で,停止した中図柄が特定の識別情報(たとえば7)のとき(これを特別リーチ状態と呼ぶ)には,以下のような可変表示が行なわれる。左右の図柄表示部3a,3cは可変表示を続けるが,この場合各図柄表示部3a,3c上に描かれた「7」の図柄を水平または右下がりまたは右上がりに揃えた状態でゆっくり回転させた後,左右同時またはまず左,続いて右の順序で停止させる。したがって図柄表示部3a,3cの可変表示中には,中央の水平方向表示ライン,または右下がりの対角表示線または右上がりの対角表示線上に揃うことが可能な状態が形成される。」と記載されており,これは,すでに停止している図柄表示部3bの「7」の図柄と合わせて組合せ有効列上に特定の識別情報である「7」の組合せが表示されるように,図柄表示部3a及び3cが,同一の図柄である「7」で水平または右下がりまたは右上がりに揃えられた状態で回転することを示しており,「7」図柄は「特別識別情報」に相当するものであるから,「最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で前記複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作」は特許明細書に記載されている事項である。

以上のことから,訂正事項1-3は,特許明細書に記載された事項内において,特許請求の範囲の減縮,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(4)訂正事項1-4
訂正事項1-4は,「所定可変表示動作」が行なわれる条件として,訂正前の「前記複数の可変表示部の表示結果を時期を異ならせて導出表示させて一部の可変表示部の表示結果がまだ導出表示されていない段階で既に導出表示された可変表示部の表示結果が前記特定の識別情報の組合せとなる条件を満たしている場合に」を「最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ,次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させて,前記組合せ有効列上に同じ前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに」と限定するものであり,訂正前の「前記一部の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせることが可能である」を「表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせる」と限定するものである。
また,「所定可変表示動作」の実行条件を「最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ」と具体的に限定することは,訂正前の「前記特定可変表示動作以外に」をより具体的に限定したことになり,訂正前の「前記特定可変表示動作以外に」の削除は「所定可変表示動作」の実行条件の限定に伴うものである。
そして,特許明細書の段落【0008】には「・・・前記可変表示装置3の各図柄表示部3a,3b,3cが可変開始される。そして,所定時間の経過に基づいてまず中図柄表示部3bが停止し,その停止した中図柄が特定の識別情報以外のときにはその後左図柄表示部3aが停止し,最後に右図柄表示部3cが停止し,停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報になれば,可変入賞球装置4の開閉板を開成させて遊技者にとって有利な第1の状態とし所定の遊技価値が付与可能な状態にする。」と記載され,【0021】には「さらに,これら大当り図柄のうち,38a?38cの図柄が特定の大当り図柄であり,39a?43cの図柄は通常の大当り図柄である。すなわち,本実施例の場合には図柄表示部3bの中央に図柄38bの「7」が停止した場合に,前述のように左図柄表示部と右図柄表示部に「7」が,有効ライン上に揃うような状態で可変表示され,それ以外の場合にはこのような可変表示は行なわれない」と記載されており,【0056】には「中停止図柄ナンバーが7以外の場合にはS58からS59に進み,特定の識別情報が発生する可能性のある有効列のランプを点滅させるための当り列ランプデータがセットされ,大当りフラグに通常リーチを示す値および大当りを示す値がセットされ,回転増カウンタに2がセットされる。この回転増カウンタのセットは右ドラムについてのみ行なわれる。これにより,通常リーチの場合には右ドラムのみが通常より多い回転数で回転された後停止することになる。」と記載されているから,訂正事項1-4は特許明細書に記載されている。
そうすると,訂正事項1-4は,特許明細書に記載された事項内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(5)訂正事項2について
訂正事項2は,請求項を削除するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(6)訂正事項3?6について
訂正事項3?6は,訂正事項1-1?1-4に付随して,訂正後の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために,発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3.小括
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許請求の範囲の減縮,明りょうでない記載の釈明を目的とし,願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
したがって,本件訂正は,平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前のものとされた同法による改正前の特許法第134条第2項ただし書に適合し,特許法第134条の2第5項において準用する改正前の同法第126条第2項の規定に適合するので,当該訂正を認める。

第4 本件訂正発明

上記のとおり訂正を認めるので,本件訂正発明は,本件訂正により訂正された明細書(以下,「訂正明細書」という。)及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報とを含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を3個有し,該3個の可変表示部により組合せ有効列が定められ,前記3個の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃った場合または同じ前記所定識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機であって,
所定の可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示部にて前記複数種類の識別情報を可変表示させた後前記可変表示部の表示結果を導出表示させる制御が可能な可変表示制御手段を含み,
前記可変表示制御手段は,
最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で前記複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせるとともに,
最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ,次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させて,前記組合せ有効列上に同じ前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせることを特徴とする,遊技機。」

第5 甲第3?12号証の記載事項

甲第3号証には,以下の事項が記載されている。
・「この発明は,始動入賞口への入賞に基づいて可変表示ゲームを行なわせそのゲームの結果如何によって大当りを発生させるパチンコ遊技機に関する。」(第1ページ左下欄第18行?右下欄第1行)
・「この通常遊技時には可変表示部21にはランダムに抽出された図柄が停止した状態で表示されていて,該可変表示部21のベースの色彩はこの実施例では桜色で各図柄は白色になっている。ところで,上記可変表示部21は縦に3分割,上下に2分割(上段,下段)されて,全体として6分割されている。そしてこのように分割された各々の領域に,即ち,左から順に左図柄,中図柄,右図柄が夫々2段ずつ表示される。」(第4ページ左上欄第14行?右上欄第2行)
・「この通常遊技時に,打球発射装置(後述)によって遊技領域2中に打ち込まれた遊技球が始動入賞口4,5,6のうちのいずれかに入賞すると,その入賞がそれらの内部流路に設置された始動入賞検出スイッチSW1,SW2によって検出され,その検出に基づいて可変表示装置20の入賞個数記憶ランプLED1?4がその入賞した個数分だけ点灯される。これは,補助遊技中や大当り遊技中においても同様である。
そして,通常遊技中であれば,所定時間経過後に,入賞個数記憶表示ランプLED1?4の点灯しているもののうちの1つが消灯されて,可変表示装置20による補助遊技(可変表示ゲーム)が開始される。
この補助ゲーム(可変表示ゲーム)は例えば次のようにして行われる。
即ち,先ず,可変表示部21の左図柄,中図柄,右図柄がそれぞれランダムに変動される(図柄が変動するに当たっては,上段に表示された図柄が順次下段に表示されるようになっている)。
そして,その変化の開始後所定時間経過するか,又はストップボタン(図外)が押された後に,それら左図柄,中図柄および右図柄がダウンスクロール状態に変換され,さらに所定時間経過した時点でそれぞれ停止される。
が,その通常遊技(可変表示ゲーム)が繰り返して行われているうちに,左図柄,中図柄,および右図柄が共にダウンスクロールに変換されて変動してその通常の変動時間が終了したときに左図柄,中図柄および右図柄の上段又は下段の図柄のうちのいずれか一方が一致して大当りの発生の可能性が生じたとき,即ち,リーチ状態となったときには,その補助遊技のダウンスクロールの継続期間が通常時に比べて延長される。その延長時に左図柄,中図柄および右図柄の3つの図柄が一緒にゆっくりしたダウンスクロールで変動される。
そして,その延長時間が経過した時点で補助遊技(可変表示ゲーム)が終了して左図柄,中図柄および右図柄の変動が同時に停止される。その停止時の上段又は下段の図柄が3つとも一致した状態とならなかったときには”外れ”となって,上記補助遊技(可変表示ゲーム)が始動入賞口4,5,6への入賞又はその入賞記憶に基づいて繰返し行われる。が,その停止時の上段又は下段の図柄が3つとも一致したときには”大当り”となって大当りの遊技(特別遊技)が行われる。
ここに,”大当り”の遊技(特別遊技)とは,遊技者に多くの賞品球獲得のチャンスを与える遊技状態で,この実施例の場合,変動入賞装置50の可動部材51,51の所定時間(例えば,22秒間)の開放を1サイクル(ただし,その所定時間が経過する前に変動入賞装置50の大入賞口52中に遊技球が所定個数(例えば,10個)入賞したときにはその時点までの開放を1サイクル)とし,各サイクル中に変動入賞装置50の大入賞口52中の継続入賞口53中に遊技球が流入してその中の継続入賞検出スイッチ56(SW2)に検出されることを継続条件(サイクルの更新条件)として,最高10サイクルまで継続して行われる。」(第4ページ右上欄第14行?第5ページ左上欄第12行)
・「この実施例では,役物としての入賞個数ランプLED1?4,各種表示ランプLED5?22,L1?L6,323,324,可変表示装置20および変動入賞装置50等の制御を制御手段としての第1および第2のコンピュータシステム600,660が行うようになっている。」(第19ページ左下欄第15?20行)
・「一方,I/O回路に接続された前記第2のコンピュータシステム660は,可変表示用マイクロコンピュータ661とコントローラドライバ663とを具えていて,そのコントローラドライバ663に液晶パネル420が接続されている。液晶表示用マイクロコンピュータ661のROM662中には液晶パネル420への可変表示データ,その表示パターンおよび大当りの表示態様等の固定データが記憶されている。
前記ROM662中に記憶された可変表示データの左図柄,中図柄,右図柄の例を第18図(A),(B),(C)にそれぞれ20組の表示として示す。また,大当りの表示態様の例を第19図に(1)?(40)までの40通りの組合せを表示として示す。」(第20ページ右上欄第12行?左下欄第6行)
・「一方,通常のダウンスクロールの終了時に,左図柄,中図柄および右図柄3つの図柄が揃って(上段,下段何れが揃っていても良い)大当り発生の可能性が生じたとき(リーチ状態になったとき)にはその通常のダウンスクロールを継続(延長)させつつディスプレイ用ダウンスクロールをゆっくりした速度で行なう。このリーチ状態のときには,特に,マイクロコンピュータ610からの指令に基づき,リーチ表示として,当りランプL3が点滅されるとともに,白色の冷陰極管323が点滅される。」(第21ページ右上欄第10?20行)
・「以上詳述したように本実施例に係るパチンコ遊技機によれば,可変表示制御基板500上に形成された可変表示制御手段が,遊技球が始動入賞口に入賞したときに,可変表示装置に可変表示ゲームを行なわせ,該可変表示ゲームにおいて所定の条件が成立したときに当該可変表示ゲームを通常の可変表示状態からリーチ状態に変換するとともに,そのリーチ状態において更なる条件が成立しているときに該リーチ状態に引き続いて「大当り」状態を発生させて,変動入賞装置をして遊技者に多大な利益を供給し得る状態に変換させるように構成される」(第38ページ右上欄第3?14行)
・「また,本実施例においては,可変表示装置20は,その表示面が横方向に3列(各々の列に左図柄,中図柄,右図柄が表示される)に分割され,更に上下2段(上段,下段)に分割されて計6つの領域で各々可変表示が行われるようになっているが,要は少なくとも2つ以上の領域で図柄が可変表示され,それらが所定の関係(例えば,リーチ状態)となっているか否かが認識できるものであれば,その表示面は幾つに分割されていてもよい。」(第38ページ左下欄第15行?右下欄第4行)
・「この発明に係るパチンコ遊技機によれば,可変表示ゲーム中にリーチ状態が生ずると,ランプ群に,そのリーチ状態表示が他の状態表示と識別し得る状態でなされることとなり,そのリーチ状態表示によって遊技者はリーチ状態を容易に視認することができ,パチンコ遊技の興趣がより一層高められることとなる。」(第38ページ右下欄第17行?第39ページ左上欄第3行)

甲第4号証には,以下の事項が記載されている。
・「この発明は,複数種類の識別情報を可変表示可能な識別情報表示部が複数配設された可変表示装置と,可変表示開始信号発生手段の出力に基づいて前記識別情報表示部の可変表示を開始し,停止指令信号発生手段の出力に基づいて識別情報表示部の可変表示を順次停止させる表示駆動制御手段と,前記複数の識別情報表示部が停止したときの表示状態を判定する表示状態判定手段と,該表示状態判定手段から特定表示状態である旨の判定出力があることに基づいて遊技者に所定の価値を付与する所定価値付与手段と,を備えた弾球遊技機に関するものである。」(第1ページ右下欄第17行?第2ページ左上欄第8行)
・「また,このライン表示器15a?15fは,大当りが成立したときだけでなく,大当りが出現する可能性があるときにも点滅してその旨を報知するようになっている。例えば,最後に停止する中央の識別情報表示部14bが可変表示中で左右の識別情報表示部14a,14cが停止しているときに,左右の識別情報表示部14a,14cの上記した5つのライン上のいずれかに大当りの識別情報が表示されているときには,当該ラインを表示するライン表示器が点滅して大当りの可能性があることを遊技者に報知する。」(第4ページ右上欄第1?12行)
・「データD1,D3が大当り条件を満たしていると判別された場合には,大当り可能性がある旨をスピーカー7から報知するとともに,ライン表示器15a?15fでその旨を報知する(ステップS32)。その後,SP2に対応する減速パターンデータが終了したか否かが判別された後(ステップS33),タイマTM2がセットされる(ステップS35)。このタイマTM2は,減速パターンデータが終了した後ドラムが3回転する時間に相当する時間が設定される。しかして,TM2が終了したと判別された場合(ステップS35)には,SP2への通電をOFFとし(ステップS36),中ドラムが停止したことを報知する(ステップS37)。」(第8ぺージ右下欄第13行?第9ページ左上欄第7行)
・「上記実施例では,大当りになる可能性がある場合に,最後の停止する識別情報表示部の可変表示の速さを遅くするようにしたが,その速度を変化させなくてもいいし,あるいは速く変化するようにしてもよい。」(第14ページ左上欄第2?6行)

甲第5号証には,以下の事項が記載されている。
・「この発明は,複数の識別情報を可変表示し,その表示結果を表示可能な識別情報表示部を複数備えた可変表示装置と,前記複数の識別情報表示部で表示された識別情報の組合せを判定する組合せ判定手段と,該組合せ判定手段が予め定めた特定識別情報による組合せを判定したことに基づいて所定の遊技価値を付与する所定遊技価値付与手段と,を備えた弾球遊技機に関するものである。」(第1ページ右下欄第1?8行)
・「以上のように実施例に係るパチンコ遊技機1の可変表示装置14は,左側の識別情報表示部16aに特定識別情報が表示されると,以降の可変表示では特定識別情報が表示されていない中央及び右側の識別情報表示部16b,16cだけをN回可変表示し,そのN回の可変表示中に中央の識別情報表示部16bにも特定識別情報が表示されると,以降の可変表示では特定識別情報が表示されていない右側の識別情報表示部16cだけをM回可変表示させるように制御する。このため,段階的に特定の識別情報の組合せに近づくように可変表示制御されるので,可変表示装置14の可変表示動作に連続して興味が引き付けられ,これによって,遊技の単調化を防止することができる。」(第7ページ右下欄第18行?第8ページ左上欄第11行)

甲第6号証には,以下の事項が記載されている。
・「この発明は,パチンコ機に用いられる画像表示装置に関する。」(第1ページ左下欄第14?15行)
・「なお,デジタルA,Bは1ドット32m秒でスクロールし,デジタルCはリーチ目であればε時間(ランダムに選択される)1ドット64m秒で,リーチ目でなければ1ドット32m秒でスクロールする。」(第11ページ右上欄第12?16行)
・「この場合左デジタルAと中デジタルBの停止図柄がリーチ目(同一の大当たり図柄)であれば,壺部材41が昇降されるとともに,右デジタルCは左デジタルA,中デジタルBよりもさらに緩やかな速度でランダム時間(ε時間)スクロールし,定位置に停止する。」(第12ページ右下欄第1?6行)

甲第7号証には,以下の事項が記載されている。
・「この発明は,始動入賞部への入賞に基づいて可変表示ゲームを行なわせその停止結果としての表示態様如何によって遊技者に多くの賞球獲得のチャンスを与える当り状態に変換されるパチンコ遊技機に関する。」(第1ページ右下欄第13?17行)
・「また,前記開閉パネル101の左側部には始動入賞装置6,6,8への入賞によって駆動された可変表示装置4の3つの可変表示部A,B,Cのうちの2つの可変表示部A,Bの表示の変化が停止された時点でその停止表示が「7,7」となって”大当り”発生の可能性が生じたとき(リーチ状態となったとき)にのみ,最後に停止する可変表示部Cの表示の変化を停止させることのできる可変表示停止操作手段としての変動時間短縮ボタン(セレクトスイッチ)110が押圧操作可能に設置されている。」(第3ページ右下欄第17行?第4ページ左上欄第7行)
・「この実施例の場合,特に,上記可変表示ゲームにおいて2つの可変表示部A,Bの表示の変化が停止されたときにその停止表示が「7,7」となって”大当り”発生の可能性が生じたとき(リーチ状態となったとき)に限り,操作可能状態表示ランプ111が点灯して前記変動時間短縮ボタン(ストップスイッチ)110のオン操作が可能となり,そのオン操作によって最後に停止する可変表示部Cの表示の変化を停止させることができる。が,そのときの可変表示部Cの表示の変化は通常通り高速となっているので,停止させたい表示を狙うのは極めて困難である。」(第4ページ右下欄第11行?第5ページ左上欄第2行)
・「特に,この”大当り”が通常の可変表示ゲームの結果として発生したものであったときには,その”大当り”の遊技が終了した時からその後に再度”大当り”が発生するまでの期間に限り,その間に行われる可変表示ゲームのときに2つの可変表示部A,Bの表示の変化が停止した時点でその停止表示が「7,7」となった場合(リーチ状態となった場合)には,その後(最後)に停止すべき可変表示部Cの表示の変化が通常のときよりも遅い速度(変化を肉眼で表示の変化を追える程度の速度)となる」(第5ページ右上欄第11行?左下欄第1行)
・「この通常確率大当り発生状態の可変表示ゲーム中において,特に,2つの可変表示部A,Bの表示の変化が停止した時点で「7,7」となって”大当り”発生の可能性が生じたとき(リーチ状態となったとき)には,前記変動時間短縮ボタン(ストップスイッチ)110のオン操作が可能となり,そのオン操作によって最後に停止する可変表示部Cの表示の変化を停止させることができるようになる。が,このときの可変表示部Cの表示の変化は通常通り高速(肉眼で表示の変化を追えない程度の速度)となっているので,停止表示が「7」となるように狙うのは極めて困難である。
この通常確率大当り発生状態の可変表示ゲームの結果として”大当り”が発生したときには,有利な利益として,その”大当り”の遊技が終了したときから次の”大当り”が発生するまでの期間に限り,その間に行われる可変表示ゲームのときに2つの可変表示部A,Bの表示の変化が停止した時点でその停止表示が「7,7」(リーチ状態)となった場合にはその後(最後)に停止すべき可変表示部Cの表示の変化が通常のときよりも遅い速度(変化を肉眼で追える程度の速度となって,その可変表示部Cの表示の変化を前記変動時間短縮ボタン(ストップスイッチ)100の操作で狙いをつけて停止させられるような低い速度(表示の変化を肉眼で追える程度の速度)となる。」(第9ページ左下欄第16行?第10ページ左上欄第1行)

甲第8号証には,以下の事項が記載されている。
・「本発明は,複数の図柄をエンドレスに変動表示可能な図柄表示装置と,該図柄表示装置の変動表示結果が予め定めた特定図柄となったときに予め定められた態様で駆動される変動入賞装置と,を備えたパチンコ機に関するものである。」(第1ページ左下欄第17行?右下欄第1行)
・「左右の表示部13a,13cに特定図柄である「7」が揃って表示されたとき(通常,リーチ状態という)には,中央の表示部13bの変動表示制御が以下のように行われる。すなわち,右側の表示部13cが変動停止して特定図柄である「7」が表示された直後から,中央の表示部13bでのスクロール速度が緩やかになって,変動表示する図柄を遊技者が認識できるようになる。」(第5ページ右上欄第5?13行)

甲第9号証には,以下の事項が記載されている。
・「この発明は,特別遊技の発生に伴い遊技者に与える利益を段階的に拡大するようにしたパチンコ機に関する。」(第1ページ右下欄第1?3行)
・「LEDA,Bの図柄が同じであれば,LEDA,Bの停止後に大当たりの可能性を示すリーチ処理が行われる(4.10?4.15)。
大当たりとなったときは,可変表示装置4のLEDA,B,Cの停止図柄として大当たりの図柄(例えば7,7,7)が選択され,LEDA,Bの停止後にリーチ処理が行われ,リーチ処理の後に特別遊技Iに入る(4.16?4.18)。なお,リーチ処理にては大当たりへの期待感を高めるために,LEDA,Bの点滅や各装飾ランプの点滅およびリーチ音の出力を行う。」(第6ページ左上欄第17行?右上欄第8行)

甲第10号証には,以下の事項が記載されている。
・「デジタルはピンク色の表示部に白抜き文字。表示が2段になっているのが特徴で,どちらでそろっても大当りとなる。」(第16ページ上段第8?12行)
・「デジタルの絵柄が0?9の数字と,10個のマークの合わせて20種類もあるのだ。大当りはこれらの絵柄が3つそろった場合の20通り。大当り確率は220分の1だ。」(第16ページ上段第13?19行)
・「絵柄は左,中,右の各デジタルとも共通だが,最後に止まる右デジタルだけ配列が上下逆。」(第16ページ上段第20?23行)
・「左,中のデジタルがそろうとリーチがかかる。ここまではごく普通だ。ところがここからがちょっと違う。何と3つのデジタルが同時にスロー回転を始めるのだ。つまり,リーチの時点でデジタルが固定されてしまうわけだ。」(第16ページ上段第28行?下段第3行)
・「その結果,裏のどこかで3つの絵柄がそろうわけだ。実際にはリーチがかかると裏には2つの大当りが隠れている。8?15コマの回転で,その2つのうちどちらかが表に出ているときにデジタルがストップすれば,めでたく大当り。」(第16ページ下段第6?14行)
・「裏にそろった絵柄がなければ,表の絵柄が2つ並んでもリーチにはならない」(第16ページ下段第14?17行)
・「デジタルの両横からテーブルに玉が乗ると,そこからデジタル前部にころがり,ヘソチャッカー周辺に至る。テーブル以外から直接ヘソチャッカーに入賞することはまれだ。 始動チャッカーは,ヘソと左右肩にあるが,ホールではほとんどヘソチャッカー中心の釘調整となっていて,左右肩には入りにくい。」(第17ページ中段第8行?下段第2行)

甲第11号証には,以下の事項が記載されている。
・「この発明は,周面に複数個の絵柄を有する複数個のリールをハンドル操作で始動させた後,全リールが停止したときに,停止ライン上に並ぶ絵柄の組み合わせに応じてゲームの勝負を決定するスロットマシンに関する。」(第2頁第14?18行)
・「各リール1a,1b,1cは,周面に複数個の絵柄が配列されたものであり,」(第6頁第2?3行)
・「前記絵柄表示部3は,各リール1a,1b,1cの絵柄を1本の停止ラインLに沿い整列して表示する部分であり,」(第6頁第6?8行)
・「前記停止ラインLは,コインの投入により有効化され,この有効化された停止ラインL上に所定の絵柄が並んだとき,入賞となって所定配当のコインが放出され,さらにある特定絵柄の組み合わせが成立したとき,機械による入賞ゲームが複数回にわたり繰り返し実行され,極端に高配当のコインが分割して払い出されるようになっている。」(第6頁第13?20行)
・「この入賞ゲームへの移行は,例えば第3図(1)に示す如く,有効化された停止ライン上に特定絵柄8の配列(以下「特別当り」という)が生じたときに自動的に行われるもので,コインの投入なくして全リール1a,1b,1cが自動的に一斉回転し,それぞれ所定時間経過後に全リール1a,1b,1cが自動的に停止して,入賞の絵柄配列を成立させる。」(第7頁第1?8行)
・「第2図は,上記スロットマシンの回路構成例を示すもので,マイクロコンピュータ回路のCPU18に対し,センサ10,始動ハンドル6,数字表示器11,モータ制御部12,コイル計数部13,音声発生部14,ランプ制御部15などがインターフェイス16,17を介して電気接続されている。同図中,センサ10はコインの投入の有無などを検出し,数字表示器11は払出コインの枚数をディジタル表示する。モータ制御部12は各リール1a,1b,1cを駆動するパルスモータの作動を制御し,コイン計数部13は払出コインの枚数を計数する。音声発生部14はゲームの効果音などを発生し,ランプ制御部15は各種ランプの点灯動作を制御する。」(第7頁第14行?第8頁第8行)
・「またCPU18は,停止ラインL上に停止した各リールの絵柄の組み合わせを検出すると共に,その絵柄の組み合わせが前記の特別当りと一致するかなどを判断する手段として機能する。すなわちCPU18は各パルスモータの駆動パルスをモータ制御部12より取り込んで計数することにより,停止ラインL上に位置する各リールの絵柄が何であるかを検出した上で,これら絵柄の組み合わせの内容を判断するものである。
さらにCPU18は,停止ラインL上に特別当りを検出したとき,全リール1a,1b,1cを自動的に一斉始動させて入賞ゲームへ移行させると共に,この一斉始動させた全リール1a,1b,1cをそれぞれ自動的に停止させて,停止ラインL上に第1?第5当りにかかる入賞絵柄を出現させるリール制御手段として機能する。」(第8頁第14行?第9頁第10行)

甲第12号証には,以下の事項が記載されている。
・「大入賞等の入賞が得やすい状態になったときにはシンボル列の移動表示を変化させ,シンボル列の移動表示中にも遊技者に興趣を与えることができるようにしたスロットルマシンを提供することを目的とする。」(第2頁右上欄第1?5行)
・「本発明は上記目的を達成するにあたり,シンボル列の移動表示が停止する前に,そのゲームを入賞させるか否かを入賞決定手段で決め,その結果に応じてシンボル列の移動表示速度を切り換えるようにしたものである。」(第2頁右上欄第7?11行)
・「モータ制御回路45にシンボル信号「7」,「7」,「7」が出力されたときには,モータ制御回路45は定常回転速度に達したパルスモータ20?22を一定時間後に減速して,等速回転に移行させる」(第3頁右下欄第1?5行)
・「ところで,T4時にモータ制御回路45は図示のようにパルスモータ21,22の減速を行い,T5時にN2rpm(N1>N2)の等速回転に移行させる。」(第4頁右上欄第20行?左下欄第3行)
・「なお,この実施例ではT4時に行われる減速操作を,T3時から一定時間経過した後に行ったが,最初に行われるストップボタンの操作に連動してもよい。」(第4頁右下欄4?7行)

第6 当審の判断

1.無効理由1について(特許法第36条第4項及び第5項第1号)
請求人は,審判請求書において,以下の主張を行っている。
・主張1
訂正前の請求項1の「前記可変表示制御手段は,前記組合せ有効列上に前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせることが可能である」ことは,発明の詳細な説明に記載がなく,訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は,旧特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない。
・主張2
訂正前の請求項1の「特定可変表示動作」の意味が不明確であるため,「組合せ有効列上に前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作」の意味が不明確であり,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載において,請求項1に記載された発明を当業者が容易に実施できる程度にその構成が記載されておらず,本件特許出願は,旧特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
・主張3
訂正前の請求項1の「前記可変表示制御手段は,前記組合せ有効列上に前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作」を行うことの効果について,当業者が理解可能であり,容易に実施できる程度に記載されていないため,「前記可変表示制御手段は,前記組合せ有効列上に前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作」の技術的効果が不明である。

上記主張1?3は,要するに,「組合せ有効列上に前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作」が,発明の詳細な説明に記載がなく,意味が不明確であって当業者が容易に実施できる程度にその構成が記載されておらず,更にその効果について理解不能であって容易に実施できる程度に記載されていないということである。特に,「組合せ有効列」が可変表示に連動して移動するものとも,一般のスロットマシンやパチスロ機の表示窓のようなものに固定的に定められているものとも解することができ,前者の場合は本件明細書には一切記載されていないとの主張である(請求人提出口頭審理陳述要領書7?12頁)。
そして,この点は,「第3 被請求人による訂正請求について」「2.訂正の適否に対する判断」「(3)訂正事項1-3について」において検討したように,訂正前の請求項1の中段に記載されている「前記組合せ有効列上に前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせることが可能であるとともに」における「組合せ有効列」は,訂正前請求項1の前段部と同様に可変表示装置の前面側に形成されるものを指しているのか,中央の水平方向表示ライン,または右下がりの対角表示線または右上がりの対角表示線に揃うことが可能な状態を形成するべく,遊技者からは見えない可変表示装置の裏面側においても,仮想的に揃っている列を指しているのかが明りょうではない。
しかしながら,本件訂正により「最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で前記複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせるとともに」と訂正されたため,中段部における「組合せ有効列」についても,可変表示装置の前面側で,遊技者から見える部分に形成されているものであることが明りょうとなったものと認められる。そして,この訂正後の構成は,特許明細書の発明の詳細の説明に記載されたものであることは既述のとおりであり,当業者が容易に実施できる程度に,かつその効果について理解可能に発明の詳細な説明に記載されていることは明らかである。
したがって,請求人の主張する不備は本件訂正によって解消されており,本件特許は旧特許法第36条第4項及び第5項第1号の規定に適合するものであり,請求人の上記主張はいずれも採用できない。

2.無効理由2について(特許法第29条の2)
請求人は,本件訂正発明が,本件特許に係る出願日の前に出願され本件特許に係る出願日の後に公開された先願明細書たる甲第3号証に記載された発明と実質的に同一である,と主張しているので以下に検討する。

(1)甲第3号証に記載の発明
「第5 甲第3?12号証の記載事項」によれば,本願の出願の日前の他の特許出願(特願平2-221650号,平成2年8月23日出願)であって,本願の特許出願後に出願公開(甲第3号証:特開平4-102486号公報)されたものの願書に最初に添付した明細書又は図面には,次の発明(以下,「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ランダムに抽出された図柄を有し,該図柄が変動するに当たっては,上段に表示された図柄が順次下段に表示されるように表示可能な可変表示部を有し,停止時に上段又は下段の図柄が3つとも一致したときは”大当り”となって大当りの遊技(特別遊技)が行われるパチンコ遊技機であって,
遊技球が始動入賞口に入賞すると,可変表示部の左図柄,中図柄,右図柄がそれぞれ上段に表示された図柄が順次下段に表示されるように図柄を変動させた後,左図柄,中図柄,右図柄の変動が停止されるような制御が可能なコンピュータシステムを含み,
前記コンピュータシステムは,
前記可変表示部の図柄を変動させてから,通常の変動時間が終了したときに左図柄,中図柄および右図柄の上段又は下段の図柄のうちのいずれか一方が一致して大当りの発生の可能性が生じたとき,即ち,リーチ状態となったときには,それら左図柄,中図柄および右図柄がダウンスクロール状態に変換される補助遊技のダウンスクロールの継続時間が通常時に比べて延長され,左図柄,中図柄および右図柄の3つの図柄が一緒にゆっくりしたダウンスクロールで変動される動作を行わせるパチンコ遊技機。」

(2)対比
本件訂正発明と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「図柄」,「パチンコ遊技機」,「(遊技球の)始動入賞口(への)入賞」,「コンピュータシステム」は,それぞれ本件訂正発明の「識別情報」,「遊技機」,「所定の可変開始条件の成立」,「可変表示制御手段」に相当する。
また,甲3発明の「ランダムに抽出された図柄」の記載及び甲3号証の図面の第19図等を参酌すると,甲3発明においても「複数種類の識別情報」を有していることは明らかであり,その表示にあたっては,「上段に表示された図柄が順次下段に表示されるように」表示されているのであるから,「可変表示可能」であるといえる。
さらに,甲3発明では,全体でひとつのデジタル表示の可変表示部となっているが,左図柄,中図柄,右図柄は,それぞれ個別に変動するものであるから,それぞれを別の可変表示部として,全体として可変表示部を3個有するものともいえる。
次に,甲3発明は「停止時に上段又は下段の図柄が3つとも一致したときは”大当り”となって大当りの遊技(特別遊技)が行われる」ものであるから,甲3発明の「上段又は下段」が,本件訂正発明の「組合せ有効列」に相当し,甲3発明の「上段又は下段の図柄が3つとも一致した」,「大当たりの遊技(特別遊技)」は,本件訂正発明の「組合せ有効列上に同じ・・識別情報が3つ揃った場合に」,「遊技者にとって有利な状態」に,それぞれ相当する。
また,甲3発明の「左図柄,中図柄,右図柄の変動が停止される」は,本件訂正発明の「可変表示部の表示結果を導出表示させる」に相当する。
さらに,甲3発明の「可変表示部の図柄を変動させてから,通常の変動時間が終了したときに左図柄,中図柄および右図柄の上段又は下段の図柄のうちのいずれか一方が一致して大当りの発生の可能性が生じたとき,即ち,リーチ状態となったとき」には,いったん停止させるといった記載がなく,「通常の変動時間が終了したとき」とのみ記載されているのであるから,通常の変動時間が経過した後に,そのまま左図柄,中図柄,右図柄が継続して変動しているものと考えるのが自然である。その場合,左図柄,中図柄,右図柄がいずれも停止することなく変動を継続しているのであるから,左図柄,中図柄,右図柄はいずれも,本件訂正発明の「未だ表示結果を導出表示させていない可変表示部」に相当し,甲3発明の「3つの図柄が一緒にゆっくりしたダウンスクロールで変動される動作」は,本件訂正発明の「同じ識別情報を揃えた状態で複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作」に相当する。そうすると,揃えた状態で同じ識別情報を可変表示させる可変表示部が3つ(全て)であるか,2つであるかはさておき,甲3発明と本件訂正発明は「未だ表示結果を導出表示させていない可変表示部について,可変表示の継続中に組合せ有効列上に同じ識別情報が3つ揃えて表示されるように,同じ識別情報を揃えた状態で複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせる」点で共通している。
よって,本件訂正発明と甲3発明とは,
「複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を3個有し,該3個の可変表示部により組合せ有効列が定められ,前記3個の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に同じ識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機であって,
所定の可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示部にて前記複数種類の識別情報を可変表示させた後前記可変表示部の表示結果を導出表示させる制御が可能な可変表示制御手段を含み,
前記可変表示制御手段は,
未だ表示結果を導出表示させていない可変表示部について,可変表示の継続中に組合せ有効列上に同じ識別情報が3つ揃えて表示されるように,同じ識別情報を揃えた状態で複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせる,遊技機。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

・相違点1
本件訂正発明は,複数種類の識別情報が特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報を含むものであり,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,特定可変表示動作を行なわせるのに対し,甲3発明はそのような構成を有していない点。
・相違点2
特定可変表示動作において揃えた状態で可変表示される識別情報が,本件発明では,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として導出表示されたものと同じものであって,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,2つ揃えた状態で可変表示されるのに対し,甲3発明ではそのような構成を有していない点。
・相違点3
本件訂正発明では,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ,次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させて,前記組合せ有効列上に同じ前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせるのに対して,甲3発明では,かかる所定可変表示動作を行っていない点。

(3)相違点についての検討
上記各相違点について検討する。
(相違点1,3について)
相違点1,3は,関連しているのであわせて検討する。
(イ)相違点3に関する構成のうち,「最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として識別情報を導出表示させ,次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記識別情報を導出表示させて,前記組合せ有効列上に同じ前記識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせる」(以下,「構成A」という)について検討する。
請求人は審判請求書及び平成22年2月5日付けの弁駁書において,「パチンコ機等の遊技機では一般に「リーチ」と称される制御動作であり,この「リーチ」制御については,本件特許に係る出願日前に頒布された甲第4乃至9号証においてすでに開示された周知の技術である」と主張している。
甲第4?9号証の記載事項は,「第5 甲第3?12号証の記載事項」に摘記したとおりであり,甲第4?9号証には,3個の可変表示部の表示結果を1個ずつ時期を異ならせて表示させて,既に導出表示させた2個の可変表示部の表示結果が特定の識別情報の組合せとなったときに,残りの1個の可変表示部の表示結果の表示動作を所定の可変表示動作とする,パチンコ機等の遊技機において一般に「リーチ」と称される制御動作が記載されており,当該「リーチ」は本件出願前周知技術と認められる。
しかしながら,甲3発明にはすでに,「可変表示部の図柄を変動させてから,通常の変動時間が終了したときに左図柄,中図柄および右図柄の上段又は下段の図柄のうちのいずれか一方が一致して大当りの発生の可能性が生じたとき,即ち,リーチ状態となったときには,それら左図柄,中図柄および右図柄がダウンスクロール状態に変換される補助遊技のダウンスクロールの継続時間が通常時に比べて延長され,左図柄,中図柄および右図柄の3つの図柄が一緒にゆっくりしたダウンスクロールで変動される動作を行わせる」という,パチンコ機等の遊技機において,特定の識別情報の組合せが表示される前段階での動作についての構成を有しており,かかる構成のみで,遊技者の興趣を高めるという効果を奏することを達成している。
それに対し,本件訂正発明では,特定可変表示を実行する場合は,最初に表示結果を停止させた後残りの2つの識別情報を揃えて可変させてこの段階で遊技者に期待感を持たせるものであり,所定可変表示を実行する場合は,1つ目,2つ目と順に表示結果を停止させた後リーチ状態としこの段階で遊技者に期待感を持たせるものであるから,1つ目の可変表示停止時と2つ目の可変表示停止時の2段階において遊技者に期待感を持たせることが可能である。
したがって,甲3発明に上記周知技術を付加した場合,本件訂正発明が有している,「特定可変表示動作以外に所定可変表示動作を行なわせることが可能であるために,可変表示動作のバリエーションが豊富となり変化に富んだ面白味のある可変表示を提供することができる。」という,甲3発明にはない,格別の効果を奏するものであるから,甲3発明に上記周知技術を付加することは,新たな効果を奏するものではないとすることもできない。
以上により,構成Aが周知技術であったとしても,構成Aを適用した場合に新たな効果を奏する以上,構成Aを課題解決のための具体化手段における微差とすることはできず,この点において本件訂正発明と甲3発明を実質的に同一のものということはできない。
(ロ)次に,相違点1及び3に関する構成のうち,「複数種類の識別情報が特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報を含むものであり,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,特定可変表示動作を行なわせ,・・・最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ,・・・前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせる」(以下,構成B」という)について検討する。
上記構成Bは,要するに,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部において,複数種類の識別情報のうち特別識別情報を導出表示させたときに特別可変表示動作を行なわせ,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部において,特別識別情報と異なる所定識別情報を導出表示させ,次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部に前記所定識別情報を導出表示させて,前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに所定可変表示動作を行なわせるということである。このように,最初に特別識別情報が表示されたときに特別可変表示動作を行なわせ,最初に所定識別情報が表示されたときに所定可変表示動作を行なわせることは,周知・慣用技術であると認めることができず,課題解決のための具体化手段における微差であるとすることはできない。
(ハ)したがって,相違点1,3において,本件訂正発明と甲3発明は相違し,実質的同一であるとはいうことができない。

(相違点2について)
特定可変表示動作において揃えた状態で可変表示される識別情報が,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として導出表示されたもの同じものであって,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,2つ揃えた状態で可変表示されることについては,周知・慣用技術であると認めることができず,相違点2が課題解決のための具体化手段における微差であるとすることはできない。
したがって,相違点2において本件訂正発明と甲3発明は実質的同一であるとはいうことができない。

(4)小括
以上のとおりであるから,本件訂正発明と甲3発明は上記相違点1?3において相違し,上記各相違点は課題解決のための具体化手段における微差とはいえないから,本件訂正発明と甲3発明が同一であるとすることはできず,本件特許は,特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。 したがって,無効理由2は理由がない。

3.無効理由3について(特許法第29条第2項)
請求人は,本件訂正発明が,甲第10号証に記載された発明に,甲第11,12号証に記載された発明及び周知技術を組み合わせることで,当業者が容易に成し得たものに過ぎず,本件訂正発明は進歩性を欠くものであって,特許法第29条第2項により無効にされるべきものである,と主張しているので以下に検討する。

(1)甲第10号証に記載の発明
甲第10号証の写真図柄等から,甲第10号証に記載のものが,いわゆるパチンコ遊技機であることが明らかであることを踏まえると,甲第10号証には,次の発明(以下,「甲10発明」という。)が記載されているものと認められる。

「0?9の数字と,10個のマークの合わせて20種類のデジタルの絵柄を可変表示可能な3つのデジタルを有し,2段になっているデジタルのどちらかの段で絵柄が3つそろった場合に大当りとなるパチンコ遊技機であって,
始動チャッカーを有し,
左,中のデジタルがそろって,裏のどこかで3つの絵柄がそろった場合にリーチがかかり,3つのデジタルが同時にスロー回転を始める動作を行うパチンコ遊技機。」

ここで,本件訂正発明における「未だ表示結果を導出表示させていない段階」について検討する。本件訂正発明には,「表示結果」について,該記載箇所以外に「前記3個の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが成立した場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる」と記載されている。当該記載及びパチンコ遊技機に関する常識から,本件訂正発明における「表示結果」は,それにより組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが成立した場合に遊技者にとって有利な状態となるもの,すなわち,最終的に停止して表示された結果のみを指すものであって,いったん停止してその後再度変動を開始するような場合に,いったん停止した際に表示される結果については含まれないものといえる。
これを踏まえると,甲10発明における「左,右のデジタルがそろって」は,いったんその時点でデジタルは停止するものの,その後「3つのデジタルが同時にスロー回転」を始めることから,最初にそろった左,右のデジタルの絵柄は,最終的に大当りか否かを判定する絵柄には無関係の絵柄である。してみると,甲10発明における「左,右のデジタルがそろって」絵柄が表示されることは,「表示結果を導出表示させた」ものではない。

(2)対比
上記の事項を踏まえて,本件訂正発明と甲10発明とを対比する。
甲10発明の「0?9の数字と10個のマークの合わせて20種類のデジタルの絵柄」,「可変表示可能な3つのデジタル」,「2段になっているデジタルのどちらかの段」,「絵柄が3つそろった」,「大当り」,「パチンコ遊技機」は,それぞれ本件訂正発明の「複数種類の識別情報」,「可変表示部」,「3個の可変表示部により(定められた)組合せ有効列」,「特定の識別情報の組合せが成立した」,「遊技者にとって有利な状態」,「遊技機」に相当する。
また,甲10発明の「裏のどこかで3つの絵柄がそろった場合にリーチがかかり,3つのデジタルが同時にスロー回転を始める動作」は,裏のどこかで3つの絵柄がそろった場合に,3つのデジタルが同時にスロー回転を始めれば,裏でそろった3つの絵柄が表に表れてきたときには,2段となっているデジタルのいずれかの段を通過する際に,「組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが表示されるように」動作しているといえる。また,すでに検討したように,甲10発明の「左,右のデジタルがそろって」という状態は,「表示結果を導出表示させた」ものではないのであるから,甲10発明の「左,中のデジタルがそろって,裏のどこかで3つの絵柄がそろった場合にリーチがかかり,3つのデジタルが同時にスロー回転を始める動作を行う」ことは,本件訂正発明の「同じ識別情報を揃えた状態で複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作」に相当し,この時の3つのデジタルは本件訂正発明における「未だ表示結果を導出表示させていない可変表示部」に相当する。そうすると,揃えた状態で同じ識別情報を可変表示させる可変表示部が3つ(全て)であるか,2つであるかはさておき,甲3発明と本件訂正発明は「未だ表示結果を導出表示させていない可変表示部について,可変表示の継続中に組合せ有効列上に同じ識別情報が3つ揃えて表示されるように,同じ識別情報を揃えた状態で複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせる」点で共通している。

よって,本件訂正発明と甲10発明は,
「複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を3個有し,該3個の可変表示部により組合せ有効列が定められ,前記3個の可変表示部の表示結果により,前記組合せ有効列上に同じ識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機であって,
未だ表示結果を導出表示させていない可変表示部について,可変表示の継続中に組合せ有効列上に同じ識別情報が3つ揃えて表示されるように,同じ識別情報を揃えた状態で複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせる,遊技機。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

・相違点4
本件訂正発明では「所定の可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示部にて前記複数種類の識別情報を可変表示させた後前記可変表示部の表示結果を導出表示させる制御が可能な可変表示制御手段」を含んでいるのに対し,甲10発明では,かかる構成を含んでいるのか否か不明である点。
・相違点5
本件訂正発明は,複数種類の識別情報が特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報を含むものであり,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,特定可変表示動作を行なわせるのに対し,甲10発明はそのような構成を有していない点。
・相違点6
特定可変表示動作において揃えた状態で可変表示される識別情報が,本件発明では,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として導出表示されたものと同じものであって,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,2つ揃えた状態で可変表示されるのに対し,甲10発明ではそのような構成を有していない。
・相違点7
本件訂正発明では,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ,次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させて,前記組合せ有効列上に同じ前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせるのに対して,甲10発明では,かかる所定可変表示動作を行っていない点。

(3)判断
上記各相違点について検討する。

(相違点4について)
甲10発明が「始動チャッカー」を有することは記載されている。
ここで,いわゆるパチンコ遊技機における「始動チャッカー」は,そこに遊技球が入ることによって,可変表示部の図柄を変動させ,その後所定時間が経過した後に図柄を停止させて図柄表示を行うように動作するものであることは,パチンコ遊技機に関する常識である。してみると,甲10発明の「始動チャッカー」も,明確な記載はないものの,かかる始動チャッカーへ遊技球が入ることによって,可変表示部の変動が行われることは自明であるから,甲10発明の「始動チャッカー」への遊技球の入球は,本件訂正発明の「所定の可変開始条件の成立」に相当し,それによって,可変表示部にて複数種類の識別情報を可変表示させた後,可変表示部の表示結果を導出表示させるようにしているものと認められる。また,それらの動作を行わせるためには,なんらかの制御手段が必要であることはパチンコ遊技機においては当然のことであるから,甲10発明においても,本件訂正発明の「可変表示制御手段」に相当する構成は有しているものといえる。
よって,相違点4は実質的な相違点ではない。

(相違点5,7について)
相違点5,7は,関連しているのであわせて検討する。
(イ)まず,相違点7に関する構成のうち,「最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として識別情報を導出表示させ,次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記識別情報を導出表示させて,前記組合せ有効列上に同じ前記識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせる」(以下,「構成A」という)について検討する。
上記構成Aは,1つ目の可変表示部に図柄を停止させた後,2つ目の可変表示部に当該図柄と同じ図柄を停止させて,最後の(3つ目の)可変表示部において図柄を可変表示させるもので,いわゆるパチンコ機において「リーチ」と称される動作を表す構成であり,かかる構成は周知技術である。
特に例示すれば,上記甲第4号証には以下の記載がある。
「データD1,D3が大当り条件を満たしていると判別された場合には,大当り可能性がある旨をスピーカー7から報知するとともに,ライン表示器15a?15fでその旨を報知する(ステップS32)。その後,SP2に対応する減速パターンデータが終了したか否かが判別された後(ステップS33),タイマTM2がセットされる(ステップS35)。このタイマTM2は,減速パターンデータが終了した後ドラムが3回転する時間に相当する時間が設定される。しかして,TM2が終了したと判別された場合(ステップS35)には,SP2への通電をOFFとし(ステップS36),中ドラムが停止したことを報知する(ステップS37)。」(第8ぺージ右下欄第13行?第9ページ左上欄第7行)
また,本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-49785号公報には以下の記載がある。
「しかして,選択された表示情報の組合せがすべて特定識別情報である「7,7,7」であるか否か,すなわち大当りの表示態様であるか否かが判別され(ステップS3),大当りの表示態様であると判別された場合には,可変表示装置14を第二の可変表示制御によって可変表示させる(ステップS4),ここで,第二の可変表示制御とは,可変表示装置14が可変表示を開始してから所定時間T1を経過させた後,最初の識別情報表示部16aを停止させ,その後,微小時間T2を経過させた後に次の識別情報表示部16bを停止させ,さらにその後,未だ可変表示中の識別情報表示部16cの可変表示速度を遅くするとともに前記微小時間T2よりも長い所定時間T4経過後に最後の識別情報表示部16cを停止させるように表示駆動制御する方法である。このような可変表示制御を大当り時に適用することにより,先に表示されている2つの識別情報表示部16a,16bの表示が大当り態様となる可能性があるときに,最後に停止表示される1つの識別情報表示部16cの可変表示を時間をかけてゆっくりと表示することにより大当りとなる期待感を盛り上げることができる。」(第6頁左下欄第7行?右下欄第9行)
そして,甲10発明の特定可変表示動作は,2個の可変表示部をそろえて可変表示させる動作であるのに対して,上記構成Aは3個の可変表示部のうち,2つの可変表示部を停止させて,その後残りの1つの可変表示部の可変表示を行う動作であり,それぞれ別の動作であって,一方の動作を採用することによって,他方の動作の採用に影響を及ぼすものではないから,両者をともに採用することに阻害となる要因はない。
したがって,甲10発明において,特定可変表示動作に加えて,周知技術である上記構成Aを採用することは,当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。
(ロ)次に,相違点5及び7に関する構成のうち,「複数種類の識別情報が特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報を含むものであり,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに,特定可変表示動作を行なわせ,・・・最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ,・・・前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに,表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせる」(以下,構成B」という)について検討する。
上記構成Bは,要するに,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部において,複数種類の識別情報のうち特別識別情報を導出表示させたときに特別可変表示動作を行なわせ,最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部において,特別識別情報と異なる所定識別情報を導出表示させ,(次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部に前記所定識別情報を導出表示させて)前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに所定可変表示動作を行なわせるということである。このように,最初に特別識別情報が表示されたときに特別可変表示動作を行なわせ,最初に所定識別情報が表示されたときに所定可変表示動作を行なわせることは,請求人の提出した甲各号証には記載がなく,また,当業者が容易になし得たものとすべき理由もない。
そして,当該構成Bにより,最初に表示結果が導出表示される可変表示部に特別識別情報が表示されるか所定識別情報が表示されるか,遊技者の関心が集まり,可変表示中の遊技の興趣を高めるという効果を奏する。
(ハ)以上のとおり,相違点5,7については,周知技術を採用することにより,その一部については容易になし得たことであるが,全体としてこれを容易になし得たこととすることはできない。

(相違点6について)
相違点6の「(特定可変表示動作において揃えた状態で可変表示される識別情報が,)最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として導出表示されたものと同じものであって,未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について,可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように,2つ揃えた状態で可変表示される」点について,請求人は,平成23年4月13日付け弁駁書(8?9頁)において,以下のように主張している。
・3個以上の複数個の可変表示部を有するパチンコ機において,全ての可変表示部を同時に停止するのではなく,少なくとも1個を先ず停止させる制御を行うことが周知技術である。
・甲10発明のように,全デジタルが大当りの絵柄を揃えた状態で回転しているものにおいて,甲第12号証のように,最初のシンボルが停止すると残りの2つのシンボルは減速されてスロー回転を続けるという技術を組み合わせると,揃えた状態で回転するシンボルのうち最初のシンボルが1つ停止した後,残りの2つのシンボルが大当りの絵柄が揃ったままスロー回転を続けるように構成することは,想到容易である。
・甲10発明における可変表示動作のように識別情報が揃えられた状態で3個の可変表示部を可変表示させているときに,1個の可変表示部の可変表示を停止させるように制御することは単なる設計事項に過ぎない。
上記主張について検討すると,甲12号証には最初のシンボルが停止すると,残りの2つのシンボルは減速されてスロー回転を続けることが記載されており,また,1つ目の可変表示部を停止させ,その後に2つ目の可変表示部を停止させ,最後に3つ目の可変表示部を停止させることは遊技機分野において周知技術であることは認められる。
一方,甲10発明は,リーチがかかると,大当りになる3つの図柄が揃った状態を維持して,3つ可変表示部で可変表示が行われるものであり,「その2つのうちどちらかが表に出ているときにデジタルがストップすれば,めでたく大当り」となるものである。すなわち,遊技者は揃った状態の図柄が「表に出ているときにデジタルがストップ」することを期待するものであり,その「ストップ」は3つの可変表示部において同時に行われるものである。そうすると,図柄が揃った状態で全ての可変表示部を回転させるとともに全ての可変表示部を同時に停止させる甲10発明において,3つのデジタルのうち1つのデジタルだけを最初に停止させることを想起することは困難であり,甲10発明において甲第12号証の記載の技術,周知技術を採用するための動機付けがあると認められない。
また,当該相違点について、請求人の提出した甲各号証には記載がなく,これを容易に想到し得たとすることはできない。

(4)小括
本件訂正発明は,上記相違点5?7について容易になし得たものいうことができず,請求人の提出した甲10?12号証及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第7 むすび
以上のとおり,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件訂正発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,全額を請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報とを含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を3個有し、該3個の可変表示部により組合せ有効列が定められ、前記3個の可変表示部の表示結果により、前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃った場合または同じ前記所定識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機であって、
所定の可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示部にて前記複数種類の識別情報を可変表示させた後前記可変表示部の表示結果を導出表示させる制御が可能な可変表示制御手段を含み、
前記可変表示制御手段は、
最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに、未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について、可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように、前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で前記複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせるとともに、
最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ、次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させて、前記組合せ有効列上に同じ前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに、表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせることを特徴とする、遊技機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機あるいはスロットマシンなどで代表される遊技機に関する。詳しくは、特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報とを含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を3個有し、該3個の可変表示部により組合せ有効列が定められ、前記3個の可変表示部の表示結果により、前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃った場合または同じ前記所定識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の遊技機として従来から一般的に知られているものに、遊技機の盤面上に、直線状あるいはマトリックス状に複数の可変表示部が配設され、1または複数本の組合せ有効列が定められた可変表示装置が設けられ、その可変表示装置の停止時の表示結果により、組合せ有効列上に特定の識別情報の組合せが成立した場合に、遊技者に所定の遊技価値が付与可能な遊技状態になるように構成されたものがあった。そして、所定の可変開始条件の成立に基づいて可変表示装置を可変表示させて、所定の停止条件の成立に基づいてたとえば複数の可変表示部を順次停止時期を異ならせて停止制御し、可変表示部の段階的な停止制御により特定の識別情報の組合せの成立に段階的に近づいていくように表示制御し、遊技者の期待感を段階的に高めて最終的に大きな期待感にまで高めるように構成されたものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この種の従来の遊技機においては、複数の可変表示部が順次停止制御された時に、停止制御された可変表示部に表示された識別情報の組合せが前記特定の識別情報の組合せの成立条件を満たしていなければ遊技者の期待感を高めることはできず、特に、可変表示部の可変表示中における遊技者の興趣を有効に高めることができないという欠点があった。
【0004】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、複数の可変表示部を有するものにおいて、可変表示中における遊技の興趣を一層向上することができる遊技機を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、特別識別情報と該特別識別情報とは異なる所定識別情報とを含む複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示部を3個有し、該3個の可変表示部により組合せ有効列が定められ、前記3個の可変表示部の表示結果により、前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃った場合または同じ前記所定識別情報が3つ揃った場合に遊技者にとって有利な状態に制御可能となる遊技機であって、
所定の可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示部にて前記複数種類の識別情報を可変表示させた後前記可変表示部の表示結果を導出表示させる制御が可能な可変表示制御手段を含み、
前記可変表示制御手段は、
最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに、未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について、可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように、前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で前記複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせるとともに、
最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ、次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させて、前記組合せ有効列上に同じ前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに、表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせることを特徴とする。
【0006】
【作用】
請求項1に記載の本発明によれば、可変表示制御手段の働きにより、所定の可変開始条件の成立に基づいて可変表示部にて複数種類の識別情報が可変表示された後その可変表示部の表示結果を導出表示させる制御が可能となる。そして、可変表示制御手段は、最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記特別識別情報を導出表示させたときに、未だ表示結果を導出表示させていない2個の可変表示部について、可変表示の継続中に前記導出表示させた特別識別情報との組合せにより前記組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように、前記導出表示させた特別識別情報と同じ特別識別情報を2つ揃えた状態で前記複数種類の識別情報を可変表示させる特定可変表示動作を行なわせるとともに、最初に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させ、次に表示結果を導出表示させる1個の可変表示部における前記組合せ有効列上に表示結果として前記所定識別情報を導出表示させて、前記組合せ有効列上に同じ前記所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに、表示結果を未だ導出表示させていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせる。
【0007】
【発明の実施例】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0008】
図1は、弾球遊技機の一例のパチンコ遊技機の遊技盤面を示す正面図である。遊技者が図示しない打球操作ハンドルを操作すれば、打球待機樋(図示せず)に貯留されているパチンコ玉が1つずつ遊技盤1の前面に形成されている遊技領域2内に打込まれる。遊技領域2には、複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置3が設けられているとともに、始動入賞口10a,10b,10cが設けられている。これらそれぞれの始動入賞口10a,10b,10c内に入賞したパチンコ玉は、それぞれに、始動入賞玉検出器11a,11b,11cにより検出される。その始動入賞玉検出器の検出信号に基づいて、前記可変表示装置3の各図柄表示部3a,3b,3cが可変開始される。そして、所定時間の経過に基づいてまず中図柄表示部3bが停止し、その停止した中図柄が特定の識別情報以外のときにはその後左図柄表示部3aが停止し、最後に右図柄表示部3cが停止し、停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報になれば、可変入賞球装置4の開閉板を開成させて遊技者にとって有利な第1の状態とし所定の遊技価値が付与可能な状態にする。左、中図柄表示部3a,3bが停止した時点で特定の識別情報の組合せとなる条件を満たしていれば、通常リーチ状態と呼ぶ。各図柄表示部3a?3cには、縦方向に3つの図柄が表示可能である。したがって可変表示装置3によって表示される図柄は、3×3のマトリックス状の配列となる。このマトリックスにより、水平方向の3本のラインと、2本の対角線との合計5本の表示ラインが形成される。本実施例においては、この5つのラインのいずれも組合せ有効列とされており、このライン上に特定の識別情報の組合せが形成されれば、前記第1の状態となるように遊技機が制御される。
【0009】
一方、中図柄表示部3bが停止した時点で、停止した中図柄が特定の識別情報(たとえば7)のとき(これを特別リーチ状態と呼ぶ)には、以下のような可変表示が行なわれる。左右の図柄表示部3a、3cは可変表示を続けるが、この場合各図柄表示部3a、3c上に描かれた「7」の図柄を水平または右下がりまたは右上がりに揃えた状態でゆっくり回転させた後、左右同時またはまず左、続いて右の順序で停止させる。したがって図柄表示部3a、3cの可変表示中には、中央の水平方向表示ライン、または右下がりの対角表示線または右上がりの対角表示線上に揃うことが可能な状態が形成される。したがって可変表示の比較的早い段階から特定の識別情報の組合せの成立に対する期待感が高まることとなり、遊技者の遊技の興趣を従来よりも一層盛り上げることが可能となる。
【0010】
可変表示装置3の可変表示中においてパチンコ玉が始動入賞口10a?10cへ入賞すればその始動入賞が記憶され、可変表示装置3の可変表示が停止した後にその記憶に基づいて再度可変表示装置3が可変開始される。その始動入賞記憶の上限値はたとえば「4」に定められている。その始動入賞記憶回数が始動記憶LED26により表示される。
【0011】
なお、上述の説明においては、特別なリーチ状態から大当りになった場合と、通常のリーチ状態から大当りとなった場合で、特に付与する遊技価値には差は設けていない。しかし、この発明はこれには限定されず、たとえば特別なリーチ状態から大当りとなった場合には、通常の大当りとは異なった遊技価値を付与可能な状態となるように構成してもよい。また、上述の実施例では組合せ有効ラインは5ラインとされていた。しかし有効ラインはこれには限定されず、たとえば1ラインでも、他の複数のラインでもよい。また、上述の実施例では図柄表示部の停止順序が中、左、右あるいは中、左右同時の順序で行なわれたが、本発明はこれには限定されない。また、特別なリーチ状態となった場合には、常に残りの表示部を同時に停止させるように構成してもよく、また特別なリーチ状態を可能とするような図柄を複数個設けてもよい。たとえば、特定の図柄に限らず、中図柄表示部3bの中央に大当り図柄が停止したすべての場合に、上述のような可変表示の制御を行なってもよい。識別情報の表示方法は上述の実施例ではスクロール表示となっているが、たとえばセグメント表示器等による切換表示でもよい。また、複数のラインのうち特定のラインに停止した場合に限らず、最初の表示部が停止したとき、その停止した図柄が大当り条件を満たしている場合には常に実施例のような可変表示の制御を行なってもよい。
【0012】
一方、可変入賞球装置4は、通常時においては開口部7が開閉板5により閉塞されてパチンコ玉が開口部7に入賞できない遊技者にとって不利な第2の状態になっているが、開閉板5が開成することによりパチンコ玉が開口部7に入賞可能な遊技者にとって有利な第1の状態となる。可変入賞球装置4の第1の状態は、パチンコ玉の所定個数(たとえば10個)の入賞または所定時間(たとえば30秒間)の経過のいずれか早いほうの条件が成立することにより終了し、可変入賞球装置4が第2の状態に切換わる。一方、開口部7内の所定の箇所には特定入賞口8が形成されており、可変入賞球装置4に入賞したパチンコ玉がこの特定入賞口8に入賞すれば、その回における可変入賞球装置4の第1の状態が終了して第2の状態となった後再度開閉板5が開成されて第1の状態が繰返し継続制御される。この繰返し継続制御の上限回数はたとえば16回と定められている。この繰返し継続制御が行なわれた回数すなわち開閉板5が開成された開成回数が開成回数表示器25により表示される。さらに、この可変入賞球装置4に入賞した入賞玉の個数が入賞個数表示器9により表示される。なお図中6はソレノイドであり、開閉板5を開閉駆動させるためのものである。
【0013】
この可変入賞球装置4の第2の状態としては、打玉が全く入賞できない状態ではなく打玉が入賞困難な状態であってもよい。
【0014】
可変表示装置3には、ドラムランプ22a?22iが設けられており、点灯または点滅することにより各図柄表示部3a?3cによって表示される識別情報を明るく表示できるように構成されている。さらにこの可変表示装置3には、飾りLED23が設けられているとともに、入賞口12が形成されている。本実施例においては、回転ドラム式の可変表示装置を示すが、本発明はこれに限らず、たとえば、セグメント状あるいはマトリクス状の液晶表示装置や発光ダイオードやエレクトロルミネセンス等を用いたデジタル式の可変表示装置であってもよく、また、複数のランプ等が走行点灯することにより可変表示を行なうものであってもよい。さらに、図柄表示部3a?3cは3つに限らず2つまたは4つ以上のものであってもよい。さらに、この可変表示装置の可変表示を、遊技者の停止ボタン(図示せず)の押圧操作によって停止させたり、また、所定時間の経過または遊技者の停止ボタンの押圧操作のうちいずれか早いほうが行なわれたことに基づいて停止制御してもよい。
【0015】
遊技領域2には、さらに、風車ランプ18,入賞口13,14,サイドランプ17,肩ランプ19が設けられている。可変入賞球装置4の左右には、アタッカーランプ21,アタッカーLED24,袖ランプ20が設けられている。図中、16はレール飾りランプであり、15はアウト玉を回収するアウト口である。
【0016】
図2は、特別可変表示装置を構成するドラムユニットの構造を説明するための分解斜視図である。
【0017】
ドラムユニット27のドラム機構収納部28内には、回転ドラム31a,31b,31cが設けられている。この回転ドラム31a,31b,31cは、それぞれに、ステッピングモータ30a,30b,30cにより回転されるように構成されている。ステッピングモータ30a?30cは、それぞれモータ取付板29a,29b,29cに取付けられている。また、回転ドラム31a?31cには、ドラム位置を検出するための無反射部分33a?33cがそれぞれに形成されている。ドラム機構収納ボックス28の前記無反射部分33a?33cに対応する位置には、透孔34a?34cがそれぞれ形成され、その透孔34a?34cに、反射型ホトセンサからなるドラムセンサ36a?36cがそれぞれ挿入される。このドラムセンサ36a?36cは、中継端子基板37とともにドラム機構収納部28に固定されるセンサ基板35に設けられている。そして、ドラムセンサ36a?36cによりそれぞれの無反射部分33a?33cを検出することにより、それぞれの回転ドラム31a?31cの基準位置からの回転角度が制御可能となる。これら回転ドラム31a,31b,31cの外周には、複数種類の識別情報(図柄)が描かれたドラムシール32a,32b,32cが貼着されている。
【0018】
なお、可変表示装置の種類は実施例のような回転ドラムを用いたものには限定されない。たとえばマトリックス状に配置されたLEDを用いた可変表示装置や、液晶表示装置を用いたものであってもよい。また、最初の回転ドラムを停止させる前に、すべての回転ドラムが、大当り図柄が揃った状態となるように回転させてもよい。
【0019】
図3は、前記各回転ドラムの外周に貼着された各ドラムシール32a,32b,32cに描かれた図形を展開した状態を示す展開図である。
【0020】
左の回転ドラム31aのドラムシール32aには、6種類の左大当り図柄38a?43aを含む18個の図柄が描かれている。中央の回転ドラム31bのドラムシール32bには、6種類の中大当り図柄38b?43bを含む18個の図柄が描かれている。右の回転ドラム31cのドラムシール32cには、6種類の右特定の大当り図柄38c?43cを含む18個の図柄が描かれている。そして、この図3に示す1番左の列に示された数字は図柄No.であり、たとえば左の大当り図柄38aは図柄No.「8」であり、中の大当り図柄の38bで示された図柄は図柄No.が「7」であり、右の大当り図柄38cで示された図柄の図柄No.は「6」である。この複数種類の図柄のうち、38a?43cの図柄が大当り図柄であり、これら大当り図柄のうち同じ種類の図柄が前記5本の当り列上に揃えば、前述したように、可変入賞球装置4が第1の状態に駆動制御されて大当り状態が発生する。
【0021】
さらに、これら大当り図柄のうち、38a?38cの図柄が特定の大当り図柄であり、39a?43cの図柄は通常の大当り図柄である。すなわち、本実施例の場合には図柄表示部3bの中央に図柄38bの「7」が停止した場合に、前述のように左図柄表示部と右図柄表示部に「7」が、有効ライン上に揃うような状態で可変表示され、それ以外の場合にはこのような可変表示は行なわれない。
【0022】
図4は、本実施例のパチンコ遊技機において、中図柄表示部が停止した時点の、可変表示装置3の表示状態を3種類示す。図4(A)においては、中図柄表示部の中央に特定の大当り図柄38bが停止している。左図柄表示部および右図柄表示部は、この図の場合にはそれぞれ図柄「7」が右上がりに揃えられた状態でゆっくりと回転する。すなわち、図4(A)においては、右図柄表示部の図柄39cの2コマ上には特定の大当り図柄「7」(38c)があり、左図柄表示部と右図柄表示部とはそれぞれの図柄の関係がこのように「7」が右上がりに揃えられた状態に保たれて回転される。したがって左図柄表示部の図柄「7」が中図柄表示部に停止した図柄「7」の左下にきた場合には、右図柄表示部の最上部には同じ図柄「7」が表示されることになる。
【0023】
図4(B)は、「7」が水平に揃えられるような状態で左図柄表示部および右図柄表示部が可変表示されている状態を示す。この図においては、左図柄表示部の図柄38aと右図柄表示部の図柄38cとが水平に揃えられた状態で可変表示される。したがって左図柄表示部の図柄38aが中央ラインにきた時点で「7」が中央の水平方向ラインに揃って表示されることになる。
【0024】
図4(C)においては、「7」が右下がりに揃えられた状態が示されている。この図の場合にも、左図柄表示部と右図柄表示部とは、図柄が互いに図4(C)に示されるように「7」が右下がりに揃えられた状態で可変表示される。図4(A)?(C)のいずれの場合にも、左右の図柄表示部はいずれもゆっくりと可変表示される。したがって有効ライン上に特定の大当り図柄が揃えられることに対する遊技者の期待感はより一層高まることになる。
【0025】
なお、各図柄表示部の可変表示および停止制御は、後述するマイクロコンピュータなどからなる基本回路によって実行されるプログラムににより行なわれる。このプログラム上では、所定の可変開始条件の成立に伴って選ばれた図柄ナンバーに対応する図柄を中央ライン上に停止させるべく、停止制御が行なわれる。すなわち、選ばれた図柄ナンバーが左から右に順に「876」である場合には、中央ライン上には「777」という図柄が表示されることになり、選ばれた図柄ナンバーが「777」である場合には、左上から右下への対角ライン上に「777」が表示されることになり、選ばれた図柄ナンバーが「975」である場合には左下から右上への対角ライン上に「777」という図柄がそれぞれ表示されることになる。
【0026】
回転ドラム31a?31cの回転制御方法の概略を次に説明する。可変表示装置の可変開始時に目的とする停止図柄すなわち停止時の識別情報の組合せが確定しており、各ドラム31a?31cは、停止時の中央ラインの図柄がその停止図柄となるように停止制御される。このドラム回転停止制御は、基本時間におけるドラム制御テーブル(後述のマイクロコンピュータに予め記憶されている)に従った回転制御と、引続き行なわれる一定速度(たとえば10msec/ステップ、約27.78回転/分)のドラム停止制御に大別される。この可変表示装置は、中図柄用回転ドラム31b、左図柄用回転ドラム31a、右図柄用回転ドラム31cの順で停止制御されるが、特別リーチのときには中図柄用ドラム31bが停止制御された後、左図柄用ドラム31aと右図柄用ドラム31cが同時に、または左、右の順で停止制御される。中図柄用回転ドラム31bの予定停止図柄が「7」以外であって、左図柄用回転ドラム31aと中図柄用回転ドラム31bの予定停止図柄が大当り条件を満たしている場合には通常リーチ状態となり、右図柄用回転ドラム31cについては、基本時間を経過した時点で変動開始時の図柄ポジションに戻るように制御され、引続き10msec/ステップの一定速で所定数の図柄(たとえば36図柄つまり2回転分)を送り、さらに引続き10msec/ステップの一定速の停止制御に移行して右図柄用ドラム31cのドラムポジションが停止図柄に一致した時点で停止制御される。中図柄用ドラム31bの予定停止図柄が「7」となっている特別リーチ状態の場合には、上述のような右図柄用回転ドラム31cについての回転制御が、左図柄用回転ドラム31aについても行なわれる。
【0027】
上述したような右図柄用回転ドラム31cまたは右図柄用回転ドラム31cおよび左図柄用回転ドラム31aの変動開始から停止までの時間経過は基本時間+固定図柄数+現在図柄番号と停止図柄番号との差によって定められ、変動開始時の図柄ポジションと停止図柄ポジションとの関係により変化する。
【0028】
図柄数が18あるため、上述の時間経過は18段階に変化することになる。このリーチ状態または大当り時の右図柄用回転ドラム31cまたは右図柄用回転ドラム31cおよび左図柄用回転ドラム31aの変動方式により、遊技者が図柄停止タイミングから各ドラムの停止図柄を予測することが困難となる。
【0029】
ドラム制御テーブルは、その基本時間(ドラム制御テーブルによるドラム変動時間)を所定時間(たとえば5.100秒)とし、この基本時間が経過した時点で変動開始時の図柄ポジションより正確に0?17図柄が送られた位置関係に達するように18種類のテーブルとなっている。各々のテーブルは、その機能によりトータルの送りステップ数が決定されており、テーブル内の図柄送り数および時間調整部において、ドラム回転速度の時間的配分によりトータルの所要時間(基本時間)が前述の時間(5.100秒)になるように構成されている。すなわち、各ドラム31a、31b、31cは、1ステップ当り10msec間隔(27.778回転/分)、8msec間隔(34.722回転/分)、6msec間隔(46.296回転/分)、4msec間隔(69.444回転/分)の4種類の速度の組合せで変動する。変動開始時は、1ステップ当り8msec間隔より加速し、その後4msec間隔または6msec間隔で回転を行なう。なお、各図柄の停止は、1ステップ当り10msec間隔まで減速を行ない、目的とする停止図柄までの送り制御が行なわれる。そして、上述した18種類のテーブルは、上述した4種類の速度を組合せることにより、996ステップ?1200ステップまで12ステップおきに18通りのステップ数となっている。これは、送り図柄数に換算すると83図柄(4回転と11図柄)?100図柄(5回転と10図柄)となる。したがって、どのテーブルが選択されてもドラム制御テーブルによる変動時間は5.100秒で目的の位置に達することになる。たとえば、5回転(90図柄、正80ステップ)を5.100秒で送る場合には、先ず1ステップ当り8msec間隔で4ステップ送り、次に6msec間隔で6ステップ送り、次に4msec間隔で702ステップ送り、さらに6msec間隔で362ステップ送った後、8msec間隔で4ステップ、10msec間隔で2ステップ送ってドラム制御テーブルが終了する。通常リーチ時には、このドラム制御テーブルによる基本時間が経過した時点で、中図柄用回転ドラム31bは目的とする停止図柄より1図柄手前に、左図柄用回転ドラム31aは6図柄手前に、右図柄用回転ドラム31cは11図柄手前に達するようにテーブルを選択して変動を開始し、基本時間が経過した時点より引続き10msec/ステップの一定速の停止制御に移り、ドラムポジションが目的とする停止図柄ポジションに一致した時点でそれぞれのドラムを停止する。したがってこの場合、停止順序は、まず中図柄用回転ドラム31bが停止し、その後0.6秒経過した後に左図柄用回転ドラム31aが停止し、その後0.6秒経過した後に右図柄用回転ドラム31cが停止することになる。ただし、通常リーチ状態、特別リーチ状態、大当り停止予定時の左図柄用回転ドラム31aと右図柄用回転ドラム31cの変動に関してはこの限りでない。これらの詳細については後にフローチャートを参照して説明する。
【0030】
リーチ時以外の具体的な制御テーブルの選択方法は次のようである。まず、目的とする停止図柄番号から現在の図柄番号を減算し、さらに停止順を決定するために各ドラム31a、31b、31c固有の固定送り図柄数を減算することにより各図柄ごとの移動図柄数(0?17)を算出し、その数値に対応するドラム制御テーブルを選択する。以上の演算により、基本時間が経過した時点で各図柄用ドラム31a?31cはそれぞれ前述の位置に達することとなる。
【0031】
図5は、パチンコ遊技機に用いられる制御回路を示すブロック図である。
パチンコ遊技機の制御回路44は、各種機器を制御するためのプログラムに従って、遊技機制御を行なうマイクロコンピュータを含む基本回路45と、電源投入時に基本回路45をリセットする初期リセット回路46と、基本回路45から与えられるクロック信号を分周して定期的(たとえば2msec毎)にリセットパルスを基本回路45に与えるためのクロック用リセットパルス発生回路47と、各種スイッチやセンサに接続され、与えられるアドレス信号によって選択されるスイッチからの信号を基本回路45に与えるためのスイッチ・センサ入力回路49と、基本回路45等に接続され、基本回路45から与えられるアドレス信号をデコードして基本回路45等に与えるためのアドレスデコード回路48とを含む。さらに、パチンコ遊技機の制御回路44には、基本回路45によって制御されるセグメント・LED回路51と、基本回路45からの音信号を受取りスピーカ56を駆動して効果音等を発生させるための音回路50と、基本回路45によって制御されるドラムランプ回路52と、基本回路45によって制御されるランプ・ソレノイド・大当り情報回路53と、基本回路45によって制御されるモータドライブ回路54とを含む。
【0032】
セグメント・LED回路51には、開成回数表示器25,入賞個数表示器9,始動記憶LED26,V表示LED57,アタッカーLED24,飾りLED23が接続されており、それぞれに表示制御される。ドラムランプ回路52には、ドラムランプ22a?22iが接続されており、それぞれに点灯または点滅制御される。ランプ・ソレノイド・大当り情報回路53には、ソレノイド6,遊技効果ランプ59,レール飾りランプ16,風車ランプ18,肩ランプ19,サイドランプ17,アタッカーランプ21,袖ランプ20が接続されている。なお58は大当り情報出力線である。
【0033】
モータドライブ回路54には、各ドラムを回転駆動させるためのドラムモータ(ステッピングモータ)30a,30b,30cが接続されており、モータドライブ回路54の制御信号に基づいて各ドラムモータ30a?30cが回転駆動する。この回転中におけるドラムの基準位置を検出するためのドラムセンサ36a,36b,36cがドラムセンサ基板35に設けられ、そのドラムセンサ36a?36cがスイッチ・センサ入力回路49に接続されており、ドラムの基準位置の検出信号がスイッチ・センサ入力回路49を介して基本回路45に与えられる。可変入賞球装置4に入賞した入賞玉を検出する入賞個数検出器60がスイッチ・センサ入力回路49に接続されており、可変入賞球装置4に入賞した入賞玉の検出信号がスイッチ・センサ入力回路49を介して基本回路45に与えられる。可変入賞球装置内の特定入賞口8に入賞した入賞玉を検出する特定入賞玉検出器61がスイッチ・センサ入力回路49に接続されており、特定入賞口に入賞した入賞玉の検出信号がスイッチ・センサ入力回路49を介して基本回路45に与えられる。始動入賞玉検出器11a?11cからの始動入賞検出信号がスイッチ・センサ入力回路49を介して基本回路45に与えられる。
【0034】
また、パチンコ遊技機の制御回路44には、AC24Vの交流電源に接続され、複数種類の直流の電圧を発生させる電源回路55が含まれている。
【0035】
図5に示した基本回路85からの制御信号に従って各種ランプやLEDが以下に示すように制御される。先ず、電源投入時においては、個数表示LED9と回数表示LED25とが点灯して「0」を表示する。
【0036】
始動入賞時においては、肩ランプ19,サイドランプ17,アタッカーランプ21,袖ランプ20が128mSを半周期として点滅する。さらに、ドラムランプ22a?22iが全ランプ点灯する。そして、可変表示が開始され、左・中のドラムが停止した状態で、大当りとなる特定識別情報が揃う可能性が残っているいわゆる通常リーチ時の場合および中央のドラムが停止した状態で、その中央に図柄「7」が表示され、たとえば「777」という特定識別情報が揃う可能性が生ずるいわゆる特別リーチ状態の場合には、その特定の識別情報が揃う可能性のある当たり列上のランプのみ128mSを半周期として点滅させる。またリーチ時には、飾りLED23を128mSの半周期で点滅させる。この始動入賞のときにおいても、個数表示LED9と回数表示LED25とは「0」を表示している。
【0037】
可変表示装置が停止したときの図柄が大当り以外の図柄であった場合には、所定時間(たとえば1秒)の間は、ドラムランプ22a?22iが全ランプ点灯され、アタッカーLED24が256mSの半周期で点滅する。この場合においては、個数表示LED9と回数表示LED25とは「0」を表示する。
【0038】
次に大当りが発生した場合を説明する。可変表示装置の停止時の表示結果が特定の識別情報(たとえば777)となった後、可変入賞球装置の初回の開放前所定期間(たとえば4秒)の間、レール飾りランプ16,風車ランプ18,肩ランプ19,サイドランプ17,アタッカーランプ21,袖ランプ20が点滅し、その点滅パターンは1024mSを1周期として繰返される。さらに、ドラムランプ22a?22iのうち当たり列上のランプのみが点滅する。この点滅は128mSを半周期として行なわれる。さらに、個数表示LED9と回数表示LED25が「0」を表示する。
【0039】
大当りに伴って可変入賞球装置が開放している場合において、入賞したパチンコ玉が特定入賞口(特定領域)に入賞する以前の段階においては、遊技効果ランプ59,レール飾りランプ16,風車ランプ18,肩ランプ19,サイドランプ17,アタッカーランプ21,袖ランプ20がそれぞれに括弧で所定の時間を半周期として点滅する。さらに、ドラムランプ22a?22iのうち当たり列のランプのみが128mSを半周期として点滅し、その他のドラムランプが点灯する。さらに、飾りLED23とアタッカーLED24とが、交互に128mSを半周期として点滅する。個数表示LED9により、可変入賞球装置に入賞した入賞個数が表示され、回数表示LED25により可変入賞球装置が開放された回数が表示される。一方、可変入賞球装置の開放中であってかつ入賞したパチンコ玉が特定入賞口(特定領域)に入賞した後においては、遊技効果ランプ59,レール飾りランプ16,風車ランプ18,肩ランプ19,サイドランプ17,アタッカーランプ21,袖ランプ20,V表示LED57がそれぞれ所定の時間を半周期として点滅し、ドラムランプ22a?22iのうちの当たり列のランプのみが128mSを半周期として点滅するとともに他のドラムランプが点灯する。さらに、飾りLED23とアタッカーLED24とが交互に128mSを半周期として点滅する。この場合は、個数表示LED9が可変入賞球装置内に入賞した入賞玉の個数を表示し、回数表示LED25が可変入賞球装置の開放回数を表示する。この回数表示LED25は、可変入賞球装置の開放回数が1?9の場合には開放回数を点灯表示し、10?16の場合には開放回数の1の位を点滅表示する。その点滅表示の際の半周期は128mSである。
【0040】
繰返し継続条件が成立して次回の可変入賞球装置の開放までの間、または開放回数が繰返し継続回数の上限である16回終了した後においては、遊技効果ランプ59,肩ランプ19,サイドランプ17,アタッカーランプ21,ドラムランプ22a?22iのうち当たり列上のランプが所定時間を半周期として点滅する。また、風車ランプ18と袖ランプ20とが点滅する。その点滅パターンは1024mSを1周期として繰返される。さらに、飾りLED23とアタッカーLED24とが交互に256mSを半周期として点滅する。個数表示LED9が前回の可変入賞球装置の開放時における入賞個数を表示する。回数表示LED25が、前回の可変入賞球装置の開放時における開放回数を表示する。その際に、開放回数が1?9の場合には点灯表示し、10?16の場合には128mSを半周期として開放回数の1の位を点滅表示する。スピーカがHの種類の効果音を発生する。
【0041】
記憶表示LED26は、すべての遊技状態の場合において、始動入賞記憶数を点灯表示する。
【0042】
図6ないし図22は、図5に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャートであり、図6はメインプログラムのフローチャートを示し、図7ないし図22はサブルーチンプログラムのフローチャートを示す。
【0043】
図6に示すメインルーチンプログラムはたとえば2msec毎に1回実行される。この実行は、図5のクロック用リセットパルス発生回路47が2msec毎に1回発生するリセットパルスに応答して開始される。まずステップS(以下単にSという)1により、スタックセット処理がなされ、S2によりRAM(Random Access Memory)エラーがあったか否かの判断が行なわれる。この判断は、図5に示した基本回路45中のRAM(図示せず)の所定アドレスの内容を読出し、その値が所定の値と等しいか否かを調べることにより行なわれる。プログラムの暴走時や電源投入直後には、RAMの格納データは不定であるため、判断の答はNOとなって制御はS3に進む。S3においては、RAMに初期データが書込まれる。その後制御はS8に進む。S3において初期データが書込まれるため、以降このメインルーチンの実行時には、S2における判断の答がYESとなり、制御は直接S4に進む。
【0044】
S4では、基本回路45中の入出力回路(I/O)に所定のデータを出力する処理が行なわれ、S5に進む。S5では、10カウント・ドラムエラーがあったか否かの判断が行なわれる。10カウントエラーとは、後述するS27,S28によるチェックの結果、入賞個数検出器60や特定入賞玉検出器61に異常が発生したか否かを判定するものである。ドラムエラーとは、回転ドラムが途中で停止した場合や回転制御できない状態となった場合を意味する。このようなエラーが発生した場合には、S6によるプロセス処理を行なうことなく直接S7に進む。一方、10カウント・ドラムエラーがなかった場合にはS6によるプロセス処理が行なわれた後S7に進む。S7では各種検出器からの検出信号を入力するスイッチ入力処理が行なわれる。
【0045】
次にS8により、ランダム1カウンタとランダム2カウンタのカウント値を更新する処理が行なわれる。このランダム1カウンタとランダム2カウンタは、可変表示装置3の停止時の表示結果を大当りが発生する特定の識別情報の組合せ(たとえば777)にするか否かを決定するためのものであり、ランダム1カウンタは後述する1次抽選用のもの、ランダム2カウンタは後述する2次抽選用のものである。また、ランダム2カウンタは後述するように、大当りと決定された場合の停止図柄を決定するためにも兼用されている。次にS9に進み、リセット回数が、「0」,「4」,「1,2,3,5,6,7」のいずれであるかの判断が行なわれる。このリセット回数とは、前記パルス分周回路79から発せられる定期リセットパルスに従ってリセットされた回数を意味し、リセットされるたびに「0」から1つずつ歩進され、「7」に達した後さらに歩進されることにより「0」となる。リセット回数が「0」の場合にはS10に進み、音回路50にスピーカ56を駆動するための音データが出力される。リセット回数が「4」の場合には、S12に進み、出力データテーブルの選択,ドラムランプの各データをセットする処理が行なわれ、S13により、そのセットされたドラムランプの各データが入出力回路から出力される。その出力されたデータに基づいて、前述したように、ドラムランプ22a?22iが表示制御される。一方、リセット回数が「1,2,3,5,6,7」のいずれかであった場合には、S11に進み、飾りLED,ランプの各データがセットされ、S13により、そのセットされたデータが入出力回路75から出力される。これらS10およびS11の処理の詳細は省略するが、具体的には10カウント・ドラムエラーがある場合には、警告音や警告表示のデータがセットされ、エラーが無い場合には、後述するプロセスフラグの値に応じて対応するアドレスの音データやランプ・LEDデータがセットされる。
【0046】
次にS14に進み、入賞記憶エリア格納処理(後述)が行なわれ、S15に進み、ランダム1カウンタ,ランダム2カウンタ,ランダム3カウンタの更新処理が行なわれる。このS15の処理は、クロック用リセットパルス発生回路47によってリセットされる時間(2msec)内にS1?S14までの処理を行ない、その残り時間であるリセット待ち時間を利用して行なわれる。ゆえに、S1?S14までの処理時間がランダムとなるために、S15による処理時間もランダムとなり、S15による更新処理が行なわれた結果、ランダム1カウンタ,ランダム2カウンタ,ランダム3カウンタのカウント値はランダムな値をとることになる。
【0047】
図7は、S6で示したプロセス処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S16によりプロセスフラグがどのような値にセットされているかの判別が行なわれる。このプロセスフラグは、後述する、S48,S54,S53,S61,S69,S74,S81,S80,S84,S85,S89,S90等によりそれぞれの値にセットされるものであり、所定の制御時間を保ちながらパチンコ遊技機を制御するために必要となるものである。プロセスフラグの値に応じて図7に示すように実行されるプログラムが相違するのであり、「0」の場合にはS17による通常処理が行なわれ、「1」の場合にはS18によるランダム2カウンタのチェック処理が行なわれ、「2」の場合にはS19による大当り図柄セット処理が行なわれ、「3」の場合にはS20によるはずれ図柄セット処理が行なわれ、「4」の場合にはS21によるドラム回転スタート処理が行なわれ、「5,6,7」の場合にはS22によるドラム回転(5はドラム回転中、6は通常リーチ時ドラム回転中、7は特別リーチ時ドラム回転中)処理が行なわれ、「8,9」の場合にはS23による大当りチェック(8ははずれ、9は大当り)処理が行なわれ、「10,11」の場合にはS24による開放中(10はV入賞前,11はV入賞後)の処理が行なわれ、「12,13」の場合にはS25による開放後(12はV未入賞,13はV入賞済)処理が行なわれる。
【0048】
図8は、S7に示したスイッチ入力処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S26により、基本回路45内の入出力回路のスイッチポートから各種検出器の検出信号を入力する処理が行なわれる。次に、S27により、10カウントスイッチ(入賞個数検出器60)のエラーチェックが行なわれる。この10カウントスイッチエラーチェックとは、入賞個数検出器60の断線やショートや玉づまりの場合を意味し、入賞個数検出器60の検出出力が所定時間(たとえば2.9秒)以上連続して導出された場合にエラーとなる。次にS28に進み、Vスイッチ(特定入賞玉検出器61)のエラーチェックが行なわれる。このVスイッチエラーチェックも、特定入賞玉検出器61の断線やショートのチェックであり、特定入賞玉検出器61からの検出信号が所定時間(たとえば2.9秒)以上導出されたときにエラーとなる。次に、S29に進み、10カウント・ドラムエラーがあるか否かの判断がなされる。この判断はS27,S28によるチェックの結果異常があったか否かを判断するとともに、S5で説明したドラムエラーがあったか否かを判断するものである。そして、10カウント・ドラムエラーがあった場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、なかった場合にはS30に進み、始動スイッチがONになったか否かの判断が行なわれる。本実施例の場合、始動スイッチとしては、始動入賞玉検出器11a,11b,11cの3種類の検出器があり、このスイッチ入力処理のサブルーチンプログラムが1回実行される間にそれぞれの検出器を1つずつ判定する。そして、始動スイッチがONとなっていると判断された場合にはS32に進み、ON判定タイミングであるか否かの判断が行なわれる。パチンコ玉が始動入賞口に入賞してその始動入賞玉が始動入賞玉検出器により検出されれば、その始動入賞玉検出器から所定パルス幅を有する検出パルスが導出されるのであり、その検出パルスのパルス幅の時間中このスイッチ入力処理のサブルーチンが実行される毎にS30によりYESの判断が続けて行なわれる。その度にONと判断された始動入賞玉検出器に対応するONカウンタがカウントアップされ、そのカウント値が所定の値(たとえば「3」)に達すればS32によりYESの判断がなされる。一方、静電気等に起因したノイズにより始動入賞玉検出器が瞬間的にONになる場合があり、そのような場合には始動入賞玉検出器からパルス幅がほとんどゼロに近いパルス信号が出力される。その出力されたタイミングに合わせてS30の判断が行なわれた場合には、S30によりYESの判断がなされ、対応するONカウンタが「1」加算される。しかし、その際に、ONカウンタの値が「1」となったとしても、ONカウンタの値が前記所定値(たとえば「3」)になっていないために、S32によりNOの判断がなされる。そして、このスイッチ入力処理のサブルーチーンプログラムが次回(2msec後)実行される際には、ノイズに起因して始動入賞玉検出器から検出された検出パルスは既に立下がった状態となっているために、S30によりNOの判断がなされてS31により、対応するONカウンタの値がクリアされて「0」となる。このように、ノイズに起因して始動入賞玉検出器から瞬間的なパルス信号が出力されたとしても、S32によりNOの判断がなされるために、始動入賞玉検出器が始動入賞玉検出した旨の判定は行なわれないのであり、ノイズによる誤判定が防止できる利点がある。
【0049】
次に、S32によりYESの判断がなされた場合にはS33に進み、始動入賞記憶が最大(たとえば4)になっているか否かの判断が行なわれ、既に最大になっている場合にはそれ以上記憶する余裕がないために、そのままS35に進むが、最大になっていない場合にはまだ記憶する余裕があるために、S34に進み、始動記憶数を「1」加算するとともに、始動入賞数を「1」加算する処理が行なわれる。次にS35により、すべての始動チェックが終了したか否かの判断が行なわれる。前述したように、始動入賞玉検出器は3種類あるために、このS35により、3種類すべての始動入賞玉検出器のチェックが終了したか否かの判断が行なわれるのであり、まだチェックが終了していない始動入賞玉検出器がある場合には再びS30に進み、チェックが行なわれる。そして、すべての始動入賞玉検出器のチェックが終了した段階でS35によりYESの判断がなされる。
【0050】
図9は、S12に示されたドラムランプデータセットのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S36により、前述と同様に、10カウント・ドラムエラーがあったか否かの判断が行なわれ、あった場合にはS38に進み、アラーム時のデータセットが行なわれるとともに、ソレノイド6をOFFにするためのデータがセットされ、そのセットされたデータが前記S4により出力される。このアラーム時のデータとは、ドラムランプ22a?22iすべてを点滅状態にしたりあるいは消灯状態にしたりするためのデータ等である。また、ソレノイドをOFFにするデータがセットされて出力されるために、可変入賞球装置4の開閉板5が閉成されて遊技者にとって不利な第2の状態となる。
【0051】
次に、10カウント・ドラムエラーが無いと判断された場合にはS37に進み、プロセスフラグの値に応じて、対応するアドレスのドラムランプを制御するためのデータがセットされ、そのセットされたデータがS13により出力される。このセットされるデータの内容は、可変表示装置3が可変表示中(プロセスフラグ=5)の場合には、ドラムランプ22a?22iをすべて点灯させるためのデータがセットされる。また、リーチ時(プロセスフラグ=6,7)の場合には、特定の識別情報の組合せが成立する可能性が残っている当りライン(組合せ有効列)上のドラムランプを点滅させ、その他のドラムランプを消灯させるデータがセットされる。また、前記特定の識別情報の組合せが成立した後に可変入賞球装置4が開成する前の段階(プロセスフラグ=9)においては、ドラムランプ22a?22iを前記リーチ時の場合と同様に制御するためのデータがセットされる。
【0052】
図10は、S14に示した入賞記憶エリア格納処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S39により、始動入賞数が「0」であるか否かの判断が行なわれる。この始動入賞数は、前記S34により「1」ずつ加算され、後述するS41により「1」ずつ減算される。始動入賞数が「0」の場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、始動入賞数がある場合にはS40に進み、ランダム1カウンタとランダム2カウンタとの値を入賞記憶エリアの対応するエリアに格納する処理が行なわれる。この始動入賞記憶エリアは、ランダム1カウンタのカウント値格納用のエリアとランダム2カウンタのカウント値格納用のエリアを有するとともに、始動入賞記憶数に応じて各ランダム1カウンタの値とランダム2カウンタの値とを記憶するための複数のエリアを有する。次にS41に進み、始動入賞数を「1」減算する処理がなされ、S39に進み、始動入賞数が「0」になるまでこのS40,41の処理が繰返される。この入賞記憶エリア格納処理により、始動入賞毎にそれに対応するランダム1カウンタの値とランダム2カウンタの値とがそれぞれの入賞記憶エリアに格納される。
【0053】
図11は、S17に示した通常処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S42により、入賞記憶があるか否かの判断が行なわれる。この入賞記憶は、前記S34により「1」ずつ加算され、後述するS55により「1」ずつ減算される。入賞記憶がなかった場合にはS43に進み、1次抽選フラグを「はずれ」にセットしてそのままサブルーチンプログラムが終了する。一方、入賞記憶があった場合にはS44に進み、入賞記憶エリアのエリア1に記憶されているランダム1カウンタのカウント値と現在のランダム1カウンタのカウント値とを加算してその結果の値に基づいて当りか否かの判定が行なわれる。入賞記憶エリアのエリア1は、前記S40で格納されたカウント値のうち一番古いカウント値を格納しているエリアであり、その一番古いカウント値に基づいてS44による判定が行なわれる。このS44では、その一番古いカウント値と現在のランダム1カウンタのカウント値とを加算し、その加算結果に基づいて1次抽選の当りはずれを判定するようにしているために、入賞記憶エリアのエリア1に格納されているランダム1カウンタのカウント値のみに基づいて判定するのに比べてランダム性がより向上する。次にS45に進み、1次抽選の結果当りとなっているか否かの判断が行なわれ、当りでないと判断された場合にはS46に進み、1次抽選フラグを「はずれ」にセットしてS48に進む。一方、当りと判断された場合にはS47に進み、1次抽選フラグを「当り」にセットしてS48に進む。S48では、プロセスフラグを「1」にセットする処理がなされる。その結果、次にS18に示すランダム2カウンタのチェック処理が行われる。
【0054】
図12は、S18に示したランダム2カウンタのチェック処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S49により、1次抽選フラグが「当り」になっているか否かの判断が行なわれ、「当り」になっていない場合にはS53に進む。一方、「当り」になっている場合にはS50に進み、入賞記憶エリアのエリア1に格納されているランダム2カウンタの値を判定し、S51により、その2次抽選の判定結果が当りであるか否かの判断が行なわれる。はずれと判断された場合にはS52に進み、1次抽選フラグを「はずれ」にセットしてS53に進む。一方、2次抽選の結果当りであると判断された場合にはS54に進み、入賞記憶エリアのエリア1のランダム2カウンタの値に基づき大当り図柄ナンバー(28種類ある中の1つの値)がセットされ、プロセスフラグを「2」にセットする処理がなされてS55に進む。
【0055】
S53では、プロセスフラグを「3」にセットする処理が行なわれる。S55では、始動入賞記憶数を「1」減算する処理が行なわれる。次にS56に進み、入賞記憶エリアをシフトする処理が行なわれる。入賞記憶エリアは前述したように、始動入賞数に対応して複数のランダム1およびランダム2のカウント値をそれぞれ格納するための複数のエリアを有し、一番古いカウント値がエリア1に格納され、その次に古いカウント値がエリア2に格納され、さらにその次に古いカウント値がエリア3に格納されるというように構成されている。そして、このS56により、エリア1に格納されているカウント値を消去してエリア2に格納されているカウント値をエリア1にシフトして格納し、エリア3に格納されているカウント値をエリア2にシフトして格納し、エリア4に格納されているカウント値をエリア3にシフトして格納する処理が行なわれる。
【0056】
図13は、S19に示した大当り図柄セットのサブルーチンプログラムを示すフローチャートであり、プロセスフラグが「2」にセットされている場合すなわち2次抽選の結果当りと判断された場合に実行される。S57により、大当り図柄ナンバー(S54参照)に基づいてそのナンバーに対応する大当り図柄(各ドラムにおける停止図柄ナンバー)がセットされる。次にS58に進み、中停止図柄ナンバーが7であるか否かの判断が行なわれ、7である場合にはS60に進む。S60においては、特定の識別情報の組合せが発生する可能性のある列のランプを点灯させるための当り列ランプデータがセットされて大当りフラグに特別リーチを示す値および大当りを示す値がセットされ、さらに回転増カウンタに2がセットされる。この回転増カウンタの値は、右ドラム、左ドラムについてそれぞれセットされる。これは後述するS66においても同様である。さらにS61に進み、プロセスフラグが4にセットされる。中停止図柄ナンバーが7以外の場合にはS58からS59に進み、特定の識別情報が発生する可能性のある有効列のランプを点滅させるための当り列ランプデータがセットされ、大当りフラグに通常リーチを示す値および大当りを示す値がセットされ、回転増カウンタに2がセットされる。この回転増カウンタのセットは右ドラムについてのみ行なわれる。これにより、通常リーチの場合には右ドラムのみが通常より多い回転数で回転された後停止することになる。S59の後S61に進み、プログラムフラグに4がセットされる。
【0057】
図14は、S53によりプロセスフラグが「3」にセットされた場合すなわち1次抽選または2次抽選の結果はずれと決定された場合に行なわれるはずれ図柄セット(S23参照)のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S62により、ランダム3カウンタのカウント値に基づきはずれ図柄がセットされ、S63に進み、S62でセットされた中停止図柄ナンバーが7であるか否かの判断が行なわれる。中停止図柄ナンバーが7である場合にはS66に進み、当り列ランプを点滅させるためのデータがセットされ、大当りフラグに特別リーチを表わす値がセットされ、回転増カウンタに2がセットされる。この場合前述のように右ドラム、左ドラムの両方について回転増カウンタに2がセットされる。S66の後制御はS67に進む。
【0058】
S63で中停止図柄が7でない場合、S64に進み、中図柄と左図柄とが等しいか否かの判断が行なわれ、等しくなければS69に進むが、等しい場合には通常リーチが発生するということであるから、S65に進み、通常リーチ時の当り列のランプを点滅させるためのデータがセットされ、大当りフラグに通常リーチを表わす値がセットされ、右ドラムについての回転増カウンタに2がセットされる。次にS67に進み、左図柄と中図柄と右図柄とが等しいか否かの判断が行なわれ、等しくなければS69に進むが、たまたま等しくなった場合には、S68に進み、右停止図柄ナンバーのみを「1」加算して強制的にずらせ、図柄が特定の識別情報の組合せにならないように制御する。次にS69では、プロセスフラグが「4」にセットされる。その結果、次回の処理ではS21に示すドラム回転スタートの処理が行なわれることになる。
【0059】
図15は、S21に示したドラム回転スタートのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S70において、中・左・右モータ制御フラグに、加速/減速を表わす値がセットされる。続いてS71において、中・左・右ドラム制御アドレステーブルの先頭がセットされる。さらにS72において、定速送り図柄数として中図柄に「1」、左図柄に「6」、右図柄に「11」がそれぞれセットされる。これにより、リーチにならない場合には、ドラム制御テーブル(18種類)が終了した時点で、中ドラムが停止図柄の1図柄手前の図柄を、左ドラムは停止図柄の6図柄手前の図柄を、右ドラムは停止図柄の11図柄手前の図柄をそれぞれ中央ラインに表示していることになる。続いてS73においてドラム制御テーブルアドレスが選択され、ソフトウェア上に用意された各モータ制御エリアにセットされ、1ステップタイマ、ステップ数データが同じく各モータ制御エリアにセットされる。次にS74に進み、プロセスフラグが「5」にセットされる。その結果、次回の処理ではS22のドラム回転の処理が行なわれる。
【0060】
図16は、S22に示すドラム回転処理のサブルーチーンプログラムである。S75により、ステッピングモータ30a?30cのコントロール処理が行なわれる。このステッピングモータのコントロール処理は、後述する中・左・右モータ制御フラグの値に応じて、ステッピングモータ30a?30cを加速/減速させたり、定速で回転させたりするためのものであり、その詳細は後述する。S70?S75により、前記可変表示装置を可変表示させて、所定の停止条件の成立に基づいて前記複数の可変表示部を停止制御可能な可変表示制御手段が構成されている。次にS76に進み、中回転ドラムが回転中であるか否かの判断が行なわれ、未だ回転中であればそのままサブルーチンプログラムが終了する。一方、中ドラムの回転が停止している場合にはS77に進み、大当りフラグが「特別リーチ」にセットされているか否かの判断が行なわれる。大当りフラグが前記S60またはS66により「特別リーチ」にセットされている場合にはS81に進み、プロセスフラグが「7」にセットされた後にS82に進む。一方、大当りフラグが「特別リーチ」にセットされていない場合にはS78に進む。S78では、左回転ドラムが回転中であるか否かの判断が行なわれ、未だに回転中であればそのままサブルーチンプログラムが終了する。一方、中ドラムに加えて左ドラムの回転が停止した場合にはS79に進み、大当りフラグが「通常リーチ」にセットされているか否かの判断が行なわれる。大当りフラグが前記S59またはS65により「通常リーチ」にセットされている場合にはS80に進み、プロセスフラグが「6」にセットされた後にS82に進む。一方、大当りフラグが「通常リーチ」にセットされていない場合にはそのままS82に進む。この左ドラムと中ドラムとが停止した状態で大当りフラグが「通常リーチ」にセットされている場合には、前記S37で説明した通常リーチ時におけるドラムランプの制御を行なうためのデータがセットされる。
【0061】
次にS82に進み、全ドラムが停止したか否かの判断が行なわれ、全ドラムが停止した段階でS83に進み、S83では、大当りフラグが「大当り」になっているか否かの判断がなされ、「大当り」になっていない場合にはS84に進むが、「大当り」になっている場合にはS85に進み、プロセスフラグを「9」にセットし、プロセスタイマに初回開放前時間をセットする処理が行なわれ、サブルーチンが終了する。この初回開放前時間は約4秒程度の時間であり、このセットされた初回開放前時間の間後述するS86によりNOの判断がなされてその間ドラムが停止した状態を保つとともに可変入賞球装置4を第1の状態に駆動制御するための制御が遅延される。一方、S84においてプロセスフラグを「8」にセットし、プロセスタイマにはずれ遅延時間をセットする処理が行なわれてサブルーチンが終了する。このはずれ遅延時間は約1秒程度の時間であり、このセットされた遅延時間の間後述するS86によりNOの判断がなされて全ドラムが停止状態に保持され、その間遊技者にはずれであることの確認をさせることができる。
【0062】
次に、プロセスフラグが「8」または「9」にセットされている場合にはS23の大当りチェックの処理が行なわれる。
【0063】
図17は、S23の大当りチェック処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S86により、プロセスタイマが終了したか否かの判断が行なわれ、プロセスタイマが終了した段階でS87に進み、ステッピングモータをOFFにするための出力データがセットされ、このセットされたデータがS4により出力されることによりステッピングモータ30a?30cがOFFになる。次にS88に進み、大当りフラグが「大当り」になっているか否かの判断が行なわれ、「大当り」になっていない場合にはS89に進み、プロセスフラグが「0」にセットされて再び前記S17の通常処理が開始される。一方、大当りフラグが「大当り」になっている場合にはS90に進み、V入賞フラグがクリアされ、プロセスフラグが「10」にセットされ、プロセスタイマに開放時間(30秒)がセットされ、開放回数カウンタを「1」にする処理が行なわれる。このV入賞フラグは、パチンコ玉が特定入賞領域8に入賞して特定入賞玉検出器61により検出された場合にセットされるものであり、このV入賞フラグがセットされている場合には、可変入賞球装置の第1の状態が終了した後再度可変入賞球装置を第1の状態に駆動制御する繰返し継続制御が行なわれる。この繰返し継続制御の回数が開放回数カウンタによりカウントアップされ、そのカウント値が所定値(たとえば「16」)に達した段階でそれ以上の繰返し継続制御が行なわれないように制御される。さらに、このS90により、プロセスタイマに開放時間(30秒)がセットされるために、ソレノイド6が最大30秒間励磁されて可変入賞球装置4の開閉板5が最大30秒間開成状態となるが、その間に所定個数(たとえば10個)のパチンコ玉が可変入賞球装置内に入賞して入賞個数検出器60あるいは特定入賞玉検出器61により検出されれば、その時点でソレノイド6の励磁が停止されて開閉板5が閉成する。
【0064】
図18は、図17に示したプログラムにより可変表示の準備が終了した後、実際に何図柄ステッピングモータを回転させて図柄を送ればよいかを演算するためのプログラムを示すフローチャートであり、図15のS73の詳細を示す。
【0065】
S91において、中移動図柄数の演算処理が行なわれる。この移動図柄数は、S57またはS62によって定められた停止図柄ナンバーから、現在表示されている図柄ナンバーとS72によって定められた定速送り図柄数との和を引くことによって求められる。後述するS94、S97において行なわれる左移動図柄数演算Aおよび右移動図柄数演算Aも同様に行なわれる。続いてS92において、S91の演算により求められた移動図柄数に基づきアドレス計算が行なわれ、ドラム制御テーブルアドレスを選択して各モータ制御エリアにセットする処理が行なわれる。続いてS93において大当りフラグが特別リーチを表わす値であるか否かの判断が行なわれ、大当りフラグが特別リーチを表わす場合にはS100に進み、それ以外の場合にはS94に進む。
【0066】
S94においては、左移動図柄数演算Aの処理が行なわれる。この演算も、前述のS91と同様の方法に従って行なわれる。続いてS95において、S94に行なわれた演算結果に従ってアドレス計算が行なわれ、左ドラムの制御テーブルアドレスが選択され、左モータ制御エリアにセットされる。次にS96に進み、大当りフラグが通常リーチを表わす値であるか否かの判断が行なわれ、大当りフラグが通常リーチを表わす値である場合にはS99において右移動図柄数0に対応するアドレスが選択され、右モータ制御エリアにセットされサブルーチンは終了する。大当りフラグが通常リーチを表わす値でない場合にはS97に進み、右移動図柄数演算Aの処理が行なわれる。ここで行なわれる演算処理も、S91およびS94において行なわれる方法と同様の演算により行なわれる。S98においては、S97の演算結果に従ってアドレス計算が行なわれ、ドラム制御テーブルアドレスが選択され右モータ制御エリアにセットされこのサブルーチンは終了する。
【0067】
一方、S93において大当りフラグが特別リーチを表わす値であると判断された場合にはS100に進み、大当りフラグが大当りを示すものであるか否かの判断が行なわれる。大当りフラグが大当りを示す値である場合にはS101に進み、左移動図柄数演算Bの処理が行なわれる。この処理により移動図柄数は、S57によりセットされた停止図柄番号から現在の図柄番号を減算することにより計算される。このとき、大当り図柄をどのラインに停止させるかはすでにS57で決まっている。後述するS103において行なわれる計算処理も同様の式に従って行なわれる。S101の後S102に進み、S101の演算結果に従ってアドレス計算が行なわれドラム制御テーブルアドレスが選択され左モータ制御エリアにセットされる。続いてS103において、S101で行なわれるのと同様にして右移動図柄数演算Bが行なわれ、S104でS103の結果に従ってアドレス計算がされ、右モータ制御エリアにドラム制御テーブルアドレスがセットされこのサブルーチンは終了する。S100において大当りフラグが大当りを示すものでないと判断された場合、S105において左移動図柄数演算Cが行なわれる。S105において移動図柄数は、図柄ナンバー6から現在の図柄ナンバーを引くことによって計算され、この計算結果に従ってアドレス計算がされ、左モータ制御エリアにドラム制御テーブルアドレスがセットされる。S105、S106の処理により、中図柄停止時の左図柄は、常に図4に示されるような状態となる。次にS107において、右移動図柄数演算Cが行なわれる。この右移動図柄数は、図柄ナンバー2または4または6から現在の図柄ナンバーを引くことによって計算される。どの図柄ナンバーから現在図柄ナンバーを引くかは、ランダムに選ばれる。そして、図柄ナンバー2が選ばれた場合には、中図柄停止時の右図柄は、図4(A)の状態となり、図柄ナンバー4が選ばれた場合には中図柄停止時の右図柄が図4(B)の状態となり、図柄ナンバー6が選ばれた場合には中図柄停止時の右図柄が図4(C)の状態となる。S108の後このサブルーチンは終了する。
【0068】
図19は、図16のS75で行なわれる可変表示装置の回転停止制御を行なうプログラムを示すフローチャートである。図19に示される処理は、左、中、右の各ドラムそれぞれについて実行される。まず、S109において、モータ制御フラグに停止を示す値がセットされているか否かについての判断が行なわれ、セットされている場合にはモータが停止中であるからこのサブルーチンは終了し、それ以外の場合にはS110に進む。S110においては、ドラムセンサ36a?36cからの信号を入力しチェックする処理が行なわれS111に進む。S111においては、モータが定速中であるか否かの判断が、モータ制御フラグに定速中のフラグがセットされているか否かで行なわれる。そしてモータ定速中であると判断された場合にはS113によりモータ定速の制御が行なわれ、定速中でなければS112に進み、モータを加速制御または減速制御する。
【0069】
図20は図19のS112に示したプログラムの具体的内容を示すサブルーチンプログラムである。S114に示した「1ステップタイマ」とは、ステッピングモータを次のステップに送るタイミングを判定するための時間を計時するタイマである。このタイマは後述するS117によりセットされる。S114において、この1ステップタイマが終了したか否かについての判断が行なわれる。判断の答がNOであればステッピングモータを次のステップに送るタイミングでないということであるから制御はS125に直接進み、判断の答がYESであればS115においてステップチェック処理が行なわれる。このステップチェック処理については図22を参照して後述する。
【0070】
続いてS116において10カウント・ドラムエラーがあるか否かについての判断が行なわれる。エラーがあれば制御は直接S125に進む。それ以外の場合にはS117で1ステップタイマがセットされる。ここでセットされる値は、前述のようにステッピングモータを次のステップに送るタイミングを判定するための時間であり、前述したように4msec,6msec,8msec,10msecの4種類の時間がセットされる。続いてS118において、ステッピングモータが、必要なステップ数だけ動作終了したか否かについての判断が行なわれる。終了していなければ引続き同じ回転速度によるステッピングモータの制御を行なうため、制御はS125に進み、終了した場合にはS119に進む。
【0071】
S119においては、ステッピングモータを制御するための前述の制御テーブルによる制御が終了しているか否かの判断が行なわれ、終了している場合にはS121に進み、それ以外の場合にはS120に進む。S120では、ステッピングモータの回転速度を加速/減速に応じて変更するために、次回のステッピングモータの制御データがセットされる。また制御データのアドレスも同様に更新される。S120の後制御はS125に進む。
【0072】
S119で制御テーブルによる制御が終了したと判断された場合には、S121において現在制御中のステッピングモータが中ドラムを駆動するためのものであるか否かの判断が行なわれる。中ドラムでない場合にはS122に進み、回転増カウンタがゼロか否かについての判断が行なわれる。ゼロでない場合にはS123に進み、ステップ数に1回転増データ(216ステップ)がセットされ、回転増カウンタが1減算されて前述した通常リーチ状態、特別リーチ状態のときのステッピングモータの回転制御が行なわれる。S123の後制御はS125に進む。
【0073】
S121で中ドラムと判断された場合およびS122で回転増カウンタの値がゼロであると判断された場合には、S124に進み、モータ制御フラグに「定速」がセットされ、「イニシャルチェック」が行なわれる。イニシャルチェックではシステムイニシャル中であるか否かを判定し、イニシャル中の場合には停止図柄ナンバー=現在図柄ナンバー+1となるように制御される。
【0074】
図21は、図19のS113に示したサブルーチンの具体的内容を示すフローチャートである。まずS126において、1ステップタイマが終了したか否かの判断が行なわれ、終了していない場合にはこのサブルーチンはただちに終了し、タイマ終了したときにS127に進む。S127においてはステップチェック処理が行なわれる。ステップチェック処理においては回転ドラムの回転制御に何らかのエラーがおきたか否かの判断が行なわれ、続くS128において、10カウント・ドラムエラーが発生したか否かの判断が行なわれ、発生している場合にはこのサブルーチンは終了する。S128でエラーが発生していないという判断がされた場合にはS129に進み、図柄の途中であるか否かの判断がなされ、図柄の途中である場合には直接S133に進み、それ以外の場合にはS130に進む。S130においては、現在の図柄ナンバーが停止図柄ナンバーと一致しているか否かの判断が行なわれ、一致している場合にはS131に進みそれ以外の場合にはS133に進む。S131では、対象が右ドラムであるか否かの判断が行なわれ、右ドラムでない場合にはS135に進みモータ制御フラグに「停止」がセットされ、停止音を表わす音データがセットされてサブルーチンは終了する。右ドラムである場合にはS132に進み、左モータ制御フラグが「停止」であるか否かの判断が行われ、停止中である場合にはS135に進み、それ以外の場合にはS133に進む。この判断は、左回転ドラム31aが停止していない場合には、右回転ドラム31cをもう1回転させるために行なわれる。S133においては、1ステップタイマ(本実施例では10msec)がセットされ、S134においてはモータ出力がセットされサブルーチンが終了する。
【0075】
この図21のS127および図20のS115の具体的内容が図22のサブルーチンプログラムに示されている。この図22のS136に示されている「モータ基準パターン」は、ステッピングモータのコイルを励磁する励磁基準パターンであり、本実施例のステッピングモータは1-2相励磁であるため、励磁パターンは基準パターンを含め8通りのパターンがある。そして、ドラムの1回転がステッピングモータの216ステップに相当するため、ドラムの1回転の間の基準励磁パターン回数は216/8=27回となり、ドラムの1回転の間にS136により27回YESの判断がなされる。S136によりYESの判断がなされればS137に進み、ドラムセンサがONか否かの判断が行なわれる。このドラムセンサは、図2にも示したように、ドラムの無反射部分33a?33cを検出するものであり、ドラムが1回転する度に1回ONと判定される。そして、ドラムセンサがONと判定された場合には、ドラムが基準位置に達しているためにS140に示すように1図柄中ステップナンバーを0にするとともに現在図柄ナンバーを0にする処理が行なわれる。1図柄中ステップナンバーと現在図柄ナンバーとの関係を簡単に説明すると、1図柄に対応するステップ数は12ステップであるから1図柄中ステップナンバーは0?11の値を取り得る。また、ドラムに描かれている図柄数は18であるから現在図柄ナンバーは0?17の値を取り得る。そして1図柄中ステップナンバーの値が12に達した場合には、現在図柄ナンバーの値に1が加算されるとともに1図柄中ステップナンバーの値が0にされ、加算された結果現在図柄ナンバーの値が18に達した場合には、現在図柄ナンバーの値も0にされる。これらの処理はS125,S134におけるモータ出力データセット処理(詳細省略)において行なわれるが、モータ基準パターンになったときにドラムセンサがONの判断がなされた場合には、モータ出力データセット処理の状態に関係なくS140においてともに0にされることになる。
【0076】
次にS141によりセンサONカウンタの値が「0」以上であるか否かの判断を行なう。このセンサONカウンタの初期値は「-20」に設定される。これは、「0」に設定すると電源投入時や復旧時にS144でエラー判定される場合があるためである。なお、初期設定値はS144の設定値よりも小さければ「-20」以外の値であってもよい。センサONカウンタは、電源投入時や復旧時には初期設定値「-20」からS137におけるドラムセンサのOFF判定毎にS138によってカウントダウンされる。また、可変表示中においては、S137においてON判定された時のセンサONカウンタの値は正常時は「-26」となる。ゆえに、正常に動作している限りは、電源投入時や復旧時を含めてS141,S144ともにNOの判断がなされてS145においてセンサONカウンタの値が「0」に更新されることとなる。
【0077】
一方、S144においてセンサONカウンタが「-12」以上であればS146に進み、ドラムエラーフラグがセットされる。つまり、ドラムが半回転しないうちにドラムセンサがONと判断された場合にS146によりドラムエラーフラグのセットを行なう。このエラーの原因は、たとえば、ドラムにごみが付着したり図柄が描かれてドラム外周に貼着されている図柄シールが剥がれている場合等が考えられる。なお、S144の設定値は「-12」に限らず-1?-25の任意の値でよいが、-12?-25の間の値に設定するのが望ましい。
【0078】
次に、S137によりYESと判断されてかつセンサONカウンタの値が「0」以上であった場合には、S142によりセンサONカウンタが「1」インクリメントされ、S143によりセンサONカウンタが「5」未満か否かの判断が行なわれる。そして、「5」以上であった場合にはS146に進み、ドラムエラーフラグがセットされる。つまり、基準パターン5回を越えてドラムセンサのON状態が続いた場合は、ドラムセンサが故障しているかまたはドラムセンサのコネクタが外れている場合等が考えられるため、S146によりドラムエラーフラグのセットが行なわれるのである。なお、S143の設定値は「5」に限らず「1」以上の任意の値でよい。
【0079】
モータ基準パターンになったときにドラムセンサがONと判断されない場合にはS138によりセンサONカウンタが「1」ディクリメントされる。つまり、ドラムセンサがOFFに切替わってから次にONに切替わるまでの間何回モータ基準パターンになったかがS138によりカウントダウンされる。正常時にはモータ基準パターンが27回生ずればドラムが1回転しているために、このセンサONカウンタは0?26の値を取ることになる。そして、S139により、センサONカウンタの値が「-60」以下であると判断された場合すなわちドラムが2回転を越えて回転しても無反射部分が検出されない場合はS146に進み、ドラムエラーフラグのセットが行なわれる。この場合のエラーは故障や外力による強制停止によってステッピングモータが回転しない場合が考えられる。S139の設定値を「-27」以下の任意の値にしてドラムが1回転を越えて回転した段階で無反射部分が検出されない場合にS146のエラー処理を行なうようにしなかった理由は、電源投入時や復旧時に無反射部分がドラムセンサの所にあると検出されない場合があり、その場合にはセンサONカウンタの初期値が「-20」に設定されている関係上S139の設定値を「-60」に設定し、ドラムが1回転もしない段階でS146によるエラー処理が行なわれる不都合を防止するためである。なお、S139の設定値は、初期設定値を考慮することを条件として「-27」以下の任意の値でよい。このS136?145により、前記可変表示制御手段によって制御されている前記可変表示装置の表示状態が適正か否かを確認する確認手段が構成されている。
【0080】
なお、本実施例では、ドラムが1回転して無反射部分が検出されるごとに図柄番号をリセットして「0」とし(S140参照)、ドラムの回転の最終回のときの図柄ナンバーが停止図柄に一致したときにドラムを停止させるものを示したが、それに代えて、電源投入時の初期化処理においてのみ無反射部分を検出するようにし、遊技中においては、可変開始前の図柄から何図柄分回転させた状態で停止させるかを予め決定しておき、その決定された図柄分ドラムが回転した状態で停止するように制御して、ドラム1回転ごとにはリセットしないようにしてもよい。たとえば、ドラムを5回転と10図柄分回転させたい場合は、18×5+10=100の100図柄分回転させて停止させる。
【0081】
前述した基本回路45,モータドライブ回路54,スイッチ・センサ入力回路49により、所定の可変開始条件(始動入賞)の成立に基づいて前記可変表示部を可変表示させた後前記可変表示部の表示結果を導出表示させる制御が可能な可変表示制御手段が構成されている。この可変表示制御手段は、図4等に基づいて説明したように、前記組合せ有効列上に前記特定の識別情報が揃えられた状態で前記複数の可変表示部を可変表示させる特定可変表示動作(特別リーチ動作)を行なわせることが可能である。そして、前述したように、可変表示制御手段は、前記特定可変表示動作を行なわせた後該特定可変表示動作を行なっている複数の可変表示部の表示結果を同時に導出表示可能である。
また、前記可変表示制御手段は、前記複数の可変表示部(各図柄表示部3a,3b,3c)のうちの或る可変表示部(中図柄表示部3b)の表示結果を導出表示させた後、残りの可変表示部(左図柄表示部3a,右図柄表示部3c)により前記特定可変表示動作を行なわせる。
さらに、可変表示制御手段は、前記特定可変表示動作以外に、前記複数の可変表示部の表示結果を時期を異ならせて導出表示させて一部の可変表示部(右可変表示部3c)の表示結果がまだ導出表示されていない段階で既に導出表示された可変表示部(左、中可変表示部3a,3b)の表示結果が前記特定の識別情報の組合せとなる条件を満たしている場合に前記一部の可変表示部(右可変表示部)について所定可変表示動作(通常リーチ動作)を行なわせることが可能である。
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明によれば、最初に表示結果が導出表示される1個の可変表示部における組合せ有効列上に表示結果として特別識別情報が導出表示されたときに、未だ表示結果が導出表示されていない2個の可変表示部について、可変表示の継続中に前記導出表示された特別識別情報との組合せにより組合せ有効列上に同じ前記特別識別情報が3つ揃えられて表示されるように、前記導出表示された特別識別情報と同じ特別識別情報が2つ揃った状態で複数種類の識別情報が可変表示する特定可変表示動作が行なわれるため、特定の識別情報が表示結果として導出表示されることに対する遊技者の期待を、可変表示の比較的早期の段階から高めることができ、可変表示中の遊技の興趣をより一層盛り上げることが可能となるとともに、最初に表示結果が導出表示される1個の可変表示部における組合せ有効列上に表示結果として所定識別情報が導出表示され、次に表示結果が導出表示される1個の可変表示部における組合せ有効列上に表示結果として所定識別情報が導出表示されて、組合せ有効列上に同じ所定識別情報が2つ揃って導出表示されたときに、表示結果が未だ導出表示されていない1個の可変表示部について所定可変表示動作を行なわせるために、可変表示動作のバリエーションが豊富となり変化に富んだ面白味のある可変表示を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明にかかる遊技機の一例のパチンコ遊技機の遊技領域およびその遊技領域に設けられている各種機器を示す正面図である。
【図2】
可変表示装置を構成しているドラムユニットと構造を示す部分分解斜視図である。
【図3】
可変表示装置の各表示部で表示される各種図柄の展開図である。
【図4】
可変表示装置の特別リーチ時の表示状態を示す正面図である。
【図5】
パチンコ遊技機に用いられる制御回路を示すブロック図である。
【図6】
図5に示した制御回路の動作を説明するための、プログラムのメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】
プロセス処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図8】
スイッチ入力処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図9】
ドラムランプデータセット処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図10】
入賞記憶エリア格納処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図11】
通常処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図12】
ランダム2チェック処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図13】
大当り図柄セット処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図14】
はずれ図柄セット処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図15】
ドラム回転スタート処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図16】
ドラム回転処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図17】
大当りチェック処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図18】
ドラム制御テーブルアドレス選択処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図19】
モータ制御処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図20】
モータ加速/減速処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図21】
モータ定速処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【図22】
ステップチェック処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
2は遊技領域、3は可変表示装置、3a?3cは可変表示部、4は可変入賞球装置、45は基本回路、54はモータドライブ回路、49はスイッチ・センサ入力回路である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2011-05-12 
結審通知日 2010-09-22 
審決日 2010-10-06 
出願番号 特願平3-314518
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A63F)
P 1 113・ 536- YA (A63F)
P 1 113・ 537- YA (A63F)
P 1 113・ 161- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 吉村 尚
澤田 真治
登録日 2000-04-07 
登録番号 特許第3053475号(P3053475)
発明の名称 遊技機  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 深見 久郎  
代理人 中田 雅彦  
代理人 中田 雅彦  
代理人 池垣 彰彦  
代理人 塚本 豊  
代理人 塚本 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 森田 俊雄  
代理人 振角 正一  
代理人 深見 久郎  
代理人 川下 清  

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