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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1250091
審判番号 不服2010-4041  
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-24 
確定日 2011-04-07 
事件の表示 特願2008-512163「表示装置およびその製造方法、表示方法、ならびにブラインド装置およびブラインド方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月 1日国際公開、WO2007/123202〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年4月20日(優先権主張2006年4月20日、日本国及び優先権主張2007年3月2日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成21年10月26日に二度の手続補正がなされ、同年11月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、当審において、同年7月27日付けで審尋がなされ、同年10月4日に回答書が提出されたものである。

第2 本件補正の却下の決定
〔結論〕
本件補正を却下する。

〔理由〕
1 補正の内容・目的
(1)補正の内容
ア 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「反射面を有するドット状の切欠きでそれぞれ構成される複数のドット状反射部からなる表示部が形成された導光板と、この導光板の少なくとも一方の端面側に設けられた少なくとも1つの光源とを備え、
前記ドット状反射部の反射面は、前記光源が設けられた端面側に形成された平滑な平面であり、
前記表示部は、前記複数のドット状反射部からの反射光が所定のパターンをなすことが視認できるように形成され、
前記光源からの光を前記導光板の端面側から入射させ、前記ドット状反射部で前記表面側に反射させて表面側から出射させることによって、前記パターンを表示する表示装置。」
から、
「反射面を有するドット状の切欠きでそれぞれ構成される複数のドット状反射部からなる表示部が形成された導光板と、この導光板の一辺の端面に沿って複数の発光素子が配列されてなる光源とを備え、
各ドット状反射部の反射面は、前記光源が設けられた端面側に向いた互いに平行に形成された平滑な平面であり、且つ、前記反射面の角度が、前記導光板の前記表示部が形成された面に対して45度以上60度以下であり、
前記表示部は、前記複数のドット状反射部が密に配置された部分と疎に配置された部分とによって前記導光板に形成された前記複数のドット状反射部からの反射光が所定のパターンをなすことが視認できるように形成され、
前記光源からの光を前記導光板の端面側から入射させ、前記ドット状反射部で前記表面側に反射させて表面側から出射させることによって、前記パターンを表示する表示装置。」に補正することを含むものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

イ 本件補正後の請求項1に係る補正は以下の補正内容からなる。
(ア)「光源」を、補正前の「導光板の少なくとも一方の端面側に設けられた少なくとも1つの」ものから、「導光板の一辺の端面に沿って複数の発光素子が配列されてなる」ものへと変更する。
(イ)補正前の「前記ドット状反射部の反射面」の「前記」を「各」に替える。
(ウ)「(各)ドット状反射部の反射面」について、「前記光源が設けられた端面側に形成された」ものから、「前記光源が設けられた端面側に向いた互いに平行に形成された面であり、且つ、前記反射面の角度が、前記導光板の前記表示部が形成された面に対して45度以上60度以下で」あるものへと変更する。
(エ)「表示部」について、「前記複数のドット状反射部が密に配置された部分と疎に配置された部分とによって前記導光板に形成された」ものへと変更する。

(2)補正の目的
上記(1)イ(ア)、「(イ)及び(ウ)」及び(エ)の補正内容は、それぞれ、いずれも本件補正前の請求項1に記載されていた、発明を特定するために必要な事項である「光源」、「ドット状反射部の反射面」及び「表示部」を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 刊行物に記載の事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である特開2002-328633号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 透光性を有し微小な凹部からなる反射ドットを複数形成しかつ側面に光源を配設した導光板、該導光板の背面に配設され導光板を透過する光を光電変換する太陽電池、該太陽電池の起電力を充電する二次電池、該二次電池から上記光源への通電を制御する制御手段を備えてなることを特徴とする光点式表示器。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透光性を有する導光板の裏面に微小な凹部からなる反射ドットを複数形成し、その側面からの光を反射ドットで反射させ表示面側に反射ドットの配列を光の点からなる表示体として表示する光点式表示器に係り、特に看板や表札として好適に使用することができる光点式表示器に関するものである。」

ウ 「【0002】
【従来の技術】従来、大型の表示装置でも僅かな光源で表示を行えて駆動回路を簡単にすることができるとともに、一部の光源が消灯した場合でも表示内容に欠陥が生じることのない表示装置として、光点式表示器が存在する。この光点式表示器は、アクリル等の透光性を有する導光板に、その表示面の反対面に微小な円錐形の凹部からなる反射ドットの配列で表示体を形成するとともに、導光板の一側面から光を入射し、反射ドットに光を反射させて導光板の表示面に明るい表示を行わせるものである。これは、ローコスト、高品質、かつ省エネルギーに対応した優れた表示装置である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この光点式表示器は、上述したごとく優れた表示器であるものの光源を点灯させるための電源を必要とすることから設置がある程度限られていた。すなわち、屋外等に設置する看板や表札として光点式表示器を用いることは容易ではなかった。
【0004】そこで本発明は、屋外等の電源の供給が困難な場所であっても看板や表札等の表示器として好適に使用することができるローコストで省エネルギーに対応した光点式表示器の提供を目的とする。」

エ 「【0008】
【発明の実施の形態】図1及び図2は、本発明の光点式表示器を看板として用いる第1の実施例を示しており、光点式表示器1は、アクリル等の合成樹脂からなる透光性を有する導光板2の下側面3に、複数個のLEDからなる光源4を配置するとともに、導光板2の背面には導光板2を透過する光を光電変換する太陽電池5を配設し、また太陽電池5の起電力を充電する二次電池6と、周囲の明るさを検知して暗くなると二次電池6から光源4へ通電して点灯させ、明るくなると光源4への通電を停止する明るさセンサー7を設けている。8は、これらを収納する外装ケースである。
【0009】導光板2は、その側面3と連設する導光板2の裏面9(図1の奥側)に、図2に示す表示体となる多数の微小な凹部からなる「カラオケ」の文字からなる反射ドット群10を形成するとともに、側面3から入射する光源4からの光を反射ドット群10で反射し、これを導光板2の表示面11側に光の表示体として表示するものである。
【0010】上記太陽電池5は、その表面が黒色などの暗色系の色調を備えることで、光源4の非点灯時には導光板2を通して表示面11には暗色の背景のみが表れ、また光源4の点灯時には暗色の背景の中に反射ドット群10の表示体が浮き出て明るく表示されるものである。」

オ 「【0011】図3は、導光板2裏面9の反射ドット群10を拡大したものであり、光源4からの光が入射する下側面3と平行に反射ドット12が複数の列を成している。そして反射ドット12は、図4に示すごとく、裏面9と平行な面で切断した横断面形状が楕円(若しくは円)で深くなるほど幅径が小さくなる椀形状(若しくは錐体、鍋底型等でもよい)で、かつその長軸が光源4からの光の進行方向と直交するように配置されている。その反射ドット12の寸法・配列の一例としては、短軸が135μmで長軸が185μm、深さが116μm、長軸方向のピッチが500μmで短軸方向のピッチが500μmとするものである。」

カ 「【0013】また、光の進行方向と直交する方向の反射ドット12の列は、1列ごとに反射ドット12が互い違いになるように配置するもので、このように反射ドット12を配置することで、反射ドットと反射ドットの隙間に無駄に光を透過させることなくほぼ全域に亘って効率よく反射ドット12に光を反射させることができるものである。そして、反射ドット12をこのような配列とすることで、反射ドットをさらに粗く配置してもよくなり、これにより外部からの光が反射ドットに反射することによる表示体の白濁化現象をさらに一層防止することができる。この反射ドット12を導光板2に形成する手段としては、レーザー加工、エッチング、切削加工、樹脂成形等があるが、反射ドットの幅径やピッチを自在に制御することができ、かつ表示体の白濁化現象を防止するためにも、加工面を鏡面状にきわめて平滑にすることが必要であり、それからしてレーザー加工が適している。」

キ 「【0016】尚、上述した実施例にあっては、反射ドットの横断面形状を円、楕円として説明したが、これ以外にも図6に示すごとく、長円、ひょうたん形、繭形等の短軸と長軸を有する椀形状、錐体形状、鍋底形状等であっても同様の効果を発揮し得るものである。」

ク 上記オ、図1から、光源4からの光が入射する、導光板の下側面3側に沿って複数の光源4が並んでいることが看取される。

ケ 上記アないしクから、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「透光性を有し微小な凹部からなる反射ドットを裏面に複数形成した導光板、該導光板の下面側に沿って並べて配置された複数個のLEDからなる光源、該導光板の背面に配設され導光板を透過する光を光電変換する太陽電池、該太陽電池の起電力を充電する二次電池、該二次電池から上記光源への通電を制御する制御手段を備え(上記ア、ク参照。)、
前記光源からの光を前記反射ドットで反射して、該反射ドットの配列を光の点からなる表示体として表示面側に表示する、特に看板や表札として好適に使用することができる光点式表示器であって(上記イ参照。)、
前記光源の非点灯時には導光板を通して暗色の背景のみが表示面に表れ、また光源の点灯時には暗色の背景の中に反射ドット群の表示体が浮き出て明るく表示面に表示され(上記エ参照。)、
前記表示体の白濁化現象を防止するために、反射ドットの加工面を鏡面状にきわめて平滑にすることが必要である(上記カ参照。)光点式表示器。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である特開2001-312233号公報(以下「引用例2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】可視光を透過する板状の透明材料であって、該材料の少なくとも一つの平面の表面には画像或いは文字が加工され、前記材料の表面に加工された前記画像或いは文字は、前記材料の端面から該材料内に入射される光によって発光するように形成されていることを特徴とする透明ディスプレイ。
【請求項2】可視光を透過する板状の透明材料であって、該材料の少なくとも一つの平面の表面には画像或いは文字が点刻加工され、前記材料の表面に点刻加工された前記画像或いは文字は、前記材料の端面から該材料内に入射される光によって前記点刻加工部が発光するように形成されていることを特徴とする透明ディスプレイ。」

イ 「【0010】図1は、アクリルやガラスなど無色透明或いは可視光を透過する色付きの透明材料1(以下透明材と呼ぶ)の表面に、傷や切削加工などによる凹部や、透明な物質を付着させて生じた凸部がある場合を示している。このうち図1(A),図1(B)は、透明材1の上記凹凸を生じた面に外部から光が当たる場合、図1(C)は、透明材1の端面2から光が入射する場合を示している。」

ウ 「【0040】図3に、本実施例に使用する『透明ディスプレイ要素加工』のうち本実施例のディスプレイ方法に特に適していると考えられる『点刻加工』について説明する。点刻加工は、画像の予め設定した格子上の点の明度を読み取り、各点の明度に比例した深さで、円錐形の加工断面を持つ刃を用いて材料に点を彫り画像を再現する加工法である。」

エ 「【0098】また、透明ディスプレイ要素加工方法の加工条件を調整することにより、透明ディスプレイ要素加工部分から放出される光の量を緑について弱めることも出来る。透明ディスプレイから放出される光の強さは、加工領域の深さや単位面積当たりの加工面積によって調整できるので、光を弱めるには各加工法に合わせた方法で、加工深さを浅く、或いは単位面積当たりの加工面積を少なくする方向で加工条件を調整する。」

オ 上記アないしエから、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「可視光を透過する板状の透明材料であって、該材料の少なくとも一つの平面の表面には画像或いは文字が、刃を用いて材料に点を彫る点刻加工され、前記材料の表面に点刻加工された前記画像或いは文字は、前記材料の端面から該材料内に入射される光によって前記点刻加工部が発光するように形成されている透明ディスプレイであって(上記アないしウ参照。)、
放出される光の強さを、加工領域の深さや単位面積当たりの加工面積によって調整できる透明ディスプレイ(上記エ参照。)。」

(3)本願優先日前に頒布された刊行物である実願昭51-13833号(実開昭52-106086号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている(平成22年7月27日付け審尋において引用文献4として引用されたものである。)。
ア 「2 実用新案登録請求の範囲
光を照射する光源と、該照射してなる光の透過方向に対して傾斜切り込み部を設けると共に、該傾斜切り込み部を光の照射方向と直角方向より観察可能とせしめるよう構成してなる表示用パネルと、を具えたことを特徴とする表示装置。」(1頁3?8行)

イ 「本考案はかかる従来の欠点を解消しようとするものである。本考案の主たる目的はパネルを極めて有効に活用してなる表示装置を提供するものである。本考案の要旨は、パネルに文字等のパターン形状の切り込みを設けて表示を効率的に行わしめるようにしたことにある。以下、図面により本考案を詳細に説明しよう。」(1頁20行?2頁6行)

ウ 「第1図は本考案の実施例を示す図である。アクリル板1は光を透過する性質を持つた表示用パネルであり、図に示す如き切り込み部10が設けられている。この切り込み部10にむけて外部からランプ2の光が照射される。第2図は断面図を示す。第1図では示さなかつたが、アクリル板1の表面には黒色塗装11が施されている。切り込み部10は、垂直切り込み部101と一定角度の傾斜を持つ傾斜切り込み部102とより成る。傾斜切り込み部102はランプ2の光が照射する方向に形成されている。
かかる構成によれば、ランプ2より照射された光は例えば凸レンズ3を(第1図では省略)通して平行光線に変換され、アクリル板1の側面に入射する。この平行光線はアクリル板1の内部を平行光線のままで透過し、その一部は傾斜切り込み部102の内面に到達する。この内面に到達した光は、この内面で反射し、アクリル板1の下方向にむかう。この結果、傾斜切り込み部102を下方向からみた場合、光の照射した部分が光つてみえることになり、従つて、表示機能を具えることになる。一方、ランプの照射方向と反対側から照射する光は傾斜切り込み部102に到達するが光は反対方向に反射するので見る事ができない。従つて、該アクリル板1によれば、傾斜切り込み部の側面方向から照射された光のみを表示可能とする。」(2頁7行?3頁13行)

エ アクリル板1の切り込み部を文字構成要素16、17(数字「12」)とした場合の実施例の平面図を示す第4図から、文字構成要素16、17のそれぞれが、多数の切り込み部の集まりであることが見て取れる。

オ 各傾斜切り込み部に到達する光は平行光であるところ(上記ウ参照。)、これを光の照射方向と直角方向より観察可能とせしめるように(上記ア参照。)反射するためには、一定角度の傾斜を持つ傾斜切り込み部のそれぞれは、入射する平行光に対して等しく45°の入射角度を有する、互いに平行な平面であることが当業者に明らかである。
また、そのような入射角度とするため、傾斜切り込み部のそれぞれが、表示用パネルの平面(表示面と対向する面)に対して45°の傾きで設けられることも当業者に明らかである。

カ 上記アないしオから、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「光を照射する光源と、光を透過する性質を持ち、前記光源が照射した光の透過方向に対して一定角度の傾斜を持つ傾斜切り込み部を設けると共に、該傾斜切り込み部を光の照射方向と直角方向より観察可能とせしめるよう構成してなる表示用パネルとを具えた表示装置であって(上記ア及びウ参照。)、
前記傾斜切り込み部のそれぞれは、表示用パネルの平面(表示面と対向する面)に対して45°の傾きで設けられた、互いに平行な平面であり(上記オ参照。)、
前記光源より照射された光は平行光線に変換され、前記表示用パネルの側面に入射し、前記表示用パネルの内部を平行光線のままで透過し、該平行光線の一部は傾斜切り込み部の内面に到達し、ここで反射して、前記表示用パネルの下方向にむかう結果、傾斜切り込み部を下方向からみた場合、光の照射した部分が光ってみえる表示機能を具え(上記ウ参照。)、
前記傾斜切り込み部と垂直切り込み部とよりなる切り込み部は(上記ウ参照。)、多数集まって文字構成要素をなす(上記エ参照。)表示装置。」

3 対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1における
「微小な凹部からなる反射ドット」、
「『微小な凹部からなる反射ドット』が『複数形成』された構成」、
「透光性を有し微小な凹部からなる反射ドットを裏面に複数形成した導光板」、
「該導光板の下面側に沿って並べて配置された複数個のLEDからなる光源」
及び
「『該導光板の下面側に沿って並べて配置された複数個のLEDからなる光源』からの光を導光板の裏面に複数形成した『反射ドットで反射して、該反射ドットの配列を光の点からなる表示体として表示面側に表示する、特に看板や表札として好適に使用することができる光点式表示器』」は、
それぞれ、本願補正発明における
「『反射面を有するドット状の切欠きで』『構成される』『ドット状反射部』」、
「反射面を有するドット状の切欠きでそれぞれ構成される複数のドット状反射部からなる表示部」、
「反射面を有するドット状の切欠きでそれぞれ構成される複数のドット状反射部からなる表示部が形成された導光板」、
「この導光板の一辺の端面に沿って複数の発光素子が配列されてなる光源」
及び
「前記光源からの光を前記導光板の端面側から入射させ、前記ドット状反射部で前記表面側に反射させて表面側から出射させることによって、前記パターンを表示する表示装置。」に相当する。

(2)引用発明1の「反射ドット」は、表示体の白濁化現象を防止するために、その加工面を鏡面状にきわめて平滑にすることが必要である。
よって、引用発明1の「『反射ドット』の『加工面』」は、本願補正発明の「ドット状反射部の反射面」と、平滑な面である点で一致する。

(3)引用発明1において、「前記光源からの光を前記反射ドットで反射して、該反射ドットの配列を光の点からなる表示体として表示面側に表示する」のが、「微小な凹部からなる反射ドットが複数形成された構成」であることも、該反射ドットの配列が「何らかの(所定の)」パターンをなすことも、当業者に明らかである。
よって、引用発明1の「微小な凹部からなる反射ドットが複数形成された構成」は、本願補正発明の「表示部」の「導光板に形成された前記複数の『ドット状反射部(反射ドット)』からの反射光が『所定のパターン(該反射ドットの配列)』をなすことが視認できるように形成され」た構成に相当する。

(4)上記(1)ないし(3)から、本願補正発明と引用発明1とは、
「反射面を有するドット状の切欠きでそれぞれ構成される複数のドット状反射部からなる表示部が形成された導光板と、この導光板の一辺の端面に沿って複数の発光素子が配列されてなる光源とを備え、
各ドット状反射部の反射面は、平滑な面であり、
前記表示部は、前記複数のドット状反射部が前記導光板に形成された前記複数のドット状反射部からの反射光が所定のパターンをなすことが視認できるように形成され、
前記光源からの光を前記導光板の端面側から入射させ、前記ドット状反射部で前記表面側に反射させて表面側から出射させることによって、前記パターンを表示する表示装置。」
の点で一致し、次の相違点で相違している。

相違点1:
各ドット状反射部の反射面が、本願補正発明においては、前記光源が設けられた端面側に向いた互いに平行に形成された平面であり、且つ、前記反射面の角度が、前記導光板の前記表示部が形成された面に対して45度以上60度以下であるのに対して、引用発明1では、曲面であり、互いに平行に形成されたものでも、また、そのように角度が特定されたものでもない点。

相違点2:
前記表示部のパターンが、本願補正発明においては、前記複数のドット状反射部が密に配置された部分と疎に配置された部分とによってなされているのに対して、引用発明1ではそのような特定を有していない点。

4 判断
(1)相違点2について
まず、上記相違点2について判断する。
ア 引用発明1の光点式表示器は、看板や表札として使用されるものであるところ、絵柄、デザインに応じて、反射ドットを分布させることは、当業者が適宜なし得たことである。
イ 上記アのように構成した引用発明1において、該反射ドットを多く設けた箇所(単位面積当たりの反射ドットの数が多い箇所)で明るさが増し、少なく設けたところ(単位面積当たりの反射ドットの数が少ない箇所)で暗くなることは当業者に自明の事項であるから、明るさに応じて反射ドットの疎密に、ばらつきが生じることも当業者に自明である。
ウ 上記ア及びイから、引用発明1において、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得たことである。
エ 一方、引用例2には、次の引用発明2が記載されているものと認められる(上記「2(2)オ」参照。)。
「可視光を透過する板状の透明材料であって、該材料の少なくとも一つの平面の表面には画像或いは文字が、刃を用いて材料に点を彫る点刻加工され、前記材料の表面に点刻加工された前記画像或いは文字は、前記材料の端面から該材料内に入射される光によって前記点刻加工部が発光するように形成されている透明ディスプレイであって、
放出される光の強さを、加工領域の深さや単位面積当たりの加工面積によって調整できる透明ディスプレイ。」
オ 引用発明2から、「板状の透明材料(導光板)」における単位面積当たりの加工面積、すなわち、点刻加工により点を彫った面積を調整することにより光の強さを調整できることが明らかである。
カ 引用発明1の光点式表示器は、看板や表札として使用されるものであるところ、絵柄やデザインに応じ、光の強さを調整するに際して、その単位面積当たりの「加工面積(反射ドットを設けた面積)」を調整することにより光の強さを調整することは、引用発明2に基づいて当業者が容易になし得たことである。
キ 上記カのように構成した引用発明1において、単位面積当たりの加工面積の調整を単位面積当たりの反射ドットの数の調整により行うことは、当業者が適宜なし得たことである。そして、このように単位面積当たりの反射ドット数を調整したものにおいて、明るさに応じて「反射ドット(ドット状反射部)」の疎密にばらつきが生じることは当業者に自明のことである。
ク 上記キから、引用発明1において上記相違点2の本願補正発明の構成となすことは、当業者が引用発明2に基づいて容易になし得たことである。

(2)相違点1について
次に、上記相違点1について判断する。
ア 引用例3には、次の引用発明3が記載されているものと認められる(上記「2(3)カ」参照。)。
「光を照射する光源と、光を透過する性質を持ち、前記光源が照射した光の透過方向に対して一定角度の傾斜を持つ傾斜切り込み部を設けると共に、該傾斜切り込み部を光の照射方向と直角方向より観察可能とせしめるよう構成してなる表示用パネルとを具えた表示装置であって、
前記傾斜切り込み部のそれぞれは、表示用パネルの平面(表示面と対向する面)に対して45°の傾きで設けられた、互いに平行な平面であり、
前記光源より照射された光は平行光線に変換され、前記表示用パネルの側面に入射し、前記表示用パネルの内部を平行光線のままで透過し、該平行光線の一部は傾斜切り込み部の内面に到達し、ここで反射して、前記表示用パネルの下方向にむかう結果、傾斜切り込み部を下方向からみた場合、光の照射した部分が光ってみえる表示機能を具え、
前記傾斜切り込み部と垂直切り込み部とよりなる切り込み部は、多数集まって文字構成要素をなす表示装置。」
イ 引用発明1の「反射ドット」は、微小な凹部からなるものであるところ、引用発明3の「多数集まって文字構成要素をなす『切り込み部』」も微小な凹部であるのだから、引用発明1の反射ドットとして、引用発明3の切り込み部を採用することは当業者が容易になし得たことである。
ウ 上記イのように構成した引用発明1において、「切り込み部(反射ドット)」の傾斜切り込み部のそれぞれは、「表示用パネル(導光板)」の平面(表示面と対向する面)に対して45°の傾きで設けられた、互いに平行な平面である。
エ 上記ウの「傾斜切り込み部」は、光の照射方向と直角方向より観察可能とせしめるよう、光源からの光を反射する反射面であるから、「光源が設けられた端面(光が入射する側面)」側に向いた互いに平行に形成された平面であり、且つ、「反射面の角度が前記導光板の前記表示部が形成された面に対して45度以上60度以下である(『傾斜切り込み部のそれぞれは、表示用パネルの平面(表示面と対向する面)に対して45°の傾きで設けられた』ものである)」といえる。
オ したがって、引用発明1において、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、引用発明3に基づいて当業者が容易になし得たことである。

(3)効果について
本願補正発明の奏する効果は、引用発明1ないし3のそれぞれ奏する効果から、あるいは、引用発明1及び3のそれぞれ奏する効果から当業者が予測し得る程度のものである。

(4)したがって、本願補正発明は、当業者が引用発明1ないし3に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条5項の規定に違反するものであり、同法第159条1項で読み替えて準用する同法第53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成21年10月26日の二度目の手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1(1)」で本件補正前の請求項1として記載したとおりである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。

3 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1における
「微小な凹部からなる反射ドット」、
「『微小な凹部からなる反射ドット』が『複数形成』された構成」、
「透光性を有し微小な凹部からなる反射ドットを裏面に複数形成した導光板」、
「該導光板の下面側に沿って並べて配置された複数個のLEDからなる光源」
及び
「『該導光板の下面側に沿って並べて配置された複数個のLEDからなる光源』からの光を導光板の裏面に複数形成した『反射ドットで反射して、該反射ドットの配列を光の点からなる表示体として表示面側に表示する、特に看板や表札として好適に使用することができる光点式表示器』」は、
それぞれ、本願発明における
「『反射面を有するドット状の切欠きで』『構成される』『ドット状反射部』」、
「反射面を有するドット状の切欠きでそれぞれ構成される複数のドット状反射部からなる表示部」、
「反射面を有するドット状の切欠きでそれぞれ構成される複数のドット状反射部からなる表示部が形成された導光板」、
「この導光板の少なくとも一方の端面側に設けられた少なくとも1つの光源」
及び
「前記光源からの光を前記導光板の端面側から入射させ、前記ドット状反射部で前記表面側に反射させて表面側から出射させることによって、前記パターンを表示する表示装置。」に相当する。

(2)引用発明1の「反射ドット」は、表示体の白濁化現象を防止するために、その加工面を鏡面状にきわめて平滑にすることが必要である。
よって、引用発明1の「『反射ドット』の『加工面』」は、本願発明の「ドット状反射部の反射面」と、平滑な面である点で一致する。

(3)引用発明1において、「前記光源からの光を前記反射ドットで反射して、該反射ドットの配列を光の点からなる表示体として表示面側に表示する」のが、「微小な凹部からなる反射ドットが複数形成された構成」であることも、該反射ドットの配列が「何らかの(所定の)」パターンをなすことも、当業者に明らかである。
よって、引用発明1の「微小な凹部からなる反射ドットが複数形成された構成」は、本願補正発明の「表示部」の「導光板に形成された前記複数の『ドット状反射部(反射ドット)』からの反射光が『所定のパターン(該反射ドットの配列)』をなすことが視認できるように形成され」た構成に相当する。


(4)上記(1)ないし(3)から、本願発明と引用発明1とは、
「反射面を有するドット状の切欠きでそれぞれ構成される複数のドット状反射部からなる表示部が形成された導光板と、この導光板の少なくとも一方の端面側に設けられた少なくとも1つの光源とを備え、
前記ドット状反射部の反射面は、平滑な面であり、
前記表示部は、前記複数のドット状反射部からの反射光が所定のパターンをなすことが視認できるように形成され、
前記光源からの光を前記導光板の端面側から入射させ、前記ドット状反射部で前記表面側に反射させて表面側から出射させることによって、前記パターンを表示する表示装置。」
の点で一致し、次の相違点Aで相違している。

相違点A:
前記ドット状反射部の反射面が、本願発明においては、前記光源が設けられた端面側に形成された平面であるのに対して、引用発明1においては、平面でなく、そのように形成されたものではない点。

4 判断
上記相違点Aについて判断する。
(1)本願優先日前、光源と、前記光源側に向けられた平面状の反射面を有する窪みが設けられた導光板とからなる表示装置は、本願優先日前に周知である(例.引用例3(第1図、第2図を特に参照されたい。「切り込み部10」及び「傾斜切り込み部102」が、それぞれ「窪み」及び「光源側に向けられた平面状の反射面」に相当する。)、特表2003-519810号公報(【0031】及び図3参照。「三角プリズム207」及び「反射面215」が、それぞれ「窪み」及び「光源側に向けられた平面状の反射面」に相当する。)、実願昭50-150452号(実開昭52-63386号)のマイクロフィルム(4頁8行?5頁8行及び第5図参照。「凹点2」及び「斜切面4」が、それぞれ「窪み」及び「光源側に向けられた平面状の反射面」に相当する。)、特公昭48-10920号公報(2欄1?28行及び全図参照。「凹刻点2」及び「面2a」が、それぞれ「窪み」及び「光源側に向けられた平面状の反射面」に相当する。)。以下「周知技術」という。)。

(2)引用発明1において、反射ドットの反射面を「光源側に向けられた平面状の反射面」とすることは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明1及び周知技術のそれぞれ奏する効果から当業者が予測し得る程度のものである。

(4)したがって、本願発明は、当業者が引用発明1及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである。

(5)なお、請求人は、回答書において補正案を提示し、手続補正の機会が得られるよう要望する旨述べている。
しかしながら、手続補正の機会は特許法第17条の2第1項に規定されるように限定されているところ、再度、拒絶理由を通知して補正の機会を付与する法的根拠がなく、かつ、提示された補正案により手続補正を行ったとしても進歩性を有するとは認められず(ドット状反射部が平面視で略矩形状とされること及び反射面を斜辺とする三角断面を有することのいずれも、本願優先日前に周知であり(例.引用例3及び特表2003-519810号公報(図3及び図5A参照。)。)、三角断面の斜辺とその対向辺とのなす角を10?40度とする点は、発明の詳細な説明【0026】等を参酌しても臨界的な意義は認められず、数値の好適化以上の技術上の意義は認められず、この点にも進歩性は認められない。)、特許出願の際独立して特許を受けることができるとは認められないことから、そのような手続補正の機会を与えることはしない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明1及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-02 
結審通知日 2011-02-08 
審決日 2011-02-21 
出願番号 特願2008-512163(P2008-512163)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 藏田 敦之
星野 浩一
発明の名称 表示装置およびその製造方法、表示方法、ならびにブラインド装置およびブラインド方法  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 渡邊 隆  

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