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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1266549
審判番号 不服2011-21294  
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-03 
確定日 2012-11-22 
事件の表示 特願2009-257837「情報処理装置及び方法、並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月12日出願公開、特開2010- 33610〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

1.手続の経緯の概要
本件に係る出願(以下「本願」と記す。)は、
平成11年5月21日の出願(特願平11-142521号)を原出願とする特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(分割出願)として、
平成21年11月11日付けで出願されたものであって、
同日付けで審査請求がなされ、
平成22年6月15日付けで最初の拒絶理由通知(同年同月22日発送)がなされ、
同年8月17日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、
平成23年1月27日付けで最後の拒絶理由通知(同年2月1日発送)がなされ、
同年3月28日付けで意見書が提出され、
平成23年7月7日付けで拒絶査定(同年同月19日発送)がなされ、
同年10月3日付けで審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。
そして、
平成23年12月14日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、
平成24年2月2日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(同年同月7日発送)がなされ、これに対して
同年4月4日付けで回答書が提出されている。


2.明細書・拒絶理由・手続補正・請求人の主張等
(1)当初明細書等の記載
本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲・明細書又は図面(以下「当初明細書等」と記す。)には以下の記載がある。(下線は当審付与。)
「【請求項1】
所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、変更を行った時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理装置であって、
第1及び第2の表示領域を有する表示手段と、
時間を操作するための操作手段と、
上記操作手段の操作に応じて所定の時間が指定された場合、当該指定された時間に対応する上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を第2の領域に表示する制御手段と
を有する情報処理装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記表示手段の第2の表示領域に時間軸を更に表示し、かつ、当該時間軸上に現在の時間と上記指定された時間を識別可能に表示する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
上記制御手段は、上記表示手段の第2の表示領域に現在の時間を指定するための操作釦を更に表示し、
上記操作手段によって上記操作釦が操作された場合には、現在の時間に対応する上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、変更を行った時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理方法であって、
時間を操作するための操作手段の操作に応じて所定の時間が指定された場合、当該指定された時間に対応する上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御工程
を有する情報処理方法。
【請求項5】
所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、変更を行った時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
コンピュータに、
時間を操作するための操作手段の操作に応じて所定の時間が指定された場合、当該指定された時間に対応する上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御手順
を実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」

「【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係る情報処理装置は、所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、変更を行った時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理装置であって、第1及び第2の表示領域を有する表示手段と、時間を操作するための操作手段と、上記操作手段の操作に応じて所定の時間が指定された場合、当該指定された時間に対応する上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を第2の領域に表示する制御手段とを有する。
【0010】
本発明に係る情報処理方法は、上記目的を達成するため、所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、変更を行った時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理方法であって、時間を操作するための操作手段の操作に応じて所定の時間が指定された場合、当該指定された時間に対応する上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御工程を有する。
【0011】
本発明に係る記録媒体は、所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、変更を行った時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、コンピュータに、時間を操作するための操作手段の操作に応じて所定の時間が指定された場合、当該指定された時間に対応する上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御手順を実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。」

「【0090】
本実施の形態のラベルソフトは、デスクトップ上に表示された一つの付箋紙である上記ラベルに対して貼り付け可能なオブジェクトとして、文字や記号等のテキスト、静止画像や動画像等の画像、音声や楽音などのサウンドを扱う機能と、ラベルに貼り付けるテキストの編集機能と、ラベルに貼り付けるサウンドの録音/再生機能と、ラベルに貼り付ける画像の取り込み/表示機能と、デジタルカメラやパーソナルコンピュータに付加されたCCDカメラから画像を取り込むためのアプリケーションソフトウェアとの連係機能を有し、さらに、時間管理機能として変更履歴を持ったラベルを作成する機能と、当該時間管理機能についてジョグダイヤルをフルサポートする機能と、ラベルに貼り付けるオブジェクトとしてリンクを扱う機能等を備えている。
【0091】
これら機能を有する本実施の形態のラベルソフトが扱うデータ構成には、以下のプロジェクト、ラベル、オブジェクトの3つの項目がある。図26には、これらデータの相互の関係を示している。」

「【0093】
上記ラベルとは、デスクトップ上の一つの付箋紙に相当する。ラベルは、生成から破棄の間までの情報を持つ。当該情報は、ラベルのサイズ変更やカラー変更、テキスト修正、画像の変更、サウンドの変更など、ラベルの生成から破棄の間までにユーザがパーソナルコンピュータを介してラベルに対して行ったすべての操作の情報のことである。ただし、ラベルの画面上の位置情報は常に手前の表示するための属性を持つが、ラベル間、ウィンドウ間、ラベル-ウィンドウ間の上下関係の情報については保持しない。また、当該ラベルは、現在ラベルと過去ラベルと未来ラベルの3つの種類に分けることができる。現在ラベルとは、ラベルの作成時刻が現在時刻より手前で、且つ現在時刻の時点でまだ削除されていないラベルのことである。この現在ラベルにおける作成時刻と現在時刻、終了(削除)時刻の関係は、(作成時刻≦現在時刻<終了(削除)時刻)となる。過去ラベルとは、現在時刻の時点で既に削除されているラベルのことである。この過去ラベルにおける作成時刻、終了(削除)時刻、現在時刻の関係は、(作成時刻<終了(削除)時刻≦現在時刻)となる。未来ラベルとは、現在時刻の時点で未だ作成されていないラベルのことであり、作成時間に未来が設定されているラベルである。この未来ラベルにおける現在時刻、作成時刻、終了(削除)時刻の関係は、(現在時刻<作成時刻<終了(削除)時刻)となる。当該ラベルの詳細については後述する。
【0094】
上記オブジェクトとは、ラベル内に貼り込まれるデータのことであり、具体的にはテキストオブジェクト、画像オブジェクト、サウンドオブジェクト、リンクオブジェクトなどが挙げられる。当該オブジェクトの詳細については後述する。」

『【0098】
タイムビューモードは、本実施の形態のラベルソフトにより時間操作を行うことができるモードであり、以下の現在モード、過去モード、未来モードの三つの状態に分けられる。図28には現在(Present)モードにおけるデスクトップ画面の一構成例を、図29には過去(Past)モードにおけるデスクトップ画面の一構成例を、図30には未来(Future)モードにおけるデスクトップ画面の一構成例を示す。これら図28?図30に示すように、現在モード、過去モード、未来モードのそれぞれのモードでは、プロジェクトが含むラベルの現在の状態、過去の状態、未来の状態が表示される。なお、図28?図30のデスクトップ画面上には、現在モードであることを示す「Present」の文字と、過去モードであることを示す「Past」の文字と、未来モードであることを示す「Future」の文字がそれぞれ中央付近及び四隅に表示され、これによりユーザに対して現在モード、過去モード、未来モードの何れの状態となっているかを視認可能としている。また、このタイムビューモードの場合も、デスクトップ画面上のタスクバーTBのタスクトレイTT上には、本実施の形態のラベルソフトのアイコンILが表示されている。
【0099】
タイムビューモードに切り替わると、デスクトップ上(モニタが複数ある場合は、すべてのモニタ上)は、全ての領域が当該ラベルソフトによる画像で覆われ、ラベルはその上に表示される。この時、画面上には、現在操作している時間の表示/変更を可能にするための、タイムビューコンソールTVCが表示される。なお、当該タイムビューコンソールTVCは、標準では画面上部に表示されるが、図28?図30では画面下部に表示した例を挙げている。以下、当該タイムビューモードでデスクトップ表示がなされている状態の時間を、オペレーション時間と呼ぶ。』

「【0108】
図35に示すようなバー状態のタイムビューコンソールTVCのウィンドウは、ウィンドウタイトル部wtと、西暦ゲージ部cgと、現在ボタンbbと、オペレーション時間表示部otiと、アップダウンボタンtub及びtdbと、時間増減ステップ選択リストボックスsslと、時間増減ステップ選択メニューボタンsbと、メニューボタンmbと、クローズボタンcbと、ヘルプボタンhbと、回転アニメーション部raとからなる。なお、回転アニメーション部raは、当該バー状態のタイムビューコンソールTVCのウィンドウ両端に設けられる。」

『【0110】
上記西暦ゲージ部cgは、現在表示しているラベルが西暦でどの当たりの時間に相当するのかをユーザに対して一目瞭然にするために設けられている。この西暦ゲージ部cgは、画面にラベルが表示されている状態の時間が常にゲージの中央に来るように表示され、且つ、この時間を明確に示すために例えば黄色の縦ラインleも表示される。すなわち、当該西暦ゲージ部cgの中央部分の時間は、現実の時刻(実世界の現在時刻)ではなく、デスクトップ画面上に表示されている過去や未来(現在時刻でもよい)のラベルに対応した時間となる。図35の例の西暦ゲージ部cgは、画面にラベルが表示されている状態の時間(ゲージの中央となる時間)が例えば1999年11月である場合の表示例であり、ゲージの中央には黄色の縦ラインleが表示されている。また、当該西暦ゲージ部cgには、現実の時刻(表示されているラベルに対応する時間ではなく、実世界の現在時刻)を示すために、例えば赤色の縦ラインlrも表示される。この図35の例では、上記現実の時刻(実世界の現在時刻)が例えば1999年5月であることを示す上記赤色の縦ラインlrが西暦ゲージ部cgに表示されている。このように、西暦ゲージ部cgによれば、表示されているラベルに対応する時間(例えば1999年11月)と現実の時刻(例えば1999年5月)との位置関係が容易に認識できるようになされている。
【0111】
上記現在ボタンbbは、表示されているラベルに対応する時間から、現実の時刻(実世界の現在時刻)へ戻ることを指示するためのボタンである。したがって、当該現在ボタンbbを例えばマウス等にてクリックすることで、上記オペレーション時間が現在の時間(実世界の現在時刻)に戻る。なお、現在ボタンbbにより現在の時間(実世界の現在時刻)の戻ったとしても、当該ラベルソフトの状態(アプリケーションの状態)はタイムビューモードを維持する。
【0112】
上記オペレーション時間表示部otiは、画面にラベルが表示されている状態が、どの時刻の状態のものであるかを表示する部分である。この図35の例では、1999年11月11日15時27分9秒のときの、ラベルの状態を画上に表示していることになる。
【0113】
上記アップダウンボタンtub及びtdbは、上記オペレーション時間表示部otiに表示されている時間を、指定された時間増減単位(時間増減ステップ)で増減させるためのボタンである。ここで、例えばオペレーション時間表示部oti上にフォーカスがあり、当該オペレーション時間表示部oti上の年、月、日、時、分、秒の何れかがアクティブ状態になされているときに、上記アップボタンtubが押されると上記アクティブ状態になされている部分の値が、指定された時間増減単位(時間増減ステップ)で増加し、逆にダウンボタンtdbが押されると上記アクティブ状態になされている部分の値が、指定された時間増減単位(時間増減ステップ)で減少する。また、本実施の形態のラベルソフトにおいては、このアップダウンボタンtub及びtdbと同じ機能を、ホイール付きマウスの当該ホイールの回転やカーソルキーの上下、ジョグダイヤル4の回転操作等によっても実現可能である。すなわちこの場合は、オペレーション時間表示部oti上にフォーカスがあり、当該オペレーション時間表示部oti上の年、月、日、時、分、秒の何れかがアクティブ状態になされているときに、例えばホイール付きマウスの当該ホイールを回転させたり、キーボード上の上下カーソルキーを押したり、ジョグダイヤル4を回転させたりすると、当該アクティブ状態になされている部分の値が、指定された時間増減単位(時間増減ステップ)で増減(時間の増減)することになる。
【0114】
上記時間増減ステップ選択リストボックスsslは、オペレーション時間表示部otiの時間を増減する際の上記時間増減単位(時間増減ステップ)を表示する部分である。言い換えると、当該時間増減ステップ選択リストボックスsslには、上記オペレーション時間表示部oti上に表示されている年、月、日、時、分、秒等のうちで、アクティブ状態となっている時間表示部分に対応した時間増減単位(時間増減ステップ)が表示される。なお、図35の例において、時間増減ステップ選択リストボックスssl内に表示された時間増減単位(時間増減ステップ)の文字の後ろに付けられた「*」は、当該「*」が付けられた時間増減単位(時間増減ステップ)が現時点で選択されていることを示している。ここで、本実施の形態では、上記時間増減単位(時間増減ステップ)として、例えば100年、10年、1年単位、1月単位、1時間単位、1分単位、1秒単位、変化点単位などのがあり、当該時間増減ステップ選択リストボックスsslにはこれら時間増減ステップのうち何れかのステップが表示される。なお、変化点単位での時間増減とは、ユーザによりラベルに何らかの操作がなされて当該ラベルが変化した時点(例えばラベルの移動、サイズ変更、オブジェクトの修正等を行った時点、すなわちデスクトップ上のラベル状態が変化した時点)から、次の変化が発生した時点までを1単位として、時間を増減させることを意味する。このため、変化点の単位で時間を増減させる場合は、当該変化点での一回の時間の増減で変化する時間間隔は一定でない。』

「【0189】
上記ラベルファイルは、オブジェクト情報など個々のラベルに対する情報を持ち、一つのラベルに対し一つのファイルが存在する。上記プロジェクトアーカイブファイルは、プロジェクト情報とそのプロジェクトが含む複数のラベルの情報を一つのファイルに纏めたものであり、プロジェクトをエクスポートしたときに作成される。コンテンツは予め用意されたプロジェクトアーカイブであり、プロジェクト作成時に、新規に作成されるプロジェクトに対してコンテンツを含めることができる。上記プロジェクトファイルとそのプロジェクトに属するラベルファイルは、同一のフォルダに存在する。」

『【0192】
プロジェクトは、本実施の形態のラベルソフトの起動時、およびコンソールメニューから指定がなされたときに開かれる。なお、ラベルソフト起動時には、前回終了時に開かれていたプロジェクトが開かれる。プロジェクトが開かれた際には、そのプロジェクトに属するラベルが、時間情報と位置情報に基づいて、デスクトップ上に表示される。また、同時に二つ以上のプロジェクトを開くことはできず、このため、以前に開いていたプロジェクトがある場合には、そのプロジェクトはクローズされる。
【0193】
当該プロジェクトのクローズ時には、現在開いているプロジェクトが閉じられる。その際、開かれていたプロジェクトに属するラベルはすべて閉じられる。
【0194】
次に、プロジェクトのインポートとは、現在開いているプロジェクトに、アーカイブ形式で別のプロジェクトに含まれているすべてのラベルを追加することである。当該プロジェクトのインポートを行う場合、インポートメニューが指定されると、先ずファイルダイアログが開き、当該ファイルダイアログにてユーザが追加したいプロジェクトアーカイブファイルが指定される。当該プロジェクトアーカイブファイルが選択されると、各ラベルのアーカイブタイプをチェックするフィルタが実行される。ラベルのアーカイブタイプには、以下の「修正なし」、「現在時刻を開始時間に設定」、「開始時刻をユーザに尋ねる」のタイプが存在する。なお、「修正なし」のアーカイブタイプは、アーカイブの情報が修正されずににそのままインポートされる。
【0195】
開始時刻をユーザに尋ねる際には、インポート時の時刻設定用ダイアログとして、例えば図44に示すような、入力する時刻の説明と最低限指定すべき時間単位を指示するダイアログが表示される。ユーザからは、このダイアログにより、開始時刻が入力されることになる。
【0196】
次に、上記図44のダイアログにてユーザから開始時刻が入力されると、フィルタが実行された後に例えば図45に示すようなダイアログが開かれる。当該図45のダイアログは、そのプロジェクトの情報を表示するプロジェクトのインポートダイアログである。このとき、インポートが実行されると、現在開いているプロジェクトに選択されたプロジェクトアーカイブの全ラベルのデータがラベルファイルと共にコピーされる。
【0197】
ここで、インポートするラベルの中に、現在のプロジェクトに存在するラベルと同一の履歴を持つもの、または片方のすべての履歴が、もう一方の部分履歴に完全に一致するものが存在する場合は、例えば図46に示すようなインポート方法を指定するダイアログが表示される。この図46のダイアログ上には、完全に同一か、もしくはどちらが長い履歴を持つかが表示される。この図46の例では、「ラベルをインポートしない」、「インポートファイルのラベルで上書きする」、「ラベルのコピーを作る」の各項目の中から所望のものを選択することが可能となる。 次に、本実施の形態のラベルソフトでは、プロジェクトのエクスポートとして、プロジェクトに含まれるラベルを、他のプロジェクトに取り込める一つのアーカイブファイルにまとめて保存することができる。当該プロジェクトのエクスポート時には、例えば図47に示すようなプロジェクトのエクスポートのダイアログがデスクトップ上に表示される。この図47のダイアログ上では、ユーザにより、「エクスポートファイル名」、「エクスポートしたラベルは、現在のプロジェクトから削除するかどうか」、「すべてのラベルをエクスポートするか、指定された時間範囲に生成、削除時間が両方とも含まれるラベルをエクスポートするか」の各設定が行われ、これによりプロジェクトアーカイブファイルが作成される。なお、図47のダイアログの画面下部には、エクスポートされるラベルの数が表示される。ここでラベルのエクスポートとは、そのラベルのすべての履歴がエクスポートされることを意味する。
【0198】
次に、ユーザによりプロジェクトのプロパティが選択されると、本実施の形態のラベルソフトは、例えば図48に示すようなダイアログをデスクトップ上に表示する。このダイアログには、「プロジェクトフォルダ」、「プロジェクトコメント」、「プロジェクトの作成時間、最終更新時間」、「ラベルの数(全体、過去、現在、未来)」、「ラベルの存在範囲」の各項目が表示される。なお、「プロジェクトフォルダ」にはプロジェクトフォルダ名が表示され、「プロジェクトコメント」には新規作成時に設定されたプロジェクトの説明が表示される。この「プロジェクトコメント」内の情報は編集可能である。「ラベルの存在範囲」は、ラベルの存在範囲を示しており、全てのラベルの中で最も古い履歴(最も古いラベルの作成時刻)から、最も新しい履歴までの範囲を示す。削除時間が指定されていないラベルがある場合には、「削除時間が未定のラベルが存在する」の項目にチェックマークが付く。』

「【0202】
また、「新規作成」には、未来モード時の新規作成も含まれる。すなわち、タイムビューモードでは、未来に作成されるラベル(未来ラベル)を追加することができる。当該未来モード時の新規作成では、先ず、ラベルの新規作成がユーザにより選択されると、図49に示すような新規ラベルのプロパティ画面が表示される。この図49のプロパティ画面上で、ユーザにより、ラベルの開始時間、終了時間、繰り返しの設定、アラームの設定がなされることにより、未来ラベルの新規作成が可能となる。なお、図49のプロパティ画面の表示時間のデフォルト値は、その時点のオペレーション時間であり、また、継続にはチェックがなされている(ON)。」

『【0209】
上記「テキストの修正」では、ユーザにより、メニューボタンMB、またはコンテキストメニューmbからテキスト編集の項目が選択され、さらにメニューが選択されると、例えば図50に示すような、現在のテキストを持つ編集用ダイアログが開かれる。上記図50のダイアログにおいて、テキストの編集メニューには、「ファイル」、「編集」、「挿入」の各メニューがある。上記「ファイル」には、「インポートファイル」、「テキスト編集の終了」があり、上記「インポートファイル」ではテキストファイルの選択と挿入が可能であり、「テキスト編集の終了」ではテキスト編集画面を閉じ、ラベルにテキスト内容を反映させることができる。上記「編集」のメニュー項目には、「元に戻す」、「切り取り」、「コピー」、「貼り付け」、「削除」、「全て選択」の各項目がある。上記「挿入」のメニュー項目には、「現在時刻と日付」、「作成時刻と日付」の各項目があり、上記「現在時刻と日付」では現在(実時間)の日時が挿入され、「作成時刻と日付」ではラベルの作成時間が挿入される。』

『【0211】
上記「画像の修正」において、本実施の形態のラベルソフトでは、既存の画像オブジェクトに対して修正することはできない。したがって、画像を変更(修正)するには、画像オブジェクトの挿入を行うことで、既存の画像オブジェクトを置き換えることになる。』

『【0221】
次に、上記ラベルに対する操作の「プロパティ」では、前記図49に示したような、ラベルのプロパティダイアログが表示される。当該プロパティの表示内容としては、「ラベル番号」、「履歴数」、「有効期間」、「繰り返しラベルの設定」、「アラームの設定」がある。上記「ラベル番号」には、プロジェクト内でユニークなラベル番号を表示する。このラベル番号は、本実施の形態のラベルソフトが管理しており、ユーザが変更することはできない。上記「履歴数」には、ラベルが作成されてから修正された回数を表示する。上記「有効期間」には、「作成時間」と「削除時間」がある。上記「作成時間」には、ラベルの作成時間を表示する。この「作成時間」は未来ラベルの新規作成時以外では、変更できない。上記「削除時間」には、ラベルが削除される時間を表示する。この「削除時間」は、継続をチェックしたときのみ有効となる。上記「繰り返しラベルの設定」には、「繰り返しの間隔と単位」、「次回の表示開始時間」、「次回の表示終了時間」がある。上記「アラームの設定」には「アラームが起動する時間」がある。
【0222】
また、本実施の形態のラベルソフトでは、上記ラベルのプロパティ画面においてラベルに対する以下の「継続・非継続」、「繰り返し設定」、「アラーム設定」の各設定内容を変更することができる。上記「継続・非継続」項目において、非継続の場合はラベルの削除時間を指定することができ、指定時間になるとラベルが自動的に削除される。上記「繰り返し設定」項目では、図49中の「定期繰り返しラベルとする」をチェックすると、繰り返しの設定を行うことができる。また、「繰り返し設定」項目では、繰り返しの間隔、表示開始時間、表示終了時間を設定することができる。上記「アラーム設定」項目では、ラベルの開始時刻に対する相対時刻でアラーム表示する時刻が設定される。なお、実際のアラーム時刻は、アラーム設定の下に表示される。
【0223】
また、本実施の形態のラベルソフトでは、同一のラベルにおいて一定間隔毎に表示、非表示を繰り返すことができる。繰り返しラベルにするには、図49のラベルのプロパティ画面で「定期繰り返しラベルとする(定期的に繰り返す)」をチェックし、繰り返し間隔と繰り返しの表示時間と非表示時間を設定する。例えば、毎日12:00に5分間ラベルを表示する場合、以下のような設定になる。
【0224】
繰り返し: 1日間隔
次回表示開始時刻:YYYY/MM/DD(現在の日付)12:00:00
次回表示終了時刻:YYYY/MM/DD(現在の日付)12:05:00
なお、本実施の形態のラベルソフトにおいて、複数のラベルに対して例えば動画の各コマ画像をそれぞれ貼り付け、これら各ラベルを同じ位置で短時間に順次表示するように設定すれば、アニメーションのような表示が可能となる。
また、本実施の形態のラベルソフトでは、アラームを用いることにより、特定のラベルの開始前や開始後にユーザにアラームイベントを通知することができる。アラーム通知を行うためには、図49のラベルのプロパティ画面でアラームをチェックし、アラーム時間を設定する。このようにアラーム時間が設定されると、当該アラームで指定された時間になったときに、図58に示すようなアラームダイアログがデスクトップに表示される。このアラームダイアログには、アラーム時刻とラベル生成時刻が表示される。このアラームダイアログを操作することにより、ユーザはアラームを消すか、もう一度鳴らすかを選択することが可能となる。また、図58のダイアログ中の「ダイアログを閉じた後に、ラベル生成時間をタイムビュー」の項目をチェックしてOKボタンを押すと、タイムビューモードに入り、オペレーション時間がラベル生成時刻に設定される。』

「【0258】
以上説明したような機能を有する本実施の形態のラベルソフトによれば、デスクトップ上のラベルに対する操作を全て保存することで、過去の任意の時点のラベルの状態を再現可能となっている。なお、デスクトップ上のラベルの状態を保存する方法としては、ある時点での複数のラベルの情報を全て保存する方法と、ある時点でのラベルの情報の差分のみ保存する方法とが考えられ、ラベルの状態を保存するタイミングとしては、一定間隔で定期的に保存を行う方法と、ラベルに変化があった時点で保存する方法とがある。また、上記ラベルの情報の差分を保存する方法の場合は、ラベルに対する操作を保存する方法(すなわち操作履歴を保存)と、ラベルに対する操作の前後におけるラベルの情報の差分を保存する方法(すなわちラベル情報の変化部分を保存)とがある。」

「【0260】
さらに、以上説明した機能を有する本実施の形態のラベルソフトによれば、ラベルに時間の概念を持たせたことにより、ラベルとアラームを対応付け、設定時間になったときにアラームを鳴らすようなことが可能となっている。このアラームは、現在のデスクトップ表示時間に関係なしに鳴り、このため、過去や未来のラベルの状態を表示しているときでも、当該アラームが鳴ることになり、その結果重要なラベルの情報を見逃すことがなくなる。なお、ラベルに対するアラームは、ラベル一つ一つに付けることが可能であり、通常のアラームと異なり、作成時間の前に鳴らすだけでなく、ラベルが作成された後に鳴らすことも可能であり、さらに、削除されたラベルに対してアラームを鳴らすことも可能である。そのため、例えば1年後などにアラームを鳴らすことが可能となり、例えば、記念日の一年後にアラームを鳴らすというようなことも可能となる。」

「【0263】
図69には、図68のステップS132の操作記録処理の詳細な流れを示す。この図69において、操作記録処理が開始されると、CPU51は、ステップS141として、ラベルに対して何らかの操作がユーザによりなされたか否かの判定を行う。このステップS141にてラベルに対する操作が成されていないと判定した場合には、当該操作記録処理を終了し、図68のステップS133の処理へ進む。一方、ステップS141にてラベルに対する操作がなされたと判定した場合、CPU51は、ステップS142の処理に進み、ここで操作が成される前と後のラベルの差分情報を計算する。その後、CPU51は、ステップS143として、上記ラベルに対する操作が、現在ラベルの操作(操作履歴)か、又は、未来ラベルの操作(操作の予約)かを判定する。このステップS143にて現在ラベルの操作であると判定した場合、CPU51は、ステップS144において、ラベルの差分情報に現在時間を付加して保存する。一方、ステップS43にて未来ラベルの操作であると判定した場合、CPU51は、ステップS145において、ラベルの差分情報に予約時間を付加して保存する。これらステップS144、145の処理後、CPU51は、当該操作記録処理を終了し、図68のステップS133の処理に進む。」

(2)平成22年8月17日付け手続補正
上記平成22年8月17日付けの手続補正書は特許請求の範囲及び明細書の段落【0009】【0010】【0011】を以下のとおりに補正するものである。
「 【請求項1】
所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理装置であって、
第1及び第2の表示領域を有する表示手段と、
時間を指定するための操作手段と、
上記操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記指定された時間を第2の領域に表示する制御手段と
を有する情報処理装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記表示手段の第2の表示領域に時間軸を更に表示し、かつ、当該時間軸上に現在の時間と上記指定された時間を識別可能に表示する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
上記制御手段は、上記表示手段の第2の表示領域に現在の時間を指定するための操作釦を更に表示し、
上記操作手段によって上記操作釦が操作された場合には、現在の時間に対応する上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現する請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項4】
上記ラベル情報は上記第1の領域上での位置情報を更に有し、
上記制御手段は上記ラベル情報の状態を上記位置情報に基づく位置を含めて再現して表示する請求項1乃至3の何れか1項記載の情報処理装置。
【請求項5】
上記オブジェクト情報は、リンクを含む請求項1乃至4の何れか1項記載の情報処理装置。
【請求項6】
所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理方法であって、
時間を指定するための操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御工程
を有する情報処理方法。
【請求項7】
所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
コンピュータに、
時間を指定するための操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御手順
を実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」

「 【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係る情報処理装置は、所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理装置であって、第1及び第2の表示領域を有する表示手段と、時間を指定するための操作手段と、上記操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記指定された時間を第2の領域に表示する制御手段とを有する。」

「 【0010】
本発明に係る情報処理方法は、上記目的を達成するため、所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理方法であって、時間を指定するための操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御工程を有する。」

「 【0011】
本発明に係る記録媒体は、所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、コンピュータに、時間を指定するための操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御手順を実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。」

(3)平成22年8月17日付けの意見書
上記平成22年8月17日付けの意見書においては、以下のとおりその補正の根拠を説明している。
『【意見の内容】

<中略>

(2)本願発明
本願発明は、情報処理装置及び方法、並びに記録媒体に関するものであり、本意見書と同時に提出した手続補正書の特許請求の範囲に記載の通りの構成を有するものである。
すなわち、上記手続補正書により補正した特許請求の範囲の請求項1に記載されている発明は、
「所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理装置であって、
第1及び第2の表示領域を有する表示手段と、
時間を指定するための操作手段と、
上記操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記指定された時間を第2の領域に表示する制御手段と
を有する」
情報処理装置である。
上記補正は、本願明細書の段落〔0093〕の記載等に基づくものである。
上記手続補正書により補正した特許請求の範囲の請求項4に記載されている発明は、
「〔請求項4〕
上記ラベル情報は上記第1の領域上での位置情報を更に有し、 上記制御手段は上記ラベル情報の状態を上記位置情報に基づく位置を含めて再現して表示する請求項1乃至3の何れか1項記載の情報処理装置。」
である。
上記補正後の請求項4は、本願明細書の段落〔0192〕、〔0224〕、図面の図3、図6?図8、図13等の記載内容に基づくものである。
上記手続補正書により補正した特許請求の範囲の請求項5に記載されている発明は、
「〔請求項5〕
上記オブジェクト情報は、リンクを含む請求項1乃至4の何れか1項記載の情報処理装置。」
である。
上記補正後の請求項5は、本願明細書の段落〔0094〕の記載等に基づくものである。

<後略> 』

(4)原審拒絶理由
上記平成23年1月27日付けの最後の拒絶理由通知で通知された理由(以下「原審拒絶理由」と記す。)は、以下のとおりのものである。

『 理 由

平成22年8月17日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


・請求項 1,6?7

・「ラベル情報」が、「当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有する」点。
・「上記変更履歴に基づき」当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示する点。

・備考
上記記載の根拠とされる明細書段落【0093】には、
「【0093】
上記ラベルとは、デスクトップ上の一つの付箋紙に相当する。ラベルは、生成から破棄の間までの情報を持つ。当該情報は、ラベルのサイズ変更やカラー変更、テキスト修正、画像の変更、サウンドの変更など、ラベルの生成から破棄の間までにユーザがパーソナルコンピュータを介してラベルに対して行ったすべての操作の情報のことである。ただし、ラベルの画面上の位置情報は常に手前の表示するための属性を持つが、ラベル間、ウィンドウ間、ラベル-ウィンドウ間の上下関係の情報については保持しない。また、当該ラベルは、現在ラベルと過去ラベルと未来ラベルの3つの種類に分けることができる。現在ラベルとは、ラベルの作成時刻が現在時刻より手前で、且つ現在時刻の時点でまだ削除されていないラベルのことである。この現在ラベルにおける作成時刻と現在時刻、終了(削除)時刻の関係は、(作成時刻≦現在時刻<終了(削除)時刻)となる。過去ラベルとは、現在時刻の時点で既に削除されているラベルのことである。この過去ラベルにおける作成時刻、終了(削除)時刻、現在時刻の関係は、(作成時刻<終了(削除)時刻≦現在時刻)となる。未来ラベルとは、現在時刻の時点で未だ作成されていないラベルのことであり、作成時間に未来が設定されているラベルである。この未来ラベルにおける現在時刻、作成時刻、終了(削除)時刻の関係は、(現在時刻<作成時刻<終了(削除)時刻)となる。当該ラベルの詳細については後述する。」
とのみ記載され、ラベルそのものの生成、削除についての記載は認められるものの、オブジェクト情報の変更に関する「変更履歴」については一切開示が無い。
なお、「変更履歴」に関しては、明細書段落【0090】に、
「【0090】
本実施の形態のラベルソフトは、デスクトップ上に表示された一つの付箋紙である上記ラベルに対して貼り付け可能なオブジェクトとして、文字や記号等のテキスト、静止画像や動画像等の画像、音声や楽音などのサウンドを扱う機能と、ラベルに貼り付けるテキストの編集機能と、ラベルに貼り付けるサウンドの録音/再生機能と、ラベルに貼り付ける画像の取り込み/表示機能と、デジタルカメラやパーソナルコンピュータに付加されたCCDカメラから画像を取り込むためのアプリケーションソフトウェアとの連係機能を有し、さらに、時間管理機能として変更履歴を持ったラベルを作成する機能と、当該時間管理機能についてジョグダイヤルをフルサポートする機能と、ラベルに貼り付けるオブジェクトとしてリンクを扱う機能等を備えている。」(下線は本通知で付加。)
と記載されているが、当該記載からは、当該変更履歴が、「オブジェクト情報の変更が行われた時刻」であるか否かは不明である。
そして上記点は当業者にとって自明な事項ともいえず、したがって上記点は当初明細書等に記載が無いものというべきである。

・請求項 4
・備考
記載の根拠とされる段落【0192】、【0224】、図3,6?8,13のいずれにも、「ラベル情報」が「第1の領域上での位置情報」を有することについては一切開示が無く、当該点も当業者にとって自明な事項ではない。

なお、当該補正がなされた請求項1乃至7に記載した事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないことが明らかであるから、当該請求項に係る発明については新規性進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。

最後の拒絶理由通知とする理由

この拒絶理由通知は、最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知するものである。』

(5)平成23年3月28日付けの意見書
上記平成23年3月28日付けの意見書における意見の内容は概略以下のとおりである。

『【意見の内容】
(1)拒絶理由の要点
審査官は、平成23年1月27日(発送日:平成23年2月1日)付けの拒絶理由通知書において、平成22年8月17日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、との旨を指摘されました。
しかしながら、本件出願人は、上記拒絶の理由には承服できないので、以下の通り意見を述べます。
(2)本願発明
本願発明は、情報処理装置及び方法、並びに記録媒体に関するものであり、平成22年8月17日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載の通りの構成を有するものです。
すなわち、上記手続補正書により補正した特許請求の範囲の請求項1に記載されている発明は、
「所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有するラベル情報を表示可能な情報処理装置であって、
第1及び第2の表示領域を有する表示手段と、
時間を指定するための操作手段と、
上記操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記指定された時間を第2の領域に表示する制御手段と
を有する」
情報処理装置です。
上記手続補正書により補正した特許請求の範囲の請求項4に記載されている発明は、
「〔請求項4〕
上記ラベル情報は上記第1の領域上での位置情報を更に有し、
上記制御手段は上記ラベル情報の状態を上記位置情報に基づく位置を含めて再現して表示する請求項1乃至3の何れか1項記載の情報処理装置。」
です。
上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項6には、上記補正された請求項1の情報処理装置に対応する情報処理方法が記載され、上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項7には、上記補正された請求項6の情報処理方法における工程
(手順)をコンピュータに実行させるためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体が記載されています。
(3)特許法第17条の2第3項について
上記拒絶理由通知書において、審査官は、平成22年8月17日付けでした手続補正は上記当初明細書等(願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでない点として、請求項1,6?7に対して、
・「ラベル情報」が、「当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有する」点、
・「上記変更履歴に基づき」当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示する点、
を指摘されました。
ここで、本願発明におけるラベルが「変更履歴」を有する点については、本願明細書の段落〔0090〕に、本実施の形態のラベルソフトは、「時間管理機能として変更履歴を持ったラベルを作成する機能」を備える旨が明記されています。また、段落〔0093〕には、「ラベルは、生成から破棄の間までの情報を持つ。当該情報は、ラベルのサイズ変更やカラー変更、テキスト修正、画像の変更、サウンドの変更など、ラベルの生成から破棄の間までにユーザがパーソナルコンピュータを介してラベルに対して行ったすべての操作の情報のことである。」との旨が記載されています。このことから、ラベルは、ラベルに対して行ったサイズ変更やカラー変更、テキスト修正、画像の変更、サウンドの変更などの変更の情報、すなわち、変更(履歴)情報を持つことが明らかであると思料します。
このようなラベルの生成から破棄の間までの変更の情報、すなわち変更履歴の情報について、「履歴」という言葉自体にも、時間的な前後関係あるいは順序を持った出来事、の意味を含んでいますが、ラベルが時間(ラベルの作成時刻や変更操作を行った時刻等)の情報を有する点は、本願明細書の段落〔0093〕、〔0098〕、〔0099〕、〔0110〕?〔0114〕、〔0192〕?〔0197〕、〔0202〕、〔0209〕、〔0221〕?〔0224〕、〔0258〕?〔0260〕等の記載から自明であるものと思料します。
すなわち、段落〔0093〕には、「この現在ラベルにおける作成時刻と現在時刻、終了(削除)時刻の関係は、(作成時刻≦現在時刻<終了(削除)時刻)となる。」、「この過去ラベルにおける作成時刻、終了(削除)時刻、現在時刻の関係は、(作成時刻<終了(削除)時刻≦現在時刻)となる。」、「この未来ラベルにおける現在時刻、作成時刻、終了(削除)時刻の関係は、(現在時刻<作成時刻<終了(削除)時刻)となる。」との旨が記載されており、ラベルはその作成時刻を現在時刻や終了(削除)時刻と比較することにより、現在ラベルと過去ラベルと未来ラベルの3つの種類に分けられ、ラベル自体がその作成時刻の情報を有することが必要です。段落〔0099〕には、タイムビューモードに切り替わると、画面上にラベルが表示されると共に、「現在操作している時間の表示/変更を可能にするための、タイムビューコンソールTVCが表示される」との旨が記載され、ラベルが時間の情報を有していて、時間操作に応じてラベルが表示されることが明らかです。また、段落〔0110〕には、「上記西暦ゲージ部cgは、現在表示しているラベルが西暦でどの当たりの時間に相当するのかをユーザに対して一目瞭然にするために設けられている。この西暦ゲージ部cgは、画面にラベルが表示されている状態の時間が常にゲージの中央に来るように表示され、且つ、この時間を明確に示すために例えば黄色の縦ラインleも表示される。すなわち、当該西暦ゲージ部cgの中央部分の時間は、現実の時刻(実世界の現在時刻)ではなく、デスクトップ画面上に表示されている過去や未来(現在時刻でもよい)のラベルに対応した時間となる。」との旨が記載され、段落〔0111〕には、「上記現在ボタンbbは、表示されているラベルに対応する時間から、現実の時刻(実世界の現在時刻)へ戻ることを指示するためのボタンである。」との旨が記載され、段落〔0112〕には、「上記オペレーション時間表示部otiは、画面にラベルが表示されている状態が、どの時刻の状態のものであるかを表示する部分である。」との旨が記載されているのみならず、段落〔0192〕には、「プロジェクトが開かれた際には、そのプロジェクトに属するラベルが、時間情報と位置情報に基づいて、デスクトップ上に表示される。」との旨が記載されており、これらの記載からも、ラベルが時間情報を有することが明らかであると思料します。なお、全ラベルデータの集合であるプロジェクトについては、段落〔0198〕や図48には、デスクトップ上に表示されるダイアログの項目として、「プロジェクトの作成時間、最終更新時間」が挙げられており、プロジェクトについても作成時間や最終更新時間を情報として持つことが明らかです。さらに、段落〔0202〕や図49には、新規ラベルのプロパティ画面上で、ユーザにより、ラベルの開始時間、終了時間、繰り返しの設定、アラームの設定がなされることさ記載され、段落〔0209〕や図50には、ラベルに対する操作の「オブジェクトの修正」で、ユーザによりメニューが選択されて、現在のテキストを持つ編集用ダイアログが開かれ、テキストの挿入メニューには、「現在時刻と日付」、「作成時刻と日付」の各項目があり、上記「現在時刻と日付」では現在(実時間)の日時が挿入され、「作成時刻と日付」ではラベルの作成時間が挿入される、との旨が記載されています。段落〔0221〕には、ラベルに対する操作の「プロパティ」の表示内容として「有効期間」があり、「有効期間」には、「作成時間」と「削除時間」があることが記載され、「作成時間」には、ラベルの作成時間を表示し、「削除時間」には、ラベルが削除される時間を表示することが記載されています。以上の記載からも、ラベルが時間情報を有することが明らかであり、ラベルが有する時間情報に基づいて、指定された時間のラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示することが明らかであるものと思料します。
ところで、段落〔0090〕には「時間管理機能として変更履歴を持ったラベルを作成する機能」と記載されています。この時間管理機能として「変更履歴」を持つとは、明細書中の具体的な一例として、段落〔0114〕等に記載された「変化点」を、段落〔0258〕等に記載のように「保存」して、段落〔0221〕等に記載のように「履歴」として持っている、ということを意味します。ここで段落〔0114〕に記載の「変化点」とは、ユーザによりラベルに何らかの操作がなされて当該ラベルが変化した時点(例えばラベルの移動、サイズ変更、オブジェクトの修正等を行った時点、すなわちデスクトップ上のラベル状態が変化した時点)のことであり、本願発明におけるオブジェクト情報の変更が行われた時間に相当するものです。また、段落〔0258〕等には、ラベルの状態を保存するタイミングとして、ラベルに変化があった時点で「保存」することが記載されています。
すなわち、本願の請求項1等に記載の「ラベル情報」が「オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有する」点につきまして、明細書の段落〔0114〕の「ここで、本実施の形態では、上記時間増減単位(時間増減ステップ)として、例えば100年、10年、1年単位、1月単位、1時間単位、1分単位、1秒単位、変化点単位などのがあり、当該時間増減ステップ選択リストボックスsslにはこれら時間増減ステップのうち何れかのステップが表示される。なお、変化点単位での時間増減とは、ユーザによりラベルに何らかの操作がなされて当該ラベルが変化した時点(例えばラベルの移動、サイズ変更、オブジェクトの修正等を行った時点、すなわちデスクトップ上のラベル状態が変化した時点)から、次の変化が発生した時点までを1単位として、時間を増減させることを意味する。このため、変化点の単位で時間を増減させる場合は、当該変化点での一回の時間の増減で変化する時間間隔は一定でない。」
との記載や、段落〔0221〕の
「次に、上記ラベルに対する操作の「プロパティ」では、前記図49に示したような、ラベルのプロパティダイアログが表示される。当該プロパティの表示内容としては、「ラベル番号」、「履歴数」、「有効期間」、「繰り返しラベルの設定」、「アラームの設定」がある。上記「ラベル番号」には、プロジェクト内でユニークなラベル番号を表示する。このラベル番号は、本実施の形態のラベルソフトが管理しており、ユーザが変更することはできない。上記「履歴数」には、ラベルが作成されてから修正された回数を表示する。」
との記載等が挙げられます。また、段落〔0258〕には、
「以上説明したような機能を有する本実施の形態のラベルソフトによれば、デスクトップ上のラベルに対する操作を全て保存することで、過去の任意の時点のラベルの状態を再現可能となっている。なお、デスクトップ上のラベルの状態を保存する方法としては、ある時点での複数のラベルの情報を全て保存する方法と、ある時点でのラベルの情報の差分のみ保存する方法とが考えられ、ラベルの状態を保存するタイミングとしては、一定間隔で定期的に保存を行う方法と、ラベルに変化があった時点で保存する方法とがある。また、上記ラベルの情報の差分を保存する方法の場合は、ラベルに対する操作を保存する方法(すなわち操作履歴を保存)と、ラベルに対する操作の前後におけるラベルの情報の差分を保存する方法(すなわちラベル情報の変化部分を保存)とがある。」
との旨が記載されています。
従いまして、「ラベル情報」が「当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有する」点も、「上記変更履歴に基づき」当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示する点につきましても、上記当初明細書等(願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面)に記載した事項の範囲内にあるものと思料します。
また審査官は、上記拒絶理由通知書において、請求項4に対して、記載の根拠とされる段落〔0192〕、〔0224〕、図3,6?8,13のいずれにも、「ラベル情報」が「第1の領域上での位置情報」を有することについては一切開示が無く、当該点も当業者にとって自明な事項ではない、との旨を指摘されました。
この点につきまして、本願明細書の段落〔0093〕には、
「上記ラベルとは、デスクトップ上の一つの付箋紙に相当する。ラベルは、生成から破棄の間までの情報を持つ。当該情報は、ラベルのサイズ変更やカラー変更、テキスト修正、画像の変更、サウンドの変更など、ラベルの生成から破棄の間までにユーザがパーソナルコンピュータを介してラベルに対して行ったすべての操作の情報のことである。ただし、ラベルの画面上の位置情報は常に手前の表示するための属性を持つが、ラベル間、ウィンドウ間、ラベル-ウィンドウ間の上下関係の情報については保持しない。」
との旨が記載され、段落〔0192〕には、
「プロジェクトは、本実施の形態のラベルソフトの起動時、およびコンソールメニューから指定がなされたときに開かれる。なお、ラベルソフト起動時には、前回終了時に開かれていたプロジェクトが開かれる。プロジェクトが開かれた際には、そのプロジェクトに属するラベルが、時間情報と位置情報に基づいて、デスクトップ上に表示される。」との旨が記載されています。
従いまして、請求項4の記載内容につきましても、上記当初明細書等に記載した事項の範囲内にあるものと思料します。
(4)結論
以上述べたことからも明らかなように、平成22年8月17日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(上記当初明細書等)に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものです。
よって、本件出願につき、再度御審査の上、特許査定を賜りたく存じます。』

(6)拒絶査定
上記拒絶査定の理由は該略以下のとおりである。
『この出願については、平成23年 1月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

・請求項1に関して
出願人が意見書で主張する明細書段落【0093】,【0098】,【0099】,【0110】-【0114】,【0192】-【0197】,【0202】,【0209】,【0221】-【0224】,【0258】-【0260】のいずれにも、ラベル情報に「変更が行われた時間を変更履歴として有する」ことは記載が無かったものというほかない。
すなわち、意見書において主張される上記各箇所のいずれにも、なるほど作成時間と削除(終了)時間についてだけは、ラベル情報が有するとの記載があったものとは認められるものの、各種「変更」が行われた時間情報までをも有するとまでは、記載があったとはいえず、当該事項は当業者にとって自明ともいえない。(意見書における主張はすべて、「作成」と「削除」に係る時間に関する情報をラベル情報が有することの記載があったことを示すのみである。)
すなわち、当該「変更」が行われた時間については、ラベル情報として当該ラベルオブジェクトに当該時間情報を含ませる態様のみならず、他に当該変更が行われたことを記録するテーブル乃至データベースなどによって記録する態様も想起されるところ、当該ラベル情報に記録することが自明であったとまではいえない。

・請求項4に関して
出願人が意見書で主張する明細書段落【0093】,【0192】のいずれにも、ラベル情報が位置情報を有することは記載が無かったものというほかない。
すなわち、ラベルの画面上の位置情報が存在することや、当該位置情報が「常に手前の表示するための属性を持つ」こと(【0093】)や、ラベルが「位置情報に基づいて」表示されること(【0192】)までは記載があったものといえるものの、当該位置情報がラベル情報に有るものであるか否かは記載されておらず、また当該記載から、ラベル情報が位置情報を有することが当業者にとって自明であるともいえない。』

(7)平成23年10月3日付け手続補正
上記平成23年10月3日付けの手続補正書は特許請求の範囲及び明細書の段落【0009】【0010】【0011】を以下のとおりに補正しようとするものである。
「 【請求項1】
所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報を表示可能な情報処理装置であって、
第1及び第2の表示領域を有する表示手段と、
時間を指定するための操作手段と、
上記操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記指定された時間を第2の領域に表示する制御手段と
を有する情報処理装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記表示手段の第2の表示領域に時間軸を更に表示し、かつ、当該時間軸上に現在の時間と上記指定された時間を識別可能に表示する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
上記制御手段は、上記表示手段の第2の表示領域に現在の時間を指定するための操作釦を更に表示し、
上記操作手段によって上記操作釦が操作された場合には、現在の時間に対応する上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現する請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項4】
上記管理情報は上記第1の領域上での位置情報を更に有し、
上記制御手段は上記ラベル情報の状態を上記管理情報の上記位置情報に基づく位置を含めて再現して表示する請求項1乃至3の何れか1項記載の情報処理装置。
【請求項5】
上記オブジェクト情報は、リンクを含む請求項1乃至4の何れか1項記載の情報処理装置。
【請求項6】
所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報を表示可能な情報処理方法であって、
時間を指定するための操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御工程
を有する情報処理方法。
【請求項7】
所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報を表示可能な情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
コンピュータに、
時間を指定するための操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御手順
を実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」

「 【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係る情報処理装置は、所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報を表示可能な情報処理装置であって、第1及び第2の表示領域を有する表示手段と、時間を指定するための操作手段と、上記操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記指定された時間を第2の領域に表示する制御手段とを有する。」

「 【0010】
本発明に係る情報処理方法は、上記目的を達成するため、所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報を表示可能な情報処理方法であって、時間を指定するための操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御工程を有する。」

「 【0011】
本発明に係る記録媒体は、所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報を表示可能な情報処理をコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、コンピュータに、時間を指定するための操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記選択された時間を上記表示手段の第2の領域に表示する制御手順を実行させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。」

(8)審判請求理由
本件審判請求の趣旨は「原査定を取り消す。本願は特許すべきものである。との審決を求める。」と言うものであり、その理由は以下のとおりである
『【請求の理由】
(1)手続の経緯
出 願 平成11年 5月21日
(原出願:特願平11-142521の分割)
拒絶理由の通知 平成22年 6月15日
(発送日:平成22年 6月22日)
意見書 平成22年 8月17日
手続補正書 平成22年 8月17日
拒絶理由の通知 平成23年 1月27日
(発送日:平成23年 2月 1日)
意見書 平成23年 3月28日
拒絶査定 平成23年 7月 7日
(発送日:平成23年 7月19日)
手続補正書 平成23年10月 3日
(2)拒絶査定の理由の要点
本件出願に対する原査定の理由は、「この出願については、平成23年1月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」というものです。
上記拒絶理由通知書に記載された理由とは、平成22年8月17日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものです。
(3)本願発明が特許されるべき理由
A.本願発明
本願発明は、情報処理装置及び方法、並びに記録媒体に関するものであり、平成23年10月3日付けで提出した手続補正書の特許請求の範囲に記載の通りの構成を有するものです。
すなわち、上記手続補正書により補正した特許請求の範囲の請求項1に記載されている発明は、
「所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報を表示可能な情報処理装置であって、
第1及び第2の表示領域を有する表示手段と、
時間を指定するための操作手段と、
上記操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記指定された時間を第2の領域に表示する制御手段と
を有する」
情報処理装置です。
上記手続補正書により補正した特許請求の範囲の請求項4に記載されている発明は、
「〔請求項4〕
上記管理情報は上記第1の領域上での位置情報を更に有し、
上記制御手段は上記ラベル情報の状態を上記管理情報の上記位置情報に基づく位置を含めて再現して表示する請求項1乃至3の何れか1項記載の情報処理装置。」
です。
上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項6には、上記補正された請求項1の情報処理装置に対応する情報処理方法が記載され、上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項7には、上記補正された請求項6の情報処理方法における工程(手順)をコンピュータに実行させるためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体が記載されています。
これらの補正は、上記拒絶査定において指摘された拒絶の理由に示す事項についてするものであり、特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明に該当するものです。
B.特許法第17条の2第3項について
上記拒絶理査定の「備考」の欄において、補正前の請求項1に関して、
「出願人が意見書で主張する明細書段落〔0093〕,〔0098〕,〔0099〕,〔0110〕-〔0114〕,〔0192〕-〔0197〕,〔0202〕,〔0209〕,〔0221〕-〔0224〕,〔0258〕-〔0260〕のいずれにも、ラベル情報に『変更が行われた時間を変更履歴として有する』ことは記載が無かったものというほかない。
すなわち、意見書において主張される上記各箇所のいずれにも、なるほど作成時間と削除(終了)時間についてだけは、ラベル情報が有するとの記載があったものとは認められるものの、各種『変更』が行われた時間情報までをも有するとまでは、記載があったとはいえず、当該事項は当業者にとって自明ともいえない。(意見書における主張はすべて、『作成』と『削除』に係る時間に関する情報をラベル情報が有することの記載があったことを示すのみである。)
すなわち、当該『変更』が行われた時間については、ラベル情報として当該ラベルオブジェクトに当該時間情報を含ませる態様のみならず、他に当該変更が行われたことを記録するテーブル乃至データベースなどによって記録する態様も想起されるところ、当該ラベル情報に記録することが自明であったとまではいえない。」
との旨を指摘されました。
この指摘に対して、本審判請求書と同時に手続補正書を提出し、補正前の請求項1を、上記のように補正し、
「所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報を表示可能」
との旨を明記することにより、記載の明瞭化を図りました。
すなわち、ラベルに関連して、「オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有する」点につきまして、本願明細書の段落〔0090〕には「時間管理機能として変更履歴を持ったラベルを作成する機能」と記載され、この時間管理機能として変更履歴を持つとは、明細書中の具体的な一例として、段落〔0114〕等に記載された「変化点」を、段落〔0258〕等に記載のように「保存」して、段落〔0221〕等に記載のように「履歴」として持っている、ということに相当します。しかしながら、上記拒絶査定の「備考」の欄において、当該「変更」が行われた時間については、ラベル情報として当該ラベルオブジェクトに当該時間情報を含ませる態様のみならず、他に当該変更が行われたことを記録するテーブル乃至データベースなどによって記録する態様も想起される、と指摘された点を考慮し、変更履歴について、ラベル情報の一部情報として含ませる態様のみならず、管理情報としてテーブル乃至データベースなどに記録されることも含む記載に補正しました。
なお、上記平成23年1月27日付け拒絶理由通知書において、請求項1に関して指摘されたもう1つの点(「上記変更履歴に基づき」当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示する点)につきましては、上記平成23年3月28日付けで提出した意見書に説明致しましたように、本願明細書の段落〔0093〕、〔0099〕、〔0110〕?〔0114〕、〔0192〕?〔0197〕、〔0221〕?〔0224〕、〔0260〕等の記載から読み取れるものと思料します。
従いまして、「当該オブジェクト情報の変更が行われた時間示す変更履歴」が「管理情報として記録」される点も、「上記変更履歴に基づき」当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示する点につきましても、上記当初明細書等(願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面)に記載した事項の範囲内にあるものと思料します。
次に、上記拒絶査定の「備考」の欄において、補正前の請求項4に関して、
「出願人が意見書で主張する明細書段落〔0093〕,〔0192〕のいずれにも、ラベル情報が位置情報を有することは記載が無かったものというほかない。
すなわち、ラベルの画面上の位置情報が存在することや、当該位置情報が『常に手前の表示するための属性を持つ』こと(〔0093〕)や、ラベルが『位置情報に基づいて』表示されること(〔0192〕)までは記載があったものといえるものの、当該位置情報がラベル情報に有るものであるか否かは記載されておらず、また当該記載から、ラベル情報が位置情報を有することが当業者にとって自明であるともいえない。」
との旨を指摘されました。
この指摘に対して、本審判請求書と同時に手続補正書を提出して補正前の請求項4を補正し、上記請求項1の補正と同様の趣旨で、
「上記管理情報は上記第1の領域上での位置情報を更に有し、
上記制御手段は上記ラベル情報の状態を上記管理情報の上記位置情報に基づく位置を含めて再現して表示する」
との旨を明記することにより、記載の明瞭化を図りました。なお、記録された位置情報は、本願明細書の段落〔0192〕に記載されているように、「プロジェクトが開かれた際には、そのプロジェクトに属するラベルが、時間情報と位置情報に基づいて、デスクトップ上に表示される」ために用いられます。
従いまして、補正後の請求項4の記載内容につきましても、上記当初明細書等に記載した事項の範囲内にあるものと思料します。
(4)結論
以上述べたことからも明らかなように、本審判請求書と同時に提出した上記手続補正書による手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(上記当初明細書等)に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものです。
よって、本件審判事件につき、請求の趣旨の通りの審決を賜りたく存じます。」

(9)前置報告
上記平成23年12月14日付け前置報告書の概要は以下のとおりである。
『平成23年10月3日付け手続補正書による手続補正は、明りょうでない記載の釈明を目的としたものと認める。
当該補正後の請求項1に係る発明の、
「当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報」
なる技術的事項は、当該管理情報がデータベース等によって管理される態様を意味するものであることを審判請求人も審判請求書で認めるとおりであり、当該事項は、拒絶査定の備考欄において指摘したとおり、願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)に記載の無い事項であって、当初明細書等に新たな技術的事項を加えるものである。
したがって、この補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。』

(10)回答書
上記平成23年4月4日付けの回答書による回答の概要は以下のとおりである。
『【回答の内容】
(1)この審判事件につきまして、平成24年2月2日(発送日:平成24年2月7日)付けの審尋において、前置報告書の内容が通知されました。
上記前置報告書の内容とは、
「平成23年10月3日付け手続補正書による手続補正は、明りょうでない記載の釈明を目的としたものと認める。
当該補正後の請求項1に係る発明の、
『当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報』
なる技術的事項は、当該管理情報がデータベース等によって管理される態様を意味するものであることを審判請求人も審判請求書で認めるとおりであり、当該事項は、拒絶査定の備考欄において指摘したとおり、願書に最初に添付した明細書及び図面(以下『当初明細書等』という。)に記載の無い事項であって、当初明細書等に新たな技術的事項を加えるものである。
したがって、この補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。」
というものです。
この前置報告書の内容について、以下に意見を述べます。
(2)本願発明
本願発明は、ディスク状記録媒体及びその製造方法、ディスク記録方法及び装置、並びにディスク再生方法及び装置に関するものであり、平成23年10月3日付けで提出した手続補正書の特許請求の範囲に記載の通りの構成を有するものです。
すなわち、上記手続補正書により補正した特許請求の範囲の請求項1に記載されている発明は、
「所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報を表示可能な情報処理装置であって、
第1及び第2の表示領域を有する表示手段と、
時間を指定するための操作手段と、
上記操作手段により所定の時間が指定された場合、上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示すると共に、上記指定された時間を第2の領域に表示する制御手段と
を有する」
情報処理装置です。
上記手続補正書により補正した特許請求の範囲の請求項4に記載されている発明は、
「〔請求項4〕
上記管理情報は上記第1の領域上での位置情報を更に有し、
上記制御手段は上記ラベル情報の状態を上記管理情報の上記位置情報に基づく位置を含めて再現して表示する請求項1乃至3の何れか1項記載の情報処理装置。」
です。
上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項6には、上記補正された請求項1の情報処理装置に対応する情報処理方法が記載され、上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項7には、上記補正された請求項6の情報処理方法における工程(手順)をコンピュータに実行させるためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体が記載されています。
(3)特許法第17条について
上記前置報告書の「記」の欄において、補正後の請求項1の
「当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報」
との記載事項は、上記当初明細書等(願書に最初に添付した明細書及び図面)に記載の無い事項であって、当初明細書等に新たな技術的事項を加えるものである、との旨を指摘されました。
上記請求項1の記載事項に関連する部分につきまして、平成23年10月3日付けの審判請求書や、平成23年3月28日付けの意見書などにおいても述べましたように、本願明細書の段落〔0090〕に、本願発明のラベルソフトは、
「時間管理機能として変更履歴を持ったラベルを作成する機能」
を備える旨が記載されています。また、段落〔0093〕には、
「ラベルは、生成から破棄の間までの情報を持つ。当該情報は、ラベルのサイズ変更やカラー変更、テキスト修正、画像の変更、サウンドの変更など、ラベルの生成から破棄の間までにユーザがパーソナルコンピュータを介してラベルに対して行ったすべての操作の情報のことである。」
との旨が記載されています。
これらの明細書中の記載と、上記請求項1の
「当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴」をラベル情報が持つ
との旨の記載との間の相違点について、以下考察します。
審査官は、平成23年7月7日付けの拒絶査定の備考の欄において、本願明細書の記載からは、「ラベル情報に『変更が行われた時間を変更履歴として有する』ことは開示が無かった」との旨を指摘され、また、「作成時間と削除(終了)時間についてだけは、ラベル情報が有するとの記載があったものとは認められるものの、各種『変更』が行われた時間情報までをも有するとまでは、記載があったとはいえず、当該事項は当業者にとって自明ともいえない。」との旨を指摘されると共に、「当該『変更』が行われた時間については、ラベル情報として当該ラベルオブジェクトに当該時間情報を含ませる態様のみならず、他に当該変更が行われたことを記録するテーブル乃至データベースなどによって記録する態様も想起されるところ、当該ラベル情報に記録することが自明であったとまではいえない。」との旨を指摘されています。
ここで、上記請求項1の記載中の「変更履歴」や「ラベル情報」との用語につきましては、何ら限定解釈する必要はなく、上記段落〔0099〕以降のタイムビューモードの説明に記載されているようなラベルの状態の表示に用いられる情報として、ラベルに関連する情報を「ラベル情報」とし、ラベル情報の内で時間経過に応じた変更内容の経歴や時間的順序に関わる情報を「変更履歴」として解釈することができます。審査官の指摘内容中には、「ラベル情報として当該ラベルオブジェクトに当該時間情報を含ませる態様」との記載がありますが、「ラベル情報」をラベルオブジェクトのみに限定解釈する必要はなく、請求項1の記載は、ラベルオブジェクトに時間情報を含ませることを意味しているものではありません。例えば、本願明細書の段落〔0189〕には、「上記ラベルファイルは、オブジェクト情報など個々のラベルに対する情報を持ち、一つのラベルに対し一つのファイルが存在する。」との旨が記載されており、少なくともラベルファイルは、オブジェクト情報のみならず個々のラベルに対する各種情報を持つことが明らかです。
さらに、本願明細書の上記段落〔0090〕の「時間管理機能として変更履歴を持ったラベルを作成する機能」を備える旨の記載と、上記段落〔0093〕の「ラベルは、生成から破棄の間までの情報」として「ラベルのサイズ変更やカラー変更、テキスト修正、画像の変更、サウンドの変更など、ラベルの生成から破棄の間までにユーザがパーソナルコンピュータを介してラベルに対して行ったすべての操作の情報」を持つ旨の記載から、少なくともラベルは、時間管理機能としての変更履歴を持つと共に、生成から破棄の間までのラベルに対する各種変更あるいはすべての操作の情報を持つことが明らかであると思料します。
なお、請求項1の記載中の「ラベル情報」との用語はラベルオブジェクトあるいはラベルのオブジェクト情報と誤解を生じ易いということであれば、「ラベルの情報」のような用語に修整することも考慮しています。
次に、上記審査官の指摘内容は、上記請求項1の「変更が行われた時間を変更履歴として有する」との記載に対して、本願明細書中には、変更が行われた「時間」情報を変更履歴として有することの記載が無いことを意味しているものとも解釈されます。
しかしながら、一般的に「履歴」という用語自体に、少なくとも経歴、歴史、順序などの時間的な概念が含まれていると解釈されるのみならず、段落〔0090〕には、上述したように「時間管理機能」として「変更履歴」を持つことが記載されており、時間管理を行うために変更履歴が用いられることも明らかです。また、「変更が行われた」時間につきましては、段落〔0114〕に、「ユーザによりラベルに何らかの操作がなされて当該ラベルが変化した時点(例えばラベルの移動、サイズ変更、オブジェクトの修正等を行った時点、すなわちデスクトップ上のラベル状態が変化した時点)」としての「変化点」が記載されています。このような「変化点」は、審査官が指摘された「作成時間と削除(終了)時間」のみに限定されるものではなく、作成時間から削除(終了)時間までの間において、ユーザによりラベルに何らかの操作がなされて当該ラベルが変化した時点を含み、本願明細書の段落〔0099〕以降に記載したタイムビューモードの場合に、この変化点単位で時間を増減させることができることからも、少なくとも変化した時点(時間)の情報を当該ラベルに関連した情報として持っていることは明らかです。
さらに、「変更が行われた時間を示す変更履歴」との記載中の「時間」につきまして、絶対的な時刻情報の意味の記載がない、ということを指摘されているのであれば、「変更が行われた相対的な時間軸上の前後関係を示す変更履歴」のように補正することも検討しています。しかしながら、段落〔0110〕の「上記西暦ゲージ部cgは、現在表示しているラベルが西暦でどの当たりの時間に相当するのかをユーザに対して一目瞭然にするために設けられている。」との記載や、段落〔0112〕の「上記オペレーション時間表示部otiは、画面にラベルが表示されている状態が、どの時刻の状態のものであるかを表示する部分である。」との記載などから、表示されているラベルのオブジェクト情報の変更が行われた「時間」あるいは絶対的な時刻情報が何らかのラベル情報として記録されていることも十分に示唆されているものと思料します。
さらに、審査官は、平成23年1月27日付けの拒絶理由通知書において、本願明細書の段落〔0090〕を引用され、「当該記載からは、当該変更履歴が、『オブジェクト情報の変更が行われた時刻』であるか否かは不明である。」との旨を指摘されています。しかしながら、段落〔0090〕において、「本実施の形態のラベルソフト」は、「時間管理機能として変更履歴を持ったラベルを作成する機能と、当該時間管理機能についてジョグダイヤルをフルサポートする機能と」を備える旨が記載され、段落〔0091〕には、「これら機能を有する本実施の形態のラベルソフトが扱うデータ構成には、以下のプロジェクト、ラベル、オブジェクトの3つの項目がある。」旨が記載され、段落〔0093〕には、「ラベルは、生成から破棄の間までの情報を持つ。当該情報は、ラベルのサイズ変更やカラー変更、テキスト修正、画像の変更、サウンドの変更など、ラベルの生成から破棄の間までにユーザがパーソナルコンピュータを介してラベルに対して行ったすべての操作の情報のことである。」との旨が記載されています。また、上記時間管理機能に関しては、段落〔0098〕に「タイムビューモードは、本実施の形態のラベルソフトにより時間操作を行うことができるモード」である旨が記載され、段落〔0099〕以降に該タイムビューモードの詳細な説明がされており、段落〔0108〕には、「タイムビューコンソールTVCのウィンドウは、ウィンドウタイトル部wtと、西暦ゲージ部cgと、現在ボタンbbと、オペレーション時間表示部otiと、アップダウンボタンtub及びtdbと、時間増減ステップ選択リストボックスsslと、時間増減ステップ選択メニューボタンsbと」が設けられる旨が記載され、段落〔0110〕には「上記西暦ゲージ部cgは、現在表示しているラベルが西暦でどの当たりの時間に相当するのかをユーザに対して一目瞭然にするために設けられている。」との旨が、段落〔0112〕には「上記オペレーション時間表示部otiは、画面にラベルが表示されている状態が、どの時刻の状態のものであるかを表示する部分である。」との旨が、また段落〔0114〕には「上記時間増減ステップ選択リストボックスsslは、オペレーション時間表示部otiの時間を増減する際の上記時間増減単位(時間増減ステップ)を表示する部分」であり、「上記時間増減単位(時間増減ステップ)として、例えば100年、10年、1年単位、1月単位、1時間単位、1分単位、1秒単位、変化点単位など」があり、「変化点単位での時間増減とは、ユーザによりラベルに何らかの操作がなされて当該ラベルが変化した時点(例えばラベルの移動、サイズ変更、オブジェクトの修正等を行った時点、すなわちデスクトップ上のラベル状態が変化した時点)から、次の変化が発生した時点までを1単位として、時間を増減させることを意味する。」との旨がそれぞれ記載されています。このような明細書中に記載された説明の順序に従って解釈すれば、段落〔0090〕の「変更履歴」がラベルに対してオブジェクトの変更を行った履歴を意味することは十分に開示されているものと思料します。なお、「変更履歴」に時間あるいは時刻の情報を含む点につきましては、前述した通りです。
(4)結び
よって、本件審判につき、上記の各点をご考慮の上、ご審理を賜りたく、お願い申し上げます。』



第2.平成23年10月3日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年10月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成23年10月3日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、上記第1.(7)記載のとおりのものである。


2.判断
(1)本件補正が、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」と記す。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かについて検討するに、本件補正後の請求項1、6、7、段落【0009】【0010】【0011】に記載の「所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報」との技術的事項、及び「上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示する」との技術的事項は、当初明細書等には記載されておらず、また当初明細書等の記載から自明なものでもない。
すなわち、上記の技術的事項は、当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することによって導かれるものではなく、本件補正は、このようにして導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。

(2)この点について審判請求書においては、上記第1.2.(8)に示したように、『ラベルに関連して、「オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有する」点につきまして、本願明細書の段落〔0090〕には「時間管理機能として変更履歴を持ったラベルを作成する機能」と記載され、この時間管理機能として変更履歴を持つとは、明細書中の具体的な一例として、段落〔0114〕等に記載された「変化点」を、段落〔0258〕等に記載のように「保存」して、段落〔0221〕等に記載のように「履歴」として持っている、ということに相当します。しかしながら、上記拒絶査定の「備考」の欄において、当該「変更」が行われた時間については、ラベル情報として当該ラベルオブジェクトに当該時間情報を含ませる態様のみならず、他に当該変更が行われたことを記録するテーブル乃至データベースなどによって記録する態様も想起される、と指摘された点を考慮し、変更履歴について、ラベル情報の一部情報として含ませる態様のみならず、管理情報としてテーブル乃至データベースなどに記録されることも含む記載に補正しました。』『なお、上記平成23年1月27日付け拒絶理由通知書において、請求項1に関して指摘されたもう1つの点(「上記変更履歴に基づき」当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示する点)につきましては、上記平成23年3月28日付けで提出した意見書に説明致しましたように、本願明細書の段落〔0093〕、〔0099〕、〔0110〕?〔0114〕、〔0192〕?〔0197〕、〔0221〕?〔0224〕、〔0260〕等の記載から読み取れるものと思料します。』との釈明がなされている。
しかしながら、当初明細書等の段落【0114】における「変化点単位での時間増減」のための情報が何処に記憶されるどの情報より得られるのかといった記載は当初明細書等のどこにも見当たらず、当初明細書等の段落【0114】における「変化点」と、段落【0090】【0114】【0258】【0221】における「変更履歴」「ラベルに対する操作」「履歴」等との関連を示唆する記載を見出すことはできない。また「管理情報」なる用語も当初明細書等には記載の無い用語であって、該「変化点」と「管理情報」との関連を示唆する記載も当然見出すことはできない。
そして、「変化点単位での時間増減」が、必ずしも「オブジェクト情報の変更が行われた時間」を「ラベル情報」の「管理情報」として記憶しなければ実現不可能と言うものでもない(例えば、「変化」の順番等を「ラベル情報」とは独立した全く別個の情報として記憶する手法等も十分に想定し得る構成である。)。
してみると、段落【0114】の記載と他の段落(段落【0090】【0258】【0221】等)の記載事項を如何に組み合わせても、段落【0114】の「変化点」が「ラベル情報」の「管理情報」として記録される「変更履歴」である旨の事項を導くことはできない。
また、段落【0093】、【0099】、【0110】?【0114】、【0192】?【0197】、【0221】?【0224】、【0260】等を詳細に検討しても、「上記変更履歴」、すなわち、「変化点」を示す「変更履歴」が「ラベル情報の状態」の「再現」にも用いられる旨の事項を導くことも到底できない。

(3)また、請求人は上記回答書においては、上記第1.2.(10)に示したように、「ラベル情報」を「ラベルの状態の表示に用いられる情報として、ラベルに関連する情報」と、「変更履歴」を「ラベル情報の内で時間経過に応じた変更内容の経歴や時間的順序に関わる情報」と、それぞれ解釈することを前提とし、当初明細書等の段落【0090】【0091】【0093】【0098】【0099】【0108】【0110】【0112】【0114】等を根拠に『段落〔0090〕の「変更履歴」がラベルに対してオブジェクトの変更を行った履歴を意味することは十分に開示されているものと思料します。』と主張している。
しかしながら、本件補正後の請求項1、6、7、段落【0009】【0010】【0011】に記載の「ラベル情報」との用語はその冒頭の記載のごとく「所定のオブジェクト情報が貼り付けられ」るものなのであるから、段落【0189】で説明される「ラベルファイル」のようにデスクトップ上に表示される個々の付箋紙のイメージと対応付けてとらえることができる情報でなければならず、これを「ラベルの状態の表示に用いられる情報として、ラベルに関連する情報」とまで広義に解釈すると「オブジェクト情報」の「貼り付け」の合理的解釈ができず、その結果、「変更履歴」との用語をこのような広義の「ラベル情報」内の一情報と解釈することも不合理なものとなる。
したがって、上記回答書における主張も到底認め得るものではない。

(4)しかも、当初明細書等における「オブジェクト」としては、段落【0094】記載のごとく「リンクオブジェクト」も挙げられるものであるところ、「リンクオブジェクト」の変更は、本願の明細書中で本発明の実施の形態として挙げられるごとき「ラベルソフト」のみならず、他のソフトによっても変更可能なものであることは、当業者が当然に心得る技術常識であり、また、段落【0211】記載のごとく「オブジェクト」としては「ラベルソフト」では修正できないものもあることに鑑みると、「オブジェクト情報の変更が行われた時間」を「ラベルソフト」で管理することは、技術的にみてもたやすく実現し得るものではない。
してみると、「オブジェクト情報の変更が行われた時間」を「ラベル情報」の「管理情報」として記録される「変更履歴」とする上記技術的事項は、当業者が通常有する技術知識とも不整合をきたすものであり、この点からみても、当初明細書等の記載から自明な事項とは到底認め得るものではない。

(5)なお、請求人が引用する当初明細書等の記載のほかに、その段落【0263】には「操作記録処理」において「ラベルの差分情報に現在時間を付加して保存する」旨の記載もあるが、ここでの「操作」は「ラベルに対する操作」であって、これが必ずしも「オブジェクト情報の変更」を含むものとは言えず、上記(4)の技術常識や段落【0211】の記載等を考慮すると、むしろ「オブジェクト情報の変更」は該「保存」の対象となる「操作」からは除外するのが自然な構成であるとも言える。
したがって、この段落【0263】の記載を考慮しても、上記技術的事項は当初明細書等の記載から自明な事項ではない。

(6)さらに、当初明細書等の他の箇所を詳細に検討しても、上記技術的事項を示唆する記載は見あたらない。

(7)よって、本件補正によって追加された他の技術的事項についての検討をするまでもなく、本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。


3.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。



第3.本件審判請求の成否について

1.手続きの経緯
本願の手続きの経緯は上記第1.1.記載のとおりのものであり、さらに、平成23年10月3日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下された。

2.本件補正の内容
平成22年8月17日付けの手続補正(以下では、これを「本件補正」と記す。)は、上記第1.2.(2)記載のとおりのものである。

3.原審拒絶理由
原審の拒絶査定の理由である上記原審拒絶理由は上記第1.2.(4)記載のとおりのものである。

4.判断
(1)本件補正が、本願の当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かについて検討するに、本件補正後の請求項1、6、7、段落【0009】【0010】【0011】に記載の「所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を変更履歴として有するラベル情報」との技術的事項は上記第2.において検討した平成23年10月3日付けの手続補正後の請求項1、6、7、段落【0009】【0010】【0011】に記載の「所定のオブジェクト情報が貼り付けられ、当該オブジェクト情報の変更が行われた時間を示す変更履歴が管理情報として記録されたラベル情報」との技術的事項に対応するものであり、後者の技術的事項は審判請求書での主張のごとく「変更履歴について、ラベル情報の一部情報として含ませる態様のみならず、管理情報としてテーブル乃至データベースなどに記録されることも含む記載に補正」したものにほかならないところ、この技術的事項は上記第2.で論じたように当初明細書等の記載から導き出し得るものではない。
してみると、後者の技術的事項の下位概念に相当する技術的事項であるところの前者の技術的事項も、当初明細書等の記載から導き出し得るものではないことは明らかである。
そして、本件補正後の請求項1、6、7、段落【0009】【0010】【0011】に記載の「上記変更履歴に基づき当該指定された時間の上記ラベル情報の状態を上記表示手段の第1の領域に再現して表示する」との技術的事項も、上記第2.で論じたように当初明細書等の記載から導き出し得るものではない。

(2)この点については、出願人は上記平成22年8月17日付けの意見書おいて、上記第1.2.(3)に示したように段落【0093】をその補正の根拠としているが、ここには「オブジェクト情報の変更が行われた時間」を「ラベル情報」が有する旨の記載も示唆も認められない。
また、上記平成23年3月28日付けの意見書においては、上記第1.2.(5)に示したように当初明細書等の段落【0093】、【0098】、【0099】、【0110】?【0114】、【0192】?【0197】、【0202】、【0209】、【0221】?【0224】、【0258】?【0260】等の記載を根拠に、上記技術的事項が当初明細書等に記載した事項の範囲内にあるものである旨主張しているが、上記第2.2.(2)での審判請求書に関する検討と同様、到底認め得るものではない。

(3)よって、本件補正によって追加された他の技術的事項の検討をするまでもなく、本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

5.むすび
以上のとおりであるから、平成22年8月17日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであり、これを理由に本願を拒絶すべきものとした原審の拒絶査定は妥当なものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-09-11 
結審通知日 2012-09-19 
審決日 2012-10-05 
出願番号 特願2009-257837(P2009-257837)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 55- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
原 秀人
発明の名称 情報処理装置及び方法、並びに記録媒体  
代理人 野口 信博  
代理人 小池 晃  
代理人 祐成 篤哉  
代理人 藤井 稔也  
代理人 伊賀 誠司  

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