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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B60R
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する B60R
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B60R
審判 訂正 判示事項別分類コード:857 訂正する B60R
管理番号 1268579
審判番号 訂正2012-390149  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2012-11-16 
確定日 2012-12-20 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4790760号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4790760号に係る明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 請求の要旨
本件審判の請求の要旨は,特許第4790760号(平成20年6月9日特許出願,平成23年7月29日設定登録)の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を,審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,請求項ごとまたは一群の請求項ごとに訂正することを求めるものである。

第2 訂正の内容
1.請求項9ないし13に関わる訂正
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項9に「コンフィグレーション検知モジュール」とあるのを「コンフィグレーション設定モジュール」と訂正する(請求項9を引用する請求項10ないし13も,実質的に同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9に「前記中央処理装置および前記CANコントローラが前記ボーレートでデータの送信を行うよう設定する」とあるのを「前記CANコントローラがデータを送信するボーレートを,前記中央処理装置から提供を受けて設定する」と訂正する(請求項9を引用する請求項10ないし13も,実質的に同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0023】に記載された「装置制御コマンド」を「装置診断コマンド」と訂正する。

2.請求項14に関わる訂正
(1)訂正事項4
請求項14に「前記車体制御装置には外部装置が更に接続されており,前記車体制御装置は前記装置診断コマンドに基づいて前記外部装置の動作を制御する」とあるのを「前記CANコントローラには外部装置が更に接続されており,前記中央処理装置から出力された状態診断データに基づいて前記外部装置の動作を制御する」と訂正する。

(2)訂正事項5
請求項14に「請求項9に記載の」とあるのを,請求項14の前段に「車体制御装置(Body Control Module;BCM)と複数の車載機器とから構成されているコントローラ・エリア・ネットワークに接続される自動車の検知・制御統合装置であって,前記自動車の検知・制御統合装置は,前記複数の車載機器に対応する複数の装置診断コマンドを提供するコマンドデータベースと,前記コマンドデータベースに基づいて車載機器に対応する装置診断コマンドを出力する中央処理装置と,国際標準15765-4(ISO15765-4)の通信プロトコルに基づいて前記コントローラ・エリア・ネットワークに接続されるとともに,前記装置診断コマンドを前記コントローラ・エリア・ネットワークを介して出力することで,前記車体制御装置が前記装置診断コマンドに基づいて対応する前記車載機器を制御するように命令するCANコントローラと,前記CANコントローラがデータを送信するボーレートを,前記中央処理装置から提供を受けて設定するコンフィグレーション設定モジュールと,モデル数値を提供するモデル切換えスイッチと,を備え,前記コマンドデータベースには前記装置診断コマンドの各々に対応するモデル数値が記録されるとともに,前記モデル数値に基づいて対応する少なくとも一つの装置診断コマンドを提供し,前記複数の車載機器に対応する複数のネットワーク識別子および状態診断データを提供する状態データベースを更に備え,前記CANコントローラが更に前記コントローラ・エリア・ネットワークが送信したデータパケットを取り込むとともに出力し,前記中央処理装置が前記データパケットを前記状態データベースに一致させることで,対応する状態診断データを出力し,」と置換するよう,訂正する。

(3)訂正事項6
明細書の段落【0023】に記載された「装置制御コマンド」を「装置診断コマンド」と訂正する。

第3 当審の判断
本件特許の願書に添付した明細書を,以下「本件明細書」という。

1.訂正の目的について
(1)訂正事項1
本件明細書には,「コンフィグレーション設定モジュール」との文言は頻繁に使われているが,「コンフィグレーション検知モジュール」なる文言は一切使われていない。
訂正事項1は,誤記の訂正を目的とするものであり,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項9には「前記中央処理装置および前記CANコントローラが前記ボーレートでデータの送信を行うよう設定する」と記載されているが,同項には,該記載箇所よりも前に「ボーレート」に関する記載はなく,また,本件明細書には,設定されたボーレートで中央処理装置がデータの送信を行うことについての記載はない。
本件明細書には,ボーレートに関して,以下の記載がある。
・「【0023】
本発明に開示する自動車の検知・制御統合装置はコンフィグレーション設定モジュールを更に備えており,コンフィグレーション設定モジュールが,CANコントローラがデータを送信する識別子長さおよびボーレート,および中央処理装置がデータパケットを取得し,装置制御コマンドの出力に使用される識別子長さを設定するのに供されるように,コマンドデータベースおよび状態データベースには各装置診断コマンドおよび状態診断データが対応するボーレート(baud Rate)および識別子長さ(Identifier length)が記録されている。」
・「【0050】
図4,図7Bおよび図8Bを同時に参照し,実際における使用の説明を行う。モデルデータベースが提供するモデル数値を0に設定し,コマンドデータベース410および状態データベース420はモデル数値が0である装置診断コマンドおよび状態診断データを提供する。中央処理装置440は,第0モデルにおいて,装置診断コマンドおよび状態診断データで使用されるボーレートが83.333K,識別子長さが11ビットであると判断するとともに,コンフィグレーション設定モジュール453に提供する。コンフィグレーション設定モジュール453は受信データキャッシュモジュール451および送信データキャッシュモジュール454のボーレートを83.333K,識別子長さを11ビットに設定する。その後,中央処理装置440は第0モデルにおいて,全ての車載機器が対応するネットワーク識別子の全てを受信データキャッシュモジュール451にキャッシュするとともに,識別子対照テーブル452を作成させる。」
上記記載によれば,CANコントローラがデータを送信するボーレートをコンフィグレーション設定モジュールが設定することが読みとれるほか,中央処理装置がボーレートをコンフィグレーション設定モジュールに提供することが読みとれる。
したがって,訂正事項2は,誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,特許法第126条第1項ただし書第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当するといえる。

(3)訂正事項3
本件明細書の段落【0023】全体の記載は,次のとおりである。
「本発明に開示する自動車の検知・制御統合装置はコンフィグレーション設定モジュールを更に備えており,コンフィグレーション設定モジュールが,CANコントローラがデータを送信する識別子長さおよびボーレート,および中央処理装置がデータパケットを取得し,装置制御コマンドの出力に使用される識別子長さを設定するのに供されるように,コマンドデータベースおよび状態データベースには各装置診断コマンドおよび状態診断データが対応するボーレート(baud Rate)および識別子長さ(Identifier length)が記録されている。」
上記のとおり,段落【0023】には,「装置制御コマンド」との文言のほかに,「装置診断コマンド」との文言が使われているが,全体の文意からすれば,両者は同じものをいうと解される。そして,本件明細書全体を見ると,「装置制御コマンド」との文言が使われている箇所はきわめて少ない(段落【0055】及び【0060】)のに対して,「装置診断コマンド」との文言は頻繁に使われている。
したがって,訂正事項3は,誤記の訂正を目的とするものであり,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項14には,「前記車体制御装置には外部装置が更に接続されており,前記車体制御装置は前記装置診断コマンドに基づいて前記外部装置の動作を制御する」と記載されているが,本件明細書には,車体制御装置に外部装置が接続されていることについての記載はない。
本件明細書には,外部装置に関して,以下の記載がある。
・「【0036】
この自動車の検知・制御統合装置は,コマンドデータベース410と,状態データベース420と,中央処理装置(CPU)440と,CANコントローラ(CAN Controller)450と,モデル切替スイッチ(Model Switch)430と,接続ポート(Output Stage)460とを備えている。CANコントローラ450は送信データキャッシュモジュール454と,コンフィグレーション設定モジュール453と,受信データキャッシュモジュール451とを備え,接続ポート460には外部装置470が接続されている。」
・「【0043】
CANコントローラ450は国際標準15765-4(ISO15765-4)の通信プロトコルに基づいてCANバス456に接続されている。この通信プロトコルはCANバス456が外部装置と通信するのに使用される通信プロトコルであるとともに,CANバス456が元より使用する通信プロトコルとは異なっている。」
・「【0047】
その後,中央処理装置440は一致した状態診断データを出力するとともに,接続ポート460を介して外部装置470に出力することで,外部装置470は状態診断データに基づいて対応する実行動作を生成する。」
上記記載によれば,CANコントローラには外部装置が接続されること及び中央処理装置から出力された状態診断データに基づいて外部装置が動作することが読みとれる。
したがって,訂正事項4は,誤記の訂正または明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,特許法第126条第1項ただし書第2号または第3号に掲げる事項を目的とするものに該当するといえる。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項14は,請求項9を引用する形式で記載されていたところ,訂正後の請求項14は,これを独立形式の記載とするもので,訂正後の請求項14は,訂正事項1及び2を反映した訂正後の請求項9で特定された発明特定事項のすべてと,請求項9を引用する請求項10で直接特定された発明特定事項のすべてを含む。
訂正事項5は,以上を内容とするもので,訂正事項1及び2を反映したものであるから,誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,請求項10で直接特定された発明特定事項を含むから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
したがって,訂正事項5は,特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものに該当するといえる。

(6)訂正事項6
訂正事項3が,一群の請求項である請求項9ないし13の発明に関わるものであるのに対して,訂正事項6は,独立形式の請求項に変更する請求項14の発明に関わるものであるが,両者の内容自体は同一である。
したがって,訂正事項6は,訂正事項3と同じく,誤記の訂正を目的とするものであり,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

2.新規事項の有無について
訂正事項1ないし6が本件特許の願書に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてされたものであること(誤記の訂正にあっては,本件特許の願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてされたものであること)は,前記「1.訂正の目的について」に記載した内容に照らせば,明らかであり,訂正事項1ないし6は,特許法第126条第5項の規定に適合する。

3.特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
訂正事項1ないし6が実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないことは,前記「1.訂正の目的について」に記載した内容に照らせば,明らかであり,訂正事項1ないし6は,特許法第126条第6項の規定に適合する。

4.独立特許要件について
本件特許に係る出願は,拒絶の理由を発見しないとして特許査定されたものであるところ,訂正事項1ないし6は,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく,再度検討しても,訂正後の請求項9ないし14に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする新たな理由も発見しない。
したがって,本件訂正は,特許法第126条第7項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本件審判の請求は,特許法第126条第1項第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動車の検知・制御統合装置およびその方法
【技術分野】
【0001】
自動車の制御装置およびその方法であり、特に診断技術を用いて、走行制御装置により全ての車載機器を制御する自動車の検知・制御統合装置およびその方法である。
【背景技術】
【0002】
従来技術においては、運転者は自家用車両の走行の安全性を確保したり、車両の走行効率を高めたり、または車両盗難を回避するために、例えばタコメータ(Revolution per minutes;RPM)、ターボブースト圧力計(Turbo Boost Pressure Gauge)、エンジン温度計、盗難防止装置、全地球測位システム(Global Position System;GPS)、マルチメディア機器(Video Device/Audio Device)、または走行レコーダなどの外部装置を別途取り付けることがある。
【0003】
しかしながら、各々のパフォーマンスインジケータ(Gauge)はいずれもエンジンルームに電気的に接続されるとともに、関連する配線およびセンサ(Sensor)が増設されるうえ、センサの多くがアナログ式または高電圧型であるので、消磁、電圧安定化などの保護回路を付加しなければならない。もし何らかの回路に取付けミスがあれば、エンジンの損傷を招いたり、場合によっては発火することもある。
【0004】
また、例えば盗難防止装置を取付けるとなると、まずドアの開閉信号、トランクルームドアの信号、センターロック(Central Lock)信号、イグニションスイッチ(Ignition Switch;IG-SW)信号などを取出し、それを盗難防止装置上に設定または記録するとともに、関連する配線を増設して、ドアロックの開閉回路、およびハザードライト(Hazard Light)点滅回路などの関連する回路に接続する必要がある。
【0005】
よって、いずれの形態の取付け作業においても、作業者は相当する専門知識および技術的な経験を備えなければ作業は行えない。全体的な試験、取付け工程はかなり煩雑で、しかも取付の難度は高くなり、手間も時間もかかり、コストは嵩み、安全性も欠けていた。
【0006】
そして、現代の自動車の多くには、車体制御装置と車載機器とから構成されているコントローラ・エリア・ネットワークが内蔵されており、車載機器は車体制御装置により制御されている。
【0007】
図1のように、車両の盗難防止装置についていえば、運転者はICキー100をドアノブに向けたとき、左前ドア制御モジュール(Door Control Module Front-Left;DCM-FL)103はICキー100に格納されているIDデータを読み取るとともに、ドアアンロック要求信号を車体制御装置(Body Control Module;BCM)101に出力する。車体制御装置101はこのIDデータおよびドアアンロック要求信号が正確であると判断したとき、盗難防止装置の設定を解除するとともに、アンロック(Unlock)信号およびアラーム解除(DISARM)信号をCANバス108に送る。
【0008】
各々のドア制御モジュールは、左前ドア制御モジュール103と、左後ドア制御モジュール(Door Control Module Rear-Left;DCM-RL)104と、右前ドア制御モジュール(Door Control Module Front-Right;DCM-FR)102と、右後ドア制御モジュール(Door Control Module Rear-Right;DCM-RR)105とを備え、アンロック(Unlock)信号を受信するとともに、直ちにドアロックを解除する。そして前方信号アクセスモジュール(Front Signal Access Module;F-SAN)106および後方信号アクセスモジュール(Rear Signal Access Module;R-SAN)107はアラーム解除信号を同時に受信して、盗難防止装置の設定がすでに解除されたことを所有者が確認できるようにするために、方向指示灯を二回点滅させる。
【0009】
反対に、所有者がリモコンキー109を用いて盗難防止コマンドを出したとき、車体制御装置101は盗難防止コマンドに含まれるコマンドとIDデータが正確であると判断した場合には、車体制御装置101の盗難防止設定を起動するとともに、ドアのロック(Lock)およびアラーム設定(ARM)信号を出力する。全てのドア制御モジュールがロック信号を取得するとドアをロックして、前方信号アクセスモジュール106および後方信号アクセスモジュール107はアラーム設定を取得し、盗難防止装置がすでに設定されたことを所有者が確認できるようにするために、方向指示灯を一回点滅させる。
【0010】
しかしながら、車両のICキー100を紛失したり、またはメーカでのメンテナンスの利便性を高めるために、例えば盗難防止装置、GPSといった関連する車載機器の動作原理および取付け位置をメンテナンスマニュアルに記録している関係上、漏洩しやすくなる。これを防止するために、所有者の多くは別途盗難防止装置やGPSを取付けているが、メーカ製の車載機器の価格は決して安価ではない。したがって、メーカでは、車体制御装置および内蔵されている車載機器から構成されているコントローラ・エリア・ネットワーク(Controller Area Network;CAN)に接続され、更に別途取付けられた外部装置がその上に接続されることで、別途取付けの困難を解決する制御統合装置を設計している。
【0011】
図2のように、接続方式は、車載式故障診断システム(On Board Diagnostics;OBD)の診断ソケット114を介在している。これは国際標準15031-3(ISO15031-3)規格(米国自動車技術者協会標準J1962(SAE J1962)規格であり、しかも診断ソケット114の第6端子(pin6;CANHI)および第14端子(pin14;CANLOW)は予めCANバス108に接続されている。制御統合装置110は診断ソケットに差し込まれるだけで、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)に接続できるとともに、車載機器が伝送した状態応答データおよび車体制御装置101が送出した制御信号を受け取ることができる。
【0012】
制御統合装置110には、別に、少なくとも一つの前記パフォーマンスインジケータ112、走行レコーダ113または盗難防止装置111などの外部装置が接続されている。
【0013】
盗難防止装置111については、その設定過程において、例えばドアスイッチ信号、トランクルームドア信号、センターロック信号、イグニションスイッチ信号または関連する制御信号を取出す必要がある。制御統合装置110はCANバス108を介してこれら信号またはコマンドを簡単に取得するとともに、関連する状態判定テーブルおよび制御信号テーブルを作成して、状態判定テーブルおよび制御信号テーブルを用いて盗難防止装置111またはその他タイプの外部装置を設定する。
【0014】
しかし外部装置または制御統合装置110自身が制御信号を送出するとき、そのデータフォーマットが車体制御装置101で使用されるデータフォーマットと一致しなければならないので、制御信号テーブルによりその制御信号のデータフォーマットを変換して、仮想の車体制御装置101により車載機器を制御している。
【0015】
しかし従来技術には以下のような避けがたい欠点がある。
1.通常、車体制御装置および各車載機器の制御コンピュータ内には、各車載機器の制御コンピュータが実行可能なコマンドおよび各コマンドの対照する制御データが記録されているコマンド対照テーブルが格納されている。したがって制御統合装置は車体制御装置と同じように、同報モードで制御コマンドを送出して車載機器を制御するしかなく、指定された特定の車載機器を単独で制御することはできない。
【0016】
2.車載機器はいずれもが車体制御装置により制御されているとき、車体制御装置は各車載機器の状態をコントローラ・エリア・ネットワークに絶えず出力することで、車載機器および車体制御装置に記録されているデータの一致を図っている。制御統合装置は車載機器の制御権限を取得することができず、いずれの車載機器にも制御を行うことができない。
【0017】
3.制御統合装置は、コントローラ・エリア・ネットワーク内に組み込まれている車載機器しか制御できない。図3に示すように、全てドアスイッチ(door Switch)201、センターロック、左ヘッドライト203および右ヘッドライト204はいずれも車体制御装置101に直接接続され、イグニションスイッチ206、ブレーキシステム205(Anti lock Brake System、ABS、アンチロックブレーキシステム)、パフォーマンスインジケータ207、エンジン208、マルチメディア機器209などの車載機器と車体制御装置101とから構成されているコントローラ・エリア・ネットワーク内に組み込まれていない。しかもドアスイッチ(Door Switch)201、センターロック、左ヘッドライト203および右ヘッドライト204はいずれも車体制御装置101により電気またはアナログ信号で制御される。例えばセンターロックは、車体制御装置101が、アナログ回路で、左前ドアモータ(Front Left Motor)、右前ドアモータ(Front Right Motor)、左後ドアモータ(Rear Left Motor)、右後ドアモータ(Rear Right Motor)を含む全てのドアモータ202にアナログ信号を送出することで各ドアロックを制御している。よってこのアナログ形式の車載機器は制御統合装置110により制御することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
これに鑑み、本発明で解決すべき課題は、診断技術を用いて、車体制御装置が診断コマンドを出力する方式で各車載機器を制御するとともに、各車載機器の実行状態を監視・制御する制御装置およびその制御方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明で提示する技術的手段では、車体制御装置(Body Control Module;BCM)と複数の車載機器とから構成されているコントローラ・エリア・ネットワーク(Controller Area Network;CAN)に接続される自動車の検知・制御統合装置(Gateway Interface)を開示している。この自動車の検知・制御統合装置は、コマンドデータベースと、中央処理装置(Central Processing Unit;CPU)と、CANコントローラ(CAN Controller)とを備えている。
【0020】
このコマンドデータベースは、車載機器に対応する複数の装置診断コマンドを提供し、中央処理装置はコマンドデータベースに記録されているデータフォーマットを参照して、一つの車載機器に対応する一つの装置診断コマンドを出力する。CANコントローラは国際標準15765-4(ISO15765-4)の通信プロトコルに基づいて前記コントローラ・エリア・ネットワークに接続されるとともに、車載機器に対応する装置診断コマンドをコントローラ・エリア・ネットワークを介して出力することで、車体制御装置がこの装置診断コマンドに基づいて対応する車載機器を制御するように命令する。
【0021】
そしてこの装置診断コマンドは、車載機器のネットワーク識別子、車載機器の制御データおよび制御データの実行時間を含んでおり、車体制御装置はネットワーク識別子に基づいて対応する車載機器との直接の通信パスを構築するとともに、実行時間で指定されている時間の間、制御データを車載機器に出力し続ける。
【0022】
本発明にて開示する自動車の検知・制御統合装置は、全ての車載機器に対応する複数のネットワーク識別子および状態診断データが記録されている状態データベースを更に備えている。そしてCANコントローラは、送信データキャッシュモジュールと、受信データキャッシュモジュールとを備えている。送信データキャッシュモジュールは、中央処理装置が送出した装置診断コマンドを予め記録し、更に装置診断コマンドを順次出力して、車体制御装置が、対応する車載機器を制御して対応動作を実行するように命令する。受信データキャッシュモジュールは、まず状態データベースから全てのネットワーク識別子を取得して、更にコントローラ・エリア・ネットワークが送信したデータパケットを取り込み、全てのネットワーク識別子に一致させるとともに、一致したデータパケットを中央処理装置に出力する。
【0023】
本発明に開示する自動車の検知・制御統合装置はコンフィグレーション設定モジュールを更に備えており、コンフィグレーション設定モジュールが、CANコントローラがデータを送信する識別子長さおよびボーレート、および中央処理装置がデータパケットを取得し、装置診断コマンドの出力に使用される識別子長さを設定するのに供されるように、コマンドデータベースおよび状態データベースには各装置診断コマンドおよび状態診断データが対応するボーレート(baud Rate)および識別子長さ(Identifier length)が記録されている。
【0024】
本発明に開示する自動車の検知・制御統合装置はモデル切換えスイッチ(Model Switch)を更に備えており、中央処理装置での使用に供されるように、コマンドデータベースおよび状態データベースには各装置診断コマンドおよび状態診断データに対応するモデル数値が記録されているとともに、モデル切替スイッチのモデル数値に基づいて対応する状態診断データおよび装置診断コマンドを提供している。
【0025】
本発明に開示する自動車の検知・制御統合装置にて、そのコマンドデータベースおよび状態データベースの作成方法は、コントローラ・エリア・ネットワークのコンフィグレーション構成を判断するステップと、コンフィグレーション構成に基づいて、各車載機器の動作時に、コントローラ・エリア・ネットワークが送信した複数のデータパケットを取り込むステップと、データパケットを用いて車体制御装置が出力した制御データ、車載機器のネットワーク識別子および状態識別子を分析して、状態診断データとして集約するステップと、状態診断データを整合して状態データベースを作成するステップと、最後に、車載機器の制御データおよびネットワーク識別子のデータの依存関係を判断し、車載機器に対応する装置診断コマンドを作成して、コマンドデータベースを作成するステップと、を含む。
【0026】
上記問題を解決するために、本発明で提示する技術的手段では、車体制御装置と複数の車載機器とから構成されているコントローラ・エリア・ネットワークに接続され、複数の装置診断コマンドが記録されている自動車の検知・制御統合装置に適用される自動車の検知・制御統合方法を開示している。
【0027】
上記方法は、自動車の検知・制御統合装置を用いて、装置診断コマンドを車体制御装置に送信するステップと、車体制御装置を用いて装置診断コマンドを分析することで、対応する車載機器が装置診断コマンドに基づいて対応動作を実行するよう命令するステップとを含む。
【0028】
この自動車の検知・制御統合装置は複数の状態診断データを更に記憶しており、自動車の検知・制御統合方法は、自動車の検知・制御統合装置を用いて、車載機器が出力した状態応答データを取り込むとともに、状態応答データに一致した状態診断データを出力するステップを更に含む。
【0029】
本発明に開示する自動車の検知・制御統合方法において、この自動車の検知・制御統合装置には、分析、比較により関連動作を実行するのに供されるように、自動車の検知・制御統合装置が出力した状態診断データを取得する外部装置が更に接続されている。
【発明の効果】
【0030】
本発明では従来技術では達成しえなかった効果を備えている。
一、この自動車の検知・制御統合装置は車体制御装置を介して、装置診断コマンドを送出する方法で、単一、またはある機能に対応する一部の車載機器を制御するうえ、同報モードに限定されることはないので、送出された装置診断コマンドは特定の車載機器を選択して単独に動作させることができる。したがって、装置診断コマンドの応用において多様化された選択性を備え、ひいては装置診断と制御の正確性を向上させることができる。
【0031】
二、車体制御装置は各車載機器の状態データをコントローラ・エリア・ネットワークに絶えず出力しても、自動車の検知・制御統合装置は依然として車体制御装置を介して装置診断コマンドを送出するので、車載機器にとっては、その制御元は車体制御装置であるので、自動車の検知・制御統合装置が車載機器の制御権限を取得できないという問題の心配がなくなる。
【0032】
三、車載機器が車体制御装置に直接接続されて、コントローラ・エリア・ネットワーク内に組み込まれていなくとも、自動車の検知・制御統合装置は車体制御装置を介して装置診断コマンドを送出して、この形式の車載機器を制御することができる。
【0033】
四、自動車の検知・制御統合装置は国際標準15765-4(ISO15765-4)の通信プロトコルに基づいてコントローラ・エリア・ネットワークに接続されている。この通信プロトコルはコントローラ・エリア・ネットワークが外部装置と通信するのに使用される通信プロトコルであるので、コントローラ・エリア・ネットワークが元よりデータパケットを送信するのに使用される通信プロトコルに影響することはなく、ひいては自動車の検知・制御統合装置の適用性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の目的、構造的な特徴およびその機能を詳細に理解できるように、ここに関連する実施例および図面に合わせて詳細な説明を以下とおり行う。
【0035】
図4を参照されたい。これは本発明の実施例における自動車の検知・制御統合装置(Gateway Interface)であり、車体制御装置(Body Control Module;BCM)と複数の車載機器とから構成されているコントローラ・エリア・ネットワーク(Controller Area Network;CAN)に接続されることにより、自動車の検知・制御統合システムを構成している。そして接続方式は従来技術と同じであり、車載式故障診断システム(On Board Diagnostics;OBD)の診断ソケットで接続されている。診断ソケットは国際標準15031-3(ISO15031-3)規格(米国自動車技術者協会標準J1962(SAE J1962)規格であり、しかも診断ソケットの第6端子(pin6;CANHI)および第14端子(pin14;CANLOW)は予めCANバスに接続されている。ここでは別段の説明は省略する。
【0036】
この自動車の検知・制御統合装置は、コマンドデータベース410と、状態データベース420と、中央処理装置(CPU)440と、CANコントローラ(CAN Controller)450と、モデル切替スイッチ(Model Switch)430と、接続ポート(Output Stage)460とを備えている。CANコントローラ450は送信データキャッシュモジュール454と、コンフィグレーション設定モジュール453と、受信データキャッシュモジュール451とを備え、接続ポート460には外部装置470が接続されている。
【0037】
コマンドデータベース410は、車載機器に対応する複数の装置診断コマンドを格納しており、これら装置診断コマンドは車体制御装置がモデルを診断するのに使用される制御データである。各装置診断コマンドが含むデータには、車載機器に対応するネットワーク識別子と、車載機器の制御データと、制御データの実行時間が含まれる。また、コマンドデータベースには、各装置診断コマンドの対応するボーレート(Baud Rate)と、識別子長さ(Identifier length)と、モデル数値(Model Number)が更に記録されている。
【0038】
状態データベース420は、車載機器に対応する複数のネットワーク識別子および状態診断データと、各状態診断データの対応するボーレート(Baud Rate)と、識別子長さ(CAN Identifier)と、モデル数値(Model Number)が格納されている。ボーレートには、33.333Kbps(Kilo bit per second、キロビット/秒)、83.333Kbps、100Kbps、125Kbps、250Kおよび500Kbpsなどのタイプがあり、識別子長さには11ビット(bit)および29ビットの二種類がある。ただしボーレートおよび識別子長さのタイプはこれに限定されない。
【0039】
モード切替スイッチ430は、DIPスイッチ(DIP Switch) 431と、モデルデータベース(Model Database)432とを備えており、モデルデータベースは複数のモデル数値を含むとともに、DIPスイッチの動作状態に基づいて対応するモデル数値を提供している。
【0040】
例えば、本実施例におけるDIPスイッチは番号が1から4の四つのスイッチを備えており、しかもオン(on)が1、オフ(off)が0となっているので、設定範囲は0000から1111、つまり0から15を有し、合計16個のモデルが設定される。モデルデータベースは0000が第0モデル、モデル数値0を、0001が第1モデル、モデル数値1を、このような法則性で1111が第15モデル、モデル数値15を記録している。
【0041】
モデルデータベース432はDIPスイッチ431の動作状態に基づいて、対応するモデル数値をコマンドデータベース410、状態データベース420および中央処理装置440に提供する。コマンドデータベース410は関連する装置診断コマンドを中央処理装置440に提供して、状態データベース420は対応する状態診断データを提供するとともに、そのネットワーク識別子を、中央処理装置440を介して受信データキャッシュモジュール451に供給する。またこれ以外に、さらにそのモデルに使用されるボーレートおよび識別子長さを中央処理装置440を介してコンフィグレーション設定モジュールに送信して、受信データキャッシュモジュール451および送信データキャッシュモジュール454を設定する。
【0042】
しかしDIPスイッチのタイプが異なれば具備する動作状態も異なるので、モデルデータベースに格納されているデータ量の多寡はDIPスイッチのタイプに応じて相応に変化する。
【0043】
CANコントローラ450は国際標準15765-4(ISO15765-4)の通信プロトコルに基づいてCANバス456に接続されている。この通信プロトコルはCANバス456が外部装置と通信するのに使用される通信プロトコルであるとともに、CANバス456が元より使用する通信プロトコルとは異なっている。
【0044】
受信データキャッシュモジュール451は先ず、状態データベースが提供するネットワーク識別子を取得するとともに、識別子対照テーブル452を作成して、更に予め設定しておいたボーレートおよび識別子長さに基づいて、CANバス456に流れるデータパケット(CAN message data)を取り込む。これは車体制御装置および車載機器のCANバス456上で伝搬されるデータパケットであって、車体制御装置が送出した制御データ、または車載機器が応答した状態応答データが含まれている。
【0045】
その後、受信データキャッシュモジュール451はデータパケットのネットワーク識別子および前に作成した識別子対照テーブル452を、その記録されているネットワーク識別子と互いに比較対照する。ネットワーク識別子が互いに一致したデータパケットを取得した後、これを中央処理装置440に送信する。これは主に車載機器が返信した状態応答データを選択するのに用いられる。
【0046】
中央処理装置440はモデル切替スイッチ430が提供するモデル数値およびデータパケットのネットワーク識別子を参照して、このモデル数値およびネットワーク識別子に対応する状態診断データを状態データベース420中から取得することで、状態診断データが記録するファンクション(Function)、インデックスバイト(Index Byte)およびインデックスビット(Index Bit)、そして使用される出力信号(Output)などのデータにより、状態応答データに対してその実行する動作のマッチングならびにインタプリトを行う。
【0047】
その後、中央処理装置440は一致した状態診断データを出力するとともに、接続ポート460を介して外部装置470に出力することで、外部装置470は状態診断データに基づいて対応する実行動作を生成する。
【0048】
また、中央処理装置440がある特定の車載機器を制御するとき、直前のモデル数値に基づいてコマンドデータベースから同じモデル数値、全ての装置診断コマンドのデータフォーマットを取得するとともに、このデータフォーマットに基づいて車載機器に対する装置診断コマンドを生成し、更に送信データキャッシュモジュール454に送信する。装置診断コマンドは、制御する車載機器のネットワーク識別子、車載機器の制御データおよび制御データの実行時間を含む。
【0049】
送信データキャッシュモジュール454は送信する全ての装置診断コマンドを記録することでコマンド出力テーブル455を作成し、更にコマンド出力テーブル455に記録された装置診断コマンドをコントローラ・エリア・ネットワークを介して順次出力する。車体制御装置は装置診断コマンドに基づいて対応する車載機器を制御する。
【0050】
図4、図7Bおよび図8Bを同時に参照し、実際における使用の説明を行う。モデルデータベースが提供するモデル数値を0に設定し、コマンドデータベース410および状態データベース420はモデル数値が0である装置診断コマンドおよび状態診断データを提供する。中央処理装置440は、第0モデルにおいて、装置診断コマンドおよび状態診断データで使用されるボーレートが83.333K、識別子長さが11ビットであると判断するとともに、コンフィグレーション設定モジュール453に提供する。コンフィグレーション設定モジュール453は受信データキャッシュモジュール451および送信データキャッシュモジュール454のボーレートを83.333K、識別子長さを11ビットに設定する。その後、中央処理装置440は第0モデルにおいて、全ての車載機器が対応するネットワーク識別子の全てを受信データキャッシュモジュール451にキャッシュするとともに、識別子対照テーブル452を作成させる。
【0051】
図6のように、検知・制御方法については、使用者から見ると、コマンドデータベース、中央処理装置およびCANコントローラのみで達成できる。その制御方法には以下のステップが含まれる。
【0052】
自動車の検知・制御統合装置を用いて装置診断コマンドを送出し、装置診断コマンドはコントローラ・エリア・ネットワークを介して車体制御装置に送信される(ステップS610)。
【0053】
中央処理装置440が送出した制御データは、検出装置、盗難防止装置またはセンサなどとすることができる外部装置470が要求したものである可能性があるうえ、接続ポート460を介して中央処理装置440に通知されるか、または中央処理装置440が自発的に制御データを出力するものである。例えば送出される制御データは例えばドアロック(Lock)とされる。このとき中央処理装置は図8Bに示すコマンドデータベースに基づいて、第0モデルで、ファンクション(Function)が「F1 Lock」である装置診断コマンドを取得して、車体制御装置に送る。
【0054】
続いて、車体制御装置を用いて装置診断コマンドに含まれるネットワーク識別子および制御データを分析することで、ネットワーク識別子に対応する車載機器が装置診断コマンドに基づいて対応動作を実行するよう命令する(ステップS620)。
【0055】
図8Bから理解できるように、ファンクション(Function)が「F1 Lock」である装置診断コマンドは、ネットワーク識別子が「001C」、開始時間(Start Time)が0、制御データが「02、55、AA」である第1の制御コマンドと、ネットワーク識別子が「001C」、開始時間(Start Time)が14、制御データが「00、00、00」である第2の制御コマンドとを含む。001Cの対応する車載機器を方向指示灯に、車体制御装置は0秒から装置制御コマンドを送出し、14ミリ秒後に装置制御コマンドの出力を停止するように設定すると、方向指示灯は0秒から起動し、14ミリ秒後で消灯する。この法則性で、単一のコマンドまたは連続したコマンドを作成できる。
【0056】
データの取り込みでは、コマンドデータベース410、中央処理装置440およびCANコントローラ450の送信データキャッシュモジュールにより実現される。その方法は次のステップである。
【0057】
自動車の検知・制御統合装置を用いて、車載機器が出力した状態応答データを取り込むとともに、状態応答データに一致した状態診断データを出力する(ステップS630)
【0058】
例えば、受信データキャッシュモジュール451が、ネットワーク識別子が001Fであるデータパケットを受信したとき、これを中央処理装置440に送信する。中央処理装置440は、状態データベースより、第0モデルで、ネットワーク識別子が001Fである状態診断データを取得して、データパケットに含まれる状態応答データにインタプリトを行う。図7Bから理解できるように、ネットワーク識別子が001Fであるファンクションはドアオープン(F1 Door Open)、インデックスバイトは4個目のバイト、インデックスビットは2個目のビット、使用される信号はP0であり、それは第0チャネルを正極トリガとして作動させることを意味している。最後に中央処理装置440は一致した状態診断データを接続ポート460から外部装置470に出力する。
【0059】
例えば外部装置470が検出装置である場合には、取得した状態診断データに基づいて車載機器の動作が正常であるか否かを判断する。もし外部装置が盗難防止装置である場合には、現在、アラーム設定(ARM)であるか、またはアラーム解除(DiSARM)であるかに基づいて、更に取得した状態診断データ(つまりドアオープン(F1 Door Open))に基づいてアラーム信号を送出するか否かを判断する。
【0060】
以上、自動車の検知・制御統合装置は、例えば盗難防止装置、走行レコーダ、パフォーマンスインジケータ(Gauge)などの何らかの外部装置について、データ監視、取り込みの技術を用いて外部装置の設定または関連する動作を起動させている。そして外部装置が送出した要求は、自動車の検知・制御統合装置を介してフォーマットが一致したコマンドを送出することで各車載機器を制御するとともに、コントローラ・エリア・ネットワーク自体が使用する制御形態を妨げることはなくなる。また、このような検知・制御原理は、自動車における診断作業に用いられ、データパケットを取り込むことで車載機器の応答を検出し、装置制御コマンドの送出により単一の、一部の、または同じ機能属性の車載機器を作動させることで、車載機器の診断の利便性を図り、ひいては装置の適用範囲を広げることができる。
【0061】
図5を参照されたい。これは本発明の実施例における自動車の検知・制御データベースの作成方法である。主に車体制御装置と複数の車載機器とから構成されているコントローラ・エリア・ネットワークに対して、その伝送されたデータパケットを解析するとともに、図4のように、自動車の検知・制御統合装置で使用されるコマンドデータベースおよび状態データベースを作成する。全体の流れは、診断方式でデータベースの作成が行われる。
【0062】
まず、コントローラ・エリア・ネットワークのコンフィグレーション構成を判断する(ステップS510)。この判断方法には下記の二種類がある。
【0063】
一、コントローラ・エリア・ネットワークの物理層を分析し、それがシングルワイヤCAN(Single Wire CAN)であるか、ツーワイヤCAN(Two Wire CAN)であるかを判断する。異なる配線構造では、使用される通信プロトコル、データパケットの伝送方式、伝送速度が異なるため、予め判断しなければならない。
【0064】
二、コントローラ・エリア・ネットワークのデータ接続層を分析する。このデータ接続層は国際標準11898-1(ISO 11898-1)規格のプロトコルを使用してデータパケットを伝送している。そして条件の分析では、正確なデータパケットを取り込むために、データパケットの伝送に使用されるボーレート(Baud Rate)およびデータパケットの識別子長さが含まれる。このボーレートには、33.333Kbps、83.333Kbps、100Kbps、125Kbps、250Kbpsおよび500Kbpsなどのタイプがあり、識別子長さには11ビット(bit)および29ビットの二種類がある。ただしボーレートおよび識別子長さのタイプはこれに限定されない。
【0065】
次ぎに、コンフィグレーション構成に基づいて、各車載機器の動作時に、コントローラ・エリア・ネットワークが送信した複数のデータパケットを取り込む(ステップS520)。
【0066】
例えば、ドアスイッチ(Door Switch)がオンしたとき、CANバス456上で送信されるデータパケットを取り込む。これらデータパケットは車体制御装置が送信した制御データ、およびドアスイッチに対応するドア制御モジュール(Door Control Module)から返信された状態応答データが含まれ得る。そして取り込みの手法は83.333Kの伝送速度でデータパケットを取り込むものであり、各データパケットの識別子長さは11bitである。
【0067】
データパケットを用いて、車体制御装置が出力した制御データ、車載機器のネットワーク識別子および状態識別子を分析する(ステップS530)。
【0068】
ドアスイッチを例に取れば、このドアスイッチはオープン状態およびクローズ状態となり、返信されるデータパケットは異なる。正確に言えば、データパケットに含まれる車載機器のネットワーク識別子は同じであり得るが、状態応答データは異なる。二つの異なる状態応答データにより、その変更されたインデックスバイト(Index Byte)およびインデックスビットにおける実際に変更されたインデックスビット(Index bit)、およびその状態識別子の示す意味を分析する。
【0069】
図7Aに示すように、ファンクションが「ドアスイッチ」であり、これが対応するネットワーク識別子(CAN ID) が「001F」、その状態応答データは4個目のバイトにおける2個目のビットを検査する必要がある。論理数値(Logical Number)が1ではドアスイッチがオンを示し、論理数値が0ではドアスイッチがオフであることを示している。この法則性で、各車載機器の分析を行う。
【0070】
コントローラ・エリア・ネットワークのコンフィグレーション構成、車載機器のファンクション、車載機器のネットワーク識別子および状態識別子を集約して、状態診断データを作成するとともに、全ての車載機器の状態診断データを整合して状態データベースを作成する(ステップS540)。
【0071】
コンフィグレーション構成とは、前記したボーレートおよび識別子長さを指し、車載機器のファンクション、車載機器のネットワーク識別子および図7Aにて集められ整理された状態データといった状態識別子は、各車載機器に対応する状態診断データ、つまり各状態応答データのインタプリト法則を逐一整合して作成し、更に全ての状態応答データを整合して、図7Bに示す状態データベースを作成する。
【0072】
車載機器に対応する制御データおよび車載機器のネットワーク識別子のデータの依存関係を判断し、車載機器に対応する装置診断コマンドを分析するとともに、コントローラ・エリア・ネットワークのコンフィグレーション構成および装置診断コマンドを集約して、コマンドデータベースを作成する(ステップS550)。
【0073】
図8Aに示す表のように、ドアロックを例に取れば、車体制御装置がロック(Lock)制御を送出したとき、そのネットワーク識別子が「001C」、制御データ(Command Data)がそれぞれ「20204848」、「10104848」および「00000000」であり、時間長さが各々「0014」、「0014」および「00000000」である3つのパケットデータを送出する。その後、作動する車載機器はドアロック、方向指示灯であり、しかも20ミリ秒(millisecond ;ms)で停止する。つまり、車体制御装置は20ミリ秒内に、ロック(Lock)および方向指示灯を起動する制御データを継続的に送出し、20ミリ秒の後には、動作を停止する制御データを送出して、方向指示灯およびドアロックの継続的な作動を停止する。
【0074】
車載機器が応答する状態応答データを参照するか、または状態データベースを用いて装置診断コマンドを設定し、車載機器の制御データ、ネットワーク識別子および状態応答データのデータの依存関係を判断して、車載機器に対応する装置診断コマンドを作成する。更にコントローラ・エリア・ネットワークのコンフィグレーション構成および全ての装置診断コマンドを整合して、図7Bに示すコマンドデータベース410を記憶し作成する。
【0075】
しかし作成された装置診断コマンドおよび状態診断データはデータに依存しているので、コマンドデータベース410および状態データベース420は互いに導き出すことができる。しかも、コマンドデータベース410および状態データベース420が、車種の異なる多種類のコントローラ・エリア・ネットワークのデータを記録する場合には、コマンドデータベースおよび状態データベースにて各々モデル (Model) の枠を新たに増設することで、各々装置診断コマンドおよび状態診断データに対応するモデル数値(Model Number)を記録し、モデル数値によりそのデータが適用可能な車種を区別することができる。例えば、モデル数値が0では、そのデータがベンツ-S320(Benz S320)の車種に、モデル数値が1では、トヨタ-RAV-4の車種に適用されることを示すことができる。あとはこの法則性に基づくものである。
【0076】
本発明は確かに前記の好ましい実施例を上記のごとく開示しているが、これは本発明を限定するためのものではなく、当業者により、本発明の技術的思想および範囲を逸脱することなく、行われる変更および付加といった等価な置換は、本発明の特許で保護する範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】従来技術における第1の種類の構造概略図である。
【図2】従来技術における第2の種類の構造概略図である。
【図3】従来技術における第3の種類の構造概略図である。
【図4】本発明の実施例における装置の構造概略図である。
【図5】本発明の実施例における検知・制御データベースの作成フローチャートである。
【図6】本発明の実施例における検知・制御方法のフローチャートである。
【図7A】本発明のコントローラ・エリア・ネットワークのデータ解析テーブルである。
【図7B】本発明の実施例における状態データベースのデータ格納概略図である。
【図8A】本発明のコントローラ・エリア・ネットワークのコマンド解析テーブルである。
【図8B】本発明の実施例におけるコマンドデータベースのデータ格納概略図である。
【符号の説明】
【0078】
100 ICキー
101 車体制御装置
102 右前ドア制御モジュール
103 左前ドア制御モジュール
104 左後ドア制御モジュール
105 右後ドア制御モジュール
106 前方信号アクセスモジュール
107 後方信号アクセスモジュール
108 CANバス
109 リモコンキー
110 制御統合装置
111 盗難防止装置
112 パフォーマンスインジケータ
113 走行レコーダ
114 診断ソケット
201 ドアスイッチ
202 ドアモータ
203 左ヘッドライト
204 右ヘッドライト
205 ブレーキシステム
206 イグニションスイッチ
207 パフォーマンスインジケータ
208 エンジン
209 マルチメディア機器
410 コマンドデータベース
420 状態データベース
430 モデル切替スイッチ
431 DIPスイッチ
432 モデルデータベース
440 中央処理装置
450 CANコントローラ
451 受信データキャッシュモジュール
452 識別子対照テーブル
453 コンフィグレーション設定モジュール
454 送信データキャッシュモジュール
455 コマンド出力テーブル
456 CANバス
460 接続ポート
470 外部装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体制御装置(Body Control Module;BCM)と複数の車載機器とから構成されているコントローラ・エリア・ネットワークに接続される自動車の検知・制御統合装置であって、前記自動車の検知・制御統合装置は、
前記複数の車載機器に対応する複数の装置診断コマンドを提供するコマンドデータベースと、
前記複数の車載機器に対応する複数のネットワーク識別子および状態診断データを提供する状態データベースと、
前記コマンドデータベースに記録されているデータフォーマットに基づいて、検知された前記車載機器に対応する装置診断コマンドを出力し、そしてデータパケットと前記状態データベースとを一致させて、対応する状態診断データを出力する中央処理装置と、
国際標準15765-4(ISO15765-4)の通信プロトコルに基づいて前記コントローラ・エリア・ネットワークに接続されているCANコントローラと、
モデル数値を提供するモデル切換えスイッチと、を備え、
前記CANコントローラは、
前記装置診断コマンドを記録するとともに、前記装置診断コマンドを前記コントローラ・エリア・ネットワークを介して順次出力することで、前記車体制御装置が前記装置診断コマンドに基づいて対応する前記車載機器を制御するように命令する送信データキャッシュモジュールと、
前記状態データベースの前記複数のネットワーク識別子を取得するとともに、前記コントローラ・エリア・ネットワークが送信した前記データパケットを取り込み前記複数のネットワーク識別子を一致させることで、一致した前記データパケットを前記中央処理装置に出力する受信データキャッシュモジュールと、
前記CANコントローラがデータを送信するボーレート(Baud Rate)を設定するコンフィグレーション設定モジュールと、を備え、
前記コマンドデータベースには、前記装置診断コマンドの各々に対応するモデル数値が記録されるとともに、前記モデル切換えスイッチのモデル数値に基づいて対応する少なくとも一つの装置診断コマンドを提供し、
前記状態データベースには、前記状態診断データの各々に対応するモデル数値が記録されるとともに、前記モデル切換えスイッチのモデル数値に基づいて対応する少なくとも一つの状態診断データを提供することを特徴とする、自動車の検知・制御統合装置。
【請求項2】
前記コマンドデータベースには前記装置診断コマンドの各々に対応するボーレートが記録され、前記状態データベースには前記状態診断データの各々に対応するボーレートが記録されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項3】
前記CANコントローラおよび前記中央処理装置がデータを送信する識別子長さ、および前記中央処理装置が前記データパケットを取得し、前記装置診断コマンドの出力に使用される識別子長さを設定するコンフィグレーション設定モジュールを更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項4】
前記コマンドデータベースには前記装置診断コマンドの各々に対応する識別子長さが記録され、前記状態データベースには前記状態診断データの各々に対応する識別子長さが記録されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項5】
前記装置診断コマンドの各々が車載機器のネットワーク識別子、前記車載機器の制御データおよび前記制御データの実行時間を含むことを特徴とする請求項1に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項6】
前記車体制御装置が、前記ネットワーク識別子に基づいて前記車載機器との直接の通信パスを構築するとともに、前記直接の通信パスを介して、前記実行時間で指定されている時間の間、前記制御データを前記車載機器に出力し続けることを特徴とする請求項5に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項7】
前記モデル切換えスイッチが、DIPスイッチ(DIP Switch)と、複数のモデル数値を含むとともに前記DIPスイッチの動作状態に基づいて対応するモデル数値を提供するモデルデータベースと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項8】
前記データパケットが、前記車載機器が出力した状態応答データであることを特徴とする請求項1に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項9】
車体制御装置(Body Control Module;BCM)と複数の車載機器とから構成されているコントローラ・エリア・ネットワークに接続される自動車の検知・制御統合装置であって、前記自動車の検知・制御統合装置は、
前記複数の車載機器に対応する複数の装置診断コマンドを提供するコマンドデータベースと、
前記コマンドデータベースに基づいて車載機器に対応する装置診断コマンドを出力する中央処理装置と、
国際標準15765-4(ISO15765-4)の通信プロトコルに基づいて前記コントローラ・エリア・ネットワークに接続されるとともに、前記装置診断コマンドを前記コントローラ・エリア・ネットワークを介して出力することで、前記車体制御装置が前記装置診断コマンドに基づいて対応する前記車載機器を制御するように命令するCANコントローラと、
前記CANコントローラがデータを送信するボーレートを、前記中央処理装置から提供を受けて設定するコンフィグレーション設定モジュールと、
モデル数値を提供するモデル切換えスイッチと、を備え、
前記コマンドデータベースには前記装置診断コマンドの各々に対応するモデル数値が記録されるとともに、前記モデル数値に基づいて対応する少なくとも一つの装置診断コマンドを提供することを特徴とする自動車の検知・制御統合装置。
【請求項10】
前記複数の車載機器に対応する複数のネットワーク識別子および状態診断データを提供する状態データベースを更に備え、前記CANコントローラが更に前記コントローラ・エリア・ネットワークが送信したデータパケットを取り込むとともに出力し、前記中央処理装置が前記データパケットを前記状態データベースに一致させることで、対応する状態診断データを出力することを特徴とする請求項9に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項11】
前記コマンドデータベースには前記装置診断コマンドの各々に対応するボーレートが記録されていることを特徴とする請求項9に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項12】
前記装置診断コマンドの各々が車載機器のネットワーク識別子、前記車載機器の制御データおよび前記制御データの実行時間を含むことを特徴とする請求項9に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項13】
前記モデル切換えスイッチが、DIPスイッチ(DIP Switch)と、複数のモデル数値を含むとともに前記DIPスイッチの動作状態に基づいて対応するモデル数値を提供するモデルデータベースと、を備えたことを特徴とする請求項9に記載の自動車の検知・制御統合装置。
【請求項14】
車体制御装置(Body Control Module;BCM)と複数の車載機器とから構成されているコントローラ・エリア・ネットワークに接続される自動車の検知・制御統合装置であって、前記自動車の検知・制御統合装置は、
前記複数の車載機器に対応する複数の装置診断コマンドを提供するコマンドデータベースと、
前記コマンドデータベースに基づいて車載機器に対応する装置診断コマンドを出力する中央処理装置と、
国際標準15765-4(ISO15765-4)の通信プロトコルに基づいて前記コントローラ・エリア・ネットワークに接続されるとともに、前記装置診断コマンドを前記コントローラ・エリア・ネットワークを介して出力することで、前記車体制御装置が前記装置診断コマンドに基づいて対応する前記車載機器を制御するように命令するCANコントローラと、
前記CANコントローラがデータを送信するボーレートを、前記中央処理装置から提供を受けて設定するコンフィグレーション設定モジュールと、
モデル数値を提供するモデル切換えスイッチと、を備え、
前記コマンドデータベースには前記装置診断コマンドの各々に対応するモデル数値が記録されるとともに、前記モデル数値に基づいて対応する少なくとも一つの装置診断コマンドを提供し、
前記複数の車載機器に対応する複数のネットワーク識別子および状態診断データを提供する状態データベースを更に備え、前記CANコントローラが更に前記コントローラ・エリア・ネットワークが送信したデータパケットを取り込むとともに出力し、前記中央処理装置が前記データパケットを前記状態データベースに一致させることで、対応する状態診断データを出力し、
前記CANコントローラには外部装置が更に接続されており、前記中央処理装置から出力された状態診断データに基づいて前記外部装置の動作を制御することを特徴とする自動車の検知・制御統合装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2012-12-12 
出願番号 特願2008-150305(P2008-150305)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (B60R)
P 1 41・ 852- Y (B60R)
P 1 41・ 851- Y (B60R)
P 1 41・ 857- Y (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 信秀  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 杉浦 貴之
小関 峰夫
登録日 2011-07-29 
登録番号 特許第4790760号(P4790760)
発明の名称 自動車の検知・制御統合装置およびその方法  
代理人 山口 朔生  
代理人 山口 朔生  
代理人 山口 朔生  

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