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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B42D
管理番号 1279060
審判番号 無効2011-800118  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-07-04 
確定日 2013-06-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4685970号「印刷物」の特許無効審判事件についてされた平成24年 1月31日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成24年(行ケ)第10414号平成24年12月17日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4685970号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4685970号(以下「本件特許」という。登録時の請求項の数は4である。)の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案である。


第2 手続の経緯
1 出願の経緯
本件特許の出願の経緯は、以下のとおりである。

平成17年 4月19日 特願2005-120502号出願
(以下「原出願」という。)
平成22年 9月 7日 分割出願(特願2010-199594号)
(以下「本件特許出願」という。)
平成23年 2月18日 本件特許設定登録(特許第4685970号)

2 本件審判の経緯
本件審判の経緯は、以下のとおりである。

平成23年 7月 4日 審判請求書・甲第1?7号証提出
平成23年 9月27日 審判事件答弁書・訂正請求書・乙第1号証提出
平成23年11月 2日 審判事件弁駁書・甲第8?16号証提出
平成23年11月30日 通知書
平成24年 1月10日 口頭審理陳述要領書(請求人)
・甲第17?19号証提出
平成24年 1月10日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成24年 1月23日 口頭審理・審理終結
平成24年 1月31日 (1次)審決
平成24年12月17日 判決((1次)審決取消)
平成25年 3月 1日 訂正請求書・意見書
平成25年 3月27日 審判事件第2弁駁書
平成25年 4月10日 手続補正書(被請求人)


第3 訂正請求について
1 訂正請求の内容
被請求人が平成25年3月1日にした訂正請求(以下、同訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書(以下「本件特許明細書」という。)について、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを請求するものであって、以下の事項をその訂正内容とするものである(訂正による変更部分に下線を付した。)。

(1)訂正事項1
特許第4685970号における特許請求の範囲の請求項1を、
「 左側面部(2)と右側面部(3)が中央面部(1)の同一の面の方へ折られて重ねられた返信用葉書付き広告用印刷物であって,
どちらか一方の側面部(2又は3)のみに重なる返信用葉書(4)が中央面部(1)に印刷されており、分離して使用できるように周囲に切り込み(9)が入っていること、
該返信用葉書(4)が落下しないように、該返信用葉書(4)と重なる一方の側面部(2又は3)と、該返信用葉書(4)とが一過性の粘着剤により貼着されていること,
かつ、左側面部(2)と右側面部(3)と、該返信用葉書(4)を除く中央面部(1)とが一過性の粘着剤により貼着されていることからなり、
開くとどちらか一方の側面部(2又は3)のみに該返信用葉書(4)が付いてくることを特徴とする返信用葉書付き広告用印刷物。」
と訂正する。

(2)訂正事項2
特許第4685970号における特許請求の範囲の請求項2を、
「 該返信用葉書(4)が落下しないように貼着するための一過性の粘着剤が、塗布後でもその上から文字が書ける一過性の粘着剤であることを特徴とする請求項1に記載の返信用葉書付き広告用印刷物。」
と訂正する。

2 訂正の適否
上記訂正事項1及び訂正事項2は、訂正前の請求項1及び2において、
i 「左側面部(2)」及び「右側面部(3)」が「中央面部(1)」の方へ折られて重ねられる方向が、その「同一の面の方」である、と訂正し、
ii 「分離して使用するもの(4)」を、「返信用葉書(4)」と訂正し、
iii 「印刷物」を、「返信用葉書付き広告用印刷物」と訂正するものである。
(1)訂正の目的
上記iの訂正は、「左側面部(2)」及び「右側面部(3)」が「中央面部(1)」の方へ折られて重ねられる方向につき、当該「中央面部(1)」の同一の面の方であることを限定するものであり、また、上記iiの訂正は、「分離して使用するもの(4)」が、「返信用葉書(4)」であることを限定するものであり、また、上記iiiの訂正は、「印刷物」が、「返信用葉書付き広告用印刷物」であることを限定するものであるから、上記i?iiiの訂正からなる訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第134条の2第1項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
(2)新規事項、実質変更の有無
ア 上記iの訂正は、本件特許の出願当初明細書の【0014】?【0022】に記載された「第1の実施例」に関する説明における、「右側面部3及び左側面部2を中央面部1の方に折って重ねると、右側面部3又は左側面部2は中央面部1に剥離可能に貼着される。」(【0018】)、「図2は左側面部の裏面と右側面部の裏面を中央面部の裏面及び右側面部を分離して使用するものに貼着した状態を示す図である。…分離して使用するもの4の周囲のみに切り込み9を入れる。…左、右に開く場合は、開く箇所を示した部分6,7より開けば容易に開くことが出来る。」(【0019】)との記載に照らして出願当初の図2を見れば、本件特許の出願当初明細書及び図面(以下「本件当初明細書等」という。)に記載されていた事項といえるから、本件当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかである。
イ また、上記ii及びiiiの訂正は、本件特許の出願当初明細書の【0012】に、「…例えば分離して使用するものが葉書の場合には、すぐに葉書を出してもらえるというレスポンス向上の期待がさらに多くなり…」との記載がされ、当該「葉書」が、(広告用)印刷物を作成した(業)者に返信されるものであることは明らかといえるから、本件当初明細書等に記載された事項の範囲内でするものである。
ウ なお、上記イの点につき、請求人は、審判事件第2弁駁書において、「葉書が返信用であるためには、少なくとも、宛名等の返信用にしか使用できない情報が当該葉書に予め印刷されている必要があ」り、「本件明細書及び図面には、葉書にどのような情報を印刷するか記載も示唆もされておらず、葉書が返信用であると決めつけることはできない。」(4頁)と主張するが、本件特許の出願当初明細書の【0012】に記載された「葉書」が、(広告用)印刷物を作成した(業)者に返信されるものであることが明らかなのは、上記イで述べたとおりである。
エ さらに、上記i?iiiの訂正からなる訂正事項1及び訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)特許法第36第6項第1号違反に関する請求人の主張について
ア 請求人は、平成23年11月2日付け審判事件弁駁書において、(訂正後の発明は)本件訂正明細書の発明の詳細な説明の欄は一切訂正されておらず、段落【0007】には、課題を解決するための手段として、訂正前の発明が記載されており、訂正後の特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載されておらず、特許法第36第6項第1号違反の無効理由を有する旨主張する(4?6頁)。
イ そして、確かに、本件訂正後の明細書の発明の詳細な説明の欄は訂正されておらず、段落【0007】には、課題を解決するための手段として、訂正前の特許請求の範囲に対応するものが記載されている。
ウ しかしながら、本件訂正後明細書の【技術分野】(段落【0001】)、【発明が解決しようとする課題】(段落【0004】、【0006】)、【課題を解決するための手段】(段落【0009】)、【発明の効果】(段落【0012】)の記載に照らせば、「分離して使用するもの」として例示された「葉書」は、「分離して使用するもの」の具体的な一態様といえる。また、本件特許に係る発明は、訂正明細書中の第1の実施例(【図1】?【図4】)に相当するが、この実施例に関する説明として「分離して使用するもの4(例えば葉書等)」(段落【0019】)と記載されており、「分離して使用するもの4」が図示された形状に限られない旨が記載されている(段落【0014】)。そして、上記(2)イで述べたとおり、当該「葉書」は、(広告用)印刷物を作成した(業)者に返信される「返信用葉書」であることは明らかである。よって、「分離して使用するもの」に関する上記実施例は、「返信用葉書」に関する実施例とみることができ、「返信用葉書」に係る訂正発明は、訂正明細書の実施例として記載されているものと認められる。
エ したがって、課題を解決するための手段として、本件訂正後の発明が訂正明細書の発明の詳細な説明の欄に記載されていないからといって、直ちに特許法第36第6項第1号に規定する要件を満たしていないとまでいうことはできない。
(4)まとめ
以上のとおり、上記訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第134条の2第1項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

3 本件訂正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正を認める。


第4 本件訂正発明
上記のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許第4685970号の請求項1及び2に係る発明は、次の各請求項に記載したとおりのものと認められる。

「【請求項1】 左側面部(2)と右側面部(3)が中央面部(1)の同一の面の方へ折られて重ねられた返信用葉書付き広告用印刷物であって,どちらか一方の側面部(2又は3)のみに重なる返信用葉書(4)が中央面部(1)に印刷されており、分離して使用できるように周囲に切り込み(9)が入っていること、該返信用葉書(4)が落下しないように、該返信用葉書(4)と重なる一方の側面部(2又は3)と、該返信用葉書(4)とが一過性の粘着剤により貼着されていること,かつ、左側面部(2)と右側面部(3)と、該返信用葉書(4)を除く中央面部(1)とが一過性の粘着剤により貼着されていることからなり、開くとどちらか一方の側面部(2又は3)のみに該返信用葉書(4)が付いてくることを特徴とする返信用葉書付き広告用印刷物。
【請求項2】 該返信用葉書(4)が落下しないように貼着するための一過性の粘着剤が、塗布後でもその上から文字が書ける一過性の粘着剤であることを特徴とする請求項1に記載の返信用葉書付き広告用印刷物。」(以下、請求項1、2に係る発明を、それぞれ、「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」といい、両者を総称して「本件訂正発明」という。)


第5 請求人の主張の概要及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人が主張する無効理由は、概略、以下のとおりである。
(1)設定登録時の請求項1ないし4に係る発明について
請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?4号証に記載された周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。請求項2ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証に記載された周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである(審判請求書6頁)。
(2)ア 平成23年9月27日付け訂正請求は、特許法第134条の2第1項ただし書きのいずれの事項も目的とするものではない(審判事件弁駁書2?4頁)。
イ 訂正後の特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明の欄に記載されておらず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(審判事件弁駁書4?6頁)。
ウ 訂正後の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?6号証、甲第9?16号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(審判事件弁駁書6?30頁)。
(3)ア 葉書が返信用であるためには、少なくとも、宛名等の返信用にしか使用できない情報が当該葉書に予め印刷されている必要があるが、この点、本件明細書及び図面には、葉書にどのような情報を印刷するか記載も示唆もされておらず、葉書が返信用であると決めつけることはできないから、「分離して使用するもの」を「返信用葉書」とする訂正は、改正前特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第3項の規定に違反する(審判事件第2弁駁書4、5頁)。
イ 平成25年3月1日付けの訂正請求書に係る訂正後の発明(二次訂正発明)は、平成23年9月27日付けの訂正請求書に係る訂正後の発明(一次訂正発明)に係る「葉書」を「返信用葉書」としたにすぎないものであり、「葉書」と「返信用葉書」に実質的な差異がなく、一次訂正発明と二次訂正発明との間にも実質的な差異はないから、二次訂正発明は、一次訂正発明と同様に、甲第1号証発明及び周知技術から当業者が容易に発明することができたものである(審判事件第2弁駁書6、7頁)。

2 請求人提示の証拠方法
請求人が本件審判請求にあたり提示した証拠方法は、以下のとおりである。

平成23年7月4日付けの審判請求書に添付されたもの
甲第 1号証:登録実用新案第3070251号公報
甲第 2号証:登録実用新案第3096910号公報
甲第 3号証:特開2004-133065号公報
甲第 4号証:登録実用新案第3096613号公報
甲第 5号証:特許第2996720号公報
甲第 6号証:実用新案登録第2598829号公報
甲第 7号証:特許第4685970号公報(本件特許公報)

平成23年11月2日付け審判事件弁駁書に添付されたもの
甲第 8号証:「知財管理」Vol.60 No.11 2010 第1827?183
7頁
甲第 9号証:実用新案登録第2535324号公報
甲第10号証:実願平1-33834号(実開平2-124180号)
のマイクロフィルム
甲第11号証:実願平4-32362号(実開平5-82581号)
のCD-ROM
甲第12号証:特開平6-32083号公報
甲第13号証:特開2001-1676号公報
甲第14号証:実公昭60-21252号公報
甲第15号証:実願昭57-19988号(実開昭58-123069
号)のマイクロフィルム
甲第16号証:実願平1-115348号(実開平3-55272号)
のマイクロフィルム

平成24年1月10日付け口頭審理陳述要領書に添付されたもの
甲第17号証:特開2000-177277号公報
甲第18号証:実願平5-598号(実開平6-55763号)の
CD-ROM
甲第19号証:実願平1-16975号(実開平2-108073号)
のマイクロフィルム

平成25年3月27日付け審判事件第2弁駁書に添付されたもの
甲第20号証:「広辞苑」第四版、株式会社岩波書店、第2321頁


第6 被請求人の主張の概要及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、訂正後の本件特許は、無効理由がない旨の主張をした。

2 被請求人提示の証拠方法
被請求人が本件審判請求にあたり提示した証拠方法は、以下のとおりである。

平成23年9月27日付け審判事件答弁書に添付されたもの
乙第1号証:「広辞苑」第四版、株式会社岩波書店、第1977頁


第7 無効理由についての当審の判断
1 甲号証
(1)甲第1号証
本件の原出願前に頒布され、請求人が提出した甲第1号証(登録実用新案第3070251号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 用紙を折畳み、その用紙の折畳み対向紙片どうしを擬似接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し、その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなることを特徴とするプリペイドカード付きシート。
【請求項2】 用紙を折畳み、その用紙の折畳み対向紙片どうしを擬似接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し、その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなり、
上記有価証券情報が、その有価証券価値分の携帯電話の通話を可能とする情報からなることを特徴とするプリペイドカード付きシート。
【請求項3】 用紙を3つに折畳み、その用紙の折畳み対向紙片のうち、中紙と一の外紙とを擬似接着し、該中紙と他の外紙とを一体に永久接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面のうち、上記中紙の擬似接着面側に有価証券情報を印字し、この有価証券情報の印字部を含む上記中紙の一部とこれに一体に接着されている上記他の外紙の一部とに、これらを1枚のプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなることを特徴とするプリペイドカード付きシート。
【請求項4】 用紙を3つに折畳み、その用紙の折畳み対向紙片のうち、中紙と一の外紙または他の外紙の少なくともいずれか一つとを擬似接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面のうち、上記一または他の外紙の擬似接着面側に有価証券情報を印字し、この有価証券情報の印字部を含む外紙の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなることを特徴とするプリペイドカード付きシート。
【請求項5】 用紙を2つに折畳み、その用紙の折畳み対向紙片どうしを擬似接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し、その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなることを特徴とするプリペイドカード付きシート。
【請求項6】 用紙を3つに折畳み、その用紙の折畳み対向紙片のうち、中紙と一の外紙とを擬似接着し、該中紙と他の外紙とを一体に永久接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面のうち、上記中紙の擬似接着面側に有価証券情報を印字し、この有価証券情報の印字部を含む上記中紙の一部とこれに一体に接着されている上記他の外紙の一部とに、これらを1枚のプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなり、
上記有価証券情報が、その有価証券価値分の携帯電話の通話を可能とする情報からなることを特徴とするプリペイドカード付きシート。
【請求項7】 用紙を3つに折畳み、その用紙の折畳み対向紙片のうち、中紙と一の外紙または他の外紙の少なくともいずれか一つとを擬似接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面のうち、上記一または他の外紙の擬似接着面側に有価証券情報を印字し、この有価証券情報の印字部を含む外紙の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなり、
上記有価証券情報が、その有価証券価値分の携帯電話の通話を可能とする情報からなることを特徴とするプリペイドカード付きシート。
【請求項8】 用紙を2つに折畳み、その用紙の折畳み対向紙片どうしを擬似接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し、その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなり、
上記有価証券情報が、その有価証券価値分の携帯電話の通話を可能とする情報からなることを特徴とするプリペイドカード付きシート。」
イ 「【0009】
【考案が解決しようとする課題】
本考案は上記従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、製造過程での不良品の発生が少なく、高速・大量生産に好適で、かつカード購入者にキーワード等の有価証券情報を正確に伝えることができ、また当該有価証券情報を確実に隠蔽できるプリペイドカード付きシートを提供することにある。」
ウ 「【0020】
図1は本考案の一実施形態を示したものであり、同図のプリペイドカード付きシートS1は、1枚の用紙1をN型に3つに折畳んでなる、いわゆるN型3つ折りタイプであり、その用紙1の折畳みにより互いに対向し合う紙片2、3、4(以下「折畳み対向紙片」という。)のうち、中紙3と一の外紙2とは剥離可能に擬似的に接着(以下「擬似接着」という。)され、中紙3と他の外紙4とは剥離不能に永久的に接着(以下「永久接着」という。)されている。
【0021】
なお、上記のような中紙3と一の外紙2との擬似接着にはオープンタイプフィルム5を用いている。オープンタイプフィルム5は2枚のフィルム5a、5bからなり、これらを重ねて中紙3と一の外紙2との間に介挿し熱圧着させると、一方のフィルム5aと中紙3、および他方のフィルム5bと一の外紙2は永久接着状態となるが、その両フィルム5a、5bどうしは擬似接着状態となる。したがって、中紙3と一の外紙2とはオープンタイプフィルム5のフィルム5a、5b間から剥離し得る。

【0023】
図1のプリペイドカード付きシートS1においては、中紙3の擬似接着面3aとその裏面3bならびに両外紙2、4の内側面2a、4aが折畳み対向紙片の内側面となるが、このうち、中紙3の擬似接着面3a側には有価証券情報7が印字されている。
【0024】
中紙3と他の外紙4とは上記の如く剥離せず一体紙となっているが、この一体紙の部分には、その一部を1枚のプリペイドカード8として抜き取り可能とするための抜き型での加工が施されている。この抜き型による加工は有価証券情報7の印字部が極細のスリット9により囲まれるものとする加工であり、該スリット9は少なくとも中紙3と他の外紙4とをその厚み方向に貫通する深さを有している。したがって、本実施形態の場合は、スリット9の内側部分全体が、中紙3と他の外紙4との一体紙のまま、プリペイドカード8として抜き取り可能となっている。つまり、本実施形態のプリペイドカード付きシートS1は、有価証券情報7の印字部を含む中紙3の一部とこれに一体に接着されている他の外紙4の一部とに、これらを1枚のプリペイドカード8として抜き取り可能とする加工を施したものである。」
エ 「【0026】
図2は図1に示したプリペイドカード付きシートS1の製造工程を示したものであり、この製造工程では先ず(a)に示すように絵柄等の印刷(図示省略)を施した3つ折り用紙1を用意し、この用紙1の一面または両面に印字を行う。この際、印字の内容は少なくとも有価証券情報7を含み、また該有価証券情報7は用紙1を3つに折畳んだときに中紙3となる部分に印字される((b)の工程)。その後、(c)に示すように、上記用紙1をN型に3つに折畳むとともに、その折畳み対向紙片2、3、4のうち、中紙3において有価証券情報7を印字した面と一の外紙2との間にはオープンタイプフィルム5を、また、中紙3と他の外紙4との間にはクローズタイプフィルム6をそれぞれ介挿した後、(d)に示すように抜き型による加工を施す。この加工は他の外紙2から中紙3に達する深さのスリット9(図1参照)により有価証券情報7の印字部が囲まれるものとする。そして、この抜き型による加工後のものを熱圧着すると、図1に示すような本プリペイドカード付きシートS1の製品として完成する。」
オ 「【0030】
また、図1の実施形態においては、中紙3と一の外紙2とを擬似接着し、中紙3と他の外紙4とを永久接着するものとしたが、これに代えて、図4に示したプリペイドカード付きシートS3のように、その中紙3と他の外紙4を永久接着せず、常時開いた状態に設けることもできる。この場合は、一の外紙2の擬似接着面2a側に有価証券情報7を印字するとともに、その有価証券情報7の印字部を含む外紙2の一部に、これをプリペイドカード8として抜き取り可能とする抜き型での加工を施すものとする。なお、この場合の抜き型による加工は、図3に示したプリペイドカード付きシートS2の場合と同様の深さのスリット9を、有価証券情報7の印字部外周に施すものとする。したがって、このような構成からなる図4のプリペイドカード付きシートS3では、外紙2の一部だけがスリット9の内側部分から抜き取られてプリペイドカード8となる。なお、この図4のプリペイドカード付きシートS3は往復はがきとして利用することができる。
【0031】
さらに、上記実施形態のプリペイドカード付きシートS1、S2は、いずれも3つ折りタイプの例であるが、本考案は、この3つ折りタイプに限定されず、たとえば、図5に示すような2つ折りタイプのプリペイドカード付きシートS4として構成することもできる。同図のプリペイドカード付きシートS4は用紙1をV型に2つに折畳み、その用紙1の折畳み対向紙片2、4どうしをオープンタイプフィルム5により擬似接着したものである。この場合、その折畳み対向紙片2の内側面に有価証券情報7が印字され、その有価証券情報7の印字部を含む折畳み対向紙片2の一部のみがプリペイドカード8として抜き取り可能に設けられるものとする。」
カ 「【0034】
上記実施形態では擬似接着や永久接着の手段としてオープンタイプフィルム5やクローズタイプフィルム6を用いたが、これらの接着手段については、そのようなフィルム形態のものに限定されることはなく、糊状のものを適用することができる。」
キ 上記ウ及びオに照らして【図5】を見ると、用紙1は、折畳み対向紙片2とスリット9が設けられている折畳み対向紙片4(以下「スリット折畳み対向紙片4」という。)からなること、折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4は折られて重ねられていること、折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4は、オープンタイプフィルム5で擬似接着されていること、スリット9は、スリット折畳み対向紙片4を切断し、オープンタイプフィルム5の一方のフィルム5aをほぼ切断していることが看取できる。
ク 上記ア?キの記載及び図面を含む甲第1号証全体の記載によれば、甲第1号証には、以下の発明が開示されていると認められる。

「用紙を折畳み、その用紙の折畳み対向紙片どうしを擬似接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し、その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなるプリペイドカード付きシートであって、
前記用紙は、折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4からなる用紙1を用い、折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4は折られて重ねられ、折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4どうしをオープンタイプフィルム5により擬似接着し、スリット折畳み対向紙片4の内側面に有価証券情報7が印字され、その有価証券情報7の印字部を含むスリット折畳み対向紙片4の一部のみがプリペイドカード8として抜き取り可能に設けられ、
前記抜き取り可能とする加工は、スリット9が、スリット折畳み対向紙片4を切断し、オープンタイプフィルム5の一方のフィルム5aをほぼ切断する深さとなるように有価証券情報7の印字部を囲むものであり、
前記擬似接着の手段としてのオープンタイプフィルム5は、糊状のものを適用することができる
プリペイドカード付きシート。」(以下「甲第1号証発明」という。)

(2)甲第2号証
同じく、甲第2号証(登録実用新案第3096910号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【請求項1】
左右に開くことが出来るように左右の所定の箇所に切り込みが入っていて、かつ所定の箇所に、剥離可能な接着剤が塗布され、圧着されている広告用印刷物において、当該広告用印刷物の表面の所定の箇所に切り取り可能に葉書きが設けられていることを特徴とする葉書き付き広告用印刷物。」
イ 「【0002】
【従来の技術】
従来、広告用印刷物に葉書きが設けられている場合、葉書きは大きさと厚さが定められているので一定の大きさ、特に厚さの基準に合致するため広告用印刷物も必然的に葉書きと同一の厚みをもったものを使用していた。」
ウ 「【0004】
そこで、本考案は、広告用印刷物に葉書きを付けても広告の量が多いことで、広告用印刷物の費用の採算を取ることが出来、かつレスポンスを多く期待できる広告用印刷物を提供することを目的とする。」
エ 「【0008】
本考案に用いられる広告用印刷物は表面に広告を読む人が中を開いて見てみたくなるような興味を惹くデザイン及び文章等が施されていて、当該表面を開いた際に見ることの出来る具体的かつ詳細なデザイン、文章及び情報が左及び右の裏面並びに中面に記載されているものであり…」
オ 「【0009】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
図1は通常行われている方法で所定の箇所(左、右の上、下、中央部分)に剥離可能な接着剤が塗布され、圧着されていて左右に開くことが出来る広告用印刷物において、切り取り可能に葉書きが設けられている状態を示す図である。
広告用印刷物の表面の右下側に葉書き4が設けられていて、切り取り線であるミシン目5が入れられ、葉書き4を切り取ることが出来るようになっている。…」
カ 「【0011】
又、本考案の葉書き付き広告用印刷物は左右に開くことが出来るので紙を2枚使用する形式になっているが、葉書き4は2枚の紙を接着剤で重ね合わせ一枚になっているので葉書を4を切り取らないと葉書き4の上の部分9を開くことが出来ないようになっている。そのため広告を全部読むためには葉書きを先に切り取らなければならないので、広告を読んでから葉書きを切り取って送付するという場合に比べて、葉書きを送付することが格段に増えるようになるものである。」
キ 「【0016】
本考案は以上の構成を有するので、広告用印刷物に葉書きを付けても広告の量が多いことで広告用印刷物の費用の採算を取ることができ、多数のレスポンスを期待出来、広告に掲載されている商品等の購買力を高めることが出来るものである。」

(3)甲第3号証
同じく、甲第3号証(特開2004-133065号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【0010】
また、返信はがき部は、2枚重ねの二重構造となっているので、はがきとして適度の厚さが確保される。」
イ 「【0045】
図8及び図9を参照するに、前述した第1の実施の形態の剥離・再接着シール付き広告用印刷物1では表側紙片3と裏側紙片5の合計2枚の紙片が重ねて貼り合わされているが、第3の実施の形態では1枚の紙片が2箇所の折曲げ線37にて折り重ねて貼り合わされた二重構造となっている。なお、上記の折曲げ線37は1箇所であっても構わない。」
ウ 「【0047】
また、上記の表面側返信はがき部11Aと裏面側返信はがき部11Bの裏面には剥離不可能な接着剤層21が塗布され、貼付シール部17の裏面には当該貼付シール部17を剥離・再接着可能とするシール部接着剤層19が塗布される。」
エ 「【0048】
さらに、第2広告情報部31A,31Bの貼り合わせ面は剥離可能に設けることができる。例えば、第2の実施の形態の場合と同様に、第2広告情報部31A,31Bが印刷された後に、この第2広告情報部31A,31Bの側縁に沿った位置に剥離可能な接着剤層33が塗布される。この接着剤層33としては、シリコン樹脂などの離形剤層が幅狭に塗布され、この離形剤層の表面に接着剤層が塗布される。したがって、前記紙面の裏面が前記折曲げ線37で折り重ね合わされると、上記の接着剤層により貼り合わされるが、離形剤層により剥離可能となる。」
オ 「【0049】
次いで、上記の折曲げ線37で折り重ね合わされる前の展開状態の展開紙39は、外周の輪郭で切断される。この切断された展開紙39は前記折曲げ線37で図8に示されているように折り重ね合わされることにより、表面側返信はがき部11Aと裏面側返信はがき部11Bは剥離不可能に貼り合わされるが、第2広告情報部31A,31Bの貼り合わせ面は剥離可能に貼り合わされる。また、貼付シール部17は剥離・再接着可能に貼り合わされる。」
カ 「【0050】
したがって、上記の返信はがき付き広告用印刷物35は、図9に示されているように返信はがき部11がミシン目25から切り離される。折り重ね合わされた紙片39が剥離されて、紙片39の表面39Aに印刷された第1広告情報部9A,9Bと,裏面39Bに印刷された第2広告情報部31A,31Bとの豊富な情報を見ることができる。」

(4)甲第4号証
同じく、甲第4号証(登録実用新案第3096613号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【請求項1】 剥離可能な接着材が塗布され、圧着されていて、かつ開く場所が示されている広告用印刷物において、表面が広告を読む人が興味を惹くようなデザイン及び文章が施され、かつ左右に開くことが出来るように左右の所定の箇所に切り込みが入っている表面であること、表面を左右に開く場合の面が、具体的かつ詳細な情報が記載されている左及び右の裏面並びに中面の面であることを特徴とする広告用印刷物。」
イ 「【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、表面及び裏面の広告のみでは、広告を見る人にさほどの注意及び興味をもってもらえず、ほとんど見ないか、又はチョット見た程度で終わってしまい広告の内容をよく見てもらえないという問題点があり、又二つ折りにして剥離可能な接着剤を塗布して圧着された葉書等の場合、開く場合も一箇所より開くというものであり、掲載内容も葉書を開いた場合の内側の面のみであり、広告内容を多く記載したいという場合にはこの形式では適用できず、又表面に興味を惹くようなデザイン等が描かれていることもほとんどなく、開かなければならないといった義務で開かなければならないという問題点があった。」
ウ 「【0004】
そこで、本考案は、広告を読む人に、本来広告として読んでもらいたい事項を、義務ではなく興味を抱かせて確実に読ませるようにし、広告に掲載された商品等の購買力を高めることを目的とする。」
エ 「【0007】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
図1は本考案の広告用印刷物の表面を示す図である。
表面1の中央部分には切り込み2があり、表面1はこの切り込み2により、左3,右4に開くことが出来る。左3と右4の3ヶ所5,6,7及び8,9,10には通常行われている方法で剥離可能な接着剤が塗布され圧着されている。そこで表面1は開く場所を示した箇所11,11’から剥離して左右に開いていくものである。」

(5)甲第5号証
同じく、甲第5号証(特許第2996720号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【請求項1】基材の密着予定面のほぼ全面に加圧により粘着する粘着層を形成した粘着層付き帳票において、
前記粘着層上に印刷層を形成したこと
を特徴とする粘着層付き帳票。
【請求項2】前記粘着層または前記印刷層上に印字層を形成し、前記基材を折り返しまたは積層して、対向する面を密着させた後に、密着面の間から剥離するように構成した請求項(1)記載の粘着層付き帳票。

【請求項5】前記基材を折り返しまたは積層して対向する面同士を密着させて郵送した後に、前記密着面から剥離するようにしたことを特徴とする請求項(1)?(4)記載の粘着層付き帳票。」(特許請求の範囲)
イ 「〔産業上の利用分野〕
本発明は、親展葉書用のメールフォーム、値札タグ、カード付きプリント用紙等のように、一時的に密着を必要とする帳票として使用できる粘着層付き帳票に関するものである。」(1頁右欄11行?末行)
ウ 「本発明の他の目的は、個人に発送される膨大な量のメールフォーム等の帳票に対して、基材に予め粘着剤を塗布してその上から印刷層等を形成することによって、用紙の伸縮度合いに左右されず、工程管理の簡略化や合理化等を図り、高品位かつ安価な粘着層付き帳票を提供することである。」(2頁右欄34?39行)
エ 「一方、親展葉書用のメールフォーム等に使用する場合には、積層粘着シール等を使用することなく、密着させることができ、剥離後に筆記することができるうえ、現在広く使用されている封筒用の3つ折りメールフォームの処理機や処理工程はそのままで使用できる。」(4頁右欄31?35行)

(6)甲第6号証
同じく、甲第6号証(実用新案登録第2598829号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【請求項1】 複数の紙片を重ね合わせてなり、表出する所定面には宛名情報が表示され、所定の重ね合わせ面が、通常では接着せず所定の圧を加えると接着可能となり、接着後には剥離可能な接着剤によって剥離可能に接着されてなるカードであって、前記所定の重ね合わせ面を形成する紙片の少なくとも一つの紙片には、切り取り部を介して複数の切り取り片が設けられ、これら各切り取り片には、前記宛名情報に関連する情報が表示されるとともに、カード発送者に伝達するために宛名人が記入するための記入部が設けられたことを特徴とする重ね合わせカード。」
イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、複数の紙片を剥離可能に接着してなる葉書等の重ね合わせカードに関し、…」
ウ 「【0010】そして、上紙片4と下紙片5の隠蔽面には、通常では接着せず、所定の圧を加えると接着可能となり、接着後に剥離可能で、かつ、印字あるいは印刷が可能な感圧性接着剤31が塗布されている(図2参照)。…」

(7)甲第9号証
同じく、甲第9号証(実用新案登録第2535324号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「…前記基材を折り返してまたは積層して、対向する面の前記弱粘着剤層同士を密着して前記印字層を隠ぺいしたのちに、前記弱粘着剤層間から剥離する3つ折のメールフォーム…」(請求項1?3)
イ 「このため、メールフォームを2つ折りまたは3つ折りにしてはがきの大きさし、その内側に秘密情報を記入し、そのメールフォームを密着させてはがきとして郵送し、受取人はそのメールフォーム間を剥離して開くことにより、秘密情報を読むことができるシークレットはがきが認可され、一部実施されている。
第15図,第16図は、シークレットはがきの従来例を示した図である。
シークレットはがき3は、メール用紙31,32が連設されており、中央部で2つ折りした形態であり、メール用紙31の外側に宛名情報33を印字し、メール用紙31,32の内側に秘密情報34を記入したものである。このメール用紙31,32の内側は、積層粘着シート35により、全面密着させてある。」(2頁左欄38行?右欄1行)
ウ 「第3の実施例のメールフォーム1Bは、はがきの大きさの基部11dをよこ置きにして、その半分の大きさの隠ぺい部11eを長手方向に連設したものであり、基部11dの左半分が公開情報記入領域Xとなり、基部11dの右半分と隠ぺい部11eが秘密情報記入領域Yとなる。この実施例では、基部11dの左半分を保持部2として使用することができ(第7B図)、保持部2が大きいので剥離しやすいうえ(第7C図)、公開情報記入領域Xとしての機能を合わせもつことになる。」(4頁左欄下から6行?同頁右欄3行)
エ 「第8の実施例のメールフォーム1Gは、基材11を両側から折り返して、中央部にスリット状の重なり合わない部分を残して、剥離の切っ掛けとする剥離開始部2bとしたものである。開封時には、剥離開始部2bの裏側を押すようにしながら、観音開きのようにして剥離することができる。なお、この実施例では、基材11の端部でスリット状の重なり合わない部分を形成したが、基材11の任意の位置,任意の方向にスリットを形成してもよい。」(4頁右欄32?39行)
オ 「以上説明した実施例に限定されず、本考案の範囲内で種々の変形ができる。
このメールフォームは、3つ折りに限らず、2つ折りでも4つ折り以上でもよく、印字面数や印字情報も特に限定されない。」(5頁左欄1?5行)

(8)甲第10号証
同じく、甲第10号証(実願平1-33834号(実開平2-124180号)のマイクロフィルム)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「本考案は、一度剥がすと再接着が不可能な合成樹脂を用いた抽選券に関するものである。」(1頁下から6行?下から5行)
イ 「第1図は本考案の第1実施例を示すもので、真ん中から二つ折りした抽選券C_(1)であり、第2図に示すように台紙1と、その台紙の表面に印刷等により形成された記録面2と、その上に形成されたポリ塩化ビニール樹脂層3とから構成され、前記記録面2が内側となるようにして前記台紙1が中央で二つ折りされ、前記ポリ塩化ビニール樹脂層3を互いに疑似接着させることにより、前記記録面2を隠蔽する構造にしてある。
この抽選券C_(1)は、第1図のように台紙1の合わせ目を剥がして開けば、前記記録面2が露呈してくじの内容(当たり外れ又は賞別や賞品名等)を判別することが出来る。この場合、単に真ん中から二つ折りするのではなく、その折り方を色々工夫すれば、抽選券の形状や大きさ及び記録面のスペースを変えることが可能である。
例えば、第3図は抽選券C_(11)の右端からほぼ1/4の箇所を折り目としてその右側部分を左側に折り重ねたものであるが、この場合は記録面21はほぼ右半部(台紙11のスペースのほぼ1/2)の大きさとなり、残る左半部は記録面に関連した内容又は他の情報を記載する面として有効利用することが出来る。
第4図は台紙12の形状を扇形にすると共に、その左端及び右端から1/4の箇所をそれぞれ折り目として左右の部分を内側に折り曲げて中央部で合わせた抽選券C_(12)(但し、この場合はおみくじ付記念キップ)であり、真ん中の合わせ目から左右の部分を観音開きすると、記録面22が露呈するようにしてある。」(4頁下から3行?6頁7行)

(9)甲第11号証
同じく、甲第11号証(実願平4-32362号(実開平5-82581号)のCD-ROM)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【0008】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、1はカードであって、台紙2と、枠シート3と、付加価値カード4とより成り、台紙2及び枠シート3は比較的強度の高い厚手の紙等を素材とすると共に、ほぼ同じ平面形状を有し、台紙2及び枠シート3の一面或いは両面には、カード1の目的に応じて、宣伝文、挨拶文、イラスト、写真等の表示(図示せず)が適宜施され、台紙2の一面には弱粘着性の接着剤が塗布されて接着面6が形成され、枠シート3には付加価値カード4とほぼ同じ形状の窓孔7が穿設されている。」
イ 「【0009】
また、付加価値カード4は、名刺、商品券、各種会員券、プリペイドカード、入場券、商品割引き券、各種優待券、サービス券、電話番号リストあるいはカレンダーなどの情報カード等より成り、図2に示すように、枠シート3の窓孔7に着脱自在に嵌合され、枠シート3及び付加価値カード4は台紙2の接着面6に剥離可能に接着されている。」
ウ 「【0010】
従って、郵送中などに付加価値カード4が枠シート3から抜け落ちることはないが、使用する際には、枠シート3を台紙2から剥がせば、簡単に付加価値カード4を枠シート3の窓孔7から取り出すことができる。」
エ 「【0013】
さらに、枠シートの表示によってカードの情報を伝達できるのみならず、枠シート及び付加価値カードを取去った後に現出される台紙の表示により使用者に新規の情報を伝えることができる。」

(10)甲第12号証
同じく、甲第12号証(特開平6-32083号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【0010】
【作用】台紙シートの表面にプリペイドカードの表面を含み各種の必要な文言や図柄、絵、写真等が一連に印刷されているので、1枚のシートとして授受される。この台紙シートからプリペイドカードを剥せば、プリペイドカードとして本来の使用ができ、そのときプリペイドカードを剥離した後の窓孔内には透明粘着シートの裏面に印刷された表示内容が現われ、プリペイドカードの表面の印刷表示内容と同じ印刷表示を透明粘着シートの裏面に印刷しておけばプリペイドカードを剥離しても台紙シートの絵柄は変らず、また全く別の内容を透明粘着シートの裏面に印刷しておけば、プリペイドカードを剥離したあとに全く新しい内容が表示され、宣伝広告媒体として使用するときは意外性をもって強い印象を与えることができ、また用途や目的に応じメッセージを現わすなどにより情報伝達効果が高められる。…
イ 「【0014】前記台紙シート3の表面には、プリペイドカード2の表面を含んで一連の絵柄や図柄、文字等の印刷表示7が施され、前記透明粘着シート5の裏面の前記窓孔4に対応する範囲には裏面側から印刷表示8が施されている。この透明粘着シート5への印刷は、文字の場合や台紙シート3の表面の印刷表示7と同じ絵柄の場合には膜面を逆にしたポジフィルムで刷版に焼付けた逆版を用いて印刷され、この印刷表示8は前記不透明粘着シート6の裏当てにより台紙シート3の表面側から窓孔4内に現われて見えるようになる。」

(11)甲第13号証
同じく、甲第13号証(特開2001-1676号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【0004】また一方において、この種のプリペイドカードは、未だ知名度が低く、今後、色々な宣伝や広告などの販売活動を通して市場の拡大を図る必要があり、使用者がこの種のプリペイドカードを購入するまでは金券扱いの管理の必要がなく、宣伝や広告等と一体となった帳票(小冊子)として、店頭や各種の窓口にパンフレット同様に置くことができると共に、また、街頭で配付することができるプリペイドカードが要望されていた。」
イ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、上記要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造から販売するときまでの間は金券扱い的管理が不要なプリペイドカードであって、かつ、宣伝や広告、取分けプリペイドカード購入用の振込票と一体となったプリペイド方式のカード一体型帳票を安価に提供することである。」
ウ 「【0010】まず、図1は本発明のカード一体型帳票の第1の実施形態の表面を示す図であって、カード一体型帳票1の本体片2の表面中央部には、このプリペイド方式のカードに対して一般大衆に目を向けさせるような「DNPコミュニカ新登場」なる表題21と、さらに興味を引かせるようなこのプリペイド方式のカードで受けることが可能な、たとえば、インターネット接続、インターネットショッピング、携帯電話、国際電話等といったサービス名を設けたサービス名欄22が設けられてこの帳票1の表面を形成している。また、この本体片2の上部(図1において上側)には、前記本体片2を形成する紙基材に略矩形状の切り込み10が形成され、該切り込み10により「DNPコミュニカ」なるカード名20が付されたプリペイド方式のカードとなるカード部Aがくり抜き可能に形成されている。…」

(12)甲第14号証
同じく、甲第14号証(実公昭60-21252号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「本考案は、糊付貼着によりなる小冊子と、該小冊子とはミシン目により切り離し可能な、糊付貼着によりなる葉書からなり、…」(1頁左欄11?13行)
イ 「本考案の葉書を有する小冊子は…物品の購入や入会を勧誘する際のパンフレツト等に使用すれば、物品の購入、入会のための郵便による申込みを容易に行なわしめ、勧誘の効果を上げるものである。」(2頁左欄9行?右欄2行)

(13)甲第15号証
同じく、甲第15号証(実願昭57-19988号(実開昭58-123069号)のマイクロフィルム)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「表面に表題を記載した表題部と、切取ると葉書となるよう区切られた複数の葉書部とからなり、各葉書部の表裏面に商品広告欄、発注事項欄、宛名欄を設け、表題部裏面に各葉書部の商品概要を記載した商品概要欄を設けた通信販売用紙。」(実用新案登録請求の範囲)
イ 「本考案は新聞折込広告、宅配広告等に用い、商品の通信販売の広告および発注に使用する通信販売用紙に関する。
本考案を図面の実施例にしたがって説明する。
第1図,第2図はそれぞれ本考案用紙10の表面及び裏面を示す。この用紙10は表題部12と切取線14により区切られた十二面の葉書部16とからなる。」(1頁12行?末行)

(14)甲第16号証
同じく、甲第16号証(実願平1-115348号(実開平3-55272号)のマイクロフィルム)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「1.商品等に関する宣伝,広告表示がされた宣伝,広告用シートであって、該宣伝,広告用シートのシート本体1の一部に、情報を表示するための情報表示部4を有し且つその情報表示部4を内面側として少なくとも2つ折り以上に折り畳み可能な葉書形成体3が、切り取り可能に設けられてなることを特徴とする宣伝,広告用シート。」(実用新案登録請求の範囲1項)
イ 「第1図において、1は宣伝,広告用シートの紙製のシート本体で、表面1a及び裏面1bには所定の印刷が施されてなるとともに、その所定位置には、葉書の規格寸法の約2倍の大きさからなる葉書形成用体3が、ミシン目2を介して切り取り可能に設けられてなる。」(8頁4?9行)

(15)甲第17号証
同じく、甲第17号証(特開2000-177277号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、隠蔽すべき情報を安全確実に伝達できる送り状、詳しくは返信用葉書付き送り状に関する。」
イ 「【0009】本発明のシート状とした単位帳票Sは、送り状として使用される。本発明の送り状については、カタログを利用した通信販売に適用した三折形式とした場合を具体例として説明する。単位帳票Sは、図1および2のとおり、1は表面側が荷受人の宛名記載部である上片であり、上片1にはその端部を延長してミシン線Mを介し裏側に両面粘着テープ5を貼付した貼着部4を付設してある。2は中片であり、中片2は返信用葉書として利用されるものであって、荷受人の個人情報Nを表裏に印字するに適した情報記録面である個人情報記載部6A,6Bを有している。」
ウ 「【0010】3は下片であり、下片3表裏には所望により商品関連の一般情報記載部7A,7Bが設けられている。上片1、中片2および下片3はミシン線Mを経て連接し、下片3には前記貼着部4と対向する側の端部を延長してミシン線Mを介し配送情報部9を有する配送記録片8を連設してある。シート状の単位帳票Sの用紙としては、各種紙、各種合成紙、各種フィルムが用いられる。上片1、中片2および下片3は、図3のとおり三折形式のもとに折畳まれるがそれら表裏には、一般に疑似接着とも称されている強圧で加圧した時にのみ良好な接着性を有し、必要に応じ接合した面を再剥離できる、感圧接着剤が塗布してある。」
エ 「【0012】上片1表面には、通信販売会社によって印字される(カタログの)荷受人住所、氏名などの宛名記載部11が表示されるが、上片1裏面には所望により適宜の広告文字、図様による商品関連の一般情報記載部7Cを印設することもよい。中片2表面には、定型「郵便はがき」に合致した形式のもとに、上部には送信情報C(具体的には、通信販売会社の宛先住所、料金受取人払の記事など)を、下部には(カタログの)荷受人の個人情報N(具体的には氏名、会員番号、生年月日、電話番号、性別、住所など)の個人情報記載部6Aが設けられ、実務上、前記通信販売会社が保有する顧客記録データに基づいた荷受人の個人情報Nが印字される。中片2裏面には、(カタログの)荷受人が発注する個人情報Nである具体的内容(例えば、カタログ番号、商品番号、サイズ記号など。また代金の支払方法を示す記事など)を記入するに適した個人情報記載部6Bが設けられる。」
オ 「【0018】(カタログの)荷受人は、カタログ包装材を開き、希望する購入対象商品を決定した場合、前記包装材P表面より剥離した送り状について、前記疑似接着している上片1をミシン線M沿いに中片2から引き剥せば、送信情報C、荷受人自身の個人情報Nが印字されている個人情報記載部6Aを確認できる。更に、中片2の下片3と接合しているミシン線Mを切除すれば、中片2裏面には荷受人が発注する商品の具体的内容(カタログ番号、商品番号など)、支払方法などを記入するための個人情報記載部6Bを知ることができるので、誤りなく容易に注文書を作成の上、返信葉書として送信できるものである。」
カ 「【0019】
【発明の効果】以上のとおりの構成を有する本発明によれば、以下の効果をもたらすものである。すなわち、請求項1ないし3の本発明に従えば、第1に、通信販売会社は、配送業者に対し、荷受人の個人情報などを表示した個人情報記載部を確実に隠蔽した状態で、数多くの特定種類のカタログ包装材とは別個のもとに、同数の送り状を一括して引渡しを可能としたものである。」

(16)甲第18号証
同じく、甲第18号証(実願平5-598号(実開平6-55763号)のCD-ROM)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は封書、さらに詳しくは、返信用葉書等の返信用通信体を具備した封書であって、主としてダイレクトメール用としての印刷表示を隠蔽して郵送しうる封書に関する。」
イ 「【0014】
図1及び図10において、1は1枚のシートからなる紙製の封書本体で、同じ大きさからなる4枚のシート片1a,1b,1c,1dが連設して構成され、一側縁側の第4シート片1dの一面側には宛先,宛名表示部2が設けられ、該第4シート片1dに隣接する第3シート片1cの一面側には会社名等を表示した社名表示部4が表示されている。」
ウ 「【0016】
さらに、前記第2シート片1bに隣接する第1シート片1aには、返信用葉書を形成するための葉書形成片10が具備され、その葉書形成片10は、ミシン目11を介して切取り可能に形成されている。」
エ 「【0019】
そして、第2シート片1bと第1シート片1aとは、その内面側(他面側)が相互に対面するように折り曲げられ、また第3シート片1cは、その内面側が前記第1シート片1aの外面側(一面側)に対面するように折り曲げられ、さらに第4シート片1dは前記第2シート片1bの外面側(一面側)に対面するように折り曲げられている。」
オ 「【0020】
5,5,5は、シート片1d,1b 間、シート片1b,1a 間、及びシート片1c,1a間にそれぞれ介装された積層体で、たとえば延伸ポリプロピレンフィルム等の透明な合成樹脂製フィルム6と、該フィルム6の一面側に設けられたフィルム及び紙の双方に接着性のある接着剤7と、前記フィルム6の他面側に設けられた、フィルムに対して剥離性のあるアクリル樹脂を主成分とする熱接着性樹脂からなる合成樹脂層8と、該合成樹脂層8の他面側に設けられた、前記接着剤7と同剤の接着剤7との4層にて構成されてなる。」
カ 「【0021】
そして、この積層体5は、フィルム6と合成樹脂層8との境界面にて剥離可能であり、シート片1dをシート片1bに対して剥離した際に、積層体5のフィルム6がシート片1b側にのみ残存し、且つシート片1cをシート片1aに対して剥離した際に、積層体5のフィルム6がシート片1a側にのみ残存し、さらにシート片1aをシート片1bに対して剥離した際に、積層体5のフィルム6がシート片1b側にのみ残存するように、前記各シート片1a,1b,1c,1d間に介装されている。」
キ 「【0022】
尚、シート片1d,1b 間の積層体5は、両シート片1d,1b間の全面に設けられ、また、シート片1b,1a間の積層体5及びシート片1a,1c間の積層体5は、図2,図6,図9等に示すように、上下周辺部に部分的に設けられている。」
ク 「【0023】
本実施例の封書9は、上記のように各シート片1a,1b,1c,1dの内面側(他面側)及びシート片1b,1aの外面側(一面側)に表示された印刷事項が、各シート片1a,1b,1c,1dによって完全に隠蔽された状態となる。従って、郵送中においてはその印刷の表示内容は完全に秘密状態に保持されるのである。」
ケ 「【0032】
そして、すべてのシート片1a,1b,1c,1dが展開された状態において、受信者は印刷表示部3に記載された情報を判読し、これに応答すべく葉書形成片10に返信事項を記載し、図11に示すようにミシン目11を介して切取り、その葉書形成片10を返信用葉書として返信する。」
コ 「【0036】
尚、上記実施例では、封書本体1が4枚のシート片1a,1b,1c,1dで構成されていたが、封書本体1を構成するシート片の枚数はこれに限定されるものではなく、たとえば図12に示すように3枚のシート片1a,1b,1cで構成されたものであってもよい。」

(17)甲第19号証
同じく、甲第19号証(実願平1-16975号(実開平2-108073号)のマイクロフィルム)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「本考案は、暗証番号、預貯金残高、診断結果等の他人には知られたくない隠蔽すべき情報(以下隠蔽情報という)を隠蔽して伝達するのに適した三つ折り封書を作成するための封書用フォームに関し…」(1頁下から2行?2頁3行)
イ 「第1図?第3図に示すように、封書用フォーム1は、折り部たる折り用ミシン目2,3を介して連設された上紙片4、中紙片5、下紙片6の3紙片からなり…」(5頁8?11行)
ウ 「また、第1図に示すように、中紙片5の上面側は、各切り用ミシン目11,15,13,14で囲まれた部分が隠蔽情報記入部となっており、ここには「預金残高確認通知」の表題と、宛名人の氏名を記入する氏名記入欄21と、隠蔽情報である預金残高を記入する預金残高記入欄22とが設けられるとともに、「上記金額に相違ありません。」の文と届印捺印欄23が設けられている。また、前記届印捺印欄23の下には、通知された預金残高が相違している場合に訂正金額を記入するための訂正金額記入欄32が設けられている。そして、この中紙片5の下面側には、返信用の宛名表示24である銀行の住所名称があらかじめ印刷されている。」(7頁下から2行?8頁12行)
エ 「以上のように構成した封書フォーム1において、まず適宜な印字手段、例えばコンピュータに連繋されたプリンタによって、上紙片4上面側の宛名記入部19に宛名人の住所33と氏名34aとを印字し(第4図参照)、また、中紙片5上面側の氏名記入欄21に同じく宛名人の氏名34bを印字するとともに預金残高記入欄22に宛名人の預金残高33を印字する(第6図参照)。そして、各マージナル部9a,9bを各切り用ミシン目7a,7bから切り離した後、各折り用ミシン目2,3で、上紙片4と中紙片5の下面側どうし、中紙片5と下紙片6の上面側どうしがそれぞれ重なり合うように、Z字状に三つ折りしたうえ、各接着剤17,18塗布部分に適宜な圧力を加えると、対接した前記各接着剤17,18が互いに接着する。これによって、第4図及び第5図に示すように、上紙片4の上面側が上面となり、下紙片6の下面側が下面となった三つ折り状態の封書36が作成され、この状態で投函可能となる。」(9頁下から3行?10頁16行)

2 本件訂正発明1について
(1)対比
本件訂正発明1と甲第1号証発明とを対比する。
ア 甲第1号証発明の「印字」、「スリット9」及び「(擬似接着の手段としての)糊状のもの」は、それぞれ、本件訂正発明1の「印刷」、「切り込み(9)」及び「一過性の粘着剤」に相当し、甲第1号証発明の「プリペイドカード」と本件訂正発明1の「葉書(4)」は「分離して使用するもの」である点で共通し、甲第1号証発明の「スリット折畳み対向紙片4」と本件訂正発明1の「中央面部(1)」は「“切り込まれる片”」で共通し、甲第1号証発明の「折畳み対向紙片2」と本件訂正発明1の「一方の側面部」は「“切り込まれる片に重なる片”」で共通する。
イ 甲第1号証発明は「折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4は折られて重ねられ」、「スリット折畳み対向紙片4の内側面に有価証券情報7が印字され」るものであるから、甲第1号証発明と本件訂正発明1の「左側面部(2)と右側面部(3)が中央面部(1)の同一の面の方へ折られて重ねられた葉書付き広告用印刷物」とは「複数の片が折られて重ねられた印刷物」の点で共通する。
ウ 甲第1号証発明は「折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4は折られて重ねられ」、「スリット折畳み対向紙片4の内側面に有価証券情報7が印字され、その有価証券情報7の印字部を含むスリット折畳み対向紙片4の一部のみがプリペイドカード8として抜き取り可能に設けられ」ているから、「プリペイドカード8」は「折畳み対向紙片2」のみに重なるものといえ、甲第1号証発明の「抜き取り可能とする加工」は「スリット9が、スリット折畳み対向紙片4を切断し、オープンタイプフィルム5の一方のフィルム5aをほぼ切断する深さとなるように有価証券情報7の印字部を囲むものであ」るから、「プリペイドカード」が分離して使用できるように周囲に切り込みが入っているものといえる。
よって、甲第1号証発明と、本件訂正発明1の「どちらか一方の側面部(2又は3)のみに重なる葉書(4)が中央面部(1)に印刷されており、分離して使用できるように周囲に切り込み(9)が入っている」とは、「“切り込まれる片に重なる片”のみに重なる分離して使用するものが“切り込まれる片”に印刷されており、分離して使用できるように周囲に切り込みが入っている」点で共通する。
エ 甲第1号証発明は「折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4どうしをオープンタイプフィルム5により擬似接着」し「前記擬似接着の手段としてのオープンタイプフィルム5は、糊状のものを適用することができる」から、糊状のものを適用した甲第1号証発明は「プリペイドカード」が一過性の粘着剤により貼着されているものとなる。
よって、甲第1号証発明と本件訂正発明1の「該葉書(4)が落下しないように、該葉書(4)と重なる一方の側面部(2又は3)と、該葉書(4)とが一過性の粘着剤により貼着されている」とは「分離して使用するものが落下しないように、該分離して使用するものと重なる“切り込まれる片に重なる片”と、該分離して使用するものとが一過性の粘着剤により貼着されている」点で共通する。
オ 甲第1号証発明は「折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4どうしをオープンタイプフィルム5により擬似接着」し、「前記擬似接着の手段としてのオープンタイプフィルム5は、糊状のものを適用することができる」から、糊状のものを適用した甲第1号証発明は「プリペイドカード」を除く折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4とが一過性の粘着剤により貼着されているものとなる。
よって、甲第1号証発明と本件訂正発明1の「左側面部(2)と右側面部(3)と、該葉書(4)を除く中央面部(1)とが一過性の粘着剤により貼着されている」とは「“切り込まれる片に重なる片”と、該分離して使用するものを除く“切り込まれる片”とが一過性の粘着剤により貼着されている」点で共通する。
カ 甲第1号証発明は「前記抜き取り可能とする加工は、スリット9が、スリット折畳み対向紙片4を切断し、オープンタイプフィルム5の一方のフィルム5aをほぼ切断する深さとなるように有価証券情報7の印字部を囲むものであ」り、「前記擬似接着の手段としてのオープンタイプフィルム5は、糊状のものを適用することができる」から、糊状のものを適用した甲第1号証発明は、糊状のものが適用された層にまでスリット9が到達していることは明らかである。
そうすると、甲第1号証発明の「スリット折畳み対向紙片4」は「有価証券情報7の印字部を囲む」「スリット9」によって「プリペイドカード」となる「スリット折畳み対向紙片4」の部分とその他の部分が完全に二分され、「折畳み対向紙片2」と「スリット折畳み対向紙片4」のその他の部分を互いに剥がすように開いた場合、「プリペイドカード」となる「スリット折畳み対向紙片4」の部分が「折畳み対向紙片2」に付いて残る構成となっているものである。
よって、甲第1号証発明と本件訂正発明1の「開くとどちらか一方の側面部(2又は3)のみに該葉書(4)が付いてくる」構成とは「開くと“切り込まれる片に重なる片”に分離して使用するものが付いてくる」構成の点で共通する。
キ 上記アないしカから、本件訂正発明1と甲第1号証発明とは、

「複数の片が折られて重ねられた印刷物であって,
“切り込まれる片に重なる片”のみに重なる分離して使用するものが“切り込まれる片”に印刷されており、分離して使用できるように周囲に切り込みが入っていること、
該分離して使用するものが落下しないように、該分離して使用するものと重なる“切り込まれる片に重なる片”と、該分離して使用するものとが一過性の粘着剤により貼着されていること,
かつ、“切り込まれる片に重なる片”と、該分離して使用するものを除く“切り込まれる片”とが一過性の粘着剤により貼着されていることからなり、
開くと“切り込まれる片に重なる片”に分離して使用するものが付いてくる印刷物。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本件訂正発明1は「左側面部(2)と右側面部(3)が中央面部(1)の同一の面の方へ」折られて重ねられ擬似接着されているのに対し、甲第1号証発明は「折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4」が折られて重ねられて擬似接着されている点。
[相違点2]“切り込まれる片”及び“切り込まれる片に重なる片”について、本件訂正発明1は「中央面部(1)」及び「一方の側面部」であるのに対し、甲第1号証発明は「スリット折畳み対向紙片4」及び「折畳み対向紙片2」である点。
[相違点3]分離して使用するものについて、本件訂正発明1は「返信用葉書(4)」であるのに対し、甲第1号証発明は「プリペイドカード」である点。
[相違点4]印刷物について、本件訂正発明1では「返信用葉書付き広告用」印刷物であるのに対し、甲第1号証発明は本件訂正発明1のような用途の印刷物ではない点。

(2)判断
ア 相違点1、2についての検討
(ア)本件訂正発明1は、左右の側面部が左右に開く、いわゆる3つ折りの観音開きとなっており、左右の側面部が擬似接着されているものである。
(イ)甲第2ないし4号証及び甲第9、10号証に記載されているように、印刷物において、用紙をいわゆる3つ折りの観音開きとし、左右の側面部を擬似接着することは、本件出願前周知技術である。
(ウ)甲第9、10号証には、印刷物において、用紙を3つ折りの観音開きや2つ折り等様々な折り形態として擬似接着すること、即ち、擬似接着する際に用紙の折り形態は適宜選択できることが示されている。
(エ)甲第1号証には、【図1】及び【図3】に記載のように3つ折りのZ型、【図4】に記載のような3面の片開き型、並びに【図5】に記載のような2つ折り型が記載されており、様々な折り形態で擬似接着することが記載されている。
(オ)甲第1号証には、上記(エ)のように擬似接着の様々な折り形態が記載されており、上記(ウ)に示されたように擬似接着の用紙の折り形態は適宜選択し得ることであるから、甲第1号証発明において、擬似接着の用紙の折り形態として、上記(イ)に記載の周知技術を採用することは当業者が容易になし得る程度のことであり、その際、甲第1号証発明の「折畳み対向紙片2」及び「スリット折畳み対向紙片4」の内、いずれを延長して、いわゆる3つ折りの観音開きとし、左右の側面部を擬似接着するかは、適宜選択し得ることであり、甲第1号証発明の「スリット折畳み対向紙片4」を延長し、いわゆる3つ折りの観音開きとし、左右の側面部を擬似接着したものとすると、本件訂正発明1の相違点1及び相違点2に係る構成となる。

イ 相違点3、4についての検討
(ア)本件訂正発明について
平成25年3月1日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書によれば、本件訂正発明につき、次のことを認めることができる。本件訂正発明は、中央面部又は一方の側面部に分離して使用するもの(例えば返信用葉書等)が印刷され、かつその返信用葉書等の周囲に切り込みが入っている印刷物に関するものであるところ、分離して使用するもの(返信用葉書、チケット、クーポン券等)を広告等の印刷物より切り取る必要がなく、かつその周囲に切り込みが入っているにもかかわらず、広告等の印刷物に付いていて紛失させることなく、しかも手間がかからず返信用葉書、チケット、クーポン券等の分離して使用するものを利用することができる印刷物を提供することを課題とし、その解決手段として、左側面部(2)と右側面部(3)が中央面部とからなる印刷物であって、当該中央面部には所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが印刷され、当該分離して使用するものが落下しないように、当該分離して使用するものの裏面の一方の側面部に重なる所定の部分、及び/又は一方の側面部の裏面の当該分離して使用するものに重なる所定の部分に一過性の粘着剤が塗布されていること、当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面、及び/又は当該中央面部の裏面の分離して使用するものを除く所定の部分に一過性の粘着剤が塗布されており、そのため、当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面を当該中央面部の方へ折った場合、当該中央面部に貼着し、かつ中央面部は当該分離して使用するものに貼着すること、当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っていることからなるという構成を採用したものである。
(イ)甲第1号証発明について
甲第1号証によれば、甲第1号証発明につき、次のことを認めることができる。甲第1号証発明はプリペイドカードを添付してなるプリペイドカード付きシートに関するものである。従来のプリペイドカードには磁気読取り方式や情報表示方式があるが、情報表示方式とは、磁気記録層を持たず、キーワード等の情報を掲載表示するだけの方式であって、例えば情報としてキーワードを表示した場合、そのキーワードをカード提携会社に連絡すると、カード購入時に購入者が先払いした金額相当のサービスを当該カード提携会社から受け取ることができるというものである。従来の情報掲載方式のプリペイドカードにおいては、カード基材の表面に表示された情報に財産的価値があり、該情報(有価証券情報)の盗用を防止するために有価証券情報上にスクラッチを塗布して有価証券情報を隠蔽し、カード購入者のみがスクラッチをコイン等で擦って有価証券情報の取得ができるようにしていた。しかし、このような従来のプリペイドカードはスクラッチの塗布工程等が複数にわたることからカード製造工程でカードの汚れ、有価証券情報等の欠損等の不良が発生しやすい、スクラッチを強く擦りすぎると有価証券情報までも擦り取られてしまうおそれがある、スクラッチは構造上コイン等で容易に擦り落とせるものであるため、利用者による購入前にスクラッチが剥がれ落ちてしまう可能性などの不具合があった。甲第1号証発明は、製造過程での不良品の発生が少なく、高速・大量生産に好適で、かつカード購入者にキーワード等の有価証券情報を正確に伝えることができ、また当該有価証券情報を確実に隠蔽できるプリペイドカード付きシートを提供することを課題とし、その解決手段として、用紙を折り畳み、その用紙の折畳み対向紙片同士を擬似接着してなるとともに、上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し、その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなるということを採用したものである。そして、折畳み対向紙片同士の擬似接着により有価証券情報が隠蔽し、カード購入者に有価証券情報を正確に伝えるとともに、カード製造過程からスクラッチ塗布工程を省略することでカードの汚れや欠け等のカード不良を減少させることが可能となるという効果があるものである。また、キーワード等の有価証券情報が印字された部分はプリペイドカードとして抜き取って携帯することができるものである。
(ウ)上記(イ)からすれば、甲第1号証発明は、プリペイドカードに記載された情報の隠蔽を課題とするものであることが認められる。
一方で、甲第1号証発明は、前記のとおり、
「用紙を折畳み、その用紙の折畳み対向紙片どうしを擬似接着してなるとともに、
上記折畳み対向紙片の内側面に有価証券情報を印字し、その有価証券情報の印字部を含む上記折畳み対向紙片の一部に、これをプリペイドカードとして抜き取り可能とする加工を施してなるプリペイドカード付きシートであって、
前記用紙は、折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4からなる用紙1を用い、折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4は折られて重ねられ、折畳み対向紙片2とスリット折畳み対向紙片4どうしをオープンタイプフィルム5により擬似接着し、スリット折畳み対向紙片4の内側面に有価証券情報7が印字され、その有価証券情報7の印字部を含むスリット折畳み対向紙片4の一部のみがプリペイドカード8として抜き取り可能に設けられ、 前記抜き取り可能とする加工は、スリット9が、スリット折畳み対向紙片4を切断し、オープンタイプフィルム5の一方のフィルム5aをほぼ切断する深さとなるように有価証券情報7の印字部を囲むものであり、
前記擬似接着の手段としてのオープンタイプフィルム5は、糊状のものを適用することができる
プリペイドカード付きシート。」
であるが、上記下線部分、すなわち、有価証券情報の印字部外周に施された抜き型による加工はプリペイドカードを抜き取り可能とするためのものであるところ、これは、プリペイドカードが単に有価証券情報をカード購入者に通知するのみならず、利用者により携帯を予定しているため、有価証券情報が記載されているとともに有価証券情報を隠蔽している折畳み対向紙片から分離させる必要があるために設けられたものと解される。すなわち、購入者に交付されるシートからプリペイドカードを分離して使用できるようにすることも、請求項1?8にその構成が包含されているのみならず、考案の詳細な説明の段落【0010】、【0024】、【0026】、【0030】、【0031】、【0035】にその構成が独立して説明されている事項であり、甲第1号証発明において技術的課題の一つとされていたというべきである。
そうすると、甲第1号証発明は、折畳み対向紙片の内側面に印字された部分が有価証券情報のように隠蔽される必要のないものであっても、折畳み対向紙片の内側面の一部分を独立して抜き取る(折畳み対向紙片から分離させる)必要性があれば、プリペイドカードに代えてかかる分離させる必要があるものを採用するについての動機付けを包含するものというべきである。
かかる見地から見るに、広告の一部に返信用葉書を切取り可能に設けることは、本件出願前に既に周知の技術であったと認められる(特開2004-133065号公報〔甲第3号証〕、実願平1-115348号(実開平3-55272号)のマイクロフィルム〔甲第16号証〕)。そして、広告の一部に返信用葉書を設ける場合、返信のために葉書部分を分離させる必要があることは明らかである。したがって、消費者等が受領したシートや紙面から分離して使用するものとして、甲第1号証発明の「プリペイドカード」に代えて「返信用葉書」を採用することは当業者にとって容易想到であるというべきである。
(エ)別の角度からみるに、返信用葉書を備え付けた郵便物であって、当該返信用葉書に受取人の個人情報(氏名・会員番号・生年月日・電話番号・性別・住所など)、預金残高、借入金額などの隠蔽すべき情報が予め記載されたものも本件出願前に周知の技術であったと認められる(特開2000-177277号公報〔甲第17号証〕、実願平1-16975号(実開平2-108073号)のマイクロフィルム〔甲第19号証〕)。したがって、隠蔽されるべき情報が記載され、かつ、顧客等に送付ないし交付される郵便物や書面から分離して使用されるべきものとしてプリペイドカードと返信用葉書は共通する一面を有しているといえるから、甲第1号証発明の「プリペイドカード」に代えて「返信用葉書」を採用することは当業者にとって容易想到であるということもできる。
(オ)以上の検討によれば、甲第1号証発明において、「プリペイドカード」に代えて「返信用葉書」を採用し、その結果、当該甲第1号証発明を「返信用葉書付き広告用印刷物」となして、上記相違点3、4に係る本件訂正発明1の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

(3)小括
以上のとおり、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本件訂正発明2について
(1)対比
本件訂正発明2と甲第1号証発明とを対比するに、両者は、上記2(1)に照らせば、上記の相違点1?4に加え、さらに以下の点においても相違するといえる。

[相違点5]:返信用葉書(4)が落下しないように貼着するための一過性の粘着材が、本件訂正発明2では、塗布後でもその上から文字が書ける一過性の粘着材であるのに対し、甲第1号証発明では、そのようなものであるのか否か明らかでない点。

(2)判断
上記相違点5につき検討するに、塗布後でもその上から文字が書ける一過性の粘着剤は本件出願前に既に周知の技術であったと認められるところ(特許第2996720号公報〔甲第5号証〕、実用新案登録第2598829号公報〔甲第6号証〕)、甲第1号証発明の「(擬似接着の手段としての)糊状のもの」として、前記周知の技術のような塗布後でもその上から文字が書けるものを採用することが当業者において格別困難なことである、ということはできない。
よって、甲第1号証発明において、上記相違点5に係る本件訂正発明2の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。

(3)小括
以上のとおり、本件訂正発明2は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第8 むすび
上記第7のとおり、本件訂正発明1及び本件訂正発明2は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1及び本件訂正発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
印刷物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物、特に中央面部又は一方の側面部に分離して使用するもの、たとえば葉書等が印刷され、かつその葉書等の周囲に切り込みが入っている印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左側面部及び右側面部が開く広告用印刷物に関する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
又、左側面及び右側面が開く広告用印刷物に葉書が付いている技術がある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3096613号公報([0005])
【特許文献2】実用新案登録第3096910号公報([0005]?[0007])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1には葉書が付いておらず、特許文献2は葉書が付いていて広告としての機能を効果的に発揮することが出来るが、なお、葉書を切り取らなければならないという手間が依然として残っていた。
【0005】
又、広告等にチケット、クーポン券等が付いている場合があるがこれら等も広告から切り取らなければならないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、葉書、チケット、クーポン券等の分離して使用するものを広告等の印刷物より切り取る必要がなく、かつその周囲に切り込みが入っているにもかかわらず、広告等の印刷物に付いていて紛失させることなく、しかも手間がかからず葉書、チケット、クーポン券等の分離して使用するものを利用することが出来る印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明の印刷物は、
左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物であって,
当該中央面部には、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが印刷されていること,
当該分離して使用するものが、落下しないように、当該分離して使用するものの裏面の、一方の側面部に重なる所定の部分に、及び/又は一方の側面部の裏面の、当該分離して使用するものに重なる所定の部分に一過性の粘着剤が塗布されていること,
当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面、及び/又は当該中央面部の裏面の、分離して使用するものを除く所定の部分に一過性の粘着剤が塗布されており、そのため、当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面を当該中央面部の方へ折った場合、当該中央面部に貼着し、かつ一方の側面部は当該分離して使用するものに貼着すること,
当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っていること,
からなる。
【0008】
又、本発明の印刷物は、左側面部と中央面部と右側面部とからなる印刷物であって,
一方の側面部には、所定の箇所に所定の大きさの分離して使用するものが印刷されていること,
当該分離して使用するものが、落下しないように、当該分離して使用するものの裏面の、中央面部に重なる所定の部分に、及び/又は中央面部の裏面の、当該分離して使用するものに重なる所定の部分に一過性の粘着剤が塗布されていること,
当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面、及び/又は当該中央面部の裏面の、分離して使用するものを除く所定の部分に一過性の粘着剤が塗布されており、そのため、当該左側面部の裏面及び当該右側面部の裏面を当該中央面部の方へ折った場合、当該中央面部に貼着し、かつ中央面部は当該分離して使用するものに貼着すること,
当該分離して使用するものの周囲に切り込みが入っていること,
からなる。
【0009】
又、一過性の粘着剤が分離して使用するものに塗布されている場合、当該一過性の粘着剤は、それを塗布後、その上から文字が書ける一過性の粘着剤であることが好適である。
又、前記印刷物が広告又はダイレクトメールであることが好適である。
さらに、前記分離して使用するものが葉書、チケット、又はクーポン券であることが好適である。
【0010】
しかし、本発明の印刷物は、広告、ダイレクトメール等その種類を問わず、又、分離して使用するものも、葉書、チケット、クーポン券等に限らずその他のものでも良い。
【0011】
さらに、本発明の印刷物は、本等の間に挟んで使用することも出来るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上の構成を有するので、印刷物に付いている葉書、チケット、クーポン券等を切り取ろうとする意思を持たずに、印刷物を開くと自動的に手にすることになる。したがって、分離して使用するものの使用者へのアピール力が高く、例えば分離して使用するものが葉書の場合には、すぐに葉書を出してもらえるというレスポンス向上の期待がさらに多くなり、又チケット・クーポン券等の場合はそれらを利用してもらえるということが多くなる、という効果が生じるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施例の印刷物を開いた状態を示す図である。
【図2】左側面部と右側面部を中央面部及び右側面部を分離して使用するものに貼着した状態を示す図である。
【図3】第1の実施例の左側面部と右側面部を開いた状態を示す図である。
【図4】本発明の印刷物の裏面を示す図である。
【図5】第2の実施例の印刷物を開いた状態を示す図である。
【図6】第2の実施例の左側面部と右側面部を開いた状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態の一例を図面にしたがって説明する。
図1は本発明の印刷物を開いた状態を示す第1の実施例を示す図である。
中央面部1の中央より右側の場所に分離して使用するもの4が印刷されている。本図面ではこの分離して使用するもの4は四角形をしているが、丸でも三角形でも良く形状は問わない。
印刷物が広告の場合には分離して使用するもの4以外の部分には広告の内容等が印刷されているものである。
【0015】
中央面部1の右側に当該分離して使用するもの4が設けられ、当該分離して使用するもの4の裏面又は表面(都合により裏面でも表面でも良い。)の内側の周囲5及び外側の周囲5’にはその上から文字を書くことの出来る一過性の粘着剤が塗布されている。内側の周囲5だけでなく全面に当該粘着剤を塗布しても良いし、四隅と中央の部分だけに塗布しても良い。
要は当該分離して使用するもの4が落ちなければ良い。
【0016】
又、当該分離して使用するもの4の裏面又は表面ではなく、右側面部3又は左側面部2の裏面に、右側面部3又は左側面部2を折った場合に、当該分離して使用するもの4が落ちないように、その重なる部分に一過性の粘着剤(この場合は文字が書いても書けなくても良い。)を塗布しても良い。
【0017】
又、本図面では図示していないが、左側面部2の裏面の上部、下部、左側部、右側面部3の裏面の上部、下部、右側部、及び/又は中央面部1の裏面の、左側面部2及び右側面部3に重なる所定の部分に一過性の粘着剤が塗布されている。
【0018】
そのため、右側面部3及び左側面部2を中央面部1の方に折って重ねると、右側面部3又は左側面部2は中央面部1に剥離可能に貼着される。
【0019】
図2は左側面部の裏面と右側面部の裏面を中央面部の裏面及び右側面部を分離して使用するものに貼着した状態を示す図である。
貼着した後、分離して使用するもの4(例えば葉書等)の周囲をハーフカット装置を使用して半抜きをする。すなわち、分離して使用するもの4の周囲のみに切り込み9を入れる。分離して使用するもの4の裏面又は図示していないが右側面部3の裏面の前記所定の箇所には一過性の粘着剤が塗布されているので分離して使用するもの4の周囲に切り込み9が入っても欠落したりすることがないものである。左、右に開く場合は、開く箇所を示した部分6,7より開けば容易に開くことが出来る。
【0020】
図3は左側面部と右側面部を開いた状態を示す図である。
本図面では右側面部3に分離して使用するもの4が貼着されるようになっているので、右側面部3を開くと、右側面部3の裏面に分離して使用するもの4が貼着しており、左側面部2には分離して使用するもの4が付いていない状態を示している。分離して使用するもの4が中央面部1から切り離されたことにより、分離して使用するもの4があった部分は四角形の穴8になっている。
【0021】
右側面部3の裏面に貼着している分離して使用するもの4は一過性の粘着剤で付いているだけなので簡単に剥がすことが出来るものであり、切り取ろうとする意思を必要としないものである。
したがって分離して使用するもの4の使用及び利用価値が非常に高まるものである。
【0022】
図4は本発明の印刷物の裏面図である。
通常、本発明の印刷物を開く場合、左側面部2,右側面部3から開くものであるが、場合によっては裏から分離して使用するもの4を剥がしても良い。
【0023】
図5は本発明の印刷物を開いた状態を示す第2の実施例を示す図である。
一方の側面部、即ち左側面部2又右側面部3のうち、右側面部3の所定の場所に分離して使用するもの4が印刷されていることを示している。
以下の説明は第1の実施例の場合と同様であるが、疑義を生じさせないため再度説明する。
本図面ではこの分離して使用するもの4は四角形をしているが、丸でも三角形でも良く形状は問わない。
印刷物が広告の場合には分離して使用するもの4以外の部分には広告の内容等が印刷されているものである。
【0024】
又、右側面部3の所定の場所に当該分離して使用するもの4が設けられ、当該分離して使用するもの4の裏面又は表面(都合により裏面でも表面でも良い。)の内側の周囲5及び外側の周囲5’にはその上から文字を書くことの出来る一過性の粘着剤が塗布されている。内側の周囲5だけでなく全面に当該粘着剤を塗布しても良いし、四隅と中央の部分だけに塗布しても良い。
要は当該分離して使用するもの4が落ちなければ良い。
【0025】
又、当該分離して使用するもの4の裏面又は表面ではなく、中央面部1の裏面に、右側面部3又は左側面部2を折った場合に、当該分離して使用するもの4が落ちないように、一過性の粘着剤(この場合は文字が書いても書けなくても良い。)を塗布しても良い。
【0026】
又、本図面では図示していないが、左側面部2の裏面の上部、下部、左側部、右側面部3の裏面の上部、下部、右側部、及び/又は中央面部1の裏面の、左側面部2及び右側面部3に重なる所定の部分に一過性の粘着剤が塗布されている。
【0027】
そのため、右側面部3及び左側面部2を中央面部1の方に折って重ねると、右側面部3又は左側面部2は中央面部1に剥離可能に貼着される。
貼着した後、分離して使用するもの4(例えば葉書等)の周囲をハーフカット装置を使用して半抜きをする。すなわち、分離して使用するもの4の周囲のみに切り込み9を入れる。分離して使用するもの4の裏面又は中央面部1の裏面の前記所定の箇所には一過性の粘着剤が塗布されているので分離して使用するもの4の周囲に切り込み9が入っても欠落したりすることがないものである。左、右に開く場合は、開く箇所を示した部分6,7より開けば容易に開くことが出来る。
【0028】
図6は左側面部と右側面部を開いた状態を示す第2の実施例を示す図である。
本図面では中央面部1に分離して使用するもの4が貼着されるようになっているので、右側面部3を開くと、中央面部1の裏面に分離して使用するもの4が貼着しており、左側面部2には分離して使用するもの4が付いていない状態を示している。分離して使用するもの4が右側面部3から切り離されたことにより、分離して使用するもの4があった部分は四角形の穴8になっている。
【0029】
中央面部1の裏面に貼着している分離して使用するもの4は一過性の粘着剤で付いているだけなので簡単に剥がすことが出来るものであり、切り取ろうとする意思を必要としないものである。
したがって分離して使用するもの4の使用及び利用価値が非常に高まるものである。なお、第1の実施例で説明した図4の説明は第2の実施例も同じなので省略する。
【0030】
第2の実施例は右側面部3に分離して使用するもの4が印刷されている状態について図示し説明したが、左側面部2に分離して使用するもの4が印刷されている場合については、右側面部3に分離して使用するもの4が印刷されている場合と同じなので図示及び説明を省略する。
【符号の説明】
【0031】
1 中央面部
2 左側面部
3 右側面部
4 分離して使用するもの
5 内側の周囲
5’ 外側の周囲
6,7 開く箇所を示した部分
8 穴
9 切り込み
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】左側面部(2)と右側面部(3)が中央面部(1)の同一の面の方へ折られて重ねられた返信用葉書付き広告用印刷物であって,
どちらか一方の側面部(2又は3)のみに重なる返信用葉書(4)が中央面部(1)に印刷されており、分離して使用できるように周囲に切り込み(9)が入っていること、
該返信用葉書(4)が落下しないように、該返信用葉書(4)と重なる一方の側面部(2又は3)と、該返信用葉書(4)とが一過性の粘着剤により貼着されていること,かつ、左側面部(2)と右側面部(3)と、該返信用葉書(4)を除く中央面部(1)とが一過性の粘着剤により貼着されていることからなり、
開くとどちらか一方の側面部(2又は3)のみに該返信用葉書(4)が付いてくることを特徴とする返信用葉書付き広告用印刷物。
【請求項2】該返信用葉書(4)が落下しないように貼着するための一過性の粘着剤が、塗布後でもその上から文字が書ける一過性の粘着剤であることを特徴とする請求項1に記載の返信用葉書付き広告用印刷物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-04-17 
結審通知日 2013-04-19 
審決日 2013-05-01 
出願番号 特願2010-199594(P2010-199594)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B42D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 鈴木 秀幹
黒瀬 雅一
登録日 2011-02-18 
登録番号 特許第4685970号(P4685970)
発明の名称 印刷物  
代理人 金山 聡  
代理人 櫻井 彰人  
代理人 松本 雅利  
代理人 生田 哲郎  
代理人 松本 雅利  
代理人 中所 昌司  
代理人 中所 昌司  
代理人 生田 哲郎  

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