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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1282571 |
審判番号 | 不服2012-14382 |
総通号数 | 170 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-26 |
確定日 | 2013-12-04 |
事件の表示 | 特願2001-540967「順方向リンクの可変レート符号化」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月31日国際公開、WO01/39423、平成15年 8月12日国内公表、特表2003-524321〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 経緯 1.手続 本願は、2000年(平成12年)11月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年11月22日、米国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成22年 6月 1日(起案日) 手続補正 :平成22年10月29日 拒絶理由通知(最初) :平成23年 2月 8日(起案日) 手続補正 :平成23年 8月15日 拒絶査定 :平成24年 3月28日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成24年 7月26日 手続補正 :平成24年 7月26日 前置審査報告 :平成24年 9月20日 審尋 :平成25年 1月17日(起案日) 回答書 :平成25年 5月21日 2.査定 原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。 本願の各請求項に係る発明(平成23年8月15日付け手続補正書による)は、下記刊行物に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開平8-265304号公報 刊行物2:国際公開第99/41872号 第2 補正却下の決定 平成24年7月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について次のとおり決定する。 《結論》 平成24年7月26日付けの手続補正を却下する。 《理由》 1.本件補正の内容 平成24年7月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という)は、本件補正前、平成23年8月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲についてする補正であり、補正前の請求項6の記載を、補正後の請求項6とする補正を含むものである。 (補正前請求項6) 【請求項6】 データを符号化する方法であって、 受信機への符号化フレームの送信に使用される複数のチャネルを決定するステップと、 複数のフレームのそれぞれを順方向誤り訂正(FEC)符号化し、前記複数のフレームのそれぞれは可変の数のデータビットを含み、出力符号化ビットの出力結果数が固定となるように誤り訂正コードを含めるステップと、 前記受信機へ前記複数のチャネルを使用して前記符号化ビットを送信するステップと を備えることを特徴とする方法。 (補正後請求項6) 【請求項6】 データを符号化する方法であって、 受信機への符号化フレームの送信に使用される複数のチャネルを決定するステップと、 複数のフレームのそれぞれを順方向誤り訂正(FEC)符号化し、前記複数のフレームのそれぞれは可変の数のデータビットを含み、出力符号化ビットの出力結果数が固定となるように誤り訂正コードを含めるステップと、 前記受信機へ前記複数のチャネルを使用して前記符号化ビットを送信するステップであって、前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく前記誤り訂正コードに基づき送信するステップと を備えることを特徴とする方法。 2.補正の適法性 a.補正の目的 本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含み、補正前の請求項6における「符号化ビットを送信するステップ符号化ビットを送信するステップ」に、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された範囲内の構成である「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく前記誤り訂正コードに基づき送信する」構成を付加し限定するものである。 したがって、上記請求項6についての補正は、補正前の請求項6に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法第126条5項に規定された、特許請求の範囲の減縮に該当する補正事項を含んでいると認められる。 b.独立特許要件 そこで、以下、上記補正後の請求項6に係る発明(以下「補正後発明」という)が独立特許要件を満たすか否かについて検討する。 (ア)補正後発明 補正後発明は、上記補正後の請求項6の次の記載により特定されるものである。 【請求項6】 データを符号化する方法であって、 受信機への符号化フレームの送信に使用される複数のチャネルを決定するステップと、 複数のフレームのそれぞれを順方向誤り訂正(FEC)符号化し、前記複数のフレームのそれぞれは可変の数のデータビットを含み、出力符号化ビットの出力結果数が固定となるように誤り訂正コードを含めるステップと、 前記受信機へ前記複数のチャネルを使用して前記符号化ビットを送信するステップであって、前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく前記誤り訂正コードに基づき送信するステップと を備えることを特徴とする方法。 (イ)刊行物1(特開平8-265304号公報)の記載 審査官が拒絶の査定で引用した、特開平8-265304号公報(以下、刊行物1という)には、図面とともに、下記のとおりの記載がある。 【0001】 【産業上の利用分野】本発明はデータ伝送の誤り制御方式に関わり、伝送路の状態が変化する場合にも効率的にデータ伝送を行う適応符号化誤り制御方式に関する。 【0002】 【従来の技術】データ伝送の効率や品質を高めるため、伝送途中で生じる伝送データの誤りを訂正する誤り制御が多方面でよく用いられている。誤り制御方式には、符号化により訂正する誤り訂正符号化方式や誤りを含んで受信されたフレームを再度送信する再送方式がある。また、誤り訂正符号化方式と再送方式を組み合わせた方法としてハイブリッド誤り制御方式があり、誤り訂正符号化により一定の伝送品質を確保した上で再送を行うことによって、劣悪な伝送路状態下においても高い伝送効率が得られるとされている。 【0003】誤り訂正符号化方式は、誤り訂正符号化により冗長な情報を送信情報に付加し、受信側で復号することにより受信情報に含まれる誤りを訂正する。訂正可能な誤りの量は付加される冗長情報の量に応じて変化し、一般に冗長情報の量が多いほど訂正可能な誤りの量は増加する。しかし、いくら冗長情報を増加させても完全にエラーフリーとする事はできない。よって誤り訂正符号化方式は一定の通信品質を確保するために用いられる。また、冗長情報の割合を増加させるためには、伝送路の伝送能力の内、情報の伝送に使用する伝送能力を削減して、冗長情報に割り当てる必要がある。よって、誤り訂正能力を増加させるとその分、伝送路の最大伝送能力は低下する。この現象はハイブリッド誤り制御方式でも同様に発生する。 【0005】一方、移動体通信や衛星通信等の無線回線を利用したデータ伝送が行われている。これらの無線回線では伝送路状態が大きく変動し、誤り訂正符号化方式により一定の伝送品質を保つためには十分に余裕をもった量の冗長情報を付加することが必要となる。しかし伝送路状態が良い時には冗長情報の伝送が無駄となる。同様にハイブリッド再送制御においても、悪伝送路状態下において伝送効率が劣化しないよう多量の冗長情報を付加すると、最大伝送能力が大幅に減少することになる。 【0006】また、再送制御方式を用いる場合には、伝送路状態が悪化した場合にも通信を続けるには情報ブロック長を十分に短くしておく必要がある。しかし、情報ブロック長を短くすると前述のように最大伝送能力が低下する。 【0007】このような伝送路の状態の変動によって伝送能力が無駄になるという問題を解決する手段として、伝送路の状態に応じて適応的に符号化率または符号化方式を変更することにより、伝送能力を最大限活用する適応誤り制御方式が多数報告されている。特に符号化方式または符号化率を伝送路状態に応じて可変とする誤り制御方式を適応符号化誤り制御方式と呼ばれている。符号化方式には、BCH符号、リードソロモン符号、畳み込み符号、多数決符号等がある。また符号化率とは誤り訂正符号の全符号長に対する符号化される情報長の割合で、例えば符号化率が1とは誤り訂正符号化されていない状態を示し、符号化率0.6とは全符号長の4割が誤り訂正用のパリティビットであることを示す。 【0008】適応符号化誤り制御方式の内、符号化方式を変更する方式の公知例としては特願昭63-124633”無線通信システムにおける選択符号化方式”や、1989年5月電子情報通信学会論文誌B-I (Vol.J72-B-I No.5 pp.438-445)に発表された”適応符号化による誤り制御データ通信方式の構成と適用効果”などがある。前者には、回線状態を把握するための回線状況信号を送信し、その信号に含まれる誤りの有無によって符号化手段を切り換え、符号化手段の切り換えに際しては、被呼局(受信側)が発呼局(送信側)に対して切り換え情報信号を送信して切り換えを行う方法が示されている。後者はハイブリッド再送制御で4種類の符号化方式の中から伝送路のビット誤り率に応じて設定された符号化方式を選択し、複数のデータフレーム毎に符号化方式を示す情報を送信することによって受信側での復号方式を指定している。 【0009】また符号化率を可変とする方式の公知例としては電子情報通学会技術報告SAT84-8で発表された”符号化率可変誤り訂正方式とその適用効果”がある。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】陸上移動体通信などの無線回線では回線状態は極めて頻繁に変化し、特に極小ゾーン構成のシステムでは、移動中に電波の届きにくい場所を通過するシャドーイングと呼ばれる現象が頻発するものと考えられる。また、定在波中の移動によって発生するフェージングによる受信レベルの変動は、歩行中の様に低速で移動した場合には、その周期が比較的長くなり、適応誤り制御によって伝送効率の改善も可能となる。このような伝送路において、状態に応じて適応的に情報ブロック長、符号化率または符号化方式を変更し、伝送能力を最大限に利用するためは、頻繁に変動する伝送路の状態を的確に推定し、適切な符号化方式または符号化率の選択、変更をできるだけ短い時間間隔で行っていく必要がある。 【0011】しかしながら、適応符号化誤り制御において、従来のように一旦伝送を中止し伝送方式を変更する場合、方式変更の度に時間的に無駄が生じるため、高速に切り換えを行う事ができなかった。またデータに誤り制御方式指定情報を付加して伝送する場合には、方式を指定する情報を伝送するために効率が劣化し、さらに指定情報に誤りが生じた場合情報が正しく伝送されていても正しく受信できないという問題があった。さらに、ハイブリッド再送制御に適応符号化誤り制御を適用する場合には、再送時と1回目に送信した時とで符号化方式または符号化率が変更されると1フレームで送信できる情報ブロック長が異なり、そのままでは再送できなくなる。このような場合、全ての再送処理が一旦終結した後に、符号化方式または符号化率の変更を行うか、情報ブロックを分割統合することが必要となる。 【0012】また、短い周期で符号方式または符号化率を変更するためには、正確に伝送路状態を推測し、適切な符号化方式または符号化率を選択し、変更する手段が必要となる。しかし、受信レベルなど伝送路状態を推測するための詳細な情報を入手できない場合が多く、入手できる情報から的確に符号化方式または符号化率を選択する必要がある。 【0021】 【作用】受信情報を複数の復号方式で復号し、復号結果について誤り検出し、誤りが検出されなかった復号結果を受理することによって、符号化方式や符号化率変更の信号を送る為に情報の伝送を中断したり、フレーム毎に符号化方式や符号化率に関する情報を付随させることなく、符号化方式または符号化率の変更が行える。そのため、頻繁に符号化方式または符号化率の変更を行っても伝送効率の劣化を引き起こさない。 【0022】また、フレーム長を一定とし、情報信号と冗長信号の割合を変化させることにより、符号化方式や符号化率の変更の度にフレームの先頭と末尾を検出する必要がなくなるうえ、各フレーム中のビットが誤る確率も等しくなるため適切な符号化方式または符号化率の変更ができる。 【0026】 【実施例】図1は本発明が適用される無線データ通信システムである。1はデータ端末装置、2は誤り制御装置、3は送受信機で、データ端末装置1と誤り制御装置2は送信情報11及び受信情報12を受け渡しし、誤り制御装置2と送受信機3は制御信号、誤り訂正用ビット等と共にフレーム化された送信データ13及び受信データ14をやり取りし、送受信機3は送信データ13を変調して送信し受信側では復調して受信データ14として出力する。誤り制御装置2はデータ端末装置1と一体化されていてもよく、送受信機3と一体化されていてもよい。また、データ端末装置1及び誤り制御装置2及び送受信機3が1つの装置として構成されていてもよい。また、情報を送信する機能と制御信号を受信する機能のみから構成され受信情報12及び受信データ14を扱う機能をもたない前記無線データ通信システムと、情報を受信する機能と制御信号を送信する機能のみから構成され送信情報11及び送信データ13を扱う機能をもたない前記無線データ通信システムを、一組にして使用するシステムに本発明を適用することもできる。 【0027】図1のシステムの誤り制御部2の誤り制御方式が誤り訂正符号化を行った上で再送を行うハイブリッド誤り制御方式で、符号化率を可変とした適応符号化誤り制御方式を用いる場合の本発明の実施例を以下に示す。 【0028】図3は本発明による誤り制御装置2の機能ブロック図である。1はデータ端末装置、2は誤り制御装置、3は送受信機、30は誤り制御装置送信部、31は送信情報受取・ブロック化部、32は送信部再送制御部、33は送信情報記憶部、34は制御情報付加部、35は誤り検出符号化部、36は誤り訂正符号化部、37はデータ送信部、38は符号化率制御部、40は誤り制御装置受信部、41はデータ受信部、42は誤り訂正復号・誤り検出・符号化率判定部、43は指定符号化率決定部、44は制御情報読み出し部、45は受信部再送制御部、46は受信情報記憶部、47は受信情報受渡部である。 【0029】誤り訂正復号・誤り検出・符号化率判定部42は次の部分から構成される。51?53はそれぞれ符号化率a,b,cで誤り訂正復号を行う部分、54?56は誤り検出部、57は使用符号化率判定・受信情報決定部である。 【0030】また11は送信情報、12は受信情報、13は送信データ、14は受信データである。I1からI7までは制御用情報で、I1は情報ブロック長情報,I2は再送要求・受信確認情報、I3は再送要求・受信確認情報,I4は送信ブロック番号情報,I5は対向チャネル符号化率指定情報、I6は送信ブロック情報、I7は符号化率情報、I8は符号化率指定情報,I9はフレーム誤り情報である。送信情報受取・ブロック化部31はデータ端末装置1から送信情報を受取り一時保存し、送信部再送制御部32から新情報ブロックの要求があると符号化率制御部38から得られる情報ブロック長情報I1で指定されるブロック長に、送信情報をブロック化する。送信部再送制御部32は、受信側の制御情報読み出し部44で受信データから読み出された再送要求・受信確認情報をもとに、誤ることなく通信相手に受信された情報ブロックと誤りが発生して受信されなかった情報ブロックのブロック番号を把握する。さらに、誤りが発生した情報ブロックを再送する必要がある場合には、再送する情報ブロック番号を決定し、送信情報記憶部33から前記情報ブロック番号の送信情報を読み出し、制御情報付加部34に送る。また、再送する必要のある情報ブロックがないときは、送信情報受取・ブロック化部31から新情報ブロックを受取り、送信情報記憶部33に記憶するとともに、制御情報付加部34に情報ブロックを送る。 【0031】制御情報付加部は34は送信ブロック番号I4及び、対向チャネル用の制御情報である、再送要求・受信確認情報I3、符号化率指定情報I5を送信情報ブロックに付加し、誤り検出符号化部35に送る。情報I3は受信部再送制御部45で決定され、誤りなく受信できた情報ブロックのブロック番号やまだ受信できていない情報ブロックのブロック番号を通信相手に報知するために、送信情報ブロックに付加され通信相手に送られる。情報I5は受信部の指定符号化率決定部43から伝えられ、通信相手が送信する際に用いる符号化率を通信相手に知らせるために、送信情報ブロックに付加され送信される。 【0032】誤り検出符号化部35は情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り訂正符号化部36では誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化する。以上のようにして、制御情報を付加され、誤り検出符号化され、誤り訂正符号化された情報ブロックは、一つのフレームとしてデータ送信部37に送り込まれ、データ送信部37は送信データ13を送受信機3に送信する。 【0033】符号化率制御部38は受信部40の制御情報読み出し部44で受信信号から読み出される符号化率指定情報I8を用いて、次に送信する情報ブロックの符号化率、ブロック長を決定する。なお、符号化率制御部38の動作の詳細については後述する。 【0037】図2は送信データ13や受信データ14のフレームフォーマットを示すもので、21は再送要求・受信確認情報、22は符号化率指定情報、23は送信ブロック番号、24は情報ブロック、25は情報21?24までを符号化して得られる誤り検出用パリティビット、26は信号21?25までを符号化して得られる誤り訂正用パリティビットである。このうち信号21、22、23、25は一定長の信号で、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化し、さらに、全フレーム長が符号化率に拘らず一定であり、符号化率の変更にともない信号24および26の長さの比率を変更することによって符号化率を可変とする。例えば、全フレーム長がnバイト、誤り訂正符号化される信号のうち21、22、23、25の長さの合計がiバイトで一定のとき、符号化率がr(0<r<=1)ならば、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は(n-i)バイトで一定であり、伝送情報25の長さは(n・r-i)、誤り訂正用パリティ27の長さは{n・(1ーr)}バイトと符号化率rに応じて可変となる。フレーム長を一定にする事により、受信側のデータ受信部41でフレームの先頭と末尾を検出する作業が簡単になる。また、符号化率によってフレーム長が異なると、ビット誤りが偏って発生するような伝送路上でビット誤りの発生形態が変化した場合に、各符号化率によってフレーム誤り率の変化の割合が大きく異なる。このことは、伝送路上での誤りの発生形態によって最適な符号化率が大きく異なる異を意味する。それに対し、フレーム長を一定にすることにより誤りの発生形態が変化しても最適となる符号化率は大きくは変化せず、符号化率の選択が容易となる。 【0038】符号化率制御部38の詳細な動作を図6のフローチャート参照しながら説明する。s40で現行符号化率を初期値に設定する。s41は受信部30の制御情報読み出し部44で受信フレームから読み出した符号化率指定情報I8を読み込む工程。s42はs41で符号化率指定情報が読み込めたかどうか判定する工程で、誤りが発生により57で受信フレームが破棄され、制御情報読み出し部で符号化率指定情報を読み出すことができな場合を検出する。符号化率指定情報を読み込めた場合には、s43で現行符号化率を符号化率指定情報で指定される符号化率に設定する。符号化率指定情報を読み出せなかった場合には、現行符号化率の変更は行わない。次にs44では、次送信情報ブロックが再送ブロックか、初めて送信するブロックか判定する。初めて送信するブロックの場合には、s45で誤り訂正符号化に使用する符号化率を現行符号化率とする。s46では、決定した符号化率に応じて情報ブロック長を決定し送信情報受取・ブロック化部31に指示する。送信ブロックが再送ブロックの場合は送信情報記憶部33から送信する情報ブロックと共に、送信情報ブロックの一回目の送信で用いた符号化率を読み出す。s47では誤り訂正符号化に使用する符号化率をs46で読み出した符号化率に設定する。 【0039】上記の動作により、フレームを受信する度に最適な符号化率が指定される。受信フレームに誤りが発生し符号化率の指定を受けれなかった場合にも次の受信フレームで適切な符号化率に変更できる。また受信側に知らせずに符号化率を変更できる本発明の特徴により、再送ブロックを一回目に送信した時と同じ符号化率で送信でき、再送すべき情報ブロックが残っていても新ブロックに関しては符号化率の変更が可能となり、伝送効率が上がる。 (ウ)刊行物1発明 上記刊行物1の記載によると、刊行物1には、データ伝送の誤り制御方式に関して、以下の要件を有する発明が記載されている。 (ウ-1)データ伝送の誤り制御方式 刊行物1の【0001】の「本発明はデータ伝送の誤り制御方式に関わり、伝送路の状態が変化する場合にも効率的にデータ伝送を行う適応符号化誤り制御方式に関する。」との記載によれば、刊行物1に記載された発明は、データ伝送を行う適応符号化誤り制御方式に関する発明であるといえる。 (ウ-2)フレームの構成(フォーマット) 【0022】の「また、フレーム長を一定とし、情報信号と冗長信号の割合を変化させることにより、符号化方式や符号化率の変更の度にフレームの先頭と末尾を検出する必要がなくなるうえ、各フレーム中のビットが誤る確率も等しくなるため適切な符号化方式または符号化率の変更ができる。」の記載、および、【0037】の「図2は送信データ13や受信データ14のフレームフォーマットを示すもので、21は再送要求・受信確認情報、22は符号化率指定情報、23は送信ブロック番号、24は情報ブロック、25は情報21?24までを符号化して得られる誤り検出用パリティビット、26は信号21?25までを符号化して得られる誤り訂正用パリティビットである。このうち信号21、22、23、25は一定長の信号で、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化し、さらに、全フレーム長が符号化率に拘らず一定であり、符号化率の変更にともない信号24および26の長さの比率を変更することによって符号化率を可変とする。例えば、全フレーム長がnバイト、誤り訂正符号化される信号のうち21、22、23、25の長さの合計がiバイトで一定のとき、符号化率がr(0<r<=1)ならば、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は(n-i)バイトで一定であり、伝送情報25の長さは(n・r-i)、誤り訂正用パリティ27の長さは{n・(1ーr)}バイトと符号化率rに応じて可変となる。フレーム長を一定にする事により、受信側のデータ受信部41でフレームの先頭と末尾を検出する作業が簡単になる。また、符号化率によってフレーム長が異なると、ビット誤りが偏って発生するような伝送路上でビット誤りの発生形態が変化した場合に、各符号化率によってフレーム誤り率の変化の割合が大きく異なる。このことは、伝送路上での誤りの発生形態によって最適な符号化率が大きく異なる異を意味する。それに対し、フレーム長を一定にすることにより誤りの発生形態が変化しても最適となる符号化率は大きくは変化せず、符号化率の選択が容易となる。」の記載、さらに図2を参酌すると、刊行物1には、送信データのフォーマットとして、1フレームは、再送要求・受信確認情報21、符号化率指定情報22、送信ブロック番号23、情報ブロック24、誤り検出用パリティビット25、誤り訂正用パリティビット26からなり、このうち信号21、22、23、25は一定長の信号で、また、全フレーム長(1フレームの長さ)が一定であり、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は一定であるが、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化する構成であることが記載されているといえる。 (ウ-3)符号化・送信 刊行物1の【0030】ないし【0033】、【0038】の記載によれば、刊行物1の符号化方式を用いた送信は、送信情報を受取り、符号化率制御部38から得られる情報ブロック長情報I1で指定されるブロック長に送信情報をブロック化し、制御情報付加部は34は符号化率指定情報I5を送信情報ブロックに付加し誤り検出符号化部35に送り、情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化された情報ブロックは、一つのフレームとしてデータ送信部37に送り込まれ、データ送信部37は送信データ13を送受信機3に送信することであるといえる。 (ウ-4)まとめ 以上まとめると、刊行物1には、下記の方式が記載されているといえる。 データ伝送を行う適応符号化誤り制御方式であって、 送信データのフォーマットとして、1フレームは、再送要求・受信確認情報21、符号化率指定情報22、送信ブロック番号23、情報ブロック24、誤り検出用パリティビット25、誤り訂正用パリティビット26からなり、このうち信号21、22、23、25は一定長の信号で、また、全フレーム長(1フレームの長さ)が一定であり、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は一定であるが、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化する構成であって、 送信情報を受取り、符号化率制御部38から得られる情報ブロック長情報I1で指定されるブロック長に送信情報をブロック化し、制御情報付加部は34は符号化率指定情報I5を送信情報ブロックに付加し誤り検出符号化部35に送り、情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化された情報ブロックは、一つのフレームとしてデータ送信部37に送り込まれ、データ送信部37は送信データ13を送受信機3に送信する 構成を有する制御方式。 上記刊行物1に記載された方式において、「送信データのフォーマットとして、1フレームは、再送要求・受信確認情報21、符号化率指定情報22、送信ブロック番号23、情報ブロック24、誤り検出用パリティビット25、誤り訂正用パリティビット26からなり、このうち信号21、22、23、25は一定長の信号で、また、全フレーム長(1フレームの長さ)が一定であり、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は一定であるが、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化する構成」である1フレームは、「送信情報を受取り、符号化率制御部38から得られる情報ブロック長情報I1で指定されるブロック長に送信情報をブロック化し、制御情報付加部は34は符号化率指定情報I5を送信情報ブロックに付加し誤り検出符号化部35に送り、情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化された情報ブロックは、一つのフレームとしてデータ送信部37に送り込まれ、データ送信部37は送信データ13を送受信機3に送信する」の一つのフレームとしてデータ送信部に送り込まれる1フレームであることは明らかであるから、 「送信情報を受取り、符号化率制御部38から得られる情報ブロック長情報I1で指定されるブロック長に送信情報をブロック化し、制御情報付加部は34は符号化率指定情報I5を送信情報ブロックに付加し誤り検出符号化部35に送り、情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化された情報ブロックは、再送要求・受信確認情報21、符号化率指定情報22、送信ブロック番号23、情報ブロック24、誤り検出用パリティビット25、誤り訂正用パリティビット26からなり、このうち信号21、22、23、25は一定長の信号で、また、全フレーム長(1フレームの長さ)が一定であり、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は一定であるが、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化する一つのフレームとしてデータ送信部37に送り込まれ、データ送信部37は送信データ13を送受信機3に送信する」構成であるということができ、 「符号化率制御部38から得られる情報ブロック長情報I1で指定されるブロック長に送信情報をブロック化し、制御情報付加部は34は符号化率指定情報I5を送信情報ブロックに付加し誤り検出符号化部35に送り、情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化」することにより、「再送要求・受信確認情報21、符号化率指定情報22、送信ブロック番号23、情報ブロック24、誤り検出用パリティビット25、誤り訂正用パリティビット26からなり、このうち信号21、22、23、25は一定長の信号で、また、全フレーム長(1フレームの長さ)が一定であり、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は一定であるが、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化する一つのフレームとして」送信するためのデータを生成する処理を行っているといえるから、刊行物1に記載された方式は、 データ伝送を行う適応符号化誤り制御方式であって、 符号化率制御部38から得られる情報ブロック長情報I1で指定されるブロック長に送信情報をブロック化し、制御情報付加部は34は符号化率指定情報I5を送信情報ブロックに付加し誤り検出符号化部35に送り、情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化することにより、再送要求・受信確認情報21、符号化率指定情報22、送信ブロック番号23、情報ブロック24、誤り検出用パリティビット25、誤り訂正用パリティビット26からなり、このうち信号21、22、23、25は一定長の信号で、また、全フレーム長(1フレームの長さ)が一定であり、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は一定であるが、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化する一つのフレームとして送信するためのデータを生成し、 上記生成された一つのフレームとして生成されたデータは、データ送信部37に送り込まれ、データ送信部37は送信データ13を送受信機3に送信する 構成を有する制御方式 であるといえる。 上記方式は、データを生成するステップおよび送信するステップを有する方法に関する発明といえるから、刊行物1に記載された発明は、以下のとおりの発明(以下、刊行物1発明という。)であるといえる。 データ伝送を行う適応符号化誤り制御方法に関する発明であって、 符号化率制御部38から得られる情報ブロック長情報I1で指定されるブロック長に送信情報をブロック化し、制御情報付加部は34は符号化率指定情報I5を送信情報ブロックに付加し誤り検出符号化部35に送り、情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化することにより、再送要求・受信確認情報21、符号化率指定情報22、送信ブロック番号23、情報ブロック24、誤り検出用パリティビット25、誤り訂正用パリティビット26からなり、このうち信号21、22、23、25は一定長の信号で、また、全フレーム長(1フレームの長さ)が一定であり、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は一定であるが、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化する一つのフレームとして送信するためのデータを生成するステップと、 上記生成された一つのフレームとして生成されたデータは、データ送信部37に送り込まれ、データ送信部37は送信データ13を送受信機3に送信するステップと、 を有する制御方法。 (エ)対比 以下、補正後発明を刊行物1発明と対比する。 (エ-1)「データを符号化する方法であって」 刊行物1発明は「データ伝送を行う適応符号化誤り制御方法に関する発明」であるから、データを符号化する方法に関する発明といえ、補正後発明と相違がない。 (エ-2)「受信機への符号化フレームの送信に使用される複数のチャネルを決定するステップ」 補正後発明は、複数のチャンネルについて考慮がなされていないから、受信機への符号化フレームの送信に使用される複数のチャネルを決定するステップを有していない。 (エ-3)「複数のフレームのそれぞれを順方向誤り訂正(FEC)符号化し、前記複数のフレームのそれぞれは可変の数のデータビットを含み、出力符号化ビットの出力結果数が固定となるように誤り訂正コードを含めるステップ」 刊行物1発明は「符号化率制御部38から得られる情報ブロック長情報I1で指定されるブロック長に送信情報をブロック化し、制御情報付加部は34は符号化率指定情報I5を送信情報ブロックに付加し誤り検出符号化部35に送り、情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化することにより、再送要求・受信確認情報21、符号化率指定情報22、送信ブロック番号23、情報ブロック24、誤り検出用パリティビット25、誤り訂正用パリティビット26からなり、このうち信号21、22、23、25は一定長の信号で、また、全フレーム長(1フレームの長さ)が一定であり、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は一定であるが、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化する一つのフレームとして送信するためのデータを生成するステップ」を有している。 刊行物1発明の「情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化する」情報ブロックは、送信情報が存在する間、常に送信情報からブロック化されるのであるから、送信情報ブロックは複数あるのが普通である。 そして、上記符号化することにより・・・一つのフレームとして送信するためのデータを生成するのであるから、制御情報(符号化率指定情報I5)が付加された送信情報ブロックは1フレームといえ、送信情報ブロックは複数あるのであるから複数のフレームに対して、「情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化」しているといえる。 刊行物1発明の「情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化」は、補正後発明の「誤り訂正符号化」といえるから、刊行物1発明は「複数のフレームのそれぞれを誤り訂正符号化」している点で補正後発明と相違がない。 もっとも、補正後発明は上記「誤り訂正符号化」が「順方向誤り訂正(FEC)符号化」であるのに対し、刊行物1発明は「順方向」であるか、格別特定されていない点で相違する。 また、刊行物1発明のフレームは「伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は一定であるが、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化する」のであるから、情報ブロック24、誤り訂正用パリティビット26は信号長が変化する、すなわち、ビットの数が変化しているといえ、補正後発明の「可変の数のデータビット」といえる。 さらに、刊行物1発明のフレームは、全フレーム長(1フレームの長さ)が一定であるから、符号化されて出力される信号のビット数が固定であるといえるから、補正後発明の出力符号化ビットの出力結果数が固定となる点で補正後発明と相違がない。 また、刊行物1発明の「誤り訂正用パリティビット26」は誤り訂正を行うための情報であって、「誤り訂正コード」ということができる。 以上まとめると、刊行物1発明は「複数のフレームのそれぞれを誤り訂正符号化し、前記複数のフレームのそれぞれは可変の数のデータビットを含み、出力符号化ビットの出力結果数が固定となるように誤り訂正コードを含めるステップ」を有している点で補正後発明と相違がないということができる。 もっとも、補正後発明は上記「誤り訂正符号化」が「順方向誤り訂正(FEC)符号化」であるのに対し、刊行物1発明は「順方向」であるか、格別特定されていない点で相違する。 (エ-4)「前記受信機へ前記複数のチャネルを使用して前記符号化ビットを送信するステップであって、前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく前記誤り訂正コードに基づき送信するステップ」 刊行物1発明は「上記生成された一つのフレームとして生成されたデータは、データ送信部37に送り込まれ、データ送信部37は送信データ13を送受信機3に送信するステップ」を有している。 刊行物1発明の送信データは、「・・・誤り訂正符号化することにより、・・・一つのフレームとして送信するためのデータを生成するステップ」で得られたデータであるから、前記符号化ビットといえる。 そして、「・・・誤り訂正符号化することにより、・・・一つのフレームとして送信するためのデータを生成するステップ」で一つのフレームとして送信されるデータは、「誤り訂正コード」ということができる「誤り訂正用パリティビット26」を含んでいるから、前記誤り訂正コードに基づき送信しているといえる。 したがって、刊行物1発明は、「受信機へ前記符号化ビットを送信するステップであって、前記符号化ビットを前記誤り訂正コードに基づき送信するステップ」を有しているといえる。 もっとも、刊行物1発明は、複数のチャンネル、および、パワーレベルに関する構成を有していないから、「前記複数のチャネルを使用して」送信する構成を有していない点、および、「実効送信パワーレベルを変更することなく」送信するか特定されていない点で補正後発明と相違する。 (エ-5)まとめ(対比) 以上の対比結果をまとめると、補正後発明と刊行物1発明との一致点および相違点は次のとおりである。 [一致点] データを符号化する方法であって、 複数のフレームのそれぞれを誤り訂正符号化し、前記複数のフレームのそれぞれは可変の数のデータビットを含み、出力符号化ビットの出力結果数が固定となるように誤り訂正コードを含めるステップと、 受信機へ前記符号化ビットを送信するステップであって、前記符号化ビットを前記誤り訂正コードに基づき送信するステップと を備えることを特徴とする方法。 [相違点] 相違点1 補正後発明は「受信機への符号化フレームの送信に使用される複数のチャネルを決定するステップ」を有し、送信するステップで「前記複数のチャネルを使用して」送信するのに対して、刊行物1発明では、「受信機への符号化フレームの送信に使用される複数のチャネルを決定するステップを有」さず、したがって、送信するステップで「前記複数のチャネルを使用して」送信していない点。 相違点2 補正後発明は「誤り訂正符号化」が「順方向誤り訂正(FEC)符号化」であるのに対し、刊行物1発明は「順方向」であるか、格別特定されていない点。 相違点3 補正後発明では、送信するステップで「実効送信パワーレベルを変更することなく」送信しているのに対し、刊行物1発明では、「実効送信パワーレベルを変更することなく」送信しているか特定されていない点。 (オ)判断 i)相違点1について 伝送路を介してデータを送信側から受信機に送信するとき、複数のチャンネルを利用して送信することは、下記の周知文献1(国際公開(WO)第96/26582号)に記載されているように本件出願前周知の技術事項である。 データを複数のチャンネルを用いて送信する目的の一つとして、周知文献1の42ページ4行-7行にあるように高速データ伝送を行うことがあげられることも、当業者にはよく知られた事項である。 刊行物1発明において、誤り訂正符号を増加させると、伝送路の最大伝送能力が低下することは、刊行物1の【0003】に「また、冗長情報の割合を増加させるためには、伝送路の伝送能力の内、情報の伝送に使用する伝送能力を削減して、冗長情報に割り当てる必要がある。よって、誤り訂正能力を増加させるとその分、伝送路の最大伝送能力は低下する。この現象はハイブリッド誤り制御方式でも同様に発生する。」と記載されているから、刊行物1発明の「全フレーム長(1フレームの長さ)が一定であり、伝送情報24と誤り訂正用パリティ26の長さの合計は一定であるが、24、26は適用する符号化率に応じて信号長が変化する一つのフレームとして送信するためのデータを生成する」構成を採用すると、誤り訂正用パリティ26の長さを長くして、誤り耐性を強化すれば、伝送情報24を送信するための伝送能力が低下することは当然予測し得たことであり、このことは、誤り訂正用パリティ26の長さを長くすると、高速データ伝送が行えなくなることを意味することは、当業者であれば当然想起し得たことである。 そして、一つの伝送路(チャンネル)で高速データ伝送が行えないとき、複数のチャンネルを用いて同時にデータ転送を行うことで、高速データ伝送を行うことは、下記の周知文献1にあるとおり、本願出願前周知の技術事項であるから、刊行物1発明において、誤り耐性を強化するために誤り訂正用パリティ26の長さを長くし、そのことにより高速データ伝送が行えなくなったことを解消するため、複数チャンネルを用いたデータ転送の技術を採用することは、当業者が容易になし得たことである。 この際、どのデータ(フレーム)をどのチャンネルを介して伝送するか決定する必要があることは、当たり前のことであるから、「受信機への符号化フレームの送信に使用される複数のチャネルを決定するステップ」を有し、送信するステップで「前記複数のチャネルを使用して」送信する構成を、刊行物1発明に採用することは、当業者が容易になし得たことである。 ii)相違点2について 刊行物1発明では、「誤り訂正符号化」が「順方向誤り訂正(FEC)符号化」であると特定されていないが、「順方向誤り訂正(FEC)符号化」とは、通常、通信時行う誤り訂正であって、送信側で予め冗長な情報(符号)を付加して符号化を行って送信し、受信側で当該冗長な符号を用いて誤りがあれば訂正して復号する方式における、上記送信側で予め冗長な情報(符号)を付加して符号化することをいうが、刊行物1発明では、「順方向誤り訂正(FEC)符号化」の特定がないものの、送信側で「制御情報付加部は34は符号化率指定情報I5を送信情報ブロックに付加し誤り検出符号化部35に送り、情報ブロック及び制御情報を誤り検出符号化し、誤り検出符号化された送信データを符号化率情報I7で指示される符号化率で誤り訂正符号化」しているのであるから、上記刊行物1発明の構成を見れば、「順方向誤り訂正(FEC)符号化」であることは、当業者であれば普通に想起し得たことであるといえる。 iii)相違点3について 補正後発明の「実効送信パワーレベルを変更することなく」について検討する。 本願明細書を参酌すると、 【0008】 【発明の概要】 本発明は、個々のトラフィック・チャネル・データ伝送速度を特定のチャネル状態に適合させることにより、追加の自由度を提供する。詳細には、順方向誤り訂正(FEC)符号化レートを個々のチャネルに適合させることができる。同時に、FEC符号化レートおよびパワー・レベルと独立に、送信フレーム当り固定数のFECシンボルが維持される。これにより、異なるFECレートまたは異なるFECコードにも、チャネル状態に依存して、実効送信パワー・レベルを変更することなく各ユーザ・チャネルを割り当てできる。 【0009】 例えば、チャネルが相対的に良好な伝播状態にある場合、FEC符号化レートを低下させることができ、1FECフレーム当りの入力ビット数を送信パワー・レベルを変更せずに増加できる。この時全体情報速度は生データ伝送速度を符号化レートで割った比に依存し、また別のユーザ・ユニットへの干渉を増大することなく高速情報速度が得られる。 【0010】 これに反し、特定チャネルが相対的に劣るかまたは限界送信環境である場合、別の手順を採用して全体情報速度を低下させることができる。具体的には、送信のパワー・レベルを増加させるのでなく、実効FEC符号化レートを増加し、FECフレーム当りの入力ビット数を減少できる。これにより、送信パワー・レベルを増加することなくチャネルの安定性を増すことができる。 【0012】 本発明はいくつかの利点を有する。符号分割多重アクセス(CDMA)システムにおいて、特にマルチパス・フェージングまたは他の不十分なチャネル状態が存在する環境においても、パワー・レベルを調整して全体システムの情報速度を最適化する必要がない。 【0033】 このように、伝播が良好な環境では、システム10は他のユーザへの干渉を増加することなく所定のユーザに対するデータ伝送速度を増加できる。しかし、劣った信号環境でも、各特定ユーザ・チャネルはパワー・レベルを増加することなく安定性を増加できるという利点が得られる。 【0040】 図4は、フレーム形成部40とFECエンコーダ42との各種組合わせに対する、ビット誤り率(BER)対Eb/Noをデシベル(dB)で示したグラフである。グラフ中の説明は、特定ビットのエネルギーに対して正規化された異なるレートのターボ乗算コードの性能を示す。例えば、ポイントAで示された状態では、特定チャネルは約1/2レート・ターボ乗算コードで動作し、相対的に低いビット誤り率0.05を伴なう。送信パワーを調整せずに、単に、約1/4レート符号化のような低いレート・ターボ乗算コード(レート0.266のターボ乗算コードにより示される)を選択することにより、状態Bはビット誤り率が約0.0002まで大幅に減少するシステムに対し入力される。これにより、ビット当りエネルギーを調整することなく、または送信パワー・レベルを変更することなく達成される。 以上の記載を見ると、補正後発明における「前記受信機へ前記複数のチャネルを使用して前記符号化ビットを送信するステップであって、前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく前記誤り訂正コードに基づき送信するステップ」の「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく」は、前提として、「符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更」して送信する構成があって、ある特定の場合、「符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく」送信することをいうのではなく、単に、送信時に「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく」送信する構成をいうものであるといえる。 これに対して、刊行物1発明では、送信時に「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく」送信することが特定されていないが、そもそも、刊行物1発明は、「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更」して送信することを要件とする発明ではなく、また、刊行物1の明細書全体を見ても、刊行物1発明が「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更」して送信するものであるということもできない。 そして、「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく」送信する構成は、本願出願前普通に知られた送信方式であることも考慮すれば、刊行物1発明において、「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく」の構成が特定されていないとしても、刊行物1発明では「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更」して送信することを前提としていないのであるから、刊行物1発明において、「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく」送信する構成を採用することは当業者であれば容易に想起し得たことであるということができる。 iv)効果等 以上検討したとおり、補正後発明と刊行物1発明との相違点i)?iii)は、いずれも当業者が容易に想到し得たといえるものであり、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。 したがって、補正後発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 周知文献1:国際公開(WO)第96/26582号 (カ)むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成24年7月26日付けの手続補正は上記のとおり却下する。 本件出願の請求項1ないし20に係る発明は、本願明細書及び図面(平成23年8月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載した事項により特定されるとおりのもであるところ、そのうち、請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。 【請求項6】 データを符号化する方法であって、 受信機への符号化フレームの送信に使用される複数のチャネルを決定するステップと、 複数のフレームのそれぞれを順方向誤り訂正(FEC)符号化し、前記複数のフレームのそれぞれは可変の数のデータビットを含み、出力符号化ビットの出力結果数が固定となるように誤り訂正コードを含めるステップと、 前記受信機へ前記複数のチャネルを使用して前記符号化ビットを送信するステップと を備えることを特徴とする方法。 2.刊行物1(特開平8-265304号公報)の記載 審査官が拒絶の査定で引用した刊行物1には、上記第2 2.b.(イ)に示したとおりの事項が記載されている。 3.刊行物1記載の発明 上記刊行物1には、上記第2 2.b.(ウ)(ウ-4)に示した、刊行物1発明が記載されている。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2 2.b.(ア)で認定した補正後発明との対応でみると、当該補正後発明における「前記受信機へ前記複数のチャネルを使用して前記符号化ビットを送信するステップであって、前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく前記誤り訂正コードに基づき送信するステップ」との特定事項のうちの「前記符号化ビットを実効送信パワーレベルを変更することなく前記誤り訂正コードに基づき送信するステップ」との特定がないだけで、その余の点は補正後発明と同じである。 したがって、本願発明は、上記刊行物1記載の発明と対比すると、前記第2 2.b.(エ)(エ-1)ないし(エ-5)で認定した、補正後発明と刊行物1記載の発明との前記相違点1ないし相違点3のうち、相違点3(本願発明で特定がない事項についての相違点)がなく、相違点1、相違点2でのみ相違し、その余の点では刊行物1記載の発明と一致している。 してみると、上記相違点1、相違点2が周知技術から当業者に想到容易なものであることは、前記第2 2.b.(オ)で判断したとおりであり、したがって本願発明は、刊行物1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、残る請求項1ないし5、7ないし20に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-06-26 |
結審通知日 | 2013-07-02 |
審決日 | 2013-07-23 |
出願番号 | 特願2001-540967(P2001-540967) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨田 高史 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
奥村 元宏 吉田 隆之 |
発明の名称 | 順方向リンクの可変レート符号化 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |