• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1289147
審判番号 不服2012-23689  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-30 
確定日 2014-06-25 
事件の表示 特願2006-274544「超音波診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年4月24日出願公開,特開2008-92970〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成18年10月6日を出願日とする出願であって,平成23年10月14日付けで拒絶理由が通知され,平成24年1月11日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされ,同年7月27日付けで拒絶査定されたのに対し,同年11月30日に拒絶査定不服の審判請求がされものである。
そして,その請求項1?5に係る発明は,平成24年1月11日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められ,以下のとおりのものである。
「【請求項1】
3D超音波探触子と、前記3D超音波探触子を駆動して被検体内を超音波ビームで3D走査して3Dデータを得る3D走査手段と、前記3D走査の開始前に1回の前記3D走査に要する所要時間を前記3D走査のパラメータから算出して該所要時間を報知する時間報知手段とを具備したことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、前記時間報知手段は、前記3D走査の最中に前記3D走査が終わるまでに要する残り時間を算出し、報知することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
3D超音波探触子と、前記3D超音波探触子を駆動して被検体内を超音波ビームで連続的にN(>1)回3D走査して3Dデータを得る3D走査手段と、前記N回の3D走査の開始前に前記N回の3D走査に要する全所要時間を前記3D走査のパラメータおよび3D走査の反復回数Nから算出して前記全所要時間を報知する時間報知手段とを具備したことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、前記時間報知手段は、前記N回の3D走査の最中に前記N回の3D走査が終わるまでに要する残り時間を算出し、報知することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
3D超音波探触子と、前記3D超音波探触子を駆動して被検体内を超音波ビームで繰り返し3D走査して3Dデータを連続的に得る4D走査手段と、1回の前記3D走査に要する所要時間を前記3D走査のパラメータから算出して前記3D走査の速度を算出し該速度を報知する3D速度報知手段とを具備したことを特徴とする超音波診断装置。」

そのうち,上記請求項4に係る発明を,以下「本願発明」という。


第2 引用刊行物及びその記載事項
(1)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2004-148015号公報(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。なお,以下の摘記事項において,下記の引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。
(1-ア)「【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図に示す実施形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置100の構成図である。
この超音波診断装置100は、超音波探触子1と、超音波探触子1を駆動して所望の音線方向に送波パルスを送信すると共に超音波探触子1で所望の音線方向からの超音波エコーを受信し音線信号を出力する送受信部2と、受信信号を基に超音波画像データを生成する信号処理部3と、超音波画像データや本発明に係る種々の時計情報から表示データを生成するDSC(Digital Scan Converter)4と、表示データを基に超音波画像や時計情報を表示する表示部5と、操作者が入力操作する操作部6と、送受信部2と信号処理部3とDSC4とを制御する制御部7とを具備している。」

(1-イ)「【0035】
図8は、間欠撮影により検査を行っている最中の画面の例示図である。
操作者は、検査開始前に初期値設定部65で検査所要時間(例えば10分間)を設定し、検査開始時に計時開始部64を操作する。
超音波画像表示領域50には、フリーズ画像が描出される。このフリーズ画像は1より小さいフレームレート(例えば1/60)で更新される。
経過時間表示領域81には、表示中のフリーズ画像を撮影した後の経過時間が表示される。
待ち時間表示領域82には、表示中のフリーズ画像が更新されるまでの待ち時間が表示される。
検査経過時間表示領域83には、計時開始部64を操作した後の経過時間が表示される。
検査カウントダウン表示領域84には、初期値設定部65で設定した検査所要時間から計時開始部64を操作した後の経過時間を引いた時間が計算されて表示される。」

上記引用例1の記載事項を総合すると,引用例1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「超音波探触子1と,超音波探触子1を駆動して所望の音線方向に送波パルスを送信すると共に超音波探触子1で所望の音線方向からの超音波エコーを受信し音線信号を出力する送受信部2と,受信信号を基に超音波画像データを生成する信号処理部3と,超音波画像データや本発明に係る種々の時計情報から表示データを生成するDSC(Digital Scan Converter)4と,表示データを基に超音波画像や時計情報を表示する表示部5と,操作者が入力操作する操作部6と,送受信部2と信号処理部3とDSC4とを制御する制御部7とを具備している超音波診断装置100において,
間欠撮影により検査を行う際,操作者は,検査開始前に初期値設定部65で検査所要時間を設定し,検査開始時に計時開始部64を操作し,検査カウントダウン表示領域84には,初期値設定部65で設定した検査所要時間から計時開始部64を操作した後の経過時間を引いた時間が計算されて表示される,
超音波診断装置。」(以下「引用発明」という。)

(2)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2003-175033号公報(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。(2-ア)「【0008】図1に示されている本発明の一実施形態は、3Dプローブ又は3D実時間プローブのような走査型プローブ10を構成し、該プローブは外被14と該外被14内のトランスデューサ・アレイ17とを有している。・・・・・。モータ28の運動を制御するために、システム及びモータ制御用の3Dソフトウエアを用いることができる。」

(2-イ)「【0022】本発明の実施形態では、任意の通常のモード、例えば、Bモード、高調波イメージング・モード、2D複合化モードなどを作動しながら、ボリューム掃引を実行することができる。また、スペクトル・ドップラー法、カラー・ドップラー法又はパワー・ドップラー法も、ボリューム掃引を行いながら作動することができる。」


第3 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「超音波探触子1」と本願発明の「3D超音波探触子」とは,「超音波探触子」の点で共通している。

イ 引用発明の「間欠撮影」とは,一定の時間間隔を置いて連続的に複数回撮影することであり,引用発明の「超音波探触子1を駆動して所望の音線方向に送波パルスを送信すると共に超音波探触子1で所望の音線方向からの超音波エコーを受信し音線信号を出力する送受信部2と,受信信号を基に超音波画像データを生成する信号処理部3」における「超音波画像データを生成する」ことを一定の時間間隔を置いて連続的に複数回繰り返すことである。
してみれば,引用発明の「超音波探触子1を駆動して所望の音線方向に送波パルスを送信すると共に超音波探触子1で所望の音線方向からの超音波エコーを受信し音線信号を出力する送受信部2と,受信信号を基に超音波画像データを生成する信号処理部3」で「間欠撮影により検査を行う」手段と,本願発明の「3D超音波探触子を駆動して被検体内を超音波ビームで連続的にN(>1)回3D走査して3Dデータを得る3D走査手段」とは,「超音波探触子を駆動して被検体内を超音波ビームで連続的にN(>1)回走査してデータを得る走査手段」の点で共通している。

ウ 引用発明の「表示データを基に超音波画像や時計情報を表示する表示部5」は,時計情報を表示するから,本願発明の「時間報知手段」に相当している。

エ 引用発明の「検査カウントダウン表示領域84には,初期値設定部65で設定した検査所要時間から計時開始部64を操作した後の経過時間を引いた時間が計算されて表示される」ことと,本願発明の「N回の3D走査の最中に前記N回の3D走査が終わるまでに要する残り時間を算出し、報知すること」とは,「N回の走査の最中に前記N回の走査が終わるまでに要する残り時間を算出し、報知すること」の点で共通している。
また,引用発明の「検査カウントダウン表示領域84には,初期値設定部65で設定した検査所要時間から計時開始部64を操作した後の経過時間を引いた時間が計算されて表示」において,検査開始時(直前)は経過時間が0であり,その時表示される検査所要時間は本願発明の「全所要時間」に他ならないから,本願発明の「N回の3D走査の開始前に前記N回の3D走査に要する全所要時間を前記3D走査のパラメータおよび3D走査の反復回数Nから算出して前記全所要時間を報知する」とは,「N回の走査の開始前に全所要時間を報知する」点で共通している。

してみれば,本願発明と引用発明とは,
(一致点)
「超音波探触子と,前記超音波探触子を駆動して被検体内を超音波ビームで連続的にN(>1)回走査してデータを得る走査手段と,前記N回の走査の開始前に全所要時間を報知する時間報知手段とを具備した超音波診断装置において,前記時間報知手段は,前記N回の走査の最中に前記N回の走査が終わるまでに要する残り時間を算出し,報知する超音波診断装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では,超音波探触子が,「3D」超音波探触子であり,超音波探触子を駆動して被検体内を超音波ビームで連続的にN(>1)回走査してデータを得る走査手段が,「3D」超音波探触子を駆動して被検体内を超音波ビームで連続的にN(>1)回「3D」走査して「3D」データを得る「3D」走査手段であり,時間報知手段が、N回の「3D」走査の開始前に全所要時間を報知するもの,N回の「3D」走査の最中に前記N回の「3D」走査が終わるまでに要する残り時間を算出し、報知するものであるのに対し,引用発明では,それらが「3D」のものに限定されていない点。

(相違点2)
本願発明では,「全所要時間」を「3D走査のパラメータおよび3D走査の反復回数Nから算出」しているのに対し,引用発明では,「全所要時間」に相当する「検査所要時間」を設定する際にどのように検査所要時間を算出しているのか不明である点。

2 当審の判断
(1)相違点1について
超音波診断装置において,引用例2の摘記(2-ア)及び(2-イ)に記載されているように,3Dプローブすなわち3D超音波探触子を,ボリューム掃引すなわち3D走査させることは本出願前周知のことであり,引用発明の超音波診断装置においても,その検査対象物を立体的に把握できる方が診断がより便利になることは明らかであるから,引用発明の「超音波探触子1」「を駆動して」「超音波画データを生成する」を,上記周知技術を鑑みて「3D超音波探触子」「を3D駆動して」「3D超音波画データを生成する」ようにすることは当業者が容易になし得ることである。
そして,引用発明において上記「3D」に限定することにより,引用発明の「初期値設定部65で設定した検査所要時間から計時開始部64を操作した後の経過時間を引いた時間が計算されて表示される」ことは,本願発明のように,N回の「3D」走査の開始前に全所要時間を報知する,及び,N回の「3D」走査の最中に前記N回の「3D」走査が終わるまでに要する残り時間を算出し、報知することになる。

(2)相違点2について
本願発明における「3Dパラメータ」については,本願明細書の【0016】に「1音線に対する送信回数,2D走査面の送信音線数,3Dデータを構成する2D走査面の数,表示深さなどの3D走査のパラメータ」と記載されている。
一方,超音波診断装置において,例えば,特開2002-336255号公報の【0004】に「このような超音波診断装置においては、例えば、超音波送受信周期を4KHz、長軸方向走査線数を134、短軸方向走査断面数を60とすると、被検体内を3次元走査するために要する時間は、
1/4000(秒)×134(走査線)×60(断面)=2.01(秒)
となる。」と記載されているように,被検体内を3次元走査するために要する時間を3Dパラメータを用いて算出することは周知のことであり,当該走査を反復する場合には,その反復回数の分だけ時間を要することである。
してみれば,引用発明において,検査所要時間を設定する際に,「3D走査のパラメータおよび3D走査の反復回数Nから算出」して設定することは当業者が容易になし得ることである。

また,本願発明は,本願明細書によれば「3D走査にどれくらいの時間を要するかは報知されないため、どれくらいの間、息を止めていなければならないのか判らず、被検体に不安を与える問題点がある。」(【0003】)との課題を解決した発明といえるが,当該課題自体は超音波診断装置において周知(例えば,特開2005-81073号公報の【0010】,特開平6-54847号公報の【0003】,特開平6-47043号公報の【0006】,等参照)のことである。
そして,当該周知の課題を解決したものが本願発明の効果としても,本願明細書の実施例では,
「【0027】
実施例1の超音波診断装置100によれば、例えば3D走査中は被検体が息を止めていなければならない場合に、3D走査の開始前に画面に表示された所要時間T1や全所要時間TNを操作者が見て被検体に伝えることにより、どれくらいの間、息を止めていなければならないのかを被検体が事前に知ることができ、被検体の不安が解消される。
【0028】
また、3D走査中に画面に表示された残り時間を操作者が見て被検体に伝えることにより、あとどれくらいの間、息を止めていなければならないのかを被検体が知ることができ、被検体の不安が解消される。」(下線は当審において付与した。)と記載されており,本願発明は直接被検体に報知するものではなく,それは引用発明においても当業者が予期し得ることであり,格別顕著なこととはいえない。

3 まとめ
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明することができたものである。


第4 特許法第37条の検討
請求項1及び3に係る発明の超音波診断装置は,「3D超音波探触子」と,「3D走査手段」と,「時間報知手段」とを具備したことを特徴とする超音波診断装置であるのに対し,請求項5に係る発明の超音波診断装置は,「3D超音波探触子」と,「4D走査手段」と,「3D速度報知手段」とを具備したことを特徴とする超音波診断装置である。また,本願明細書を参照するに,前者の発明の課題は「3D走査にどれくらいの時間を要するかは報知されないため、どれくらいの間、息を止めていなければならないのか判らず、被検体に不安を与える問題点がある。」で,その効果は「3D走査の開始前に3D走査に要する所要時間を報知するから、例えば3D走査中は被検体が息を止めていなければならない場合に、どれくらいの間、息を止めていなければならないのかを被検体が事前に知ることができ、被検体の不安が解消される。」であるのに対し,後者の発明の課題は「4D走査の場合に、現在の3D走査の速度が報知されなかったため、3D走査の速度の適否を認識できない問題点があった。」で,その効果は「3D走査の速度を報知するから、4D走査の画像の画質と3D走査の速度の対応の適否を認識することが出来る。」である。
してみれば,両者の発明の課題は異なるものであり,前者の発明と後者の発明との技術的関係において,共通する事項は3D超音波探触子を具備する超音波診断装置であり,当該事項が,発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴である特別な技術的特徴に該当しないことは,例えば引用例2を参照しても,明らかである。
請求人は,審判請求の理由で「従って、本願請求項5において、本願請求項1,3と共通する事項である『所要時間を3D走査のパラメータから算出する』点は、特別な技術的特徴にあたる。よって、本願は発明の単一性の要件を満たす。」と主張しているが,「所要時間を3D走査のパラメータから算出する」ことは,例えば上記特開2002-336255号公報の【0004】に記載されているように,本出願前周知のことであるから,特別な技術的特徴に該当しないものである。
したがって,請求項1及び3に係る発明と請求項5に係る発明との間で,特許法施行規則第25条の8で規定される「二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していることにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係」があるとはいえず,特許法第37条に規定する要件を満たしていない。


第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,また,本願は,特許法第37条に規定する要件を満たしていないことから,本願発明以外の請求項に係る発明に対して特許法第29条第2項の規定について言及するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2014-01-17 
結審通知日 2014-01-21 
審決日 2014-02-12 
出願番号 特願2006-274544(P2006-274544)
審決分類 P 1 8・ 65- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋口 宗彦  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 藤田 年彦
三崎 仁
発明の名称 超音波診断装置  
代理人 有近 紳志郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ