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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H01Q 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01Q 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H01Q 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H01Q |
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管理番号 | 1292934 |
審判番号 | 訂正2014-390078 |
総通号数 | 180 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-12-26 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2014-06-04 |
確定日 | 2014-09-19 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5237617号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第5237617号に係る特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第5237617号(以下「本件特許」という。)は、平成19年11月30日の出願であって、その請求項1ないし11に係る発明について、平成25年 4月 5日に特許権の設定登録がなされ、平成26年 6月 4日に本件訂正審判の請求がなされ、平成26年 7月23日に審判請求書の手続補正がなされたものである。 第2 審判請求の趣旨及び訂正内容 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5237617号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求めるものである。 そして、その訂正内容は、以下のとおりと認める。 1.請求項1ないし7からなる一群の請求項に係る訂正事項 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1について、「前記アンテナ部は、アンテナと、該アンテナにより受信された少なくともFM放送の信号を増幅するアンプを有するアンプ基板とからなり、前記アンテナの給電点が前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続され」とあるのを、「前記アンテナ部は、アンテナ素子と、該アンテナ素子により受信された少なくともFM放送の信号を増幅するアンプを有するアンプ基板とからなり、前記アンテナ素子の給電点が前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続され」と訂正する。(下線部は訂正箇所を示すものとして請求人が付加したものを援用する。以下同じ。) 請求項1の記載を引用する請求項2、請求項4、請求項5及び請求項7も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1について、「・・・が前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続されていることを特徴とするアンテナ装置。」とあるのを、「・・・が前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続され、前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。」と訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2、請求項4、請求項5及び請求項7も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2について、「前記アンテナが、前記アンテナケース内に配設されている棒状のアンテナから構成されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。」とあるのを、「前記アンテナ素子が、前記アンテナケース内に配設されている棒状のアンテナ素子から構成されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。」と訂正する。 請求項2の記載を引用する請求項4、請求項5及び請求項7も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3について、「前記アンテナ部は、車両に対して立設されて配置されアンテナパターンが形成されているアンテナ基板と、前記アンテナパターンからなる前記アンテナにより受信された少なくともFM放送の信号を増幅するアンプが設けられているアンプ基板とからなり、前記アンテナ基板における前記アンテナパターンの給電点が、前記アンプ基板における前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続され、」とあるのを、「前記アンテナ部は、車両に対して立設されて配置されアンテナパターンが形成されているアンテナ基板と、前記アンテナパターンからなるアンテナ素子により受信された少なくともFM放送の信号を増幅するアンプが設けられているアンプ基板とからなり、前記アンテナ基板における前記アンテナ素子の給電点が、前記アンプ基板における前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続され」と訂正する。 請求項3の記載を引用する請求項4、請求項6及び請求項7も同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項3について、「前記アンプ基板における前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続されていることを特徴とするアンテナ装置。」とあるのを、「前記アンプ基板における前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続され、前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。」と訂正する。 請求項3の記載を引用する請求項4、請求項6及び請求項7も同様に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項4について、「前記アンテナの下縁とグラウンドとの間隔が、約33mm以上とされている」とあるのを、「前記アンテナ素子の下縁とグラウンドとの間隔が、約33mm以上とされている」と訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項5について、「前記アンテナの長さが・・・・、前記アンテナと前記アンテナコイルとからなるアンテナ部」とあるのを、「前記アンテナ素子の長さが・・・・、前記アンテナ素子と前記アンテナコイルとからなるアンテナ部」と訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項5について、「FM放送の波長λ」及び「FM放送にほぼ共振する」とあるのを、「前記FM波帯の波長λ」及び「前記FM波帯でほぼ共振する」と訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項6について、「FM放送の波長λ」及び「FM放送にほぼ共振する」とあるのを、「前記FM波帯の波長λ」及び「前記FM波帯でほぼ共振する」と訂正する。 2.請求項8及び9からなる一群の請求項に係る訂正事項 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項8について、「前記平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に、前記平面アンテナユニットの上面と前記アンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされていることを特徴とするアンテナ装置。」とあるのを、「前記平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に、前記平面アンテナユニットの上面と前記アンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされており、前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。」と訂正する。 請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。 3.請求項10及び11からなる一群の請求項に係る訂正事項 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項10について、「前記平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に、前記平面アンテナユニットの上面と前記アンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされていることを特徴とするアンテナ装置。」とあるのを、「前記平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に、前記平面アンテナユニットの上面と前記アンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされており、前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。」と訂正する。 請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。 第3 当審の判断 1.請求項1ないし7からなる一群の請求項に係る訂正事項について (1)一群の請求項について 訂正後の請求項1ないし7は、請求項1又は請求項3を、請求項2、4、5、6及び7が引用するものであり、特許法施行規則第46条の2第4号に規定する一群の請求項に該当する。 (2)目的要件、新規事項の追加、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について (2-1)訂正事項1について 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1の「アンテナ」の記載を「アンテナ素子」とする訂正であるが、単に「アンテナ」と表記したのでは、アンテナのどの部分をさすのか明確ではないのに対し、特許請求の範囲の請求項8及び10や、発明の詳細な説明(特に【0017】【0029】の記載参照。)をみれば、「アンテナ素子」と記載すべきであったことは明らかであり、これを誤って「アンテナ」と表記してしまったものを訂正しようとするものであるから、誤記の訂正に該当する。 したがって、訂正事項1にかかる訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。 また、「アンテナ素子」については出願当初から発明の詳細な説明(特に【0017】【0029】の記載参照。)などに記載されていた事項であるから、訂正事項1にかかる訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 そして、訂正事項1は誤記の訂正を目的として「アンテナ」の表記を「アンテナ素子」とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1にかかる訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2-2)訂正事項2について 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1に「アンテナ素子」に関し「前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信する」ことを限定したものであるから、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当該事項は出願当初から発明の詳細な説明(特に【0017】参照。)などに記載されていた事項であるから、訂正事項2にかかる訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 そして、訂正事項2にかかる訂正は、「アンテナ素子」に関し限定的減縮を行う訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2にかかる訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2-3)訂正事項3について 訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項2において「アンテナ」の記載を「アンテナ素子」とする訂正であるから、請求項2が引用する請求項1の訂正に合わせるとともに、上記(2-1)で検討したことと同様に誤記の訂正に該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであり、さらに同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2-4)訂正事項4について 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項3において、「前記アンテナ」という記載は「アンテナ素子」の誤記であるから、これを「アンテナ素子」と改めるとともに、これに併せて「アンテナパターン」を「アンテナ素子」と訂正するものであるから、訂正事項4は誤記の訂正を目的とするものであり、特許法第126条第1項ただし書き第2号の規定に適合するものである。 また、「アンテナパターン」と「アンテナ素子」との関係は【0016】に記載されており、訂正事項4にかかる訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 そして、訂正事項4にかかる訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、訂正事項4にかかる訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2-5)訂正事項5について 訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項3において、「アンテナ素子」に関し「前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信する」ことを限定したものであるから、上記(2-2)で検討したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する限定的減縮を目的とするものであり、さらに同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2-6)訂正事項6について 訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項4において「アンテナ」の記載を「アンテナ素子」とする訂正であるから、請求項4が引用する請求項1?3の記載の訂正に合わせて行われたものであり、上記(2-1)で検討したように誤記の訂正に該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであり、さらに同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2-7)訂正事項7について 訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項5において「アンテナ」の記載を「アンテナ素子」とする訂正であるから、請求項5が引用する請求項1、2の記載の訂正に合わせて行われたものであり、上記(2-1)で検討したように誤記の訂正に該当し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであり、さらに同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2-8)訂正事項8について 訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項5が引用する請求項1に「FM波帯で共振し」という記載が加わったことから、この表現に合わせて請求項5の「FM放送の波長λ」及び「FM放送にほぼ共振する」とある記載を、「前記FM波帯の波長λ」及び「前記FM波帯でほぼ共振する」と訂正するものであるから、不明瞭な記載の釈明に該当し、出願当初より【0017】に同様の表現が用いられていることから願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項8は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する不明瞭な記載の釈明を目的とするものであり、さらに同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (2-9)訂正事項9について 訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項6が引用する請求項3に「FM波帯で共振し」という記載が加わったことから、この表現に合わせて請求項6の「FM放送の波長λ」及び「FM放送にほぼ共振する」とある記載を、「前記FM波帯の波長λ」及び「前記FM波帯でほぼ共振する」と訂正するものであるから、不明瞭な記載の釈明に該当し、出願当初より【0017】に同様の表現が用いられていることから願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項9は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する不明瞭な記載の釈明を目的とするものであり、さらに同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (3)独立特許要件について (3-1)はじめに 上記(2)で検討したように、請求項1ないし7からなる一群の請求項に係る訂正事項は、特許法第126条第1項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び同条第1項第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正を含むから、訂正後の請求項1ないし7に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する(特許法第126条第7項)。 (3-2)訂正後の発明 独立請求項である本件訂正後の請求項1及び3に係る発明(以下「訂正後の発明1」及び「訂正後の発明3」という。)を分説すると以下の通りである。 「【請求項1】 イ.車両に取り付けられた際に、車両から約70mm以下の高さで突出するアンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部からなるアンテナ装置であって、 ロ.前記アンテナ部は、アンテナ素子と、該アンテナ素子により受信された少なくともFM放送の信号を増幅するアンプを有するアンプ基板とからなり、前記アンテナ素子の給電点が前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続され、 ハ.前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。」 「【請求項3】 ニ.車両に取り付けられた際に、車両から約70mm以下の高さで突出するアンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部からなるアンテナ装置であって、 ホ.前記アンテナ部は、車両に対して立設されて配置されアンテナパターンが形成されているアンテナ基板と、前記アンテナパターンからなるアンテナ素子により受信された少なくともFM放送の信号を増幅するアンプが設けられているアンプ基板とからなり、前記アンテナ基板における前記アンテナ素子の給電点が、前記アンプ基板における前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続され、 ヘ.前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。」 (3-3)先行技術文献 本件にかかる先行技術文献の概要は以下の通りである。 a.特開2002-084124号公報 線状のエレメント部と、該エレメント部の先端部に下方に傾斜されて傘状とされている頂冠部と、エレメント部の中間部をアースに短絡する整合用スタブと、エレメントの給電点と頂冠部の先端とを接続する折り返し素子とを備えた2周波用アンテナに係り、 線状のエレメントの先端に設けられた頂冠部における先端と、線状のエレメントの給電点とを接続する折り返し素子によって、2つの周波数帯域で動作するアンテナとし、線状のエレメントの先端にトップローディングとして機能する頂冠部を設けることで、高さを低くできる2周波用アンテナ。 b.特表2006-524449号公報 空間充填アンテナ(5)と、移動無線電話信号の送受信に適した一組の小型アンテナ(6)と、GPS信号受信のための小型パッチアンテナ(7)とを備えたアンテナシステムに係り、 導電性ストリップ(9)により空間充填曲線により構成された、AM/FM信号受信のために使用される空間充填アンテナ(5)を有し、 さらに、代替可能な空間充填アンテナ構造として、カスケード式空間充填アンテナ構造(70)を開示している。 このカスケード式空間充填アンテナ構造(70)は、第1のアンテナ端部ポイント(74)から第2のアンテナ端部ポイント(75)まで連続的な導電性経路を形成している。 そして、空間充填技術を使用して全体的なアンテナシステムに関してサイズの縮小をはかり、例えば車両のバックミラーの内部にアンテナを統合化できるという効果を有する。 c.特表2008-523671号公報 自動車用のアンテナシステムに用いるアンテナであって、 小型AM/FM放射アンテナ素子(6)、AM/FM能動モジュール(7)、および、アンテナ素子(6)を能動モジュール(7)および同軸ケーブル(9)に連結する結線部(8)を有し、 小型AM/FM放射アンテナ素子(6)が第1の低損失インダクタ(10’)、第1のアンテナ素子(11’)、金属導体(12)、第2のアンテナ素子(11)、および第2の低損失インダクク(10)を有しており、 ここで、第1および第2の低損失インダクク(10’、10)は、両方とも、アンテナを正しい周波数に同調させるために高いQ値を有する。 また、小型AM/FMアンテナ(15)と合成ユニット(18)との間にインダクタが接続されることが記載されている。(図19) なお、特表2008-523671号公報は、本件特許出願後に公開されたものであるが、本件特許出願日前の2006年6月15日に国際公開されており、国際公開においても同様の事項が記載されているものとみなし、以下対比判断を行うこととする。 (3-4)対比判断 訂正後の発明1と訂正後の発明3は、共通する構成ハ.と構成ヘ.をそれぞれ有しており、当該構成により、波長に比べて非常に短い寸法を有するアンテナ素子を用いてもアンテナコイルのインダクタンスを直列に挿入することによりFM波帯で共振させるようにしたものである。 一方、先行技術文献1?3には、上述した訂正後の発明1、3の共通する構成である構成ハ.及びヘ.に相当する構成、若しくはこれを示唆する構成を有してはいない。また、当該構成が周知の構成であるということもできない。 そうしてみると、訂正後の発明1、3の構成ハ.及びヘ.は先行技術文献a.ないしc.をいかに組み合わせても当業者が容易に想到できたということはできないから、訂正後の発明1及び3の他の構成を検討するまでもなく、訂正後の発明1及び3は先行技術文献a.ないしc.から当業者が容易に発明をすることができたということはできない。そうしてみると、請求項1又は3を引用しさらに限定を加える請求項2、4、5、6、7に係る発明(以下、それぞれ「訂正後の発明2」「訂正後の発明4」「訂正後の発明5」「訂正後の発明6」「訂正後の発明7」という。)についても、先行技術文献a.ないしc.から当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 (3-5)独立特許要件についてのまとめ 以上の通りであるから、訂正後の発明1ないし7は、先行技術文献1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、また、訂正後の発明1ないし7が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとするその他の理由も見当たらない。 よって、訂正事項1ないし9に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 2.請求項8、9からなる一群の請求項に係る訂正事項 (1)一群の請求項について 訂正後の請求項9は、請求項8を引用する請求項であるから、訂正後の請求項8及び9は、特許法施行規則第46条の2第1号に規定する一群の請求項に該当する。 (2)目的要件、新規事項の追加、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項10は、特許請求の範囲の請求項8において、「アンテナ素子」に関し「前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信する」ことを限定したものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当該事項は出願当初から発明の詳細な説明(特に【0017】参照。)などに記載されていた事項であるから、訂正事項10にかかる訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 そして、訂正事項10にかかる訂正は、「アンテナ素子」に関し限定的減縮を行う訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項10にかかる訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)独立特許要件について (3-1)はじめに 上記(2)で検討したように、請求項8、9からなる一群の請求項に係る訂正事項は、特許法第126条第1項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むから、訂正後の請求項8、9に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する(特許法第126条第7項)。 (3-2)訂正後の発明 独立請求項である本件訂正後の請求項8に係る発明(以下「訂正後の発明8」という。)を分説すると以下の通りである。 「【請求項8】 ト.車両に対して立設されて配置され面状のアンテナ素子が形成されているアンテナ基板と、 チ.前記アンテナ素子により受信された少なくともFM波帯の信号を増幅するアンプが設けられ、前記アンテナ基板と重ならないように配置されているアンプ基板と、 リ.前記アンテナ素子の直下であって、前記アンテナ素子の面とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットと、 ヌ.前記アンテナ素子の給電点と、前記アンプ基板における前記アンプの入力との間に挿入されているアンテナコイルと、 ル.前記アンテナ基板、前記アンプ基板、前記平面アンテナユニットおよび前記アンテナコイルが収納され、車両に取り付けられるアンテナケースとを備え、 オ.前記平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に、前記平面アンテナユニットの上面と前記アンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされており、 ワ.前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。」 (3-3)先行技術文献 本件にかかる先行技術文献は上記「1.(3-3)」の通りである。 (3-4)対比判断 訂正後の発明8は、訂正後の発明1及び3の構成ハ.及びヘ.と共通する構成ワ.を有しており、上記「1.(3-4)」で検討したとおり、当該構成により、訂正後の発明1及び3は先行技術文献a.ないしc.から当業者が容易に発明をできたものといえないのであるから、訂正後の発明8も同様の理由により、先行技術文献a.ないしc.から当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 また、請求項9は請求項8を引用し、さらに限定を加えたものであるから、訂正後の発明9(請求項9に記載の発明)も、先行技術文献a.ないしc.から当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 (3-5)独立特許要件についてのまとめ 以上の通りであるから、訂正後の発明8及び9が、先行技術文献1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、また、訂正後の発明8及び9が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとするその他の理由も見当たらない。 よって、訂正事項10に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 3.請求項10、11からなる一群の請求項に係る訂正事項 (1)一群の請求項について 訂正後の請求項11は、請求項10を引用する請求項であるから、訂正後の請求項10及び11は、特許法施行規則第46条の2第1号に規定する一群の請求項に該当する。 (2)目的要件、新規事項の追加、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項11は、特許請求の範囲の請求項10において、「アンテナ素子」に関し「前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信する」ことを限定したものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当該事項は出願当初から発明の詳細な説明(特に【0017】参照。)などに記載されていた事項であるから、訂正事項11にかかる訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 そして、訂正事項11にかかる訂正は、「アンテナ素子」に関し限定的減縮を行う訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項11にかかる訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)独立特許要件について (3-1)はじめに 上記(2)で検討したように、請求項10、11からなる一群の請求項に係る訂正事項は、特許法第126条第1項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むから、訂正後の請求項10、11に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する(特許法第126条第7項)。 (3-2)訂正後の発明 独立請求項である本件訂正後の請求項10に係る発明(以下、「訂正後の発明10」という。)を分説すると以下の通りである。 「【請求項10】 カ.厚みより縦方向の幅が大きくされている板状あるいは棒状のアンテナ素子を支持する、絶縁支持手段と、 ヨ.前記アンテナ素子により受信された少なくともFM波帯の信号を増幅するアンプが設けられ、前記アンテナ基板と重ならないように配置されているアンプ基板と、 タ.前記アンテナ素子の直下であって、前記アンテナ素子の縦方向の軸とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットと、 レ.前記アンテナ素子の給電点と、前記アンプ基板における前記アンプの入力との間に挿入されているアンテナコイルと、 ソ.前記アンテナ素子を支持している前記絶縁支持手段、前記アンプ基板、前記平面アンテナユニットおよび前記アンテナコイルが収納され、車両に取り付けられるアンテナケースとを備え、 ツ.前記平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に、前記平面アンテナユニットの上面と前記アンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされており、 ネ.前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。」 (3-3)先行技術文献 本件にかかる先行技術文献は上記「1.(3-3)」の通りである。 (3-4)対比判断 訂正後の発明10は、訂正後の発明1及び3の構成ハ.及びヘ.と共通する構成ネ.を有しており、上記「1.(3-4)」で検討したとおり、当該構成により、訂正後の発明1及び3は先行技術文献a.ないしc.から当業者が発明をできたものといえないのであるから、訂正後の発明10も同様の理由により、先行技術文献a.ないしc.から当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 また、請求項11は請求項10を引用し、さらに限定を加えたものであるから、訂正後の発明11(請求項11に記載の発明)も、先行技術文献a.ないしc.から当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 (3-5)独立特許要件についてのまとめ 以上の通りであるから、訂正後の発明10、11は、先行技術文献1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、また、訂正後の発明10、11が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとするその他の理由も見当たらない。 よって、訂正事項11に係る訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 第4 結語 以上のとおりであるから、本件請求項1ないし7、請求項8及び9、及び請求項10及び11の、各一群の請求項に係る訂正は、いずれも特許法第126条第1項ただし書き各号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 アンテナ装置 【技術分野】 【0001】 本発明は、少なくともFM放送を受信可能な車両に取り付けられる低姿勢のアンテナ装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 車両に取り付けられる従来のアンテナ装置は、一般にAM放送とFM放送を受信可能なアンテナ装置とされている。従来のアンテナ装置では、AM放送およびFM放送を受信するために1m程度の長さのロッドアンテナが用いられていた。このロッドアンテナの長さは、FM波帯においてはおよそ1/4波長となるが、AM波帯においては波長に対してはるかに短い長さとなることからその感度が著しく低下する。このため、従来は、ハイインピーダンスケーブルを用いてAM波帯に対してロッドアンテナをハイインピーダンス化したり、AM波帯の増幅器を用いて増幅し感度を確保していた。また、アンテナのロッド部をヘリカル状に巻回されたヘリカルアンテナとすることにより、アンテナの長さを約180mm?400mmに短くするようにした車載用のアンテナ装置も用いられている。しかし、ロッド部を縮小化したことによる性能劣化を補うためにアンテナ直下に増幅器を入れるようにしている。 【0003】 ロッド部を短くした従来のアンテナ装置101を車両102に取り付けた構成を図23に示す。図23に示すように、従来のアンテナ装置101は車両102のルーフに取り付けられており、車両102から突出しているアンテナ装置101の高さh10は約200mmとされている。アンテナ装置101のロッド部は、ヘリカル状に巻回されたヘリカルアンテナとされている。アンテナ装置101は、上記したように車両102から突出していることから車庫入れや洗車する際にロッド部が衝突して折損するおそれがある。そこで、アンテナ装置101のロッド部を車両102のルーフに沿うよう倒すことができるようにしたアンテナ装置も知られている。 【特許文献1】特開2005-223957 【特許文献2】特開2003-188619 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 このような従来のアンテナ装置101では、ロッド部が車体から大きく突出しているため車両の美観・デザインを損ねると共に、車庫入れや洗車時等に倒したロッド部を起こし忘れた場合、アンテナ性能が失われたままになるという問題点があった。また、アンテナ装置101は車外に露出しているため、ロッド部が盗難にあう恐れも生じる。そこで、アンテナケース内にアンテナを収納した車載用のアンテナ装置が考えられる。この場合、車両から突出するアンテナ装置の高さは車両外部突起規制により所定の高さに制限されると共に、車両の美観を損ねないよう長手方向の長さも160?220mm程度が好適とされる。すると、このような小型アンテナの放射抵抗Rradは、600?800×(高さ/波長)^(2)として表されるように高さの2乗に比例してほぼ決定されるようになる。例えば、アンテナ高を180mmから60mmに縮小すると約10dBも感度が劣化するようになる。このように、単純に既存のロッドアンテナを短縮すると性能が大きく劣化して実用化が困難になる。さらに、アンテナを70mm以下の低姿勢とすると放射抵抗Rradが小さくなってしまうことから、アンテナそのものの導体損失の影響により放射効率が低下しやすくなって、さらなる感度劣化の原因になる。 【0005】 そこで、出願人は特願2006-315297号において、70mm以下の低姿勢としても感度劣化を極力抑制することのできる車両に取り付けられるアンテナ装置を提案した。ところで、車両には地上波ラジオ放送、衛星ラジオ放送やGPS等の多種多様な用途に応じたアンテナが搭載されていることがある。しかし、各種メディア対応の各アンテナが増加するに従い、車両に搭載するアンテナの数が増加し、車両の美観は損なわれると共に、取り付けるための作業時間も増大する。そこで、アンテナ装置に複数のアンテナを組み込むことが考えられる。一例として、上記提案したアンテナ装置に、例えばSDARS(Satellite Digital Audio Radio Service:衛星デジタルラジオサービス)を受信するアンテナを組み込んだアンテナ装置の構成例を示す平面図を図24に示し、そのアンテナ装置の構成例を示す側面図を図25に示す。 【0006】 図24および図25に示すアンテナ装置200は、アンテナケース210と、このアンテナケース210内に収納されているアンテナベース220と、アンテナベース220に取り付けられているアンテナ基板230およびアンプ基板234とから構成されている。アンテナケース210は先端に行くほど細くなる流線型の外形形状とされている。アンテナケース210の下面には金属製のアンテナベース220が取り付けられる。アンテナケース210内に立設して収納できる大きさのアンテナ基板230には、アンテナ素子231のパターンが形成されている。このアンテナ素子231の下縁とアンテナベース220との間隔は約10mm以上とされている。このアンテナ基板230は、アンテナベース220に立設して固着されていると共に、アンテナ基板230の前方にアンプ基板234が固着されている。そして、アンプ基板234の上に平面アンテナユニット235が固着されている。平面アンテナユニット235は、摂動素子を備え円偏波を受信可能なパッチ素子を有している。平面アンテナユニット235をアンプ基板234の上に固着しているのは、アンテナ素子231の下には、平面アンテナユニット235の高さが高いことから配置することができず、限られた空間しか有していないアンテナケース210内において、平面アンテナユニット235を配置することができるのはアンプ基板234の上だけとなるからである。 【0007】 アンテナベース220の下面からは、アンテナ装置200を車両に取り付けるためのボルト部221と、アンテナ装置200から受信信号を車両内に導くためのケーブルを引き出すケーブル引出口222が突出して形成されている。この場合、ボルト部221およびケーブル引出口222が挿通される穴が車両のルーフに形成され、これらの穴にボルト部221およびケーブル引出口222が挿通されるようルーフ上にアンテナ装置200を載置する。そして、車両内に突出したボルト部221にナットを締着することによりアンテナ装置200を車両のルーフに固着することができる。この際に、ケーブル引出口222から引き出されたケーブルが車両内に導かれる。また、アンテナケース210内に収納されているアンプ基板234への給電ケーブルは、車両内からケーブル引出口222を介してアンテナケース210内に導かれる。なお、アンテナケース210の長手方向の長さは約200mmとされ、横幅は約75mmとされる。また、車両から突出している高さは約70mmとされて低姿勢とされている。 【0008】 アンテナ装置200の水平面内の放射指向特性を図26に示す。ただし、仰角は20°とされている。図26に示す放射指向特性を参照すると、無指向性とはなっておらず、特に、アンテナ素子231が存在している方向(180°)において放射指向特性が落ち込んでいることが分かる。これは、アンプ基板234の上に設置した平面アンテナユニット235の設置高が高くなり、グランド面と平面アンテナユニット235のパッチ素子との間隔が大きくなり、平面アンテナユニットの電気的特性、特に放射指向特性に影響を及ぼすことになるからである。さらに、平面アンテナユニット235の放射界において、低仰角放射範囲に平面アンテナユニット235の動作周波数の1/2波長程度の大きな金属体であるアンテナ素子231が存在しており、このアンテナ素子231による反射・回折等の影響で、平面アンテナユニット235の放射指向特性が大きく劣化する傾向にあるからである。このように、限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテナ装置にさらにアンテナを組み込むと既設のアンテナの影響を受けて良好な電気的特性を得ることができないという問題点があった。 そこで、本発明は限られた空間しか有していないアンテナケースを備えるアンテナ装置にさらにアンテナを組み込んでも良好な電気的特性を得ることができるアンテナ装置を提供することを目的としている。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上記目的を達成するために、本発明は、立設されて配置され面状のアンテナ素子が形成されているアンテナ基板と、アンテナ基板と重ならないように配置されているアンプ基板と、アンテナ素子の直下であって、前記アンテナ素子の面とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットとを備え、平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に、平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされていることを最も主要な特徴としている。 【発明の効果】 【0010】 本発明によれば、立設されて配置され面状のアンテナ素子が形成されているアンテナ基板と、アンテナ基板と重ならないように配置されているアンプ基板と、アンテナ素子の直下であって、前記アンテナ素子の面とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットとを備え、平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に、平面アンテナユニットの上面とアンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされていることから、アンテナ素子の影響を受けることなく平面アンテナユニットの水平面内の放射指向特性を無指向性とすることができると共に、良好なゲイン特性が得られるようになる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0011】 本発明の実施例にかかるアンテナ装置を取り付けた車両の構成を図1に示す。図1に示すように、本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置1は車両2のルーフに取り付けられており、車両2から突出している高さhは約75mm以下で好適には約70mm以下とされている。第1実施例のアンテナ装置1は後述するアンテナケースを備え極めて低姿勢とされているが、AM放送、FM放送および衛星ラジオ放送を受信することが可能とされている。このアンテナ装置1の形状は先端に行くほど細くなると共に、側面も内側に絞った曲面とされた流線型とされており、車両の美観・デザインを損ねない形状とされている。そして、アンテナ装置1の下面は、車両2の取付面の形状に合わせた形状とされて、車両2に水密に取り付けられている。 【0012】 次に、本発明の車載用にかかる第1実施例のアンテナ装置1の構成を図2ないし図6に示す。ただし、図2は本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置1の構成を示す側面図であり、図3は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す平面図であり、図4は本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置1の内部構成を示す平面図であり、図5は本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置1の内部構成を示す側面図であり、図6はアンテナケースを省略して示す第1実施例のアンテナ装置1の内部構成を示す正面図である。 これらの図に示すように、本発明の第1実施例にかかるアンテナ装置1は、アンテナケース10と、このアンテナケース10内に収納されているアンテナベース20と、アンテナベース20に取り付けられているアンテナ基板30と、アンプ基板34と、平面アンテナユニット35から構成されている。アンテナケース10の長手方向の長さは約200mmとされ、横幅は約75mmとされている。 【0013】 アンテナケース10は電波透過性の合成樹脂製とされており、先端に行くほど細くなると共に、側面も内側に絞った曲面とされた流線型の外形形状とされている。アンテナケース10の下面は取り付けられる車両2の取付面の形状に合わせた形状とされている。アンテナケース10内には、アンテナ基板30を立設して収納できる空間と、アンプ基板34をアンテナベース20にほぼ平行に収納する空間が形成されている。アンテナケース10の下面には金属製のアンテナベース20が取り付けられている。そして、アンテナベース20にアンテナ基板30が立設して固着されていると共に、アンテナ基板30の前方に位置するようにアンプ基板34がアンテナベース20に固着されている。また、アンテナ基板30の下縁の中央部に矩形状の切欠30aが形成されており、この切欠30a内に位置するように平面アンテナユニット35がアンテナベース20に取り付けられている。このアンテナベース20をアンテナケース10の下面に取り付けることにより、アンテナケース10の内部空間にアンテナ基板30とアンプ基板34と平面アンテナユニット35とを収納することができる。なお、立設して固着されるアンテナ基板30の上縁をアンテナケース10の内部空間の形状に合わせた形状として、アンテナ基板30の高さをなるべく高くすることが好適とされる。 【0014】 アンテナベース20の下面からは、アンテナ装置1を車両2に取り付けるためのボルト部21と、アンテナ装置1から受信信号を車両2内に導くためのケーブルを引き出すケーブル引出口22が突出して形成されている。この場合、ボルト部21およびケーブル引出口22が挿通される穴が車両2のルーフに形成され、これらの穴にボルト部21およびケーブル引出口22が挿通されるようルーフ上にアンテナ装置1を載置する。そして、車両2内に突出したボルト部21にナットを締着することによりアンテナ装置1を車両2のルーフに固着することができる。この際に、位置決め用の突起としても作用するケーブル引出口22から引き出されたケーブルが車両2内に導かれる。また、アンテナケース10内に収納されているアンプ基板34への給電ケーブルは、車両2内からケーブル引出口22を介してアンテナケース10内に導かれる。 【0015】 アンテナベース20は、一側が半円形とされたほぼ矩形状の細長い平板からなり、おもて面にはアンテナ基板30の縁部を挟持することでアンテナ基板30を立設して保持する一対の基板固定部23が形成されている。さらに、アンプ基板34をネジ止めにより支持する一対のボス24が突出して形成されている。また、アンテナベース20の周縁には、アンテナベース20をアンテナケース10に取り付ける際にネジを挿通する5個の取付孔25が形成されている。さらに、アンテナベース20の裏面には上記した周側面にネジが切られているボルト部21と断面が略矩形とされたケーブル引出口22が突出して形成されている。これにより、図4,図5に示すように一対の基板固定部23にアンテナ基板30が立設されて固着されると共に、一対のボス24にアンプ基板34が固着されるようになる。また、立設して固着されたアンテナ基板30の切欠30a内であって、アンテナベース20のおもて面に平面アンテナユニット35がネジ止めや接着剤により固着される。そして、アンプ基板34の出力に接続されたケーブルおよび平面アンテナユニット35から引き出されたケーブルがケーブル引出口22から下方へ引き出されるようになる。 【0016】 アンテナ基板30は、高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされており、AM放送とFM放送を受信可能なアンテナを構成するアンテナ素子31のパターンが上部に形成されている。アンテナ基板30のアンテナベース20からの高さはH、長さはLとされている。また、アンテナ素子31の長さはアンテナ基板30と同じLとされ、幅(高さ)はhとされている。さらに、アンテナ素子31の下縁と平面アンテナユニット35の上面との間隔はDとされている。このアンテナ素子31の大きさは、アンテナケース10の内部空間の制約から高さHは約75mm程度までの高さ、長さLは約90mm程度までとされている。ここで、FM波帯の周波数100MHzの波長をλとすると、約75mmの寸法は約0.025λ、約90mmの寸法は約0.03λとなり、アンテナ素子31は波長λに対して超小型のアンテナとなる。 【0017】 ところで、このような超小型のアンテナ素子31とされると、インダクタ成分が小さくなることからFM波帯にアンテナ素子31を共振させることが困難となる。そこで、1μH?3μH程度のアンテナコイル32をアンテナ素子31の給電点とアンプ基板34におけるアンプの入力との間に直列に挿入することにより、アンテナ素子31とアンテナコイル32とからなるアンテナ部をFM波帯付近で共振させられるようになる。このアンテナコイル32が図6に図示されている。これにより、アンテナ素子31とアンテナコイル32とからなるアンテナ部がFM波帯において良好に動作することができるようになる。なお、このFM波帯で共振するアンテナ素子31をAM波帯では電圧受信素子として利用することにより、AM波帯を受信できるようにしている。また、長さがLで幅がhの面状のアンテナ素子31としていることから導体損失が小さくなり、導体損失による電気的特性の劣化を防止することができる。 また、アンプ基板34に設けられているアンプは、アンテナ素子31により受信されたFM放送信号とAM放送信号とを増幅して出力している。 【0018】 上記したように、本発明の第1実施例のアンテナ装置1においてはAM/FM受信用のアンテナ素子31の直下に衛星ラジオ放送を受信する平面アンテナユニット35が配置されている。平面アンテナユニット35は、摂動素子を備え円偏波を受信可能なパッチ素子を備えている。一般的には、2つのアンテナを近接して配置するとゲイン特性が劣化したり放射指向特性が乱れるようになる。そこで、本発明にかかるアンテナ装置1においてアンテナ素子31の下縁と平面アンテナユニット35の上面との間隔Dをパラメータとして、仰角を衛星ディジタルラジオの衛星受信側仰角範囲の仕様である20°?60°に設定した際の平面アンテナユニット35のゲイン特性を図7ないし図11に示す。この場合のアンテナ素子31は、長さLが約60mm、縦方向の幅hが約28mmの寸法とされている。 図7には、周波数が衛星ディジタルラジオ放送(SDARS)の中心周波数である2338.75MHz、仰角が20°とされ、間隔Dが33mm?7mmまで変化した際の平面アンテナユニット35のゲイン特性が示され、横軸が間隔D(mm)とされ縦軸がアベレージゲイン[dBic]とされている。図7に示すゲイン特性を参照すると、間隔Dが33mmとされたときにアベレージゲインは最大となって約2.0[dBic]のゲインが得られるが、間隔Dが7mmまで狭くされていくに従いアベレージゲインは減衰していき、間隔Dが7mmになると最小となって約0[dBic]までゲインが減衰することがわかる。ここで、dBicという単位は、円偏波(circular polarization)の等方性(isotropic)アンテナ(すべての方向に一様に電力を放射する仮想的なアンテナ)に対する絶対利得を表している。 【0019】 また図8には、周波数が2338.75MHz、仰角が30°とされ、間隔Dが33mm?7mmまで変化した際の平面アンテナユニット35のゲイン特性が示されている。図8に示すゲイン特性を参照すると、間隔Dが33mmとされたときにアベレージゲインは最大となって約1.0[dBic]のゲインが得られるが、間隔Dが7mmまで狭くされていくと次第にアベレージゲインは減衰していき、間隔Dが7mmになると最小となって約-5.5[dBic]までゲインが減衰することがわかる。 さらに図9には、周波数が2338.75MHz、仰角が40°とされ、間隔Dが33mm?7mmまで変化した際の平面アンテナユニット35のゲイン特性が示されている。図9に示すゲイン特性を参照すると、間隔Dが33mmとされたときにアベレージゲインは最大となって約1.8[dBic]のゲイン得られるが、間隔Dが7mmまで狭くされていくと次第にアベレージゲインは減衰していき、間隔Dが7mmになると最小となって約-4.0[dBic]までゲインが減衰することがわかる。 【0020】 さらに図10には、周波数が2338.75MHz、仰角が50°とされ、間隔Dが33mm?7mmまで変化した際の平面アンテナユニット35のゲイン特性が示されている。図10に示すゲイン特性を参照すると、間隔Dが33mmとされたときにアベレージゲインは最大となって約2.0[dBic]のゲインが得られるが、間隔Dが7mmまで狭くされていくと次第にアベレージゲインは減衰していき、間隔Dが7mmになると最小となって約-7.9[dBic]までゲインが減衰することがわかる。 さらに図11には、周波数が2338.75MHz、仰角が60°とされ、間隔Dが33mm?7mmまで変化した際の平面アンテナユニット35のゲイン特性が示されている。図11に示すゲイン特性を参照すると、間隔Dが33mmとされたときにアベレージゲインは最大となって約2.1[dBic]のゲインが得られるが、間隔Dが7mmまで狭くされていくと次第にアベレージゲインは減衰していき、間隔Dが7mmになると最小となって約-4.5[dBic]までゲインが減衰することがわかる。 【0021】 図7ないし図11に示すゲイン特性を参照すると、間隔Dは大きくするほど良好なゲイン特性を示すようになり、間隔Dを約33mm以上とすれば衛星ディジタルラジオの衛星受信側仰角範囲の仕様である20°ないし60°の仰角範囲において良好なゲイン特性を得ることができる。この場合のアンテナ素子31の幅hは約28mmとされている。また、アンテナ素子31のゲイン特性および放射指向特性に平面アンテナユニット35は影響を与えることがなく、アンテナ素子31の下縁と平面アンテナユニット35の上面との間隔Dを約33mm、アンテナ素子31の幅hを約28mmに設計することで、アンテナ素子31の直下に平面アンテナユニット35を組み込んで統合することができる。 【0022】 さらにまた、図12に平面アンテナユニット35の水平面内の放射指向特性を示す。ただし、間隔Dは約33mm、仰角は20°とされている。図12に示す放射指向特性を参照すると、ほぼ無指向性が得られており、平面アンテナユニット35の直上にアンテナ素子31が存在していても、放射指向特性はその影響と受けていないことがわかる。すなわち、アンテナベース20上に固着された平面アンテナユニット35の高さが低くなることから、グランド面と平面アンテナユニット35のパッチ素子の間隔が小さくなり、平面アンテナユニット35の電気的特性、特に放射指向特性に影響を及ぼさないようになる。また、アンテナ素子31の直下に平面アンテナユニット35を組み込むことにより、アンテナ素子31直下に設置した平面アンテナユニット35の放射指向特性はその影響が軽減されて等方等射の様相を呈するようになる。このように、限られた空間しか有していないアンテナケース10を備えるアンテナ装置1において、アンテナ素子31の直下に平面アンテナユニット35を組み込んでも、その間の間隔Dを約33mmとすることでアンテナ素子31の影響を受けることなく無指向性を得ることができるようになる。 【0023】 ここで、本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置1における設計手法について説明する。ただし、平面アンテナユニット35は、SDARS(Satellite Digital Audio Radio Service:衛星ディジタルラジオサービス)受信用のアンテナとされ、その中心周波数は2338.75MHzとされている。この場合、衛星デジタルラジオの中心周波数の波長λは約128mmであり、波長λに換算した設計値として以下に表現するものとする。 (1)アンテナ素子31の下縁と平面アンテナユニット35の上面の間隔Dを、約0.25λ以上とする。 (2)アンテナ素子31の長さLを、およそ0.5λ程度、或いはそれ以下とする。 (3)アンテナ素子31の縦方向の幅hを、およそ0.2λ?0.25λ程度、或いは0.2λ以下とする。 (4)アンテナ素子31は厚みより縦方向の幅が大きくされアンテナ基板30にプリントする、あるいは、厚さが1?2mmの板状とする。 この様なアンテナ素子31の寸法・位置関係とすることにより、アンテナ素子31と平面アンテナユニット35が、相互に影響を及ぼすことが低減され、それぞれ単独で存在する場合の各アンテナと同等の電気的特性を示すことが可能となる。 【0024】 次に、アンテナ素子31のグランドからの高さHを約60mm(アンテナ装置1の高さは約65mmとなる。)に設計したアンテナ装置1の構成を図13に示し、アンテナ素子31のグランドからの高さHを約70mm(アンテナ装置1の高さは約75mmとなる。)に設計したアンテナ装置1の構成を図14に示し、アンテナ素子31の高さHを約60mmと約70mmにした場合において、仰角を変化させた時の平面アンテナユニット35のアベレージゲインを図15に示す。 図15を参照すると、アンテナ素子31の高さHを約60mmとした場合は、仰角が20°の時に約0.5[dBic]のアベレージゲインが得られ、仰角が30°の時には減衰して約-2.0[dBic]のアベレージゲインとなり、仰角が40°の時に約-0.2[dBic]のアベレージゲインが得られ、仰角が50°の時に約-0.5[dBic]のアベレージゲインが得られ、仰角が60°の時に約0.6[dBic]のアベレージゲインが得られている。また、アンテナ素子31の高さHを約70mmとした場合は、仰角が20°の時に約2.0[dBic]のアベレージゲインが得られ、仰角が30°の時には減衰するが約1.0[dBic]のアベレージゲインが得られ、仰角が40°の時に約1.8[dBic]のアベレージゲインが得られ、仰角が50°の時に約2.0[dBic]を超えるアベレージゲインが得られ、仰角が60°の時に約2.1[dBic]のアベレージゲインが得られている。 このように、アンテナ素子31の高さHが高くなると平面アンテナユニット35のゲインが向上する傾向になることが分かる。 【0025】 次に、図13に示すようにアンテナ素子31のグランドからの高さHを約60mm(アンテナ装置1の高さは約65mmとなる。)に設計した場合と、図14に示すようにアンテナ素子31のグランドからの高さHを約70mm(アンテナ装置1の高さは約75mmとなる。)に設計し、平面アンテナユニット35が「有り」と「無し」の場合のアンテナ素子31の電圧定在波比(VSWR)の周波数特性を図16に示し、平面アンテナユニット35が「有り」と「無し」の場合のアンテナ素子31のアベレージゲインの周波数特性を図17に示す。 図16の横軸はFM波帯の周波数範囲の周波数とされ、縦軸はVSWRとされている。図16を参照すると、平面アンテナユニット35が「無し」と「有り」の場合とでは共振点は不変であるが、平面アンテナユニット35が「有り」の場合はFM波帯においてVSWRはおよそ1?2劣化している。これは、平面アンテナユニット35の相互干渉による影響と思われる。また、図17を参照すると平面アンテナユニット35が「無し」と「有り」の場合とで、FM波帯におけるアベレージゲインはほぼ同様のゲイン値が得られており、平面アンテナユニット35を配置したことによる影響はほぼ見られない。 【0026】 また、図18を参照すると、平面アンテナユニット35が「無し」と「有り」の場合とでは共振点は不変であり、平面アンテナユニット35が「有り」の場合の方がFM波帯においてVSWR値は向上している。さらに、図19を参照すると平面アンテナユニット35が「無し」と「有り」の場合とで、FM波帯におけるアベレージゲインはほぼ同様のゲイン値が得られており、平面アンテナユニット35を配置したことによる影響はほぼ見られない。さらにまた、図18に示すVSWRの周波数特性では図16に示すVSWRの周波数特性よりはるかに良好なVSWR値が広い周波数帯域にわたり得られており、図19に示すゲイン特性では図17に示すゲイン特性より2?3dBゲインが広い周波数帯域にわたり向上している。このように、アンテナ素子31の高さHを約70mmとすることにより、アンテナ装置1の電気的特性大幅に向上することができる。 【0027】 次に、本発明の車載用にかかる第2実施例のアンテナ装置3の構成を図20ないし図22に示す。ただし、図20は本発明にかかる第2実施例のアンテナ装置3の内部構成を示す平面図であり、図21は本発明にかかる第2実施例のアンテナ装置3の内部構成を示す側面図であり、図22はアンテナケースを省略して示す第2実施例のアンテナ装置3の内部構成を示す正面図である。 これらの図に示すように、本発明の第2実施例にかかるアンテナ装置3は、第1実施例のアンテナ装置1におけるアンテナ基板30に替えてアンテナ部40が備えられている。第2実施例のアンテナ装置3は、アンテナケース10と、このアンテナケース10内に収納されているアンテナベース20と、アンテナベース20に取り付けられているアンテナ部40と、アンプ基板34と、平面アンテナユニット35から構成されている。アンテナケース10の長手方向の長さは約200mmとされ、横幅は約75mmとされている。 【0028】 アンテナケース10は電波透過性の合成樹脂製とされており、先端に行くほど細くなると共に、側面も内側に絞った曲面とされた流線型の外形形状とされている。アンテナケース10の下面は取り付けられる車両2の取付面の形状に合わせた形状とされている。アンテナケース10内には、アンテナ基板30を立設して収納できる空間と、アンプ基板34をアンテナベース20にほぼ平行に収納する空間が形成されている。アンテナケース10の下面には金属製のアンテナベース20が取り付けられている。そして、アンテナベース20にアンテナ部40が立設して固着されていると共に、アンテナ部40の前方に位置するようにアンプ基板34がアンテナベース20に固着されている。また、アンテナ部40における板状の絶縁スペーサ42の下縁の中央部に矩形状の切欠42aが形成されており、この切欠42a内に位置するように平面アンテナユニット35がアンテナベース20に取り付けられている。このアンテナベース20をアンテナケース10の下面に取り付けることにより、アンテナケース10の内部空間にアンテナ部40とアンプ基板34と平面アンテナユニット35とを収納することができる。 アンテナベース20の構成は第1実施例のアンテナ装置1と同様とされているので、その説明は省略するが、アンテナベース20のおもて面にはアンテナ部40における絶縁スペーサ42の下縁部を挟持することでアンテナ部40を立設して保持する一対の基板固定部23が形成されている。 【0029】 アンテナ部40は、ほぼ矩形とされた板状の絶縁スペーサ42と、この絶縁スペーサ42の上端に固着された断面が細長い菱形の導電性(例えば、金属製)の棒状とされたアンテナ素子41から構成されている。絶縁スペーサ42は高周波特性の良好な絶縁材からなり、下縁の中央部に矩形状の切欠42aが形成されている。アンテナ素子41はAM放送とFM放送が受信可能とされ、厚みより縦方向の幅が大きくされた金属等の導電体、あるいは、絶縁体の全面に導電膜が形成されて構成されている。このアンテナ素子41の下部が、絶縁スペーサ42の上端に挟持されて一対の取付ネジ43が締着されることにより、アンテナ素子41が絶縁スペーサ42の上端に固着されている。このように、アンテナ素子41を極力高い位置に配置することによりアンテナ装置3の電気的特性を第1実施例と同様に向上することができる。なお、アンテナ素子41の断面形状は菱形に限らず楕円形や多角形状としたり、板状のアンテナ素子41とすることができる。さらに、アンテナ素子41も超小型とされてインダクタ成分が小さくなることからFM波帯にアンテナ素子41を共振させることが困難となる。そこで、1μH?3μH程度のアンテナコイル32をアンテナ素子41の給電点とアンプ基板34におけるアンプの入力との間に直列に挿入することにより、アンテナ素子41とアンテナコイル32とからなるアンテナ部をFM波帯付近で共振させるようにしている。このアンテナコイル32が図22に図示されている。さらにまた、アンプ基板34に設けられているアンプは、アンテナ素子41により受信されたFM放送信号とAM放送信号とを増幅して出力している。 【0030】 上記したように、本発明の第2実施例のアンテナ装置3においてもAM/FM受信用のアンテナ素子41の直下に衛星ラジオ放送を受信する平面アンテナユニット35が配置されている。平面アンテナユニット35は、摂動素子を備え円偏波を受信可能なパッチ素子を有している。また、本発明の第2実施例のアンテナ装置3において、平面アンテナユニット35が動作する衛星デジタルラジオの中心周波数の波長をλとした際に、アンテナ素子41の下縁と平面アンテナユニット35の上面の間隔Dを約0.25λ以上としている。さらに、アンテナ素子41の長さLを、およそ0.5λ程度、或いはそれ以下とし、アンテナ素子41の高さ方向の幅hを、およそ0.2λ?0.25λ程度、或いは約0.2λ以下としている。さらにまた、アンテナ素子41は厚みより縦方向の幅が大きくされ、その厚さは1?2mmの板状、あるいは60?百数十分の一λ程度の棒状としている。アンテナ素子41の寸法・位置関係をこのようにすることにより、アンテナ素子41と平面アンテナユニット35が、相互に影響を及ぼすことが低減され、それぞれ単独で存在する場合の各アンテナと同等の電気的特性を示すことが可能となる。 【産業上の利用可能性】 【0031】 以上説明した本発明にかかるアンテナ装置は、アンテナ素子をグラウンドからなるべく離して高い位置に配置すると共に、その直下に平面アンテナユニットを配置することにより、アンテナ素子によりFM放送およびAM放送を良好に受信することができると共に、衛星ディジタルラジオ放送を平面アンテナユニットにより良好に受信することができるようになる。なお、衛星デジタルラジオ放送はSDARSに限るものではなく、種々の周波数帯の衛星ラジオ放送を受信できるようにしてもよい。 また、本発明にかかるアンテナ装置は車両のルーフやトランクに取り付けられる車載用としたが、これに限るものではなく少なくともFM帯を受信するアンテナ装置であれば適用することができる。 【図面の簡単な説明】 【0032】 【図1】本発明の実施例にかかるアンテナ装置を取り付けた車両の構成を示す図である。 【図2】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置の構成を示す側面図である。 【図3】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置の構成を示す平面図である。 【図4】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置の内部構成を示す平面図である。 【図5】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置の内部構成を示す側面図である。 【図6】本発明の第1実施例のアンテナ装置にかかるアンテナケースを省略して示す内部構成を示す正面図である。 【図7】本発明の第1実施例のアンテナ装置における平面アンテナユニットの仰角が20°の時のゲイン特性を示す図である。 【図8】本発明の第1実施例のアンテナ装置における平面アンテナユニットの仰角が30°の時のゲイン特性を示す図である。 【図9】本発明の第1実施例のアンテナ装置における平面アンテナユニットの仰角が40°の時のゲイン特性を示す図である。 【図10】本発明の第1実施例のアンテナ装置における平面アンテナユニットの仰角が50°の時のゲイン特性を示す図である。 【図11】本発明の第1実施例のアンテナ装置における平面アンテナユニットの仰角が60°の時のゲイン特性を示す図である。 【図12】本発明の第1実施例のアンテナ装置における平面アンテナユニットの仰角が20°の時の放射指向特性を示す図である。 【図13】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置においてアンテナ素子の高さを60mmとした時の内部構成を示す側面図である。 【図14】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置においてアンテナ素子の高さを70mmとした時の内部構成を示す側面図である。 【図15】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置においてアンテナ素子の高さを変えた時の平面アンテナユニットのゲイン特性を示す図である。 【図16】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置においてアンテナ素子の高さを60mmとし平面アンテナユニット有/無のVSWRの周波数特性を示す図である。 【図17】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置においてアンテナ素子の高さを60mmとし平面アンテナユニット有/無のゲインの周波数特性を示す図である。 【図18】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置においてアンテナ素子の高さを70mmとし平面アンテナユニット有/無のVSWRの周波数特性を示す図である。 【図19】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置においてアンテナ素子の高さを70mmとし平面アンテナユニット有/無のゲインの周波数特性を示す図である。 【図20】本発明にかかる第2実施例のアンテナ装置の内部構成を示す平面図である。 【図21】本発明にかかる第1実施例のアンテナ装置の内部構成を示す側面図である。 【図22】本発明の第2実施例のアンテナ装置にかかるアンテナケースを省略して示す内部構成を示す正面図である。 【図23】従来のアンテナ装置を車両に取り付けた構成を示す図である。 【図24】従来のアンテナ装置の内部構成を示す平面図である。 【図25】従来のアンテナ装置の内部構成を示す側面図である。 【図26】従来のアンテナ装置における平面アンテナユニットの仰角が20°の時の放射指向特性を示す図である。 【符号の説明】 【0033】 1 アンテナ装置、2 車両、3 アンテナ装置、10 アンテナケース、20 アンテナベース、21 ボルト部、22 ケーブル引出口、23 基板固定部、24 ボス、25 取付孔、30 アンテナ基板、30a 切欠、31 アンテナ素子、32 アンテナコイル、34 アンプ基板、35 平面アンテナユニット、40 アンテナ部、41 アンテナ素子、42 絶縁スペーサ、42a 切欠、43 取付ネジ、101 アンテナ装置、102 車両、200 アンテナ装置、210 アンテナケース、220 アンテナベース、221 ボルト部、222 ケーブル引出口、230 アンテナ基板、231 アンテナ素子、234 アンプ基板、235 平面アンテナユニット (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 車両に取り付けられた際に、車両から約70mm以下の高さで突出するアンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部からなるアンテナ装置であって、 前記アンテナ部は、アンテナ素子と、該アンテナ素子により受信された少なくともFM放送の信号を増幅するアンプを有するアンプ基板とからなり、前記アンテナ素子の給電点が前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続され、 前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。 【請求項2】 前記アンテナ素子が、前記アンテナケース内に配設されている棒状のアンテナ素子から構成されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。 【請求項3】 車両に取り付けられた際に、車両から約70mm以下の高さで突出するアンテナケースと、該アンテナケース内に収納されるアンテナ部からなるアンテナ装置であって、 前記アンテナ部は、車両に対して立設されて配置されアンテナパターンが形成されているアンテナ基板と、前記アンテナパターンからなるアンテナ素子により受信された少なくともFM放送の信号を増幅するアンプが設けられているアンプ基板とからなり、前記アンテナ基板における前記アンテナ素子の給電点が、前記アンプ基板における前記アンプの入力にアンテナコイルを介して接続され、 前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。 【請求項4】 前記アンテナ素子の下縁とグラウンドとの間隔が、約33mm以上とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ装置。 【請求項5】 前記アンテナ素子の長さが前記FM波帯の波長λに対して約1/30以下の長さとされ、前記アンテナ素子と前記アンテナコイルとからなるアンテナ部が前記FM波帯でほぼ共振するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載のアンテナ装置。 【請求項6】 前記アンテナパターンの長さが前記FM波帯の波長λに対して約1/30以下の長さとされ、前記アンテナパターンと前記アンテナコイルとからなるアンテナ部が前記FM波帯でほぼ共振するようにしたことを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。 【請求項7】 前記アンテナケースは、先端に行くほど細くなると共に高さが低くなる流線型の外形形状とされており、前記アンプ基板は前記アンテナケースの高さが低い部位に収納されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ装置。 【請求項8】 車両に対して立設されて配置され面状のアンテナ素子が形成されているアンテナ基板と、 前記アンテナ素子により受信された少なくともFM波帯の信号を増幅するアンプが設けられ、前記アンテナ基板と重ならないように配置されているアンプ基板と、 前記アンテナ素子の直下であって、前記アンテナ素子の面とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットと、 前記アンテナ素子の給電点と、前記アンプ基板における前記アンプの入力との間に挿入されているアンテナコイルと、 前記アンテナ基板、前記アンプ基板、前記平面アンテナユニットおよび前記アンテナコイルが収納され、車両に取り付けられるアンテナケースとを備え、 前記平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に、前記平面アンテナユニットの上面と前記アンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされており、 前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。 【請求項9】 前記アンテナ基板、前記アンプ基板および前記平面アンテナユニットはアンテナベースに取り付けられており、該アンテナベースに前記アンテナケースが嵌着されることにより、前記アンテナケース内に前記アンテナ基板、前記アンプ基板、前記平面アンテナユニットおよび前記アンテナコイルが収納されることを特徴とする請求項8記載のアンテナ装置。 【請求項10】 厚みより縦方向の幅が大きくされている板状あるいは棒状のアンテナ素子を支持する、絶縁支持手段と、 前記アンテナ素子により受信された少なくともFM波帯の信号を増幅するアンプが設けられ、前記アンテナ基板と重ならないように配置されているアンプ基板と、 前記アンテナ素子の直下であって、前記アンテナ素子の縦方向の軸とほぼ直交するよう配置されている平面アンテナユニットと、 前記アンテナ素子の給電点と、前記アンプ基板における前記アンプの入力との間に挿入されているアンテナコイルと、 前記アンテナ素子を支持している前記絶縁支持手段、前記アンプ基板、前記平面アンテナユニットおよび前記アンテナコイルが収納され、車両に取り付けられるアンテナケースとを備え、 前記平面アンテナユニットの動作周波数帯の中心周波数の波長をλとした際に、前記平面アンテナユニットの上面と前記アンテナ素子の下端との間隔が約0.25λ以上とされており、 前記アンテナ素子は前記アンテナコイルと接続されることによりFM波帯で共振し、前記アンテナ素子を用いてAM波帯を受信することを特徴とするアンテナ装置。 【請求項11】 前記アンテナ素子を支持している前記絶縁支持手段、前記アンプ基板および前記平面アンテナユニットはアンテナベースに取り付けられており、該アンテナベースに前記アンテナケースが嵌着されることにより、前記アンテナケース内に前記アンテナ素子を支持している前記絶縁支持手段、前記アンプ基板、前記平面アンテナユニットおよび前記アンテナコイルが収納されることを特徴とする請求項10記載のアンテナ装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2014-09-08 |
出願番号 | 特願2007-309993(P2007-309993) |
審決分類 |
P
1
41・
852-
Y
(H01Q)
P 1 41・ 853- Y (H01Q) P 1 41・ 856- Y (H01Q) P 1 41・ 851- Y (H01Q) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 当秀 |
特許庁審判長 |
田中 庸介 |
特許庁審判官 |
山中 実 山本 章裕 |
登録日 | 2013-04-05 |
登録番号 | 特許第5237617号(P5237617) |
発明の名称 | アンテナ装置 |
代理人 | 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ |
代理人 | 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ |