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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1304366
審判番号 不服2014-21560  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-24 
確定日 2015-08-13 
事件の表示 特願2013- 81983「撮像表示装置、撮像表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 5日出願公開、特開2013-174898〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、平成18年9月27日に出願した特願2006-261975号の一部を平成25年4月10日に新たな特許出願としたものであって、平成26年4月2日付けで拒絶理由が通知され、平成26年7月30日付けで拒絶査定(送達日:平成26年8月5日)がなされ、これに対し平成26年10月24日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成26年10月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年10月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項7の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項7】
使用者が視認する方向を被写体方向として撮像するようにされる撮像手段と、表示部が上記使用者の目の前方に位置するように配置され、透明もしくは半透明であるスルー状態と上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態とを切換可能とする表示手段とを備えた撮像表示装置の撮像表示方法として、
周囲環境センサ、撮影対象センサ、画像解析部、位置情報取得部又は通信部の少なくとも2つ以上から外界情報を取得する外界情報取得ステップと、
上記表示手段に対して、上記スルー状態と、上記撮像手段で撮像された画像について上記外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて複数の処理方法で処理して生成した複数の画像の分割表示を行う画像表示状態との切換制御を行う制御ステップと、
を備える撮像表示方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、本願の出願当初の特許請求の範囲の請求項7の記載は次のとおりである。
「【請求項7】
使用者が視認する方向を被写体方向として撮像するようにされる撮像手段と、上記使用者の目の前方に位置するように配置され、透明もしくは半透明であるスルー状態とを備えた上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態とを切換可能とする表示手段とを備えた撮像表示装置の撮像表示方法として、
周囲環境センサ、撮影対象センサ、画像解析部、位置情報取得部又は通信部の少なくとも2つ以上のうちから外界情報を取得する外界情報取得ステップと、
上記外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて、上記表示手段に対して上記スルー状態と上記画像表示状態の切換制御を行う制御ステップと、
を備える撮像表示方法。」

2 補正の適否
本件補正は、
ア 本件補正前の請求項7に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示手段」について、「上記使用者の目の前方に位置するように配置され」たものを「表示部」と限定し、以下、同様に、
イ 本件補正前の請求項7の「透明もしくは半透明であるスルー状態とを備えた上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態とを切換可能とする」との記載を、「透明もしくは半透明であるスルー状態と上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態とを切換可能とする」と補正し、
ウ 本件補正前の請求項7に「少なくとも2つ以上のうちから外界情報を取得する」とあったところを、「少なくとも2つ以上から外界情報を取得する」と限定し、
エ 本件補正前の請求項7に「上記外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて、上記表示手段に対して上記スルー状態と上記画像表示状態の切換制御を行う制御ステップ」とあったところを、「上記表示手段に対して、上記スルー状態と、上記撮像手段で撮像された画像について上記外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて複数の処理方法で処理して生成した複数の画像の分割表示を行う画像表示状態との切換制御を行う制御ステップ」と補正するものである。

上記ア、ウに係る補正は、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものであり、上記イに係る補正は、審判請求書「【請求の理由】」「3.本願発明が特許されるべき理由」「(b)補正の根拠の明示」に、「なお『・・・透明もしくは半透明であるスルー状態と上記撮像手段で撮像された・・・』の補正は誤記の訂正です。」と記載されているとおり、特許法第17条の2第4項第3号(誤記の訂正)に掲げる事項を目的とするものである。
そこで、上記エに係る補正の適否について検討すると、本件補正前の請求項7では、「スルー状態」と「画像表示状態」との「切換制御」が「外界情報」に基づいて行われていることが発明を特定するために必要な事項とされていたところ、本件補正後の請求項7では、「スルー状態」と「画像表示状態」との「切換制御」が何に基づいて行われるのかは、発明を特定するために必要な事項ではないものとなっている(なお、本件補正後の請求項7では「外界情報」に基づいて「複数の処理方法で処理して生成した複数の画像の分割表示を行う」ものとされている。)。そして、本願明細書の段落【0054】に「【0054】 図12は、システムコントローラ10の動作制御機能10bとしての制御処理を示している。
ステップF101は、システムコントローラ10が表示制御部14に対して表示部2をスルー状態とする制御処理を示している。例えば撮像表示装置1が電源オンとされた初期段階では、システムコントローラ10はステップF101で表示部2をスルー状態に制御する。
表示部2をスルー状態にしている期間は、システムコントローラ10はステップF102でモニタ表示状態の開始のトリガが発生したか否かを確認している。図2では示していないが、例えばユーザが操作できる操作子を設け、ユーザが所定の操作子の操作を行うことでモニタ表示状態を開始させるトリガの発生と判断すればよい。但し、後に例を述べるが、外界情報に応じてモニタ表示状態を開始させるトリガの発生と判断することもできる。」(下線は、当審で付与したものである。)と記載されているとおり、本件補正後の請求項7では、新たに、ユーザが所定の操作子の操作を行うことで「スルー状態」と「画像表示状態」との「切換制御」を行うことを実施例として含むように、請求項7の記載が拡張されていることがわかる。。
よって、上記エに係る補正は、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものではない。
また、上記エに係る補正は、特許法第17条の2第4項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とするものでもない。
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

仮に、上記エに係る補正が、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項7に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の記載に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1(1)」に記載したとおりのものである。

(2)特許法第29条第2項について
(2-1)引用例の記載事項
ア 平成26年4月2日付けの拒絶理由の[理由2]で引用された、本願の原出願の出願日前に頒布された刊行物である、特開平10-206787号公報(平成10年8月7日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は安全運転用の視覚補助装置に関するものであり、詳しくは運転時に運転者の頭部に装着されて使用される車両用のヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDという)装置に関するものである。」

「【0006】本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、車両の安全運転のため、車両の走行環境により自動的に密閉モードとシースルーモードとを切り換えて使用することができ、なおかつドライバに有用な情報を適宜に表示することができる車両用HMD装置を提供することを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するために、本発明に係る車両用HMD装置は走行環境検知手段と、表示情報生成手段と、画像表示手段と、画像表示切換手段とを有して構成されている。走行環境検知手段は車両の走行する外部環境等(例えば、周囲の明るさ、道路種別情報等)を検知するものであり、表示情報生成手段は外界光の入射を遮断した場合に表示する密閉モードの画像情報及び外界光の入射による自然画像と共に表示するシースルーモードの画像情報をそれぞれに生成する。
【0008】画像表示手段はドライバの頭部に装着され、ドライバの眼前において画像情報を画像表示する。画像表示切換手段は外界光の入射による自然画像と前記シースルーモードの画像情報により生成される画像とが重畳して表示された外視画像又は外界光の入射を遮断し、前記密閉モードの画像情報のみにより生成された撮像画像のいずれかを走行環境検知手段によって検知された結果に応じて選択し、画像表示手段に表示させる。すなわち、この画像表示切換手段は走行環境検知手段によって検知された結果に応じて自動的に前記密閉モードの表示とシースルーモードの表示を切り換え、密閉モードの表示が選択されたときには撮像画像を表示するように働き、シースルーモードの表示が選択されたときは外視画像を表示するように働く。
【0009】このような車両用HMD装置では、外部環境に応じて異なった画像情報が選択され表示される。例えば、夜間走行のような外界に光量が少なくドライバが見にくい場合には密閉モードの表示が選択され、赤外線カメラ等で撮影された外界像に環境条件により提供される各種情報の表示された画像が重畳されて撮像画像としてHMD装置に表示される。また、昼間の高速道路のような場合にはシースルーモードの表示が選択され、自然画像に環境条件により提供される各種情報(走行上の注意を促すような情報表示)を重ね合わせた画像が外視画像として表示される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明に係る車両用HMD装置1の実施の形態について図面を参照して説明する。図1はその外観図を示している。この車両用HMD装置1は図1(a)に示すように全体がメガネ形状をしており、人間の頭部に装着したときに顔の両眼部の前方に位置する二つの表示部2と、前記表示部2を支持すると共に、顔の両眼部前方に表示部2を固定するバンド部材3と、このバンド部材3が頭部から下方にずり落ちないように頭部頂点で支持するサポート部材4とから構成されている。なお、5は画像信号入出力のためのケーブルである。
【0011】表示部2は図1(b)に示すように画像表示部として液晶表示素子(以下、LCD素子という)21が人間の視野を覆うように両眼部前方に配置されており、さらに人間の視線方向前方であって前記LCD素子21の前面部に、前記LCD素子21とほぼ密着してLCDシャッタ22が配置されている。LCDシャッタ22は外部電圧により駆動され、外界光の入射及び遮蔽を制御して前記HMD装置1をシースルーモードと密閉モードとに切り換える働きをするものである。
【0012】図2は、本発明に係る車両用HMD装置の一実施例に係る構成図である。11は走行環境検知手段であり、この走行環境検知手段11は車両位置を検知するナビゲーションシステム111、現在の時間を検知する時計112及び濃霧の発生を検知する視界度検知装置113によって構成される。ナビゲーションシステム111からは走行道路の形状や種別(例えば一般道か高速道か)或いは現在位置等の情報が検知され、時計112からは周囲環境の明るさ等の情報が判断される。また、視界度検知装置112からはドライバの視界の鮮明度等(例えば濃霧の発生等)が感知される。
【0013】12は表示情報生成手段であり、この表示情報生成手段12はシースルーモードが選択されたときに表示部2に表示する画像情報を生成するシースルー型映像生成手段121と密閉モードが選択されたときに表示部2に表示する画像情報を生成する密閉用映像生成手段122とから構成される。シースルーモードでは表示部2を通して外界光が入射されるので、シースルー型映像生成手段121では自然画像に重畳して表示される走行補助表示等(例えば、走行路誘導表示等)が画像情報として生成される。密閉型映像生成手段122は表示部2が外界光を遮断するため、走行補助表示等のほかに外界像も画像情報として生成する必要がある。そのため、外界像を撮影する必要があり赤外線カメラ123と一体として構成される。なお、この赤外線カメラ123は車体幅方向に左右対称にステレオ配置されて車体に固定される。
【0014】13は表示用のLCD素子であり、このLCD素子13は画像表示手段を形成する。このLCD素子13は車両用HMD装置1の表示部2に配置され、ドライバの眼前に必要な画像を提供する。本発明のような密閉モードとシースルーモードの両方に兼用されるHMD装置1では、このLCD素子13は光透過材料により構成されており、ドライバはこのLCD素子13を通して走行視界を確保している。
【0015】14は画像表示切換手段であり、この画像表示切換手段14は表示切換手段141と切換制御信号生成手段142とドライバ操作スイッチ143とから構成されている。切換制御信号生成手段142は走行環境検知手段11によって検知された結果に応じてシースルーモードにするか密閉モードにするかの表示切換信号を生成する。表示切換手段141はこの表示切換信号に基づいて作動し、表示情報生成手段12によって生成された画像情報のうちシースルーモードの画像情報か或いは密閉モードの画像情報のいずれかを選択してこれを画像表示手段(LCD素子13)に表示させるように接続の切換を行う。この表示切換手段141は通常LCD素子13とほぼ密着して配置されたLCDシャッタ22等によって実現されうる。なお、ドライバ操作スイッチ143はドライバの意思を尊重して自動切換モードを停止するためのスイッチであり、ドライバがシースルーモードに設定する場合には、走行環境検知手段11の結果如何にかかわらず常にシースルーモードが選択される。
【0016】このように構成された一の実施例に係る車両用HMD装置1の作動を図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。ドライバは車両の運転を行おうとする場合にはこのHMD装置1を頭部に装着し、車体に設置されたドライバ操作スイッチ143をシースルーモード側かそれ以外の自動選択モード側のいずれかを選択するように操作する(図4、S-1)。 ドライバがシースルーモードを選択する場合にはナビゲーションシステム111、時計112、視界度検知装置113等の走行環境検知手段11の検知結果にかかわらず、シースルーモードに決定され(S-4)、ドライバーは車両用HMD装置1に表示される外界光による自然画像とシースルーモードの画像情報により生成される画像の重畳された外視画像を見ながら運転することになる。
【0017】図3のフローチャートが示すように、ドライバ操作スイッチ143がシースルーモードを選択することにより、切換制御信号生成手段142は表示切換手段141をシースルーモードに切り換える表示切換信号を送出する。表示切換手段141が表示切換信号を入力すると(M-1)、表示切換手段141はシースルー型映像生成手段121が生成する画像情報(走行補助表示等)をLCD素子13に送出して(M-2)、LCD素子13に画像を形成する。このため、ドライバは自然画像にLCD素子13の画像が重畳された外視画像を眼前にて見ることができる。
【0018】ドライバがドライバ操作スイッチ143を自動選択モード側に操作する場合には、走行環境検知手段11の検知結果が問題となる。図4のフローチャートが示すように、本実施例では走行時間帯が午前6時から午後6時までの昼間部、すなわち外部環境が明るい場合には常にシースルーモードによる運転モードを選択し(S-2)、それ以外の時間帯では走行道路が高速道路かその他一般道路かを判定して(S-3)、高速道路の場合にはドライバの遠近感を重視してシースルーモードを選択するが(S-4)、一般道路の場合には密閉モードによる運転モードを選択するように決定される(S-5)。
【0019】切換制御信号生成手段142が走行環境検知手段11の検知結果に基づいて密閉モードを選択すると、密閉モードに切り換える表示切換信号を表示切換手段141に送出する。表示切換手段141がこの表示切換信号を入力すると(M-1)、表示切換手段141は密閉型映像生成手段122が生成する画像情報(赤外線カメラによる外界像と走行補助表示等を組み合わせた撮像画像)をLCD素子13に送出して(M-3)、LCD素子13に画像を形成する。このため、ドライバは光量の少ない一般道を夜間に走行中でもあっても、明瞭な外部環境を表示した撮像画像を眼前にて見ながら車両の運転をすることができる。
【0020】なお、以上のフローチャートにおいては時間帯による明るさと道路種別情報を走行環境検知手段11による検知結果として利用し判断しているが、本発明はこれに限らず、濃霧の発生、道路の混雑情報等を判断条件に加えることもできる。また、外部の明るさは走行時間帯によることなく直接光量検出装置を用いて検知し判断してもよい。」

「【0022】
【発明の効果】以上のように、本発明による車両用HMD装置によれば、従来のモード固定型HMD装置と異なり、密閉モードとシースルーモードの長所を兼ね備えた表示装置を構成することができる。そして、検知される車両走行環境により自動的に密閉モードとシースルーモードとを切り換えて表示することが可能となる。その結果、夜間のような外界が見えにくい場合には密閉モードの長所を生かし赤外線画像等をHMD装置に表示し実際の環境より明るい画像をドライバに提供でき、昼間の高速道路ではドライバの遠近感を重視してシースルーモードに自動的に切り換えることができ、より安全運転に資する視覚補助装置とすることができる。さらに外界の自然画像や赤外線撮像画像に注意喚起を促す表示をも重ね合わせて表示することができるので、ドライバの安全運転に有効な各種情報を適切に提示することができる。」

イ 上記記載から、引用例1には、次の技術事項が記載されている。
a 段落【0006】、【0007】より、次の技術事項を読み取ることができる。
「車両用HMD装置は走行環境検知手段と、表示情報生成手段と、画像表示手段と、画像表示切換手段とを有して構成され、車両の走行環境により自動的に密閉モードとシースルーモードとを切り換えて使用することができ、なおかつドライバに有用な情報を適宜に表示することができる。」

b 段落【0012】より、次の技術事項を読み取ることができる。
「走行環境検知手段11は車両位置を検知するナビゲーションシステム111、現在の時間を検知する時計112及び濃霧の発生を検知する視界度検知装置113によって構成され、ナビゲーションシステム111からは走行道路の形状や種別(例えば一般道か高速道か)或いは現在位置等の情報が検知され、時計112からは周囲環境の明るさ等の情報が判断され、また、視界度検知装置112からはドライバの視界の鮮明度等(例えば濃霧の発生等)が感知される。」

c 段落【0013】より、次の技術事項を読み取ることができる。
「表示情報生成手段12はシースルーモードが選択されたときに表示部2に表示する画像情報を生成するシースルー型映像生成手段121と密閉モードが選択されたときに表示部2に表示する画像情報を生成する密閉用映像生成手段122とから構成され、シースルーモードでは表示部2を通して外界光が入射されるので、シースルー型映像生成手段121では自然画像に重畳して表示される走行補助表示等(例えば、走行路誘導表示等)が画像情報として生成され、密閉型映像生成手段122は表示部2が外界光を遮断するため、走行補助表示等のほかに外界像も画像情報として生成する必要があり、そのため、外界像を撮影する必要があり赤外線カメラ123と一体として構成される。」

d 段落【0014】より、次の技術事項を読み取ることができる。
「画像表示手段は、LCD素子13で形成され、このLCD素子13は車両用HMD装置1の表示部2に配置され、光透過材料により構成されている。」

e 段落【0011】より、次の技術事項を読み取ることができる。
「表示部2は、液晶表示素子(以下、LCD素子という)21が人間の視野を覆うように両眼部前方に配置されており、さらに人間の視線方向前方であって前記LCD素子21の前面部に、前記LCD素子21とほぼ密着してLCDシャッタ22が配置され、LCDシャッタ22は外部電圧により駆動され、外界光の入射及び遮蔽を制御して前記HMD装置1をシースルーモードと密閉モードとに切り換える働きをするものである。」

f 段落【0008】より、次の技術事項を読み取ることができる。
「画像表示切換手段は走行環境検知手段によって検知された結果に応じて自動的に前記密閉モードの表示とシースルーモードの表示を切り換え、密閉モードの表示が選択されたときには撮像画像を表示するように働き、シースルーモードの表示が選択されたときは外視画像を表示するように働く。」(【0008】)

g 段落【0016】より、次の技術事項を読み取ることができる。
「車両用HMD装置1の作動をフローチャートを用いて説明すると、ドライバは車両の運転を行おうとする場合にはこのHMD装置1を頭部に装着し、車体に設置されたドライバ操作スイッチ143をシースルーモード側かそれ以外の自動選択モード側のいずれかを選択するように操作する(S-1)。」(【0016】)

h 段落【0018】、【0019】より、次の技術事項を読み取ることができる。
「ドライバがドライバ操作スイッチ143を自動選択モード側に操作する場合には、走行時間帯が午前6時から午後6時までの昼間部、すなわち外部環境が明るい場合には常にシースルーモードによる運転モードを選択し(S-2)、それ以外の時間帯では走行道路が高速道路かその他一般道路かを判定して(S-3)、高速道路の場合にはドライバの遠近感を重視してシースルーモードを選択するが(S-4)、一般道路の場合には密閉モードによる運転モードを選択するように決定され(S-5)、切換制御信号生成手段142が走行環境検知手段11の検知結果に基づいて密閉モードを選択すると、密閉モードに切り換える表示切換信号を表示切換手段141に送出し、表示切換手段141がこの表示切換信号を入力すると(M-1)、表示切換手段141は密閉型映像生成手段122が生成する画像情報(赤外線カメラによる外界像と走行補助表示等を組み合わせた撮像画像)をLCD素子13に送出して(M-3)、LCD素子13に画像を形成し、このため、ドライバは光量の少ない一般道を夜間に走行中でもあっても、明瞭な外部環境を表示した撮像画像を眼前にて見ながら車両の運転をすることができる。」

i 段落【0020】より、次の技術事項を読み取ることができる。
「以上のフローチャートにおいては時間帯による明るさと道路種別情報を走行環境検知手段11による検知結果として利用し判断しているが、これに限らず、濃霧の発生、道路の混雑情報等を判断条件に加えることもでき、また、外部の明るさは走行時間帯によることなく直接光量検出装置を用いて検知し判断してもよい。」

ウ これらのことから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(なお、図2の「LCD素子13」と図3の「LCD素子21」とは技術的に等価なものと認められる。)。

「車両用HMD装置は走行環境検知手段と、表示情報生成手段と、画像表示手段と、画像表示切換手段とを有して構成され、車両の走行環境により自動的に密閉モードとシースルーモードとを切り換えて使用することができ、なおかつドライバに有用な情報を適宜に表示することができ、
走行環境検知手段11は車両位置を検知するナビゲーションシステム111、現在の時間を検知する時計112及び濃霧の発生を検知する視界度検知装置113によって構成され、ナビゲーションシステム111からは走行道路の形状や種別(例えば一般道か高速道か)或いは現在位置等の情報が検知され、時計112からは周囲環境の明るさ等の情報が判断され、また、視界度検知装置112からはドライバの視界の鮮明度等(例えば濃霧の発生等)が感知され、
表示情報生成手段12はシースルーモードが選択されたときに表示部2に表示する画像情報を生成するシースルー型映像生成手段121と密閉モードが選択されたときに表示部2に表示する画像情報を生成する密閉用映像生成手段122とから構成され、シースルーモードでは表示部2を通して外界光が入射されるので、シースルー型映像生成手段121では自然画像に重畳して表示される走行補助表示等(例えば、走行路誘導表示等)が画像情報として生成され、密閉型映像生成手段122は表示部2が外界光を遮断するため、走行補助表示等のほかに外界像も画像情報として生成する必要があり、そのため、外界像を撮影する必要があり赤外線カメラ123と一体として構成され、
画像表示手段は、LCD素子13で形成され、このLCD素子13は車両用HMD装置1の表示部2に配置され、光透過材料により構成され、
表示部2は、液晶表示素子(以下、LCD素子という)21が人間の視野を覆うように両眼部前方に配置されており、さらに人間の視線方向前方であって前記LCD素子21の前面部に、前記LCD素子21とほぼ密着してLCDシャッタ22が配置され、LCDシャッタ22は外部電圧により駆動され、外界光の入射及び遮蔽を制御して前記HMD装置1をシースルーモードと密閉モードとに切り換える働きをするものであり、
画像表示切換手段は走行環境検知手段によって検知された結果に応じて自動的に前記密閉モードの表示とシースルーモードの表示を切り換え、密閉モードの表示が選択されたときには撮像画像を表示するように働き、シースルーモードの表示が選択されたときは外視画像を表示するように働き、
車両用HMD装置1の作動をフローチャートを用いて説明すると、ドライバは車両の運転を行おうとする場合にはこのHMD装置1を頭部に装着し、車体に設置されたドライバ操作スイッチ143をシースルーモード側かそれ以外の自動選択モード側のいずれかを選択するように操作し(S-1)、
ドライバがドライバ操作スイッチ143を自動選択モード側に操作する場合には、走行時間帯が午前6時から午後6時までの昼間部、すなわち外部環境が明るい場合には常にシースルーモードによる運転モードを選択し(S-2)、それ以外の時間帯では走行道路が高速道路かその他一般道路かを判定して(S-3)、高速道路の場合にはドライバの遠近感を重視してシースルーモードを選択するが(S-4)、一般道路の場合には密閉モードによる運転モードを選択するように決定され(S-5)、切換制御信号生成手段142が走行環境検知手段11の検知結果に基づいて密閉モードを選択すると、密閉モードに切り換える表示切換信号を表示切換手段141に送出し、表示切換手段141がこの表示切換信号を入力すると(M-1)、表示切換手段141は密閉型映像生成手段122が生成する画像情報(赤外線カメラによる外界像と走行補助表示等を組み合わせた撮像画像)をLCD素子13に送出して(M-3)、LCD素子13に画像を形成し、このため、ドライバは光量の少ない一般道を夜間に走行中でもあっても、明瞭な外部環境を表示した撮像画像を眼前にて見ながら車両の運転をすることができ、
以上のフローチャートにおいては時間帯による明るさと道路種別情報を走行環境検知手段11による検知結果として利用し判断しているが、これに限らず、濃霧の発生、道路の混雑情報等を判断条件に加えることもでき、また、外部の明るさは走行時間帯によることなく直接光量検出装置を用いて検知し判断してもよい、
車両用HMD装置1の作動のフローチャート。」

(2-2)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「赤外線カメラ123」は、「ドライバ」が「光量の少ない一般道を夜間に走行中でもあっても、明瞭な外部環境を表示した撮像画像を眼前にて見ながら車両の運転をすることができ」るように 「外界像を撮影する」ためのものであるから、本件補正発明の「使用者が視認する方向を被写体方向として撮像するようにされる撮像手段」とは、「使用者の外界のある方向を被写体方向として撮像するようにされる撮像手段」の点で共通する。
(イ)引用発明の「車両用HMD装置1の表示部2」は、「光透過材料により構成され」た「LCD素子13」が「人間の視野を覆うように両眼部前方に配置されており、さらに人間の視線方向前方であって前記LCD素子21の前面部に、前記LCD素子21とほぼ密着してLCDシャッタ22が配置され、LCDシャッタ22は外部電圧により駆動され、外界光の入射及び遮蔽を制御して前記HMD装置1をシースルーモードと密閉モードとに切り換える働きをするものであ」り、「画像表示切換手段」によって「密閉モードの表示が選択されたときには撮像画像を表示するように働き、シースルーモードの表示が選択されたときは外視画像を表示するように働」くものである。
よって、引用発明の「車両用HMD装置1の表示部2」が、本件補正発明の「表示部が上記使用者の目の前方に位置するように配置され、透明もしくは半透明であるスルー状態と上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態とを切換可能とする表示手段」に相当する。
(ウ)引用発明の「車両用HMD装置1の作動のフローチャート」で示される方法が、次の相違点1、2は除いて、本件補正発明の「撮像表示装置の撮像表示方法」に相当する。
(エ)引用発明の「走行環境検知手段11」のうち、「車両位置を検知するナビゲーションシステム111」が本件補正発明の「位置情報取得部」に相当する。同様に、引用発明の「走行環境検知手段11」のうち、「ドライバの視界の鮮明度等(例えば濃霧の発生等)」を検知する「視界度検知装置112」、及び「外部の明るさ」を走行時間帯によることなく検知する「直接光量検出装置」が、本件補正発明の「周囲環境センサ」に相当する。
よって、引用発明における「走行環境検知手段11」である、「車両位置を検知するナビゲーションシステム111」、「視界度検知装置112」及び「直接光量検出装置」によって、「外部の明るさと道路種別情報」に「濃霧の発生、道路の混雑情報等を判断条件に加え」て、「走行環境」を検知するステップが、本件補正発明の「周囲環境センサ、撮影対象センサ、画像解析部、位置情報取得部又は通信部の少なくとも2つ以上から外界情報を取得する外界情報取得ステップ」に相当する。
(オ)引用発明において「ドライバがドライバ操作スイッチ143を自動選択モード側に操作する場合」に、「画像表示切換手段は走行環境検知手段によって検知された結果に応じて自動的に前記密閉モードの表示とシースルーモードの表示を切り換え、密閉モードの表示が選択されたときには」、「赤外線カメラ123」で撮影された「撮像画像を表示するように働き、シースルーモードの表示が選択されたときは外視画像を表示するように働」くステップと、本件補正発明の「上記表示手段に対して、上記スルー状態と、上記撮像手段で撮像された画像について上記外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて複数の処理方法で処理して生成した複数の画像の分割表示を行う画像表示状態との切換制御を行う制御ステップ」とは、「上記表示手段に対して、上記スルー状態と、上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態との切換制御を行う制御ステップ」の点で共通する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「使用者の外界のある方向を被写体方向として撮像するようにされる撮像手段と、表示部が上記使用者の目の前方に位置するように配置され、透明もしくは半透明であるスルー状態と上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態とを切換可能とする表示手段とを備えた撮像表示装置の撮像表示方法として、
周囲環境センサ、撮影対象センサ、画像解析部、位置情報取得部又は通信部の少なくとも2つ以上から外界情報を取得する外界情報取得ステップと、
上記表示手段に対して、上記スルー状態と、上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態との切換制御を行う制御ステップと、
を備える撮像表示方法。」

【相違点1】
被写体方向として撮像する方向について、本件補正発明では、撮像手段が「使用者が視認する方向を被写体方向として撮像するようにされる」のに対し、引用発明の「赤外線カメラ123」(本件補正発明の「撮像手段」に相当する。以下同じ。)は、「ドライバ」(使用者)が「光量の少ない一般道を夜間に走行中でもあっても、明瞭な外部環境を表示した撮像画像を眼前にて見ながら車両の運転をすることができ」るように 「外界像を撮影する」ものである点。

【相違点2】
画像表示状態における画像の表示について、本件補正発明では、「画像表示状態」において、「撮像手段で撮像された画像について外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて複数の処理方法で処理して生成した複数の画像の分割表示を行う」のに対し、引用発明では、「密閉モード」(画像表示状態)において「赤外線カメラ123」(撮像手段)で撮影された「撮像画像を表示するように働」くものの、本件補正発明のように「複数の画像の分割表示を行う」ことは示されていない点。

(2-3)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
本件補正発明において、「使用者が視認する方向」とは、本願明細書段落【0015】に「ユーザが視認する方向、つまりユーザの前方」と記載されているとおり、「ユーザの前方」を意味するのと認められる。
そして、眼鏡型の装置において、使用者が視認する方向(つまり、ユーザの前方)を被写体方向として撮像するカメラを搭載することは、例えば特開2003-287708号公報(段落【0018】、図1)、特開平7-288754号公報(段落【0048】、図1)に記載されているとおり、周知の事項であって、しかも引用発明の「車両用HMD装置1」は、「全体がメガネ形状をして」(引用例1の段落【0010】)いるのであるから、引用発明において、該周知の事項を適用し、「赤外線カメラ123」(撮像手段)が、「ドライバ」(使用者)が視認する方向(つまり、ユーザの前方)を被写体方向として撮像するようにし、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
「拡大画像と縮小画像とを同時に分割表示し、拡大された画像が拡大前の画像全体のどの部分であるかを容易に判断できるようにすること」は、周知の事項である(例えば特開昭64-22181号公報(「本発明は・・・入力画像信号の一部を拡大(ズームアツプ)すると同時に、入力画像信号を縮小することによりその全体画像を拡大画像の一部に挿入して合成画像信号を表示する構成とすることにより、達成される。」(第2頁左下欄第3?13行、第2図)、特開平1-178234号公報(「本発明では、・・・画像縮小手段による縮小画像が、画像拡大手段による拡大画像と同時に表示される。」(第3頁左上欄第19行?同頁右上欄第1行)、「この拡大観察モードにおけるモニタの表示画像の例を第5図に示す。・・・撮像した画像の所望の一部分が所定の拡大倍率で表示され、モニタ7の画面上の余白部の小さな表示枠内(以下、子画面と記す。)42には、固体撮像素子26で撮像した画像の全部もしくは大部分が、縮小されて表示されるようになっている。」(第4頁右下欄第5?13行)、「少なくとも画像拡大時には、この拡大画像と共に、縮小画像が同時に表示されるので、検査や処置に十分な視野を常に確保することができるという効果がある。」(第8頁右下欄第4?8行)、第5図)。
そして、引用発明においても、「ドライバ」が「明瞭な外部環境を表示した撮像画像を眼前にて見ながら車両の運転をする」際に、撮像画像の拡大画像と縮小画像とを同時に分割表示することが好ましい走行環境があることは、当業者が容易に想定しうることであるから、引用発明に上記周知の事項を適用し、引用発明において、「赤外線カメラ123」(撮像手段)で撮影された「撮像画像を表示する」際、走行環境に応じて撮像画像の拡大画像と縮小画像とを同時に分割表示する(複数の処理方法で処理して生成した複数の画像の分割表示を行う)ことは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明において上記「撮像画像の拡大画像と縮小画像とを同時に分割表示する」ことを、「走行環境検知手段11」である、「車両位置を検知するナビゲーションシステム111」、「視界度検知装置112」及び「直接光量検出装置」によって検知された2つ以上の走行環境に基づいて(外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて)行うようにし、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることも、当業者が必要に応じ適宜なし得たことである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)特許法第36条第6項第2号について
ア 本願明細書には、「複数の画像の分割表示」について、次のように記載されている。
(ア)段落【0020】に「【0020】 また撮像表示装置1においてユーザに対して表示を行う構成としては、表示部2、表示画像処理部12、表示駆動部13,表示制御部14が設けられる。
撮像部3で撮像され、撮像信号処理部15で処理された撮像信号は表示画像処理部12に供給される。表示画像処理部12は、例えばいわゆるビデオプロセッサとされ、供給された撮像信号に対して各種表示処理を実行できる部位とされる。例えば撮像信号の輝度レベル調整、色補正、コントラスト調整、シャープネス(輪郭強調)調整などを行うことができる。また表示画像処理部12は、撮像信号の一部を拡大した拡大画像の生成、或いは縮小画像の生成、画像内の一部をハイライト表示(強調表示)させる画像処理、撮像画像の分割表示のための画像の分離や合成、キャラクタ画像やイメージ画像の生成及び生成した画像を撮像画像に合成する処理なども行うことができる。つまり撮像信号としてのデジタル映像信号に対しての各種処理を行うことができる。」と記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下、同様。)。
(イ)段落【0037】、【0038】に「【0037】 図8(a)は、表示部2に通常撮像画像が表示されている場合、もしくは表示部2がスルー状態とされている場合を示している。
システムコントローラ10が、撮像制御部11(撮像部3,撮像信号処理部15)に対して紫外線撮像感度の上昇を指示することで、図8(b)のように紫外光成分を表した撮像画像が表示部2に表示される。
【0038】
図9(a)は、表示部2がスルー状態とされている場合を示している。
システムコントローラ10が表示制御部14(表示画像処理部12、表示駆動部13)に対して分割表示及び分割画面での拡大表示を指示することにより、図9(b)のような画像を表示部2に表示させることができる。即ち表示部2の画面上を領域AR1、AR2に分割し、領域AR1はスルー状態又は通常画像表示とし、領域AR2には拡大画像とした例である。
また図9(c)は他の分割表示の例を示しており、この場合は表示部2の画面上を領域AR1、AR2、AR3,AR4に分割するとともに、各領域には、所定時間間隔で撮像画像の1フレームを抽出して表示させている。例えば表示画像処理部12に、撮像画像信号において0.5秒間隔で1フレームを抽出させ、抽出したフレームの画像を領域AR1→AR2→AR3→AR4→AR1→AR2・・・と順に表示させていく。これは、いわゆるストロボ表示と呼ばれるような画像を表示部2で分割表示により実行した例である。」と記載されている。
(ウ)段落【0041】に「【0041】 ここまで各種の表示例を示したが、これらは一例にすぎない。本例においては、撮像部3,撮像信号処理部15、表示画像処理部12,表示駆動部13の各処理や動作を制御することで、多様な表示形態が実現される。
例えば、望遠表示、広角表示、望遠から広角までの間のズームインもしくはズームアウト表示、拡大表示、縮小表示、フレームレートの可変表示(高フレームレートでの撮像画像や低フレームレートでの撮像画像の表示)、高輝度表示、低輝度表示、コントラスト可変表示、シャープネス可変表示、撮像感度上昇状態の表示、赤外線撮像感度上昇状態の表示、紫外線撮像感度上昇状態の表示、特定波長帯域をカットした画像の表示、モザイク画像/輝度反転画像/ソフトフォーカス/画像内の一部の強調表示/画像全体の色の雰囲気の可変などの画像エフェクト表示、スロー表示、コマ送り表示、これらの各種の撮像画像表示を組み合わせた分割表示、スルー状態と撮像画像を組み合わせた分割表示、ストロボ表示、撮像画像の1フレームの表示を継続させる静止画表示など、非常に多様な表示態様が想定される。」と記載されている。

イ 次に、本願明細書には、「複数の系統で或る外界情報について検知判別」することについて、段落【0052】に「【0052】 以上、周囲環境センサ19、撮像対象センサ20、GPS受信部21、日時計数部22、画像解析部17、通信部26のそれぞれで取得できる情報の例を挙げたが、これらのうちの複数の系統で或る外界情報について検知判別してもよい。
例えば周囲環境センサ19で得られた湿度等の情報と、通信部26で受信された天候情報を組み合わせ、より正確に現在の天候を判別することもできる。
またGPS受信部21と通信部26の動作により取得した現在場所に関する情報と、画像解析部17で得られる情報により、現在位置や撮像対象の状況をより正確に判別することもできる。」と記載されている。

ウ 次に、本願明細書には、「時点の外界状況に応じた態様の表示を表示部2において実行させる」ことについて、段落【0056】、【0057】に「【0056】 通常撮像画像、つまりスルー状態で見える光景と同様の撮像画像を表示部2に表示させている期間は、システムコントローラ10は、ステップF104で画像制御のトリガが発生したか否かを監視し、またステップF105でモニタ表示の終了のトリガが発生したか否かを監視する。
ステップF104での画像制御のトリガの発生とは、外界状況判定機能10aによって判定された外界状況(周囲や被写体の状況、現在日時、現在位置の状況等)により、モニタ表示の表示画像態様の変更を行うとシステムコントローラ10自身が判断することを意味している。
またステップF105でのモニタ表示の終了のトリガの発生とは、例えばユーザが所定の操作子によりモニタ表示状態を終了させる操作を行った場合とすればよいが、ステップF102のモニタ表示開始のトリガと同様、このモニタ表示の終了のトリガも、検知された外界情報に応じてトリガ発生と判断する場合もある。
【0057】
画像制御のトリガ発生と判断した場合は、システムコントローラ10は処理をステップF104からF106に進め、撮像画像の表示動作に関しての制御を行う。つまり撮像制御部11、表示制御部14に指示し、その時点の外界状況に応じた態様の表示を表示部2において実行させる。」と記載されている。

エ しかし、これらの記載からは、「ア」より、複数の処理方法で処理された複数の画像を分割表示すること、が読み取れ、「イ」より、周囲環境センサ19、撮像対象センサ20、GPS受信部21、日時計数部22、画像解析部17、通信部26のそれぞれで取得できる情報の複数の系統で或る外界情報について検知判別し、正確に判別すること、が読み取れ、「ウ」より、外界状況(周囲や被写体の状況、現在日時、現在位置の状況等)により、モニタ表示の表示画像態様の変更を行うこと、が読み取れるだけで、本願明細書におけるこれらの記載を斟酌しても、本件補正後の請求項7に記載された「上記撮像手段で撮像された画像について上記外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて複数の処理方法で処理して生成した複数の画像の分割表示を行う」とは、
(ア)「2つ以上の外界情報」に基づいて「複数の処理方法」を選択し、該選択された「複数の処理方法」で処理して生成した複数の画像の分割表示を行うことを意味しているのか、
(イ)「2つ以上の外界情報」に基づいて、ある「処理方法」を選択し、該選択された、ある「処理方法」で処理して画像を生成し、さらに「2つ以上の外界情報」に基づいて他の「処理方法」を選択し、該選択された他の「処理方法」で処理して画像を生成し、これらの生成された複数の画像の分割表示を行うことを意味しているのか、
(ウ)「2つ以上の外界情報に基づいて」、「複数の画像の分割表示を行う」ことを意味し、複数の処理方法は、「2つ以上の外界情報」に基づかなくても良いことを意味しているのか、
(エ)あるいはこれら以外の技術事項を意味しているのか、
明確ではない。
よって、本件補正後の請求項7の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願の特許請求の範囲の請求項7の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本願の請求項7に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)まとめ
以上のとおり、請求項7に係る本件補正は、特許法第17条の2第4項第1?4号に掲げる事項を目的とするものではなく、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮に、請求項7に係る本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)及び第3号(誤記の訂正)に掲げる事項を目的とするものであったとしても、本件補正後の請求項7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、また、本件補正後の請求項7の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件補正後の請求項7に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成26年10月24日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1(2)」に記載したとおりのものである。再掲すれば、次のとおり。
「使用者が視認する方向を被写体方向として撮像するようにされる撮像手段と、上記使用者の目の前方に位置するように配置され、透明もしくは半透明であるスルー状態とを備えた上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態とを切換可能とする表示手段とを備えた撮像表示装置の撮像表示方法として、
周囲環境センサ、撮影対象センサ、画像解析部、位置情報取得部又は通信部の少なくとも2つ以上のうちから外界情報を取得する外界情報取得ステップと、
上記外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて、上記表示手段に対して上記スルー状態と上記画像表示状態の切換制御を行う制御ステップと、
を備える撮像表示方法。」
(なお、審判請求書「【請求の理由】」「3.本願発明が特許されるべき理由」「(b)補正の根拠の明示」に、「なお『・・・透明もしくは半透明であるスルー状態と上記撮像手段で撮像された・・・』の補正は誤記の訂正です。」と記載されているとおり、「透明もしくは半透明であるスルー状態とを備えた上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態」との記載は「透明もしくは半透明であるスルー状態と上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態」との誤記である。よって、以下では、「透明もしくは半透明であるスルー状態とを備えた上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態」との記載は「透明もしくは半透明であるスルー状態と上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態」と読み替える。)

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由とされた、平成26年4月2日付けの拒絶理由の[理由2]の概要は、次のとおりのものである。
「[理由2]
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
【請求項1?7について;引用文献1?6】
(備考)
<請求項1,7について;引用文献1>
引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(中略)
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平10-206787号公報
(以下、省略)」

3 引用刊行物及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1(引用文献1)の記載事項、及び引用例1に記載された発明(引用発明)は、前記「第2[理由]2(2-1)」に記載したとおりである。

4 対比
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「赤外線カメラ123」は、「ドライバ」が「光量の少ない一般道を夜間に走行中でもあっても、明瞭な外部環境を表示した撮像画像を眼前にて見ながら車両の運転をすることができ」るように 「外界像を撮影する」ためのものであるから、本願発明の「使用者が視認する方向を被写体方向として撮像するようにされる撮像手段」とは、「使用者の外界のある方向を被写体方向として撮像するようにされる撮像手段」の点で共通する。
(イ)引用発明の「車両用HMD装置1の表示部2」は、「光透過材料により構成され」た「LCD素子13」が「人間の視野を覆うように両眼部前方に配置されており、さらに人間の視線方向前方であって前記LCD素子21の前面部に、前記LCD素子21とほぼ密着してLCDシャッタ22が配置され、LCDシャッタ22は外部電圧により駆動され、外界光の入射及び遮蔽を制御して前記HMD装置1をシースルーモードと密閉モードとに切り換える働きをするものであ」り、「画像表示切換手段」によって「密閉モードの表示が選択されたときには撮像画像を表示するように働き、シースルーモードの表示が選択されたときは外視画像を表示するように働」くものである。
よって、引用発明の「車両用HMD装置1の表示部2」が、本願発明の「上記使用者の目の前方に位置するように配置され、透明もしくは半透明であるスルー状態と上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態とを切換可能とする表示手段」に相当する。
(ウ)引用発明の「車両用HMD装置1の作動のフローチャート」で示される方法が、次の相違点1は除いて、本願発明の「撮像表示装置の撮像表示方法」に相当する。
(エ)引用発明の「走行環境検知手段11」のうち、「車両位置を検知するナビゲーションシステム111」が本願発明の「位置情報取得部」に相当する。同様に、引用発明の「走行環境検知手段11」のうち、「ドライバの視界の鮮明度等(例えば濃霧の発生等)」を検知する「視界度検知装置112」、及び「外部の明るさ」を走行時間帯によることなく検知する「直接光量検出装置」が、本願発明の「周囲環境センサ」に相当する。
よって、引用発明における「走行環境検知手段11」である、「車両位置を検知するナビゲーションシステム111」、「視界度検知装置112」及び「直接光量検出装置」によって、「外部の明るさと道路種別情報」に「濃霧の発生、道路の混雑情報等を判断条件に加え」て、「走行環境」を検知するステップが、本願発明の「周囲環境センサ、撮影対象センサ、画像解析部、位置情報取得部又は通信部の少なくとも2つ以上から外界情報を取得する外界情報取得ステップ」に相当する。
(オ)引用発明において「ドライバがドライバ操作スイッチ143を自動選択モード側に操作する場合」に、「走行時間帯が午前6時から午後6時までの昼間部、すなわち外部環境が明るい場合には常にシースルーモードによる運転モードを選択し(S-2)、それ以外の時間帯では走行道路が高速道路かその他一般道路かを判定して(S-3)、高速道路の場合にはドライバの遠近感を重視してシースルーモードを選択するが(S-4)、一般道路の場合には密閉モードによる運転モードを選択するように決定され(S-5)」、「濃霧の発生、道路の混雑情報等を判断条件に加えることもでき、また、外部の明るさは走行時間帯によることなく直接光量検出装置を用いて検知し判断してもよい」ことは、言い換えると、「外部の明るさ」を「直接光量検出装置を用いて検知し判断」し、次いで「車両位置を検知するナビゲーションシステム111」により、「走行道路が高速道路かその他一般道路かを判定」し、さらに「濃霧の発生」を「視界度検知装置112」によって検知して判断条件に加え、これらの検知、判定に基づいて「シースルーモード」と「密閉モード」とを選択することであるから、本願発明の「上記外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて、上記表示手段に対して上記スルー状態と上記画像表示状態の切換制御を行う制御ステップ」に相当する。

イ 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「使用者の外界のある方向を被写体方向として撮像するようにされる撮像手段と、上記使用者の目の前方に位置するように配置され、透明もしくは半透明であるスルー状態とを備えた上記撮像手段で撮像された画像の表示を行う画像表示状態とを切換可能とする表示手段とを備えた撮像表示装置の撮像表示方法として、
周囲環境センサ、撮影対象センサ、画像解析部、位置情報取得部又は通信部の少なくとも2つ以上のうちから外界情報を取得する外界情報取得ステップと、
上記外界情報取得ステップで取得された2つ以上の外界情報に基づいて、上記表示手段に対して上記スルー状態と上記画像表示状態の切換制御を行う制御ステップと、
を備える撮像表示方法。」

【相違点1】
被写体方向として撮像する方向について、本願発明では、撮像手段が「使用者が視認する方向を被写体方向として撮像するようにされる」のに対し、引用発明の「赤外線カメラ123」(本願発明の「撮像手段」に相当する。以下同じ。)は、「ドライバ」(使用者)が「光量の少ない一般道を夜間に走行中でもあっても、明瞭な外部環境を表示した撮像画像を眼前にて見ながら車両の運転をすることができ」るように 「外界像を撮影する」ものである点。

5 判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
本願発明において、「使用者が視認する方向」とは、本願明細書段落【0015】に「ユーザが視認する方向、つまりユーザの前方」と記載されているとおり、「ユーザの前方」を意味するのと認められる。
そして、眼鏡型の装置において、使用者が視認する方向(つまり、ユーザの前方)を被写体方向として撮像するカメラを搭載することは、例えば特開2003-287708号公報(段落【0018】、図1)、特開平7-288754号公報(段落【0048】、図1)に記載されているとおり、周知の事項であって、しかも引用発明の「車両用HMD装置1」は、「全体がメガネ形状をして」(引用例1の段落【0010】)いるのであるから、引用発明において、該周知の事項を適用し、「赤外線カメラ123」(撮像手段)が、「ドライバ」(使用者)が視認する方向(つまり、ユーザの前方)を被写体方向として撮像するようにし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-15 
結審通知日 2015-06-16 
審決日 2015-07-01 
出願番号 特願2013-81983(P2013-81983)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 537- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 清水 稔
関根 洋之
発明の名称 撮像表示装置、撮像表示方法  
代理人 脇 篤夫  
代理人 中川 裕人  
代理人 岩田 雅信  
代理人 鈴木 伸夫  

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