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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1304608
審判番号 不服2014-24378  
総通号数 190 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-28 
確定日 2015-08-20 
事件の表示 特願2014- 48465「ゲームプログラム、ゲーム処理方法、および、情報処理装置」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成26年3月12日の出願であって、特許法第30条第2項新規性喪失の例外適用の申請を伴うものであり、同年7月22日付けで手続補正がなされ、同年8月26日付けで拒絶の査定がなされ、同年11月28日に拒絶査定に対する審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされた。

第2 平成26年11月28日の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否について

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前の請求項1、請求項15、及び、請求項16(すなわち、平成26年7月22日付けで手続補正された下記(1)のもの)を、下記(2)に示す請求項1、請求項15、及び、請求項16へと補正することを含むものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、請求項15、及び、請求項16
「【請求項1】
ゲーム媒体を用いたゲームの進行を処理するゲームプログラムであって、
コンピュータに、
前記ゲームに参加可能な対象ユーザが用いる対象ユーザ端末から、前記ゲーム媒体の動作に関する動作指示を受け付ける受付機能と、
前記ゲームの進行を把握可能なゲーム画面に関する画面情報を、前記受付機能によって受け付けられた動作指示に応じて生成する生成機能と、
前記ゲームに参加不可能な非対象ユーザが前記ゲームの進行を把握可能となるように、前記生成機能によって生成された画面情報を、当該非対象ユーザが用いる非対象ユーザ端末に出力する出力機能とを実現させ、
前記生成機能は、前記動作指示によって生じた前記ゲームの進行を、一覧可能に提示する進行画面に関する進行情報をさらに生成し、
前記出力機能は、前記生成機能によって生成された進行情報を、前記非対象ユーザ端末にさらに出力し、
前記生成機能は、前記非対象ユーザが前記ゲームの進行を体感可能となる所定のエフェクトとして、前記進行画面の上部から下部に向かう方向に前記進行情報が移動し、古い進行情報が新しい進行情報に順次置き換えられて表示されるエフェクトを伴うように、前記進行情報を生成することを特徴とするゲームプログラム。

【請求項15】
ゲーム媒体を用いたゲームの進行を処理するゲーム処理方法であって、
前記ゲームに参加可能な対象ユーザが用いる対象ユーザ端末から、前記ゲーム媒体の動作に関する動作指示を受け付ける受付ステップと、
前記ゲームの進行を把握可能なゲーム画面に関する画面情報を、前記受付ステップにおいて受け付けた動作指示に応じて生成する生成ステップと、
前記ゲームに参加不可能な非対象ユーザが前記ゲームの進行を把握可能となるように、前記生成ステップにおいて生成した画面情報を、当該非対象ユーザが用いる非対象ユーザ端末に出力する出力ステップとを含み、
前記生成ステップにおいては、前記動作指示によって生じた前記ゲームの進行を、一覧可能に提示する進行画面に関する進行情報をさらに生成し、
前記出力ステップにおいては、前記生成ステップにおいて生成した進行情報を、前記非対象ユーザ端末にさらに出力し、
前記生成ステップにおいては、前記非対象ユーザが前記ゲームの進行を体感可能となる所定のエフェクトとして、前記進行画面の上部から下部に向かう方向に前記進行情報が移動し、古い進行情報が新しい進行情報に順次置き換えられて表示されるエフェクトを伴うように、前記進行情報を生成することを特徴とするゲーム処理方法。

【請求項16】
ゲーム媒体を用いたゲームの進行を処理する情報処理装置であって、
前記ゲームに参加可能な対象ユーザが用いる対象ユーザ端末から、前記ゲーム媒体の動作に関する動作指示を受け付ける受付部と、
前記ゲームの進行を把握可能なゲーム画面に関する画面情報を、前記受付部によって受け付けられた動作指示に応じて生成する生成部と、
前記ゲームに参加不可能な非対象ユーザが前記ゲームの進行を把握可能となるように、前記生成部によって生成された画面情報を、当該非対象ユーザが用いる非対象ユーザ端末に出力する出力部とを備え、
前記生成部は、前記動作指示によって生じた前記ゲームの進行を、一覧可能に提示する進行画面に関する進行情報をさらに生成し、
前記出力部は、前記生成部によって生成された進行情報を、前記非対象ユーザ端末にさらに出力し、
前記生成部は、前記非対象ユーザが前記ゲームの進行を体感可能となる所定のエフェクトとして、前記進行画面の上部から下部に向かう方向に前記進行情報が移動し、古い進行情報が新しい進行情報に順次置き換えられて表示されるエフェクトを伴うように、前記進行情報を生成することを特徴とする情報処理装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1、請求項15、及び、請求項16(下線は審決で付した。以下、同様。)
「【請求項1】
ゲーム媒体を用いたゲームの進行を処理するゲームプログラムであって、
コンピュータに、
前記ゲームに参加可能な複数の対象ユーザが用いる対象ユーザ端末から、前記ゲーム媒体の動作に関する動作指示を受け付ける受付機能と、
前記ゲームの進行を把握可能なゲーム画面に関する画面情報を、前記受付機能によって受け付けられた動作指示に応じて生成する生成機能と、
前記ゲームに参加不可能な非対象ユーザが前記ゲームの進行を把握可能となるように、前記生成機能によって生成された画面情報を、当該非対象ユーザが用いる非対象ユーザ端末に出力する出力機能とを実現させ、
前記生成機能は、前記動作指示によって生じた前記ゲームの進行のうち、直近に生じた当該ゲームの進行から所定の数の進行のみを、一覧可能に提示する進行画面に関する進行情報をさらに生成し、
前記出力機能は、前記生成機能によって生成された進行情報を、前記非対象ユーザ端末にさらに出力し、
前記生成機能は、前記非対象ユーザが前記ゲームの進行を体感可能となる所定のエフェクトとして、前記進行画面の上部から下部に向かう方向に前記進行情報が移動し、古い進行情報が新しい進行情報に順次置き換えられて表示されるエフェクトを伴うように、前記進行情報を生成することを特徴とするゲームプログラム。

【請求項15】
ゲーム媒体を用いたゲームの進行を処理するゲーム処理方法であって、
前記ゲームに参加可能な複数の対象ユーザが用いる対象ユーザ端末から、前記ゲーム媒体の動作に関する動作指示を受け付ける受付ステップと、
前記ゲームの進行を把握可能なゲーム画面に関する画面情報を、前記受付ステップにおいて受け付けた動作指示に応じて生成する生成ステップと、
前記ゲームに参加不可能な非対象ユーザが前記ゲームの進行を把握可能となるように、前記生成ステップにおいて生成した画面情報を、当該非対象ユーザが用いる非対象ユーザ端末に出力する出力ステップとを含み、
前記生成ステップにおいては、前記動作指示によって生じた前記ゲームの進行のうち、直近に生じた当該ゲームの進行から所定の数の進行のみを、一覧可能に提示する進行画面に関する進行情報をさらに生成し、
前記出力ステップにおいては、前記生成ステップにおいて生成した進行情報を、前記非対象ユーザ端末にさらに出力し、
前記生成ステップにおいては、前記非対象ユーザが前記ゲームの進行を体感可能となる所定のエフェクトとして、前記進行画面の上部から下部に向かう方向に前記進行情報が移動し、古い進行情報が新しい進行情報に順次置き換えられて表示されるエフェクトを伴うように、前記進行情報を生成することを特徴とするゲーム処理方法。

【請求項16】
ゲーム媒体を用いたゲームの進行を処理する情報処理装置であって、
前記ゲームに参加可能な複数の対象ユーザが用いる対象ユーザ端末から、前記ゲーム媒体の動作に関する動作指示を受け付ける受付部と、
前記ゲームの進行を把握可能なゲーム画面に関する画面情報を、前記受付部によって受け付けられた動作指示に応じて生成する生成部と、
前記ゲームに参加不可能な非対象ユーザが前記ゲームの進行を把握可能となるように、前記生成部によって生成された画面情報を、当該非対象ユーザが用いる非対象ユーザ端末に出力する出力部とを備え、
前記生成部は、前記動作指示によって生じた前記ゲームの進行のうち、直近に生じた当該ゲームの進行から所定の数の進行のみを、一覧可能に提示する進行画面に関する進行情報をさらに生成し、
前記出力部は、前記生成部によって生成された進行情報を、前記非対象ユーザ端末にさらに出力し、
前記生成部は、前記非対象ユーザが前記ゲームの進行を体感可能となる所定のエフェクトとして、前記進行画面の上部から下部に向かう方向に前記進行情報が移動し、古い進行情報が新しい進行情報に順次置き換えられて表示されるエフェクトを伴うように、前記進行情報を生成することを特徴とする情報処理装置。」

2 補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1、請求項15、及び、請求項16に係る発明の「ゲームに参加可能な対象ユーザ」に関して、「複数の」と限定するとともに、「進行画面」に関して、「ゲームの進行のうち、直近に生じた当該ゲームの進行から所定の数の進行のみ」を一覧可能に提示すると限定するものであり、いずれも、補正前の請求項1、請求項15、及び、請求項16に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成26年11月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記1 (2)の【請求項1】に記載したとおりのものである。

(2)引用刊行物
本願の出願日前に頒布された特許第5413934号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】
通信回線を介して、所定のチャットへの参加をユーザの端末から受け付ける参加受付ステップと、
チャットへの参加を受け付けたチャット参加ユーザの端末から、チャットメッセージ及び表示切り替え指示を受け付けるユーザ指示受付ステップと、
受け付けたチャットメッセージをチャット参加ユーザの端末のチャット画面上に表示させる画面表示制御ステップと、
チャット参加ユーザの端末から、当該チャット上にて実行可能な複数のチャット内ゲームのうちの1のチャット内ゲームの選択、および、当該チャット内ゲームの開始要求を受け付けて、当該チャットに参加している他のチャット参加ユーザに対して、開始要求にかかるゲームへの参加希望を問い合わせて、チャット内ゲームを開始させるゲーム制御ステップと、
ゲーム開始後において、チャット内ゲームの進行を管理するゲーム管理ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記参加受付ステップは、前記ゲーム制御ステップにおける参加希望の問い合わせに対して参加する旨の応答をしたチャット参加ユーザをゲーム参加ユーザとして参加を受け付け、
前記ユーザ指示受付ステップは、ゲーム参加ユーザの端末からのチャット内ゲームの進行に関する指示を受け付け、
前記画面表示制御ステップは、前記チャット画面の一部に前記チャット内ゲームの状況を示すゲーム状況表示領域を表示させ、前記ユーザ指示受付ステップにより前記表示切り替え指示を受け付けると、当該ゲーム状況表示領域の表示と非表示とを切り替え、
前記画面表示制御ステップは、前記ユーザ指示受付ステップによりゲーム参加ユーザから受け付けた前記チャット内ゲームの進行に関する指示に対応する画像を前記チャット参加ユーザの端末の前記チャット画面に表示させることを特徴とするプログラム。」

イ 「【0032】
本発明のチャットシステムにおいて実行されるゲーム(以下、チャット内ゲームともいう。)としては、トランプや麻雀などのテーブルゲームが好適である。このようなテーブルゲームは、チャット画面において、ゲームの進行状況を示す表示(トランプカードや麻雀牌の切り札、牌の表示)とチャットメッセージとを共存させることができるので、相性が良いからである。このような態様によって、ゲーム参加者、ゲームに参加していないがチャットに参加しているメンバ(以下、ゲーム観戦者ともいう)に対して、ゲームの進行状況をタイムリーに提供することできる。以下、本発明を「ポーカー」に適用した例を用いて説明する。」

ウ 「【0096】
ゲーム状況表示欄360には、過去にゲーム盤上に出されたカードと、「ポーカー」に参加しているゲーム参加者の情報が表示される。第4の画面表示例240においては、ゲーム参加者として、ユーザ「AAAAAA」とユーザ「BBBBBB」とユーザ「CCCCCC」とユーザ「DDDDDD」とユーザ「EEEEEE」とユーザ「FFFFFF」が存在し、また、ゲーム観戦者としてユーザ「GGGGGG」が存在しているものとしている。ここでは、ゲーム参加者ごとに、ユーザ名、チャット画像、スコア、保有枚数、ならびに、当該ゲーム参加者により選択された行為の名称(「コール」or「レイズ」or「フォールド」)が表示されている。」

エ 「【0098】
なお、チャット内ゲームに参加していないゲーム観戦者のユーザ端末のユーザインタフェース56には、ゲーム状況表示欄360において、ゲーム参加者のすべてのカードが見えていてもよい。任意のゲーム参加者によって、カードの表示を許可すべきゲーム観戦者が選択されてもよい。この選択は、任意のゲーム参加者のユーザ端末のユーザインタフェース56を介して受け付けられて、サーバ装置10のゲーム制御部24によって受理され、画面表示制御部22がカード表示すべきゲーム観戦者のユーザ端末のチャット画面表示を制御すればよい。」

オ 「【0099】
ここで、チャット画面330には、ゲーム参加者であるユーザ「BBBBBB」とユーザ「CCCCCC」によってゲーム盤上に出されたカード画像361が表示されている。あわせて、ゲーム観戦者であるユーザ「GGGGGG」によるコメントも表示されている。このように、チャット画面330上にゲーム盤上に出されたカード画像361を表示させることによって、視覚的に臨場感を高め、もって、ゲームの興趣性を高めている。加えて、このチャット画像は、ゲーム参加者だけではなく、ゲーム観戦者のユーザ端末のユーザインタフェース56にも表示させて、ゲーム観戦者からのチャットメッセージをリアルタイムでチャット配信することによって、ゲームの興趣性をさらに高めている。」

カ 「【0104】
そうすると、サーバ装置10は、ゲーム参加者としてユーザ端末1?3とし、また、ユーザ端末4をゲーム観戦者として、当該ゲームを開始する。ここで、ユーザ端末1は、ゲームにおける自らのターンにおいて、ゲーム盤上に出すべき持ち札を選択するなどの「ゲームの進行に関する指示」を送信する(S22)。たとえば、トランプゲームにおいて、「ダイヤのエース」が選択されたとする。
【0105】
ここで、サーバ装置10は、ゲーム参加者であるユーザ端末2とユーザ端末3、ならびに、ゲーム観戦者であるユーザ端末4のチャット画面上に、ユーザ端末1により「ダイヤのエース」が出された旨の表示をさせる(S24?S28)。ここで、ユーザ端末4は、出されたカード等に対するコメントを作成し、チャットメッセージとしてサーバ装置10に送信(S30)すると、ユーザ端末1?4のチャット画面上に、ユーザ端末4のチャットメッセージが表示されることとなる。以下、このような処理が繰り返されて、チャットシステム100上でチャットを実施しながら、並行してゲームが進行されることとなる。」

キ 「【0107】
まず、ユーザ指示受付部20は、入力処理された文字等を解析する(S40)
。解析の結果、チャット内ゲームにおいて当該ユーザが所有するカードに該当すると判断された場合(S40のYes)、ユーザ指示受付部20は、そのカードを選択する処理を行い(S42)、チャット画面に表示すべきカードの画像を準備する。」

ク 図7及び8からは、チャット画面330には、ゲーム参加者によってゲーム盤上に出されたカード画像361が、ユーザ「BBBBBB」のものが上に、ユーザ「CCCCCC」のものが下に並んで2つ表示される点が看て取れる。

上記アないしク及び図面の記載から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「チャットへの参加を受け付けたチャット参加ユーザの端末から、チャットメッセージ及び表示切り替え指示を受け付けるユーザ指示受付ステップと、
受け付けたチャットメッセージをチャット参加ユーザの端末のチャット画面上に表示させる画面表示制御ステップと、
チャット内ゲームを開始させるゲーム制御ステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記ユーザ指示受付ステップは、ゲーム参加ユーザの端末からのチャット内ゲームの進行に関する指示を受け付け、
前記画面表示制御ステップは、前記チャット画面の一部に前記チャット内ゲームの状況を示すゲーム状況表示領域を表示させ、
前記画面表示制御ステップは、前記ユーザ指示受付ステップによりゲーム参加ユーザから受け付けた前記チャット内ゲームの進行に関する指示に対応する画像を前記チャット参加ユーザの端末の前記チャット画面に表示させ、
チャット内ゲームとしては、「ポーカー」であり、
ゲーム状況表示領域には、過去にゲーム盤上に出されたカードと、「ポーカー」に参加しているゲーム参加者の情報が表示され、ゲーム参加者として、ユーザ「AAAAAA」とユーザ「BBBBBB」とユーザ「CCCCCC」とユーザ「DDDDDD」とユーザ「EEEEEE」とユーザ「FFFFFF」が存在し、チャット内ゲームに参加していないゲーム観戦者のユーザ端末のユーザインタフェース56には、ゲーム状況表示領域において、ゲーム参加者のすべてのカードが見えていてもよく、
ユーザ端末1は、ゲームにおける自らのターンにおいて、ゲーム盤上に出すべき持ち札を選択するなどのゲームの進行に関する指示を送信し、たとえば、トランプゲームにおいて、「ダイヤのエース」が選択されたとすると、ゲーム観戦者であるユーザ端末4のチャット画面上に、ユーザ端末1により「ダイヤのエース」が出された旨の表示をさせ、
チャット画面に表示すべきカードの画像を準備し、
チャット画面330には、ゲーム参加者であるユーザ「BBBBBB」とユーザ「CCCCCC」によってゲーム盤上に出されたカード画像361がユーザ「BBBBBB」のものが上に、ユーザ「CCCCCC」のものが下に並んで2つ表示され、
ゲーム観戦者に対して、ゲームの進行状況をタイムリーに提供するプログラム。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、

ア 後者の「カード」は、前者の「ゲーム媒体」に相当し、後者の「プログラム」は、前者の「ゲームプログラム」に相当する。
また、後者のプログラムは、「チャット内ゲームを開始させるゲーム制御ステップ」、ゲーム参加ユーザの端末からのチャット内ゲームの進行に関する指示を受け付ける「ユーザ指示受付ステップ」、及び前記ユーザ指示受付ステップによりゲーム参加ユーザから受け付けた前記チャット内ゲームの進行に関する指示に対応する画像をチャット参加ユーザの端末のチャット画面に表示させる「画面表示制御ステップ」とをコンピュータに実行させるものであるから、前者の「ゲームの進行を処理する」ものといえる。

イ 後者には、ゲーム参加者として、ユーザ「AAAAAA」ないしユーザ「FFFFFF」が存在するから、後者の「ゲーム参加ユーザの端末」は、前者の「ゲームに参加可能な複数の対象ユーザが用いる対象ユーザ端末」に相当する。
また、後者の「ゲーム盤上に出すべき持ち札を選択するなどのゲームの進行に関する指示」は、前者の「ゲーム媒体の動作に関する動作指示」に相当する。
よって、後者の「ユーザ指示受付ステップをコンピュータに実行させる」ことは、前者の「受付機能をコンピュータに実現させる」ことといえる。

ウ 後者の「チャット内ゲームの状況」としては、過去にゲーム盤上に出されたカードが表示されるのであるから、後者の「チャット内ゲームの状況」は、前者の「ゲームの進行を把握可能なゲーム画面」に相当する。
また「チャット内ゲームの状況」を表示するための情報が、受け付けられたゲーム参加ユーザの指示に応じて生成されることは明らかである。
したがって、後者のプログラムが、「ゲームの進行を把握可能なゲーム画面に関する画面情報を、受付機能によって受け付けられた動作指示に応じて生成する生成機能」を有することは明らかである。

エ 後者の「ゲーム観戦者」及び「ゲーム観戦者のユーザ端末」はそれぞれ、「ゲームに参加不可能な非対象ユーザ」及び「非対称ユーザが用いる非対称ユーザ端末」に相当する。
また、後者のゲーム状況表示領域の表示によりゲーム観戦者がゲームの進行を把握可能となることは明らかである。
したがって、後者のゲーム状況表示領域を表示させる「画面表示制御ステップをコンピュータに実行させる」ことは、前者の「出力機能をコンピュータに実現させる」ことといえる。

オ 後者の「ゲーム盤上に出されたカード画像361が並んで2つ表示されたチャット画面」は、ゲーム観戦者にタイムリーに進行状況を提供するためのものであるから、前者の「動作指示によって生じたゲームの進行のうち、直近に生じたゲームの進行から所定の数の進行のみを、一覧可能に提示する進行画面」に相当する。
また、後者の「カードの画像」は、ゲーム盤上に出すべき持ち札を選択するというゲームの進行に関する指示に対応して表示されるものであることは明らかであって、「カードの画像が示す持ち札の内容」は、ゲームの進行に関する情報であるから、前者の「進行情報」に相当する。また、後者の「チャット画面に表示すべきカードの画像を準備する」ことは、前者の「コンピュータに進行情報をさらに生成する生成機能を実現させる」ことといえる。
さらに、「ゲーム観戦者のユーザ端末のチャット画面にゲーム盤上に出されたカード画像361を表示する」ことは、「生成機能によって生成された進行情報を、非対象ユーザ端末にさらに出力する」ことといえる。

したがって、両者は、
「ゲーム媒体を用いたゲームの進行を処理するゲームプログラムであって、
コンピュータに、
前記ゲームに参加可能な複数の対象ユーザが用いる対象ユーザ端末から、前記ゲーム媒体の動作に関する動作指示を受け付ける受付機能と、
前記ゲームの進行を把握可能なゲーム画面に関する画面情報を、前記受付機能によって受け付けられた動作指示に応じて生成する生成機能と、
前記ゲームに参加不可能な非対象ユーザが前記ゲームの進行を把握可能となるように、前記生成機能によって生成された画面情報を、当該非対象ユーザが用いる非対象ユーザ端末に出力する出力機能とを実現させ、
前記生成機能は、前記動作指示によって生じた前記ゲームの進行のうち、直近に生じた当該ゲームの進行から所定の数の進行のみを、一覧可能に提示する進行画面に関する進行情報をさらに生成し、
前記出力機能は、前記生成機能によって生成された進行情報を、前記非対象ユーザ端末にさらに出力するゲームプログラム。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明では、「生成機能は、非対象ユーザがゲームの進行を体感可能となる所定のエフェクトとして、進行画面の上部から下部に向かう方向に進行情報が移動し、古い進行情報が新しい進行情報に順次置き換えられて表示されるエフェクトを伴うように、前記進行情報を生成する」のに対し、引用発明ではそのようなエフェクトを伴うように生成されているか否か、明らかでない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。まず、チャットサービスの分野においては、画面上にメッセージが新しいものに順次置き換わって移動するように表示されることが技術常識であること、及び、ポーカーというゲームの内容が、ゲームの参加者全てが自らのターンで動作を指示するものであることからすれば、引用発明1のチャット画面のカードの画像は、他のユーザの指示に対応する新しい画像が順次、古い画像に置き換えられて移動するように表示されることは明らかである。そして、引用発明1の上下に並ぶカードの画像を、いかなる方向に移動するエフェクトを伴うように表示するかは、当業者が適宜選択し得る程度の設計的事項に過ぎないところ、ゲームの進行を表す情報を、上部から下部に向かう方向に移動させて表示することは周知の技術事項(例えば、特開2014-4134号公報段落[0060]、[0099]ないし[0106]及び図17ないし22を参照。)である。
以上を踏まえれば、引用発明1において、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1及び上記周知の技術事項から、当業者が予測しうる範囲内のものであって格別顕著なものではない。

なお、審判請求人は、平成26年7月22日付け意見書において、「引用文献1には、…すなわち、従来のチャット機能と同様に、単に新しいメッセージをスクロール表示させることが記載されているに過ぎず、本願発明のように、「進行画面の上部から下部に向かう方向に上記進行情報が移動し、古い進行情報が新しい進行情報に順次置き換えられて表示される」(すなわち、非対象ユーザがゲームの進行を体感可能となるように、各対象ユーザから与えられた動作指示によって生じたゲームの進行が次々と表示される)ことによって、「戦況がめまぐるしく変化する様子を表現できるため、対戦の緊迫感を演出できる」という顕著な効果を奏する上記具体的構成を開示・示唆していません。」と主張するが、引用発明1も上記のとおり、進行情報が順次、古いものに置き換えられて移動するように表示されるものであって、この点において、本願補正補発明とかわるところはないことから、当然上記のような作用効果を奏するものである。よって、上記主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び上記周知の技術事項から、当業者が容易に発明できたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成26年7月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。

「【請求項1】
ゲーム媒体を用いたゲームの進行を処理するゲームプログラムであって、
コンピュータに、
前記ゲームに参加可能な対象ユーザが用いる対象ユーザ端末から、前記ゲーム媒体の動作に関する動作指示を受け付ける受付機能と、
前記ゲームの進行を把握可能なゲーム画面に関する画面情報を、前記受付機能によって受け付けられた動作指示に応じて生成する生成機能と、
前記ゲームに参加不可能な非対象ユーザが前記ゲームの進行を把握可能となるように、前記生成機能によって生成された画面情報を、当該非対象ユーザが用いる非対象ユーザ端末に出力する出力機能とを実現させ、
前記生成機能は、前記動作指示によって生じた前記ゲームの進行を、一覧可能に提示する進行画面に関する進行情報をさらに生成し、
前記出力機能は、前記生成機能によって生成された進行情報を、前記非対象ユーザ端末にさらに出力し、
前記生成機能は、前記非対象ユーザが前記ゲームの進行を体感可能となる所定のエフェクトとして、前記進行画面の上部から下部に向かう方向に前記進行情報が移動し、古い進行情報が新しい進行情報に順次置き換えられて表示されるエフェクトを伴うように、前記進行情報を生成することを特徴とするゲームプログラム。」

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2) 引用刊行物」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 3 (1)本願補正発明」で検討した本願補正発明の「ゲームに参加可能な対象ユーザ」に関して、「複数の」との限定を省くとともに、「進行画面」に関して、「直近に生じた当該ゲームの進行から所定の数の進行のみ」を一覧可能に提示するとの限定を省くものである。

そうすると、本願発明を特定事項とする事項の全てを含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 3 (3)対比」及び「第2 3 (4)判断」に記載したとおり、引用発明1及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-06-19 
結審通知日 2015-06-23 
審決日 2015-07-07 
出願番号 特願2014-48465(P2014-48465)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 山本 一
吉村 尚
発明の名称 ゲームプログラム、ゲーム処理方法、および、情報処理装置  
代理人 白坂 一  

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