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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1306141
審判番号 不服2014-5600  
総通号数 191 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-26 
確定日 2015-09-30 
事件の表示 特願2011-162369「表面検査装置およびその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月 4日出願公開、特開2011-221041〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年4月9日に出願した特願2004-569998号(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成15年7月23日、同年11月14日、米国)の一部を平成23年7月25日に新たな特許出願としたものであって、平成25年5月21日付けで拒絶理由が通知され、同年9月27日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月12日付けで拒絶査定がなされたのに対し、平成26年3月26日に拒絶査定不服審判が請求され、それと同時に手続補正がなされたものである。

2 平成26年3月26日付けでなされた手続補正について
平成26年3月26日付けでなされた手続補正は、請求項7?10、13?16、18?20、22?24、28?42、44?52を削除したものである。
したがって、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。また、新たな技術事項を導入するものではないから、改正前の特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
よって、この補正は、改正前の特許法第17条の2の規定に適合する。

3 本願発明
この出願の請求項1に係る発明は、平成26年3月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「表面検査装置であって、
光ビームをワークピース上に導くことによって、前記ワークピースの欠陥から散乱された光、および前記ワークピースの通常の散乱パターンにしたがって散乱された光を含む、空間分布を有する散乱された光のパターンを発生する照射源、
前記ワークピースから散乱された光を受け取り、前記ワークピースの欠陥から散乱された前記光をフォトセンサに選択的に導く光選択アレイであって、前記ワークピースから散乱された光を受け取り、前記光を第1光検出器アレイであって、前記プログラム可能な光選択アレイからの前記光を受け取るように配置され、前記光を関連付けられた電気信号に変換できる第1光検出器アレイ上に導くように配置されたプログラム可能な光選択アレイ、
前記関連付けられた電気信号を受け取り、前記ワークピースから散乱された前記光のうちのどの部分が前記ワークピースの前記通常の散乱パターンを含むかを判断する回路、
を備え、
前記プログラム可能な光選択アレイは、前記ワークピースの欠陥からの散乱に空間的に関連付けられた前記光をフォトセンサ上に選択的に導くことができる制御可能な光選択要素のアレイを含み、この結果、前記フォトセンサにより、前記光が、関連付けられた欠陥信号に変換され、
前記回路は、前記欠陥信号を受け取り、それを用いて前記ワークピースの表面分析を行う処理回路を含む装置。」

ここで、請求項1の「フォトセンサ」と「第1光検出器アレイ」に関して、請求項10には「請求項1に記載の装置であって、前記第1光検出器アレイは、前記フォトセンサとしても機能する装置。」と記載され、発明の詳細な説明には「【0039】…本発明の原理による光検出器およびフォトセンサは、多様な形態を持ちえ、湾曲された表面を持つ光検出器アレイを含みえる。」と記載されていることから、請求項1の「第1光検出器アレイ」が「フォトセンサ」を兼ねるものも含まれるものと解すべきである。このことは、請求項1の「装置」の発明に対応する請求項14の「方法」の発明において、「検出」要素を何ら特定していないこと、つまり「フォトセンサ」と「第1光検出器アレイ」とに分けて特定していないことにも整合する。

4 刊行物の記載事項
(1)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2002-310932号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0020】次に、異物モニタ101の構成について図3より説明する。まず、異物モニタ101の異物検査開始側に設けたウェハ回転方向検出器121で製品ウェハ111のオリフラの方向を検出し、製品ウェハ111の回転方向を検出する。その後、異物検出光学系122で製品ウェハ111上の異物検査を全面において行う。次に異物モニタ101より得られた異物情報を異物情報処理系123で処理し、異物の異常発生があれば、アラーム等で知らせる、あるいは装置停止機能124により装置本体125を停止することができる。また、キーボード126とCRT127により異物表示を行なう。さらに、異物解析システム128と連動されており、データのやり取りが可能である。例えば、システム128より製品ウェハ111の名前、場所、サンプリング等ほしいデータの命令を送信することにより、異物情報処理系123よりそれらのデータを得ることができる。ここで、本異物モニタ101では、異物検出光学系122は異物情報処理系123とは別体に成っており、さらに、ステージ系を有しておらず、処理装置の搬送系を利用する構成と成っている。しかし、もちろんステージ系を有する構成も可能である。したがって、本異物モニタ101の外形寸法は、幅W、奥行きL、高さHがそれぞれ1m以内、あるいは、本異物モニタ101の幅Wがウェハの幅Wwより短く、小型を可能にしている。また、本異物モニタ101は、自動較正機能を有しており、製造装置間及び工程間で製品ウェハ表面の反射率が異なるので、反射率を自動計測し、異物検出光学系の照明光量にフィードバックすることにより対処でき、めんどうな較正を必要としない。さらに、異物検出光学系122の検出レンズの焦点深度dは次式から算出され、0.1?0.5mmと深いため自動焦点を必要としない。」

イ 「【0026】図7に製品ウェハ111上の異物検査が高速でかつ構造が小型である空間フィルタを用いた異物検出光学系122の構成図の一実施例を示す。斜方照明光学系151と検出光学系152から成る。斜方照明光学系151は図に示すように1個以上の照明アレイに成っている。検出光学系152は検出レンズとしてレンズアレイ153、レンズアレイのフーリエ変換面に空間フィルタ154、レンズアレイの結像位置に検出器155から成っている。
【0027】図8に斜方照明光学系151の構成図を示す。ここで、斜方照明とは製品ウェハ111の法線163からθ傾けた方向164より照明することを意味する。照明光源として小型で高出力の半導体レーザ161を用い、アナモルフィックプリズム162で高輝度コヒーレント光照明を可能にしている。製品ウェハ111上をコヒーレント光照明することにより検出レンズ153のフーリエ変換面において製品ウェハ111のパターンのシャープなフーリエ変換像が得られるためである。さらに、アナモルフィックプリズム162は照明アレイの隣接照明成分が影響しない広領域照明を可能にしている。隣接照明光の影響があると、検出レンズ153のフーリエ変換面において、隣接照明によるパターンのフーリエ変換像がずれて重なりフーリエ変換像の面積が増え、空間フィルタのフィルタ部分の面積も増えることになり、空間フィルタを通過する異物からの散乱光量が少なくなり、異物検出性能が低下するからである。」

ウ 「【0030】図11に空間フィルタ154の構成図を示す。レンズアレイ153の各レンズ素子181にそれぞれの空間フィルタ182が対応する。
【0031】図12に空間フィルタ154の詳細図を示す。製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191はレンズアレイ153のフーリエ変換面上の空間フィルタ154位置では規則的な像192となる。したがって、図に示すような空間フィルタ154で製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンを遮光することができ、検出器であるCCDリニアセンサ155には取り込まれない。
【0032】空間フィルタ154には、製品ウェハ111の繰返しパターンのフーリエ変換像を乾板に焼き付けて作成する乾板方式の空間フィルタを用いる。したがって、空間フィルタ154の焼き付けた部分は製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの光は通過しない。または、液晶を用いた液晶方式の空間フィルタがある。まず、製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191のレンズアレイ153のフーリエ変換面上の空間フィルタ154位置での規則的な像192をTVモニタ等により検出し、像192に対応した液晶素子の位置を記憶させる。次に、記憶された液晶素子部分に電圧を加えることにより、その部分に当った光を遮蔽することができる。したがって、各工程の製品ウェハ毎の像に対応した駆動液晶素子を記憶し、フォーマット化することにより、各工程の製品ウェハ毎の液晶のオンオフによる空間フィルタが可能となる。」

エ 上記イの「空間フィルタを通過する異物からの散乱光量が少なくなり、異物検出性能が低下する」との記載から、空間フィルタ154が、製品ウェハ111上の異物からの散乱光を通過させるものであることは明らかである。

上記のア?エから、刊行物には、以下の発明が記載されていると認められる。
「異物検出光学系122で製品ウェハ111上の異物検査を全面において行い、得られた異物情報を異物情報処理系123で処理し、異物の異常発生があれば、アラーム等で知らせる、あるいは装置停止機能124により装置本体125を停止することができる異物モニタ101であって、
異物検出光学系122は、斜方照明光学系151と検出光学系152から成り、斜方照明光学系151は1個以上の照明アレイに成っていて、検出光学系152はレンズアレイ153、レンズアレイ153のフーリエ変換面に空間フィルタ154、レンズアレイ153の結像位置にCCDリニアセンサ155から成っているものであり、
斜方照明光学系151は、照明光源として半導体レーザ161を用い、製品ウェハ111上をコヒーレント光照明することによりレンズアレイ153のフーリエ変換面において製品ウェハ111のパターンのシャープなフーリエ変換像が得られるものであり、
空間フィルタ154は、レンズアレイ153の各レンズ素子181にそれぞれの空間フィルタ182が対応し、製品ウェハ111上の異物からの散乱光を通過させるが、製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191のレンズアレイ153のフーリエ変換面上の位置での規則的な像192となる繰返しパターンを遮光し、CCDリニアセンサ155に取り込まれないようにするものであり、
液晶を用いた液晶方式の空間フィルタ154は、まず、製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191のレンズアレイ153のフーリエ変換面上の空間フィルタ154位置での規則的な像192となる繰返しパターンをTVモニタ等により検出し、規則的な像192となる繰返しパターンに対応した液晶素子の位置を記憶させ、次に、記憶された液晶素子部分に電圧を加えることにより、その部分に当った光を遮蔽することができ、したがって、各工程の製品ウェハ毎の像に対応した駆動液晶素子を記憶し、フォーマット化することにより、各工程の製品ウェハ毎の液晶のオンオフによる空間フィルタが可能となる
異物モニタ101。」(以下、「引用発明」という。)

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「製品ウェハ111上の異物検査を全面において行」う「異物モニタ101」、「製品ウェア111」、「異物」、「斜方照明光学系151」並びに「CCDリニアセンサ155」は、本願発明の「表面検査装置」、「ワークピース」、「欠陥」、「照射源」並びに「『フォトセンサ』及び『第1光検出器アレイ』」に相当する。

(2)引用発明の「照明光源として半導体レーザ161を用い」た「コヒーレント光」は、本願発明の「光ビーム」に相当する。
また、引用発明の「製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191」は、異物の有無に関係なく発生する回折光であるから、本願発明の「ワークピースの通常の散乱パターンにしたがって散乱された光」に相当する。
そして、引用発明の「レンズアレイ153のフーリエ変換面において」「得られる」「製品ウェハ111のパターンのシャープなフーリエ変換像」は、「製品ウェハ111上の異物からの散乱光」及び「製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191」によるものであることは明らかであるから、本願発明の「前記ワークピースの欠陥から散乱された光、および前記ワークピースの通常の散乱パターンにしたがって散乱された光を含む、空間分布を有する散乱された光のパターン」に相当する。
したがって、引用発明の「照明光源として半導体レーザ161を用い、製品ウェハ111上をコヒーレント光照明することによりレンズアレイ153のフーリエ変換面において製品ウェハ111のパターンのシャープなフーリエ変換像が得られる」「斜方照明光学系151」は、本願発明の「光ビームをワークピース上に導くことによって、前記ワークピースの欠陥から散乱された光、および前記ワークピースの通常の散乱パターンにしたがって散乱された光を含む、空間分布を有する散乱された光のパターンを発生する照射源」に相当する。

(3)引用発明の「CCDリニアセンサ155」が「製品ウェハ111上の異物からの散乱光」を検出することは明らかであり、「レンズアレイ153の各レンズ素子181にそれぞれの空間フィルタ182が対応」する「空間フィルタ154」はアレイといえるから、引用発明の「製品ウェハ111上の異物からの散乱光を通過させるが、製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191のレンズアレイ153のフーリエ変換面上の位置での規則的な像192となる繰返しパターンを遮光し、CCDリニアセンサ155に取り込まれないようにする」「空間フィルタ154」であって、「レンズアレイ153の各レンズ素子181にそれぞれの空間フィルタ182が対応」する「空間フィルタ154」は、本願発明の「前記ワークピースから散乱された光を受け取り、前記ワークピースの欠陥から散乱された前記光をフォトセンサに選択的に導く光選択アレイ」に相当する。
また、引用発明の「記憶された液晶素子部分に電圧を加えることにより、その部分に当った光を遮蔽することができ」る「液晶方式の」「空間フィルタ154」は、「各工程の製品ウェハ毎の像に対応した駆動液晶素子を記憶し、」「各工程の製品ウェハ毎の液晶のオンオフによる空間フィルタが可能」であるから、本願発明の「プログラム可能な光選択アレイ」に相当する。
さらに、引用発明の「CCDリニアセンサ155」が、「空間フィルタ154」を「通過」した「製品ウェア111上の異物からの散乱光」を受け取るように配置されるものであることは明らかである。そして、引用発明の「空間フィルタ154」が「製品ウェア111上の異物からの散乱光」を受け取り、前記「散乱光」を受け取るように配置された「CCDリニアセンサ155」上に導くように配置されていることも明らかである。また、CCDリニアセンサが光を関連付けられた電気信号に変換することは技術常識である。
したがって、引用発明の「レンズアレイ153の各レンズ素子181にそれぞれの空間フィルタ182が対応し、製品ウェハ111上の異物からの散乱光を通過させるが、製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191のレンズアレイ153のフーリエ変換面上の位置での規則的な像192となる繰返しパターンを遮光し、CCDリニアセンサ155に取り込まれないようにする」「空間フィルタ154」であって、「記憶された液晶素子部分に電圧を加えることにより、その部分に当った光を遮蔽することができ」る「液晶方式の」「空間フィルタ154」は、本願発明の「前記ワークピースから散乱された光を受け取り、前記ワークピースの欠陥から散乱された前記光をフォトセンサに選択的に導く光選択アレイであって、前記ワークピースから散乱された光を受け取り、前記光を第1光検出器アレイであって、前記プログラム可能な光選択アレイからの前記光を受け取るように配置され、前記光を関連付けられた電気信号に変換できる第1光検出器アレイ上に導くように配置されたプログラム可能な光選択アレイ」に相当する。

(4)引用発明が「製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191のレンズアレイ153のフーリエ変換面上の空間フィルタ154位置での規則的な像192となる繰返しパターンをTVモニタ等により検出し、規則的な像192となる繰返しパターンに対応した液晶素子の位置を記憶させ、次に、記憶された液晶素子部分に電圧を加えることにより、その部分に当った光を遮蔽する」ための設備として、TVモニタ等により関連付けられた電気信号を受け取り、製品ウェハ111から回折された回折光191の製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンを選別する回路を備えることは明らかである。そして、この回路と、本願発明の「前記関連付けられた電気信号を受け取り、前記ワークピースから散乱された前記光のうちのどの部分が前記ワークピースの前記通常の散乱パターンを含むかを判断する回路」とは、「関連付けられた電気信号を受け取り、前記ワークピースから散乱された前記光から前記ワークピースの前記通常の散乱パターンを選別する回路」を備える点で共通するといえる。

(5)前記(3)で述べたように、引用発明の「レンズアレイ153の各レンズ素子181にそれぞれの空間フィルタ182が対応」する「空間フィルタ154」であって、「記憶された液晶素子部分に電圧を加えることにより、その部分に当った光を遮蔽することができ」る「液晶方式の」「空間フィルタ154」は、本願発明の「前記プログラム可能な光選択アレイ」に相当する。
また、引用発明の「CCDリニアセンサ155」が「異物からの散乱光」を関連付けられた信号に変換することは明らかである。
したがって、引用発明の「レンズアレイ153の各レンズ素子181にそれぞれの空間フィルタ182が対応」する「空間フィルタ154」が、「製品ウェア111上の異物からの散乱光を通過させるが、製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191のレンズアレイ153のフーリエ変換面上の位置での規則的な像192となる繰返しパターンを遮光し、CCDリニアセンサ155に取り込まれないようにする」ように「記憶された液晶素子部分に電圧を加えることにより、その部分に当った光を遮蔽することができ」る「液晶を用い」ることは、本願発明の「前記プログラム可能な光選択アレイは、前記ワークピースの欠陥からの散乱に空間的に関連付けられた前記光をフォトセンサ上に選択的に導くことができる制御可能な光選択要素のアレイを含み、この結果、前記フォトセンサにより、前記光が、関連付けられた欠陥信号に変換され」ることに相当する。

(6)引用発明の「異物情報処理系123」は、「得られた異物情報を異物情報処理系123で処理し、異物の異常発生があれば、アラーム等で知らせる、あるいは装置停止機能124により装置本体125を停止することができる」ものであるから、「得られた異物情報」の信号を受け取り、それを用いて異常か否か分析しているものといえる。
また、「異物情報処理系123」が異物情報を処理するために何らかの処理回路を含むことは明らかである。
したがって、引用発明の「異物検出光学系122で製品ウェハ111上の異物検査を全面において行い、得られた異物情報を」「処理し、異物の異常発生があれば、アラーム等で知らせる、あるいは装置停止機能124により装置本体125を停止することができる」「異物情報処理系123」を有すること、本願発明の「前記回路は、前記欠陥信号を受け取り、それを用いて前記ワークピースの表面分析を行う処理回路を含む」こととは、「前記欠陥信号を受け取り、それを用いて前記ワークピースの表面分析を行う処理回路」を有する点で共通する。

してみると、本願発明と引用発明とは
「表面検査装置であって、
光ビームをワークピース上に導くことによって、前記ワークピースの欠陥から散乱された光、および前記ワークピースの通常の散乱パターンにしたがって散乱された光を含む、空間分布を有する散乱された光のパターンを発生する照射源、
前記ワークピースから散乱された光を受け取り、前記ワークピースの欠陥から散乱された前記光をフォトセンサに選択的に導く光選択アレイであって、前記ワークピースから散乱された光を受け取り、前記光を第1光検出器アレイであって、前記プログラム可能な光選択アレイからの前記光を受け取るように配置され、前記光を関連付けられた電気信号に変換できる第1光検出器アレイ上に導くように配置されたプログラム可能な光選択アレイ、
関連付けられた電気信号を受け取り、前記ワークピースから散乱された前記光から前記ワークピースの前記通常の散乱パターンを選別する回路、
を備え、
前記プログラム可能な光選択アレイは、前記ワークピースの欠陥からの散乱に空間的に関連付けられた前記光をフォトセンサ上に選択的に導くことができる制御可能な光選択要素のアレイを含み、この結果、前記フォトセンサにより、前記光が、関連付けられた欠陥信号に変換され、
前記欠陥信号を受け取り、それを用いて前記ワークピースの表面分析を行う処理回路を有する装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
「回路」が「受け取」る「関連付けられた電気信号」が、本願発明では「第1光検出アレイ」によって「変換」されたものであるのに対し、引用発明では「TVモニタ等」によるものである点。

(相違点2)
「前記光から前記ワークピースの前記通常の散乱パターンを選別する回路」が、本願発明では「前記光のうちのどの部分が前記ワークピースの前記通常の散乱パターンを含むかを判断する」ものであるのに対し、引用発明では「検出し」た「規則的な像192となる繰返しパターンに対応した液晶素子の位置を記憶」するものである点。

(相違点3)
「前記欠陥信号を受け取り、それを用いて前記ワークピースの表面分析を行う処理回路」が、本願発明では「前記回路」に「含」まれるのに対し、引用発明ではそのようなものではない点。

6 判断
(相違点1について)
引用発明は「製品ウェハ111の規則性のある繰返しパターンからの回折光191のレンズアレイ153のフーリエ変換面上の空間フィルタ154位置での規則的な像192となる繰返しパターンを」「検出」するために、「TVモニタ等」を用いるものであるが、「TVモニタ等」の追加設備を用いずに、それに代えて既存のCCDリニアセンサ155で規則的な像を検出しようとすることは当業者が容易に想起できるものであって、その場合にその像をフーリエ変換すれば「レンズアレイ153のフーリエ変換面上の空間フィルタ154位置での規則的な像192となる繰返しパターン」が求まることは技術常識であり、何ら支障はないことも容易に把握できるというべきであるので、そのようにして、規則的な像を検知する回路を備えることは当業者が容易になし得たというべきである。

(相違点2について)
引用発明において「検出し」た「規則的な像192となる繰返しパターンに対応した液晶素子の位置を記憶させ」る際に、異物を含めないようにすべきことは当業者が当然考慮すべき事項で容易に想起できるものであるから、そのために、例えば、複数の製品ウェハ111の回折光191を検出する等して、規則性のある繰り返しパターンからの回折光191を異物からの散乱光と区別して判断するような回路を備えるようにして、相違点2に係る本願発明の如くすることは、当業者が容易になし得たというべきである。

(相違点3について)
(相違点1について)で述べたような、散乱光のうちのどの部分が通常の散乱パターンを含むかを判断する回路を備えた場合に、「前記欠陥信号を受け取り、それを用いて前記ワークピースの表面分析を行う処理回路」をその「判断する回路」に含めることは、当業者が装置の回路構成における部品点数を少なくする等を考慮しながら適宜なし得る設計的事項であり、容易になし得たというべきである。

(効果について)
本願発明の奏する効果は、引用発明から、当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

7 むすび
本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-04-21 
結審通知日 2015-05-07 
審決日 2015-05-20 
出願番号 特願2011-162369(P2011-162369)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 正治  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 藤田 年彦
松本 隆彦
発明の名称 表面検査装置およびその方法  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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