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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A61B 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61B |
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管理番号 | 1311832 |
異議申立番号 | 異議2015-700078 |
総通号数 | 196 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2016-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-10-08 |
確定日 | 2016-02-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5697515号「医用画像表示装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5697515号の請求項に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5697515号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?請求項5に係る発明の特許についての出願は、平成23年4月1日に特許出願され、平成27年2月20日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人椎名彊より特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?請求項5に係る発明(以下、それぞれの発明を「本件発明1」などと、本件発明と請求項の番号を組合わせていうこととする。)は、次の事項により特定される発明である((A1)?(A5)は、後の便宜のために当審により発明特定事項を分節し、付記した記号である。)。 「【請求項1】 (A1)複数の異なる医用画像撮影装置を用いて撮影した画像を画像データとして入力する入力部と、前記入力した画像データに基づいて複数の画像を同一画面に表示させる画像表示部と、を有する医用画像表示装置であって、 (B1)前記画像表示部に表示した複数の表示画像のうち、個別の色調整を可能とする表示画像を設定する色調整領域設定部と、 (C1)前記個別の色調整を行なうための色調整手段と、 (D1)を備えることを特徴とする医用画像表示装置。 【請求項2】 (A2)前記入力部は、入力した画像データに対し該画像データに対応した医用画像撮影装置情報を付加し、前記色調整領域設定部は、前記医用画像撮影装置情報と、各医用画像撮影装置を用いて撮影した画像と該画像の個別の色調整の可否との関係を設定した医用撮影装置表示色対応情報と、に基づいて前記設定を行うことを特徴とする請求項1に記載の医用画像表示装置。 【請求項3】 (A3)前記色調整手段による調整は、前記画像表示部に表示した同一の医用画像撮影装置で撮影した異なる複数の画像に対しそれぞれ行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の医用画像表示装置。 【請求項4】 (A4)異なる種類の医用画像撮影装置で撮影した複数の画像を前記画像表示部に表示した際、前記色調整手段は、前記異なる種類の医用画像撮影装置で撮影した画像ごとに備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の医用画像表示装置。 【請求項5】 (A5)前記画像表示部に表示した画像ごとに前記色調整手段による調整を解除する色調整解除手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の医用画像表示装置。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠として次の甲各号証(以下、甲第1号証を「甲1」のように甲と番号を組合わせていうこととする。)を提出した。 甲1:特開昭63-246788号公報 甲2:特開2008-6191号公報 甲3:特開平7-194598号公報 甲4:特開平8-238223号公報 甲5:特開2002-133394号公報 甲6:特開2002-125937号公報 甲7:特開平11-45078号公報 甲8:特許技術用語集(第3版) 甲9:特開平2-68027号公報 甲10:医用画像・放射線機器ハンドブック 改訂第七版 そして、次の申立理由1、申立理由2及び申立理由3を特許異議申立人は主張している。 (申立理由1) 本件発明1、3?5は、本件特許出願の明細書(以下、「本件明細書」という。)に記載された発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、また、明確ではないから、それらの特許は特許法第36条第4項第1号、及び、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきである。 (申立理由2) 本件発明1?5は、甲1?甲6及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (申立理由3) 本件発明1?5は、甲7、甲2?甲6及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 第4 甲各号証記載の事項 1 甲1記載の事項 (甲1ア)「そして、例えば被検体の診断部位について血管造影撮影を行うデイジタルサブトラクションアンギオグラフイ(DSA)装置を用いて、一つの診断部位について同一方向から見た左画像と右画像とを撮影し、立体視するステレオDSAにおいては、一台のテレビモニタ5の画面を左右二つの領域に区分し、左側領域に左画像を表示すると共に右側領域には右画像を同時に表示して、立体視していた。また、一つの診断部位について異なる二方向から見た例えば正面画像と側面画像とを撮影し、同時に表示するパイプレーンDSAにおいても、一台のテレビモニタ5の画面を二つの領域に区分して、それぞれの画像を同時に表示していた。」(第2頁左上欄第14行?同頁右上欄第7行) (甲1イ)「このディジタル画像処理装置は、一台のテレビモニタの画面を複数の領域に区分し二以上の異なる画像を同時に表示するもので、A/D変換器1と、フレームメモリ2と、複数個のルックアップテーブル用メモリ(以下「LUT用メモリ」と略称する)3a、3b、3c、3dと、切換機構としてのマルチプレクサ9及びデコーダ10と、D/A変換器4と、テレビモニタ5とを有してなる。」(第3頁左上欄第2?10行) (甲1ウ)「上記A/D変換器1は、図示外のテレビカメラから出力される画像信号を入力してディジタルデータに変換するものである。」(第3頁左上欄第17?19行) (甲1エ)「また、テレビモニタ5は、上記D/A変換器4から出力されたアナログビデオ信号を入力して画像を表示するもので、第4図に示すように、一台のモニタの画面を例えば四つの領域E_(1)、E_(2)、E_(3)、E_(4)に区分し、各領域E_(1)?E_(4)に異なる四つの画像I_(1)、I_(2)、I_(3)、I_(4)をそれぞれ表示するようになっている。」(第4頁左下欄第5?11行) (甲1オ)「第1図に示す操作卓8には、第5図(a)、(b)に示すように、選択スイッチ11及び操作スイッチ12が設けられている。上記選択スイッチ11は、第4図に示すテレビモニタ5の画面の各領域E_(1)?E_(4)を選択するもので、例えば押釦スイッチから成り、数字「1」が第一領域E_(1)を選択するものであり、数字「4」が第四領域E_(4)を選択するものである。」(第4頁左下欄第12?19行) (甲1カ)操作スイッチ12は、テレビモニタ5の画像表示のウィンドウ(コントラストを調整)とレベル(明るさを調整)を調整するもので、例えば押釦スイッチから成り、「W+」と「W-」はウィンドウ幅を変化させるものであり、「L+」と[L-」はレベル値を変化させるものである。」 (第4頁左下欄第19行?同頁右下欄第5行) (甲1キ)「第一の画像I_(1)について表示の明るさまたはコントラストが適切でないときは、上記選択スイッチ11及び操作スイッチ12を操作して、その明るさまたはコントラスを独立に調整する。」(第4頁右下欄第12?16行) (甲1ク)「第5図(a)に示す選択スイッチ11の数字「1」の押釦スイッチを押す。すると、この信号がCPU7に入力して、CPU7は第一のLUT用メモリ3aが選択されたことを読み取る。次に、第5図(b)に示す操作スイッチ12のこれから調整しようとするウンドウ(当審注:「「ウンドウ」は「ウィンドウ」の誤記と認められる。)またはレベルに該当する押釦スイッチ、例えば[W+」を押す。すると、この「W+」に相当する信号がCPU7に入力し、CPU7は「W+」の意味を読み取って、第一のLUT用メモリ3aの内容を書き換える。この結果、上記第一のLUT用メモリ3aに記憶されたルックアップテーブルは新しい内容となり、この新しいルックアップテーブルにより、第一の画像I_(1)はコントラストがより強調された新しい画像として表示される。このとき、他の画像I_(2)?I_(4)は全く変化せず、従前通りの明るさ及びコントラストで表示される。」 (第4頁右下欄第17行?第5頁左上欄第13行) (甲1ヶ)「他の領域の画像I_(2)?I_(4)についても上記と同様にして、それぞれ独立して画像表示の明るさ及びコントラストを調整することができる。」(第5頁左上欄第13?16行) 2 甲6記載の事項 (甲6ア)「【0024】この画像処理装置の構成は、ネットワーク8を経由してCT装置4、MRI装置5、超音波装置6、X線装置7または核医学装置等の画像診断装置及び画像データベース1に接続されている。各撮影装置では当該患者の内部構造を三次元的に画像化した三次元画像が再構成され、生成された画像は画像データベース1に格納される。また、画像処理装置は1台に限定されず、図1に示すように第一の画像処理装置2と、第二の画像処理装置3といったように複数の画像処理装置がネットワーク8に接続されている。」 (甲6イ)「【0048】たとえば、画像データベース1に登録されている三次元画像AとBが画像処理装置に三次元表示されている場合について述べる。この画像A、Bは同じモダリテイで撮影された画像でも良いし、異なるモダリテイで撮影された画像でも良い。各々の表示画像は操作者の意図により故意に合致させない限り、それぞれに表示している角度や表示用画像処理は異なっている。そこで、同期スイッチをONにすることにより操作者の手を煩わせることなく同じ角度からで且つ同じ表面画像処理の表示画像になる。 【0049】例えば現状の画像Aがコントローラブルな画像であるとすると、画像Bの表示角度及び表示用画像処理は画像Aの表示角度や表示用画像処理に一致するように回転、表示される。これは単に初期表示角度、初期表示用画像処理からの変更量を一致させるのではなく、画像のオリエンテーションを考慮して、解剖学的に同じ角度から観察されるように変更することを指すものである。 【0050】また表示用画像処理についても同様に全く同じ処理が施されるようにする。ここでは代表的な2種類の画像処理について説明する。サーフェイスレンダリング法では、閾値を設定し、その閾値の範囲内に入る領域を対象領域として、その対象に対して任意の方向から光が当った状態のように擬似的に演算を行い、その反射光を演算することにより表示画像が算出される。 【0051】この時の閾値、光源の位置、強度、対象の色等が合致するように処理される。ボリュームレンダリング法の場合は、画素数を例えば反射率や屈折率等光学パラメータに変換する関数(光学変換関数)が定義されており、その物体に対し任意の方向から光を当てて、その反射光を計算することにより表示画像データが演算される。サーフェイスレンダリング法と異なるのは、サーフェイスレンダリング法では物体の表面が明確に定義でき、表面の後ろに隠れた情報は表示できない。」 (甲6ウ)「【0053】同期スイッチがONとなった時はこの光学変換関数、光源の位置、強度、対象の色等が合致するように処理される。この同期をやめる際は、同期スイッチをOFFにすることにより同期状態は解除される。本実施の形態では2つの三次元表示画俵を表示した場合について説明しているが、もちろん画像の数に制限されることなく、3つ以上の画像処理も可能である。」 3 甲7記載の事項 (甲7ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、テレビ等のAV機器用およびパソコン等の情報機器用の液晶を用いた表示装置に関し、使用者に対して良い認識性を与えることのできる画像表示装置に関するものである。」 (甲7イ)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの表示装置では、図7?図10に示すように、同一画面上に複数の画像情報が表示されたとき、使用者がある1つの画像に注目して画質調整を行うと、同時に表示されているすべての画像情報が変化してしまう。例えば図9のように文字表示情報とTV受信画像がオーバーレイ形態で表示される場合や図10のように、画面分割の場合で、TV受信機に対し輝度を上昇させた場合には、文字表示画面の部分も同時に輝度が上昇し、文字表示情報の視認性が低下してしまう問題点があった。」 (甲7ウ)「【0020】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態1、実施形態2、および実施形態3について説明する。 (実施形態1)本実施形態1による構成概略図を図1に示す。複数の表示信号入力し、切換信号により、切換える表示信号を出力する画像入力部と、複数の表示信号の切換を行う機能と表示信号の入力識別信号を生成する機能を有する、入力切換制御部と、切換信号を収納するフレームメモリー部と、表示信号を変換する画像変換部と、画像変換部を操作するための操作部と表示部で構成される。以上の構成により、複数で入力されたそれぞれの表示信号に対して、個々の画像調整を行う。表示部の一画面上に複数の表示信号により形成される画像が同時に表示された場合でも、それぞれ表示信号に対して一度設定した画像調整内容を個別に再現し表示する。 【0021】本実施形態1を図2を参照して説明する。複数の表示信号入力し、切換信号により、切換える表示信号を出力する画像入力部ビデオボード2、CD-ROM3、HD4から構成されている。複数の表示信号の切換を行う機能と表示信号の入力識別信号を生成する機能を有する、入力切換制御部と各構成部の制御を行う機能を有する部分はCPU9、RAN10、ROM11から構成されている。」 (甲7エ)「【0023】表示部はCRT8より構成されている。操作部は入出力制御回路5とこれに入力するキーボード、マウス、リモコンより構成されている。以上の構成により、複数で入力されたそれぞれの表示信号に対して、個々の画像調整を行う。表示部の一画面上に複数の表示信号により形成される画像が同時に表示された場合でも、それぞれ表示信号に対して一度設定した画像調整内容を個別に再現し表示する。画像入力部はコンピューター・バス1にビデオボード2、CD-ROM3及びHD4を接続した構成となっている。ビデオボード2はアナログ映像信号(コンポジット、RGBコンポーネント)をデジタル化して、一画面以上の画像データを蓄積する機能を有した装置である。 【0024】CD-ROM3、HD4には静止画像データがデジタル化された状態で格納されている。これら画像入力部の各装置にはあらかじめID番号が設定される。操作部には入出力制御回路5に、キーボード、マウスまたはリモコンを接続することによって構成されている。画像変換部は、ルックアップテーブルLUT6及びD/A変換器7で構成される。LUT6は中間再現特性データを蓄積したEPROM等の不揮発メモリーが使用される。LUT6の代表的な入出力特性を図12、図13、図14、図15に示す。本実施形態1では画像データはRGB各々8ビットの階調値を持つ。各図は横軸に入力信号階調値(0?255)を、縦軸には出力信号階調値(0?255)を示している。このようにLUT6により、中間調再現特性を変換することを可能としている。LUT6は、このようにそれぞれの入出力特性に対応するように設定された変換テーブルがページを切換えることによって選択可能となるようあらかじめ準備されており、用意された変換特性の中から、所望の変換特性を得ることができる。勿論高速のSRAMを用いることも可能である。D/A変換器7はLUT6の後段に接続され、LUT6からのデジタル信号をアナログ信号に変換する。フレームメモリー部は、高速の32ビットデータ幅のDRAMを使用したフレームメモリー17で構成されており、これはデータの上部24ビットにRGB各色8ビットの画像データ、下位8ビットにそれらの画像データの画像変換ページ情報8ビットを格納する。CPU9を介して画像データの読み出しと書き込みが可能である。この構成により画像変換ページ情報として256通りが格納できる。表示部はCRT8によって構成されている。本実施形態ではCRTを表示部に用いたが、TFT-LCD等のフラットパネルディスプレイでも表示部を構成することができる。この場合、前記画像変換部にはD/A変換部7は不要となる。CPU9、RAM10及びROM11は制御部を構成しており、本発明の構成要素の制御を行う。勿論図1の構成概略図内の入力切換制御部の働きも含んでいる。ROM11にはCPU9が実行する画像調整プログラムと複数画像表示形態を決定するアドレス情報(以下画像表示領域アドレスと称す)が格納されている。RAM10は画像入力部の各装置のID番号とそれら装置が出力する画像データ毎に画像調整の設定結果を書き込み、読み出しすることが可能な記憶装置である。以上の各構成要素はコンピュータ・バス1に接続されている。 【0025】次に、本発明の目的である複数の画像が一画面に同時に表示されている場合での画像調整方法を説明する。今、フレームメモリ17には、ビデオボード2、CD-ROM3及びHD4からの画像データが、ROM11から読み出された画像表示領域アドレスに基づいてフレームメモリ17の対応するアドレスの各領域に書き込まれている。このとき、CRT8には、図11のように画像が表示されている。図11において、画像表示領域Aはビデオボード2の画像データを、画像表示領域BにはCD-ROM3の画像データを、画像表示領域CはHD4の画像データをそれぞれ表示している。」 (甲7オ)「【0028】ステップ2は調整画像選択作業で、使用者はキーボード、マウス、またはリモコンを用いて画像を指定する。ステップ3は作業履歴参照に関する作業で、以前に調整作業を行っていた際に何らかの理由により作業を途中終了した場合、そのときの作業履歴を参照するか否かを問い合わせてくる。作業履歴を参照する場合、CPU9はRAM10に作業履歴を読み出しに行く。作業履歴が格納されていれば、履歴のある作業の処理に移動し実行する。作業履歴が無い場合メインルーチンへ戻り、画像調整作業が開始される。 【0029】ステップ4は画像調整作業であり、使用者が、キーボード、マウスまたはリモコンでLUT6のページを切り換えることによって画像調整を行う。その調整内容と調整対象となった画像データを出力している画像入力部のID番号をRAM10に格納する。加えて調整の対象になった画像データがフレームメモリ17の上位24ビットデータに書き込まれると同時に、フレームメモリ17の下位8ビットデータに画像データの画像調整情報であるLUT6のページ番号が格納される。」 (甲7カ)「【0031】他の画像入力部の装置から出力される画像データについても、調整することを選択した場合、ステップ2の調整画像選択作業に戻り上記の調整作業を繰り返す。他の画像については調整しない場合、CPU9は使用者に終了を通知し画像調整作業を終了する。」 (甲7キ)「【0036】本実施形態1では、静止画像を用いて画質調整を行う場合について説明したが、動画像に関しては、図3に示すように画像情報専用ビデオ・バス15を設け、例えばCCDカメラ等の第1の動画像情報入力装置12、第2動画像情報入力装置13、第Nの動画像情報入力装置14を接続し上記複数の動画像情報入力装置を制御するためにコンピュータ・バス1に接続する。以上の構成により高速の動画像の情報に対しても本発明を適用することができる。」 (甲7ク)「【0038】また、本実施の形態では画像変換部に中間調再現特性のLUT6を用いたが、RGB各色の情報に対して、異なる入出力特性のLUT6を設けることにより、色合いの調整や疑似的に色温度を調整することも可能である。」 (甲7ケ)「【0053】以上述べた実施形態1、実施形態2、実施形態3の他にも、本発明は、画像表示装置に入力される複数の表示信号入力装置、例えば、スキャナー、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオ等の入力装置に対し、あらかじめ設定した複数の画像が一画面に同時に表示されるよう、個別に入力装置毎に認識し、しかも個別の画質調整を行うことができる。」 4 甲8記載の事項 「解除〔かいじょ〕cancel, release, cancellation 通常の状態に戻すこと。特別な処置を取り止めること。(例)下り坂を、エンジンブレーキを解除して走行する。ロックを解除して蓋を開放する。」(第17頁第11?14行) 第5 申立理由2についての検討 事案に鑑み、申立理由2、申立理由3、申立理由1の順に検討する。 1 本件発明1について (1)本件発明1の技術的意義について 本件発明1は、医用画像表示装置において、特に、複数種の医療画像撮影装置で撮影された画像を同一の表示装置に表示する際の表示技術に関するものである(本件明細書の段落【0001】参照。以下、括弧書き同様。) 従来、内視鏡の細い管を被検体の内部に差し入れた状態でX線診断装置により被検体を撮影してX線画像を得ることで、内視鏡の先端部が被検体の内部のどの位置にあるのかを把握することができる技術があり、特開平2-68027号公報には、これらX線画像、及び内視鏡画像を一つの画面上に、各々、大きさと位置を変えて表示することで診断時の操作性の向上を図る内視鏡診断用X線テレビジョン装置が開示されており、また、一般にX線画像は白黒及びその中間階調によるモノクロで表示され、内視鏡画像はカラーで表示されるところ、内視鏡画像に関しては操作者の要求に応じて色相を変えて表示することがあった(段落【0002】?【0005】)。 しかしながら上記特開平2-68027号公報では、X線画像、及び内視鏡画像を一つの画面上に表示した場合、操作者の要求に応じて内視鏡画像のみの色相を変えて表示することは困難であった(段落【0006】)。 そこで、本件発明1は、異なる医用画像撮影装置を用いてそれぞれ取得した画像を同一の画像表示装置に表示する際に、カラーで表示される画像のみに操作者の要求に応じて色調整を行なうことが可能な医用画像表示装置を提供することを目的として(段落【0007】)、本件発明1の発明特定事項(A1)?(D1)を備えることにより、上記課題を解決したものである。 (2)本件発明1の発明特定事項(B1)について 本件発明1の発明特定事項(B1)の「前記画像表示部に表示した複数の表示画像のうち、個別の色調整を可能とする表示画像を設定する色調整領域設定部」に関して、本件明細書に以下の記載がある。 ア 「【0025】 色調整領域設定部202は、キャプチャー部102によって付加された医用画像撮影装置情報に基づいて、画像表示装置105に表示される複数の表示画像のうち個別の色調整を可能とさせる表示画像を設定する。該設定に関し、色調整領域設定部202は、予め登録してある図3に示す医用撮影装置表示色対応表301を参照して行なわれる。図3に示す医用撮影装置表示色対応表301は、各医用画像撮影装置によって取得した画像を画像表示装置105に表示する際に個別の色調整を可能とするか否かを設定している。 【0026】 本実施形態では、X線透視撮影装置109は個別の色調整を不可能に設定し、内視鏡110は個別の色調整は可能に設定している。これは一般に、X線透視撮影装置で取得した画像は表示装置に表示する際モノクロで表示され、内視鏡で取得した画像はカラーで表示される為である。また、X線CT装置、MRI装置等はモノクロ画像、カラー画像のいずれの場合もある為、色調整領域設定部202は、操作者の要求に応じて個別の色調整を可能とするか否かを設定する手段を備えている。操作者は、該設定に際し、操作卓108を用いて制御部106を介して色調整領域設定部202に指令を行なう。 【0027】 色調整部203は、色調整領域設定部202にて個別の色調整を可能とした表示画像に対し、操作者の要求に応じて個別の色調整を行ない画像表示装置105に表示する。」 イ 「 」 上記(1)で述べたように、本件発明1は、X線画像のようなモノクロの表示画像、及び内視鏡画像のようなカラーの表示画像を一つの画面上に表示した場合、操作者の要求に応じて内視鏡画像のようなカラーの表示画像のみの色相を変えて表示することは困難であったことを課題として、発明特定事項(A1)?(D1)を備えることにより、異なる医用画像撮影装置を用いてそれぞれ取得した画像を同一の画像表示装置に表示する際に、カラーで表示される画像のみに操作者の要求に応じて色調整を行なうことが可能な医用画像表示装置である。 とすれば、上記ア及びイから、本件発明1の発明特定事項(A1)を加味した発明特定事項(B1)である、「複数の異なる医用画像撮影装置を用いて撮影した画像を画像データとして」「入力した画像データに基づいて」「画像表示部」の「同一画面に表示」「した複数の表示画像のうち、個別の色調整を可能とする表示画像を設定する色調整領域設定部」とは、キャプチャー部によって付加された医用画像撮影装置情報に基づいて予め登録してある医用画像撮影装置と個別色調整の不可/可の対応表を参照するなどして、X線透視撮影装置等で取得したモノクロで表示される画像を色調整不可能に設定し、内視鏡等で取得したカラーで表示される画像を色調整可能に設定するもの、すなわち、内視鏡カラー画像のような色調整可能とすべき表示画像を、X線モノクロ画像のような色調整不可能とすべき表示画像と区別して、色調整可能に設定するものであると理解できる。 (3)甲1記載の発明について 特許異議申立人は、本件発明1の発明特定事項(B1)の「前記画像表示部に表示した複数の表示画像のうち、個別の色調整を可能とする表示画像を設定する色調整領域設定部」との関連で、甲1の(甲1オ)、(甲1キ)及び(甲1ク)の記載を引用し、甲1は、テレビモニタ5(本件発明1の「画像表示部」に相当)のうち、個別の明るさ及びコントラストの調整を可能とする表示画像を設定する選択スイッチ11(本件発明の「色調整領域部」に相当)を開示するとして、甲1の選択スイッチ11は画像の個別の明るさ及びコントラストの調整を可能とする表示画像を設定するのに対し、発明特定事項(B1)の色調整領域設定部は、個別の色調整を可能とする表示画像を設定する点で相違する旨主張する。 しかしながら、選択スイッチ11は各領域E_(1)?E_(4)のうちこれから調整しようとする1つの領域を選択するものであり、各領域E_(1)?E_(4)はいずれも調整が可能な表示画像であって(甲1オ参照。)、他に調整を不可能とすべき表示画像は存在しないのであるから、本件発明1のように、色調整可能とすべき表示画像を、色調整不可能とすべき表示画像と区別して、色調整可能に設定するものではない。 なお、本件明細書において、甲1記載の選択スイッチ11のように画像表示を調整することができる複数の領域からこれから調整しようとする1つを選択する役割を担うものとしては、段落【0038】に「カラー表示による複数の内視鏡画像のうち、特定の画像のみ色調整バー605による色調整を行えないように」して「1枚ずつ色の微調整を行うことができる」ようにする「それぞれの画像毎に備え」られる「色調整解除手段」が記載されており、これは、色調整領域設定部とは独立の構成である。 また、甲1のその他の記載にも、本件発明1の発明特定事項(B1)の「…色調整領域設定部」に相当するものは見当たらない。 したがって、甲1に記載の発明は、本件発明1の発明特定事項(B1)の「…色調整領域設定部」に相当する構成を備えていない。 (4)周知技術について 特許異議申立人は、医用画像を撮影し表示する装置において、複数の医用画像撮影装置を接続する構成が周知の構成であることの例示として、甲2?甲6を挙げている。 しかしながら、甲2?甲6のいずれにも、本件発明1の発明特定事項(B1)の「…色調整領域設定部」に相当する構成は記載されておらず、また、その構成が周知技術であるともいえない。 (5)甲6の記載事項について 特許異議申立人は、本件発明1の色調整との関連で、甲6の(甲6イ)の記載を引用し、甲6には、コントローラブルな画像を複数の画像から選択し、当該選択画像について、画像に含まれる対象の色をの調整を含む表示用画像処理を行うことが開示されおり、従って、甲6の開示に基づき、甲1記載の発明の構成において、選択スイッチ11が画像の個別の色の調整を可能とする表示画像を設定し、操作スイッチ12により設定された画像の個別の色を調整することは、当業者であれば極めて容易になし得る設計的事項に過ぎない旨主張する。 しかしながら、甲6には、本件発明1の発明特定事項(B1)の「…色調整領域設定部」に相当する構成は記載されていない。 (6)本件発明1についての申立理由2の判断 本件発明1の発明特定事項(B1)の「前記画像表示部に表示した複数の表示画像のうち、個別の色調整を可能とする表示画像を設定する色調整領域設定部」は、甲1?甲6のいずれにも記載されておらず、また、周知技術ともいえない。 よって、本件発明1は甲1?甲6及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることはできない。 2 本件発明2?5について 本件発明2?5は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1?甲6及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることはできない。 3 小括 上記のとおり、本件発明1?5は、いずれも甲1?甲6及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることはできないから、異議理由2の理由及び証拠によっては、それらの特許を取り消すことはできない。 第6 申立理由3についての検討 1 本件発明1について (1)本件発明1の技術的意義について 本件発明1の技術的意義については、上記1(1)で述べたとおりである。 (2)本件発明1の発明特定事項(B1)について 本件発明1の発明特定事項(B1)については、上記1(2)で述べたとおりである。 (3)甲7記載の発明について 特許異議申立人は、本件発明1の発明特定事項(B1)の「…色調整領域設定部」との関連で甲7の段落【0020】、【0023】、【0028】、【0031】及び【0038】の記載を引用し、甲7は、表示部(本件発明1の「画像表示部」に相当)に表示した画像(本件発明1の「複数の表示画像に相当」)のうち、個別に色調整を可能とする表示画像を設定する操作部(本件発明1の「色調整領域部」に相当)を開示する旨主張する。 しかしながら、甲7記載の前記操作部は、「複数で入力されたそれぞれの表示信号に対して、個々の画像調整を行う(段落【0023】参照。)ために、ステップ2の調整画像選択作業(段落【0028】参照。)及びステップ4の画像調整作業(段落【0029】参照。)で使用者が用いるキーボード、マウス、またはリモコンであり(段落【0028】参照。)、複数で入力されたそれぞれの表示信号に対応する画像のうち、調整を不可能とすべき表示画像は存在しないのであるから、本件発明1のように、色調整可能とすべき表示画像を、色調整不可能とすべき表示画像と区別して、色調整可能に設定するものではない。 なお、本件明細書において、甲7記載の上記操作部のように、複数の入力画像のうち画像調整を行う画像を選択するような役割を担うものとしては、段落【0038】に「カラー表示による複数の内視鏡画像のうち、特定の画像のみ色調整バー605による色調整を行えないように」して「1枚ずつ色の微調整を行うことができる」ようにする「それぞれの画像毎に備え」られる「色調整解除手段」が記載されており、これは、色調整領域設定部とは独立の構成である。 また、甲7のその他の記載にも、本件発明1の発明特定事項(B1)の「…色調整領域設定部」に相当するものは見当たらない。 したがって、甲7に記載の発明は、本件発明1の発明特定事項(B1)の「…色調整領域設定部」に相当する構成を備えていない。 (4)周知技術について 周知技術については、上記1(4)で述べたとおりである。 (5)甲6の記載事項について 甲6の記載事項については、上記1(5)で述べたとおりである。 (6)本件発明1についての申立理由3の判断 本件発明1の発明特定事項(B1)の「前記画像表示部に表示した複数の表示画像のうち、個別の色調整を可能とする表示画像を設定する色調整領域設定部」は、甲1?甲6のいずれにも記載されておらず、また、周知技術ともいえない。 よって、本件発明1は、甲1?甲6及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることはできない。 2 本件発明2?5について 本件発明2?5は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲7、甲2?甲6及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることはできない。 3 小括 上記のとおり、本件発明1?5は、いずれも甲7、甲2?甲6及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとすることはできないから、異議理由3の理由及び証拠によっては、それらの特許を取り消すことはできない。 第7 申立理由1についての検討 1 本件発明1(請求項1)について (1)特許異議申立人は、本件発明1の発明特定事項(B1)及び(C1)は、同一の医用画像撮像装置で撮像された複数の画像のうち、どの表示画像に対して個別に色調整をするかを設定(選択)し、設定(選択)された表示画像に個別の色調整を行う構成を含む記載となっているが、本件明細書の段落【0025】?【0027】によれば、「色調整領域設定部202」は、医用画像撮像装置情報に基づいて「各医用画像撮像装置」について「個別の色調整を可能とするか否かを設定」し、「色調整部203」は、個別の色調整を可能とする装置に対応する表示画像について色調整を行うだけであって、装置とは無関係に個別の画像を選択し、選択された画像毎に色調整を可能とする構成は記載されていないから、本件明細書に記載された発明の詳細な説明は、本件発明1に記載される「色調整領域設定部」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、同様の理由により、本件発明1は本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではないから特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、さらに、本件発明1は、複数の発明の概念を包含するものであり、その内容が明確ではないから特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないことから、本件特許は特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきである旨主張する。 (2)しかしながら、特許異議申立人は、本件発明1の発明特定事項(B1)を正解していない。すなわち、上記第5の1(2)で述べたように、本件発明1の発明特定事項(B1)の「…色調整領域設定部」とは、内視鏡カラー画像のような色調整可能とすべき表示画像を、X線モノクロ画像のような色調整不可能とすべき表示画像と区別して、色調整可能に設定するものであると理解できる。 とすれば、同一の医用画像撮像装置で撮像された複数の画像は、モノクロかカラーのいずれかであって、モノクロであればすべてを色調整不可能に設定し、カラーであればすべてを色調整可能に設定するのであるから、特許異議申立人の解釈のように、同一の医用画像撮像装置で撮像された複数の画像のうち、どの表示画像に対して個別に色調整をするかを設定(選択)し、設定(選択)された表示画像に個別の色調整を行うことを発明特定事項(B1)及び(C1)が含むという特許異議申立人の解釈は、取り得ないのである。 したがって、発明の詳細な説明が発明特定事項(B1)の「…色調整領域設定部」を当業者が実施できる程度に明確にかつ十分に記載したものではないという特許異議申立人の主張はその前提において誤っており、採用することができない。そして、「色調整領域設定部」については、上記第5の1(2)で述べたように、発明の詳細な説明の段落【0025】?【0027】及び図3に詳説され、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものといえる。 (3)また、特許法第36条6項1号のサポート要件についても、同様の理由により、特許異議申立人の主張はその前提において誤っており、本件発明1は本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではないとする特許異議申立人の主張を採用することができない。そして、「色調整領域設定部」については、上記第5の1(1)(2)で述べたように、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0025】?【0027】に詳述されており、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものであるから、特許法第36条第6項第1号のサポート要件を満たすものといえる。 (4)さらに、特許法第36条6項2号の明確性要件についても、同様に理由により、特許異議申立人の主張はその前提において誤っており、複数の発明の概念を包含するものでありその内容が明確でないとする特許異議申立人の主張を採用することができない。そして、「色調整領域設定」については、上記第5の1(2)で述べたように、明確に把握できるというべきである。 (5)したがって、本件明細書に記載された発明の詳細な説明は、本件発明1に記載される「色調整領域設定部」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したもので特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしており、また、本件発明1は本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるから特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしており、さらに、本件発明1はその内容が明確であるから特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていることから、本件特許は特許法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。 2 本件発明3(請求項3)について (1)特許異議申立人は、請求項3は請求項1に従属するところ、本件発明3は、本件発明1との関係において「色調整領域設定部202」が個別の画像を選択し、選択された画像毎に「色調整手段」が色調整を行う構成において、同一の医用画像撮影装置で撮像された異なる複数の画像のうち選択された画像に対し、色調整手段による調整が個別に行われる構成を特に限定した記載となっているが、本件明細書の段落【0038】には、色調整バー605による色調整の結果は複数の内視鏡画像601から603に対して一括して反映されるものであって、複数の画像のうち個別に選択された画像に対し、色調整バー605による色調整の結果が選択された画像毎に個別に反映される構成は記載されていないし、「色調整解除手段」は「色調整手段」とは独立の構成である、すなわち、同一の医用画像撮像装置で撮影した異なる複数の画像に対し色調整手段がまとめて色調整を行う構成のみが記載されており、(同一の医用画像撮像装置で撮像された複数の画像のうち、どの表示画像に対して個別に色調整をするかを設定(選択)し)、複数の画像について個別に色調整を行う色調整手段の構成は記載されていないから、本件明細書に記載された発明の詳細な説明は、本件発明3に記載される「色調整手段」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものであり、同様の理由により、本件発明3は本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではないから特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、さらに、本件発明3は、複数の発明の概念を包含するものであり、その内容が明確ではないから特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件特許は特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきである旨主張する。 (2)これを検討するに、発明特定事項(A3)の「前記色調整手段による調整は、前記画像表示部に表示した同一の医用画像撮影装置で撮影した異なる複数の画像に対しそれぞれ行う」ことに関して本件明細書には以下の記載がある。 ア 「【0038】 例えば、図6に示すように、内視鏡110によって取得されたカラー表示による複数の内視鏡画像610乃至603と、X線透視撮影装置109によって取得されたモノクロ表示によるX線画像604が、同一の画像表示装置105に表示した際、1つの色調整バー605によって内視鏡画像601乃至603の色調整を行えるようにしてもよい。このように複数の画像を一度に表示する場合は、連続して撮影された画像である場合が多く、これら複数の画像で共通して色調整を行いたい場合に有効である。また、特に図示しないが、これらカラー表示による複数の内視鏡画像のうち、特定の画像のみ色調整バー605による色調整を行えないように色調整解除手段をそれぞれの画像毎に備えてもいい。これにより、複数の画像において一度大まかな色調整をした後、前記色調整解除手段を用いて1枚ずつ色の微調整を行うことができる。 【0039】 このように、同一の医用画像撮影装置で撮影したカラー表示による異なる複数の画像に対し、一つの色調整バー605によって色調整を行なえることで操作者の利便性が向上する。」 イ 「 」 上記ア及びイから、発明特定事項(A3)の「前記色調整手段による調整は、前記画像表示部に表示した同一の医用画像撮影装置で撮影した異なる複数の画像に対しそれぞれ行う」とは、発明の詳細な説明における実施形態としては、内視鏡110によって取得されたカラー表示による複数の内視鏡画像610乃至603と、X線透視撮影装置109によって取得されたモノクロ表示によるX線画像604が、同一の画像表示装置105に表示した際、(ア)1つの色調整バー605によって内視鏡画像601乃至603の色調整を行うこと、及び、(イ)これらカラー表示による複数の内視鏡画像のうち、特定の画像のみ色調整バー605による色調整を行えないように色調整解除手段をそれぞれの画像毎に備え、これにより、複数の画像において一度大まかな色調整をした後、前記色調整解除手段を用いて1枚ずつ色の微調整を行うことであると理解できる。 よって発明特定事項(A3)の「前記色調整手段による調整は、前記画像表示部に表示した同一の医用画像撮影装置で撮影した異なる複数の画像に対しそれぞれ行う」とは、内視鏡カラー画像のような複数の画像に対し、上記(ア)及び(イ)になどにより、1枚ずつ色の調整を行うことであると理解できる。 (3)特許異議申立人は、色調整バー605による色調整の結果は複数の内視鏡画像601から603に対して一括して反映されるものであって、複数の画像のうち個別に選択された画像に対し、色調整バー605による色調整の結果が選択された画像毎に個別に反映される構成は記載されていないと主張するが、発明特定事項(A3)の「前記色調整手段による調整は、前記画像表示部に表示した同一の医用画像撮影装置で撮影した異なる複数の画像に対しそれぞれ行う」ことは、上記(2)で述べたように、上記(ア)及び(イ)により実施し得るのであり、必ずしも特許異議申立人が示すような複数の画像のうち個別に選択された画像に対し、色調整バー605による色調整の結果が選択された画像毎に個別に反映されることによって実施されなければならない理由はない。 (4)また、特許異議申立人は、「色調整解除手段」は「色調整手段」とは独立の構成である旨主張するが、発明特定事項(A3)の「前記色調整手段による調整は、前記画像表示部に表示した同一の医用画像撮影装置で撮影した異なる複数の画像に対しそれぞれ行う」と規定し、「色調整手段による調整」が「前記画像表示部に表示した同一の医用画像撮影装置で撮影した異なる複数の画像に対しそれぞれ行う」際に、具体的にどのようにして複数の画像に対してそれぞれ行うようにするかを規定していないのであって、「色調整手段」とは独立の「色調整解除手段」を用いて行う態様をも含み得るのであるから、「色調整手段」と「色調整解除手段」が独立であっても、上記(2)及び(3)のように解することの妨げになるものではない。 (5)よって、本件明細書に記載された発明の詳細な説明には発明特定事項(A3)の「色調整手段」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものといえる。 (6)また、上記(2)?(4)で検討したとおり、本件発明3は本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるから、特許法第36条第6項1号に規定する要件を満たすものといえる。 (7)さらに、上記(2)?(4)で検討したとおり、本件発明3はその内容が明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものといえる。 3 本件発明4(請求項4)について (1)特許異議申立人は、発明特定事項(A4)の「前記色調整手段は、異なる種類の医用画像撮影装置で撮影した画像ごとに備えること」という記載は、色調整手段が、異なる種類の医用画像撮影装置で撮影した画像につき装置毎に表示される場合と、撮影した装置とは無関係に画像毎に表示される場合とのいずれをも含む記載となっているが、段落【0040】及び図7に記載のように、画面に表示される色調整バー605及び702は、それぞれ内視鏡画像用、X線CT画像用に1つずつ表示されているにすぎず、装置の種類にかかわらず画像毎に色調整手段を表示する構成は記載されていないから、本件明細書に記載された発明の詳細な説明には、本件発明4に記載される「色調整手段」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものであり、また、同様の理由により、本件発明4は本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではないから特許法第36条第6項1号に規定する要件を満たしてないものであり、さらに、本件発明4は、色調整手段が、異なる種類の医用画像撮影装置で撮影した画像につき装置毎に表示されるのか、それとも、撮影した装置とは無関係に画像毎に表示されるのかが明確ではなく、発明が明確でないから特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件特許は特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきである旨主張する。 (2)これを検討するに、発明特定事項(A4)の「前記色調整手段は、異なる種類の医用画像撮影装置で撮影した画像ごとに備えること」に関して、本件明細書には以下の記載がある。 ア 「【0040】 また、図7に示すように、図6で表示した内視鏡画像601乃至603、及びX線画像604に加え、X線CT装置によって取得され医用撮影装置表示色対応表301にて個別の色調整を可能と設定したカラー表示によるX線CT画像701が同一の画像表示装置105に表示した際、内視鏡画像601乃至603の色調整を行なう色調整バー605に加え、X線CT画像701の色調整を行なう色調整バー702を備えてもよい。 【0041】 これにより、異なる種類の医用画像撮影装置で撮影したカラー表示による画像を同一の画像表示装置105に表示した際でも、各医用画像撮影装置で撮影した画像ごとに適した色調整を個別に行なうことができる。」 イ 「 」 上記ア及びイから、発明特定事項(A4)の「異なる種類の医用画像撮影装置で撮影した複数の画像を前記画像表示部に表示した際、前記色調整手段は、異なる種類の医用画像撮影装置で撮影した画像ごとに備えること」とは、発明の詳細な説明の実施形態としては、内視鏡画像601乃至603、及びX線画像604に加え、個別の色調整を可能と設定したカラー表示によるX線CT画像701が同一の画像表示装置105に表示した際、内視鏡画像601乃至603の色調整を行なう色調整バー605に加え、X線CT画像701の色調整を行なう色調整バー702を備え、これにより、異なる種類の医用画像撮影装置で撮影したカラー表示による画像を同一の画像表示装置105に表示した際でも、各医用画像撮影装置で撮影した画像ごとに適した色調整を個別に行なうことであると理解できる。 よって、発明特定事項(A4)の「前記色調整手段は、異なる種類の医用画像撮影装置で撮影した画像ごとに備えること」とは、ある種類の医用画像撮影装置で撮影した画像に対して色調整手段を備え、他の種類の医用画像撮影装置で撮影した画像に対して別の色調整手段を備えることと解すべきことは明らかである。 (3)特許異議申立人は、発明特定事項(A4)について、色調整手段が、異なる種類の医用画像撮影装置で撮影した画像につき装置毎に表示される場合と、撮影した装置とは無関係に画像毎に表示される場合とのいずれをも含む記載となっていると主張するが、(2)で述べたとおり、発明特定事項(A4)は前者の意味に解すべきことが明らかであり、後者のように解すべき余地はない。 したがって、装置の種類にかかわらず画像ごとに色調整手段を表示する構成が記載されていないから発明の詳細な説明には本件発明4に記載される「色調整手段」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないという特許異議申立人の主張は、その前提において誤っており、採用することができない。 (4)また、上記(2)で検討したとおり、本件発明4は本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるから、特許法第36条第6項1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 (5)さらに、上記(2)で検討したとおり、本件発明4はその内容が明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 4 本件発明5(請求項5)について (1)特許異議申立人は、発明特定事項(A5)の「解除」という用語について、甲8によれば、「解除」とは元の状態に戻すことを意味する用語であるところ、段落【0038】の記載によれば、「色調整解除手段」とは、特定画像のみ色調整バー605による色調整を行えないようにするための手段、換言すれば、色調整手段による調整を特定の画像以外には反映しないようにするための手段であって、その機能は、色調整バーにより画像に対して行われた色調整を解除して元の状態に戻すことではないのであるから、本件明細書に記載された発明の詳細な説明には、色調整解除手段として、異なる複数の画像のうち特定の画像以外には色調整手段による調整を行えないようにするための構成のみが記載されており、色調整手段による調整が施された画像を元の状態に戻すための構成は全く記載されていないから、本件明細書に記載された発明の詳細な説明は、本件発明5に記載される「色調整解除手段」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものであり、同様の理由により、本件発明5は本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明ではないから特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、さらに、本件発明5は、複数の発明の概念を包含するものであり、その内容が明確ではないから特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきである旨主張する。 (2)しかしながら、発明特定事項(A5)の「前記画像表示部に表示した画像ごとに前記色調整手段による調整を解除する色調整解除手段を備える」ことは、段落【0038】の「これらカラー表示による複数の内視鏡画像のうち、特定の画像のみ色調整バー605による色調整を行えないように色調整解除手段をそれぞれの画像毎に備え」ることに相当することは明らかであり、カラー表示による複数の内視鏡画像については段落【0025】?【0027】に記載のように色調整領域設定部202によって色調整可能に設定されるのであるから、色調整領域設定部202によって、色調整可能に設定されたカラー表示による複数の内視鏡画像のうち、特定の画像のみ色調整バー605による色調整を行えないようにすることは、一旦色調整可能に設定された画像を、色調整を行えない通常の状態に戻すこと、あるいは、色調整可能に設定するという特別な処理を取り止めることといえ、甲8の「解除」の意味と整合するのである。 また、発明の詳細な説明のこれらの記載を参酌すれば、「色調整解除手段」の機能を、色調整バーにより画像に対して行われた色調整を解除して元の状態に戻すと解する余地はないことは明らかである。 したがって、色調整手段による調整が施された画像を元の状態に戻すための構成が全く記載されていないから本件明細書に記載された発明の詳細な説明は本件発明5に記載される「色調整解除手段」を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではなく特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないという特許異議申立人の主張は、その前提において誤っており、採用できない。 (3)また、上記(2)で検討したとおり、本件発明5は本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるから、特許法第36条第6項1号に規定する要件を満たしているものといえる。 (4)さらに、上記(2)で検討したとおり、本件発明5はその内容が明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものといえる。 5 小括 上記のとおり、本件特許発明1、3?5は、いずれも特許法第36条4項1号、同法同条6項1号、及び、同法同条6項2号の要件を満たしているから、申立理由1の理由によっては、それらの特許を取り消すことはできない。 第8 結語 以上のとおりであるから、本件発明1?5の特許は、特許異議申立理由および証拠によっては取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?5の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2016-01-26 |
出願番号 | 特願2011-81514(P2011-81514) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(A61B)
P 1 651・ 536- Y (A61B) P 1 651・ 121- Y (A61B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 伊藤 幸仙 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
藤田 年彦 信田 昌男 |
登録日 | 2015-02-20 |
登録番号 | 特許第5697515号(P5697515) |
権利者 | 株式会社日立メディコ |
発明の名称 | 医用画像表示装置 |