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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1315589
審判番号 不服2015-2172  
総通号数 199 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-04 
確定日 2016-06-09 
事件の表示 特願2012-273653号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月14日出願公開、特開2013- 48991〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年1月31日に出願した特願2001-023836号の一部を平成24年12月14日に新たな特許出願としたものであって、平成25年1月11日に手続補正書が提出され、平成26年3月17日付けで拒絶の理由が通知され、平成26年5月14日に意見書が提出されたところ、平成26年12月9日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成27年2月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年2月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、特許請求の範囲の請求項1は、
補正前(平成25年1月11日付け手続補正)の
「【請求項1】
始動口に遊技球が入賞すると、所定の意味を有する変動図柄が画面上で変動後、停止して、上記意味により遊技の結果を表現する確定図柄となる図柄表示手段を備えた遊技機であって、
通常より大当りの期待値の高い遊技状態である場合に、上記変動図柄と同一の上記意味を有すると共に、相異する態様を有する相異態様図柄を、上記変動図柄に代えて上記変動の開始時から表示させる相異態様図柄表示手段と
を備えたことを特徴とする遊技機。」
から、
補正後(本件補正である平成27年2月4日付け手続補正)の
「【請求項1】
始動口に遊技球が入賞すると、所定の意味を有する変動図柄が画面上で変動後、停止して確定図柄となり、上記確定図柄により遊技の結果を表現する図柄表示手段を備えた遊技機であって、
通常より大当りの期待値の高い遊技状態である場合に、上記変動図柄と同一の上記意味を有すると共に、相異する態様を有する相異態様図柄を、上記変動図柄に代えて上記変動の開始時から表示させる相異態様図柄表示手段を備え、
上記相異態様図柄は、上記相異態様図柄に特有のキャラクタを含むことを特徴とする遊技機。」
へ補正された(下線部は補正箇所を示す。)。

2 補正の適否について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、相異態様図柄に関して「上記相異態様図柄に特有のキャラクタを含む」とし、相異態様図柄の態様を限定する補正事項を含んでいる。
そして、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、補正事項は、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物に記載された発明
当審で新たに引用する本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である、特開平8-155108号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1-a)「【0009】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。先ず、図1を参照して実施例に係る弾球遊技機(図示ではパチンコ遊技機)の遊技盤1の構成について説明する。図1は、遊技盤1を示す正面図である。図1において、遊技盤1の表面には、発射された打玉を誘導するための誘導レール2がほぼ円状に植立され、該誘導レール2で区画された領域が遊技領域3を構成している。遊技領域3のほぼ中央には、後述する各図柄表示部58a?58cでの識別情報(以下、遊技図柄という)の可変表示(以下、変動ともいう)を可能にする可変表示装置50が配置されている。なお、可変表示装置50の詳細な構成については後に詳述するものである。」

(1-b)「【0010】可変表示装置50の下方には、始動玉通過口4が配置されており、該始動玉通過口4を通過する打玉は、始動玉通過口4に設けられた始動玉検出器5によって検出される。そして、始動玉検出器5が打玉を検出すると、可変表示装置50の図柄表示部58a?58cが変動し、その表示結果が当り図柄であるときに後述する権利発生装置6の開閉片9a・9bを所定時間開放するようになっている。なお、始動玉検出器5のON動作に基づく可変表示装置50の変動は、所定回数(例えば、4回)記憶され、その旨が可変表示装置50に設けられる後述の記憶表示LED64によって表示される。」

(1-c)「【0019】次に、前記LCD表示器52の各図柄表示部52a?52cに表示される各図柄について説明する。各図柄表示部52a?52cに可変表示される左・中・右の各図柄列には、それぞれ「1?11」の番号が順次設けられると共に、この番号に対応してWCRND ZUL・ZUC・ZUR(図30参照)の各ランダム数が設けられている。そして、これら3つ(WCRND ZUL・ZUC・ZUR)の各図柄列は、それぞれあたかもリール回転するように変動され、変動開始時から所定時間が経過したときに左・中・右の順で停止されて3個の図柄が確定されることとなる。なお、左・中・右の各図柄列における当り図柄の組合せは、各図柄列に同一図柄が揃って停止表示された組合せである。」

(1-d)「【0035】次に、可変表示装置50のリーチ変動における具体的な表示画像について図37乃至図41を参照して以下に説明する。可変表示装置50の全体的な表示画像は、図37のタイムチャートに示すようになっており、図37中には、通常確率時のリーチ(当り以外のとき)、高確率時のリーチ(当り以外のとき)、通常確率時のリーチ(当り以外のとき)、通常確率時のリーチ(当りのとき)、高確率時のリーチ(当りのとき)、通常確率時のリーチ(当りのとき)の各リーチ変動における表示画像(画面)をまとめて記載している。なお、通常確率時の変動画像は、図38(A)に示すように、図柄表示部52a?52cの各メイン図柄90(「1?11」の番号)毎にゴルフピンの旗がバック図柄91として表示され、リーチ変動時には、図38(B)に示すように、先に確定した左・中の各図柄が縮小されて上方にリーチ図柄92として表示されると共に、図柄表示部52a・52bの全領域にゴルフをするキャラクタ図柄93が出現する。一方、高確率時の変動画像は、図39(A)に示すように、前記メイン図柄90の色調と異なるメイン図柄94(「1?11」の番号)が各図柄表示部52a?52cに表示されると共に、各メイン図柄94毎にバスケットのシャツがバック図柄95として表示され、リーチ変動時には、図39(B)に示すように、先に確定した左・中の各図柄が縮小されて上方にリーチ図柄92として表示されると共に、図柄表示部52a・52bの全領域にバスケットをするキャラクタ図柄96が出現する。」

(1-e)「【0045】以上のように、本実施例の可変表示装置50は、当りの通常確率時及び高確率時(所定条件)で表示画像を異なって設定している。即ち、図柄変動時には、当りの通常確率時と高確率時とでバック図柄を変更し、また、リーチ変動時には、キャラクタ図柄を変更することで、遊技者に対して遊技状態を視覚的に分かりやすくしている。なお、本実施例中では、通常確率時にゴルフ関連の表示を行う一方、高確率時にはバスケット関連の表示を行っているが、特にこのような表示内容は限定するものではない。また、表示画像を変更する所定条件としては、通常確率時及び高確率時に限定するものではなく、始動回数、リーチ回数、大当り回数等の遊技履歴や乱数の抽出によるものや、あるいは予め表示画像の変更順序を設定したものであってもよい。さらに、本実施例では、リーチ変動時、最終停止図柄列52cを残した状態でキャラクタ図柄を出現させる構成となっているが、特にこれに限定するものではなく、リーチ変動に伴って表示画面全体にキャラクタ図柄を表示する構成や、最初から変動図柄(識別情報)の表示部とキャラクタ図柄の表示部とで分割表示する構成であっても構わない。」

(1-f)上記(1-c)の記載によれば、各図柄列が停止されて3個の図柄が確定され、その際の停止表示された組合せが、各図柄列に同一図柄が揃って停止表示された組合せであると、当り図柄の組合せを意味するから、停止表示された組合せにより遊技の結果を表現しているといえる。

(1-g)上記(1-e)の記載によれば、図柄変動時にバック図柄を変更することで、遊技者に対して通常確率時であるか、高確率時であるかを視覚的にわかりやすくしているのであるから、バック図柄が、変動の開始時から変更されていることは明らかであり、高確率時は、バスケットのシャツがバック図柄95として表示されるメイン図柄94が、変動の開始時から表示させることが記載されているといえる。

上記記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

「始動玉通過口4を打玉が通過すると、それぞれ「1?11」の番号が順次設けられたメイン図柄90が変動し、停止して3個の図柄が確定され、停止表示された組合せにより遊技の結果を表現する可変表示装置50を備えた弾球遊技機において、
高確率時は、それぞれ「1?11」の番号が順次設けられ、バスケットのシャツがバック図柄95として表示されるメイン図柄94を、変動の開始時から表示させる可変表示装置50を備える弾球遊技機。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明の「始動玉通過口4」、「打玉」、「可変表示装置50」及び「弾球遊技機」は、本願補正発明の「始動口」、「遊技球」、「図柄表示手段」及び「遊技機」にそれぞれ相当する。
また、刊行物1発明のメイン図柄90は、それぞれ「1?11」の番号が順次付与されているから、各々のメイン図柄90は所定の意味を有しているといえ、刊行物1発明の「メイン図柄90」は、本願補正発明の「変動図柄」に相当する。そして、刊行物1発明の「停止表示された組合せ」は、停止して3個の図柄が確定されたものであるから、本願補正発明の「確定図柄」に相当する。
よって、刊行物1発明の「始動玉通過口4を打玉が通過すると、それぞれ「1?11」の番号が順次設けられたメイン図柄90が変動し、停止して3個の図柄が確定され、停止表示された組合せにより遊技の結果を表現する可変表示装置50を備えた弾球遊技機」は、本願補正発明における「始動口に遊技球が入賞すると、所定の意味を有する変動図柄が画面上で変動後、停止して確定図柄となり、上記確定図柄により遊技の結果を表現する図柄表示手段を備えた遊技機」に相当する。

イ 刊行物1発明おける「高確率時」が、通常よりも当りとなる期待値が高い遊技状態であることは明らかである。
また、刊行物1発明において、上記(1-d)の記載によれば、メイン図柄94は、メイン図柄90と同様に「1?11」の番号が順次設けられているが、ゴルフピンの旗がバック図柄91として表示されるメイン図柄90と異なり、バスケットのシャツがバック図柄95として表示される。これより、メイン図柄94は、メイン図柄90と同一の意味を有すると共に、相異する態様を有するといえるから、刊行物1発明の「メイン図柄94」は、本願補正発明の「相異態様図柄」に相当する。
よって、刊行物1発明における「高確率時は、それぞれ「1?11」の番号が順次設けられ、バスケットのシャツがバック図柄95として表示されるメイン図柄94を、変動の開始時から表示させる可変表示装置50」は、本願補正発明における「通常より大当りの期待値の高い遊技状態である場合に、上記変動図柄と同一の上記意味を有すると共に、相異する態様を有する相異態様図柄を、上記変動図柄に代えて上記変動の開始時から表示させる相異態様図柄表示手段」に相当する。

上記ア?イの検討より、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「始動口に遊技球が入賞すると、所定の意味を有する変動図柄が画面上で変動後、停止して確定図柄となり、上記確定図柄により遊技の結果を表現する図柄表示手段を備えた遊技機であって、
通常より大当りの期待値の高い遊技状態である場合に、上記変動図柄と同一の上記意味を有すると共に、相異する態様を有する相異態様図柄を、上記変動図柄に代えて上記変動の開始時から表示させる相異態様図柄表示手段を備える遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
相異態様図柄が、本願補正発明は、特有の「キャラクタ」を含むものであるのに対し、刊行物1発明は、特有の「バック図柄95」を含むものである点。

(3)当審の判断
上記相違点について検討する。
遊技機の図柄について、図柄を数字とキャラクタの組合せにより構成することは、例えば、特開2000-271283号公報(【0051】、【図3】には、数字と魚の絵を組合せた図柄が記載されている。)や、特開平10-127882号公報(【0016】、【0180】-【0194】、【図13】,【図15】には、数字とビアジョッキーなどのキャラクタを組合せた図柄が記載されている。)に記載されているように本願出願日前に周知の技術である。また、遊技機における図柄として、どのような図柄を用いるかは、求められる装飾効果や演出効果などに応じて、当業者が適宜選択し得たものである。
したがって、刊行物1発明において、数字とバック図柄の組合せによる図柄に代えて、周知技術である、数字とキャラクタの組合せによる図柄を採用し、前記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願補正発明の作用効果は、刊行物1発明及び周知技術から見て格別なものではない。

なお、請求人は平成27年5月25日付けの上申書において、次の主張をしている(下線は当審にて付した。)。
「なお、上記相違点の構成は、停止して確定図柄となる前の変動図柄に代えて、キャラクタを含む相異態様図柄を表示するというものですので、キャラクタ画像を含む図柄のままで停止するという引用文献2の記載内容とは全く異なります。・・・上記相違点の構成によれば、相異態様図柄を表示するタイミングは変動中に限定され、変動の終了後は確定図柄が表示されますので、遊技者は、相異態様図柄に代えて確定図柄が表示されることを見て、変動が最終的に終了したことを容易に知ることができます(新たな効果)。・・・本願発明1と引用文献3の記載とを対比しますと、上記相違点の構成は、引用文献3にも記載されていません。なお、引用文献3の記載内容は、上述しましたように、ゴルフ、バスケット等の画像を表示したままで停止表示するというものですので、上記相違点の構成(停止して確定図柄となる前の変動図柄に代えて、キャラクタを含む相異態様図柄を表示する)とは全く異なります。」

そこで、上記主張について、以下で検討する。
本願補正発明における「始動口に遊技球が入賞すると、所定の意味を有する変動図柄が画面上で変動後、停止して確定図柄となり、上記確定図柄により遊技の結果を表現する図柄表示手段」との記載によれば、「変動図柄が画面上で変動後、停止して確定図柄」となるとの記載より、「変動図柄」であれば「確定図柄」となることが特定されている。しかしながら、「通常より大当りの期待値の高い遊技状態である場合に、上記変動図柄と同一の上記意味を有すると共に、相異する態様を有する相異態様図柄を、上記変動図柄に代えて上記変動の開始時から表示させる相異態様図柄表示手段」との記載において、「相異態様図柄を、上記変動図柄に代えて上記変動の開始時から表示」させた場合、「相異態様図柄」は「変動図柄」と異なる以上、「相異態様図柄」が停止後にどうなるかは特定されていない。
したがって、請求人の「相異態様図柄を表示するタイミングが変動中に限定され、変動の終了後は確定図柄が表示されます」との主張は、特許請求の範囲に記載された事項に基づかないものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1発明と周知技術により、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年1月11日付け手続補正書により補正された上記第2の1で前述した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
始動口に遊技球が入賞すると、所定の意味を有する変動図柄が画面上で変動後、停止して、上記意味により遊技の結果を表現する確定図柄となる図柄表示手段を備えた遊技機であって、
通常より大当りの期待値の高い遊技状態である場合に、上記変動図柄と同一の上記意味を有すると共に、相異する態様を有する相異態様図柄を、上記変動図柄に代えて上記変動の開始時から表示させる相異態様図柄表示手段と
を備えたことを特徴とする遊技機。」

2 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-271283号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1-a)「【0047】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)以下に、遊技機をパチンコ遊技機(以下、単に「パチンコ機」という)に具体化した第1の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。」

(1-b)「【0050】遊技盤2の中央部分には、特別図柄表示装置13が組込まれている。この特別図柄表示装置13は、液晶ディスプレイ(LCD)よりなる表示部13aを備えており、ここに複数の図柄列が表示される。図2に示すように、本実施の形態では、これらの図柄列として左図柄列14、中図柄列15及び右図柄列16の3つの図柄列が表示されるが、それ以外の数の図柄列が表示されてもよい。
【0051】各図柄列14?16は、基本的には、図2,3に示すように、複数種類(12種類)の図柄17A?17Lによって構成されている。各図柄17A?17Lは、基本的には皿に盛られた魚等の絵と、「一」?「十二」の数字との組合せによって構成されており、「一」?「十二」の数字は、昇順に配列されている。より詳しくは、「一」が「タイ」の絵と、「二」が「ウズラ」の絵と、「三」が「カッパ」の絵と、「四」がヒラメの絵と、「五」が「プリン」の絵と、「六」が「サザエ」の絵と、「七」が「女の子」の絵と、「八」が「タコ」の絵と、「九」が「キツネ」の絵と、「十」が「クジラ」の絵と、「十一」が「タケノコ」の絵と、「十二」が「カニ」の絵と組み合わされている。これらの図柄17A?17Lは、特別遊技図柄としての大当たり図柄、外れリーチ図柄及び外れ図柄のいずれかになりうる(これらについては後述する)。」

(1-c)「【0055】図2(a),(b)に示すように、特別図柄表示装置13の表示部13aでは、各図柄列14?16の図柄変動(回転変動)が、遊技球5の作動口3への入賞に基づいて開始させられる。また、大当たり図柄、外れリーチ図柄、外れ図柄の中から1つが選択され、これが停止図柄として設定される。停止図柄とは、各図柄列14?16が図柄変動を停止したときに表示される図柄である。本実施の形態では、図柄変動は、左図柄列14、右図柄列16、中図柄列15の順に停止させられるが、これはあくまでも1例にすぎず、別の順序で停止させられるようにしてもよい。」

(1-d)「【0065】また、本実施の形態においては、CPU(制御装置24)による制御の1つとして、遊技モード切替制御がある。本実施の形態においては、基本的には2つのモードが用意されている。すなわち、例えば300分の1程度の低確率で大当たり遊技状態を発生させる通常モードと、その約5倍である60分の1程度の高確率で大当たり遊技状態を発生させる高確率モード(以降、便宜上「確変モード」と称する)とがある。」

(1-e)「【0151】(o)各表示系の表示色を、モード(例えば、通常モードと確変モード)の相違や大当り期待値の相違に応じて適宜切換制御して実施すること。例えば、大当り期待値が大きくする場合等に、図柄を緑色から赤色に切り換えるように制御することなどが挙げられる。このような色の切換は、遊技状態が通常とは異なる状態であることを遊技者に明確にする、大当り期待値が大きくなったことを遊技者に明示する等の効果をもたらす。ここから導き出される技術思想としては、「図柄表示色を遊技状態に応じて切換表示すること。」、「図柄表示色をモードに応じて切換表示すること。」、「図柄表示色を大当り期待値の相違に応じて切換表示すること。」などがある。」

(1-f)上記(1-c)の記載によれば、停止図柄は、大当たり図柄、外れリーチ図柄、外れ図柄の中から1つが選択されるから、停止図柄は遊技の結果を表現しているといえる。

(1-g)上記(1-e)の記載によれば、色の切換は、遊技状態が通常とは異なる状態であることを遊技者に明確にすることを目的としているから、変動の開始時から図柄表示色の切換表示をしていることは明らかである。

上記記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されている。

「作動口3への遊技球5の入賞に基づいて、皿に盛られた魚等の絵と「一」?「十二」の数字との組合せによって構成される図柄17A?17Lによって構成されている図柄列14?16の図柄変動が開始させられ、遊技の結果を表現する停止図柄が表示される特別図柄表示装置13を備えたパチンコ遊技機であって、
通常モードより高確率で大当たり遊技状態を発生させる確変モードでは、変動の開始時から図柄表示色を切換表示する特別図柄表示装置13を備えるパチンコ遊技機。」

3 対比、判断
本願発明と刊行物2発明とを対比する。

ア 刊行物2発明の「作動口3」、「遊技球5」、「図柄17A?17L」、「停止図柄」、「特別図柄表示装置13」及び「パチンコ遊技機」は、本願発明の「始動口」、「遊技球」、「変動図柄」、「確定図柄」、「図柄表示手段」及び「遊技機」にそれぞれ相当する。
よって、刊行物2発明の「作動口3への遊技球5の入賞に基づいて、皿に盛られた魚等の絵と「一」?「十二」の数字との組合せによって構成される図柄17A?17Lによって構成されている図柄列14?16の図柄変動が開始させられ、遊技の結果を表現する停止図柄が表示される特別図柄表示装置13を備えたパチンコ遊技機」は、本願発明の「始動口に遊技球が入賞すると、所定の意味を有する変動図柄が画面上で変動後、停止して、上記意味により遊技の結果を表現する確定図柄となる図柄表示手段を備えた遊技機」に相当する。

イ 刊行物2発明の「通常モードより高確率で大当たり遊技状態を発生させる確変モード」は、本願発明の「通常より大当りの期待値の高い遊技状態」に相当する。
また、刊行物2発明では、確変モードである場合には図柄表示色を切換えることから、図柄の色は変化するが、図柄17A?17Lを構成する「一」?「十二」の数字には変化がないことは明らかであるから、図柄17A?17Lの有する意味は変わらない。そして、上記(1-e)の記載によれば、色の切換は、遊技状態が通常とは異なる状態であることを遊技者に明確にするために行われるから、刊行物2発明の「図柄表示色を切換表示する特別図柄」は、本願発明の「相異態様図柄」に相当する。
よって、刊行物2発明の「通常モードより高確率で大当たり遊技状態を発生させる確変モードでは、変動の開始時から図柄表示色を切換表示する特別図柄表示装置13」は、本願発明の「通常より大当りの期待値の高い遊技状態である場合に、上記変動図柄と同一の上記意味を有すると共に、相異する態様を有する相異態様図柄を、上記変動図柄に代えて上記変動の開始時から表示させる相異態様図柄表示手段」ことに相当する。

上記ア?イの検討より、本願発明と刊行物2発明とは、
「始動口に遊技球が入賞すると、所定の意味を有する変動図柄が画面上で変動後、停止して、上記意味により遊技の結果を表現する確定図柄となる図柄表示手段を備えた遊技機であって、
通常より大当りの期待値の高い遊技状態である場合に、上記変動図柄と同一の上記意味を有すると共に、相異する態様を有する相異態様図柄を、上記変動図柄に代えて上記変動の開始時から表示させる相異態様図柄表示手段と
を備えた遊技機。」である点で一致し、両者の間に相違点はない。

したがって、本願発明は、刊行物2発明と同一であり、刊行物2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1号第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-04-01 
結審通知日 2016-04-05 
審決日 2016-04-18 
出願番号 特願2012-273653(P2012-273653)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 長崎 洋一
山崎 仁之
発明の名称 遊技機  
代理人 名古屋国際特許業務法人  

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