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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1318646 |
審判番号 | 不服2015-9149 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-18 |
確定日 | 2016-09-20 |
事件の表示 | 特願2014- 27517「エッジライト型バックライト用白色反射フィルム及びそれを用いたバックライト」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日出願公開、特開2014-112251、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,特許法184条の3第1項の規定により,平成23年2月18日(優先権主張平成22年2月24日,平成22年10月6日)にされたとみなされる特願2011-523235号の一部を平成26年2月17日に新たな特許出願として出願した特願2014-27517号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。 平成26年 3月 6日:手続補正書 平成26年 9月18日:手続補正書 平成26年10月22日:拒絶理由通知(同年11月7日発送) 平成26年12月17日:意見書 平成27年 2月17日:拒絶査定(同年同月20日発送)(以下「原査定」という。) 平成27年 5月18日:審判請求 平成28年 4月21日:拒絶理由通知(同年同月22日発送)(以下「当審拒絶理由」という。) 平成28年 6月 6日:意見書 平成28年 6月 6日:手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項1?6に係る発明は,平成28年6月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 次の(i)?(iii)を満たし,かつ,気泡を含有するエッジライト型バックライト用白色反射フィルムであって,さらに,基材白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有した塗布層を有しており,該球状粒子の圧縮強度が0.1?2.0kgf/mm^(2)であることを特徴とするエッジライト型バックライト用白色反射フィルム。 (i)剛性度が3.1?7mN・mであること。 (ii)少なくとも片側の面(A)に凸部が形成されており,該凸部の最大高さが15?60μmであること。 (iii)前記面(A)とは反対側の面(B)の側のクッション率が12%以上であること。」 なお,請求項2?6は,直接または間接的に請求項1の記載を引用して記載されたものであり,これら請求項に係る発明は,本願発明の構成に対して,さらに発明特定事項を付加した発明となっている。 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 本願発明は,拒絶査定時の請求項2に係る発明に概ね対応するところ,原査定の理由は,概略,本願発明は,本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1?3に記載された発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2010-33053号公報 引用文献2:特表2008-512719号公報 引用文献3:特開2007-293289号公報 2.原査定の理由の判断 (1) 引用文献1の記載事項 引用文献1には,以下の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有する塗布層を有し,その塗布層を形成する該球状粒子とバインダー樹脂との屈折率差の絶対値が0.10以下で,且つ,該球状粒子が無孔質である白色反射フィルム。 【請求項2】 前記球状粒子の変動係数CVが30%以下である,請求項1に記載の白色反射フィルム。 【請求項3】 前記球状粒子が,紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含有している,請求項1又は2に記載の白色反射フィルム。 【請求項4】 前記球状粒子が,紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を共重合している,請求項3に記載の白色反射フィルム。 【請求項5】 前記球状粒子を構成する樹脂が,前記塗布層を形成するバインダー樹脂と同じモノマー成分を含有する,請求項1?4のいずれかに記載の白色反射フィルム。 【請求項6】 前記白色フィルムが3層からなり,中間層が気泡を含有した層であり,2つの表層の少なくとも一方がポリエステルに無機粒子および/または有機粒子を含有させた層であり,かつ,無機粒子および/または有機粒子を含有する表層は,該層の重量に対して0.5重量%以下の範囲で該無機粒子および/または有機粒子を含有している,請求項1?5のいずれかに記載の白色反射フィルム。 【請求項7】 請求項1?6のいずれかに記載の白色反射フィルムを,その塗布層面を光源側に向けて設けたエッジライト型の液晶バックライト。 【請求項8】 請求項1?6のいずれかに記載の白色反射フィルムを,その塗布層面を光源側に向けて設けた直下型の液晶バックライト。」 イ 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は,液晶バックライトの輝度向上を図る白色反射フィルムに関するものであって,さらに詳しくは液晶ディスプレイ用の,エッジライト型及び/又は直下型のバックライトにおける面光源の反射板として好適に用いられる部材に関するものである。 【背景技術】 【0002】 液晶ディスプレイでは液晶セルを照らすバックライトが用いられており,液晶ディスプレイの種類に応じて,液晶モニターではエッジライト型のバックライト,液晶テレビでは直下型のバックライトが採用されている。これらのバックライト用反射フィルムとしては,気泡により形成された多孔質の白色フィルムが一般的に用いられている(特許文献1)。さらに,冷陰極管から放射される紫外線によるフィルムの黄変色を防ぐために紫外線吸収層を積層した白色フィルムも提案されている(特許文献2,3)。 【0003】 これら反射フィルムにおいて,輝度の諸特性を改善するための様々な方法が開示されている。例えば,エッジライト型のバックライトでの輝度向上を図るために,光源とは反対側のフィルム面に光隠蔽層を設ける方法が開示されている(特許文献4)。また,表層にバインダーを介して球状粒子を設けるとともに,それら球状粒子とバインダーとの屈折率差を選択することにより,光拡散性を制御し,光拡散シートによる正面輝度の改善を行う方法が開示されている(特許文献5)。さらに,直下型バックライトにおける反射シートにおいて,光源側のフィルム面の拡散性を制御することにより,バックライトでの輝度ムラを改善する方法も開示されている(特許文献6)。」 ウ 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 成長著しい液晶テレビ用反射フィルムにおいては,低コスト化が強く求められる一方,従来以上に反射フィルムの反射率の向上も同時に求められている。この理由は,反射フィルムの反射特性の向上によりバックライトとしての輝度が向上できれば,光源上部に配置している高価なシートを削減することができるからである。例えば,液晶テレビ用バックライトの構成の一例として,光源上部には,光源側から,拡散板(厚み約2mm)/拡散フィルム(厚み約200μm?300μm)/拡散フィルム(厚み約200μm?300μm)/拡散フィルム(厚み約200μm?300μm)がこの順序で積層されている。バックライト全体の輝度で2?3%向上すれば,前記構成において拡散フィルムを一枚削減することできる。しかしながら,反射フィルムの反射率は,白色フィルム内部のボイド構造に依存する部分が多いのであるが,ボイド構造の工夫による反射率の向上は限界になりつつある。 【0005】 本発明は,上記した従来の方法とは異なり,白色フィルムの光源側表面を工夫することにより反射率を向上させるものである。具体的には,白色フィルムの少なくとも片面に特定の塗布層を設けることで反射率を向上させ,ひいては,バックライトの輝度向上に寄与する白色反射フィルムを提供せんとするものである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明は,かかる課題を解決するために,次のいずれかの手段を採用するものである。 (1)白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有する塗布層を有し,その塗布層を形成する該球状粒子とバインダー樹脂との屈折率差の絶対値が0.10以下で,且つ,該球状粒子が無孔質である白色反射フィルム。 (2)前記球状粒子の変動係数CVが30%以下である,前記(1)に記載の白色反射フィルム。 (3)前記球状粒子が,紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含有している,前記(1)又は(2)に記載の白色反射フィルム。 (4)前記球状粒子が,紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を共重合している,前記(3)に記載の白色反射フィルム。 (5)前記球状粒子を構成する樹脂が,前記塗布層を形成するバインダー樹脂と同じモノマー成分を含有する,前記(1)?(4)のいずれかに記載の白色反射フィルム。 (6)前記白色フィルムが3層からなり,中間層が気泡を含有した層であり,2つの表層の少なくとも一方がポリエステルに無機粒子および/または有機粒子を含有させた層であり,かつ,無機粒子および/または有機粒子を含有する表層は,該層の重量に対して0.5重量%以下の範囲で該無機粒子および/または有機粒子を含有している,前記(1)?(5)のいずれかに記載の白色反射フィルム。 (7)前記(1)?(6)のいずれかに記載の白色反射フィルムを,その塗布層面を光源側に向けて設けたエッジライト型の液晶バックライト。 (8)前記(1)?(6)のいずれかに記載の白色反射フィルムを,その塗布層面を光源側に向けて設けた直下型の液晶バックライト。 【発明の効果】 【0007】 本発明によれば,白色フィルムの少なくとも片面に特定の塗布層を設けた白色反射フィルムとすることで,反射率を向上させ,ひいてはバックライトに用いた際にバックライトの輝度向上に寄与することができる。」 エ 「【0010】 本発明は,前記課題,つまり,白色フィルムの光源側の塗布層を工夫することで反射率が向上し,バックライトの輝度向上に寄与する白色反射フィルムについて鋭意検討した。その結果,白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有する塗布層を塗布し,含有する球状粒子と塗布層を形成するバインダー樹脂との屈折率差の関係,及びかかる球状粒子の細孔様態について特定の条件のものを用いてみたところ,白色フィルム単体の場合よりも,バックライトに用いた際の輝度向上効果が確認でき,かかる課題を解決することを究明したものである。 【0011】 白色反射フィルムの反射率は,基材となる白色フィルム内部のボイド構造に依存する割合が高いものの,ボイド構造の工夫による反射率の向上は限界になりつつある。そのため,本発明においては,基材となる白色フィルムの少なくとも片面に,球状粒子を含有した塗布層を設け,バックライト正面における輝度を向上する。塗布層に球状粒子を含有することでバックライトの輝度が向上する理由は明らかではないが,球状粒子を含有させ,バインダー樹脂とその球状粒子の屈折率差を小さくすることにより,バインダー樹脂と球状粒子の界面にて反射・拡散を繰り返した結果正面へ伝搬しない光のロス分が減少すると考えられる。また,本発明においては球状粒子を無孔質とする。球状粒子を無孔質とすることにより,反射・拡散を繰り返す界面をより少なくし,光のロス分を極限まで減らすことができる。加えて,塗布層表面には,球状粒子により表面が滑らかな凸状部が形成されることになるので,白色フィルム面で反射して塗布層内を透過してきた光が,塗布層表面の凸状部でのレンズ効果により光をロスすることなく集光され,バックライトの正面方向の輝度の向上に寄与しているとも推定される。 【0012】 本発明の白色反射フィルムは,この塗布層に含有する球状粒子と塗布層を形成するバインダー樹脂の屈折率差の絶対値(以後,屈折率差とする)が0.10以下である必要がある。上述したように,塗布層に球状粒子を含有するとバックライト正面輝度が向上するのであるが,球状粒子とバインダー樹脂とで屈折率差があると,白色フィルム面で反射して塗布層内を透過する光のうち,球状粒子とバインダー樹脂との界面で拡散して塗布層表面に達する光が減ってしまう。つまり内部拡散光ロスが多くなり,反射率が向上せずに逆に低下してしまう。一方,屈折率差を0.10以下とする場合,塗布層内での内部拡散ロスが少なくなるため,塗布層表面に達する光が相対的に多くなり,反射率が向上する。屈折率差が0.10より大きい場合,本発明の白色反射フィルムをバックライトに組み込んでも,輝度向上効果が得られない場合がある。屈折率差は好ましくは0.08以下,さらに好ましくは0.05以下,特に好ましくは0.01以下である。」 オ 「【0022】 本発明にかかる塗布層中における球状粒子の含有量は,反射率の向上が得られれば特に限定されず,また,粒子種や塗液中の分散性等にも依存するため一義的に限定することはできないが,塗布層全体に対して3重量%以上であることが好ましく,より好ましくは5重量%以上,さらに好ましくは10重量%以上,特に好ましくは15重量%以上である。3重量%より少ない場合はバックライト輝度向上効果が得られない場合がある。また,上限は特に限定されるものではないが,塗布層中の球状粒子以外の成分100重量部に対し300重量部,すなわち塗布層全体の75%を超えると塗布性に劣る場合があるので,塗布層中の球状粒子以外の成分100重量部に対し300重量部,すなわち塗布層全体の75%以下が好ましい。 【0023】 本発明にかかる球状粒子の体積平均粒子径としては,塗布層表面に凸状形状が形成されれば,特に限定されるものではないが,0.05μm以上であることが好ましく,より好ましくは0.5μm以上,さらに好ましくは1μm以上,特に好ましくは3μm以上である。0.05μmより小さい場合はバックライト輝度向上効果が得られない場合がある。また,上限は特に限定されるものではないが,100μmを超えると塗布性に劣る場合があるので,100μm以下が好ましい。 【0024】 本発明にかかる球状粒子の種類としては,特に限定されるものではなく,有機系,無機系いずれでも用いることができる。有機系球状粒子としては,アクリル樹脂粒子,シリコーン樹脂粒子,ナイロン樹脂粒子,ポリスチレン樹脂粒子,ポリエチレン樹脂粒子,ベンゾグアナミンのようなポリアミド樹脂粒子,ウレタン樹脂粒子等を用いることができる。無機系球状粒子としては,酸化ケイ素,水酸化アルミニウム,酸化アルミニウム,酸化亜鉛,硫化バリウム,マグネシウムシリケート,又はこれらの混合物等を用いることができる。一般に使用される樹脂バインダーとの分散性,塗布性および経済性等から有機系球状粒子を使用するのが好ましい。中でも,アクリル重合体,ポリスチレン重合体,アクリル系ビニルモノマーとスチレン系ビニルモノマーの共重合体が好ましく,特にアクリル系ビニルモノマーとスチレン系ビニルモノマーの共重合体は,2種の共重合割合を調整することで屈折率を容易に変更できることから,本発明においては好適に使用出来る。」 カ 「【0033】 上記のような球状粒子は,白色フィルムの少なくとも片面にバインダー樹脂を介して設けられる。かかるバインダー樹脂としては,特に限定されないが,有機成分を主体とする樹脂が好ましく,例えばポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,アクリル樹脂,メタクリル樹脂,ポリアミド樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,ポリ塩化ビニリデン樹脂,ポリスチレン樹脂,ポリ酢酸ビニル樹脂,フッ素系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく,あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。中でもポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,アクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂が耐熱性,粒子分散性,塗布性,光沢度の点から好ましく使用される。 【0034】 そして,本発明においては,塗布層中のバインダー樹脂と球状粒子との屈折率差を限りなく少なくすれば反射率が向上することから,バインダー樹脂と球状粒子の共重合成分,モノマー組成は同一の方が好ましい。さらに,バインダー樹脂と球状粒子のいずれにも,紫外線吸収材および/または光安定剤が添加されている樹脂で構成されていれば,塗布層の耐光性が向上する。ただし,バインダー樹脂成分は塗布工程にて溶媒に希釈する必要があるため,架橋構造を持たない方が好ましい。その意味では,バインダー樹脂成分に前記多官能性アクリル系化合物は含まれない方が好ましい。」 キ 「【0042】 本発明において,かかる塗布層の厚みは特に限定しないが,0.5?15μmが好ましく,より好ましくは1?10μm,特に好ましくは1?5μmである。ここでいう塗布厚みとは,基材である白色フィルム上にバインダー樹脂のみが積層している部分の厚みのことである(球状粒子により凸となっている部分の厚みではない)。厚みが0.5μm未満だと塗布層の耐光性が不足する場合があり,逆に厚みが15μmを超えると経済性の面から好ましくない。」 ク 「【0044】 本発明おいて,基材の白色フィルムは,可視光線反射率が高ければ高い方が良く,このためには内部に気泡を含有する白色フィルムが使用される。これらの白色フィルムとしては限定されるものではないが,多孔質の未延伸,あるいは二軸延伸ポリプロピレンフィルム,多孔質の未延伸あるいは延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが例として好ましく用いられる。これらの製造方法等については特開平8-262208号公報の〔0034〕?〔0057〕,特開2002-90515号公報の〔0007〕?〔0018〕,特開2002-138150号公報の〔0008〕?〔0034〕等に詳細に開示されている。中でも特開2002-90515の号公報中に開示されている多孔質白色二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが前述の理由で本発明における白色フィルムとして特に好ましい。 【0045】 本発明においては,白色フィルムと塗布層との組合せにより,バックライトの輝度をより高めるため,下記白色フィルムとして次のようなものを使用するのが最も好ましい。すなわち,3層構造のフィルムであって,中間層が気泡を含有した層であり,2つの表層の少なくとも一方がポリエステルに無機粒子および/または有機粒子を含有した層であり,かつ,無機粒子や有機粒子を含有する表層は,該層の重量に対して0.5重量%以下の範囲で該無機粒子や有機粒子を含有していることが好ましい。該無機粒子および有機粒子の含有量はより好ましくは0.1重量%以下,特に好ましくは0.07重量%以下である。 【0046】 より具体的には,両表面が同じ組成であるA層/B層/A層の3層構成の白色フィルム場合,フイルム表面に相当するA層が,ポリエステルに無機粒子および/または有機粒子を,各A層の全重量に対して0.5重量%以下含有させた層であることが好ましい。 【0047】 また,両表面の組成が異なるA層/B層/C層の3層構成の白色フィルムの場合,フィルム表面に相当するA層およびC層の少なくとも一方が,ポリエステルに無機粒子および/または有機粒子を,各層(無機微粒子および/または有機粒子を含有した層)の全重量に対して0.5重量%以下含有している層であることが好ましい。 【0048】 本発明においては,粒子の添加量を限定した白色フィルムと前記塗布層を組合せることでバックライト輝度がより高められる。白色フィルム中の粒子量を上記範囲内に限定することで,白色フィルムとしての内部拡散光ロスが少なくなり,塗布層を設けた白色反射フィルムとしてのバックライト輝度が最大化される。 【0049】 次に前記白色反射フィルムの製造方法について説明するが,この例に限定されるものではない。 【0050】 まず,白色フィルムを製造する。非相溶ポリマーとしてポリメチルペンテンを,低比重化剤としてポリエチレングリコール,ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコール共重合物を,ポリエチレンテレフタレートに入れる。それを充分混合・乾燥させて270?300℃の温度に加熱された押出機Bに供給する。必要な場合は,SiO2などの無機物添加剤を含んだポリエチレンテレフタレートを常法により押出機Aに供給する。そして,Tダイ3層口金内で押出機Bのポリマーが内層(B層)に,押出機Aのポリマーが両表層(A層)にくるようして,A層/B層/A層からなる3層構成のシートを溶融製膜する。 【0051】 続いてこのシートを,ドラム表面温度10?60℃に冷却されたドラム上で静電気力にて密着冷却固化し未延伸フィルムを得る。該未延伸フイィルムを80?120℃に加熱したロール群に導き,長手方向に2.0?5.0倍縦延伸し,20?50℃のロール群で冷却する。続いて,縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き90?140℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に横延伸する。延伸倍率は,縦,横それぞれ2.5?4.5倍に延伸するが,その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9?16倍であることが好ましい。面積倍率が9倍未満であると得られるフィルムの白さが不良となり易い。面積倍率が16倍を越えると延伸時に破れを生じやすくなり製膜性が不良となる傾向がある。 【0052】 こうして二軸延伸されたフィルムに平面性,寸法安定性を付与するために,テンター内で150?230℃の熱固定を行い,均一に徐冷後,室温まで冷却する。そして巻取機で巻き取り,白色フィルムを得る。 【0053】 続いて,白色フィルムの少なくとも片面に,球状粒子を含有する塗布層を設ける。まず,上記したような球状粒子を,バインダー樹脂と溶剤,また必要であれば後術する各種の添加剤と共に混合した後,均一に分散し,球状粒子を含有する塗液を得る。この塗液を白色フィルムの片面に,所望する塗布層厚みに合わせ1回もしくは複数回塗布する。両面に塗布層を設ける場合は,塗布面とは反対の面に同様の方法にて塗布層を設け,本発明の白色反射フィルムを得る。」 ケ 「【0059】 このようにして得られる本発明の白色反射フィルムは,液晶バックライトの輝度向上を図ることができ,さらに好ましい態様によれば,長時間使用しても反射率の低下が少ないので,液晶画面用のエッジライト型および直下型バックライトなどの面光源の反射板,およびエッジライト型バックライドにおけるランプリフレクターとして好都合に使用することができる。 【0060】 具体的には,エッジライト型バックライトとは,図1に示すように,バックライトの方端,両端,周囲4方のいずれかに光源2を1本ないし複数本設置し,その光源2の光を導光板3を介して伝搬させ画面側を照らすものである。本発明の白色反射フィルムは,その導光板の下に設けられる反射板4として,もしくは光源2の導光板とは反対側の周囲を囲み込むように設置されるランプリフレクター5として,バックライト構成に合わせてそのままの状態で使用したり,各種金属,合金やその他支持体と組み合わせて使用したり,また適宜,折り曲げたりして使用する。 【0061】 また,直下型バックライト10とは,図2に示すように,各種金属,合金やその他樹脂性筐体内の面方向に間隔を開けて光源12を設置し,また光源を挟んで筐体16とは反対側に拡散や集光機能を有する樹脂板,フィルム,シート等13を設置することにより,筐体16とは反対側すなわち画面側を照らすものであり,本発明の白色反射フィルムは筐体面に設置する反射板14として使用される。これにより,筐体側に伝搬した光を画面側に反射することができ,その結果,画面の輝度を向上しより明るくすることができる。 【0062】 なお,これら面光源に使用するに際しては,本発明の白色反射フィルムを,その塗布層を光源側に向けて設置する。」 コ 「【図1】 」 サ 「【図2】 」 シ 「【0075】 (実施例1) “ハルスハイブリッド”(登録商標)UV-G13(アクリル系共重合体,濃度40%の溶液,屈折率1.49,(株)日本触媒製):10.0g,酢酸エチル:9.9g,球状粒子として無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”(登録商標)SSXシリーズ,SSX-105,屈折率1.49,体積平均粒子径5.0μm,変動係数CV9%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:無,光安定剤:無):0.45gを混合攪拌して,球状粒子を添加してなる塗液を準備した。250μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”(登録商標)E6SL,3層構造,2つの表層それぞれに炭酸カルシウムを各表層重量に対し14重量%ずつ含有,中間層は気泡を含有)の片面に,松尾産業(株)製 バーコーター番手12を使用してこの塗液を塗布し,120℃,1分間乾燥し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0076】 (実施例2) “ハルスハイブリッド”UV-G13(アクリル系共重合体,濃度40%の溶液,屈折率1.49,(株)日本触媒製):10.0g,酢酸エチル:14.5g,球状粒子として無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”SSXシリーズ,SSX-105,屈折率1.49,体積平均粒子径5.0μm,変動係数CV9%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:無 光安定剤:無):1.75gを混合攪拌して,球状粒子を添加してなる塗液を準備した。250μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”E6SL)の片面に,松尾産業(株)製 バーコーター番手12を使用してこの塗液を塗布し,120℃,1分間乾燥し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0077】 (実施例3) 白色フィルムに,250μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”E6SQ,3層構造,2つの表層それぞれに二酸化ケイ素を各表層重量に対し0.0004重量%ずつ含有,中間層は気泡を含有)を使用した以外は,実施例2と同様にして,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0078】 (実施例4) “ハルスハイブリッド”UV-G13(アクリル系共重合体,濃度40%の溶液,屈折率1.49,(株)日本触媒製):10.0g,酢酸エチル:26.1g,球状粒子として無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”SSXシリーズ,SSX-105,屈折率1.49,体積平均粒径5.0μm,変動係数CV9%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:無 光安定剤:無):4.05gを混合攪拌し,球状粒子を添加してなる塗液を準備した。250μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”E6SL)の片面に,松尾産業(株)製 バーコーター番手12を使用してこの塗液を塗布し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0079】 (実施例5) 球状粒子を無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”SSX-102,屈折率1.49,体積平均粒径2.5μm,変動係数CV10%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:無 光安定剤:無)としたこと以外は,実施例2と同様に作成し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0080】 (実施例6) 球状粒子を無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”MBXシリーズ,XX-09FP,屈折率1.49,体積平均粒子径5.0μm,変動係数CV27%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:無 光安定剤:無)としたこと以外は,実施例2と同様に作成し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0081】 (実施例7) 球状粒子を無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”MBXシリーズ,MB30X-8,屈折率1.49,体積平均粒子径8.0μm,変動係数CV32%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:無 光安定剤:無)としたこと以外は,実施例2と同様に作成し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0082】 (実施例8) 「球状粒子Aの製造方法」 攪拌装置と温度計と窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに,メタクリル酸メチル70重量部,架橋構造を形成する多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート10重量部,ヒンダードアミン系重合性化合物として2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート3重量部,ベンゾトリアゾール系重合性化合物として2-(2'-ヒドロキシ-5'-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール10重量部,重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド1重量部を投入した。さらにこの溶液の分散安定剤としてポリビニルアルコール(PVA-224,クラレ(株)製)1重量部および水200重量部を加えた。この混合物をホモミキサーを用いて9000rpmの回転数で3分間攪拌して,重合性化合物を水に分散させた。次いで,この分散液を75℃に加熱して2時間,この温度に維持して反応させ,さらに90℃に昇温して3時間共重合反応させた。 【0083】 上記のように反応させた後,分散液を室温まで冷却し,目開き40μmのメッシュフィルターを用いて濾過して凝集物などを除去した。得られた分散液に凝集物はなく,この分散液の濾過性は非常に良好であった。 【0084】 こうして濾過した分散液中に分散されている樹脂粒子の体積平均粒子径は6.4μmであり,この樹脂粒子は真球状であった。 【0085】 こうして得た樹脂粒子の分散液を常法に従って洗浄した後,濾過して樹脂粒子と分散媒とを分離し,分離した樹脂粒子を乾燥させて,次いで分級を経て,球状粒子A(変動係数CV15%)を得た。 【0086】 「白色反射フィルムの製造方法」 “ハルスハイブリッド”UV-G13(アクリル系共重合体,濃度40%の溶液,屈折率1.49,(株)日本触媒製):10.0g,酢酸エチル:11.9g,上記球状粒子A(屈折率1.49,体積平均粒子径6.4μm,変動係数CV15%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール 光安定剤:ヒンダードアミン):1.0gを混合攪拌して,球状粒子を添加してなる塗液を準備した。250μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる白色フィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”E6SL)の片面に,松尾産業(株)製 バーコーター番手12を使用してこの塗液を塗布し,120℃,1分間乾燥し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0087】 (実施例9) 球状粒子を無孔質酸化ケイ素(シリカ)粒子(扶桑化学工業(株)製 “クォートロン”(登録商標)SPシリーズ,SP-3C,屈折率1.45,体積平均粒子径3.0μm,変動係数CV16%,架橋:有,紫外線吸収剤:無 光安定剤:無)としたこと以外は,実施例8と同様に作成し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0088】 (実施例10) 球状粒子を無孔質シリコーン粒子(GE東芝シリコーン(株)製 “トスパール”(登録商標),トスパール145,屈折率1.42,平均粒径4.5μm,変動係数CV12%,架橋:有,紫外線吸収剤/光安定剤:無)としたこと以外は,実施例8と同様に作成し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0089】 (実施例11) 球状粒子を無孔質ポリスチレン粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”SBXシリーズ,SBX-8,屈折率1.59,平均粒径8.0μm,変動係数CV37%,スチレン共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤/光安定剤:無)としたこと以外は,実施例8と同様に作成し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。 【0090】 (実施例12) 球状粒子を無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”MBX-8,屈折率1.49,体積平均粒径8.0μm,変動係数CV44%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:無 光安定剤:無)としたこと以外は,実施例2と同様に作成し,塗布量が4.0g/m^(2)の白色フィルムを得た。」 ス 「【0098】 実施例1?12のいずれにおいても,塗布層を設けない同種類の白色フィルムに対して輝度向上効果(つまり,白色反射フィルム自体の反射率の向上効果)が見られた。一方,塗布層を設けない場合は耐光性が不合格であった(比較例1,2)。また,塗布層を設けても球状粒子の添加がない場合,バインダー樹脂と球状粒子の屈折率差が0.10より大きい場合には,輝度向上は見られなかった(比較例3,4)。さらに,塗布層中の球状粒子の屈折率差が0.10以下であっても多孔質である比較例5,6の場合は,無孔質である点以外は同じ条件の実施例12,3に対して,耐光性の点で劣り,また輝度向上効果が低いこともわかる。 【0099】 そして実施例の中でも,実施例8?11を比較すると,バインダー樹脂と球状粒子との屈折率差を小さくすれば輝度が向上することが分かる。実施例2,6,7を比較すると,さらに球状粒子の変動係数を小さくすれば輝度が向上することが分かる。実施例1,2,4を比較すると,屈折率差と変動係数が同じでも,塗布層中の球状粒子の含有率により輝度が変化することが分かる。実施例5,6を比較すると,屈折率差が同じでも,球状粒子の体積平均粒子径により輝度が変化することが分かる。また,表層の添加粒子量をある一定の範囲にした白色フィルム上に,同様の塗布層を設けると,輝度がさらに向上した(実施例3)。さらに,バインダー樹脂と球状粒子の屈折率差が0.10以下であっても,変動係数が30を越えると,輝度向上は小さいことがわかる(実施例7)。そして,紫外線により黄変しやすいシリコーン,ポリスチレンを使用した場合には,輝度向上は見られるものの,耐光性が若干低い結果となった(実施例10,11)。」 (2)引用発明1 そうすると,引用文献1の実施例3には,以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「【0001】白色フィルムであって,液晶バックライトの輝度向上を図り,エッジライト型のバックライトにおける面光源の反射板として用いられ, 【0077】250μmの多孔質の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる(東レ株式会社製 “ルミラー”E6SQ,3層構造,2つの表層それぞれに二酸化ケイ素を各表層重量に対し0.0004重量%ずつ含有,中間層は気泡を含有)白色フィルムの【0076】片面に, 【0076】“ハルスハイブリッド”UV-G13(アクリル系共重合体,濃度40%の溶液,屈折率1.49,(株)日本触媒製):10.0g,酢酸エチル:14.5g,球状粒子として無孔質アクリル粒子(積水化成品工業(株)製 “TECHPOLYMER”SSXシリーズ,SSX-105,屈折率1.49,体積平均粒子径5.0μm,変動係数CV9%,アクリル共重合体,架橋:有,紫外線吸収剤:無 光安定剤:無):1.75gを混合攪拌して,球状粒子を添加してなる塗液を塗布することによって得られ, 【0011】塗布層表面には,球状粒子により表面が滑らかな凸状部が形成される 【0001】白色フィルム。」 (3)対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「球状粒子を添加してなる塗液を塗布」される「白色フィルム」は,本願発明の「基材白色フィルム」に相当する。そして,引用発明1の「白色フィルム」には,「片面」に「球状粒子を添加してなる塗液を塗布」して「球状粒子により表面が滑らかな凸状部が形成される」「塗布層」が形成される。引用発明1の「球状粒子」及び「塗布層」は,それぞれ,本願発明の「球状粒子」及び「塗布層」に相当する。したがって,引用発明1の「白色フィルム」は,本願発明の「基材白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有した塗布層を有」するとの要件を満たす。 そして,引用発明1の「白色フィルム」は,「片面」に「球状粒子により表面が滑らかな凸状部が形成される」「塗布層」を有している。引用発明1の「凸状部」は,本願発明の「凸部」に相当する。したがって,引用発明1の「白色フィルム」は,本願発明の「少なくとも片側の面(A)に凸部が形成されている」との要件を満たす。 引用発明1の「白色フィルム」は,「中間層」が「気泡を含有」しており,本願発明の「気泡を含有する」の要件を満たす。 引用発明1の「白色フィルム」は「液晶バックライトの輝度向上を図」るものであり,「エッジライト型のバックライトにおける面光源の反射板として用いられ」る。引用発明1の「エッジライト型のバックライト」は,本願発明の「エッジライト型バックライト」に相当する。したがって,引用発明1の「球状粒子を添加してなる塗液を塗布」された後の「白色フィルム」は,本願発明の「白色反射フィルム」に相当し,「エッジライト型バックライト用」との要件を満たす。 (4) 一致点 本願発明と引用発明1は,以下の構成において一致する。 「気泡を含有するエッジライト型バックライト用白色反射フィルムであって,さらに,基材白色フィルムの少なくとも片面に球状粒子を含有した塗布層を有しており, 少なくとも片側の面(A)に凸部が形成されているエッジライト型バックライト用白色反射フィルム。」 (5) 相違点 本願発明と引用発明1は,以下の点で相違する。 ア 相違点1 本願発明の「白色反射フィルム」は,塗布層に含まれる「球状粒子の圧縮強度が0.1?2.0kgf/mm^(2)」であるのに対して,引用発明1の「白色フィルム」は,塗布層に含まれる「球状粒子の圧縮強度が0.1?2.0kgf/mm^(2)」であるか,不明な点。 イ 相違点2 本願発明の「白色反射フィルム」は,「剛性度が3.1?7mN・mである」のに対して,引用発明1の「白色フィルム」は,「剛性度が3.1?7mN・mである」か,不明な点。 ウ 相違点3 本願発明の「白色反射フィルム」の「凸部」は,その「最大高さが15?60μmである」のに対して,引用発明1の「白色フィルム」の「凸状部」は,その「最大高さが15?60μmである」か,不明な点。 エ 相違点4 本願発明の「白色反射フィルム」は,「前記面とは反対側の面」つまり,凸部が形成される面とは反対側の面の側の「クッション率が12%以上である」のに対して,引用発明1の「白色フィルム」は,凸状部が形成される面とは反対側の面の側の「クッション率が12%以上である」か,不明な点。 (6)判断 本願発明の効果に関して,本願の発明の詳細な説明の段落【0011】には,「本発明によれば,白色反射フィルムの剛性度を特定の範囲にし,少なくとも一方の面(A)(使用時における反射面側,導光板に対向する側)に特定の大きさの凸部を形成し,さらに,該(A)とは反対側の面(B)の側のクッション率を特定の大きさ以上にすることで,特にエッジライト型バックライトにおいて輝度ムラを改善するのに好適な白色反射フィルムを提供することができる。本発明で得られた白色反射フィルムは,LED光源を備えたエッジライト方式のバックライト及び照明用面光源に用いた際に(特にサイズが76.2cm(30インチ)以上のバックライトに用いた際に),これまで以上に輝度ムラを少なくすることができ,好適である。」と記載されている。すなわち,本願発明は,(i)白色フィルムの剛性度,(ii)面(A)の凸部の大きさと,(iii)面(B)の側のクッション率の組合せによって,発明の効果が得られていると解するのが相当である。 そこで,相違点2?4についてまとめて検討すると,以下のとおりである。 (i)引用発明1の白色フィルムの剛性度について,引用文献1には記載がない。 (ii)引用発明1の凸状部の最大高さについて,引用文献1の段落【0023】には,「本発明にかかる球状粒子の体積平均粒子径としては,塗布層表面に凸状形状が形成されれば,特に限定されるものではないが,0.05μm以上であることが好ましく,より好ましくは0.5μm以上,さらに好ましくは1μm以上,特に好ましくは3μm以上である。0.05μmより小さい場合はバックライト輝度向上効果が得られない場合がある。また,上限は特に限定されるものではないが,100μmを超えると塗布性に劣る場合があるので,100μm以下が好ましい。」と記載されている。よって,引用文献1には,凸状部を形成する球状粒子の体積平均粒子径の上限等については記載があるものの,凸状部の最大高さについては記載がない。なお,最大高さの測定方法については,本願の発明の詳細な説明の段落【0018】に記載されている。 (iii)引用発明1の凸状部が設けられた面とは反対側の面の側のクッション率について,引用文献1には記載がない。 以上のとおり,引用文献1には,白色フィルムの剛性度,凸状部の最大高さ,及び凸状部が設けられた面とは反対側の面の側のクッション率の三項目について,いずれも記載がない。そうしてみると,引用文献1には,当業者がこれら三項目に着目することについての動機付けが存在しないというべきである。そして,その他の引用文献を参照しても,引用発明1のこれらの三項目について,本願発明の範囲とする合理的理由もない。したがって,当業者が,引用発明1の白色フィルムの剛性度を3.1?7mN・mの範囲とし,凸状部の最大高さを15?60μmの範囲とし,かつ,凸状部が設けられた面とは反対側の面の側のクッション率を12%以上とすることについて,容易に発明できたということができない。 また,「特にエッジライト型バックライトにおいて輝度ムラを改善するのに好適な白色反射フィルムを提供することができ」,「LED光源を備えたエッジライト方式のバックライト及び照明用面光源に用いた際に(特にサイズが76.2cm(30インチ)以上のバックライトに用いた際に),これまで以上に輝度ムラを少なくすることができ,好適である」という本願発明の効果は,各引用文献の記載に接した当業者が予測可能な範囲を超えたものとするのが相当である。 したがって,本願発明は,相違点1について検討するまでもなく,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (7)小括 したがって,本願発明は,当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願の請求項2?6に係る発明は,本願発明をさらに限定したものであるので,本願発明と同様に,当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 当審拒絶理由における拒絶理由の対象は,請求項1,6,7に係る発明についてであり,請求項2?5については,「現時点では,拒絶の理由を発見しない。」とするものであった。補正前の請求項2に係る発明は,本願発明に相当するものである。 そうすると,もはや,当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2016-09-07 |
出願番号 | 特願2014-27517(P2014-27517) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤岡 善行 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
鉄 豊郎 多田 達也 |
発明の名称 | エッジライト型バックライト用白色反射フィルム及びそれを用いたバックライト |
代理人 | 伴 俊光 |
代理人 | 細田 浩一 |