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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1318860
審判番号 不服2015-21765  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-08 
確定日 2016-09-01 
事件の表示 特願2011-194871「無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日出願公開、特開2013- 58002〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年9月7日の出願であって、平成27年5月11日付けの拒絶理由通知が通知され、平成27年7月17日付けで手続補正書が提出されたが平成27年8月28日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して、平成27年12月8日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年12月8日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成27年12月8日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成27年12月8日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成27年7月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の

(1)「 【請求項1】
予め登録した会員である携行者が携行する当該携行者固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
前記携行者に関連する一定の場所に配置されるとともに、前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報と読み取り時刻情報、場所情報を、無線データ回線を介して送信する読取処理手段と、
前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報、場所情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき前記携行者の前記場所における状態を表す携行者状態情報を作成して通信網を介して前記携行者宛てに又は前記携行者に関連する特定者宛てに送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの携行者状態情報を、通信網を介して受信する前記携行者自体の又は前記特定者の情報通信装置と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項2】
予め登録した会員である学習塾生徒が携行する当該学習塾生徒固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
前記学習塾生徒が通う学習塾に配置されるとともに、前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報と読み取り時刻情報、場所情報を、無線データ回線を介して送信する読取処理手段と、
前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報、場所情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき前記学習塾生徒の前記学習塾における状態を表す生徒出退状態情報を作成して通信網を介して前記携行者に関連する特定者としての保護者宛てに送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの生徒出退状態情報を、通信網を介して受信する前記保護者の情報通信装置と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項3】
観光バスの複数の乗客管理に適用する無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システムであって、
予め登録した会員である個々の乗客が携行する当該乗客固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
観光バスにおける一定の箇所に配置され、又は観光バスの係員が携行するとともに、前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから識別情報を読み取る読取処理手段と、
前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき前記個々の乗客の前記観光バスにおける乗降状態を表す個々の乗客乗降状態情報を作成して通信網を介して前記乗客に関連する特定者宛てに送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの個々の乗客乗降状態情報を、通信網を介して受信する前記特定者である観光バスの係員の情報通信装置と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項4】
予め登録した会員である事業を営む組織の従業員が携行する当該従業員固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
前記組織の一定の場所又は複数の場所に配置され、
前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから当該従業員の識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報と読み取り時刻情報、場所情報を、無線データ回線を介して送信する読取処理手段と、
前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報、場所情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき前記従業員の出退勤管理情報を作成して通信網を介して前記管理コンピュータ装置に送信するとともに、前記従業員宛てに送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの出退勤管理情報を、通信網を介して受信する前記従業員の情報通信装置と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項5】
予め診療機関に登録した会員である患者の診療予約、受付に適用する無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システムであって、
患者が携行する当該患者固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
前記診療機関の所定の場所に配置され、前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから前記識別情報を読み取る読取処理手段と、
前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき前記患者の予約受付情報、院内受付情報、診療受付情報を個別に作成して、前記患者宛てに通信網を介して送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの予約受付情報、院内受付情報、診療受付情報を、
通信網を介して受信する前記患者の情報通信装置と、
前記診療機関に配置した予約受付用、院内受付用、診療受付用の管理コンピュータ装置と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項6】
予め医療検査センターに登録した会員である患者の検体検査に適用する無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システムであって、
患者が医療検査センターに提供する検体を収納した検体採取用機材に付加した前記患者、検体を特定する識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
医療機関に配置した前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから前記識別情報を読み取り無線データ回線を介し送信する読取処理手段及び患者の識別情報及び前記検体について実行した検査結果情報を表示するコンピュータ端末と、
前記患者又は医療機関から送付されてくる前記検体を収納した検体採取用機材を受領し、検査終了後検体採取用機材を前記医療機関に返送する医療検査センターであって、前記検体採取用機材に付加した無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから前記識別情報を読み取るとともに、前記識別情報及び前記検体について実行した検査結果情報を前記無線ICタグカードに書き込む読取書込処理手段と、管理コンピュータ装置とを備える医療検査センターと、
前記医療機関の読取処理手段からの識別情報を、無線データ回線を介して受信し医療検査センターの管理コンピュータ装置に送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記コンピュータ端末、管理支援コンピュータ装置間の情報伝送を行う通信網と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項7】
売上額に応じたサービスポイント提供を行う販売店舗に登録した会員である顧客固有の識別情報及び書き換え可能なサービスポイント情報を記憶した無線ICタグカードと、
販売店舗の一定の場所に配置されるとともに、買物客である顧客の前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードからの識別情報、サービスポイント情報の読み取り及び書き換え処理を実行するとともに、読み取った前記識別情報と、前記サービスポイント情報とを無線データ回線を介して送信する読取書込処理手段と、
前記読取書込処理手段からの識別情報及びサービスポイント情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき無線ICタグカードの更新情報を作成して前記読取書込処理手段に無線データ回線を介して送信し、前記読取書込処理手段により売上額に応じた無線ICタグカードのサービスポイント情報の更新を実行させるとともに、通信網を介して無線ICタグカードの更新情報を前記顧客に送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの無線ICタグカードの更新情報を、通信網を介して受信する前記顧客の情報通信装置と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項8】
売上額に応じたサービスポイント提供を行う販売店舗に登録した会員である顧客固有の識別情報及び書き換え可能なサービスポイント情報を記憶した無線ICタグカードと、
販売店舗の一定の場所に配置されるとともに、買物客である顧客の前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードからの識別情報、サービスポイント情報の読み取り及び書き換え処理を実行するとともに、読み取った前記識別情報と、前記サービスポイント情報とを無線データ回線を介して送信する読取書込処理手段と、
前記読取書込処理手段からの識別情報及びサービスポイント情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき無線ICタグカードの更新情報を作成して前記読取書込処理手段に無線データ回線を介して送信し、前記読取書込処理手段により売上額に応じた無線ICタグカードのサービスポイント情報の更新を実行させるとともに、通信網を介して無線ICタグカードの更新情報を前記顧客に送信する構成であり、受信するデータを何千万個というホルダーの指定のホルダー領域にアドレス別に記憶し、到着した瞬間に予め指定した情報通信装置に転送する瞬時転送型のサーバー構成とした管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの無線ICタグカードの更新情報を、通信網を介して受信する前記顧客の情報通信装置と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項9】
業務用車両の運行管理に適用する無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システムであって、
予め登録した運転者が携行する当該運転者固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
業務用車両における一定の箇所に配置され、タグリーダ、GPS情報受信手段及び無線データ回線を介して送受信を行う無線データ送受信手段を組み合わせて構成され、前記業務用車両の運行に伴って、前記無線ICタグカードから識別情報を読み取り、GPS情報を受信して、前記無線データ送受信手段により無線データ回線を介して前記識別情報及びGPS情報の送信を行うロケーション装置を組み込んだ読取処理手段と、
前記読取処理手段からの前記識別情報、GPS情報を受信し、管理支援プログラムに基づき前記業務用車両の運行状態情報を作成して、通信網を介して送信する管理センターの管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの運行状態情報を、通信網を介して受信する前記業務用車両の運行会社のコンピュータ装置と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。」
とあったものを

(2)「 【請求項1】
予め登録した会員である無線ICタグカードの携行者の接近時、その無線ICタグカード1から識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して送信する読取処理手段を具備し、この読取処理手段からの識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して受信し、予め格納した管理支援プログラムに基づき特定の状態情報を作成して通信網を介して前記無線ICタグカードの携行者に関連する特定者宛てに送信するように構成した対象物体の状態管理システムであって、
前記状態管理システムは、
予め診療機関に登録した会員である患者の診療予約、受付に適用する無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システムで、
患者が携行する当該患者固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
前記診療機関の所定の場所に配置され、前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから前記識別情報を読み取る読取処理手段と、
前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき前記患者の予約受付情報、院内受付情報、診療受付情報を個別に作成して前記患者宛てに送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの予約受付情報、院内受付情報、及び診療受付情報等を通信網を介して受信する前記患者の情報通信装置と、
前記診療機関に配置した予約受付用、院内受付用、診療受付用の管理コンピュータ装置と、
を有し、
無線データ回線及び携帯電子メールを利用する構成をもって、安価な基本使用料金契約で、患者側が診療機関に対する予約、院内予約、診療予約に関する順位情報等の把握を的確に行うことができるようにしたことを特徴とする無線ICのタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項2】
予め登録した会員である無線ICタグカードの携行者の接近時、その無線ICタグカード1から識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して送信する読取処理手段を具備し、この読取処理手段からの識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して受信し、予め格納した管理支援プログラムに基づき特定の状態情報を作成して通信網を介して前記無線ICタグカードの携行者に関連する特定者宛てに送信するように構成した対象物体の状態管理システムであって、
前記状態管理システムは、
予め医療検査センターに登録した会員である患者の検体検査に適用する無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システムで、
前記患者が医療検査センターに提供する検体を収納した検体採取用機材に付加した前記患者、検体を特定する識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
医療機関に配置した前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから前記識別情報を読み取り無線データ回線を介し送信する読取処理手段及び患者の識別情報及び前記検体について実行した検査結果情報を表示するコンピュータ端末と、
前記患者又は医療機関から送付されてくる検体を収納した検体採取用機材を受領し、検査終了後検体採取用機材を前記医療機関に返送する医療検査センターであって、前記検体採取用機材に付加した無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから前記識別情報を読み取るとともに、前記識別情報及び前記検体について実行した検査結果情報を前記無線ICタグカードに書き込む読取書込処理手段と、管理コンピュータ装置とを備え
る医療検査センターと、
前記医療機関の読取処理手段からの識別情報を、無線データ回線を介して受信し医療検査センターの管理コンピュータ装置に送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記コンピュータ端末、管理支援コンピュータ装置間の情報伝送を行う通信網と、
を有し、
無線データ回線及び携帯電子メールを利用する構成をもって、安価な基本使用料金契約で、患者側が診療機関における検体検査情報の把握を的確に行うことができるようにしたことを特徴とする無線ICのタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項3】
予め登録した会員である無線ICタグカードの携行者の接近時、その無線ICタグカード1から識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して送信する読取処理手段を具備し、この読取処理手段からの識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して受信し、予め格納した管理支援プログラムに基づき特定の状態情報を作成して通信網を介して前記無線ICタグカードの携行者に関連する特定者宛てに送信するように構成した対象物体の状態管理システムであって、
前記状態管理システムは、
売上額に応じたサービスポイント提供を行う販売店舗に登録した会員である顧客固有の識別情報及び書き換え可能なサービスポイント情報を記憶した無線ICタグカードと、
販売店舗の一定の場所に配置されるとともに、買物客である顧客の前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードからの識別情報、サービスポイント情報の読み取り及び書き換え処理を実行するとともに、読み取った前記識別情報と、前記サービスポイント情報とを無線データ回線を介して送信する読取書込処理手段と、
前記読取書込処理手段からの識別情報及びサービスポイント情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき無線ICタグカードの更新情報を作成して前記読取書込処理手段に無線データ回線を介して送信し、前記読取書込処理手段により売上額に応じた無線ICタグカードのサービスポイント情報の更新を実行させるとともに、通信網を介して無線ICタグカードの更新情報を前記顧客に送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの無線ICタグカードの更新情報を、通信網を介して受信する前記顧客の情報通信装置と、
を有し、
無線データ回線及び携帯電子メールを利用する構成をもって、安価な基本使用料金契約で、顧客が販売店舗における売上額に応じた顧客へのサービスポイント付加の状態の把握を的確に行うことができるようにしたことを特徴とする無線ICのタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項4】
予め登録した会員である無線ICタグカードの携行者の接近時、その無線ICタグカード1から識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して送信する読取処理手段を具備し、この読取処理手段からの識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して受信し、予め格納した管理支援プログラムに基づき特定の状態情報を作成して通信網を介して前記無線ICタグカードの携行者に関連する特定者宛てに送信するように構成した対象物体の状態管理システムであって、
前記状態管理システムは、
売上額に応じたサービスポイント提供を行う販売店舗に登録した会員である顧客固有の識別情報及び書き換え可能なサービスポイント情報を記憶した無線ICタグカードと、
販売店舗の一定の場所に配置されるとともに、買物客である顧客の前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードからの識別情報、サービスポイント情報の読み取り及び書き換え処理を実行するとともに、読み取った前記識別情報と、前記サービスポイント情報とを無線データ回線を介して送信する読取書込処理手段と、
前記読取書込処理手段からの識別情報及びサービスポイント情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき無線ICタグカードの更新情報を作成して前記読取書込処理手段に無線データ回線を介して送信し、前記読取書込処理手段により売上額に応じた無線ICタグカードのサービスポイント情報の更新を実行させるとともに、通信網を介して無線ICタグカードの更新情報を前記顧客に送信する構成であり、受信するデータを何千万個というホルダーの指定のホルダー領域にアドレス別に記憶し、到着した瞬間に予め指定した情報通信装置に転送する瞬時転送型のサーバー構成とした管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの無線ICタグカードの更新情報を、通信網を介して受信する前記顧客の情報通信装置と、
を有し、
無線データ回線及び携帯電子メールを利用する構成をもって、安価な基本使用料金契約で、顧客が販売店舗における売上額に応じた顧客への書き換え可能なサービスポイント付加の状態の把握を的確に行うことができるようにしたことを特徴とする無線ICのタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項5】
予め登録した会員である無線ICタグカードの携行者の接近時、その無線ICタグカード1から識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して送信する読取処理手段を具備し、この読取処理手段からの識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して受信し、予め格納した管理支援プログラムに基づき特定の状態情報を作成して通信網を介して前記無線ICタグカードの携行者に関連する特定者宛てに送信するように構成した対象物体の状態管理システムであって、
前記状態管理システムは、
観光バスの複数の乗客管理に適用する無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システムで、
予め登録した会員である個々の乗客が携行する当該乗客固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
観光バスにおける一定の箇所に配置され、又は観光バスの係員が携行するとともに、前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから識別情報を読み取る読取処理手段と、
前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報を、無線データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき前記個々の乗客の前記観光バスにおける乗降状態を表す個々の乗客乗降状態情報を作成して通信網を介して前記乗客に関連する特定者宛てに送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの個々の乗客乗降状態情報を、通信網を介して受信する前記特定者である観光バスの係員の情報通信装置と、
を有し、
無線データ回線及び携帯電子メールを利用する構成をもって、安価な基本使用料金契約で、観光バスの運転手、ガイド又は添乗員が現在時間での乗客の状態、すなわち、だれが戻り、だれが戻っていないかの把握を的確に行うことができるようにしたことを特徴とする無線ICのタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。
【請求項6】
予め登録した会員である無線ICタグカードの携行者の接近時、その無線ICタグカード1から識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して送信する読取処理手段を具備し、この読取処理手段からの識別情報及びその他の情報を無線データ回線を介して受信し、予め格納した管理支援プログラムに基づき特定の状態情報を作成して通信網を介して前記無線ICタグカードの携行者に関連する特定者宛てに送信するように構成した対象物体の状態管理システムであって、
前記状態管理システムは、
業務用車両の運行管理に適用する無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システムで、
予め登録した運転者が携行する当該運転者固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
業務用車両における一定の箇所に配置され、タグリーダ、GPS情報受信手段及び無線データ回線を介して送受信を行う無線データ送受信手段を組み合わせて構成され、前記業務用車両の運行に伴って、前記無線ICタグカードから識別情報を読み取り、GPS情報を受信して、前記無線データ送受信手段により無線データ回線を介して前記識別情報及びGPS情報の送信を行うロケーション装置を組み込んだ読取処理手段と、
前記読取処理手段からの前記識別情報、GPS情報を受信し、管理支援プログラムに基づき前記業務用車両の運行状態情報を作成して、通信網を介して送信する管理センターの管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの運行状態情報を、通信網を介して受信する前記業務用車両の運行会社のコンピュータ装置と、
を有し、
無線データ回線及び携帯電子メールを利用する構成をもって、安価な基本使用料金契約で、運行会社側が各業務用車両の運行状態情報を自動的に受信して各業務用車両の運行管理を的確に行うことができるようにしたことを特徴とする無線ICのタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。」
と補正しようとするものである。

2.補正の適否(特許法第17条の2第4項)についての判断
特許法第17条の2第4項は以下のように規定している。

「前項に規定するもののほか、第1項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断がされた発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。」

そして、特許法第37条には、
「二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願をすることができる。」と規定され、
また、特許法施行規則第25条の8には、
「特許法第37条の経済産業省令で定める技術的関係とは、二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していることにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係をいう。

2 前項に規定する特別な技術的特徴とは、発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。

3 第一項に規定する技術的関係については、二以上の発明が別個の請求項に記載されているか単一の請求項に択一的な形式によって記載されているかどうかにかかわらず、その有無を判断するものとする。」
と規定されている。

以下では、まず、 本件補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断がされた発明を特定し、次に、当該発明の特別な技術的特徴を特定し、特定された特別な技術的特徴と、本件補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明の特別な技術的特徴とが、同一の又は対応する特別な技術的特徴であるか否か検討する。

ア.本件補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断がされた発明
本件補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断がされた発明は、平成27年7月17日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された請求項1,2,4である。

イ.本件補正前の請求項1に係る発明の特別な技術的特徴について
本件補正前の請求項1に係る発明(以下、「請求項1発明」という。)の特別な技術的特徴を特定するために、先行技術との対比を行い、当該発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴を特定する。

(ア)先行技術(引用例1発明)
原査定の拒絶理由で、単一性の特別な技術的特徴の判断において、先行技術として引用された特開2006-48597号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「【0015】
図1は、本発明における移動体情報提供装置を利用した塾等出欠管理システムの全体構成を示したものである。塾等に在籍する生徒の出欠状況を自動連絡可能とするASPサーバ1を中心に、保護者側には、例えばパソコン(パーソナルコンピュータ)や携帯電話などの端末装置2(以下、保護者端末装置2という。)が設けられ、塾側には、記録媒体としてのICカード4に記録された情報を読み取り可能なゲート5と例えばパソコンなどの端末装置3(以下、塾端末装置3という。)とにより入退室管理システム6が構築されている。ASPサーバ1と保護者端末装置2と塾端末装置3とは、通信回線網としてのインターネット10でそれぞれ相互に接続されている。」
(b)「【0020】
入退室管理システム6において、ゲート5と塾端末装置3とは、例えばRS232C(Recommended Standard 232C)やUSB(Universal Serial Bus)などの周知の通信規格に準拠した通信回線により接続される。又は、塾内LAN(Local Area Network)を構築して一台の塾端末装置3と任意のn台のゲート5とを接続してもよい。ゲート5は、生徒が携帯するICカード4に記録された生徒の個人識別情報としての生徒IDを読取り、塾端末装置3に送信するものであり、少なくとも例えば非接触式カードリーダなどの識別情報読取手段としてのID読取手段30と、ID読取手段30により読取った前記生徒IDやゲートコードなどのゲート情報を通信回線を通じて塾端末装置3に送信するゲート情報送信手段31とを備える。ICカード4は、ゲート5のID読取手段30から発射される電波を受けて、ICカード4に記録された識別信号をID読取手段30に送信する識別信号送信機として働く一方で、ID読取手段30が識別信号受信機として働く。ここで、ゲートコードとは、ゲート5の固体を識別するためにゲート5にそれぞれ割り当てられた数字,文字,記号などの組み合わせ、すなわちゲート5の固体識別コードを言う。ゲート5は塾の各教室出入口にそれぞれ設置され、各ゲート5は各々固有のゲートコードを有している。生徒が教室に出入りするには、必ずゲート5を通るようになっており、生徒がゲート5を通って教室に出入りする度に、生徒が携帯するICカード4から個人情報が読み込まれることとなる。もちろん、ICカード4を磁気カードとし、ゲート5のID読取手段30を磁気カードリーダとしてもよく、ゲート5を通過する生徒を容易に識別できるものであればどのようなものでもよい。」
(c)「【0024】
塾に設置された入退室管理システム6では、生徒が教室に出入りする度、すなわちゲート5を通過する度に、ゲート5のID読取手段30が、その生徒が携帯するICカード4に記録された生徒IDを読取る。この生徒IDは当該ゲートコードと共にゲート情報として、ゲート情報送信手段31により前記通信回線を通じて塾端末装置3に送信される。塾端末装置3では、通信部25が前記ゲート情報を受信し、制御部20のゲート情報転送手段22によりインターネット10を介してASPサーバ1へ転送される。このとき、ゲート情報には、ゲート5から受信した時間(時刻)が付加された形でASPサーバ1に転送される。ゲート5から受信した時間は、生徒がゲート5を通過した時間と概ね一致するため、これを当該通過時間とみなしてゲート情報に付加しているが、ゲート5に時計機能を持たせて、ゲート5のID読取手段30が生徒IDを読取った時間をゲート情報に付加して、塾端末装置3ひいてはASPサーバ1に送信するようにしてもよい。このようにして、ASPサーバ1に、各ゲート5を通過して教室に出入りする生徒の生徒IDが、その場所(教室),通過時間と共にリアルタイムに収集されて行く。
【0025】
ASPサーバ1に送信された前記ゲート情報は、通信部48で受信され、制御部35の出欠管理手段39がゲート情報に基づいて、出欠管理データベース46の内容を更新する。具体的には、出欠管理手段39は、ゲート情報に含まれる生徒ID,通過時間に基づき、通過時間と例えば授業の開始,終了時刻などの所定時間との前後関係や、ゲート5の通過回数などから出席,欠席,遅刻,早退,帰宅,時間延長などの出欠状況を判断し、生徒IDに該当するレコードを更新する。出欠管理データベース46の各レコードは、ゲートコード(教室)別に分類分けされる。
【0026】
例えば、ゲート5の通過回数すなわち同じ生徒IDを含むゲート情報の受信回数から、受信回数が1回であれば入室とし、受信回数が2回であれば退室と判断する。退室を判断した時点で、受信回数はリセットされる。なお、ゲート5の二箇所にID読取手段30を設け、生徒の通過方向を検出するようにすれば、より確実に生徒の入退室を判断することができる。この場合、前記受信回数の代わりに、2つのID読取手段30がICカード4から生徒IDを読み込む順番によって入退室を判断する。また、ゲート情報の通過時間と、予め設定された授業の開始,終了時刻との前後関係から、授業の開始時刻前に生徒が入室すれば出席とし、授業の開始時刻を過ぎても生徒が入室していなければ欠席とし、授業の開
始時刻を過ぎてから生徒が入室すれば遅刻とし、授業の終了時刻までの時間に生徒が退室すれば早退とし、授業の終了時刻を過ぎてから生徒が退室すれば帰宅とし、授業の終了時刻を一定時間過ぎても生徒が退室していなければ時間延長と判断する。生徒が一度入室しても、所用により一時的に退室する場合も想定されるため、例えば、退室してから一定時間は出欠状況の判断を留保したり、授業開始時刻までの退室は帰宅と判断しないよう構成するのが好ましい。また、時間延長に関しては、塾端末装置3から直接ASPサーバ1に時間延長設定を行うよう構成してもよい。その他、ゲート情報のゲートコードを利用して、生徒が自分の教室とは異なる教室に誤って入室していないかなどを照合して、塾端末装置3に報知してもよい。
【0027】
このように、ASPサーバ1の出欠管理手段39は、入退室管理システム6から受信したゲート情報に応じて出欠管理データベース46をリアルタイムに更新する。一方で、ASPサーバ1の出欠管理データベース46の内容から、後述するように、出欠状況確認メールや電子出欠簿などが作成される。」
(d)「【0032】
出欠状況確認メールの送信設定がなされている場合には、対象となる特定生徒の出欠状況確認メールがASPサーバ1から該当する保護者端末装置2に送信されることとなる。出欠状況確認メールは、特定生徒の出欠状況を示す出欠管理データベース46の内容を記憶装置44に格納されているメールデータ45の定型文に組み込み、メールデータ45のメーリングリストに登録されたアドレスを利用してメール送受信手段37が該当する保護者端末装置2に送信する。これらの処理は、送信設定に合わせて出欠管理データベース46の更新タイミング、すなわち出欠管理手段39が生徒の出欠状況を判断した時点やメールリクエストを受付けた時点で行われる。」
(下線は、当審による。)

以上の記載事項から、引用例1には
「ゲート5は、塾の各教室出入口にそれぞれ設置され、生徒が携帯するICカード4に記録された生徒の個人識別情報としての生徒IDを読取り、塾端末装置3に送信するものであり、少なくとも例えば非接触式カードリーダなどの識別情報読取手段としてのID読取手段30と、ID読取手段30により読取った前記生徒IDやゲートコード、通過時間などのゲート情報を通信回線を通じて塾端末装置3に送信するゲート情報送信手段31とを備え、
塾端末装置3は、前記ゲート情報を受信してASPサーバ1へ転送し、
ASPサーバ1は、各ゲート5を通過して教室に出入りする生徒の生徒IDを、その場所(教室),通過時間と共にリアルタイムに収集し、ゲート情報に含まれる生徒ID,通過時間に基づき、通過時間と例えば授業の開始,終了時刻などの所定時間との前後関係や、ゲート5の通過回数などから出席,欠席,遅刻,早退,帰宅,時間延長などの出欠状況を判断し、出欠状況確認メールや電子出欠簿などが作成され、
対象となる特定生徒の出欠状況確認メールがASPサーバ1から通信回線網としてのインターネット10を介して該当する携帯電話等で構成された保護者端末装置2に送信される移動体情報提供装置。」
の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。

(イ)対比
そこで、請求項1発明と引用例1発明を対比する。
引用例1発明の「ゲート5は、塾の各教室出入口にそれぞれ設置され、生徒が携帯するICカード4に記録された生徒の個人識別情報としての生徒IDを読取る非接触式カードリーダなどの識別情報読取手段としてのID読取手段30と、ID読取手段30により読取った前記生徒IDやゲートコード、通過時間などのゲート情報を通信回線を通じて塾端末装置3に送信するゲート情報送信手段31とを備え、」で、「生徒が携帯するICカード4」は、塾に登録された会員である生徒が携行する無線ICタグカードであって、ID読取手段30は、ICカード4から生徒IDを読取り、その他の情報であるゲートコード、通過時間などのゲート情報とともに、データ回線である通信回線を介して塾端末装置3に送信しているから、請求項1発明の「予め登録した会員である携行者が携行する当該携行者固有の識別情報を記憶した無線ICタグカード」と「前記携行者に関連する一定の場所に配置されるとともに、前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報と読み取り時刻情報、場所情報を、」「データ回線を介して送信する読取処理手段」に相当する構成を有している。
引用例1発明の「塾端末装置3は、前記ゲート情報を受信してASPサーバ1へ転送し、」で、「塾端末装置3」は、ゲート情報を受信しているから、請求項1発明の「前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報、場所情報を、」「データ回線を介して受信」する機能を有している。
引用例1発明の「ASPサーバ1は、各ゲート5を通過して教室に出入りする生徒の生徒IDを、その場所(教室),通過時間と共にリアルタイムに収集し、ゲート情報に含まれる生徒ID,通過時間に基づき、通過時間と例えば授業の開始,終了時刻などの所定時間との前後関係や、ゲート5の通過回数などから出席,欠席,遅刻,早退,帰宅,時間延長などの出欠状況を判断し、出欠状況確認メールや電子出欠簿などが作成され」で、「ASPサーバ1」は、ゲート情報を処理して状態情報である出欠状況を判断し、出欠状況確認メールや電子出欠簿などを作成しているから、請求項1の発明の「管理支援プログラムに基づき前記携行者の前記場所における状態を表す携行者状態情報を作成」する機能を有している。
引用例1発明の「対象となる特定生徒の出欠状況確認メールがASPサーバ1から通信回線網としてのインターネット10を介して該当する携帯電話等で構成された保護者端末装置2に送信される」は、ASPサーバ1が生徒の状態情報である出欠状況を、インターネット10を介して生徒の関連する特定者である該当する保護者端末装置2に送信するものであるから、請求項1の発明の「通信網を介して前記携行者宛てに又は前記携行者に関連する特定者宛てに送信する管理支援コンピュータ装置」および「前記管理支援コンピュータ装置からの携行者状態情報を、通信網を介して受信する前記携行者自体の又は前記特定者の情報通信装置」に相当する機能を有している。
引用例1発明の「移動体情報提供装置」は、移動体である対象物の状態情報である出欠状況を管理するシステムであるから、請求項1の発明の「対象物体の状態管理システム」に相当する。

したがって、両発明の一致点、相違点は以下の通りである。

〈一致点〉
「 予め登録した会員である携行者が携行する当該携行者固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
前記携行者に関連する一定の場所に配置されるとともに、前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報と読み取り時刻情報、場所情報を、データ回線を介して送信する読取処理手段と、
前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報、場所情報を、データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき前記携行者の前記場所における状態を表す携行者状態情報を作成して通信網を介して前記携行者宛てに又は前記携行者に関連する特定者宛てに送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの携行者状態情報を、通信網を介して受信する前記携行者自体の又は前記特定者の情報通信装置と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。」

〈相違点〉
(1)請求項1の発明は、読取処理手段からの通信が「無線」データ回線を介しているのに対して、引用例1発明では、「通信回線」と記載されているものの、無線であるとは記載されていない点。

(ウ)相違点についての判断

相違点(1)
引用例1発明の「通信手段」は、読み取った生徒ID等を通信できればよく、「無線」「有線」のいずれも含むことは自明である。さらに、ICカードの読み取り装置において、読み取ったデータを無線データ回線介して送信することは、「特開2010-244105号公報」の段落番号0061、「特開2010-244522号公報」の段落番号0039に見られるように周知慣用事項であるから、相違点(1)は実質的な相違点にはならない。

そうすると、請求項1発明は、先行技術である引用例1に記載された発明であるから、引用例1発明に対して、技術的貢献を明示する技術的特徴はない。

ウ.本件補正前の請求項2に係る発明の特別な技術的特徴について
本件補正前の請求項2に係る発明(以下、「請求項2発明」という。)の特別な技術的特徴を特定するために、先行技術との対比を行い、当該発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴を特定する。

(ア)先行技術(引用例1発明)
上記イ.(ア)に記載されたとおりのものである。

(イ)対比
請求項2発明と引用例1発明を対比する。
引用例1発明の「ゲート5は、塾の各教室出入口にそれぞれ設置され、生徒が携帯するICカード4に記録された生徒の個人識別情報としての生徒IDを読取る非接触式カードリーダなどの識別情報読取手段としてのID読取手段30と、ID読取手段30により読取った前記生徒IDやゲートコード、通過時間などのゲート情報を通信回線を通じて塾端末装置3に送信するゲート情報送信手段31とを備え、」で、「生徒が携帯するICカード4」は、塾に登録された会員である生徒が携行する無線ICタグカードであって、ID読取手段30は、ICカード4から生徒IDを読取り、その他の情報であるゲートコード、通過時間などのゲート情報とともに、データ回線である通信回線を介して塾端末装置3に送信しているから、請求項2発明の「予め登録した会員である学習塾生徒が携行する当該学習塾生徒固有の識別情報を記憶した無線ICタグカード」「前記学習塾生徒が通う学習塾に配置されるとともに、前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報と読み取り時刻情報、場所情報を、」「データ回線を介して送信する読取処理手段」に相当する構成を有している。
引用例1発明の「塾端末装置3は、前記ゲート情報を受信してASPサーバ1へ転送し、」で、「塾端末装置3」は、ゲート情報を受信しているから、請求項2発明の「この読取処理手段からの識別情報及びその他の情報を」「データ回線を介して受信」する機能を有している。
引用例1発明の「ASPサーバ1は、各ゲート5を通過して教室に出入りする生徒の生徒IDを、その場所(教室),通過時間と共にリアルタイムに収集し、ゲート情報に含まれる生徒ID,通過時間に基づき、通過時間と例えば授業の開始,終了時刻などの所定時間との前後関係や、ゲート5の通過回数などから出席,欠席,遅刻,早退,帰宅,時間延長などの出欠状況を判断し、出欠状況確認メールや電子出欠簿などが作成され」で、「ASPサーバ1」は、ゲート情報を処理して状態情報である出欠状況を判断し、出欠状況確認メールや電子出欠簿などを作成しているから、請求項2発明の「管理支援プログラムに基づき前記学習塾生徒の前記学習塾における状態を表す生徒出退状態情報を作成」する機能を有している。
引用例1発明の「対象となる特定生徒の出欠状況確認メールがASPサーバ1から通信回線網としてのインターネット10を介して該当する携帯電話等で構成された保護者端末装置2に送信される」は、ASPサーバ1が生徒の状態情報である出欠状況を、インターネット10を介して生徒の関連する特定者である該当する保護者端末装置2に送信するものであるから、請求項2発明の「通信網を介して前記携行者に関連する特定者としての保護者宛てに送信する管理支援コンピュータ装置」および「前記管理支援コンピュータ装置からの生徒出退状態情報を、通信網を介して受信する前記保護者の情報通信装置」する機能を有している。
引用例1発明の「移動体情報提供装置」は、移動体である対象物の状態情報である出欠状況を管理するシステムであるから、請求項2発明の「対象物体の状態管理システム」に相当する。

したがって、両発明の一致点、相違点は以下の通りである。

〈一致点〉
「 予め登録した会員である学習塾生徒が携行する当該学習塾生徒固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
前記学習塾生徒が通う学習塾に配置されるとともに、前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報と読み取り時刻情報、場所情報を、データ回線を介して送信する読取処理手段と、
前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報、場所情報を、データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき前記学習塾生徒の前記学習塾における状態を表す生徒出退状態情報を作成して通信網を介して前記携行者に関連する特定者としての保護者宛てに送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの生徒出退状態情報を、通信網を介して受信する前記保護者の情報通信装置と、
を有することを特徴とする無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。


〈相違点〉
(1)請求項2発明は、読取処理手段からの通信が「無線」データ回線を介しているのに対して、引用例1発明では、「通信回線」と記載されているものの、無線であるとは記載されていない点。

(ウ)相違点についての判断
相違点(1)
引用例1発明の「通信手段」は、読み取った生徒ID等を通信できればよく、「無線」「有線」のいずれも含むことは自明である。さらに、ICカードの読み取り装置において、読み取ったデータを無線データ回線介して送信することは、「特開2010-244105号公報」の段落番号0061、「特開2010-244522号公報」の段落番号0039に見られるように周知慣用事項であるから、相違点(1)は実質的な相違点にはならない。

そうすると、請求項2発明は、先行技術である引用例1に記載された発明であるから、先行技術である引用例1に対して、技術的貢献を明示する技術的特徴はない。

エ.本件補正前の請求項4に係る発明の特別な技術的特徴について

(ア)先行技術(引用例2発明)
原査定の拒絶理由で、単一性の特別な技術的特徴の判断において、先行技術として引用された特開2002-269303号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「【0016】本発明の実施形態である勤怠管理システム1及びそれを用いたネットワーク構成100について、図1を用いて説明する。図1は、勤怠管理システム1及びそれを用いたネットワーク構成100を示した構成図である。ネットワーク構成100は、勤怠管理システム1と、各職場の出入り口に設置されている出退勤管理装置A?C(21?23)と、イントラネット3と、管理者端末4と、従業員端末5とから構成されている。
【0017】管理者端末4及び従業員端末5について説明する。管理者端末4及び従業員端末5は、イントラネット3に接続されており、物理的には、CPU(中央処理装置)、メモリ、マウスやキーボードといった入力装置、ディスプレイといった表示装置、ハードディスクといった格納装置、モデムといった送受信装置などを備えたコンピュータシステム(例えばパーソナルコンピュータ、携帯情報端末)として構成される。管理者端末4は、従業員の中でいわゆる管理職の立場にある者が使用するものであり、従業員端末5はその他の従業員が使用するものである。
【0018】次に、出退勤管理装置A?C(21?23)について説明する。出退勤管理装置A?C(21?23)は、いわゆるICカードリードライト装置であって、物理的には、ICカードとの通信状態を確立する通信制御部、ICカードとデータのやり取りをするインターフェイス部、ICカードとデータのやり取りをした結果を送出する送信部、各部を制御統括するCPU(中央処理装置)等から構成される。出退勤管理装置A?C(21?23)は、従業員がICカードを読み込ませると、その時刻を出退勤時刻と認識し、従業員を特定する情報及び直行直帰等の付帯情報と共に出退勤情報として勤怠管理システム1に送信する。尚、出退勤管理装置A?C(21?23)は、ICカードリードライト装置の他にも、指紋、虹彩、網膜、筆跡、声紋、DNA等の利用者の生物学的な特徴や、磁気カード、印鑑等の利用者の持ち物や、パスワード、暗証番号、秘密鍵等の利用者のみが記憶している情報などにより従業員を特定する種々の装置が採用できる。出退勤管理装置A?C(21?23)は、それぞれ別の事業所に設置されているものとする。
【0019】次に、勤怠管理システム1について説明する。勤怠管理システム1は、物理的には、CPU(中央処理装置)、メモリ、マウスやキーボードといった入力装置、ディスプレイといった表示装置、ハードディスクといった格納装置などを備えたコンピュータシステム(例えばワークステーション、パーソナルコンピュータ)として構成される。勤怠管理システム1は機能的な構成要素として、受信部11(受信手段)と、管理情報作成部12(管理情報作成手段)と、給与条件格納部14(給与条件格納手段)と、給与算定部14(給与算定手段)と、送信部15(送信手段)と、送付先格納部16(送付先格納手段)と、要求受信部17(要求受信手段)を備えて構成されている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0020】受信部11は、出退勤管理装置A?C(21?23)から送信されてくる、従業員の出退勤情報を受取る部分である。出退勤情報は、社員番号や名前などの従業員を特定できる情報をヘッダとして、出勤時刻及び退勤時刻の情報、更に直行直帰の情報などの付帯情報を含むものである。受信部11は受取った出退勤情報を管理情報作成部12へ送出する。
【0021】管理情報作成部12は、受取った出退勤情報を集計して、出退勤管理情報を作成する部分である。出退勤管理情報は各従業員ごとに作られており、各出勤日ごとの出社時刻、出社場所、退社時刻、退社場所、時間外労働時間、休日労働時間、休日残業時間、特記事項などが含まれている。出社場所及び退社場所とは、どの事業所に出社し退社したかを指し示す情報である。時間外労働時間とは出社時刻と退社時刻から算出される1日の総労働時間から、定時間内の労働時間を差し引いた超過時間のことを指すものである。休日労働時間とは、休日に出勤した場合の労働時間であって、通常出勤日の定時間内の時間を上限とするものである。休日残業時間とは、休日に出勤した場合の労働時間であって、休日労働時間を超過した分の労働時間を指すものである。特記事項とは、その日の勤務形態が通常出勤であったのかそれとも早退や欠勤等の出勤形態であったのかを指し示す情報である。」
(b)「【0026】送信部15は、出退勤管理情報又は給与情報を送信する部分であり、送信先として送付先格納部16に格納されている送信先を指定する。送信部15はイントラネット3に接続されていて、イントラネット3を介して管理者端末4や従業員端末5に情報を送信することが可能である。また、送信するタイミングとしては、管理情報作成部12及び給与算定部14が各情報を作成した後でも、要求受信部17が情報の送信要求を受けた場合でも、いずれも対応可能である。
【0027】次に、勤怠管理システム1及びネットワーク構成100の動作について説明する。従業員は会社に出勤すると職場の出入り口にある出退勤管理装置A?C(21?23)にICカードを認識させて職場に入る。例えば出退勤管理装置Aが設置されている事業所に出勤した場合は、出退勤管理装置A(21)が、従業員の社員番号と、名前と、出社時刻とを出退勤情報として勤怠管理システム1の受信部11へ送信する。尚、有給休暇や欠勤や直行直帰などの例外処理の場合は、出退勤管理装置A(21)を適宜操作してその旨を入力し、出退勤情報に添付して勤怠管理システム1の受信部11へ送信するものとする。従業員は退社時にも同様に各職場に設置されている出退勤管理装置A?C(21?23)にICカードを認識させる。出退勤管理装置A(21)は、従業員の社員番号と、名前と、退社時刻とを出退勤情報として勤怠管理システム1の受信部11へ送信する。
【0028】図2は、勤怠管理システム1の処理の流れを示した流れ図である。以下図2を用いて説明する。勤怠管理システム1の受信部11は、出退勤管理装置A?C(21?23)から送られてくる各従業員の出退勤情報を受信する(ステップS01)。勤怠管理システム1の管理情報作成部12は、受信部11が受信した各従業員の出退勤情報を基に、出退勤管理情報を作成する(ステップS02)。
【0029】図3は、社員番号1の従業員Aの出退勤管理情報の一例を示した図である。ステップS02について図3を用いて更に説明する。図3に示すように、出退勤管理情報の項目としては、日付、曜日、出社時刻、出社場所、退社時刻、退社場所、時間外労働時間、休日労働時間、休日残業時間、特記等がある。例えば、8日月曜日のように出社場所と退社場所が異なるのは、就業時間中に職場を移動したことを示している。」
(c)「【0033】要求受信部17が、管理者端末4又は従業員端末5からの要求情報を受信すると(ステップS04)、送信部15が、出退勤管理情報(図3に示すものと同様)又は給与情報を送信する(ステップS05)。要求受信部17が、送信要求を受信せずに給与計算の締め切り日が来ると(ステップS06)、送信部15が、出退勤管理情報又は給与情報を送信する(ステップS07)。送信部15は、各従業員の出退勤管理情報と給与情報を電子メールで送信する。送信先は送付先格納部16に図5(a)のように格納されている。送信先としては各従業員の指定されたメールアドレスと、各従業員が所属するグループの管理社員の指定されたメールアドレスがある。各従業員の管理社員は、図5(a)のグループ欄に記載の数字と、図5(b)の管理社員とを対応させて決定される。各従業員は、従業員端末5でこの電子メールを受信し、内容を閲覧することができる。管理社員は、管理者端末4で同様に電子メールを受信し、内容を閲覧することができる。」
そうすると、引用例2には、
「出退勤管理装置A?C(21?23)は、それぞれ別の事業所の出入り口に設置され、従業員がICカードを読み込ませると、その時刻を出退勤時刻と認識し、社員番号、名前及び直行直帰等の付帯情報と共に出退勤情報として勤怠管理システム1に送信し、
勤怠管理システム1の受信部は、出退勤管理装置A?C(21?23)から送信されてくる、従業員の出退勤情報として社員番号や名前などの従業員を特定できる情報をヘッダとして、出勤時刻及び退勤時刻の情報、更に直行直帰の情報などの付帯情報を受取り、受取った出退勤情報を管理情報作成部12へ送出し、
勤怠管理システム1の管理情報作成部12は、受取った出退勤情報を集計して、出退勤管理情報を作成し、出退勤管理情報は各従業員ごとに作られており、各出勤日ごとの出社時刻、出社場所、退社時刻、退社場所、時間外労働時間、休日労働時間、休日残業時間、特記事項などが含まれ、
勤怠管理システム1の送信部15は、各従業員の出退勤管理情報を、送付先格納部16に格納された各従業員の指定されたメールアドレスにイントラネット3を介して電子メールで送信し、各従業員は、従業員端末5でこの電子メールを受信し、内容を閲覧するする勤怠管理システム1及びそれを用いたネットワーク構成100」
の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されている。

(イ)対比
そこで、請求項4発明と引用例2発明を対比する。
引用例2発明の「出退勤管理装置A?C(21?23)は、それぞれ別の事業所の出入り口に設置され、従業員がICカードを読み込ませると、その時刻を出退勤時刻と認識し、社員番号、名前及び直行直帰等の付帯情報と共に出退勤情報として勤怠管理システム1に送信し、」で、「従業員のICカード」には、社員番号、名前が登録されていて、「会社」は事業を営む組織であるから、引用例2は、請求項6発明は「予め登録した会員である事業を営む組織の従業員が携行する当該従業員固有の識別情報を記憶した無線ICタグカード」に相当する構成を有していて、さらに、「出退勤管理装置A?C(21?23)は、それぞれ別の事業所の出入り口に設置され」ていて、ICカードから読み込んだ時刻を出退勤時刻と認識し、社員番号、名前及び直行直帰等の付帯情報と共に出退勤情報として勤怠管理システム1に送信しているから、請求項4発明の「前記組織の一定の場所又は複数の場所に配置され、
前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから当該従業員の識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報と読み取り時刻情報、場所情報を、」「データ回線を介して送信する読取処理手段」に相当する構成を有している。
引用例2発明の「勤怠管理システム1の受信部は、出退勤管理装置A?C(21?23)から送信されてくる、従業員の出退勤情報として社員番号や名前などの従業員を特定できる情報をヘッダとして、出勤時刻及び退勤時刻の情報、更に直行直帰の情報などの付帯情報を受取り、受取った出退勤情報を管理情報作成部12へ送出し、」「勤怠管理システム1の管理情報作成部12は、受取った出退勤情報を集計して、出退勤管理情報を作成し、出退勤管理情報は各従業員ごとに作られており、各出勤日ごとの出社時刻、出社場所、退社時刻、退社場所、時間外労働時間、休日労働時間、休日残業時間、特記事項などが含まれ、」で、「勤怠管理システム1の受信部」は、出退勤管理装置A?C(21?23)から送信されてくる、従業員の出退勤情報として社員番号や名前などの従業員を特定できる情報をヘッダとして、出勤時刻及び退勤時刻の情報、更に直行直帰の情報などの付帯情報を受取っていて、勤怠管理情報が出社場所、退社場所を含んでいて、当該場所情報も送出されていることも明らかであることから、請求項4発明の「前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報、場所情報を、」「データ回線を介して受信」する機能を有している。
引用例2発明の「勤怠管理システム1の管理情報作成部12は、受取った出退勤情報を集計して、出退勤管理情報を作成し」は、管理情報作成部12が従業者の状態情報である出退勤情報を、処理して「出退勤管理情報」作成しているから、請求項4発明の「管理支援プログラムに基づき前記従業員の出退勤管理情報を作成」する機能と同等の機能を有している。
引用例2発明の「勤怠管理システム1の送信部15は、各従業員の出退勤管理情報を、送付先格納部16に格納された各従業員の指定されたメールアドレスにイントラネット3を介して電子メールで送信し、」で、「勤怠管理システム1の送信部15は、各従業員の出退勤管理情報を、送付先格納部16に格納された各従業員の指定されたメールアドレスにイントラネット3を介して電子メールで送信し」で、「勤怠管理システム1」は、その機能からみて「情報管理支援コンピュータ」に相当し、「出退勤管理情報」を「通信網」に相当する「イントラネット3」を介して各従業員宛のメールアドレスに送信しているから、請求項4発明の「出退勤管理情報を作成して通信網を介して前記管理コンピュータ装置に送信するとともに、前記従業員宛てに送信する管理支援コンピュータ装置」に相当する構成を有している。
引用例2発明の「各従業員は、従業員端末5でこの電子メールを受信し、内容を閲覧するする」は、請求項4発明の「前記管理支援コンピュータ装置からの出退勤管理情報を、通信網を介して受信する前記従業員の情報通信装置」の構成を有している。
引用例2発明の「勤怠管理システム1及びそれを用いたネットワーク構成100」は、移動体である対象物の状態情報である出欠状況を管理するシステムであるから、請求項4発明の「無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム」に相当する。

したがって、両発明の一致点、相違点は以下の通りである。

〈一致点〉
「 予め登録した会員である事業を営む組織の従業員が携行する当該従業員固有の識別情報を記憶した無線ICタグカードと、
前記組織の一定の場所又は複数の場所に配置され、
前記無線ICタグカードの接近時、前記無線ICタグカードから当該従業員の識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報と読み取り時刻情報、場所情報を、データ回線を介して送信する読取処理手段と、
前記読取処理手段からの識別情報及び読み取り時刻情報、場所情報を、データ回線を介して受信し、管理支援プログラムに基づき前記従業員の出退勤管理情報を作成して通信網を介して前記管理コンピュータ装置に送信するとともに、前記従業員宛てに送信する管理支援コンピュータ装置と、
前記管理支援コンピュータ装置からの出退勤管理情報を、通信網を介して受信する前記従業員の情報通信装置と、
を有する無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム。」

〈相違点〉
(1)請求項6発明は、「読取処理手段」で読み取った情報を「無線データ回線」を介して「管理支援コンピュータ装置」に送信しているのに対して、引用例2発明では、「出退勤管理装置A?C(21?23)」で読み取った情報を「勤怠管理システム1」へ送信する際に、どの様な回線を使用しているかについては記載されていない点。

(ウ)相違点についての判断
相違点(1)
引用例2発明の「通信手段」は、読み取った社員番号等を通信できればよく、「無線」「有線」のいずれも含むことは自明である。さらに、ICカードの読み取り装置において、読み取ったデータを無線で送信することは、「特開2010-244105号公報」の段落番号0061、「特開2010-244522号公報」の段落番号0039に見られるように周知慣用事項であるから、相違点(1)は実質的な相違点にはならない。

そうすると、請求項4発明は、先行技術である引用例2に記載された発明であるから、先行技術である引用例2に対して、技術的貢献を明示する技術的特徴はない。

3.まとめ
本件補正前の請求項1,2および4に係る発明のいずれも、特別な技術的特徴を発見することができない。
そうすると、本件補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明の特別な技術的特徴を特定するまでもなく、本件補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについて判断がされた発明(本件補正前の請求項1,2および4に係る発明のいずれか)と、本件補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明(本件補正後の請求項1ないし6に係る発明)とは、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有しているとはいえないから、本件補正前の請求項1,2および4に係る発明のいずれかと本件補正後の請求項1ないし6に係る発明が第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものではない。
また、本件補正後の請求項1ないし6に係る発明は、先行技術によって新規性を有しないと判断された本件補正前の請求項1に係る発明を包含する広い概念の他の発明であるとはいえず、本件補正前の請求項1に係る発明とは異なる観点での先行技術調査が必要となることから、まとめて審査することが効率的である発明とはいえない。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.平成27年12月8日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明は、平成27年7月17日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)であって、前記第2 1.の(1)に記載したとおりのものである。

2.引用例1
原査定の拒絶理由に引用される引用例、およびその記載事項は、前記第2 2.イ.(ア)に記載したとおりのものである。

3.対比、判断
第2 2.(1)イ.(ウ)で述べたとおり、本願発明は引用例1に記載された発明である。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-06-28 
結審通知日 2016-07-05 
審決日 2016-07-19 
出願番号 特願2011-194871(P2011-194871)
審決分類 P 1 8・ 65- Z (G06K)
P 1 8・ 113- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 正悟  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 野崎 大進
石川 正二
発明の名称 無線ICタグカードを使用した対象物体の状態管理システム  
代理人 前田 和男  
代理人 下山 冨士男  

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