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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  B29C
管理番号 1319141
異議申立番号 異議2015-700063  
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2016-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-06 
確定日 2016-04-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5697290号「床材溶接棒用樹脂組成物及び床材溶接棒」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第5697290号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。 特許第5697290号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。  
理由 第1 主な手続の経緯等
特許第5697290号(設定登録時の請求項の数は6。以下,「本件特許」という。)は,平成26年8月28日を出願日とする特許出願に係るものであって,平成27年2月20日に設定登録された。
特許異議申立人 田中眞喜子(以下,単に「異議申立人」という。)は,平成27年10月6日,本件特許の請求項1?6に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。
当審において,平成27年11月30日付けで取消理由を通知したところ,特許権者らは,平成28年1月29日付けで,訂正請求書(以下,当該訂正請求書による訂正を「本件訂正請求」という。)及び意見書を提出したので,異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ,異議申立人は,平成28年3月4日付けで意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア?ウのとおりである。
ア 特許請求の範囲の請求項1に「前記樹脂系添加剤の含有量が3?15質量%」とあるのを,「前記樹脂系添加剤の含有量が3?15質量%(前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって3?7.7質量%を除く)」に訂正する。
イ 特許請求の範囲の請求項4に「前記樹脂系添加剤の含有量が3?15質量%」とあるのを,「前記樹脂系添加剤の含有量が3?15質量%(前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって3?7.7質量%を除く)」に訂正する。
ウ 特許請求の範囲の請求項5に「シリコーン樹脂及びフッ素樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂系添加剤」とあるのを,「シリコーン樹脂及びフッ素樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂系添加剤(前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって3?7.7質量%のときを除く)」に訂正する。

2 訂正の目的の適否,一群の請求項,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項ア?ウは,樹脂系添加剤の含有量に関し,「シリコーン樹脂の場合であって含有量が3?7.7質量%」のときを除くものであり,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,当該訂正事項ア?ウは,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,当該訂正事項ア?ウは,新規事項の追加に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり,本件訂正請求による訂正は認容されるので,本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は,平成28年1月29日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。

「【請求項1】
塩化ビニル樹脂と,シリコーン樹脂及びフッ素樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂系添加剤とを含み,前記塩化ビニル樹脂の含有量が40?70質量%であり,前記樹脂系添加剤の含有量が3?15質量%(前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって3?7.7質量%を除く)であることを特徴とする床材溶接棒用樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂系添加剤が,シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の床材溶接棒用樹脂組成物。
【請求項3】
更に,炭酸カルシウム,タルク及びシリカよりなる群から選択される少なくとも一種の充填剤を含み,該充填剤の平均粒子径が0.2?1μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の床材溶接棒用樹脂組成物。
【請求項4】
前記塩化ビニル樹脂の含有量が40?70質量%であり,前記樹脂系添加剤の含有量が3?15質量%(前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって3?7.7質量%を除く)であり,前記充填剤の含有量が1?15質量%であることを特徴とする請求項3に記載の床材溶接棒用樹脂組成物。
【請求項5】
塩化ビニル樹脂と,シリコーン樹脂及びフッ素樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂系添加剤(前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって3?7.7質量%のときを除く)と,炭酸カルシウム,タルク及びシリカよりなる群から選択される少なくとも一種の充填剤とを含み,該充填剤の平均粒子径が0.2?1μmであることを特徴とする床材溶接棒用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載の床材溶接棒用樹脂組成物から得られることを特徴とする床材溶接棒。」

第4 取消理由の概要
平成27年11月30日付けで通知した取消理由は,本件特許の請求項1ないし6に係る発明は,その出願前の特許出願であって,その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,本件特許に係る出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件特許に係る出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,その発明についての特許は特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであって取り消すべきである,というものである。

特願2013-198567号(特開2015-63845号)(異議申立人の証拠方法である甲第1号証)

第5 合議体の判断
1 先願
先願:特願2013-198567号(特開2015-63845号)
先願の出願日:平成25年9月25日
先願に係る発明の発明者:冨沢秀行
先願の出願人:ロンシール工業株式会社

2 先願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「先願明細書等」という。)に記載された事項
先願明細書等には,以下の事項が記載されている。なお,下線については合議体において付与した。

ア 「【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100重量部に対し,可塑剤20重量部?60重量部と充填剤0重量部?20重量部とを含有する樹脂組成物からなり,施工後の溶接棒表面の算術平均粗さ(Ra)が2.0μm以下である溶接棒。
【請求項2】
施工後の溶接棒表面の十点平均粗さ(Rz)が15μm以下である請求項1に記載の溶接棒。
【請求項3】
塩化ビニル系樹脂100重量部に対し,シリコーン系共重合体1重量部?10重量部を含有する請求項1または2に記載の溶接棒。
【請求項4】
前記シリコーン系共重合体がシリコーン‐アクリル系共重合体であることを特徴とする請求項3に記載の溶接棒。」(特許請求の範囲の請求項1?4)

イ 「【技術分野】
本発明は床材等の内装シートの接合に用いる溶接棒に関する。」(段落 【0001】)

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,ポリオレフィン系樹脂製以外の内装シート,とりわけビニル系内装シートを溶接可能な耐汚染性に優れた溶接棒は存在していなかった。
本発明は上記問題を解決するものであり,ワックス塗布など防汚処理の定期的なメンテナンスを必要としない内装シートの継目処理に用いることが可能な,耐汚染性に優れた溶接棒を提供することである。」(段落 【0004】?【0005】)

エ 「以下,本発明について詳細を説明する。
はじめに,本発明の溶接棒を成形に用いる樹脂組成物の組成を中心に説明する。本発明の溶接棒は塩化ビニル系樹脂100重量部に対し,可塑剤20重量部?60重量部と充填剤0重量部?20重量部とを含有する樹脂組成物からなる。
溶接棒に使用する塩化ビニル系樹脂としては,たとえばポリ塩化ビニル,エチレン-塩化ビニル共重合体,プロピレン-塩化ビニル共重合体,塩化ビニル-アクリル系樹脂共重合体,塩化ビニル-ウレタン共重合体,塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体,塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などが挙げられ,これらを単独でも2種以上組み合わせて使用しても良い。これら塩化ビニル系樹脂の中でも加工性,価格の点でポリ塩化ビニルが好ましい。ポリ塩化ビニルは懸濁重合,乳化重合,塊状重合などの重合法により重合されるが,いずれの重合法により製造されたポリ塩化ビニルも使用でき,また異なる重合法によって得られたポリ塩化ビニルを複数使用することもできる。ポリ塩化ビニルの平均重合度は400?1500の範囲のものが好ましい。」(段落 【0009】?【0010】)

オ 「溶接棒には充填剤を添加することができる。充填剤としては炭酸カルシウム,シリカの他,タルク,マイカなどの板状フィラー,ベントナイト,焼成カオリンなどのクレー類,酸化マグネシウム,アルミナなどの金属酸化物,水酸化マグネシウム,水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物などの無機系充填剤が使用できる。充填剤には塩化ビニル系樹脂との親和性を高めるため,脂肪酸や変性脂肪酸などの各種表面処理が施されていてもよい。
充填剤の添加量は塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0重量部?20重量部である。充填剤の添加量が増加すると溶接棒の表面の平滑性に及ぼす影響が大きくなり,施工後の溶接棒の表面粗さが大きくなるため汚れが付着しやすくなる。より好ましい充填剤の添加量は0重量部?10重量部であり,さらに好ましくは0重量部(添加せず)である。すなわち,充填剤を添加せず0重量部とすることが好ましいが,0.01重量部?10重量部を添加しても汚れの付着をより防止することができる。
また充填剤の粒度及び形状も溶接棒としたときの表面の平滑性に影響する。充填剤の平均粒子径についてはBET法やブレーン透過法などにより求めた比表面積から換算した比表面積径の場合,1μm?5μmの範囲のものが好適である。形状は板状のものがより好ましい。」(段落 【0013】?【0015】)

カ 「また溶接棒にはさらにシリコーン系共重合体を添加してもよい。前記樹脂組成物にシリコーン系共重合体を添加することで前記樹脂組成物に摺動性が付与されるため,溶接棒に汚れが付着しにくくなる。シリコーン系共重合体は,シリコーンと共重合可能な各種有機樹脂との共重合体であれば良い。シリコーンと共重合可能な樹脂として,例えばアクリル樹脂,ウレタン樹脂,エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,フッ素樹脂,ポリイミド樹脂,ポリカーボネート樹脂などが挙げられ,これら共重合可能な樹脂のうち1種以上とシリコーンとを反応させることでシリコーン系共重合体が得られる。このうちアクリル樹脂,ウレタン樹脂,エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂のいずれかとシリコーンを反応させたシリコーン系共重合体が塩化ビニル系樹脂との相溶性が良く,好ましい。
シリコーン系共重合体の構造としては,シリコーン鎖がシリコーンと共重合可能な樹脂骨格中にブロック的に配置するブロック共重合体と,シリコーン鎖がシリコーンと共重合可能な樹脂側鎖に配置,あるいはシリコーンと共重合可能な樹脂鎖がシリコーン側鎖に配置するグラフト共重合体が挙げられるが,好ましくはグラフト共重合体であり,より好ましくは共重合可能な樹脂鎖がシリコーン側鎖に配置するグラフト共重合体である。
シリコーン系共重合体の添加量は,塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1重量部?10重量部が好ましい。シリコーン系共重合体を添加することにより耐汚染性は向上するが,添加量が増加するとシリコーン共重合体の摺動性により溶接棒をカットする際にナイフが滑りやすくなるため,作業性の低下が懸念される。したがってより好ましい添加量は1重量部?8重量部であり,さらに好ましくは2重量部?7重量部である。」(段落 【0016】?【0018】)

キ 「溶接棒の溶接方法の具体例としては,まずシートの継目が中央にくるようにU字またはV字カッターで溝の深さがシートの厚みのおよそ三分の二程度となるように溝切を行う。その後,熱風溶接機に専用のノズルを装着し溶接棒を溝に熱溶着させていく。溶接した後,溶接部分が冷えてから溶接の余り部分(余盛り)を余盛り取りナイフおよびガイドを用いて大まかにカットし,さらに余盛り取りナイフ等で余盛りカットを行い,目地部分を平滑に仕上げる。溶接棒による継目処理は長尺ビニル系床シートに良く用いられる方法であり,UVコーティングを施した長尺床材などのワックス処理が不要な床シートにも用いられる方法である。」(段落 【0021】)

ク 「【実施例】
・・・
実施例および比較例に使用した各配合剤の具体的な物質名は以下の通りである。
塩化ビニル系樹脂:ポリ塩化ビニル樹脂
平均重合度 1000
可塑剤1:ジ‐2‐エチルヘキシルフタレート
可塑剤2:エポキシ化大豆油
安定剤:Ba-Zn系金属石鹸
シリコーン系共重合体:シリコーン‐アクリル系グラフト共重合体
(アクリル樹脂鎖がシリコーン側鎖に配置)
シリコーン含有量 70%
充填剤:軽質炭酸カルシウム(脂肪酸処理)
比表面積径 1.5μm(BET法比表面積換算値)
・・・

」(段落 【0024】?【0029】)

3 先願明細書等に記載された発明
先願明細書等には,上記2_ア?クの記載からみて,

「塩化ビニル系樹脂100重量部に対し,可塑剤20重量部?60重量部,充填剤0重量部?20重量部,シリコーン系共重合体1重量部?10重量部とを含有する組成物であって,充填剤の平均粒子径が1?5μmである内装シート溶接棒用樹脂組成物。」(以下,「先願発明1」という。),及び,
「塩化ビニル系樹脂100重量部に対し,可塑剤20重量部?60重量部,充填剤0重量部?20重量部,シリコーン系共重合体1重量部?10重量部とを含有する組成物であって,充填剤の平均粒子径が1?5μmである内装シート溶接棒用樹脂組成物から得られる溶接棒。」(以下,「先願発明2」という。)が記載されていると認める。

4 本件発明と先願発明との対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と先願発明1とを対比する。
先願発明1の「塩化ビニル系樹脂」,「シリコーン系共重合体」は,それぞれ,本件発明1における「塩化ビニル樹脂」,「樹脂系添加剤であるシリコーン樹脂」に相当する。
先願発明1の「内装シート溶接棒用樹脂組成物」は,上記(2)キの記載から,本件発明1における「床材溶接棒用樹脂組成物」に相当する。
先願発明1の「塩化ビニル系樹脂」(塩化ビニル樹脂)の配合量は,配合される成分の量に応じて組成物全体の52.6質量%?82.6質量%の範囲であって,実施例9では組成物全体の63.7質量%であり,実施例10では組成物全体の62.1質量%であるから,本件発明1の40?70質量%と重複一致する。
先願発明1のシリコーン系共重合体(シリコーン樹脂)の配合量は,配合される成分の量に応じて組成物全体の0.6質量%(1/181)?7.7質量%(10/130)の範囲であるのに対し,本件発明1では「3?15質量%(前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって3?7.7質量%を除く)」であるから,本件発明1と先願発明1とは,樹脂系添加剤の配合量の点において相違する。そして,当該配合量以外とすることが当業者において自明な事項とはいえないから,当該相違点は,実質的な相違点である。
そうすると,先願発明1と本件発明1とは,同一ではない。
よって,本件発明1は,先願明細書等に記載された発明と同一ではない。

イ 本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は,本件発明1を引用するものであって,本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに他の発明特定事項を限定しているものであるから,本件発明2から4までにおいて限定している発明特定事項について検討するまでもなく,特許発明2から4は,先願明細書等に記載された発明と同一ではない。

ウ 本件発明5について
本件発明5と先願発明1とを対比する。
先願発明1の「塩化ビニル系樹脂」,「シリコーン系共重合体」は,それぞれ,本件発明5における「塩化ビニル樹脂」,「樹脂系添加剤であるシリコーン樹脂」に相当する。
先願発明1の「内装シート溶接棒用樹脂組成物」は,上記2_キの記載から,本件発明5における「床材溶接棒用樹脂組成物」に相当する。
充填剤の平均粒径に関して,先願発明1の「1?5μm」は,本件発明5における1μmで重複一致している。
そうすると,両者は
「塩化ビニル樹脂と,シリコーン樹脂及びフッ素樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂系添加剤と,充填剤とを含み,該充填剤の平均粒子径が0.2?1μmである床材溶接棒用樹脂組成物。」で一致し,以下の点で相違する。

相違点1
樹脂系添加剤の配合量に関し,本件発明5は「前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって3?7.7質量%のときを除く」と特定するのに対し,先願発明1のシリコーン系共重合体(シリコーン樹脂)の配合量は,先願発明1における配合される成分の量に応じて算出すると,組成物全体の0.6質量%(1/181)?7.7質量%(10/130)の範囲である点。

相違点2
充填剤に関し,本件発明5は「炭酸カルシウム,タルク及びシリカよりなる群から選択される少なくとも一種」と特定するのに対し,先願発明1においては,この点が特定されていない点。

以下,相違点について検討する。
相違点1は,樹脂系添加剤の配合量について,先願発明1の樹脂系添加剤の配合量を除くものであって,先願明細書等には,当該配合量以外の記載はなく,当該配合量以外とすることが当業者において自明な事項とはいえないから,相違点1は,実質的な相違点である。

そうすると,相違点2について検討するまでもなく,本件発明5は先願発明2と同一ではない。
よって,本件発明5は,先願明細書等に記載された発明と同一ではない。

エ 本件発明6について
本件発明6は,本件発明1?5のいずれか1項に記載の床材溶接棒用樹脂組成物から得られる床材溶接棒である。
そして,本件発明6と先願発明2とを対比すると,先願発明2は,内装シート溶接棒用樹脂組成物から得られる溶接棒であるから,それぞれの本件発明1?5を引用する本件発明6との対比判断は,上記ア?ウのとおりである。
そうすると,本件発明6は,先願明細書等に記載された発明と同一ではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,取消理由によっては,本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂と、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂系添加剤とを含み、前記塩化ビニル樹脂の含有量が40?70質量%であり、前記樹脂系添加剤の含有量が3?15質量%(前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって3?7.7質量%を除く)であることを特徴とする床材溶接棒用樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂系添加剤が、シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の床材溶接棒用樹脂組成物。
【請求項3】
更に、炭酸カルシウム、タルク及びシリカよりなる群から選択される少なくとも一種の充填剤を含み、該充填剤の平均粒子径が0.2?1μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の床材溶接棒用樹脂組成物。
【請求項4】
前記塩化ビニル樹脂の含有量が40?70質量%であり、前記樹脂系添加剤の含有量が3?15質量%(前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって3?7.7質量%を除く)であり、前記充填剤の含有量が1?15質量%であることを特徴とする請求項3に記載の床材溶接棒用樹脂組成物。
【請求項5】
塩化ビニル樹脂と、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂系添加剤(前記樹脂系添加剤がシリコーン樹脂の場合であって含有量が3?7.7質量%のときを除く)と、炭酸カルシウム、タルク及びシリカよりなる群から選択される少なくとも一種の充填剤とを含み、該充填剤の平均粒子径が0.2?1μmであることを特徴とする床材溶接棒用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載の床材溶接棒用樹脂組成物から得られることを特徴とする床材溶接棒。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-03-25 
出願番号 特願2014-173685(P2014-173685)
審決分類 P 1 651・ 161- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鏡 宣宏  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 大島 祥吾
平塚 政宏
登録日 2015-02-20 
登録番号 特許第5697290号(P5697290)
権利者 富双合成株式会社 株式会社ニッピ
発明の名称 床材溶接棒用樹脂組成物及び床材溶接棒  
代理人 佐藤 浩義  
代理人 永井 道雄  
代理人 永井 道雄  
代理人 佐藤 浩義  
代理人 永井 道雄  
代理人 佐藤 浩義  

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